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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】製紙用フェルト基布
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/08 20060101AFI20220816BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220816BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
D21F7/08 Z
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018230092
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090757
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝也
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-082533(JP,A)
【文献】特開2005-299031(JP,A)
【文献】特開2016-141917(JP,A)
【文献】特開2005-002498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用フェルト基布であって、
互いに織り込まれた経糸と緯糸とを有し、
前記経糸は、(a+2)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いてa本の連続する前記緯糸の走行面側を通ることを繰り返すように前記緯糸に織り込まれる(a+2)/a組織であり、aは2以上の整数であり、
互いに左右に隣接する2本の前記経糸の少なくとも一部によって構成された第1ペアは、該2本の前記経糸の一方のみが(a-1)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通の3本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の他方のみが(a-1)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の走行面側を通ることを繰り返すように、前記緯糸に織り込まれ、
前記第1ペアとは異なる組み合わせの互いに左右に隣接する2本の前記経糸の少なくとも一部によって構成された第2ペアは、該2本の前記経糸の一方のみがa本の連続する前記緯糸の走行面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の他方のみがa本の連続する前記緯糸の走行面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の製紙面側を通ることを繰り返すように、前記緯糸に織り込まれたことを特徴とする製紙用フェルト基布。
【請求項2】
全ての前記経糸が前記第1ペアを構成するとともに、50%以上の前記経糸が前記第2ペアを構成し、又は、50%以上の前記経糸が前記第1ペアを構成するとともに、全ての前記経糸が前記第2ペアを構成することを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト基布。
【請求項3】
前記第1ペアの半数において、該第1ペアにおける右方の前記経糸は、左方の前記経糸に対して、経方向の一方に向かって(a-1)本の前記緯糸の分だけずれており、前記第1ペアの残りの半数において、該第1ペアにおける右方の前記経糸は、左方の前記経糸に対して、経方向の他方に向かって(a-1)本の前記緯糸の分だけずれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製紙用フェルト基布。
【請求項4】
前記経糸は、5/3組織、4/2組織、又は6/4組織であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の製紙用フェルト基布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製紙用フェルト基布に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機における湿紙から水分を機械的に搾るプレスパートで、湿紙の運搬及び搾水のために使用される製紙用フェルトは、経糸及び緯糸が互いに織り込まれた基布と、短繊維からなるバット層とをニードリングによって一体化して形成される。製紙用フェルトには、湿紙運搬性、搾水性、紙の表面にマークを付けない表面性(紙面性)、抄紙機に装着されてから好ましい状態になるまでの時間に関する初期馴染み性、防汚性、及び耐久性等が要求される。このような製紙用フェルトに要求される性能は、基布の構造に影響を受ける。
【0003】
図7は、製紙面側経糸101と、走行面側経糸102と、製紙面側経糸101及び走行面側経糸102に織り込まれた1層の緯糸103とを有する従来の基布104,105,106を示す。図7(A)は、製紙面側経糸101と走行面側経糸102との数の比が1:1であり、製紙面側経糸101及び走行面側経糸102が互いに上下に重なるように配置された経2重組織の基布104を示す。経2重組織の基布104は、目詰まり汚れ等の問題は発生し難いが、厚さが厚くフェルト密度が上がり難いため初期馴染みが悪く、また、製紙面側経糸101と緯糸103との交絡によって生じるナックル部で厚みが増すため緯ナックルマークが紙に付き表面性が悪くなる傾向がある。図7(B)は、製紙面側経糸101と走行面側経糸102との数の比が1:1であり、製紙面側経糸101及び走行面側経糸102が互いに上下に重ならないように配置された経1.5重組織の基布105を示す(例えば、特許文献1参照)。経1.5重組織の基布105は、厚さが薄くフェルト密度が上がり易いため初期馴染みは良いが、通気度が低くフェルト密度が上がり易いため目詰まり汚れ等の問題が発生し易く、斜め方向に固いため走行中にフクレやシワが発生し易い傾向がある。また、単位長さ当たりの経糸本数をあまり増やせないため、強度が低くなる傾向がある。図7(C)は、製紙面側経糸101が走行面側経糸102よりも細く、製紙面側経糸101と走行面側経糸102との数の比が2:1である経2重(上下2:1)組織の基布106を示す(例えば、特許文献2参照)。製紙面側経糸101が細いためナックル部が小さくなって表面性が良く、通気度が高いため目詰まり汚れ等の問題は発生し難いが、走行面側経糸102の浮き糸状態が長いためバットのしまりが悪くなり、初期馴染みが悪く、脱毛や毛羽立ちが発生し易く、製紙用フェルトの使用中に製紙面側経糸101が抜け易いという傾向がある。また、製紙面側経糸101の本数が多いため生産コストが高くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-234392号公報
【文献】特開2009-155747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、参考例であって、1層の経糸107と、経糸107に織り込まれた1層の緯糸103とを有する1重組織の基布108を示す。1重組織の基布108は、厚さが薄いため搾水性や初期馴染み性が良いが、耐久性に劣る傾向がある。図8に示す1重組織の基布108では、8本の経糸107と8本の緯糸103とによって完全組織が構成され、各々の経糸107は、5本の連続する緯糸103の製紙面側を通った後3本の連続する緯糸103の走行面側を通ることを繰り返しており、任意の経糸107は、隣接する他の経糸107に対して3本の緯糸103の分だけずれた位置で緯糸103に織り込まれている。このような基布108では、図8に二点鎖線で示すように、経糸107と緯糸103との織り込みによって生じる凹凸が斜め方向に揃うため、紙に斜めのマークが出て表面性が悪くなるだけでなく、基布108自体が斜めに変形し易く、製紙用フェルトを抄紙機に取り付けた時の走行が安定しなくなる。ここで、湿紙を運搬する製紙用フェルトは、上下で対になった2つのロールに挟まれるため、基布における製紙面側の凹凸だけでなく、走行面側の凹凸によっても紙にマークが付き易い。
【0006】
本発明は、搾水性、防汚性及び表面性に優れた製紙用フェルト基布を提供することを目的とする。本発明の少なくともいくつかの実施形態では、さらに、走行安定性に優れた製紙用フェルト基布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、製紙用フェルト基布(2,12,22,32,42)であって、互いに織り込まれた経糸(4,34,44)、と緯糸(5,35,45)とを有し、前記経糸は、(a+2)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いてa本の連続する前記緯糸の走行面側を通ることを繰り返すように前記緯糸に織り込まれる(a+2)/a組織であり、aは2以上の整数であり、互いに左右に隣接する2本の前記経糸の少なくとも一部によって構成された第1ペア(6,36,46)は、該2本の前記経糸の一方のみが(a-1)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通の連続する3本の前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の他方のみが(a-1)本の連続する前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の走行面側を通ることを繰り返すように、前記緯糸に織り込まれ、前記第1ペアとは異なる組み合わせの互いに左右に隣接する2本の前記経糸の少なくとも一部によって構成された第2ペア(7,37,47)は、該2本の前記経糸の一方のみがa本の連続する前記緯糸の走行面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の前記経糸の他方のみがa本の連続する前記緯糸の走行面側を通り、続いて該2本の前記経糸の双方が互いに共通する1本の前記緯糸の製紙面側を通ることを繰り返すように、前記緯糸に織り込まれたことを特徴とする。全ての前記経糸が前記第1ペアを構成するとともに50%以上の前記経糸が前記第2ペアを構成し、又は、50%以上の前記経糸が前記第1ペアを構成するとともに全ての前記経糸が前記第2ペアを構成することが好ましい。
【0008】
この構成によれば、走行面側では第2ペアが擬似的なa/1組織の走行面側経糸を形成し、製紙面側では第1ペアが擬似的な(2a+1)/1組織の製紙面側経糸を形成し、製紙面側の第1ペアが長い浮き糸状態となるため、表面性が向上する。製紙面側の経糸の密度が高く、走行面側の経糸の密度が低いため、搾水性が良く、目詰まり汚れが生じ難い。個々の経糸の浮き糸状態は、比較的短いため、バットの絡みが向上する。
【0009】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る基布は、上記構成の何れかにおいて、前記第1ペアの半数において、該第1ペアにおける右方の前記経糸は、左方の前記経糸に対して、経方向の一方に向かって(a-1)本の前記緯糸の分だけずれており、前記第1ペアの残りの半数において、該第1ペアにおける右方の前記経糸は、左方の前記経糸に対して、経方向の他方に向かって(a-1)本の前記緯糸の分だけずれていることを特徴とする。ここで、左右方向は、緯糸の延在方向である。
【0010】
この構成によれば、第1ペアにおいて、その半数は、残りの半数に対して、2本の経糸が互いにずれる経方向の向きが逆になっているため、経糸と緯糸との互いの織り込みによって生じる凹凸が斜め方向に揃う長さが短くなり、紙に斜めのマークが付き難くなって表面性が向上するとともに、基布自体が斜めに変形し難くなって走行安定性が向上する。
【0011】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る基布は、上記構成において、前記経糸は、5/3組織、4/2組織、又は6/4組織であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、個々の経糸の浮き糸状態が比較的小さいため、バットの絡みが良好になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搾水性、防汚性、表面性及び走行安定性に優れた製紙用フェルト基布を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る製紙用フェルト基布の組織図
図2】第1実施形態に係る製紙用フェルトの断面図
図3】第1実施形態の第1変形例に係る製紙用フェルト基布の組織図
図4】第1実施形態の第2変形例に係る製紙用フェルト基布の組織図
図5】第2実施形態に係る製紙用フェルト基布の組織図
図6】第3実施形態に係る製紙用フェルト基布の組織図
図7】従来技術に係る製紙用フェルト基布の断面図
図8】参考例に係る製紙用フェルト基布の組織図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図1図3図6及び図8に示す組織図は、製紙面側を示すA図を平面図とすると、走行面側を示すB図は、底面図を左右反転させたものに相当する。
【0016】
図1及び図2は、第1実施形態に係る製紙用フェルト1における製紙用フェルト基布(以下、単に「基布」と記す)2を示す。製紙用フェルト1は、基布2と、短繊維からなるバット層3とをニードリングによって一体化して形成される。製紙用フェルト1は丈方向(機械方向、経方向)に無端状とされて抄紙機に取り付けられ、外側が湿紙を載置する製紙面側となり、内側が走行面側となる。
【0017】
基布2は、互いに織り込まれた、丈方向に延在する1層の経糸4と、幅方向(機械交差方向、緯方向、左右方向)に延在する1層の緯糸5とを有する。基布2の完全組織は、16本の経糸4と8本の緯糸5によって構成され、各々の経糸4は、5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、続いて3本の連続する緯糸5の走行面側を通ることを繰り返すように緯糸5に織り込まれる5/3組織である。
【0018】
No.1'、No.5'、No.8'及びNo.12'の経糸4が互いに共通の緯糸5に織り込まれている(緯糸No.8~4の製紙面側を通り、緯糸No.5~7の走行面側を通る)。これらの経糸4に対して2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に、No.2'、No.7'、No.10'及びNo.15'の経糸4が互いに共通の緯糸5に織り込まれている(緯糸No.2~6の製紙面側を通り、緯糸No.7~1の走行面側を通る)。これらの経糸4に対して2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に、No.4'、No.9'、No.13'及びNo.16'の経糸4が互いに共通の緯糸5に織り込まれている(緯糸No.4~8の製紙面側を通り、緯糸No.1~3の走行面側を通る)。これらの経糸4に対して2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に、No.3'、No.6'、No.11'及びNo.14'の経糸4が互いに共通の緯糸5に織り込まれている(緯糸No.6~2の製紙面側を通り、緯糸No.3~5の走行面側を通る)。このように織り込むことによって、製紙面側及び走行面側において以下のような特徴が生じる。
【0019】
製紙面側に着目すると、No.(2n-1)'及びNo.(2n)'の経糸4が、第1ペア6を構成している(nは1~8の整数である)。No.1'及び2'の経糸4を例に、第1ペア6について説明する(以下、「No.(2n-1)'及びNo.(2n)'の経糸4の第1ペア6」を「第1ペア((2n-1)',(2n)')」と記す)。No.1'の経糸4は、No.8~No.4の5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、No.5~7の3本の連続する緯糸5の走行面側を通っている。No.2'の経糸4は、No.2~No.6の5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、No.7~1の3本の連続する緯糸5の走行面側を通っている。No.8~No.6の連続する7本の緯糸5の製紙面側には、No.1'及びNo.2'の双方又は一方が存在し、No.7の緯糸5の走行面側には、No.1'及びNo.2'の双方が存在する。このように第1ペア6における互いに隣接する経糸4の少なくとも一方が製紙面側に存在するとき、第1ペア6は製紙面側に存在するとみなすと、第1ペア6は、擬似的な7/1組織の製紙面側経糸となる。
【0020】
第1ペア(11',12')、(13',14')、(15',16')及び(1',2')は、それぞれの第1ペア6において、偶数番号の経糸4が奇数番号の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(13',14')、(15',16')、(1',2')及び(11',12')は、それぞれ、第1ペア(11',12')、(13',14')、(15',16')及び(1',2')に対して、2本の緯糸5の分だけ図1の上方にずれた位置に織り込まれている。
【0021】
第1ペア(3',4')、(5',6')、(7',8')及び(9',10')は、それぞれの第1ペア6において、奇数番号の経糸4が偶数番号の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(5',6')、(7',8')及び(9',10')、(3',4')は、それぞれ、第1ペア(3',4')、(5',6')、(7',8')及び(9',10')に対して、2本の緯糸5の分だけ図1の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(3',4')、(5',6')、(7',8')及び(9',10')は、それぞれ、第1ペア(13',14')、(11',12')、(1',2')及び(15',16')に対して、左右対称形をなす(緯糸5の延在方向を左右方向とする)。なお、第1ペア6を構成する2本の互いに隣り合う経糸4において、右方の経糸4が左方の経糸4よりも図中の下方にずれた位置に織り込まれているものと、その逆のものとは、上述のような4つずつ交互に配置したものに限定されず、例えば、1つずつ又は2つずつ交互に配置しても良い。
【0022】
一方、走行面側に着目すると、No.(2n)'及びNo.(2n+1)'の経糸4が、第2ペア7を構成している(nは1~8の整数であり、(2n+1)が17の時は1とみなす)。No.2'及び3'の経糸4を例に、第2ペア7について説明する。No.2'の経糸4は、No.2~No.6の5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、No.7~1の3本の連続する緯糸5の走行面側を通っている。No.3'の経糸4は、No.6~No.2の5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、No.3~5の3本の連続する緯糸5の走行面側を通っている。No.3~5及び7~1の連続する3本の緯糸5の走行面側には、No.2'及びNo.3'の一方が存在し、No.2及び6の緯糸5の製紙面側には、No.2'及びNo.3'の双方が存在する。このように第2ペア7における互いに隣接する経糸4の双方が製紙面側に存在するときに第2ペア7は製紙面側に存在するとみなし、一方が走行面側に存在するときに第2ペア7は走行面側に存在するとみなすと、第2ペア7は、擬似的な3/1組織の走行面側経糸(製紙面側から見ると1/3組織)となる。このため、筋曲がりが抑制され、表面性も向上する。
【0023】
経糸4は、2又は3本のモノフィラメントの片撚り糸、又はマルチフィラメントの撚り糸が好適である。片撚り糸は、各々のモノフィラメントに撚りを掛けたものを複数本反対方向に撚ったものでも良い。緯糸5は、3本のモノフィラメントの片撚り糸、又は2本のモノフィラメントの片撚り糸を2本撚った撚り糸が好適である。経糸4及び緯糸5として撚り糸を用いることにより、基布2とバットとの絡みが向上する。経糸4及び緯糸5に使用されるモノフィラメントの各々の直径は0.18mm~0.25mmであることが好ましく、その素材として、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂を使用できる。経糸4は、2.54cm(1インチ)当たり55~85本であり、緯糸5は、2.54cm(1インチ)当たり18~35本であることが好ましい。
【0024】
走行面側では第2ペア7を構成する互いに隣り合う2本の経糸4が互いに補完しながらあたかも1本の3/1組織の走行面側経糸を形成し、製紙面側では第1ペア6を構成する互いに隣り合う2本の経糸4が互いに補完しながらあたかも7/1組織の製紙面側経糸を形成している。図1を見ると、No.1,3,5,7の緯糸5に対しては、完全組織において8本の経糸4が製紙面側に位置し、8本の経糸4が走行面側に位置する。また、No.2,4,6,8の緯糸5に対しては、完全組織において12本の経糸4が製紙面側に位置し、4本の経糸4が走行面側に位置する。No.2,4,6,8の緯糸5に着目すると、図2の緯断面(経糸4に直交する断面)の図に示すように、緯糸5に対して、製紙面側に位置する経糸4と走行面側に位置する経糸4の数の比が12:4となっている。ここで、製紙面側を通る12本の経糸4の内、4組8本の経糸4が第1ペア6を構成している。例えば、No.2の緯糸5に対しては、第1ペア(1',2')、(5',6')、(7',8')及び(11',12')の経糸4が両方とも製紙面側を通るとともに、他の第1ペア6を構成する2本の経糸4の内の一方(No.3',10',14'及び15')の経糸4が製紙面側を通っている。第1ペア6を構成する2本の経糸4は互いに補完し合って1本の経糸4のように機能するため、第1ペア6を構成する2本の経糸4を1本の経糸4とみなすと、No.2,4,6,8の緯糸5に対して、製紙面側を通る経糸4の数が8本(双方の経糸4が製紙面側に位置する第1ペア6が4組、一方の経糸のみが走行面側位置する第1ペア6が4組)、走行面側に位置する経糸4の数が4本となり、その比が2:1のようになる。このため、緯糸5に対する経糸4の配置が、図7(C)に示す経2重(上下2:1)組織の製紙面側経糸101及び走行面側経糸102に類似のものとなり、表面性が向上する。一方、経糸4の単位長さ当たりの本数は、経2重(上下2:1)組織の製紙面側経糸101及び走行面側経糸102の合計本数よりも少ないため、生産性が向上する。製紙面側の経糸4の密度が高く、走行面側の経糸4の密度が低いため、搾水性が良く、目詰まり汚れが生じ難い。
【0025】
また、製紙面側で擬似的な7/1組織を形成する第1ペア6は、製紙面側で連続する7本の緯糸5という比較的長い浮き糸状態となるため表面性が向上する。各々の経糸4が長い浮き糸状態となるとバットの絡みが悪くなるが、本実施形態の基布2では、個々の経糸4の浮き糸状態は、製紙面側で5本の緯糸5、走行面側で3本の緯糸5という比較的短いものであるため、バットの絡みが向上する。
【0026】
また、第1ペア6の半数において、該第1ペア6における右方の経糸4は、左方の経糸4に対して、経方向の一方に向かって2本の緯糸5の分だけずれており、第1ペア6の残りの半数において、該第1ペア6における右方の経糸4は、左方の経糸4に対して、経方向の他方に向かって2本の緯糸5の分だけずれている。すなわち、第1ペア6において半数は、残りの半数に対して、2本の経糸4の互いにずれる経方向の向きが逆になっている。このため、経糸4と緯糸5との互いの織り込みによって生じる凹凸が斜め方向に揃う長さが短くなるため、紙に斜めのマークが付き難くなり表面性が向上するとともに、基布2自体が斜めに変形し難くなって走行が安定する。
【0027】
次に、図3を参照して第1実施形態の第1変形例を説明する。説明に当たって、第1実施形態の上記の主例と共通する構成については同一の符号を付しその説明を省略する。上記の主例では、全ての経糸4が第1ペア6を構成し、全ての経糸4が第1ペア6とは異なる組み合わせで第2ペア7を構成しているが、第1変形例では、50%の経糸4のみが第1ペア6を構成している点で上記の主例と相違する。
【0028】
第1変形例の基布12の完全組織は、8本の経糸4と8本の緯糸5によって構成され、各々の経糸4は、上記の主例と同様に5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、続いて3本の連続する緯糸5の走行面側を通ることを繰り返すように緯糸5に織り込まれる5/3組織である。
【0029】
No.2'~8'及び1'の経糸4は、それぞれ、No.1'~8'の経糸4に対して、6本、4本、5本、4本、2本、4本、3本及び4本の緯糸5の分だけ図3の下方にずれた位置に織り込まれている。このように織り込むことによって、製紙面側及び走行面側において以下のような特徴が生じる。
【0030】
製紙面側に着目すると、No.1'及びNo.2'の経糸4と、No.5'及びNo.6'の経糸4とが、それぞれ、擬似的な7/1組織の製紙面側経糸となる第1ペア6を構成し、No.3'及びNo.4'の経糸4と、No.7'及びNo.8'の経糸4とは、それぞれ、第1ペア6を構成していない。第1ペア(1',2')においては、No.1'の経糸4が、No.2'の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図3の下方にずれた位置に織り込まれ、第1ペア(5',6')においては、No.6'の経糸4がNo.5'の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図3の下方にずれた位置に織り込まれている。擬似的な7/1組織として見た場合、第1ペア(5',6')は、第1ペア(1',2')に対して5本の緯糸5の分だけ図3の下方に位置する(第1ペア(5',6')のNo.5'の経糸4が、第1ペア(1',2')のNo.2'の経糸4に対して5本の緯糸5の分だけ図3の下方に位置する)。
【0031】
一方、走行面側に着目すると、No.(2n)'及びNo.(2n+1)'の経糸4が、擬似的な3/1組織の走行面側経糸となる第2ペア7を構成している(nは1~4の整数であり、(2n+1)が9の時は1とみなす)。
【0032】
このように経糸4の50%が第1ペア6を構成し、かつ、経糸4の全てが第2ペア7を構成する構成であっても、上記の主例と同様の理由により、搾水性、防汚性、表面性及び走行安定性が良好となる。なお、No.3'及びNo.4'の経糸4と、No.7'及びNo.8'の経糸4との何れか一方に第1ペア6を構成させて、経糸4の75%が第1ペア6を構成するように変更しても良い。
【0033】
次に、図4を参照して第1実施形態の第2変形例を説明する。説明に当たって、第1実施形態の主例と共通する構成については同一の符号を付しその説明を省略する。第2変形例では、50%の経糸4のみが第2ペア7を構成している点で主例と相違する。
【0034】
第2変形例の基布22の完全組織は、8本の経糸4と8本の緯糸5によって構成され、各々の経糸4は、上記の主例及び第1変形例と同様に5本の連続する緯糸5の製紙面側を通り、続いて3本の連続する緯糸5の走行面側を通ることを繰り返すように緯糸5に織り込まれる5/3組織である。
【0035】
No.2'~8'及び1'の経糸4は、それぞれ、No.1'~8'の経糸4に対して、6本、4本、2本、3本、6本、4本、2本、及び5本の緯糸5の分だけ図4下方にずれた位置に織り込まれている。このように織り込むことによって、製紙面側及び走行面側において以下のような特徴が生じる。
【0036】
製紙面側に着目すると、No.(2n-1)'及びNo.(2n)'の経糸4が、擬似的な7/1組織の製紙面側経糸となる第1ペア6を構成している(nは1~4の整数である)。第1ペア(3',4')及び(7',8')は、それぞれの第1ペア6において、偶数番号の経糸4が奇数番号の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図4の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(7',8')は、第1ペア(3',4')に対して、1本の緯糸5の分だけ図1の上方にずれた位置に織り込まれている。
【0037】
第1ペア(1',2')及び(5',6')は、それぞれの第1ペア6において、奇数番号の経糸4が偶数番号の経糸4よりも2本の緯糸5の分だけ図4の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(5',6')は、第1ペア(1',2')に対して、1本の緯糸5の分だけ図4の上方にずれた位置に織り込まれている。擬似的な7/1組織として見た場合、第1ペア(1',2')及び(5',6')は、それぞれ、第1ペア(7',8')及び(3',4')に対して、5本の緯糸5及び3本の緯糸5の分だけ、図4の下方にずれた位置に織り込まれている(第1ペア(1',2')のNo.2'の経糸4及び第1ペア(5',6')のNo.6'の経糸が、それぞれ第1ペア(7',8')のNo.7'の経糸4及び第1ペア(3',4')のNo.3'の経糸4に対して、3本の緯糸5の分だけ、図4の下方にずれた位置に織り込まれている)。
【0038】
一方、走行面側に着目すると、No.2'及びNo.3'の経糸4と、No.6'及びNo.7'の経糸4とが、擬似的な3/1組織の走行面側経糸となる第2ペア7を構成している。
【0039】
このように経糸4の全てが第1ペア6を構成し、かつ、経糸4の50%が第2ペア7を構成する構成であっても、上記の主例と同様の理由により、搾水性、防汚性、表面性及び走行安定性が良好となる。なお、No.4'及びNo.5'の経糸4と、No.8'及びNo.1'の経糸4との何れか一方に第2ペア7を構成させて、経糸4の75%が第2ペア7を構成するように変更しても良い。
【0040】
次に、図5を参照して、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る基布32は、互いに織り込まれた1層の経糸34と1層の緯糸35とを有する。個々の経糸34の組織や、第1ペア36及び第2ペア37の長さが第1実施形態と相違する。なお、図5においては、便宜上、ペアを組む2つの経糸34を互いに近接させて図示している。
【0041】
基布32の完全組織は、16本の経糸34と6本の緯糸35によって構成され、各々の経糸34は、4本の連続する緯糸35の製紙面側を通り、続いて2本の連続する緯糸35の走行面側を通ることを繰り返すように緯糸35に織り込まれる4/2組織である。
【0042】
No.1'、No.7'及びNo.11'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。これらの経糸34に対して1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に、No.4'及びNo.12'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。これらの経糸34に対して1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に、No.3'、No.9'及びNo.15'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。これらの経糸34に対して1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に、No.6'、No.10'及びNo.16'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。これらの経糸34に対して1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に、No.5'及びNo.13'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。これらの経糸34に対して1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に、No.2'、No.8'及びNo.14'の経糸34が互いに共通の緯糸35に織り込まれている。このように織り込むことによって、製紙面側及び走行面側において以下のような特徴が生じる。
【0043】
製紙面側に着目すると、No.(2n-1)'及びNo.(2n)'の経糸34が、第1ペア36を構成している(nは1~8の整数である)。第1ペア36は、一方の経糸34のみが1本の緯糸35の製紙面側を通り、続いて双方の経糸34が3本の連続する緯糸35の製紙面側を通り、続いて他方の経糸34のみが1本の緯糸35の製紙面側を通り、続いて双方の経糸34が1本の緯糸35の下を通ることを繰り返すように、緯糸35に織り込まれる。このように第1ペア36における互いに隣接する経糸34の少なくとも一方が製紙面側に存在するとき、第1ペア36は製紙面側に存在するとみなすと、第1ペア36は、擬似的な5/1組織の製紙面側経糸となる。
【0044】
第1ペア(9',10'),(11',12')、(13',14')及び(15',16')は、それぞれの第1ペア36において、偶数番号の経糸34が奇数番号の経糸34よりも1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(11',12')、(13',14')及び(15',16')は、それぞれ、第1ペア(9',10')、(11',12')及び(13',14')に対して、4本の緯糸35の分だけ図5の下方に位置する。第1ペア(9',10')と第1ペア(15',16')とは、互いに共通の緯糸35に織り込まれている。
【0045】
第1ペア(1',2')、(3',4')、(5',6')及び(7',8')は、それぞれの第1ペア36において、奇数番号の経糸34が偶数番号の経糸34よりも1本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(3',4')、(5',6')及び(7',8')は、それぞれ、第1ペア(1',2')、(3',4')及び(5',6')に対して、2本の緯糸35の分だけ図5の下方にずれた位置に織り込まれている。第1ペア(1',2')と第1ペア(7',8')とは、互いに共通の緯糸35に織り込まれている。
【0046】
一方、走行面側に着目すると、No.(2n)'及びNo.(2n+1)'の経糸34が、第2ペア37を構成している(nは1~8の整数であり、(2n+1)が17の時は1とみなす)。第2ペア37は、一方の経糸34のみが2本の連続する緯糸35の走行面側を通り、続いて双方の経糸34が1本の緯糸35の製紙面側を通り、続いて他方の経糸34のみが2本の連続する緯糸35の走行面側を通り、続いて双方の経糸34が1本の緯糸35の製紙面側を通ることを繰り返すように緯糸35に織り込まれる。このように第2ペア37における互いに隣接する経糸34の双方が製紙面側に存在するときに第2ペア37は製紙面側に存在するとみなし、かつ、一方が走行面側に存在するときに第2ペア37は走行面側に存在するとみなすと、第2ペア37は、擬似的な2/1組織の走行面側経糸(製紙面側から見ると1/2組織)となる。
【0047】
このような構成であっても、第1実施形態と同様の理由により、搾水性、防汚性、表面性及び走行安定性が良好となる。
【0048】
次に、図6を参照して、本発明に係る第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る基布42は、互いに織り込まれた1層の経糸44と1層の緯糸45とを有する。個々の経糸44の組織や、第1ペア46及び第2ペア47の長さが第1実施形態及び第2実施形態と相違する。なお、図6においては、便宜上、ペアを組む2つの経糸44を互いに近接させて図示している。
【0049】
基布42の完全組織は、16本の経糸44と10本の緯糸45によって構成され、各々の経糸44は、6本の連続する緯糸45の製紙面側を通り、続いて4本の連続する緯糸45の走行面側を通ることを繰り返すように緯糸45に織り込まれる6/4組織である。
【0050】
No.1'及びNo.5'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。これらの経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.10'の経糸44が緯糸45に織り込まれている。この経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.7'及びNo.15'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。これらの経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.2'の経糸44が緯糸45に織り込まれている。この経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.9'及びNo.13'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。これらの経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.4'及びNo.16'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。これらの経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.11'の経糸44が緯糸45に織り込まれている。この経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.6'及びNo.14'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。これらの経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.3'の経糸44が緯糸45に織り込まれている。この経糸44に対して1本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に、No.8'及びNo.12'の経糸44が互いに共通の緯糸45に織り込まれている。このように織り込むことによって、製紙面側及び走行面側において以下のような特徴が生じる。
【0051】
製紙面側に着目すると、No.(2n-1)'及びNo.(2n)'の経糸44が、第1ペア46を構成している(nは1~8の整数である)。第1ペア46は、一方の経糸44のみが3本の連続する緯糸45の製紙側を通り、続いて双方の経糸44が3本の連続する緯糸45の製紙面側を通り、続いて他方の経糸44のみが3本の連続する緯糸45の製紙面側を通り、続いて双方の経糸44が1本の緯糸45の下を通ることを繰り返すように、緯糸45に織り込まれる。このように第1ペア46における互いに隣接する経糸44の少なくとも一方が製紙面側に存在するとき、第1ペア46は製紙面側に存在するとみなすと、第1ペア46は、擬似的な9/1組織の製紙面側経糸となる。
【0052】
第1ペア(11',12')、(13',14')、(15',16')及び(1',2')は、それぞれの第1ペア46において、偶数番号の経糸44が奇数番号の経糸44よりも3本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に織り込まれる。第1ペア(13',14')、(15',16')、(1',2')及び(11',12')は、それぞれ、第1ペア(11',12')、(13',14')、(15',16')及び(1',2')に対して、8本、8本、8本及び6本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に織り込まれる。
【0053】
第1ペア(3',4')、(5',6')、(7',8')及び(9',10')は、それぞれの第1ペア46において、奇数番号の経糸44が偶数番号の経糸44よりも3本の緯糸45の分だけ図6の下方にずれた位置に織り込まれる。第1ペア(5',6')、(7',8')及び(9',10')、(3',4')は、それぞれ、第1ペア(3',4')、(5',6')、(7',8')及び(9',10')に対して、2本、2本、2本及び4本の緯糸45の分だけ図6の下方に位置する。
【0054】
一方、走行面側に着目すると、No.(2n)'及びNo.(2n+1)'の経糸44が、第2ペア47を構成している(nは1~8の整数であり、(2n+1)が17の時は1とみなす)。第2ペア47は、一方の経糸44のみが4本の連続する緯糸45の走行面側を通り、続いて双方の経糸44が1本の緯糸45の製紙面側を通り、続いて他方の経糸44のみが4本の連続する緯糸45の走行面側を通り、続いて双方の経糸44が1本の緯糸45の製紙面側を通ることを繰り返すように緯糸45に織り込まれる。このように第2ペア47における互いに隣接する経糸44の双方が製紙面側に存在するときに第2ペア47は製紙面側に存在するとみなし、かつ、一方が走行面側に存在するときに第2ペア47は走行面側に存在するとみなすと、第2ペア47は、擬似的な4/1組織の走行面側経糸(製紙面側から見ると1/4組織)となる。
【0055】
このような構成であっても、第1実施形態と同様の理由により、搾水性、防汚性、表面性及び走行安定性が良好となる。
【0056】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第2実施形態又は第3実施形態を、第1実施形態の第1変形例又は第2変形例のように、全ての経糸が第1ペア及び第2ペアの一方を構成し、50%以上の経糸が第1ペア及び第2ペアの他方を構成するように変形してもよい。経糸は、5/3組織、4/2組織及び6/4組織以外の組織としても良い。この場合、経糸は(a+2)/a組織(aは2以上の整数)であり、第1ペアは、2本の経糸の一方のみが(a-1)本の連続する緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の経糸の双方が互いに共通の3本の連続する緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の経糸の他方のみが(a-1)本の連続する緯糸の製紙面側を通り、続いて該2本の経糸の双方が互いに共通する1本の緯糸の製紙面側を通ることを繰り返すように、緯糸に織り込まれ、擬似的な(2a+1)/1組織の製紙面側経糸となる。第2ペアは、擬似的なa/1組織の走行面側経糸となる。製紙面側で形成される組織の綾数((2a+1)/1組織で(2a+2)枚綾)は、走行面側で形成される組織の綾数(a/1組織で(a+1)枚綾)の2倍となる。
【符号の説明】
【0057】
1:製紙用フェルト
2,12,22,32,42:基布
3:バット層
4,34,44:経糸
5,35,45:緯糸
6,36,46:第1ペア
7,37,47:第2ペア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8