(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】電気化学測定の連鎖の補助によるフッ素含有化合物の製造
(51)【国際特許分類】
C01B 9/08 20060101AFI20220816BHJP
G01N 27/403 20060101ALI20220816BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C01B9/08
G01N27/403 371Z
G01N27/416 353Z
(21)【出願番号】P 2018502259
(86)(22)【出願日】2016-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2016067412
(87)【国際公開番号】W WO2017013207
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-06-21
(32)【優先日】2015-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】507020495
【氏名又は名称】ガスカテル ゲゼルシャフト フュア ガスジステーメ ドゥルヒ カタリーゼ ウント エレクトロヒェミー ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Gaskatel Gesellschaft fuer Gassysteme durch Katalyse und Elektrochemie mbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コンケ, ハンス-ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】パーニス, ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ, マルク
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-526371(JP,A)
【文献】特開昭62-059527(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011113941(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 9/08
G01N 27/403
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿反応によってフッ素含有化合物を製造するための方法であって、フッ素含有化合物が反応媒体から沈殿されることおよび沈殿反応の過程で反応媒体のpH値が、電気化学測定チェーンを使用して求められることを特徴とし、
電気化学測定チェーンが、指示電極として水素ガス拡散電極7と少なくとも1つの参照電極とを備え、それらの電極が、出口14を有する筐体1と共に構成単位を形成し、筐体1が参照電極と接触している参照電解質11と参照電解質11の上の密封ガス空間19とを含む、方法。
【請求項2】
フッ素含有化合物が、少なくとも1つのアルカリ金属フッ化物、アルカリ金属フッ化水素塩、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化水素塩、遷移金属フッ化物、第三族の元素のフッ化物、フッ化アンモニウム、アルカリ金属フルオロアルミン酸塩、アルカリ土類金属フルオロアルミン酸塩、それらの水和物、それらのHF付加物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素含有化合物が、KAlF
4、K
2AlF
5、K
3AlF
6、CsAlF
4、Cs
2AlF
5、Cs
3AlF
6、LiAlF
4、Li
2AlF
5、Li
3AlF
6、NaAlF
4、Na
2AlF
5、Na
3AlF
6、KBF
4、BaF
2、KHF
2、NH
4F、NH
4F
2、それらの水和物、それらのHF付加物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素含有化合物が、KAlF
4、K
2AlF
5、K
3AlF
6、それらの水和物
およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応媒体が沈殿反応の開始時にフッ化物イオンを含有し、水酸化物イオンが沈殿反応の間に反応媒体に加えられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応媒体が沈殿反応の開始時に水酸化物イオンを含有し、フッ化物イオンが沈殿反応の間に反応媒体に加えられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フッ素含有化合物が、KAlF
4、K
2AlF
5、K
3AlF
6、それらの水和物
およびそれらの混合物からなる群から選択され、反応媒体が沈殿反応の開始時にフルオロアルミン酸を含有し、および沈殿反応が反応媒体への水酸化カリウム水溶液の添加によって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電気化学測定チェーンによって求められる反応媒体のpH値が2.5~7を達成するとすぐに反応相手の添加が止められる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電気化学測定チェーンによって求められる反応媒体のpH値が3.0~5.0の値を達成するとすぐに反応相手の添加が止められる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電気化学測定チェーンによって求められる反応媒体のpH値が3.5~4.5の値を達成するとすぐに反応相手の添加が止められる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
沈殿反応の過程での反応相手の添加が、電気化学測定チェーンを使用して求められるpH値によって制御される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの参照電極が、水素ガス拡散電極8またはAg/AgCl電極1
7を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの参照電極が、水素ガス拡散電極8を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
筐体1が、参照電解質11と接触している温度センサー15と測定媒体9と接触している温度センサー15とを含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
電気化学測定チェーンが、水素ガス拡散参照電極8とAg/AgCl参照電極17とを含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
参照電解質の温度が熱伝達体によって制御されてもよい、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
電気化学測定チェーンが、測定器の中に備えられる、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH値が電気化学測定の連鎖を使用して求められるフッ化物イオン含有溶液からの沈殿反応によってフッ素含有化合物を製造するための方法に関し、ならびにpH値を求めるための電気化学測定の連鎖に関する。
【0002】
フッ素含有化合物を製造するための化学沈殿反応は工業的に大規模に使用される。しばしば、沈殿反応の過程のpH値がモニタされ、pH値を使用して例えば反応体のさらなる添加が決定される。これまで、このモニタリングは通常、pH紙およびその視覚的な検証を使用して行われている。この方法の不便な点は、それを連続的に達成することができないことおよび測定結果は観察者の色の印象、光の作用および読取り時間によって左右される場合があることである。
【0003】
pH測定のためのガラス電極の使用は、これらがフッ化物イオン含有媒体において使用するために適していないので、同様に実用的ではない。
【0004】
フッ化物イオン含有溶液からの沈殿反応によってフッ化物含有化合物を製造するための改良された方法を提供することが本発明の目的である。有利には沈殿反応の間のpH値はより正確にモニタされてもよい。本発明による方法はさらに、それぞれの生成物のより高い収量、生成物の改良された純度、方法の改良された再現性および/または反応体の少なくとも1つの使用量の節減をもたらす。本発明による方法はさらに、例えば粒度、濾過性、融点および/または貯蔵安定度に関して、それぞれの生成物の有利な物理化学的性質をもたらす。
【0005】
本発明によって、これらの目的および他の目的が達成された。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は第一に、沈殿反応によってフッ素含有化合物を製造するための方法に関し、そこでフッ素含有化合物が反応媒体から沈殿され、沈殿反応の過程で反応媒体のpH値が、電気化学測定の連鎖を使用して求められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】電気化学測定の連鎖を備えているバイパスを取付けた撹拌反応器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
用語「フッ素含有化合物」は、少なくとも1個のフッ素原子を含有する化合物を意味すると理解されなければならない。共有結合、配位結合またはイオン結合したフッ素原子が関係していてもよい。イオン結合したフッ素原子の例には、例えばフッ化物塩、フルオロ亜鉛酸塩またはフルオロアルミン酸塩のフッ素原子が含まれる。
【0009】
フッ素含有化合物は好ましくは、少なくとも1つのアルカリ金属フッ化物、アルカリ金属フッ化水素塩、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化水素塩、遷移金属フッ化物、第三族の元素のフッ化物、フッ化アンモニウム、アルカリ金属フルオロアルミン酸塩、アルカリ土類金属フルオロアルミン酸塩、それらの水和物、それらのHF付加物およびそれらの混合物からなる群から選択される。フッ素含有化合物はより好ましくは、KAlF4、K2AlF5、K3AlF6、CsAlF4、Cs2AlF5、Cs3AlF6、LiAlF4、Li2AlF5、Li3AlF6、NaAlF4、Na2AlF5、Na3AlF6、KBF4、BaF2、KHF2、NH4F、NH4F2、それらの水和物、それらのHF付加物およびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、KAlF4、K2AlF5、K3AlF6、それらの水和物ならびにKAlF4、K2AlF5、K3AlF6および/またはそれらの水和物を含有する混合物からなる群から選択される。
【0010】
特に好ましいのは、フラックスとして使用され、名称NOCOLOK(登録商標)としてSolvay Fluor GmbHによって製造される実験化学式K1-3AlF4-6を有する混合物である。この特別な実施形態において5%~60%のフッ化水素酸(HF)水溶液、好ましくは20%~30%のフッ化水素酸(HF)水溶液、が水酸化アルミニウムと反応させられ、その後、フルオロアルミン酸水溶液を含有する得られた溶液がKOH水溶液と混合され、このように所望の生成物K1-3AlF4-6の沈殿をもたらす。KOH溶液を添加する間にpH値は電気化学測定の連鎖によって検査され、KOH溶液の添加は、得られた生成物が有利な性質を再現可能に示すように添加される量に関して調節されてもよい。
【0011】
上に記載された特別な実施形態に従ってフラックスとして同様に使用可能な生成物および/または火炎はんだ付けのための生成物として、相当するCsOH溶液の添加によってCs1-3AlF4-6、相当するNaOH溶液の添加によってNa1-3AlF4-6、および相当するLiOH溶液の添加によってLi1-3AlF4-6を製造することもまた可能である。そして次に、水酸化物溶液を添加する間にpH値は電気化学測定の連鎖によって検査され、添加は、得られた生成物が有利な性質を再現可能に示すように調節される。
【0012】
さらなる特別な実施形態においてZnOおよびHFの水溶液または懸濁液が製造され、その後、電気化学測定の連鎖によってpHを検証しながらKOH水溶液と混合される。あるいは、ZnO懸濁液を最初に入れ、そしてKF水溶液と混合する。そして次に各場合において第2の溶液を添加する間にpH値は電気化学測定の連鎖によって検査され、添加は、得られた生成物KZnF3が有利な性質を再現可能に示すように調節される。
【0013】
さらなる特別な実施形態においてBaCO3の水溶液または懸濁液をフッ化水素酸と反応させてBaF2をもたらし、そこで反応溶液のpH値が電気化学測定の連鎖によって検査される。
【0014】
さらなる特別な実施形態においてアンモニア水溶液をフッ化水素酸と反応させてNH4F・HFをもたらし、そこで反応溶液のpH値が電気化学測定の連鎖によって検査される。
【0015】
用語「沈殿反応」は、所望の化合物が形成されて、少なくとも部分的にその過程で連続的に反応媒体から固体として沈殿するかまたはさらなる化学的および/または物理化学的操作によって好ましくは開始される化学反応の後に沈殿される化学反応を意味すると理解されなければならない。
【0016】
沈殿反応は、例えば-50℃~250℃の温度範囲で行われてもよい。前記範囲は好ましくは、0℃~100℃、特に好ましくは10℃~90℃の範囲、特に80℃~90℃の範囲、室温で、または周囲温度で行われる。
【0017】
反応媒体が沈殿反応の開始時にフッ化物イオンを含有し、水酸化物イオンが沈殿反応の間に反応媒体に加えられるのが好ましい。同様に、反応媒体が沈殿反応の開始時に水酸化物イオンを含有し、フッ化物イオンが沈殿反応の間に反応媒体に加えられるのが好ましい。
【0018】
反応媒体のpH値は、沈殿反応の過程で少なくとも一度求められる。電気化学測定の連鎖を使用してpH値が連続的にモニタされるのが好ましい。同様に、反応相手を添加するたびにその後におよび/または設定時間において不連続にpH値が求められるのが好ましい。
【0019】
沈殿反応の過程で反応相手のさらなる量の添加は好ましくは、電気化学測定の連鎖を使用して求められるpH値によって制御され、すなわちこのプロセスはいわゆる「閉ループ」プロセスとして行われる。少なくとも1つの反応相手のさらなる添加はこのように反応媒体のpH値によって自動制御される。あるいは、添加は、求められたpH値に従って手作業で達成されてもよい。
【0020】
用語「反応相手」は、反応溶液に添加される反応体を意味すると理解されなければならない。反応相手の添加は混ぜ合わせていない形態で行われてもよく、好ましくは、反応相手は溶液として、特に好ましくは水溶液として添加される。ここで単一化合物が関係していてもよい。あるいは、用語「反応相手」は、少なくとも2つの化合物の混合物を意味すると理解されなければならない。
【0021】
電気化学測定の連鎖によって求められるpH値が2.5~7、好ましくは3.0~5.0、より好ましくは3.5~4.5の値を達成するとすぐに反応相手のさらなる添加を止めるのが同様に好ましい。
【0022】
沈殿反応の過程の反応媒体のpH値の正確なモニタリングは、製造される化合物を精密に調節された化学的および物理化学的性質を有する新規な特性において再現可能に製造することを可能にする。したがって、本発明はさらに、上述の方法によって製造されるフッ素含有化合物に関する。
【0023】
使用される電気化学測定の連鎖は一般的に、筐体内で好ましくは構造的に結合される2つの電極からなる。独国特許第102011113941A1号明細書には、基本的にはフッ化物含有溶液中での測定のためにおよび本発明による方法のために適した電気化学測定の連鎖が記載されている。しかしながら、1つの問題は、独国特許第102011113941A1号明細書においてダイヤフラム14の結果として反応媒体が、電極筐体1によって構成される領域に部分的に浸透する場合があることである。これは、ガス拡散電極8と接触している電解質の成分と反応媒体からの成分との間の化学反応をもたらし得る。これらの化学反応の生成物はその場合には、ダイヤフラム14の遮断をもたらし得る。さらに反応媒体の浸透は、測定値を歪めることがあり得る。したがって、本発明はさらに、少なくとも1つの水素ガス拡散電極7と少なくとも1つの参照電極8とを備える電気化学測定の連鎖に関し、そこでこれらの電極は出口14を有する筐体1内で構成単位を形成することができ、そして筐体1は、参照電極8と接触している参照電解質11と参照電解質11の上の密封ガス空間19とを含む。
【0024】
参照電解質の上の密封ガス空間19は、参照電解質11の特定の量が出口14を通って連続的に流出することと、したがって出口14を通しての測定媒体9の浸透が防止されることとを確実にする。少なくとも、独国特許第102011113941A1号明細書からの測定の連鎖についての上述のような問題はこのように解決され、且つ測定精度が高められる。さらに達成されるのは、出口14を通しての参照電解質11の流出は例えば、ガス空間19中に送られる、ハーメチック密封チャンバ2内のガルバニ電池3において生成されるガス容積によって精密に制御され、その結果、測定媒体9、すなわち例えば本発明に従う方法の反応媒体の汚染が精密に定量されて、したがって最小にされ得ることである。
【0025】
本発明に従う電子測定の連鎖のさらなる利点は、それが非水性媒体中で、例えば有機溶剤中で、および食品産業において使用されるような液体または半液体媒体中でpH値を測定するために使用されてもよいことである。
【0026】
筐体1は有利には、大抵の化学物質に対して不活性である材料から製造される。PTFE、テフロン(登録商標)、PP、FEP、PFA、PEEK、PEおよびPMMAなどのプラスチックが有利である。密封ガス空間19は、筐体1内の参照電解質11の上に配置される。用語「密封された」は、特定の圧力、例えば周囲圧力に比べてわずかに高い圧力が有利には形成されてもよいことを意味すると理解されなければならない。それにもかかわらず、ガス空間19を密封する筐体1の一部分が開口を備えてもよく、しかしながら、それらは測定作業の間封止され、したがって同様にガス空間を密封することは理解されよう。例えば筐体1は、参照電解質を供給するための、充填レベル指示器および/または制御手段のための、過剰圧力弁のためのまたは筐体1内の測定器のための開口を有してもよい。水素ガス拡散電極7は、測定媒体と接触しており、指示電極として機能する。前記電極は、ガス流出開口5および細い内腔6によって、チャンバ2内に配置された例えば独国特許第3532335号明細書に従う少なくとも1つの水素-生成セル3によって水素が提供されてもよい。少なくとも1つの水素-生成セル3が制御された仕方で作動するために前記セルは少なくとも1つの抵抗手段4を通して放電される。密封チャンバ2は、空中酸素の侵入または水素の制御されない漏れを防ぐ。あるいは、水素の制御された量が例えば質量流量制御装置によってチャンバ2に供給されてもよい。電極7に形成された電位は例えばパラジウムワイヤを通ってコンタクト10に送られる。測定された電位差(mV単位)は、pH値への変換のために使用される。電気化学測定の連鎖は有利には、フッ化物濃度が1重量%超、5重量%超、10重量%超またはさらに20重量%超、例えば50重量%であるシステムにおいて使用されてもよい。また、電気化学測定の連鎖は、1重量%超、5重量%超、10重量%超またはさらに20重量%超、例えば50重量%のフッ化物濃度においても信頼性が高い測定結果を提供するこの特徴を有する。信頼性が高い測定結果は特に、測定の連鎖の測定できる攻撃なしに上に記載されたフッ化物濃度および高い温度において、例えば40℃以上、50℃以上、60℃以上またはさらに70℃以上において達成される場合がある。これらの条件下で公知の電気化学測定の連鎖は、特に、工業条件下の化学プロセスでpH値をモニタするための測定の連鎖として作動しないはずがない。測定の連鎖はフッ素含有化合物を製造するための化学沈殿反応において使用されるとき、これらは好ましくは、0℃~100℃の温度、特に好ましくは10℃~90℃の範囲、具体的には80℃~90℃の範囲の温度において、室温において、または周囲温度の範囲で行われる。
【0027】
電気化学測定の連鎖はさらに、参照電解質11と接触している少なくとも1つの参照電極8を含む。電極8において形成された電位は、例えばパラジウムワイヤを通ってコンタクト13に送られる。あるいは、電気化学測定の連鎖は2つ以上の参照電極を含む。少なくとも1つの参照電極がコンタクト13を有する水素ガス拡散電極8またはAgワイヤ18を含むAg/AgCl電極およびコンタクト12を有するAgCl層17であるのが好ましい。水素ガス拡散電極8が特に好ましい。電気化学測定の連鎖が、両方とも参照電解質11と接触している水素ガス拡散電極およびAg/AgCl電極のそれぞれ1つを含むのが同様に好ましい。参照電解質11と測定媒体9との間の電解質接続が出口14を介して形成される。出口14は、1つまたは複数のダイヤフラム、1つまたは複数の環状間隙または1つまたは複数の穴であってもよい。
【0028】
筐体1がそれぞれの接続部16を有するそれぞれの温度センサー15を含み、1つのセンサーが測定媒体と接触しており、1つのセンサーが参照電解質と接触しているのがさらに有利である。ネルンスト式による電気化学測定の連鎖からの測定の評価が可能であるように、全ての関連構成要素(指示電極、参照電極)が可能な限り、できるだけ相違が少なく、特に、公知の温度を有するのがよい。そうでない場合はミリボルト単位の測定された電圧とそれから計算されたpH値との間の著しい偏差が生じ得る。したがって、筐体は有利には、参照電解質11および/または筐体1の温度を調節することができる熱伝達体を含む。最も簡単な場合において熱伝達体は参照電解質11中に浸された加熱コイル、冷却手段(例えばペルチェ素子)または組み合せられた冷却/加熱コイルである。
【0029】
参照電解質は好ましくは少なくとも1つの金属塩の水溶液である。周期表の第一または第二族のハロゲン金属塩の水溶液、例えばKClまたはCsCl水溶液が特に好ましい。
【0030】
筐体1は、存在している参照電解質11の量を示す1つまたは複数の充填レベル指示器を含むのがさらに有利である。充填レベル指示器は、とりわけ、サイトグラスの形態の純粋に光学的な性質、写真-光学的性質、機械的性質、音響的性質または例えば抵抗の測定による電子的性質を有してもよい。したがって参照電解質11の充填レベルは、少なくとも1つの参照電極の除覆が防止されるように充填レベル指示器の結果に従って手作業でまたは自動的に制御されてもよい。
【0031】
参照符号のリスト
1 (棒状)筐体
2 密封チャンバ
3 ガルバニ電池
4 抵抗手段
5 ガス流出開口
6 細い内腔
7 指示電極としての水素ガス拡散電極
8 参照電極としての水素ガス拡散電極
9 測定媒体
10 コンタクト
11 参照電解質
12 Ag/AgCl電極コンタクト
13 水素ガス拡散電極コンタクト
14 出口開口
15 温度センサー
16 電気接続
17 Ag/AgCl参照電極上のAgCl層
18 Ag/AgCl参照電極のAgワイヤ
19 11の上の密封ガス空間
【実施例】
【0032】
作業実施例
実施例1-はんだ付け用フラックスの製造
フッ化水素20重量%を含有するフッ化水素酸の形態のフッ化水素614kgと水酸化アルミニウム(99%純度)550kgとを反応させて、
図1に従う電気化学測定の連鎖を取付けた撹拌反応器内でフルオロアルミン酸を形成する。反応器中の80℃の温度およびKCl水溶液からなる参照電解質11中の50℃の温度において、得られた反応混合物は、550kgのKOHの溶解によって得られたKOH15重量%を含有する水酸化カリウム溶液と混合される。アルミニウムの錯フッ化物の沈殿カリウム塩の懸濁液が形成される。水酸化カリウム溶液を添加する間に電気化学測定の連鎖を使用してpH値を連続的にモニタし、4.0のpH値に達した時に水酸化カリウム溶液の添加を止める。形成された生成物を濾過し、濾過湿潤残留物を570℃のフロー乾燥機内で乾燥させる。記載された方法は、懸濁液の有利な濾過性ならびに得られた生成物のより高い収量および純度をもたらす。この方法はさらに、生産不足にも生産過剰にもならずに非常な正確さでフッ化水素酸および水酸化カリウム溶液の添加を止めることができるので、フッ化水素酸および水酸化カリウム溶液の節減をもたらす。
【0033】
実施例2-はんだ付け用フラックスの製造
フッ化水素50重量%を含有するフッ化水素酸の形態のフッ化水素614kgと水酸化アルミニウム(99%純度)550kgとを反応させて、撹拌反応器内でフルオロアルミン酸を形成する。撹拌反応器は
図1に従う電気化学測定の連鎖を備えているバイパスを取付けられており、それを通してポンプによって反応混合物が撹拌反応器から取り出され、
図1に従う前記電気化学測定の連鎖によって測定した後に撹拌反応器に戻される。バイパス中および撹拌反応器中の80℃の温度においてならびにKCl水溶液からなる参照電解質11中の50℃の温度において、得られた反応混合物は、550kgのKOHの溶解によって得られたKOH15重量%を含有する水酸化カリウム溶液と混合される。アルミニウムの錯フッ化物の沈殿カリウム塩の懸濁液が形成される。水酸化カリウム溶液を添加する間に電気化学測定の連鎖を使用してpH値を連続的にモニタし、4.5のpH値に達した時に水酸化カリウム溶液の添加を止める。形成された生成物を濾過し、濾過湿潤残留物を570℃のフロー乾燥機内で乾燥させる。記載された方法は、懸濁液の有利な濾過性ならびに得られた生成物のより高い収量および純度をもたらす。この方法はさらに、生産不足にも生産過剰にもならずに非常な正確さでフッ化水素酸および水酸化カリウム溶液の添加を止めることができるので、フッ化水素酸および水酸化カリウム溶液の節減をもたらす。バイパスの使用はさらに、
図1に従う電気化学測定の連鎖の構造を著しくより小さくする。