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特許7123795曲面状ホログラフィック光学素子のためのシステム、デバイス、及び方法
<図1>
  • 特許-曲面状ホログラフィック光学素子のためのシステム、デバイス、及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】曲面状ホログラフィック光学素子のためのシステム、デバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/04 20060101AFI20220816BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20220816BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20220816BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
G03H1/04
G02B5/32
G02C7/02
G02B27/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018531399
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 US2016067246
(87)【国際公開番号】W WO2017106692
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】62/268,892
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514288314
【氏名又は名称】ノース インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NORTH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス アール. モリソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マホーン
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第94/014098(WO,A1)
【文献】特開平08-053023(JP,A)
【文献】特開昭63-030882(JP,A)
【文献】特開平10-236230(JP,A)
【文献】特開平11-143342(JP,A)
【文献】特開2010-271526(JP,A)
【文献】特開2007-286472(JP,A)
【文献】特開平10-301055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00-5/00
G02B 5/32
G02C 7/02
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)を製作する方法であって、
前記曲面状HOEは眼鏡レンズとして用いられ、
前記曲面状HOEは全屈折力Pを有し、
前記ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することと、
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することであって、前記ホログラムは前記曲面状HOEの前記全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pを有することと、
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することであって、前記曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは寸法形状屈折力Pを前記ホログラフィックフィルムに適用することを含み、前記寸法形状屈折力Pは前記曲面状HOEの前記全屈折力Pより小さく、且つ、前記曲面状HOEの前記全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられる前記ホログラフィック屈折力Pと前記寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含むことと、を含み、
前記曲面状HOEの前記全屈折力Pは全焦点距離fを有する正であり、
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状に位置決めされ、配向される間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、正のホログラフィック屈折力P及び前記曲面状HOEの前記全焦点距離fより大きい第1の焦点距離fを有するホログラムを光学的に記録することを含み、
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、第2の焦点距離fを有する正の寸法形状屈折力Pを前記ホログラフィックフィルムに適用することを含み、前記第2の焦点距離fは前記曲面状HOEの前記全焦点距離fより大きく、且つ、前記曲面状HOEの前記全焦点距離fは、1/f=1/f+1/fによって少なくとも近似的に与えられる前記第1の焦点距離fと前記第2の焦点距離fとの加法逆組み合わせを含む、
方法。
【請求項2】
前記ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することは、前記ホログラフィックフィルムを平面上に取り付けることを含み、
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、前記ホログラフィックフィルムが前記平面上に取り付けられる間に前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含み、方法は更に、
前記曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用する前に前記ホログラフィックフィルムを前記平面から除去することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを曲面上に取り付けること又は前記ホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含み、前記第1の波長は前記曲面状HOEの再生波長とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを伸長させることを含み、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することは、前記曲面状HOEの前記再生波長より小さい第1の波長を有する前記第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを圧縮することを含み、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することは、前記曲面状HOEの前記再生波長より大きい第1の波長を有する前記第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の入射角で第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含み、前記第1の入射角は前記曲面状HOEの再生入射角とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
全屈折力Pを有する曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)であって、
前記曲面状HOEは眼鏡レンズとして用いられ、
少なくとも1つのホログラムを含むホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層を備え、
前記少なくとも1つのホログラムは前記曲面状HOEの前記全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pを有し、
ホログラフィックフィルムの前記少なくとも1つの曲面層は、前記曲面状HOEの前記全屈折力Pより小さい寸法形状屈折力Pを有し、前記曲面状HOEの前記全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられる前記少なくとも1つのホログラムの前記ホログラフィック屈折力Pとホログラフィックフィルムの前記少なくとも1つの曲面層の前記寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含み、
前記曲面状HOEの前記全屈折力P は正であり、全焦点距離f を含み、
前記少なくとも1つのホログラムの前記ホログラフィック屈折力P は正であり、前記曲面状HOEの前記全焦点距離f より大きい第1の焦点距離f を有し、
ホログラフィックフィルムの前記少なくとも1つの曲面層の前記寸法形状屈折力P は正であり、前記曲面状HOEの前記全焦点距離f より大きい第2の焦点距離f を有し、且つ、前記曲面状HOEの前記全焦点距離f は、1/f =1/f +1/f によって少なくとも近似的に与えられる前記第1の焦点距離f と前記第2の焦点距離f との加法逆組み合わせを含む、
曲面状ホログラフィック光学素子。
【請求項9】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)を製作する方法であって、
前記曲面状HOEは眼鏡レンズとして用いられ、
前記ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することと、
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することであって、前記第1の波長は前記曲面状HOEの再生波長とは異なることと、
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することと、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを伸長させることを含み、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することは、前記曲面状HOEの前記再生波長より小さい第1の波長を有する前記第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを圧縮することを含み、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することは、前記曲面状HOEの前記再生波長より大きい第1の波長を有する前記第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に前記曲面状HOEの全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pで前記ホログラムを光学的に記録することを含み、
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記曲面状HOEの前記全屈折力Pより小さい寸法形状屈折力Pを前記ホログラフィックフィルムに適用することを含み、前記曲面状HOEの前記全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられる前記ホログラフィック屈折力Pと前記寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することは、前記ホログラフィックフィルムを平面上に取り付けることを含み、
前記ホログラフィックフィルムが前記平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、前記ホログラフィックフィルムが前記平面上に取り付けられる間に前記第1の波長を有する前記第1のレーザにより前記ホログラフィックフィルムに前記ホログラムを光学的に記録することを含み、方法は更に、
前記曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用する前に前記ホログラフィックフィルムを前記平面から除去することを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項14】
曲率を前記ホログラフィックフィルムに適用することは、前記ホログラフィックフィルムを曲面上に取り付けること又は前記ホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本システム、デバイス、及び方法は、一般に、曲面状ホログラフィック光学素子に関し、特に、曲面状ホログラムを生成する方法並びに曲面状ホログラムを用いるシステム及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイ
ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの頭部に装着され、そのように装着されている場合、ユーザの頭部の位置又は配向に関わらず、少なくとも1つの電子ディスプレイをユーザの眼の少なくとも1つの可視界内部に固定する電子デバイスである。ウェアラブルヘッドアップディスプレイは、ユーザが表示された内容を見ることを可能にするが、ユーザが彼らの外部環境を見ることができることを妨げないヘッドマウントディスプレイである。ウェアラブルヘッドアップディスプレイの「表示する」内容は、それが、ユーザが彼らの外部環境を見ることができることを完全に妨害しないように、透明か、ユーザの視野の周囲にあるかのどちらか一方である。ウェアラブルヘッドアップディスプレイの例は、幾つか挙げると、Google Glass(登録商標)、Optinvent Ora(登録商標)、Epson モベリオ(Moverio)(登録商標)、及びSony グラストロン(Glasstron)(登録商標)を含む。
【0003】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学性能は、その意匠において重要な要因である。しかし、それが顔に装着するデバイスとなると、ユーザは美的感覚についても多くを考慮する。これは、広大な(サングラスを含む)眼鏡フレーム産業によって明らかに強調されている。それらの性能限界とは関係なく、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの多くの前記例は、少なくとも部分的に、それらがファッションへのアピールを欠いているため、消費者市場における牽引力を見出そうと奮闘している。今日までに発表された大多数のウェアラブルヘッドアップディスプレイは、大型のディスプレイコンポーネントを採用しており、結果として、今日までに発表された大多数のウェアラブルヘッドアップディスプレイは、従来の眼鏡フレームよりも相当にかさばり、洗練されていない。
【0004】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイの意匠における挑戦は、顔に装着する装置の大きさを最小化しつつも、表示される内容を十分な表示品位で提供することにある。当該技術において、ユーザの外部環境を見る彼らの能力を制限することなく、高品質画像をユーザに提供することができる、より美的にアピールする意匠のウェアラブルヘッドアップディスプレイに対するニーズが存在している。
【0005】
フォトポリマー
フォトポリマーは、光に曝露される場合にその物理的性質のうちの1つ以上を変化させる材料である。変化は構造的及び/又は化学的を含む異なる方法で現れてもよい。フォトポリマー材料は、多くの場合、その内部又は上にホログラムが記録されるフィルム又は媒体としてホログラフィにおいて用いられる。例えば、フォトポリマーフィルムは、表面レリーフパターンをフォトポリマーフィルム内/上に形成するよう光の特定の干渉パターンで制御可能に曝露/照明されてもよく、表面レリーフパターンは照明光の光度/位相パターンに一致している。フォトポリマーフィルムはフォトポリマー材料自体だけを備えていてもよいか、又は、トリアセテート及び/又はポリアミド及び/又はポリイミド等の基板、及び/又は固定若しくは脱着自在の保護カバー層のいずれか又は全ての上又はその間に担持されるフォトポリマーを備えていてもよい。フォトポリマーフィルムの多くの例が、Bayer AGからのBayfol(登録商標)HXフィルム等、今日、当該技術において利用可能である。
【0006】
眼鏡レンズ
通常の1つの眼鏡又はサングラスは2つのレンズを含んでおり、それぞれ1つのレンズは、眼鏡/サングラスがユーザの頭部に着用される場合、ユーザのそれぞれの眼の前方に位置決めされる。幾つかの代替の設計において、単一の細長いレンズが2つの別々のレンズの代わりに用いられてもよく、単一の細長いレンズは、眼鏡/サングラスがユーザの頭部に着用される場合、ユーザの両眼の前方に跨がる。この明細書の残りの部分及び添付特許請求項の全体を通して、用語「眼鏡」及び「サングラス」は、特定の文脈が特に必要としない限り、実質的に区別なく用いられる。
【0007】
眼鏡レンズは、1つの眼鏡の主要な光学機能を提供するコンポーネントである。眼鏡レンズは光学的に透明であるが、ある程度の着色を任意選択的に施してもよく、多くの場合(必ずしもではないが)、ある種の屈折力を提供してもよい。眼鏡レンズはガラス若しくはポリカーボネート、CR-39、Hivex(登録商標)、又はTrivex(登録商標)等の非ガラス(例えば、プラスチック)材料から形成されてもよい。
【0008】
眼鏡レンズは、本質的に影響されない光を透過するか、又は、それらを通過する画像に一般的な機能(拡大等)を提供する非処方レンズであってもよい。代替として、眼鏡レンズは、特定の光学機能を透過光に与えることによってユーザの視力の不足を補償する処方レンズ(通常、ユーザ特定の)であってもよい。一般に、眼鏡レンズは一般レンズ(又はレンズ「ブランク」)として開始され、処方が、レンズの外側に面する及び/又は内側に面する表面のどちらか一方若しくは両方の曲率を慎重に成形することによって任意に施されてもよい。レンズの内側に面する表面の曲率を成形することによって処方が施されるのが最も一般的である。
【0009】
一般に、当該技術における眼鏡レンズの大部分は曲面状及び非平面状構造である。この曲率は、所望の光学的特性をそれを通過する光に与えるために用いられ、また、平板状レンズの寸法形状と比較して眼鏡フレームのためのより自然で良好に適合する美的設計も可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)を製作する方法であって、曲面状HOEは全屈折力Pを有することは、ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することと、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することであって、ホログラムは曲面状HOEの全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pを有することと、曲率をホログラフィックフィルムに適用することであって、曲率をホログラフィックフィルムに適用することは寸法形状屈折力Pをホログラフィックフィルムに適用することを含み、寸法形状屈折力Pは曲面状HOEの全屈折力Pより小さく、且つ、曲面状HOEの全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられるホログラフィック屈折力Pと寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含むこととを含むものとして要約されてもよい。ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することは、ホログラフィックフィルムを平面上に取り付けることを含んでいてもよい。ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面上に取り付けられる間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。方法は更に、曲率をホログラフィックフィルムに適用する前にホログラフィックフィルムを平面から除去することを含んでいてもよい。
【0011】
曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを曲面上に取り付けること又はホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよく、第1の波長は曲面状HOEの再生波長とは異なる。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを伸長させることを含んでいてもよく、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、曲面状HOEの再生波長より小さい第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを圧縮することを含んでいてもよく、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、曲面状HOEの再生波長より大きい第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。
【0012】
ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の入射角で第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよく、第1の入射角は曲面状HOEの再生入射角とは異なる。
【0013】
曲面状HOEの全屈折力Pは全焦点距離fを有する正であってもよい。ホログラフィックフィルムが平面寸法形状に位置決めされ、配向される間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、正のホログラフィック屈折力P及び曲面状HOEの全焦点距離fより大きい第1の焦点距離fを有するホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、第2の焦点距離fを有する正の寸法形状屈折力Pをホログラフィックフィルムに適用することを含んでいてもよく、第2の焦点距離fは曲面状HOEの全焦点距離fより大きく、且つ、曲面状HOEの全焦点距離fは、1/f=1/f+1/fによって少なくとも近似的に与えられる第1の焦点距離fと第2の焦点距離fとの加法逆組み合わせを含む。
【0014】
全屈折力Pを有する曲面状HOEは、少なくとも1つのホログラムを含むホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層を含むものとして要約されてもよく、少なくとも1つのホログラムは曲面状HOEの全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pを有し、ホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層は、曲面状HOEの全屈折力Pより小さい寸法形状屈折力Pを有し、曲面状HOEの全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられる少なくとも1つのホログラムのホログラフィック屈折力Pとホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層の寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含む。曲面状HOEの全屈折力Pは正であり、全焦点距離fを含んでいてもよい。少なくとも1つのホログラムのホログラフィック屈折力Pは正であり、曲面状HOEの全焦点距離fより大きい第1の焦点距離fを有していてもよい。ホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層の寸法形状屈折力Pは正であり、曲面状HOEの全焦点距離fより大きい第2の焦点距離fを有してもよく、曲面状HOEの全焦点距離fは、1/f=1/f+1/fによって少なくとも近似的に与えられる第1の焦点距離fと第2の焦点距離fとの加法逆組み合わせを含む。
【0015】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを製作する方法は、ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することと、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することであって、第1の波長は曲面状HOEの再生波長とは異なることと、曲率をホログラフィックフィルムに適用することとを含むものとして要約されてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを伸長させることを含んでいてもよく、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、曲面状HOEの再生波長より小さい第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを圧縮することを含んでいてもよく、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、曲面状HOEの再生波長より大きい第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。
【0016】
ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に曲面状HOEの全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pでホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、曲面状HOEの全屈折力Pより小さい寸法形状屈折力Pをホログラフィックフィルムに適用することを含んでいてもよく、曲面状HOEの全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられるホログラフィック屈折力Pと寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含んでいてもよい。
【0017】
ホログラフィックフィルムを平面寸法形状で位置決めし、配向することは、ホログラフィックフィルムを平面上に取り付けることを含んでいてもよい。ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面上に取り付けられる間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。方法は更に、曲率をホログラフィックフィルムに適用する前にホログラフィックフィルムを平面から除去することを含んでいてもよい。曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを曲面上に取り付けること又はホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0018】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備えるHOEを製作する方法は、ホログラフィックフィルムの第1の層を平面寸法形状で提供することと、ホログラフィックフィルムの第1の層を伸長させることと、ホログラフィックフィルムの第1の層が伸長される間にホログラフィックフィルムの第1の層にホログラムを光学的に記録することと、ホログラフィックフィルムの第1の層を非伸長状態に戻すことと、を含むものとして要約されてもよい。ホログラフィックフィルムの第1の層を伸長させることは、ホログラフィックフィルムの第1の層を曲面上に取り付けることを含んでいてもよい。方法は更に、再生のためにホログラフィックフィルムの第1の層を曲面上に取り付けること、又は、再生のためにホログラフィックフィルムの第1の層を曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。再生のためにホログラフィックフィルムの第1の層を曲面上に取り付けることは、曲面上のホログラフィックフィルムの第1の層の平面と直角な方向にホログラフィックフィルムの第1の層を伸長させることを含んでいてもよい。
【0019】
方法は更に、ホログラフィックフィルムの第2の層を平面寸法形状で提供することと、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層の両方がそれぞれ、それぞれの非伸長状態にある間にホログラフィックフィルムの第1の層からのホログラムをホログラフィックフィルムの第2の層において複製することと、再生のためにホログラフィックフィルムの第2の層を曲面上に取り付けること、又は、再生のためにホログラフィックフィルムの前記第2の層を曲面状体積内部に埋め込むことのうちの少なくとも1つとを含んでいてもよい。再生のためにホログラフィックフィルムの第2の層を曲面上に取り付けることは、曲面上のホログラフィックフィルムの第2の層の平面と直角な方向にホログラフィックフィルムの第2の層を伸長させることを含んでいてもよい。
【0020】
曲面状HOEを製作する方法は、ホログラフィックフィルムを第1の表面上に取り付けることであって、第1の表面は透明であり、第1の曲率を有することと、ホログラフィックフィルムが第1の表面上に取り付けられる間にホログラフィックフィルムにホログラムを光学的に記録することとを含むものとして要約されてもよい。方法は更に、ホログラフィックフィルムを第1の表面から除去することと、再生のためにホログラフィックフィルムを第2の表面上に取り付けることであって、第2の表面は第1の曲率と略等しい第2の曲率を有すること、又は、再生のためにホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことであって、曲面状体積は第1の曲率と略等しい第2の曲率を有することのうちの少なくとも1つとを含んでいてもよい。
【0021】
ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを複製する方法は、ホログラフィックフィルムの第1の層を提供することと、ホログラフィックフィルムの第1の層を第1の表面上に取り付けることであって、第1の表面は第1の曲率を有することと、ホログラフィックフィルムの第1の層が第1の表面上に取り付けられる間にホログラフィックフィルムの第1の層にホログラムを光学的に記録することと、ホログラフィックフィルムの第2の層を提供することと、第1の曲率をホログラフィックフィルムの第2の層に適用することと、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層の両方がそれぞれ第1の曲率を有する間にホログラフィックフィルムの第1の層からのホログラムをホログラフィックフィルムの第2の層に複製することとを含むものとして要約されてもよい。
【0022】
図において、同一の参照番号は、同様の構成要素又は行動を特定している。図中の構成要素の大きさ及び相対位置は、必ずしも正確な縮尺で描かれてはいない。例えば、様々な構成要素の形状及び角度は、必ずしも正確な縮尺で描かれてはおらず、これらの構成要素のいくつかは、図面の見やすさを向上するために任意に拡大され、位置決めされている。更に、図示の構成要素の特定の形状は、必ずしも、特定の構成要素の実際の形状に関する何らかの情報を伝達する意図はなく、図面内での認識の容易さのためだけに選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本システム、デバイス、及び方法による、全屈折力を有し、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)を製作する例示の方法を示すフロー図である。
図2図2は、ホログラフィック屈折力と寸法形状屈折力との間の差、並びに、2つが組み合わさって本システム、デバイス、及び方法による全屈折力を生成する方法を示す説明図である。
図3図3は、本システム、デバイス、及び方法によるホログラフィックフィルムをi)伸長及びii)圧縮させることによって、曲率が対応するホログラフィックフィルムに適用される場合にホログラムを符号化する干渉パターンの要素間の間隔への例示的な影響を示す説明図である。
図4図4は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを製作する例示の方法を示すフロー図である。
図5図5は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備えるHOEを製作する例示の方法を示すフロー図である。
図6図6は、本システム、デバイス、及び方法による、曲面状HOEを製作する例示の方法を示すフロー図である。
図7図7は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを複製する例示の方法を示すフロー図である。
図8図8は、本システム、デバイス、及び方法による例示の曲面状HOEの断面図である。
図9図9は、本システム、デバイス、及び方法による別の例示の曲面状HOEの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明において、ある特定の詳細を様々な開示する実施形態の完全な理解を提供するために説明する。しかし、当業者は、実施形態が1つ以上のこれらの特定の詳細が無いか、他の方法、構成部品、材料等により実施されてもよいことを認識するであろう。他の例では、ヘッドマウントディスプレイ及び電子デバイスに関連する周知の構造は実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるよう詳細に示されていないか、説明されていなかった。
【0025】
特に文脈で必要としない限り、以下に続く明細書及び特許請求の範囲全体を通して、用語「comprise」並びに「comprises」及び「comprising」等のその変形例は、「以下を含むが、それらに限定されない」のような、オープンで、包括的な意味で解釈されるものとする。
【0026】
本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「実施形態」に対する引用は、特定の特徴、構造、又は特性が、1つ以上の実施形態において何らかの適切な方法で組み合わされてもよいことを意味している。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容で明確に規定しない限り、複数の指示対象を含んでいる。また、用語「又は」は、一般に、内容で明確に規定しない限り、「及び/又は」の意味と同じその最も幅広い意味で用いられることにも注意されたい。
【0028】
本明細書中で提供する見出し及び要約書は、便宜のためだけであり、実施形態の適用範囲又はその意味に解釈しない。
【0029】
本明細書中に説明する様々な実施形態は曲面状ホログラフィック光学素子(「HOE」)のためのシステム、デバイス、及び方法を提供する。当該技術において、HOEは、一般に、平面構造において記録され、再生される。しかし、米国仮特許出願第62/242,844号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/147,638号明細書)、米国仮特許出願第62/156,736号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/145,576号明細書、米国特許出願公開第2016-0327797号明細書、及び米国特許出願公開第2016-0327796号明細書)、及び/又は米国仮特許出願第62/117,316号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/046,234号明細書、米国非仮特許出願第15/046,254号明細書、及び米国特許出願公開第2016-0238845号明細書))において説明されているある特定の用途(例えば、仮想網膜ディスプレイ(「VRD」)アーキテクチャは曲面状HOEの使用に良好に適している。本明細書中に説明する様々な実施形態は、曲面寸法形状で再生されるよう設計されているHOEを光学的に記録し、場合によっては、再現するためのプロセスを提供する。本明細書中に説明する様々な実施形態は、また、かかるプロセスによって用意された曲面状HOEも提供する。
【0030】
従来のHOEは平面上に記録され、再生のために平面構造内に維持される。米国仮特許出願第62/214,600号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/256,148号明細書)は、上で説明したVRDアーキテクチャ等の眼鏡フォームファクタを有するVRDアーキテクチャの透明コンバイナを製作するために、曲面状眼鏡レンズとのHOEの物理的統合のためのシステム、デバイス、及び方法を説明している。曲面状眼鏡レンズとの平面状HOEの物理的統合は、幾つかの実装において、HOE自体に適用される曲率を結果として生じる。この曲率はHOEの光学特性及び再生性能に影響を及ぼすことができる。当該技術において、曲面上又はその内部に実装される場合に設計した方法で実行できるHOE及びHOEを作成する方法に対するニーズが存在する。
【0031】
この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、用語HOEは、概して、その内部及び/又はその上に記録、統合、又はそうでなければ含まれる少なくとも1つのホログラムを具現、符号化、又はそうでなければ含む構造を説明するために用いられる。単一のHOEは、1つ又は複数のホログラムを担持する(ハロゲン化銀又はBayer AGからのBayfol(登録商標)HXフィルム等のフォトポリマーフィルム等の)ホログラフィックフィルムの1つ又は多数の層を含んでいてもよい。当業者は、HOEがハードコーティング、反射防止コーティング、接着剤層等のような他の材料の1つ又は複数の層を含んでいてもよいことを正しく認識するであろう。
【0032】
この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、用語「再生」(及び「再生される」等の変形例)は、概して、記録後にHOEを閲覧、起動、又はそうでなければ光学的に用いるプロセスに言及するために用いられる。同様に、用語「再生光」は、概して、(例えば、ホログラムを記録するために用いられる光である「記録光」ではなくて)再生中にホログラムを起動又は閲覧するために用いられる光に言及するために用いられる。
【0033】
この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、「曲面状ホログラム/HOE」及び「曲面寸法形状で再生されるよう設計されるホログラム/HOE」に対して様々な参照を行う。一般に、ホログラフィックフィルムの層はそれぞれが厚さによって互いから離間された同じ面積を有する2つの面(前面及び後面)を有し、曲面状ホログラム/HOEは、ホログラフィックフィルムの面積(又は両面)が平坦又は平面ではないように、その面積全体にわたって物理的な曲率を有するものである。言い換えれば、平面ホログラフィックフィルムの面がx及びy寸法(すなわち、xy平面)において平面を形成する場合、曲率は面に変化するz寸法も同様に与える。曲率は円筒形又は球形のように均一であってもよいか、若しくは、それは不均一であってもよい。曲面状ホログラム/HOEは曲面寸法形状で再生されるよう設計されてもよいが、曲面寸法形状で再生されるよう設計されるホログラム/HOEは必ずしも常に曲面状である必要はない。例えば、本明細書中に説明する幾つかの実施形態は、平面寸法形状で記録されるが、曲率がホログラム/HOEに対して実質的に適用され、ホログラム/HOEが湾曲している間に再生される場合に生じる効果を構成するよう設計されるホログラム/HOEを提供する。かかるホログラム/HOEは、本明細書中では、「曲面寸法形状で再生されるよう設計される」が、記録中、及び、それが「曲面状ホログラム/HOE」となる時点の曲率がそれらに適用されるまで、その後しばらくの間、平面状態で存在する可能性のあるホログラム/HOEと特徴付けられる。
【0034】
図1は、本システム、デバイス、及び方法による、全屈折力を有し、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを製作する例示の方法100を示すフロー図である。方法100は、3つの行動101、102、及び103を含んでいるが、当業者は、代替の実施形態において、ある特定の行動が省略されてもよく、及び/又は、追加行動が追加されてもよいことを正しく認識するであろう。当業者は、また、図示の順序の行動が、例示的な目的のためだけに示されており、代替の実施形態において変更してもよいことを正しく認識するであろう。
【0035】
101において、ホログラフィックフィルムの少なくとも1つの層が平面寸法形状で位置決めされ、配向される。これは、例えば、平面上にホログラフィックフィルムの少なくとも1つの層を取り付けることによって達成されてもよく、それは、任意の数(ゼロを含む)の中間層と共に平面に対してホログラフィックフィルムを積層、接着、貼付、又はそうでなければ塗着すること(例えば、機械的固定具を用いてホログラフィックフィルムを所定位置に保持すること)を含んでいてもよい。平面は有利に光学的に透明であってもよく、1つ以上の中間層が含まれる場合、かかる層も有利に光学的に透明であるべきである。一実施例として、平面はホログラムの光学的記録に用いることに適した光学的に透明な基板(例えば、プラスチック又はガラス)であってもよい。平面上に取り付けられると、ホログラフィックフィルムは必然的に平面寸法形状にある。平面基板上にホログラフィックフィルムを取り付けることの代替として、ホログラフィックフィルムは、例えば、ホログラフィックフィルムを吊持又は懸吊することによって平面寸法形状に位置決めされ、配向されてもよい。幾つかの実装において、ホログラフィックフィルムは平面寸法形状で既に存在していてもよく、その場合、平面に取り付けることは必要とされなくてもよい。
【0036】
102において、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間(例えば、ホログラフィックフィルムが平面上に取り付けられている間)にホログラフィックフィルムに光学的に記録される。ホログラムは曲面状HOEの全屈折力よりも小さいホログラフィック屈折力を有する。言い換えれば、ホログラムは、再生中に、ホログラムが(ホログラフィック屈折力によって与えられる)光学機能を再生光に施し、再生光を第1の焦点距離における点に集中させてもよいように設計されてもよい。ホログラフィック屈折力が再生光を集中させる点がホログラムの前方又は後方にあるかどうかは、ホログラムの設計によって決まる(すなわち、屈折力が正又は負であるかどうか)。この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、用語「ホログラフィック屈折力」は、概して、再生中にホログラムの干渉パターンによって入射光に与えられる屈折力又は光学機能に言及するために用いられる。
【0037】
103において、曲率が曲面状ホログラフィックフィルムを結果として生じるホログラフィックフィルムに適用される。曲率をホログラフィックフィルムに適用することによって、曲面状HOEの全屈折力よりも小さい寸法形状屈折力がホログラフィックフィルムに適用される。言い換えれば、曲率をホログラフィックフィルムに適用することはフィルムに記録されるホログラムから独立しているホログラフィックフィルム上に「寸法形状屈折力」を与える。再生中、この寸法形状屈折力は再生光を第2の焦点距離における点に集中させてもよい。寸法形状屈折力が再生光を集中させる点がホログラフィックフィルムの前方又は後方にあるかどうかは、ホログラフィックフィルムの湾曲方向によって決まる。この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、用語「寸法形状屈折力」は、概して、ホログラフィックフィルムの寸法形状によって入射光に与えられる屈折力又は光学機能に言及するために用いられる。本システム、デバイス、及び方法のために、ホログラフィック屈折力及び寸法形状屈折力は曲面状HOEの再生中に入射光に与えられてもよい2つの別個の独立した光学機能であるが、しかし、当業者は、その他の点では透明なホログラフィックフィルムの場合、少なくとも1つのホログラムが入射再生光に影響を及ぼし、寸法形状屈折力に任意の効果を持たせるためにホログラフィックフィルムに存在する必要があってもよいことを正しく認識するであろう。
【0038】
曲面状HOEの全屈折力(P)は、以下によって少なくとも近似的に与えられるホログラフィック屈折力(P)及び寸法形状屈折力(P)の加法組み合わせを含む。
=P+P
【0039】
全屈折力Pに向かうホログラフィック屈折力P及び寸法形状屈折力Pの組み合わせは、一般に、上で示したように加法である一方で、語句「少なくとも近似的に」は、曲面状HOEの全屈折力Pに影響を及ぼす可能性のある他の追加要因(例えば、該当する場合、屈折率)を可能にするために用いられている(例えば、P=P+P+x、ここでxは他の全ての潜在的要因の影響を表す包括的な屈折力)。量的に、語句「少なくとも近似的に」は、概して、本明細書中で「プラス又はマイナス10%」と解釈すべきである。
【0040】
同様に、曲面状HOEの全焦点距離(f=1/P)は、以下によって少なくとも近似的に与えられるホログラフィック屈折力に関連する第1の焦点距離(f=1/P)及び寸法形状屈折力に関連する第2の焦点距離(f=1/P)の加法逆組み合わせを含む。
【数1】
【0041】
屈折力同士の組み合わせと同じ方法において、全焦点距離fに向かう第1の焦点距離f及び第2の焦点距離fの組み合わせは、一般に、逆加法であるが、語句「少なくとも近似的に」は、全焦点距離fに影響を及ぼす可能性のある他の追加要因の全て(例えば、入射再生光の収束/発散/視準)に用いられる。
【0042】
103において曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを曲面上に取り付けること(例えば、米国仮特許出願第62/214,600号明細書、現在、米国非仮特許出願第15/256,148号明細書に記載されているようなHOEを曲面状眼鏡レンズと一体化することのような)又はホログラフィックフィルムを曲面状体積内部に埋め込むことを含んでいても、いなくてもよい。一般に、この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、語句「表面上に取り付ける」(及び「表面上に取り付けられる」等の変形例)は、ホログラフィックフィルムと表面との間の任意の統合に言及するために大まかに用いられる。例として、「表面上に取り付ける」は、制限なく、ホログラフィックフィルムを表面に積層、接着、貼付、又はそうでなければ塗着すること、或いは、接着されるか否かの表面によるホログラフィックフィルムの支持を含んでいてもよい。
【0043】
曲面にそれを取り付けることによって曲率をホログラフィックフィルムに適用することに対する代替として、ホログラフィックフィルムは曲面状体積内部に埋め込まれてもよい(米国仮特許出願第62/214,600号明細書、現在、米国非仮特許出願第15/256,148号明細書にも記載されているように)。この場合、曲率は埋め込みプロセスの一部としてホログラフィックフィルムに適用されてもよいか、又は、ホログラフィックフィルムは、曲面状体積に埋め込まれる前に(例えば、ガスフロー、フィルム両面の圧力差、等のようなフィルム形成のための公知の技術を用いて)曲率を具現化するよう形成されてもよい。埋め込み自体は流し込み成形又は射出成形プロセスを採用してもよい。
【0044】
行動101がホログラフィックフィルムを平面に取り付けることに関与する実装において、方法100は、更に、(行動102と103との間において)ホログラフィックフィルムを平面から除去することを含んでもよい。ホログラフィックフィルムを平面から除去することは、ホログラフィックフィルムを平面から層間剥離、切り離し、又は概して係脱することを含んでもよい。
【0045】
従来のホログラム設計において、ホログラムは平面寸法形状で再生されるよう設計されており、寸法形状屈折力は設計要素ではない。本システム、デバイス、及び方法によれば、平面寸法形状で(例えば、102において)記録されるが、曲面寸法形状での再生を意図するHOEは、曲率がHOEに適用される場合に(例えば、103において)HOEの全屈折力に加えられる寸法形状屈折力を補償するよう設計されてもよい。例えば、曲面寸法形状で再生される場合にHOEがXの全屈折力を有することが所望される場合、HOEは、HOEが湾曲している場合に適用される全屈折力への寸法形状寄与を補償するよう、Yのホログラフィック屈折力で記録されてもよい(ここで、Y≠X)。ホログラムのホログラフィック屈折力は、とりわけ、ホログラムを記録するために用いられるレーザ光源のどちらか一方又は両方の間の距離をホログラフィックフィルム自体から変化させることによって制御されてもよい。より詳細には、平面再生のために、ホログラムは平面寸法形状でホログラフィックフィルムにより、及び、それぞれが各点(すなわち、各「構築点」)p及びpに位置決めされるホログラムを記録するために用いられる2つのレーザ(例えば、照明又は物体ビーム及び参照ビーム)により記録されてもよく、ここで構築点pは第1の距離dによってホログラフィックフィルムから離間され、構築点pは第2の距離dによってホログラフィックフィルムから離間される。これは結果として、Pのホログラフィック屈折力を生じる。かかるホログラムを曲面寸法形状での使用のために適合させるために(すなわち、ホログラムが曲面寸法形状で実質的に用いられる場合、導入される寸法形状屈折力Pを構成するために)、構築点p及びpは、ホログラムが曲面寸法形状で再生される場合にホログラフィック屈折力P及び寸法形状屈折力Pの加法組み合わせが所望の全屈折力Pを与えるように、距離d及びdを増加/低減させ、それによってホログラフィック屈折力Pを増加/低減させるために移動されてもよい。
【0046】
図2は、ホログラフィック屈折力と寸法形状屈折力との間の差、並びに、2つが組み合わさって本システム、デバイス、及び方法による全屈折力を生成する方法を示す説明図である。比較のため、図2は、平面HOE211、単純な鏡のように機能するよう設計されたホログラムを有するホログラフィックフィルム212の曲面片、及び、それに適用されるフィルム212の曲率を有する平面HOE211に対応する曲面状HOE213を含んでいる。
【0047】
平面HOE211は、再生中に光を反射し、収束する収束鏡のように機能するホログラフィック屈折力を有するホログラムを含んでいる。平面HOE211に当たる入射再生光は、平面HOE211の前方で第1の焦点距離fにおける第1の焦点221に収束して示されており、この収束は単にホログラフィック屈折力に起因するものである。
【0048】
例示するために、ホログラフィックフィルム212の曲面片は入射再生光を単に反射するホログラムを含んでいる。言い換えれば、曲面状ホログラフィックフィルム212が湾曲していないが、代わりに平面であった場合、曲面状ホログラフィックフィルム212は平面鏡のように作用する。ホログラフィックフィルム212の曲面片は入射再生光に対して凹面曲率を有する。従って、曲面状フィルム212は寸法形状屈折力を有し、それに当たる入射再生光は曲面状フィルム212の前方で第2の焦点距離fにおける第2の焦点222に収束して示されている。この収束は単に寸法形状屈折力に起因するものである。
【0049】
曲面状HOE213は、フィルム212の曲率がそれに適用された後の平面HOE211を表している。言い換えれば、曲面状HOE213は方法100の行動101、102、及び103を含むプロセスによって用意された曲面状HOEを表している。曲面状HOE213は、平面HOE211のホログラフィック屈折力と曲面状フィルム212の寸法形状屈折力との加法組み合わせによって与えられる全屈折力を有するホログラフィックフィルムの少なくとも1つの曲面層を備える。従って、曲面状HOE213に当たる入射再生光は、曲面状HOE213の前方で第3の焦点距離(すなわち、全焦点距離)fにおける第3の焦点223に収束し、ここで曲面状HOE213の全焦点距離f(すなわち、第3の焦点距離)は平面HOE211の第1の焦点距離fと曲面状フィルム212の第2の焦点距離fとの加法逆組み合わせによって与えられる。
【0050】
図1及び方法100に戻ると、102において、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラムをホログラフィックフィルムに光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1の波長を有する第1のレーザによりホログラムをホログラフィックフィルムに光学的に記録することを含んでいてもよい。第1の波長は、103において曲率がホログラフィックフィルムに適用される場合にホログラムを符号化する干渉パターンの寸法形状及び/又は間隔に対して生じる可能性のある変化を補償するために、曲面状HOEの所望の再生波長とは意図的に異なっていてもよい。
【0051】
例えば、103において曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラムを符号化する干渉パターンの少なくとも幾つかの要素間の間隔における増加の原因となってもよいホログラフィックフィルムを伸長させることを含んでいてもよい。再生中、ホログラムは、概して、入射再生光の狭い範囲の波長(すなわち、「再生波長」)、特に、ホログラムを符号化する干渉パターンの要素間の間隔の大きさの範囲に等しいか、その内部にある範囲の波長に反応する(すなわち、それに対して活性化する)。ホログラムを符号化する干渉パターンの要素間の間隔の増加は、ホログラムを記録するために用いられる範囲の波長とは異なる範囲の再生光波長に対してホログラムを反応/活性化させる原因となってもよい。本システム、デバイス、及び方法によれば、仮にホログラムが平面寸法形状で記録されるが、曲率がホログラムを伸長させることによってホログラフィックフィルムに実質的に適用されることがわかっている場合、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが伸長される場合に結果として生じ得る干渉パターンの要素間の間隔の増加を補償するために、目標とする再生波長よりも故意に小さい第1の波長のレーザ光を用いて平面寸法形状で記録されてもよい。
【0052】
同様に、103において曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、ホログラフィックフィルムを圧縮、圧潰、圧搾すること、又はそうでなければ収縮させることを含んでいてもよい。例えば、曲率をホログラフィックフィルムに適用することはホログラフィックフィルムを加熱することに関与してもよく、この加熱はホログラフィックフィルムを収縮させてもよい。この明細書及び添付特許請求の範囲全体を通して、用語「圧縮する」(並びに「圧縮すること」及び「圧縮」等の変形例)は、概して、曲率が適用される場合にホログラフィックフィルムが大きさを縮小する可能性のある全ての手段に言及するために用いられる。かかる圧縮は、ホログラムを符号化する干渉パターンの少なくとも幾つかの要素間の間隔における減少の原因となってもよい。本システム、デバイス、及び方法によれば、仮にホログラムが平面寸法形状で記録されるが、曲率がホログラムを圧縮することによってホログラフィックフィルムに実質的に適用されることがわかっている場合、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが圧縮される場合に結果として生じ得る干渉パターンの要素間の間隔の減少を補償するために、目標とする再生波長よりも故意に大きい第1の波長のレーザ光を用いて記録されてもよい。
【0053】
図3は、本システム、デバイス、及び方法によるホログラフィックフィルムをi)伸長及びii)圧縮させることによって、曲率が対応するホログラフィックフィルムに適用される場合にホログラムを符号化する干渉パターンの要素間の間隔への例示的な影響を示す説明図である。比較のために、図3は、伸長によって適用される曲線を有する同じ平面HOE(すなわち、伸長HOE302)及び圧縮によって適用される曲線を有する同じHOE(すなわち、圧縮HOE303)と共にその平面寸法形状での平面HOE301の図を含んでいる。各図において、ホログラムを符号化する干渉パターンは、図示を容易にするために単純な格子によって表されている。
【0054】
平面HOE301に対して、干渉パターンは要素間で均一な間隔dを有する単純な直角格子である。従って、平面HOE301は、平面HOE301を記録するために用いられたレーザ光の波長と略等しい約dの波長を有する再生光に対して所望されたように再生する。
【0055】
伸長HOE302に対して、平面HOE301からの同じホログラフィックフィルムは、ホログラフィックフィルムを伸長させる(例えば、ホログラフィックフィルムを曲面、凹形又は凸形のどちらか一方の上で又はそれに対して伸長させるか、又はメンブレンとしてフィルム全体にわたる圧力差等のフィルム成形のための他の公知の技術を用いる)ことによって適用される曲率(方法100の103による;すなわち、平面寸法形状でホログラムを記録した後)を有している。この伸長はdからdへの干渉パターンの少なくとも幾つかの要素間の間隔の増加の原因となり、ここでdはdよりも大きい。従って、伸長HOE302は、平面HOE301を記録するために用いられたレーザ光の波長よりも大きい波長約d>dを有する再生光に対して所望されたように再生する。本システム、デバイス、及び方法によれば、伸長HOE302におけるホログラムは、ホログラフィックフィルムが伸長される場合に結果として生じる可能性のある干渉パターン要素間のdからdへの間隔の増加を補償するために、伸長HOE302が伸長される場合に再生のために用いられる光の波長よりも小さい波長を有するレーザ光を用いて、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に光学的に記録されてもよい。
【0056】
圧縮HOE303に対して、平面HOE301からの同じホログラフィックフィルムは、ホログラフィックフィルムを圧縮するか、そうでなければ収縮させる(例えば、ホログラフィックフィルムを曲面、凹形又は凸形のどちらか一方の上で又はそれに対して圧潰する)ことによって適用される曲率(方法100の103による;すなわち、平面寸法形状でホログラムを記録した後)を有している。この圧縮はdからdへの干渉パターンの少なくとも幾つかの要素間の間隔の減少の原因となり、ここでdはdよりも小さい。従って、圧縮HOE303は、平面HOE301を記録するために用いられたレーザ光の波長よりも小さい波長約d<dを有する再生光に対して所望されたように再生する。本システム、デバイス、及び方法によれば、圧縮HOE303におけるホログラムは、ホログラフィックフィルムが圧縮される場合に結果として生じる可能性のある干渉パターン要素間のdからdへの間隔の減少を補償するために、圧縮HOE302が圧縮される場合に再生のために用いられる光の波長よりも大きい波長を有するレーザ光を用いて、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に光学的に記録されてもよい。
【0057】
図4は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを製作する例示の方法400を示すフロー図である。方法400は、3つの行動401、402、及び403を含んでいるが、当業者は、代替の実施形態において、ある特定の行動が省略されてもよく、及び/又は、追加行動が追加されてもよいことを正しく認識するであろう。当業者は、また、図示の順序の行動が、例示的な目的のためだけに示されており、代替の実施形態において変更してもよいことを正しく認識するであろう。
【0058】
401において、ホログラフィックフィルムの少なくとも1つの層が方法100の101で説明したものと略同様の方法で、平面寸法形状で位置決めされ、配向される。例えば、ホログラフィックフィルムの少なくとも1つの層が平面上に取り付けられてもよい。平面はホログラムの光学的記録に用いることに適した光学的に透明な基板(例えば、プラスチック又はガラス)であってもよい。平面上に取り付けられると、ホログラフィックフィルムは必然的に平面寸法形状にある。
【0059】
402において、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルムに光学的に記録される。第1の波長(すなわち、第1の狭帯域範囲の波長)を有する第1のレーザはホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラムを光学的に記録するために用いられ、この第1の波長は曲面状HOEの目的とする再生波長とは意図的に異なる。先に説明したように、記録レーザの第1の波長と再生波長との間の差は、ホログラフィックフィルムが伸長又は圧縮により略湾曲する場合にホログラムを画成する干渉パターンの要素間の間隔に対する物理的変化を補償するよう設計される。
【0060】
403において、曲率がホログラフィックフィルムに適用される。曲率を適用することはホログラムを伸長又は圧縮することを含み、それによって、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状であった間に402において光学的に記録されるホログラムを画成する干渉パターンの少なくとも幾つかの要素間の間隔における変化を生じる原因となる。先に説明したように、曲率をホログラフィックフィルムに適用することがホログラフィックフィルムを伸長させることを含む場合、402においてホログラムを光学的に記録するために用いられるレーザ光の第1の波長は、伸長に起因するホログラム干渉パターンの要素間の間隔の増加を補償するために、曲面状HOEの目的とする再生波長より小さくてもよい。また、先に説明したように、曲率をホログラフィックフィルムに適用することがホログラフィックフィルムを圧縮することを含む場合、402においてホログラムを光学的に記録するために用いられるレーザ光の第1の波長は、圧縮に起因するホログラム干渉パターンの要素間の間隔の減少を補償するために、曲面状HOEの目的とする再生波長より大きくてもよい。
【0061】
方法100でのように、402においてホログラムをホログラフィックフィルムに光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィック屈折力及び第1の焦点距離によりホログラムを光学的に記録することを含んでいてもよい。更に、403において曲率をホログラフィックフィルムに適用することは、第2の焦点距離を有する寸法形状屈折力をホログラフィックフィルムに適用することを含んでいてもよい。前述のように、ホログラフィック屈折力及び寸法形状屈折力は両方とも曲面状HOEの全屈折力より小さくてもよい。曲面状HOEの全屈折力はホログラフィック屈折力及び寸法形状屈折力の加法組み合わせを含んでいてもよい一方で、曲面状HOEの焦点距離は第1の焦点距離及び第2の焦点距離の加法逆組み合わせを含んでいてもよい。
【0062】
波長は、ホログラフィックフィルムにおいてホログラムを符号化、具現化、又はそうでなければ表す干渉パターン内の要素間の間隔に影響を及ぼすことができる記録レーザ光の特性の一例である。かかる特性の別の例は記録レーザ光の入射角である。記録光の入射角がどのくらい正確に干渉パターンにおける要素間の間隔に影響を及ぼす(例えば、ホログラフィックフィルムを伸長/収縮させることから生じる後続の変化を補償する)ことができるかは、特定の実装によって多くが決まる。例えば、記録光の固定波長に対して、ホログラムの干渉パターン内の要素間の間隔は、幾つかの実装において、記録光の入射角が直角から離れて移動するにつれて増加してもよい。従って、曲率をホログラフィックフィルムに適用することがホログラフィックフィルムを伸長させることに関与することになる場合、記録光のためのより急な(すなわち、直角に近い)入射角は、ホログラムが曲率を適用することなく再生されることを意図された場合に用いられるものと比較して、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に用いられてもよい。記録光のためのより急な入射角は、干渉パターン内の要素間のより小さい距離を生じてもよいが、曲率が適用される場合の後続の伸長は、かかる要素を更に分離させて、湾曲する間に再生のための所望の間隔を最終的に生成してもよい。同様に、曲率をホログラフィックフィルムに適用することがホログラフィックフィルムを圧縮することに関与することになる場合、記録光のためのより平坦な(すなわち、直角から遠い)入射角は、ホログラムが曲率を適用することなく再生されることを意図された場合に用いられるものと比較して、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に用いられてもよい。記録光のためのより平坦な入射角は、干渉パターン内の要素間のより大きな距離を生じてもよいが、曲率が適用される場合の後続の圧縮は、かかる要素同士をより近接させて、湾曲する間に再生のための所望の間隔を最終的に生成してもよい。この関係(伸長に対応するよう直角に近づけ、収縮に対応するよう直角から離れた記録)は実装に特有であってもよく、ホログラフィの当業者は、異なる実装(例えば、異なる記録設定及びホログラム特性)が異なる関係であってもよいことを正しく認識するであろう。しかし、方法100に戻ると、一般に、102によるホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラムをホログラフィックフィルムに光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間に第1のレーザにより第1の入射角でホログラムをホログラフィックフィルムに光学的に記録することを含んでいてもよく、第1の入射角は曲面状HOEの再生入射角とは異なる。
【0063】
方法100及び400はそれぞれ、ホログラフィックフィルムが平面寸法形状にある間にホログラフィックフィルム内にホログラムを光学的に記録し、次いでその後に曲率をホログラフィックフィルムに適用することによって曲面状HOEを製作する。曲率はホログラムを記録した後に適用されるため、方法100及び400は、適用される曲率が初期平面ホログラム上にあるという効果を補償する(例えば、収束補償、波長補償)様々な方法を提供する。更に、ホログラムがその内部/その上に記録されると(すなわち、103/403において曲率をホログラフィックフィルムに適用することにおいて)ホログラフィックフィルムを物理的に変形させることは、ホログラムの干渉パターンに悪影響を及ぼす(及びそれによって、ホログラムの再生性能に悪影響を及ぼす)可能性がある。かかる影響を軽減するために、曲率は極めて穏やかに及び/又は緩やかにホログラフィックフィルムに適用される(すなわち、103/403において)ことを確実にし、温度及び圧力等の他の要因を制御することが有利であってもよい。幾つかの実装において、ホログラムの光学的記録後(すなわち、102/402後)であるが、曲率をホログラフィックフィルムに適用(すなわち、103/403において)する前(及び/又はその間)、干渉パターンをホログラフィックフィルム内の所定位置に少なくとも部分的に「凍結」させ、それらの物理的変形を低減するために、ホログラフィックフィルムを冷却することが有利である可能性がある。他の実装において、ホログラムの光学的記録後(すなわち、102/402後)であるが、曲率をホログラフィックフィルムに適用(すなわち、103/403において)する前(及び/又はその間)、それらに物理的変形を印加する前にホログラフィックフィルム及びその内部/その上の干渉パターンの展性を少なくとも部分的に向上させるために、ホログラフィックフィルムを加熱することが有利である可能性がある。
【0064】
本システム、デバイス、及び方法によれば、方法100及び400の代替例は、ホログラフィックフィルムが既に曲面状構成にある間にホログラムを光学的に記録することである。
【0065】
図5は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備えるHOEを製作する例示の方法500を示すフロー図である。方法500は4つの基本行動501、502、503、及び504と、次いで実装によって決まる2つの異なるシナリオへの分岐とを含んでいる。シナリオAは行動501、502、503、及び504に加えて1つの行動505aを備える一方で、シナリオBは行動501、502、503、及び504に加えて3つの行動505b、506b、及び507bを備える。当業者は、代替の実施形態において、ある特定の行動が省略されてもよく、及び/又は、追加行動が追加されてもよいことを正しく認識するであろう。当業者は、また、図示の順序の行動が、例示的な目的のためだけに示されており、代替の実施形態において変更してもよいことを正しく認識するであろう。
【0066】
501において、ホログラフィックフィルムの第1の層が平面寸法形状で提供される。ホログラフィックフィルムは記録されておらず、フィルム内の望ましくない刷りを防ぐために光に曝露されないのが有利である。
【0067】
502において、ホログラフィックフィルムの第1の層が伸長される。ホログラフィックフィルムの第1の層を伸長することは、それがもはや平面ではないように曲率をホログラフィックフィルムに適用することを含んでいてもよく、それはホログラフィックフィルムの第1の層を透明曲面上に取り付けることを含んでいてもよい。ホログラフィックフィルムの第1の層を透明曲面上に取り付けることは、透明な面が方法500で湾曲されるのに対して、透明な面が方法100及び400では平面である明らかな区別と共に(ホログラフィックフィルムが透明平面上に取り付けられる)方法100の行動101及び/又は方法400の行動401に類似する技術を採用してもよい。代替として、ホログラフィックフィルムの第1の層は、圧力差にわたるメンブレンとしてホログラフィックフィルムの第1の層を位置決めすることによって等、フィルム成形/整形のための様々な技法を用いることによって曲率をホログラフィックフィルムの第1の層に適用することを含んでいてもよい。
【0068】
503において、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが502の伸長状態にある間にホログラフィックフィルムの第1の層に光学的に記録される。ホログラムの性質次第で、ホログラフィックフィルムの第1の層が伸長状態にある間(すなわち、ホログラフィックフィルムの第1の層が湾曲している間)にホログラムをホログラフィックフィルムの第1の層に光学的に記録することは、ホログラフィックフィルムが透明曲面上に取り付けられる場合、ホログラフィックフィルムが取り付けられる透明曲面の光学的効果を補償することを必要としてもよい。
【0069】
504において、ホログラフィックフィルムの第1の層は非伸長状態に戻される。ホログラフィックフィルムの第1の層を非伸長状態に戻すことは、502で印加された伸長力を緩和するか、又はそうでなければ取り除くことを含んでいてもよい。仮にホログラフィックフィルムが502において透明曲面上に取り付けられると、504におけるホログラフィックフィルムの第1の層を非伸長状態に戻すことは、透明曲面からホログラフィックフィルムを取り除くこと(例えば、層間剥離すること)を含んでいてもよい。先に説明したように、一旦、関連する干渉パターンを有するホログラムがホログラフィックフィルム内/上に記録されると、物理的変形がホログラムの干渉パターンに与える可能性のあるいずれかの損傷も軽減するために、物理的変形をそれらに印加する(すなわち、502及び503の伸長状態から504の非伸長状態へ戻す)前にホログラフィックフィルムを冷却/加熱する(実装次第で)ことが有利であってもよい。
【0070】
行動504の後、HOEは非伸長の平面寸法形状にあるが、HOEが伸長及び/又は曲面寸法形状にあった間に記録されたホログラムを担持している。すなわち、HOEは平面で、伸長されていないが、ホログラムは、HOEが湾曲され、伸長されている間に再生されるよう設計されている。504から、方法500は、ホログラフィックフィルムの第1の層がそれ自体再生されるか(シナリオA)、又は、ホログラフィックフィルムの第1の層がホログラム複製技術を用いて1つ以上のコピーを生成するために原型として用いられるか(シナリオB)どうか次第で、2つの方向のうちの1つに進む。
【0071】
ホログラフィックフィルムの第1の層がそれ自体再生される場合(シナリオA)、方法500は行動504から行動505aに進む。
【0072】
505aにおいて、ホログラフィックフィルムの第1の層は再生のために曲面上に取り付けられるか、又は再生のために曲面状体積内部に埋め込まれる。曲面/曲面状体積は、その上又はその内部でHOEがその曲面寸法形状で用いられることを意図するいかなる曲面/曲面状体積であってもよい。一例として、曲面/曲面状体積は、先に説明したようなVRDアーキテクチャでの眼鏡レンズの表面/体積であってもよい。曲面が眼鏡レンズの表面である場合、曲面は眼鏡レンズの内面(通常、凹面の曲率)又は外面(通常、凸面の曲率)であってもよい。ホログラフィックフィルムの第1の層を曲面上に取り付けること及び/又はホログラフィックフィルムの第1の層を曲面状体積内部に埋め込むことは、例えば、米国仮特許出願第62/214,600号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/256,148号明細書)に記載されている技術を含んでいてもよい。ホログラフィックフィルムの第1の層を曲面上に取り付けること又はホログラフィック材料の第1の層を曲面状体積内部に埋め込むことは、方法500の502において先に生成され、503においてホログラムの光学的記録中に用いられた略同じ寸法形状を生成するために、ホログラフィックフィルムの第1の層の平面に垂直な方向で曲面上又は曲面状体積内部にホログラフィックフィルムの第1の層を伸長させることを含んでいてもよい。
【0073】
ホログラフィックフィルムの第1の層がホログラム複製技術を用いて1つ以上のコピーを生成するために原型として用いられる場合(シナリオB)、方法500は行動504から行動505b、506b、及び507bに進む。
【0074】
505bにおいて、ホログラフィックフィルムの第2の層が平面寸法形状で提供される。ホログラフィックフィルムの第2の層は記録されておらず、フィルム内の望ましくない刷りを防ぐために光に曝露されないのが有利である。
【0075】
506bにおいて(「506番の行動」がシナリオBにおいてのみ実行されることを明確にするために、対応する「506a」が存在しないのにもかかわらず、「b」という表示を保持する)、ホログラフィックフィルムの第1の層からのホログラムは、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層の両方がそれぞれの非伸長状態にある間、ホログラフィックフィルムの第2の層において複製される。この複製は、ホログラムの性質によって表面レリーフホログラム又は体積ホログラムのどちらか一方を複製するための確立された技術を用いて完成される。一般に、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層は共に押圧され、ホログラフィックフィルムの第1の層からのホログラムは、ホログラフィックフィルムの第2の層に物理的/機械的のどちらか一方でエンボス、デボス、スタンプ加工され、又はそうでなければ刻印され、及び/又は、ホログラフィックフィルムの第1の層内のホログラムはマスクのように作用してもよく、略同じ干渉パターンがホログラフィックフィルムの第1の層を介してホログラフィックフィルムの第2の層に光学的に記録されてもよい。
【0076】
507bにおいて(同様に、「507番の行動」がシナリオBにおいてのみ実行されることを明確にするために、対応する「507a」が存在しないのにもかかわらず、「b」という表示を保持する)、ホログラフィックフィルムの第2の層が、方法500のシナリオAの下の505aにおいてホログラフィックフィルムの第1の層のために説明したものと略類似した方法で、再生のために曲面上に取り付けられるか、又は曲面状体積内に埋め込まれる。
【0077】
ホログラフィックフィルムの第1の層が方法500のシナリオBの下でホログラム複製技術を用いて1つ以上のコピーを生成するために原型として用いられる場合、ホログラフィックフィルムの第1の層はホログラム複製技術により任意の数のコピー(すなわち、任意の数の「ホログラフィックフィルムの第2の層」)を生成するために用いられてもよい。
【0078】
図6は、本システム、デバイス、及び方法による、曲面状HOEを製作する例示の方法600を示すフロー図である。方法600は、2つの基本行動601及び602並びに2つの任意行動603及び604を含んでいるが、当業者は、代替の実施形態において、ある特定の行動が省略されてもよく、及び/又は、追加行動が追加されてもよいことを正しく認識するであろう。当業者は、また、図示の順序の行動が、例示的な目的のためだけに示されており、代替の実施形態において変更してもよいことを正しく認識するであろう。
【0079】
601において、ホログラフィックフィルムは第1の表面上に取り付けられ、第1の表面は透明であり、第1の曲率を有している。第1の曲率は特定の実装により凹形又は凸形であってもよい。ホログラフィックフィルムは、積層、接着、貼付、機械的支持固定具、静電気、摩擦、締まりばめ、圧力印加点、伸長、圧縮/収縮/圧潰、等を含むがこれらに限定されない様々な異なる技術のいずれかを用いて第1の表面上に取り付けられてもよい。方法600の行動601は、幾つかの実装において、方法500の行動502と略類似していてもよい。
【0080】
602において、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが第1の表面上に取り付けられている間にホログラフィックフィルムに光学的に記録される。言い換えれば、ホログラムは、ホログラフィックフィルムが湾曲されている間にホログラフィックフィルムに光学的に記録される。先に説明したように、透明曲面を介してホログラムを光学的に記録することは、透明曲面の任意の光学的効果(例えば、レンズ効果、屈折効果、等)が考慮され、記録光パターンにおいて補償されることを必要としてもよい。曲面状ホログラムを光学的に記録することは、また、記録光が入射する(及び同様に、再生光が入射する)角度範囲に大きな影響を及ぼすことができ、従って、結果として生じるホログラムがこの潜在的に広い範囲の入射角に対応するよう十分な角度帯域幅を有することを確実にすることが有利である。ホログラム帯域幅はホログラフィックフィルムの材料特性により少なくとも部分的に制御することができる。例えば、ホログラフィックフィルムのより薄い層は、概して、ホログラフィックフィルムのより厚い層よりも広い角度帯域幅を有する。方法600の行動602は、幾つかの実装において、方法500の行動503と略類似していてもよい。
【0081】
幾つかの実装において、601でホログラフィックフィルムが取り付けられ、602でホログラムがホログラフィックフィルムに光学的に記録される第1の表面は、HOEが再生中に最終的に用いられる表面であってもよい。例えば、HOEが先に説明したVRDアーキテクチャ内の曲面状眼鏡レンズ上で用いるためのものである場合、601でホログラフィックフィルムが取り付けられる第1の表面は眼鏡レンズ自体の表面であってもよい。すなわち、601においてホログラフィックフィルムは眼鏡レンズの表面上に取り付けられてもよく、602においてホログラムは、ホログラフィックフィルムが眼鏡レンズの表面上に取り付けられている間に、ホログラフィックフィルムに光学的に記録されてもよい。かかる実装において、方法600は行動602の後に終了する。
【0082】
他の実装において、601でホログラフィックフィルムが取り付けられ、602でホログラムがホログラフィックフィルムに光学的に記録される第1の表面は、602の光学的記録段階のためだけに用いられる一時的な表面であってもよい。かかる実装において、方法600は行動602から行動603及び604に進む。
【0083】
603において、ホログラフィックフィルムは第1の表面から除去される。幾つかの実装において、ホログラムにおいて第1の曲率の保全を容易にするために、第1の表面から除去される前にホログラフィックフィルムの剛性を強化することが有利であってもよい。剛性は、例えば、第1の表面からの除去前にホログラフィックフィルムを冷却すること、及び/又は、硬化剤をホログラフィックフィルムに塗布し、第1の表面からホログラフィックフィルムを除去する前にこの硬化剤を硬化/固定することによって強化されてもよい。他の実装において、ホログラフィックフィルムは、603で第1の表面から除去される場合に略平面構成に戻ってもよい。
【0084】
604において、ホログラフィックフィルムは再生のために第2の表面上に取り付けられるか、又は曲面状体積内部に埋め込まれ、第2の表面/曲面状体積は第1の曲率と略等しい第2の曲率を有する。ホログラフィックフィルムは、(方法600が行動602を超えて行動603及び604に進む場合の実装において)601でホログラフィックフィルムが第1の表面上に一時的に取り付けられ、604でホログラフィックフィルムが第2の表面上に恒久的に取り付けられるという顕著な区別と共に、601でホログラフィックフィルムが第1の表面上に取り付けられる方法と略類似した方法で604において第2の表面上に取り付けられてもよい。603における第1の表面からの除去前に硬化又はそうでなければホログラフィックフィルムの剛性を向上させることは、604における第2の表面上にホログラフィックフィルムを取り付けること又は曲面状体積内部にホログラフィックフィルムを埋め込むことを有利に容易にしてもよい。604でホログラフィックフィルムが取り付けられる/埋め込まれる第2の表面又は曲面は、HOEが再生中に最終的に用いられる表面/体積であってもよい。例えば、HOEが先に説明したVRDアーキテクチャ内の曲面状眼鏡レンズ上又はその内部で用いるためのものである場合、604でホログラフィックフィルムが取り付けられ/埋め込まれる第2の表面又は曲面状体積は眼鏡レンズの表面/体積であってもよい。
【0085】
図7は、本システム、デバイス、及び方法による、ホログラフィックフィルムに記録される少なくとも1つのホログラムを備える曲面状HOEを複製する例示の方法700を示すフロー図である。方法700は、6つの行動701、702、703、704、705、及び706を含んでいるが、当業者は、代替の実施形態において、ある特定の行動が省略されてもよく、及び/又は、追加行動が追加されてもよいことを正しく認識するであろう。当業者は、また、図示の順序の行動が、例示的な目的のためだけに示されており、代替の実施形態において変更してもよいことを正しく認識するであろう。
【0086】
701において、ホログラフィックフィルムの第1の層が提供される。ホログラフィックフィルムの第1の層は記録されておらず、フィルム内の望ましくない刷りを防ぐために光に曝露されないのが有利である。
【0087】
702において、ホログラフィックフィルムの第1の層は第1の表面上に取り付けられ、第1の表面は透明であり、第1の曲率を有している。方法700の行動702は方法600の行動601及び/又は方法500の行動502と略類似していてもよい。
【0088】
703において、ホログラムは、ホログラフィックフィルムの第1の層が第1の表面上に取り付けられている間にホログラフィックフィルムの第1の層に光学的に記録される。すなわち、ホログラムは、ホログラフィックフィルムの第1の層が透明曲面上に取り付けられている間にホログラフィックフィルムの第1の層に光学的に記録される。方法700の行動703は方法600の行動602及び/又は方法500の行動503と略類似していてもよい。
【0089】
704において、ホログラフィックフィルムの第2の層が提供される。ホログラフィックフィルムの第2の層は記録されておらず、フィルム内の望ましくない刷りを防ぐために光に曝露されないのが有利である。
【0090】
705において、第1の曲率(すなわち、ホログラフィックフィルムの第1の層が取り付けられる第1の表面の曲率)がホログラフィックフィルムの第2の層に適用される。第1の曲率は、例えば、第1の曲率と略類似した曲率を有する第2の表面上にホログラフィックフィルムの第2の層を取り付けることによって、第1の表面上又は第1の表面を含む同じ構造の第2の表面であって、同じ構造上で第1の表面と対向する第2の表面上のどちらか一方にホログラフィックフィルムの第1の層上又はその下のホログラフィックフィルムの第2の層を取り付けることによって、若しくは、第1の曲率と略類似した曲率を有する曲面状体積内部にホログラフィックフィルムの第2の層を埋め込むことによって、ホログラフィックフィルムの第2の層に適用されてもよい。幾つかの実装において、ホログラフィックフィルムの第1の層は、方法600の603で説明したものと略類似した方法で第1の表面から除去されてもよく、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層は、第1の曲率を保持する表面又は構造上で組み合わされてもよい。
【0091】
706において、ホログラフィックフィルムの第1の層からのホログラムは、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層の両方がそれぞれ第1の曲率を有する間にホログラフィックフィルムの第2の層において複製される。すなわち、ホログラフィックフィルムの平面層を用いて通常採用されるホログラフィック複製のための技術は、ホログラフィックフィルムの2つの略類似した曲面層との使用に適応している。複製は、ホログラフィックフィルムの第1の層及びホログラフィックフィルムの第2の層の両方が第1の曲率を呈している間にホログラムの特徴をホログラフィックフィルムの第1の層からホログラフィックフィルムの第2の層に物理的にコピーするために、機械的/物理的なスタンプ/エンボス/デボス/刻印プロセスを用いてもよく、その場合、従来の平面ホログラム複製プロセスは、第1の曲率を有する曲面プレス/スタンプ、及び/又は、第1の曲率の嵌合する凹形及び凸形バージョンを有する嵌合曲面状「ボウル及びプレス」(例えば、乳鉢及び乳棒)の組み合わせを採用するようなされてもよい。複製は、ホログラフィックフィルムの第1の層がホログラフィックフィルムの第2の層の上/下にあり、ホログラフィックの第1の層におけるホログラムが同じ干渉パターンをホログラフィックフィルムの第2の層に記録するための光学マスクとして機能する光学的記録を用いてもよい。
【0092】
図1、3、4、5、6、及び7は全て、曲面状HOE製品を製作する様々なプロセス(それぞれ、100、300、400、500、600、及び700)を説明しており、そのいずれか又は全ては、一例として、先に説明したVRDアーキテクチャにおいて使用されてもよい。一般に、本明細書中に説明する曲面状HOEを作成/複製するためのプロセスは曲面状HOE製品を製作してもよく、従って、本システム、デバイス、及び方法の適用範囲は、本明細書中に説明する様々な方法(例えば、方法100、方法400、方法500、方法600、及び/又は方法700)の行動を含むプロセスによって用意される曲面状HOE製品を含んでいる。
【0093】
図8は、本システム、デバイス、及び方法による例示の曲面状HOE800の断面図である。曲面状HOE800は、透明基板811の透明曲面820(図8の矢印によって強調される第1の曲率を有する)上に取り付けられるホログラフィックフィルム810の層を含んでおり、方法100、300、400、500、600、及び/又は700のいずれかによって用意されてもよい。図示する実施例において、基板811は眼鏡レンズであり、曲面状HOE800は先に説明したようにVRDアーキテクチャにおいて使用するための透明コンバイナを形成する。
【0094】
図9は、本システム、デバイス、及び方法による別の例示の曲面状HOE900の断面図である。曲面状HOE900は、(図9の矢印によって強調される第1の曲率を有する)曲面状体積911の内部に埋め込まれるホログラフィックフィルム910の層を含んでおり、方法100、300、400、500、600、及び/又は700のいずれかによって用意されてもよい。図示する実施例において、曲面状体積911は眼鏡レンズであり、曲面状HOE900は先に説明したようにVRDアーキテクチャにおいて使用するための透明コンバイナを形成する。曲面状HOE900は全屈折力Pを有する。ホログラフィックフィルム910の埋め込み層は、曲面状HOE900の全屈折力Pより小さいホログラフィック屈折力Pを有する少なくとも1つのホログラムを含んでいる。ホログラフィックフィルム910の層の曲率は、また、曲面状HOE900の全屈折力Pより小さい寸法形状屈折力Pも有している。曲面状HOE900の全屈折力Pは、P=P+Pによって少なくとも近似的に与えられる少なくとも1つのホログラムのホログラフィック屈折力Pとホログラフィックフィルム911の曲面層の寸法形状屈折力Pとの加法組み合わせを含む。
【0095】
曲面状HOE900の全屈折力Pは正であり、全焦点距離fを有する。少なくとも1つのホログラムのホログラフィック屈折力Pは正であり、曲面状HOE900の全焦点距離fより大きい第1の焦点距離fを有する。ホログラフィックフィルム910の曲面層の寸法形状屈折力Pは正であり、曲面状HOE900の全焦点距離fより大きい第2の焦点距離fを有する。曲面状HOE900の全焦点距離fは、1/f=1/f+1/fによって少なくとも近似的に与えられる第1の焦点距離fと第2の焦点距離fとの加法逆組み合わせを含む。
【0096】
本明細書中に説明する様々な実施形態は、曲率を誘導するためにホログラフィックフィルムに対して伸長を施している。かかる伸長は、先に説明したように、ホログラムの角度帯域幅(すなわち、ホログラムが再生する入射角の範囲)に影響を及ぼすことができるホログラフィックフィルムの厚さを変えることができる。本システム、デバイス、及び方法によれば、曲率によってもたらされる厚さの変化が結果としてホログラフィックフィルムの所望の曲面厚さを生じるように、ホログラフィックフィルムの目的とする曲面厚さとは異なるホログラフィックフィルムの平面厚さから開始することによって、曲率がホログラフィックフィルムに適用される場合に生じる可能性がある厚さの変化に適応することが有利であってもよい。例えば、ホログラフィックフィルムが伸長によって湾曲される場合、伸長中に生じる厚さの減少が目的とする曲面厚さを生じるように、ホログラフィックフィルムの平面厚さは目的とする曲面厚さより有利に大きくてもよい。
【0097】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、不定動詞形を頻繁に使用する。例には、「to detect(検出する)」、「to provide(提供する)」、「to transmit(送信する)」、「to communicate(通信する)」、「to process(処理する)」、「to route(ルーティングする)」等を含むが、これらに限定されない。特定の文脈が特に必要としない限り、かかる不定動詞形は、すなわち、「少なくとも検出する」、「少なくとも提供する」、「少なくとも送信する」等のオープンな、包含的な感覚で用いられる。
【0098】
要約書で説明されるものを含む図示の実施形態の上記説明は、開示する精確な形態に対して網羅又は制限する意図は無い。特定の実施形態及び実施例は、実例となる目的のために本明細書中で説明され、種々の同等の修正は、当業者によって認識されるように、開示の精神及び適用範囲から逸脱すること無く行うことができる。様々な実施形態の本明細書中で提供する教示は、上記で概して説明した例示のウェアラブル電子デバイスに限らず、他のポータブル及び/又はウェアラブル電子デバイスに適用することができる。
【0099】
例えば、前記の詳細な説明は、ブロック図、略図、及び実施例を用いることにより、デバイス及び/又はプロセスの様々な実施形態を説明してきた。かかるブロック図、略図、及び実施例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限り、かかるブロック図、フロー図、及び実施例内の各機能及び/又は動作が、幅広いハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、実質的にそれらの組み合わせによって、個々に、及び/又は、総体的に、実装できることは、当業者によって理解されるであろう。一実施形態において、本主題は、特定用途向け集積回路(ASIC)により実装されてもよい。しかし、当業者は、本明細書中で開示した実施形態が、全体又は一部として、1つ以上のコンピュータによって実行される1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で動作する1つ以上のプログラムとして)、1つ以上のコントローラ(例えば、マイクロコントローラ)によって実行される1つ以上のプログラムとして、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、グラフィック処理ユニット)によって実行される1つ以上のプログラムとして、ファームウェアとして、又は実質的な何らかのそれらの組み合わせとして、標準の集積回路において同等に実装できること、及び、回路を設計すること及び/又はソフトウェア及び/又はファームウェアのためのコードを記述することは、本開示の教示を踏まえて、当業者の技能により良好に行われることを認識するであろう。
【0100】
ロジックがソフトウェアとして実装され、メモリに格納される場合、ロジック又は情報は、何らかのプロセッサ関連システム又は方法によって、又は、それに関連して使用するために何らかのプロセッサ読取可能媒体に格納できる。本開示の文脈において、メモリは、コンピュータ及び/又はプロセッサプログラムを含むか、格納する電子的、磁気的、光学的、又は他の物理的デバイス又は手段であるプロセッサ読取可能媒体である。ロジック及び/又は情報は、コンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、又は、命令実行システム、装置、又はデバイスからの命令を取り出し、ロジック及び/又は情報に関連する命令を実行することができる他のシステム等の命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又は、それに関連して使用するために、何らかのプロセッサ読取可能媒体において具現化できる。
【0101】
本明細書の文脈において、「非一時的プロセッサ読取可能媒体」は、命令実行システム、装置、及び/又はデバイスによって、又は、それに関連して使用するために、ロジック及び/又は情報に関連するプログラムを格納できる何らかの構成要素であってもよい。プロセッサ読取可能媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外光、又は半導体システム、装置、又はデバイスであってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ読取可能媒体のより詳細な実施例(限定的リスト)は以下を含む:ポータブルコンピュータディスケット(磁気、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、セキュアデジタル等)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROM、EEPROM、又はフラッシュメモリ)、ポータブルコンパクトディスク読出し専用メモリ(CDROM)、デジタルテープ、及び他の非一時的媒体。
【0102】
上記で説明した様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わされてもよい。本明細書中の特定の教示及び定義と矛盾しない範囲で、Thalmic Labs Inc.が所有し、この明細書内で引用され、及び/又は、出願データシートに挙げられた、米国仮特許出願第62/268,892号明細書、米国仮特許出願第62/242,844号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/147,638号明細書)、米国仮特許出願第62/156,736号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/145,576号明細書、米国特許出願公開第2016-0327797号明細書、及び米国特許出願公開第2016-0327796号明細書)、米国仮特許出願第62/117,316号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/046,234号明細書、米国非仮特許出願第15/046,254号明細書、及び米国特許出願公開第2016-0238845号明細書)、並びに米国仮特許出願第62/214,600号明細書(現在、米国非仮特許出願第15/256,148号明細書)を含むが、これらに限定されない全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許公報は、その全てを引用して本明細書に組み込む。実施形態の態様は、必要であれば、更なる実施形態を提供するために、種々の特許、出願、及び公報のシステム、回路、及び概念を採用するよう変更してもよい。
【0103】
これら及び他の変更は、上記詳細な説明を踏まえて、実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用する用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示する特定の実施形態に制限するものと解釈すべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を受ける均等物の完全な適用範囲と共にすべての可能な実施形態を含むものと解釈すべきである。従って、特許請求の範囲は、開示によって制限されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9