(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】透析装置の漏洩の存在をチェックする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20220816BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61M1/18
A61M1/16 185
(21)【出願番号】P 2018533229
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2016002182
(87)【国際公開番号】W WO2017108196
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】102015016842.8
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】スピッカーマン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゼン ゲルハルト
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-057458(JP,A)
【文献】特開2003-190747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置(D)の半透膜(11)における漏洩の存在について前記透析装置(D)をチェックする方法であって、前記半透膜(11)が、前記透析装置内部空間を少なくとも1つの血液チャンバ(12)と少なくとも1つの透析液チャンバ(10)とに分割し、前記血液チャンバ(12)には前記透析装置の作動時に血液が流れ、前記血液チャンバ(12)は血液側管路システム(BS)及び患者(P)の血管系と流体連通し、前記透析液チャンバ(10)には前記透析装置の作動時において透析液が流れ、前記透析液チャンバ(10)は透析液側管路システム(DS)と流体連通し、前記方法が、
a)前記血液チャンバ(12)又は前記透析液チャンバ(10)から血液及び透析液
を抜いて空にし、空にされていない前記透析液チャンバ又は血液チャンバ(10、12)に血液又は透析液を保持するステップと、
b)ガスによって、前記空にされた血液チャンバ(12)又は空にされた透析液チャンバ(10)において試験圧力を上昇させるステップと、
c)前記空にされた血液チャンバ(12)又は空にされた透析液チャンバ(10)又はこれらとそれぞれ流体連通する前記管路システム(BS、DS)において経時的な圧力低下を測定する、又は前記空にされていない血液チャンバ(12)又は空にされていない透析液チャンバ(10)又はこれとそれぞれ流体連通する前記管路システム(BS、DS)において経時的な圧力上昇を測定する、又は前記空にされていない血液チャンバ(12)又は空にされていない透析液チャンバ(10)又はこれらとそれぞれ流体連通した前記管路システム(BS、DS)において気泡の数もしくは又は気泡の数と相関するパラメータを測定するステップと、を含み、
前記ステップa)~c)は、前記患者(P)の血液処置の後及び前記血液側管路システム(BS)からの前記患者(P)の接続解除の後に実行される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)~c)によるチェックの後、前記チェック時に前記透析装置(D)の前記半透膜(11)に漏洩が検出されなかった場合には、前記透析液側管路システム(DS)の殺菌は実施されない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力の測定は、前記透析液チャンバ(10)、前記透析液側管路システム(DS)、前記血液チャンバ(12)又は前記血液側管路システム(BS
)において実施される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの気泡検出器(9)が、前記血液側管路システム(BS)及び/又は前記透析液側管路システム(DS)に配置され、前記少なくとも1つの気泡検出器(9)は前記血液又は前記透析液中の気泡を測定するように構成され、前記膜(11)の漏洩のチェックは、気泡の数又はこれと相関するパラメータに基づいて実施される、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記気泡の数又はこれと相関するパラメータは、稼動中の血液ポンプ(4)又は稼動中の透析液ポンプで決定される、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)は、前記空にされていないチャンバ(10、12)又は空にされていない管路システム(BS、DS)が閉鎖されている間に実施される、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
透析装置(D)の半透膜(11)における漏洩の存在について前記透析装置(D)をチェックする方法であって、前記半透膜(11)が、前記透析装置内部空間を少なくとも1つの血液チャンバ(12)と少なくとも1つの透析液チャンバ(10)とに分割し、前記血液チャンバ(12)には前記透析装置の作動時に血液が流れ、前記血液チャンバ(12)は血液側管路システム(BS)及び患者(P)の血管系と流体連通し、前記透析液チャンバ(10)には前記透析装置の作動時において透析液が流れ、前記透析液チャンバ(10)は透析液側管路システム(DS)と流体連通し、前記方法が、
a)前記血液チャンバ(12)又は前記透析液チャンバ(10)から血液及び透析液
を抜いて空にし、空にされていない前記透析液チャンバ又は血液チャンバ(10、12)に血液又は透析液を保持するステップと、
b)ガスによって、前記空にされた血液チャンバ(12)又は空にされた透析液チャンバ(10)において試験圧力を上昇させるステップと、
c)前記空にされた血液チャンバ(12)又は空にされた透析液チャンバ(10)又はこれらとそれぞれ流体連通する前記管路システム(BS、DS)において経時的な圧力低下を測定する、又は前記空にされていない血液チャンバ(12)又は空にされていない透析液チャンバ(10)又はこれとそれぞれ流体連通する前記管路システム(BS、DS)において経時的な圧力上昇を測定する、又は前記空にされていない血液チャンバ(12)又は空にされていない透析液チャンバ(10)又はこれらとそれぞれ流体連通した前記管路システム(BS、DS)において気泡の数もしくは又は気泡の数と相関するパラメータを測定するステップと、を含み、
前記ステップa)~c)は、前記患者(P)の血液処置の後及び前記血液側管路システム(BS)からの前記患者(P)の接続解除の後に実行され、
前記試験圧力の上昇は、複数回実施され、経時的な前記試験圧力の低下が限界値を超えていないときに限りステップc)が継続して行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
ステップb)における前記試験圧力の上昇は、環境空気を、前記空にされた血液チャンバ(12)又は透析液チャンバ(10)内へ又はこれらと連通した前記管路システム(LS、DS)に搬送する圧縮機によって実施される、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力発生又は検出された泡の数又はこれと相関する前記パラメータが表示され、及び/又はこれらの測定値の1又は2以上に基づいて、前記膜(11)が漏洩を有するかどうかに関して評価が行われ、前記評価の結果が表示される、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
透析装置(D)の半透膜(11)における漏洩の存在について前記透析装置(D)をチェックする装置であって、少なくとも1つの前記半透膜(11)によって少なくとも1つの血液チャンバ(12)及び少なくとも1つの透析液チャンバ(10)に分割される透析装置(D)と、前記血液チャンバ(12)と流体連通し、前記血液チャンバ(12)及び処置中の患者(P)の血管系と流体連通する少なくとも1つの血液側管路システム(BS)と、前記透析液チャンバ(10)と流体連通する少なくとも1つの透析液側管路システム(DS)と、を備え、前記血液処置中、前記血液は前記血液側管路システム(BS)及び前記血液チャンバ(12)を通って流れ、前記透析液は前記透析液チャンバ(10)及び前記透析液
側管路システム(DS)を通って流れる装置であって、前記装置は、制御ユニットと、前記制御ユニットによって制御され、請求項1から9の何れかに記載の方法のステップを実施するように構成される手段と、を備えている、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記装置は、前記透析液チャンバ(10)、前記透析液側管路システム(DS)、前記血液チャンバ(12)又は前記血液側管路システム(BS)
に間接的に又は直接的に配置される1又は2以上の圧力センサを有し、前記装置は、経時的な前記圧力発生を検出し、これに基づいて前記透析装置(D)の膜(11)の漏洩の存在に関する結論を引き出すように構成される、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記血液又は前記透析液中の気泡を測定するように構成された少なくとも1つの気泡検出器(9)を前記血液側管路システム(BS)及び/又は前記透析液側管路システム(DS)に有し、前記装置は、気泡の数又はこれに相関するパラメータに基づいて前記透析装置(D)の半透膜(11)の耐漏洩性のチェックを実施するように構成される手段を有する、
請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、前記血液チャンバ(12)から血液を抜き、及び/又は前記透析液チャンバ(10)から透析液を抜く手段を有し、前記装置は、血液が抜かれて空にされた前記血液チャンバ(12)又は透析液が抜かれて空にされた前記透析液チャンバ(10)及び任意選択的にこれらと流体連通する前記管路システム(LS、DS)に加圧空気を導入する手段を備える、
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記圧力発生又は検出した泡の数もしくはこれに相関した前記パラメータを表示するように構成される表示手段を有する、及び/又は前記装置は、前記測定値の1又は2以上に基づいて前記膜(11)が漏洩を有するかどうかに関して評価を実施して、前記評価の結果を表示するように構成される評価ユニットを有する、
請求項
9に従属する請求項10に記載の装置。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれか1項に記載の装置を有する、ことを特徴とする透析デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置の内部空間を少なくとも1つの血液チャンバと少なくとも1つの透析液チャンバに分離する透析装置の半透過性膜の漏洩の存在について透析装置をチェックする方法に関し、血液チャンバは、処置中の患者の血管系に接続される血液側管路システムと流体連通し、透析液チャンバは、透析液側管路システムと流体連通して、血液処置中に、血液が、血液側管路システム及び血液チャンバを通って流れ、透析液が、透析液チャンバ及び透析液側管路システムを通って流れるようになっている。
【背景技術】
【0002】
透析装置の膜における、0.5ml/分未満の漏洩速度の微小漏洩は、特に、従来の方法を用いて認識することができない。血液が血液チャンバから出て透析装置の透析液チャンバに、すなわち透析デバイスの透析液側管路システムに移動するときに通過する透析装置の膜における漏洩は、行われている処置の間には確かに問題にはならないが、この漏洩によって、相互汚染又はその後に治療を受ける患者の汚染を防ぐために、後続の人工透析の前に透析デバイスの殺菌が必要になる。
【0003】
血液処置ユニットの流体システムにおいて漏洩を認識することができる方法は、米国特許第6,804,991 B2号から知られている。この方法は、患者処置中の圧力変化の測定に基づいている。
【0004】
国際公開第2013/017236 A1号は、体外血液ホースなどの医療機能デバイスの機能をチェックする方法に関する。この方法は、経時的な圧力上昇及び圧力変化の測定を含む。国際公開第2013/017236 A1号の方法は、患者の処置を開始する前に実行される。
【0005】
米国特許第8,241,237 B2号明細書は、血液導入管路における圧力測定の方法に関する。特殊フィルター装置によって患者の血液と直接接触することから保護されたセンサは、圧力測定に役立つ。血液処置後にセンサの誤動作が特定された場合、センサ又はその欠陥部品が交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,804,991 B2号明細書
【文献】国際公開第2013/017236 A1号
【文献】米国特許第8,241,237 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根本的な目的は、透析装置の膜の漏洩及び特に微小漏洩を特に正確に特定することができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、及び請求項10の特徴を有する装置によって達成される。
【0009】
本発明による方法は、以下のステップ、すなわち、
a)血液又は透析液をそれぞれ抜いて血液チャンバ又は透析液チャンバを空にして、空にされていない透析液チャンバ又は血液チャンバに流体(血液又は透析液)を保持するステップと、
b)空にされた血液チャンバ又は空にされた透析液チャンバにおいて試験圧力を上昇させるステップと、
c)経時的な圧力低下を空にされた血液チャンバ又は空にされた透析液チャンバにおいて、又はこれらとそれぞれ流体連通した管路システムにおいて測定するステップ、
又は圧力上昇を空にされていない血液チャンバ又は透析液チャンバにおいて、又はこれらとそれぞれ流体連通した管路システムにおいて測定するステップ、
又は気泡の数もしくは気泡の数と相関するパラメータを空にされていない血液チャンバ又は空にされていない透析液チャンバにおいて、又はこれらとそれぞれ流体連通した管路システム(BS、DS)において測定するステップと、
を含み、
上記ステップa)~c)は、患者の血液処置の後及び血液側管路システムからの患者の接続解除の後に実行される。
【0010】
従って、本発明によれば、血液チャンバ又は透析液チャンバもしくはこれらとそれぞれ流体連通した総合管路システム、すなわち血液側管路システム又は透析液側管路システムを空にして、このようにして空にされたチャンバ又は管路システムの圧力を上昇させ、次いで経時的な圧力発生を測定することが可能になる。
【0011】
本発明の枠組み内での用語「空にされた」は、流体が空にされた、すなわち、血液が血液チャンバ又は血液側管路システムから完全に又は部分的に除去された、又は透析液が透析液チャンバから又は透析液側管路システムから外に除去されたことに関する。
【0012】
複数形ではない名詞は、必ずしも当該の要素が1つであることを指す訳ではなく、当該要素が複数の場合も含む。
【0013】
従って、最初に、透析装置(血液側又は透析液側)の隔室が空にされ、その後、空気又は別のガスによって充填された側で試験圧力を上昇させ(損傷を受けてない湿潤膜壁は空気を透過しない)、その以降、経時的な圧力発生が観測される。空気中のガスの溶解度に起因して、試験圧力が印加された当該側には僅かな圧力低下が常に存在するが、膜漏洩があると、圧力低下がかなり大きく、及び/又は空にされていない側への気泡の移動が起こる。その後、これらの気泡が気泡検出器を通過して導かれ、これに基づいて又は圧力発生に基づいて、膜の漏洩に関する結論を下すことができる。
【0014】
透析装置の欠陥のある膜を介した泡の移動によって、結果的に、空気充填又はガス充填加圧隔室又はこれらと連通した管路システムにおける空気圧の低下が生じ、液体充填側の圧力上昇が生じる。
【0015】
μmレンジ以上の直径を有する微小漏洩はまた、この手順で透析装置膜において特定することができる。損傷を受けていない透析装置膜はnmレンジの細孔を有し、実質的な差異によって、損傷を受けていない膜と欠陥のある膜の間で圧力挙動が生じるようになる。従って、μmレンジ未満の直径を有する微小漏洩も特定することができる。微小漏洩は、例えば、1μmの数10分の1の直径とすることができる。
【0016】
この試験は、圧力勾配が悪化するので、限られた時間期間でのみ有効である。しかしながら、欠陥のある膜と損傷を受けていない膜との間の圧力発生の差異が極めて大きく、その結果、好ましくは<20sの観測時間で十分である。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、チェック時に透析装置の膜に漏洩が見つからなかった場合には、チェック後に透析液側管路システムの殺菌を実行しないことが可能となる。従って、本発明の大きな利点は、このような場合にこれまで必要とされていた透析液側流体システムの殺菌を省くことができることである。
【0018】
圧力の測定は、一般に、透析液チャンバ、透析液管路システム、血液チャンバ、血液側管路システム、又は複数の前述の位置において実行することができる。
【0019】
透析液チャンバ及び/又はこれと流体連通した管路システムはまた、以下では「透析液側」とも呼ばれ、血液チャンバ及び/又はこれと流体連通した管路システムは、以下では「血液側」とも呼ばれる。
【0020】
本発明の実施形態において、少なくとも1つの気泡検出器が、血液側管路システム及び/又は透析液側管路システムに配置され、血液又は透析液内の気泡を測定するように構成されること、並びに、気泡の数に基づいて又はこれと相関するパラメータに基づいて膜の漏洩のチェックが実行されることが可能になる。空気又は別のガスによって流体が空にされた側に試験圧力が適用される場合、及び透析装置膜が漏洩を有する場合には、空にされた血液側又は透析液側への空気又はガスの移動が起こり、従って、システムのこの側で気泡が生成される。
【0021】
これらの気泡を検出できるようにするために、気泡検出器を使用することができ、単位時間当たりに気泡検出器を通過して導かれる気泡の数を検出する。この目的のために血液ポンプ又は透析液ポンプを作動させ、血液又は透析液及びここに位置する気泡の移動を実現することができる。
【0022】
試験圧力の上昇が複数回実行され、経時的に試験圧力の低下が限界値を超えないときに限り、ステップc)を継続することが考えられる。この手順では、最初に血液側又は透析液側が空にされ、次いで、空にされた血液側又は透析液側に試験圧力を印加して、圧力発生が測定される。空にされていない側(血液側又は透析液側)は、この時間の間は閉鎖されず、例えば、排液管に接続される。単位時間当たりの圧力低下が限界値を超えた場合、試験圧力を再び上昇させ、経時的な圧力低下を測定する。圧力低下が限界値を下回るままであるときに限り、方法はステップc)を継続する。
【0023】
好ましくは、試験圧力の上昇は、空にされた又は空にされることになる血液側又は透析液側に環境空気を搬送する圧縮機によって行われる。
【0024】
本発明によれば、圧力発生又は検出された気泡の数もしくはこれと相関するパラメータを表示すること、及び/又はこれらの測定値の1又は2以上に基づいて、膜が漏洩を有するかどうかに関して評価が行われ、評価結果を表示することが可能になる。後者の場合、最後に使用した透析装置が損傷を受けていないかどうか、及び透析液側の殺菌を省くことができるかどうかをディスプレイによってユーザに直ちに知らせることができる。
【0025】
本発明は更に、膜漏洩の存在について透析装置をチェックする装置に関し、本装置は、少なくとも1つの半透膜によって少なくとも1つの血液チャンバ及び少なくとも1つの透析液チャンバに分割される透析装置と、血液チャンバと流体連通し、血液チャンバ及び処置中の患者の血管系に接続される少なくとも1つの血液側管路システムと、透析液チャンバと流体連通する少なくとも1つの透析液側管路システムとを備え、血液が血液側管路システム及び血液チャンバを通って流れ、透析液が、血液処置中、すなわち透析装置の作動中に透析液チャンバ及び透析液システムを通って流れ、本装置は、少なくとも1つの制御ユニットと、この制御ユニットによって制御され、請求項1から9の何れかに記載の方法のステップを実行するように構成される手段と、を有する。
【0026】
これらの手段は、好ましくは、1又は2以上の弁、ポンプ、及び/又は圧縮機である。
【0027】
本装置は、透析液チャンバ、透析液側管路システム、血液チャンバもしくは血液側管路システム、又は複数の前述の要素に配置される1又は2以上の圧力センサを有すること、並びに本装置は、好ましくは、経時的な圧力発生を検出し、それに基づいて透析装置の漏洩の存在に関する結論を下すように構成されることが考えられる。
【0028】
この目的のために、本装置は、経時的な圧力発生を表示し、及び/又はこの圧力発生が許容可能な範囲にあるか否かに関して評価する表示ユニット及び/又は評価ユニットを有することができる。同じことが、検出された気泡の存在又は数に相応に適用される。
【0029】
本装置は、好ましくは、血液側管路システム及び/又は透析液側管路システムにおいて少なくとも1つの気泡検出器を有し、上記気泡検出器は、流体(血液又は透析液)中の気泡を測定するように構成されている。本装置は更に、気泡の数又はこれに相関するパラメータに基づいて透析装置の膜の耐漏洩性のチェックを実行するように構成された手段を有する。
【0030】
本装置は、血液チャンバから血液を抜くための手段及び/又は透析液チャンバから透析液を抜くための手段、詳細には1又は2以上のポンプ及び/又は圧縮機を有することができる。更に、血液が抜かれて空にされた血液チャンバ又は血液側に、もしくは透析液が抜かれて空にされた透析液チャンバ又は透析液側に加圧空気を導入する手段、詳細には少なくとも1つの圧縮機を設けることができる。
【0031】
本発明は更に、透析デバイスに関し、好ましくは、血液透析、血液濾過、又は血液透析濾過を実行するデバイスに関し、本デバイスは、請求項10から14の何れかに記載の少なくとも1つの装置を有する。
【0032】
本発明の更なる詳細及び利点について、図面に示される実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】透析デバイスの透析液側及び血液側の概略図である。
【
図2】損傷を受けていない透析装置膜及び欠陥のある透析装置膜についての経時的な圧力発生のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
参照記号Dは、好ましくは中空繊維の束によって形成される半透膜11によって透析液チャンバ10及び血液チャンバ12に分割される透析装置を示す。
【0035】
体外血液回路を形成する血液側管路システムBSは、血液チャンバ12と連通している。血液ポンプ40は、透析装置Dの上流側に位置し、クランプK2は、血液側管路システムBSにおいて血液ポンプ40の上流側に位置する。静脈点滴チャンバ30は、透析装置Dの下流側に位置する。静脈クランプK1は、静脈点滴チャンバ30の下流側に配置されている。
【0036】
用語「上流側」及び「下流側」は、作動中の血液ポンプ40による血液の流れの方向に関係し、上記の流れの方向は、図において矢印で示されている。
【0037】
血液側管路システムBSの構成要素を表すホース管路だけではなく、追加の管路22も点滴チャンバ30へ開口している。本方法を実行するため環境から血液側管路システムBSに空気を搬送する圧縮機は、この更なる管路22に位置する。弁V3は、圧縮機20と点滴チャンバ30との間に位置する。参照記号PVは、血液側管路システムの静脈部分に位置する圧力センサを示す。
【0038】
参照番号1及び2は、体外回路の動脈コネクタ及び静脈コネクタを示し、体外回路は、これらコネクタによって患者Pの血管系に接続され又は接続することができる。
【0039】
血液ポンプ40の作動時には、接続された患者に関して、管路41を介して血液を透析装置Dに搬送し、透析装置Dから管路42及び点滴チャンバ30を介して患者に戻す。
【0040】
透析液側管路システムDSは、透析液側上に位置し、管路、詳細にはホース管路を有し、ホース管路によって、デバイスの作動時に透析液が透析液チャンバ10内へ又は透析液チャンバ10から外に案内される。透析液側管路システムDSにおける透析液の移動は、図示しないポンプによって実施される。
【0041】
用語「上流側」及び「下流側」は、作動中の透析液用ポンプによる透析液の流れの方向に関連し、上記流れの方向は、図では矢印によって示されている。新鮮な透析液が管路51を介して透析装置Dに搬送される。使用済みの透析液は、管路52を介して透析装置Dから抽出される。
【0042】
図1から分かるように、それぞれの圧力センサP1及びP2は、透析液側管路システムDSにおいて透析装置の上流側及び下流側に位置する。
【0043】
参照記号Bは、透析装置Dに供給される透析液と透析装置Dら除去される透析液のバランス調整を提供し、供給管路51及び除去管路52と連通したバランス調整システムを概略的に示す。管路51及び52又はバランス調整システムは、弁V4、V5によって遮断することができる。
【0044】
管路53は、透析装置Dから離れて延びる管路52から分岐して、使用済みの透析液用の流出部Aにつながっている。
【0045】
図1から分かるように、管路52を閉鎖することができる弁V2は、透析装置Dと管路52における管路53の分岐部との間に位置する。追加の弁V1が、管路53に配置されている。管路53は、弁V1によって遮断することができる。
【0046】
上述したクランプK1、K2の代わりに、弁又は他の何れかの所望の遮断手段を使用することもできる。クランプの位置も例示的であり、すなわち、クランプは、別の場所又は異なる数で配置することができる。
【0047】
上述した弁V1、V2、V3、V4、V5の代わりに、クランプ又は他の何れかの所望の遮断手段を使用することもできる。弁の位置も例示的であり、すなわち、クランプは、別の場所又は異なる数で配置することができる。
【0048】
以下において、2つの試験シーケンスが例として説明され、これによって、膜11が1又は2以上の漏洩を有するか又は損傷を受けていないかを特定することができる。
【0049】
第1の実施形態では、最初に、血液側の血液が空にされる。
【0050】
クランプK1及びK2が閉鎖される。血液ポンプ40がオフにされる。バランス調整チャンバシステムBは、弁V4、V5を閉鎖することによって遮断される。これは、本実施形態において全ての試験手順に適用される。
【0051】
圧縮機20がオンにされ、弁V3を開放して、弁V1及びV2を開放する。
【0052】
血液側に位置する血液は、空気によって膜11をこえて透析液側に変位する。開いた弁V1(V2)により、血液は、そこから開管路52及び53を通って排液管Aに移動する。
【0053】
圧縮機は、圧力の上昇が圧力センサPVによって特定されるまで、長期間作動状態のままである。
【0054】
その後、圧縮機20がオフにされ、弁V1を閉鎖する。
【0055】
この後、血液が抜かれて空にされた血液側の試験圧力の上昇が始まる。血液ポンプ40は、この目的のためにオフのままであり、バランス調整チャンバシステムBが遮断される。弁V1を閉鎖して弁V2が開放状態のままである間、圧縮機20がオンにされる。血液側の圧力センサPVにて特定の圧力、例えば1250mmHgに到達するまで、長い間圧縮機20はオンのままである。
【0056】
次いで、圧縮機がオフにされ、弁V3を閉鎖し、弁V1を開放する。次に、加圧空気と現在通気又は充填されている血液側の時間当たりの圧力低下が限界値を超えるかどうか、チェックをする。これが当てはまる場合には、この手順が繰り返され、すなわち、圧縮機20がオンされて、弁V3を再び開放する。弁V1を閉鎖して弁V2を開放する。その後、圧縮機がオフされ、弁V3を閉鎖し、弁V1を開放する。次に、経時的な圧力発生を圧力センサPVにて特定する。
【0057】
このプロセスは、血液側の時間当たりの圧力低下が限界値を超えなくなるまで繰り返される。
【0058】
これが当てはまる場合、実際の圧力保持試験が始まる。この目的のために、圧縮機20がオフにされ、弁V3を閉鎖し、弁V1を開放する。バランス調整チャンバシステムBは、遮断されたままである。従って、圧力保持試験は、透析液で充填された透析液側が閉鎖されたとき、すなわち、透析液側の供給管路及び除去管路が遮断されたときに実行される。これによって、透析液側への空気取り入れを透析液側の圧力上昇によって正確に測定することができる。
【0059】
圧縮機20をオフにした後及び弁V1を閉鎖した後、透析液側の圧力発生が、圧力センサP1及び/又はP2によって特定される。フィルターDは、センサP1及びP2によって測定された経時的な圧力上昇が限界値を超えない場合、すなわち透析液側にて測定した圧力上昇が比較的小さい場合に正常な状態と認められる。
【0060】
しかしながら、これが当てはまらない場合、すなわちセンサP1及び/又はP2での圧力の上昇が比較的速い場合、これは、フィルター膜11の漏洩に起因している。従って、透析装置Dの膜が正常な状態であるか又は1又は2以上の漏洩を有するかに関して、透析液側にて測定された圧力上昇の速度から、結論を引き出すことができる。
【0061】
センサP1及びP2によって測定された圧力上昇が同じでない場合、これは液圧装置への空気取り入れを示し、空気取り入れに起因する静圧の圧力差がこの偏差をもたらすようになる。
【0062】
透析液側での圧力上昇の測定の代替として又はこれに加えて、血液側での圧力低下の測定もまた、圧力保持試験時に考えられる。
【0063】
図2は、損傷を受けていない膜の経時的な圧力発生の結果を示し、
図3は、膜が1又は2以上の漏洩を有する欠陥のあるフィルターの経時的な圧力発生の結果を示す。
【0064】
上述のような弁V1の開放及び閉鎖の繰り返しによる血液側の試験圧力の上昇は、時間期間Aで行われ、曲線K1で示される。それぞれの高い値は、閉鎖状態の弁V1を示し、それぞれの低い値は、開放状態の弁V1を示す。
【0065】
曲線K2は、圧力センサPVにて測定した圧力発生を示す。
図2から分かるように、空にされた血液側での空気による圧力上昇は、弁V1及びV2の開放による圧力損失が単位時間当たりの特定の限界値を超えなくなるまで、極めて頻繁に繰り返される。
【0066】
圧力保持試験は、この要件を満たすときにのみセクションBの始めから始まる。これは、透析液を供給することも除去することもできないように、透析液側が排液管A全体に対して閉鎖状態である間に実施される。
【0067】
曲線K3及びK4は、センサP1及びP2にて測定した経時的な圧力発生を示している。
図2から、セクションBの始めからほぼ5分でほぼ50mmHgの範囲で圧力が増大することが分かる。これは、ここで説明される実施形態では許容可能な値であるので、損傷を受けていない、すなわち漏洩のない膜という結論をこれから引き出することができるようになる。
【0068】
対照的に、
図3による測定結果では、センサP1及びP2にて測定した圧力上昇は、セクションBの始めからほぼ5分でほぼ200mmHgの範囲にあり、これは限界値を超えている。この場合、欠陥のある膜と結論付けられる。
【0069】
上記で挙げた値は、当然ながら実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0070】
第2の実施形態は、クランプK1及びK2を閉鎖して血液ポンプ40を停止することによる患者の接続解除から始まる。圧縮機20がオフにされ、弁V3を閉鎖して、血液側が全体的に閉鎖されるようになる。
【0071】
次いで、標準的な排出プログラムによる透析液側の排出は、弁V1及びV2が開放された管路52を通って排液管Aに至る。排出用に通気弁又は圧縮機を管路51に設けることができる。透析液カップリングは、排出プログラム実行時には開放されている。
【0072】
次いで、弁V2を閉鎖し、透析液が抜かれて空にされた透析液側で空気又は別のガスによって試験圧力が上昇する。この圧力上昇は圧縮機によって行われて、所望の試験圧力、例えば1250mmHgにまで達する。圧縮機が停止される。
【0073】
これが達成されるとすぐに、弁V2を閉鎖して、コネクタ1及び2が互いに接続され、閉鎖された血液回路が形成されるようになる。血液ポンプ40を作動させる。
【0074】
例えば、点滴チャンバ30の下流側に配置される気泡検出器9は、稼動中の血液ポンプ40で単位時間当たりの気泡の数を検出する。単位時間当たりの気泡の計数の数が限界値に達していないときに、膜11が損傷を受けていないと認められ、そうでない場合、欠陥のある膜と結論付けられる。
【0075】
代替として、又はこれに加えて、透析液側圧力センサP1及びP2にて圧力が測定される。この圧力測定の結果、更には気泡検出器の測定値は、膜11の完全性の特定に使用することが考えられる。
【0076】
従って、例えば、単位時間当たりの気泡の数が限界値を下回ったままであり、更に透析液側の圧力損失が限界値を超えないときに限り、損傷を受けていない膜と結論付けることが可能である。
【0077】
透析装置における微小漏洩は、本発明によって認識することができる。本プロセスは、患者の接続解除後及び血液処置の実施後に行われる。また、本プロセスによって、透析液側のその後の殺菌なしで相互汚染を回避することができる。