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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20220816BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220816BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24D3/00 320A
B24D11/00 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018539197
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2017033533
(87)【国際公開番号】W WO2018052133
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2016181919
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】赤時 正敏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一則
(72)【発明者】
【氏名】喜多 良夫
(72)【発明者】
【氏名】河井 奈緒子
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-250166(JP,A)
【文献】特開昭61-028573(JP,A)
【文献】特開2005-007520(JP,A)
【文献】国際公開第00/073211(WO,A1)
【文献】特開2000-273443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
B24D 3/00
B24D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨パッドであって、
ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有し、
前記パッド本体が、前記研磨面を構成する部分となっており、
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって前記高分子体に含まれ、且つ、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が200個/cm以上7,000個/cm以下である、研磨パッド。
【請求項2】
前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれる、請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2016-181919号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0003】
被研磨物(ガラス板等)を研磨する研磨パッドとしては、ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成された研磨パッドが用いられている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2007-250166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被研磨物の表面には研磨によってスクラッチと称される線状の傷が生じることがある。近年、研磨パッドを用いた研磨では、このスクラッチを低減することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望点に鑑み、被研磨物にスクラッチが生じ難い研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る研磨パッドは、研磨面を有する研磨パッドであって、
ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有し、
前記パッド本体が、前記研磨面を構成する部分となっており、
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって前記高分子体に含まれ、且つ、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が7,000個/cm以下である。
【0008】
また、本発明の一の局面に係る研磨パッドでは、好ましくは、前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれる。
【0009】
また、本発明の他の局面に係る研磨パッドは、研磨面を有する研磨パッドであって、
ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有し、
前記パッド本体が、前記研磨面を構成する部分となっており、
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって前記高分子体に含まれ、且つ、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれている。
【0010】
また、本発明に係る研磨パッドでは、好ましくは、前記酸化セリウム粒子は、レーザー回折法によって測定される体積基準のメジアン径が、0.80~2.00μmとなって前記高分子体に含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の一実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る研磨パッドについて説明する。
【0013】
第1実施形態に係る研磨パッドは、研磨面を有する。
また、第1実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有する。
また、第1実施形態に係る研磨パッドは、被研磨物としてガラス板を研磨するのに用いられる。
【0014】
前記パッド本体は、研磨パッドの研磨面を構成する部分となっている。
前記高分子体では、酸化セリウム粒子が分散している。
【0015】
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって高分子体に含まれている。
第1実施形態に係る研磨パッドは、酸化セリウム粒子を含有することで、被研磨物たるガラス板の研磨レートを高めることができる。
また、第1実施形態に係る研磨パッドは、酸化セリウム粒子を含有することで、酸化セリウム粒子とポリウレタン樹脂との間に界面ができ、その結果、この界面によってカットレートを高めることができる。すなわち、第1実施形態に係る研磨パッドは、酸化セリウム粒子を含有することにより、ドレス性に優れたものとなる。
【0016】
また、前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることが重要であり、200~6,000個/cmであることが好ましく、1,000~4,000個/cmであることがより好ましく、1,000~2,000個/cmであることが更により好ましい。
言い換えれば、前記酸化セリウム粒子は、30μm以上最大粒子径以下の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることが重要であり、200~6,000個/cmであることが好ましく、1,000~4,000個/cmであることがより好ましく、1,000~2,000個/cmであることが更により好ましい。
前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることにより、高分子体に含まれる比較的大きな酸化セリウム粒子の数が抑制される。その結果、第1実施形態に係る研磨パッドによれば、被研磨物にスクラッチが生じ難くなる。
前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、200個/cm以上であることにより、カットレートを高めやすい、酸化セリウム粒子とポリウレタン樹脂との間の界面が多くできる。その結果、第1実施形態に係る研磨パッドは、ドレス性に優れたものとなる。
【0017】
なお、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の割合は、X線CT装置を用いて求めることができる。なお、該割合(個/cm)の分母部分の体積(cm)は、高分子体の体積を意味する。また、後述するような、高分子体が発泡体である場合でも、該割合(個/cm)の分母部分の体積(cm)は、発泡体たる高分子体の体積を意味する。
具体的には、X線CT装置を用いて、高分子体の測定対象範囲(例えば、0.7mm×1.6mm×1.6mm)2箇所に含まれている、各酸化セリウム粒子の体積を測定し、この体積と同じ体積の真球の直径を各酸化セリウム粒子の直径とすることにより、各酸化セリウム粒子の直径を求める。
次に、高分子体の測定対象範囲2箇所に含まれている、粒径30μm以上の酸化セリウム粒子の数を求める。
そして、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の割合を求める。
【0018】
前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれていることが好ましく、最大粒子径が30~70μmとなって前記高分子体に含まれていることがより好ましく、最大粒子径が40~50μmとなって前記高分子体に含まれていることが更により好ましい。
前記酸化セリウム粒子は最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれていることにより、高分子体に含まれる比較的大きな酸化セリウム粒子の数が抑制される。その結果、第1実施形態に係る研磨パッドによれば、被研磨物にスクラッチがより一層生じ難くなる。
【0019】
なお、前記高分子体に含まれている前記酸化セリウム粒子の最大粒子径は、X線CT装置を用いて求めることができる。
具体的には、X線CT装置を用いて測定する高分子体の測定対象範囲(例えば、30mm(縦)×30mm(横)×1~3mm(厚み)(厚みは、パッド厚さによって適宜調整する))に含まれている、各酸化セリウム粒子の体積を測定し、この体積と同じ体積の真球の直径を各酸化セリウム粒子の直径とすることにより、各酸化セリウム粒子の直径を求める。
そして、前記高分子体に含まれている前記酸化セリウム粒子の最大粒子径を求める。
【0020】
なお、前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれている場合には、前記酸化セリウム粒子は、30~80μmの粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることが好ましく、200~6,000個/cmであることがより好ましく、1,000~4,000個/cmであることが更により好ましく、1,000~2,000個/cmであることが特により好ましい。
【0021】
前記高分子体に含まれている前記酸化セリウム粒子の平均粒子径は、好ましくは7.0~29μm、より好ましくは10~20μm、更により好ましくは10~15μmである。
【0022】
前記高分子体に含まれている前記酸化セリウム粒子の平均粒子径は、X線CT装置を用いて求めることができる。
具体的には、X線CT装置を用いて測定する高分子体の測定対象範囲(例えば、0.7mm×1.6mm×1.6mm)に含まれている、各酸化セリウム粒子の体積を測定し、この体積と同じ体積の真球の直径を各酸化セリウム粒子の直径とすることにより、各酸化セリウム粒子の直径を求める。
なお、X線CT装置を用いて各酸化セリウム粒子の直径を求める際には、装置の空間分解能の関係上、4.0μm未満の粒子は観察できないので、4.0μm以上の粒子のみを測定対象の粒子とする。
そして、酸化セリウム粒子の直径の値を算術平均することにより、前記高分子体に含まれている前記酸化セリウム粒子の平均粒子径を求める。
【0023】
前記X線CT装置としては、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-Iを用いることができる。
【0024】
前記酸化セリウム粒子は、レーザー回折法によって測定される体積基準のメジアン径が、0.80~2.00μmであることが好ましく、0.90~1.50μmであることがより好ましい。
すなわち、レーザー回折法によって測定される、前記高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径は、0.80~2.00μmであることが好ましく、0.90~1.50μmであることがより好ましい。
該メジアン径が0.80μm以上であることにより、酸化セリウムの1次粒子の粒径が大きくなる。その結果、酸化セリウムの1次粒子の比表面積が小さくなり、酸化セリウム粒子の凝集が抑制されるという利点がある。
【0025】
なお、本明細書において、前記メジアン径は、以下のようにして測定することができる。
まず、研磨パッドの高分子体の試料を白金るつぼ内に入れ、前記試料が収容された白金るつぼをバーナーで加熱することにより、前記試料を炭化させる。前記加熱の際、研磨パッドが白金るつぼ外に飛散しないようにする。
次に、電気炉で空気雰囲気下400℃にて、炭化した試料が収容された白金るつぼを28時間加熱することにより、炭化した試料を灰化させ、酸化セリウムを取り出す。
そして、研磨パッドから取り出した酸化セリウムを分散媒(例えば、脱イオン水など)に分散させて、分散液を得る。
その後、分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置による分析に供し、酸化セリウムの体積基準のメジアン径を求める。言い換えれば、分散液中に含まれる酸化セリウムの体積基準の粒度分布をレーザー回折法で求め、この粒度分布から、分散液に含まれる酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径を求める。
そして、「分散液中の酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径」を、「レーザー回折法によって測定される、高分子体に含まれる酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径」とする。
【0026】
前記高分子体は、酸化セリウム粒子を、好ましくは3~40質量%、より好ましくは5~30質量%、更により好ましくは7~24質量%含有する。
【0027】
前記ポリウレタン樹脂は、活性水素化合物と、イソシアネート化合物たるポリイソシアネートとを結合させた樹脂である。
また、前記ポリウレタン樹脂は、活性水素を含む化合物(以下、「活性水素化合物」ともいう。)に由来する第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物(以下、「イソシアネート化合物」ともいう。)に由来する第2の構成単位とを備える。
【0028】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート、ポリイソシアネートポリマーが挙げられる。
【0029】
前記ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0030】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、アニリンとホルムアルデヒドを縮合して得られるアミン化合物を不活性溶媒中でホスゲンと反応させることなどにより得られる粗ジフェニルメタンジイソシアネート(粗MDI)、該粗MDIを精製して得られるジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、及びこれらの変性物などを用いることができ、また、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等を用いることができる。なお、これらの芳香族ジイソシアネートは、単独物で、又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0031】
ジフェニルメタンジイソシアネートの変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0032】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどが用いられる。
【0033】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが用いられる。
【0034】
前記ポリイソシアネートポリマーとしては、ポリオールと、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートの少なくとも何れかのジイソシアネートが結合されてなるポリマー等が挙げられる。
【0035】
前記ポリイソシアネートとしては、その蒸気圧がより低く揮発しにくいことから、作業環境を制御しやすいという点で、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメリックMDI、又はその変性物が好ましい。また、粘度がより低く、取り扱いが容易であるという点で、カルボジイミド変性MDI、ポリメリックMDI、又はこれらとMDIとの混合物が好ましい。
【0036】
前記活性水素化合物は、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を分子内に有する有機化合物である。該活性水素基としては、具体的には、ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、チオール基などの官能基が挙げられ、前記活性水素化合物は、分子中に該官能基を1種のみ有していてもよく、分子中に該官能基を複数種有していてもよい。
【0037】
前記活性水素化合物としては、例えば、分子中に複数のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、分子内に複数の第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物などを用いることができる。
【0038】
前記ポリオール化合物は、ポリオールモノマーや、ポリオールポリマーが挙げられる。
【0039】
該ポリオールモノマーとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコールが挙げられ、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐脂肪族グリコールが挙げられ、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ジオールが挙げられ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0040】
前記ポリオールモノマーとしては、反応時の強度がより高くなりやすく、製造された発泡ポリウレタンを含む研磨パッドの剛性がより高くなりやすく、比較的安価であるという点で、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
【0041】
前記ポリオールポリマーとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオールおよびポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。なお、ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーも挙げられる。
【0042】
詳しくは、前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0043】
前記ポリエステルポリオールとしては、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペートおよびポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。
【0044】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応混合物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物などが挙げられる。
【0045】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0046】
前記ポリオールポリマーとしては、弾性のある発泡ポリウレタンが得られやすいという点で、数平均分子量が800~8000であるものが好ましく、具体的には、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールが好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定した値を意味する。
【0047】
前記ポリアミン化合物としては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0048】
第1実施形態に係る研磨パッドは、上記の如く構成されてなるが、次に、第1実施形態に係る研磨パッドの製造方法について説明する。
【0049】
第1実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有する研磨パッドを作製する。
第1実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、イソシアネート基を分子内に2つ以上液状プレポリマーと、酸化セリウム粒子とを混合して混合液を得ることにより、該混合液中に酸化セリウム粒子を分散させる分散工程と、前記混合液と、活性水素を分子内に2つ以上含む有機化合物とを混合することにより、前記液状プレポリマーを硬化させる硬化工程とを実施する。
第1実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる酸化セリウム粒子の割合が7,000個/cm以下となるように前記分散工程を実施する。
【0050】
前記分散工程において、せん断応力を高くして、液状プレポリマーと、酸化セリウム粒子とを撹拌させることによって、高分子体に含まれる酸化セリウム粒子を小さくすることができる。
また、前記分散工程において、液状プレポリマーと、酸化セリウム粒子との撹拌時間を長くすることによっても、高分子体に含まれる酸化セリウム粒子を小さくすることができる。
【0051】
第1実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に酸化セリウム粒子が含まれるように前記分散工程を実施することが好ましい。
【0052】
前記酸化セリウム粒子の凝集を抑制するという観点から、前記液状プレポリマーの粘度は、1500~3000cpsであることが好ましい。
【0053】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の研磨パッド及びその製造方法について説明する。
尚、第1実施形態と重複する説明は繰り返さない。第2実施形態で特に説明のないものは、第1実施形態で説明したものと同じ内容とする。
【0054】
第2実施形態に係る研磨パッドでは、前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれていることが重要であり、最大粒子径が30~70μmとなって前記高分子体に含まれていることが好ましく、最大粒子径が40~50μmとなって前記高分子体に含まれていることがより好ましい。
前記酸化セリウム粒子は最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれていることにより、高分子体に含まれる比較的大きな酸化セリウム粒子の数が抑制される。その結果、第2実施形態に係る研磨パッドによれば、被研磨物にスクラッチが生じ難くなる。
【0055】
また、前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることが好ましく、200~6,000個/cmであることがより好ましく、1,000~4,000個/cmであることが更により好ましく、1,000~2,000個/cmであることが特により好ましい。
前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、7,000個/cm以下であることにより、高分子体に含まれる比較的大きな酸化セリウム粒子の数が抑制される。その結果、第2実施形態に係る研磨パッドによれば、被研磨物にスクラッチがより一層生じ難くなる。
前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が、200個/cm以上であることにより、カットレートを高めやすい、酸化セリウム粒子とポリウレタン樹脂との間の界面が多くできる。その結果、第2実施形態に係る研磨パッドは、ドレス性に優れたものとなる。
【0056】
第2実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に酸化セリウム粒子が含まれるように前記分散工程を実施する。
第2実施形態に係る研磨パッドの製造方法は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる酸化セリウム粒子の割合が7,000個/cm以下となるように前記分散工程を実施することが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0058】
本発明者が鋭意研究したところ、従来の研磨パッドでは、酸化セリウム粒子が凝集により大きなものとなって研磨面に存在し、このことがスクラッチの原因となっていることを見出し、第1、第2実施形態を完成するに至った。
【0059】
すなわち、第1実施形態に係る研磨パッドは、研磨面を有する研磨パッドである。
また、第1実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有する。
前記パッド本体は、前記研磨面を構成する部分となっている。
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって前記高分子体に含まれている。
また、前記酸化セリウム粒子は、30μm以上の粒径となって前記高分子体に含まれる割合が7,000個/cm以下である。
斯かる研磨パッドは、被研磨物にスクラッチが生じ難い研磨パッドになり得る。
【0060】
また、第1実施形態に係る研磨パッドでは、好ましくは、前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれる。
【0061】
また、第2実施形態に係る研磨パッドは、研磨面を有する研磨パッドである。
また、第2実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂と酸化セリウム粒子とを含む高分子体によって形成されたパッド本体を有する。
前記パッド本体は、前記研磨面を構成する部分となっている。
前記酸化セリウム粒子は、1次粒子及び1次粒子が複数凝集した2次粒子となって前記高分子体に含まれている。
また、前記酸化セリウム粒子は、最大粒子径が80μm以下となって前記高分子体に含まれている。
斯かる研磨パッドは、被研磨物にスクラッチが生じ難い研磨パッドになり得る。
【0062】
さらに、第1、2実施形態に係る研磨パッドでは、好ましくは、前記酸化セリウム粒子は、レーザー回折法によって測定される体積基準のメジアン径が、0.80~2.00μmとなって前記高分子体に含まれている。
【0063】
なお、本発明に係る研磨パッドは、第1、第2実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、本発明に係る研磨パッドでは、前記高分子体が発泡体となっていてもよい。
前記高分子体が発泡体となっている場合には、前記分散工程では、発泡剤をさらに含む前記混合液を作製する。
【0065】
前記発泡剤としては、前記発泡ポリウレタンが成形される際に、気体を発生させて気泡となり、前記発泡ポリウレタン中に気泡を形成させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、加熱により分解してガスを発生させる有機化学発泡剤、沸点が-5~70℃の低沸点炭化水素、ハロゲン化炭化水素、水、液化炭酸ガスなどを単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0066】
前記有機化学発泡剤としては、例えば、アゾ系化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム等)、ニトロソ化合物(N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルテレフタルアミド等)、スルホニルヒドラジド化合物〔p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p-トルエンスルホニルヒドラジド等〕等が挙げられる。
前記低沸点炭化水素としては、例えば、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、HFC(ハイドロフルオロカーボン類)等が挙げられる。
【0067】
また、前記発泡剤は、加熱膨張性球状体であってもよい。該加熱膨張性球状体の粒径は、例えば、2~100μmである。該加熱膨張性球状体は、熱可塑性樹脂で形成された中空体と、中空体の中空部分に設けられた液状の炭化水素とを備える。前記加熱膨張性球状体としては、例えば、日本フィライト社製のExpancel(登録商標)や、松本油脂製薬社製の熱膨張性マイクロカプセル(商品名:マツモトマイクロスフェアー(登録商標)(例えば、F-48D等))などが挙げられる。
【実施例
【0068】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0069】
(実施例1)
末端基としてイソシアネートを2つ有する液状ウレタンプレポリマーと、酸化セリウム粒子としてのMirek(登録商標)E30(三井金属工業社製)と、発泡剤としての熱膨張性マイクロカプセル(F-48D)とを槽内に入れ撹拌機(撹拌翼:ディスクタイプ及びパドルタイプ、撹拌翼の直径:115mm、回転速度:1350rpm)で10分間撹拌して混合液を得た。なお、材料として用いた酸化セリウム粒子のメジアン径は、上述の方法で求めた。
そして、該混合液と、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)とを混合して重合発泡させ、円板状の高分子体たる研磨パッド(酸化セリウム粒子の濃度:20.0質量%)(820mm(直径)×2mm(厚み))を得た。
レーザー回折法によって測定される、前記高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径は、1.26μmであった。なお、このメジアン径は、上述した方法で求めた。
【0070】
(実施例2)
酸化セリウム粒子としてMirek(登録商標)E10(三井金属工業社製)を用いたこと、混合液を得るための撹拌時間を15分間としたこと、及び、研磨パッドにおける酸化セリウム粒子の濃度を7.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして高分子体たる研磨パッドを得た。
レーザー回折法によって測定される、前記高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の体積基準のメジアン径は、0.97μmであった。なお、このメジアン径は、上述した方法で求めた。
【0071】
(実施例3)
実施例1よりも高いせん断速度で撹拌したこと、混合液を得るための撹拌時間を5分間としたこと、及び、高分子体たる研磨パッドにおける酸化セリウム粒子の濃度を23.9質量%とした以外は、実施例2と同様にして高分子体たる研磨パッドを得た。
【0072】
(実施例4)
混合液を得るための撹拌時間を15分間としたこと、及び、高分子体たる研磨パッドにおける酸化セリウム粒子の濃度を10.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして高分子体たる研磨パッドを得た。
【0073】
(比較例1)
混合液を得るための撹拌時間を5分間としたこと、及び、高分子体たる研磨パッドにおける酸化セリウム粒子の濃度を23.9質量%とした以外は、実施例1と同様にして高分子体たる研磨パッドを得た。
【0074】
(粒子径の測定)
上述した方法で、30μm以上の粒径となって高分子体に含まれる前記酸化セリウム粒子の割合(以下、単に「粒径30μm以上の粒子割合」ともいう。)、及び、高分子体における酸化セリウム粒子の平均粒子径(以下、単に「平均粒子径」ともいう。)を求めた。
【0075】
(研磨試験)
以下の条件下で高分子体たる研磨パッドを用いてガラス板(400mm(縦)×300mm(横)×0.4mm(厚み))を2枚研磨した。
・研磨圧力:90gf/cm
・研磨時間:10min
・研磨スラリー:酸化セリウム粒子(Mirek(登録商標)E30、三井金属工業社製)及び水を含有する研磨スラリー(Mirek(登録商標)E30の濃度:7質量%)
そして、光学顕微鏡を用いて、研磨後のガラス板の表面を観察し、ガラス板2枚におけるスクラッチ(長さが500μm以上であるスクラッチ)の合計数(以下、単に「スクラッチの合計数」ともいう。)を確認した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1~4の研磨パッドを用いた場合ではスクラッチが確認されなかったが、比較例1の研磨パッドを用いた場合ではスクラッチが確認された。