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特許7123802ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞からの機能的ベータ細胞の産生
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  • 特許-ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞からの機能的ベータ細胞の産生 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞からの機能的ベータ細胞の産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220816BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 5/073 20100101ALN20220816BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/10
C12N9/99
C12N15/09 Z
C12N5/073
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018544785
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017054390
(87)【国際公開番号】W WO2017144695
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】16157181.5
(32)【優先日】2016-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・ストレイアー・クリストファーセン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリク・ドゥーン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ハンソン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250824(US,A1)
【文献】特表2016-503654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368616(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240235(US,A1)
【文献】国際公開第2014/201167(WO,A1)
【文献】The EMBO Journal,2014年,Vol.33,No.19,p.2157-2170
【文献】Diabetes,2014年,vol.63,p.4197-4205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00- 5/28
C12N 15/00-15/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞からグルコース応答性インスリン分泌成熟ベータ細胞を産生する方法であって、(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、基礎培地中にヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤、TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤、ヘパリン及びニコチンアミドを含む培地で培養して、INS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤が3-デアザネプラノシンA(DZNep)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤がAlk5iIIである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)を、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、cAMP上昇剤、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子及びそれらの組合せからなる群から選択される、1つ又は複数の追加の薬剤と組み合わせて含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ガンマ-セクレターゼ阻害剤がDAPTである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
cAMP上昇剤がdbcAMPである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子がT3である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記追加の薬剤がT3又はdbcAMPと組み合わせたDAPTである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記幹細胞由来内分泌前駆細胞を、工程(1)で1~4日間培養する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(2)12%のKOSR及びGABAを1つ又は複数の追加の薬剤と組み合わせて、工程(1)で得られたベータ細胞を培養する工程を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
追加の薬剤が、Alk5iIIである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
追加の薬剤が、T3である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
追加の薬剤Alk5iIIがT3と組み合わせられている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
-ヒト多能性幹細胞に由来する内分泌前駆細胞、及び/又は、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における工程(1)によって産生されたINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞、並びに
- 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における工程(1)において定義された細胞培養培地
を含む細胞培養培地。
【請求項15】
-ヒト多能性幹細胞に由来し、且つ、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における工程(1)によって産生されたINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞、並びに/又は請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における工程(1)及び請求項10から13のいずれか一項に記載の方法における工程(2)によって産生されたグルコース応答性インスリン分泌成熟ベータ細胞、並びに
- 請求項10から13のいずれか一項に記載の方法における工程(2)において定義された培養培地
を含む細胞培養培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膵島細胞移植は、インスリン療法と比較して優れたグルコースホメオスタシスを示し、1型糖尿病患者を治療するために使用されてきたが、この療法は臓器提供により限定される。ヒト胚性幹細胞(hESC)などのヒト多能性幹細胞(hPSC)は、無限に増殖し、ベータ細胞(BC)を含む多くの細胞型に分化し、ドナー膵島の不足に対処することができる。インビトロでhPSCを胚体内胚葉(DE)、膵臓内胚葉(PE)細胞及び内分泌前駆細胞(EP)に分化させるためのプロトコルが、WO2012/175633、WO2014/033322及びWO2015/028614それぞれにおいて提供されている。インビトロでhPSCからグルコース応答性インスリン分泌BCを産生することは難題である。ほとんどのプロトコルは、BCの表現型を反復できないインスリン産生細胞をもたらし、これらのインスリン産生細胞は、グルカゴンなどの他のホルモンも共発現し、グルコース刺激に応答しない。
【0003】
Rezania, A.ら「Reversal of diabetes with insulin-producing cells derived in vitro from human pluripotent stem cells」Nature Biotechnology 32、1121~1133頁(2014)及びPagliuca, F. W.ら「Generation of Functional Human Pancreatic b Cells In Vitro」Cell 159(2)、428~439頁、2014年10月9日では、hESCのインスリン分泌細胞へのインビトロ分化が報告されている。静的インキュベーション試験では、両グループの細胞はグルコース刺激に感受性であり、グルコース刺激後、インスリン産生量がおよそ2倍の増加を示した。しかし、この応答は、初代成人ベータ細胞の応答とは質的及び量的に異なっていた。比較として、ヒト膵島刺激指数は2~10又はそれ以上であると報告されている(Shapiro, J. A. M.ら「Islet Transplantation in seven patients with type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid-free immunosuppressive regimen」New England Journal of Medicine 343、230~238頁、7月27日(2000)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2012/175633
【文献】WO2014/033322
【文献】WO2015/028614
【文献】WO03/055992
【文献】WO2007/042225
【非特許文献】
【0005】
【文献】Rezania, A.ら「Reversal of diabetes with insulin-producing cells derived in vitro from human pluripotent stem cells」Nature Biotechnology 32、1121~1133頁(2014)
【文献】Pagliuca, F. W.ら「Generation of Functional Human Pancreatic b Cells In Vitro」Cell 159(2)、428~439頁、2014年10月9日
【文献】Shapiro, J. A. M.ら「Islet Transplantation in seven patients with type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid-free immunosuppressive regimen」New England Journal of Medicine 343、230~238頁、7月27日(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
報告された幹細胞由来BCはまた、動的細胞灌流アッセイにおいてグルコースに対するインスリン応答を示すことができず、したがって、初代ヒトBCと比較して機能的に未成熟である。
【0007】
動的細胞灌流アッセイにおいて、グルコースに応答することができる機能的成熟BCを、hPSC由来内分泌前駆細胞から産生するための効率的なプロトコルは、知られていない。移植後に予測可能な結果を得るために、並びにインビトロのスクリーニングのためには、ヒト膵島に類似したより一貫性のある細胞産物のための完全に機能的な成熟BCを産生するために、現在のプロトコルを改良することが肝要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する改良された方法に関する。本発明はまた、完全に分化したグルコース応答性ベータ細胞に関する。本発明は更に、本発明の方法によって得ることができる機能的成熟ベータ細胞に関する。本発明は更に、とりわけ、I型糖尿病の治療における前記細胞の医学的使用に関する。本発明はまた、例示的な実施形態の開示から明らかになる、さらなる問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】未分化ヒト胚性幹細胞(hESC)を胚体内胚葉(DE)に分化させ、細胞をT75フラスコに再播種して膵臓内胚葉(PE)及び内分泌前駆細胞(EP)に更に分化させたスクリーニングアプローチを示す図である。ベータ細胞(BC)工程1のスクリーニングをEP期に開始し、4~7日間続け、qICCモニタリング及び/又はNKX6.1+/INS+/GCG-細胞数のフローサイトメトリーによって分析した。BC工程2のスクリーニングは、BC工程1のスクリーニングの終わりに開始し、BC工程1の終わりに単一細胞に解離させ、50rpmのオービタルシェーカーでクラスターに再凝集させることにより、3D懸濁培養で3~7日間継続した。細胞を、静的及び/又は動的GSIS、INSタンパク質含量、ICC及びqPCRによって分析した。
図2】(図2A及び図2B)フローサイトメトリー(FC)で測定した、BC工程1の4日目におけるINS+/NKX6.1+/GCG-発現における化合物の効果を示すグラフである。
図3】(図3A図3B及び図3C)INS+/NKX6.1+細胞数におけるBC工程1中のヒットを組み合わせた場合の、相加効果を示すグラフである。
図4】(図4A及び図4B)BC工程1法のタイミング試験(timing studies)を示すグラフである。
図5】BC工程2法中の7日間に添加した化合物の、静的GSISにおける効果を示すグラフである。
図6A】BC工程2の3日目の、グルコース応答性インスリン分泌細胞の存在を示すグラフである。
図6B】BC工程2の7日目の、グルコース応答性インスリン分泌細胞の存在を示すグラフである。
図7】グルコース及びスルホニルウレアを介する用量依存性の動的なインスリン放出によって示される、hESC由来ベータ細胞の機能性を示すグラフである。
図8】(図8A及び図8B)独立した多能性細胞株由来の強力なプロトコル誘導機能的ベータ細胞を示すグラフである。
図9】BC工程2の9日目に幹細胞由来ベータ細胞で発現したベータ細胞特異的遺伝子を示す図である。
図10】INS+/NKX6+細胞の選別によるベータ細胞マーカーの濃縮を示すグラフである。
図11】幹細胞由来ベータ細胞を移植された糖尿病マウスが、血糖の急速な低下及び糖尿病の改善を示していることを示すグラフである。
図12】移植した細胞の腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)を示すグラフである。
図13】幹細胞由来ベータ細胞が、ストレプトゾトシン処置後の高血糖症を防御していることを示すグラフである。
図14】移植マウスにおける高レベルの循環ヒトC-ペプチドを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者らは、広範な低分子スクリーニングを行い、ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞期から機能的成熟ベータ細胞(BC)を産生する、新規かつ単純な2段階法を特定した。プロトコルの第1の段階(BC工程1)では、INS+及びNKX6.1+二重陽性細胞を高い割合で誘導し、GCG陽性細胞はわずかしか誘導しない。プロトコルの第2の段階(BC工程2)では、インビトロでのグルコースチャレンジの繰り返しに強く応答する機能的成熟BCを産生する。重要なことに、hPSC由来BC細胞は、動的灌流アッセイにおいて、グルコース+/-エキセンディン4チャレンジの繰り返しに応答する。得られた機能的成熟BCはまた、非糖尿病マウスの腎被膜への移植の3週間後に、インビボでグルコースレベルの上昇に応答する。
【0011】
本発明の発明者らは、細胞移植後にインビボでガンマ-アミノ酪酸(GABA)を投与することにより、移植したBCの機能的効果を潜在的に増強することができることを見出した。得られた完全に機能的なBC集団は、ヒトBC機能を試験するためのインビトロ主体のBC産物として使用することができ、これにより、インスリン分泌、インスリンタンパク質プロセシング、インスリン分泌及びメカニズム、GSIS試験、カルシウム流入シグナル伝達、自己免疫BC破壊、及びBCトランス分化を調節するための化合物のスクリーニングを行う。この出願を通じて、方法又はプロトコル又はプロセスという用語は、互換的に使用されてもよい。
【0012】
特定の実施形態
1.ヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法であって、(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、基礎培地中にヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF)-ベータシグナル伝達経路阻害剤、ヘパリン及びニコチンアミドを含む培地で培養して、INS+及びNKX6.1+の二重陽性未成熟ベータ細胞を得る工程と、(2)工程(1)で得られたベータ細胞を12%のKOSR及びGABAで培養して、機能的成熟ベータ細胞を得る工程と、を含む、方法。
【0013】
2.ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤が3-デアザネプラノシンA(DZNep)である、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0014】
3.DZNepの濃度が1μM未満である、実施形態2に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0015】
4.DZNepの濃度が1μMである、実施形態2に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0016】
5.DZNepの濃度が1~10μMの範囲である、実施形態2に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0017】
6.DZNepの濃度が10μMである、実施形態2に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0018】
7.トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF)-ベータシグナル伝達経路阻害剤がAlk5iIIである、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0019】
8.Alk5iIIの濃度が1μM未満である、実施形態7に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0020】
9.Alk5iIIの濃度が1μMである、実施形態7に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0021】
10.Alk5iIIの濃度が1~10μMの範囲である、実施形態7に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0022】
11.Alk5iIIの濃度が10μMである、実施形態7に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0023】
12.ヘパリンの濃度が1μg/ml未満である、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0024】
13.ヘパリンの濃度が1μg/mlである、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0025】
14.ヘパリンの濃度が1~10μg/mlの範囲である、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0026】
15.ヘパリンの濃度が10μg/mlである、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0027】
16.ニコチンアミドの濃度が1mM未満である、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0028】
17.ニコチンアミドの濃度が1mMである、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0029】
18.ニコチンアミドの濃度が1~10mMの範囲である、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0030】
19.ニコチンアミドの濃度が10mMである、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0031】
20.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、DZNep、Alk5iII、ヘパリン及びニコチンアミドを含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0032】
21.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、1μMのDZNep、10μMのAlk5iII、10μg/mlのヘパリン及び10mMのニコチンアミドを含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0033】
22.工程(1)を、1つ又は複数の追加の薬剤と組み合わせて含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0034】
23.追加の薬剤が、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、cAMP上昇剤(cAMP-elevating agent)、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子及びそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態22に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0035】
24.追加の薬剤が、ガンマ-セクレターゼ阻害剤である、実施形態23に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0036】
25.ガンマ-セクレターゼ阻害剤がN-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル(DAPT)である、実施形態24に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0037】
26.DAPTの濃度が2.5μM未満である、実施形態25に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0038】
27.DAPTの濃度が2.5μMである、実施形態25に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0039】
28.DAPTの濃度が2.5~10μMの範囲である、実施形態25に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0040】
29.DAPTの濃度が5μMである、実施形態25に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0041】
30.DAPTの濃度が10μMである、実施形態25に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0042】
31.追加の薬剤が、cAMP上昇剤である、実施形態23に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0043】
32.cAMP上昇剤がジブチリル-cAMP(dbcAMP)である、実施形態31に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0044】
33.dbcAMPの濃度が250μM未満である、実施形態32に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0045】
34.dbcAMPの濃度が250μMである、実施形態32に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0046】
35.dbcAMPの濃度が250~500μMの範囲である、実施形態32に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0047】
36.dbcAMPの濃度が500μMである、実施形態32に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0048】
37.追加の薬剤が、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子である、実施形態23に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0049】
38.甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子がT3である、実施形態37に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0050】
39.T3の濃度が1μM未満である、実施形態38に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0051】
40.T3の濃度が1μMである、実施形態38に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0052】
41.T3の濃度が1~10μMの範囲である、実施形態38に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0053】
42.T3の濃度が10μMである、実施形態38に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0054】
43.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、DZNep、Alk5iII、ヘパリン及びニコチンアミドをDAPTと組み合わせて含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0055】
44.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、1μMのDZNep、10μMのAlk5iII、10μg/mlのヘパリン及び10mMのニコチンアミドを2.5μMのDAPTと組み合わせて含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0056】
45.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、DZNep、Alk5iII、ヘパリン及びニコチンアミドをdbcAMPと組み合わせて含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0057】
46.(1)幹細胞由来内分泌前駆細胞を、1μMのDZNep、10μMのAlk5iII、10μg/mlのヘパリン及び10mMのニコチンアミドを250μMのdbcAMPと組み合わせて含む培地で培養する工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法、
【0058】
47.追加の薬剤ガンマ-セクレターゼ阻害剤が、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子と組み合わせられている、実施形態23に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0059】
48.追加の薬剤DAPTが、T3と組み合わせられている、実施形態47に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0060】
49.DAPTの濃度が2.5μMであり、かつT3の濃度が1μMである、実施形態48に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0061】
50.追加の薬剤ガンマ-セクレターゼ阻害剤が、cAMP上昇剤と組み合わせられている、実施形態23に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0062】
51.追加の薬剤がdbcAMPと組み合わせたDAPTである、実施形態50に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0063】
52.DAPTの濃度が2.5μMであり、かつdbcAMPの濃度が250μMである、実施形態51に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0064】
53.幹細胞由来内分泌前駆細胞を、工程(1)で1~4日間培養する、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0065】
54.幹細胞由来内分泌前駆細胞を、工程(1)で4日間培養する、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0066】
55.幹細胞由来内分泌前駆細胞を、工程(1)で4~7日間培養する、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0067】
56.工程1において、10~60%のINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を得る、先行する実施形態のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0068】
57.工程(1)において、20~50%のINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を得る、先行する実施形態のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0069】
58.工程1において、25~45%のINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を得る、先行する実施形態のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0070】
59.工程1において、30~40%のINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を得る、先行する実施形態のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0071】
60.12%のKOSR及びGABAを1つ又は複数の追加の薬剤と組み合わせて、工程(1)で得られたベータ細胞を培養して、機能的成熟ベータ細胞を得る工程を含む、実施形態1に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0072】
61.GABAの濃度が50μMである、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0073】
62.GABAの濃度が50~250μMの範囲である、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0074】
63.GABAの濃度が250μMである、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0075】
61.追加の薬剤が、TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤である、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0076】
62.TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤がAlk5iIIである、実施形態61に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0077】
63.Alk5iIIの濃度が1μM未満である、実施形態62に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0078】
64.Alk5iIIの濃度が1μMである、実施形態62に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0079】
65.Alk5iIIの濃度が1~10μMの範囲である、実施形態62に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0080】
66.Alk5iIIの濃度が10μMである、実施形態62に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0081】
67.追加の薬剤が、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子である、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0082】
68.甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子がT3である、実施形態67に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0083】
69.T3の濃度が1μM未満である、実施形態68に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0084】
70.T3の濃度が1μMである、実施形態68に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0085】
71.T3の濃度が1~10μMの範囲である、実施形態68に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0086】
72.T3の濃度が10μMである、実施形態68に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0087】
73.追加の薬剤が、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤である、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0088】
74.ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤がDZNepである、実施形態73に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0089】
75.DZNepの濃度が1μM未満である、実施形態74に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0090】
76.DZNepの濃度が1~10μMの範囲である、実施形態74に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0091】
77.DZNepの濃度が10μMである、実施形態74に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0092】
78.追加の薬剤TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤が、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子と組み合わせられ、かつヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤がDZNepである、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0093】
79.追加の薬剤Alk5iIIがT3及びDZNepと組み合わせられている、実施形態78に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0094】
80.追加の薬剤10μMのAlk5iIIが1μMのT3及び1μMのDZNepと組み合わせられている、実施形態79に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0095】
81.追加の薬剤TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤が、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路活性化因子と組み合わせられている、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0096】
82.追加の薬剤Alk5iIIがT3と組み合わせられている、実施形態81に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0097】
83.10μMのAlk5iIIが1μMのT3と組み合わせられている、実施形態82に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0098】
84.追加の薬剤TGF-ベータシグナル伝達経路阻害剤が、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤DZNepと組み合わせられている、実施形態60に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0099】
85.追加の薬剤Alk5iIIがDZNEPと組み合わせられている、実施形態84に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0100】
86.10μMのAlk5iIIが1μMのDZNEPと組み合わせられている、実施形態85に記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0101】
87.工程(1)で得たINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を、工程(2)で3~7日間培養する、先行する実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0102】
88.工程(1)で得たINS+及びNKX6.1+二重陽性未成熟ベータ細胞を、工程(2)で7~11日間培養する、先行する実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0103】
89.工程2において、10~60%の機能的成熟ベータ細胞を得る、実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0104】
90.工程2において、20~50%の機能的成熟ベータ細胞を得る、実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0105】
91.工程2において、25~45%の機能的成熟ベータ細胞を得る、実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0106】
92.工程2において、30~40%の機能的成熟ベータ細胞を得る、実施形態60~86のいずれか1つに記載のヒト多能性幹細胞由来内分泌前駆細胞から機能的成熟ベータ細胞を産生する方法。
【0107】
93.実施形態1~92のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる、機能的成熟ベータ細胞。
【0108】
94.実施形態93で得た機能的成熟ベータ細胞は、MAFA、IAPP及びG6PC2を発現する。
【0109】
一実施形態では、本発明の方法によって得ることができる細胞は、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、及び/又はグレリンの産生細胞へ分化した細胞と一緒の場合もある、インスリン産生細胞である。本明細書で使用するとき、「インスリン産生細胞」とは、検出可能な量のインスリンを産生及び貯蔵し、又は分泌する細胞を指す。「インスリン産生細胞」は、個々の細胞又は細胞の集合であり得る。
【0110】
別の実施形態では、膵臓細胞を含む細胞集団は、体細胞集団から得る。いくつかの態様では、体細胞集団は、胚様幹(ES、例えば、多能性)細胞に脱分化するように誘導されている。そのような脱分化した細胞はまた、人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれる。
【0111】
別の実施形態では、膵臓細胞を含む細胞集団は、胚性幹(ES、例えば多能性)細胞から得る。いくつかの態様では、膵臓細胞を含む細胞集団は、ES様細胞などの多能性細胞である。
【0112】
別の実施形態では、膵臓細胞を含む細胞集団は、胚分化幹(ES、又は多能性)細胞である。分化は、胚様体及び/又は単層細胞培養物又はそれらの組合せにおいて起こる。
【0113】
別の実施形態では、細胞集団は、幹細胞の集団である。いくつかの態様では、細胞集団は、膵内分泌系統に分化した幹細胞の集団である。
【0114】
幹細胞は、単一細胞レベルで自己複製及び分化の両方を起こして、自己複製性前駆細胞、非複製性前駆細胞、及び終末分化細胞を含む、子孫細胞を産生する能力によって規定される未分化細胞である。幹細胞は、複数の胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)由来の種々の細胞系統の機能細胞へインビトロで分化し、並びに移植後に複数の胚葉の組織を生じ、また胚盤胞に注入後、全てではないがほとんどの組織に実質的に寄与する能力も特徴とする。
【0115】
幹細胞は、その発生能によって、(1)あらゆる胚性及び胚体外細胞型を生じ得ることを意味する全能性、(2)あらゆる胚性細胞型を生じ得ることを意味する多能性、(3)細胞系統のサブセットを生じ得るが、全て、特定の組織、器官又は生理系内のものであることを意味する複能性(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己複製)、血球限定的少能性(oligopotent)前駆細胞並びに正常な血液成分であるあらゆる細胞型及び要素(例えば、血小板)を含む後代を産生することができる)、(4)複能性幹細胞よりも限定された細胞系統のサブセットを生じ得ることを意味する少能性、及び(5)単一の細胞系統を生じ得ることを意味する単能性(例えば、精子形成幹細胞)、に分類される。
【0116】
本明細書で使用するとき、「分化する」又は「分化」とは、未分化状態から分化状態へと、未成熟状態からより成熟した状態へと、又は未成熟状態から成熟状態へと細胞が進行する過程を指す。例えば、初期未分化胚性膵臓細胞は、増殖し、PDX1、NKX6.1及びPTF1a等の特徴的マーカーを発現することができる。成熟した又は分化した膵臓細胞は、増殖せず、高レベルの膵内分泌ホルモン又は消化酵素を分泌する。例えば、完全に分化したベータ細胞は、グルコースに応答して高レベルのインスリンを分泌する。細胞相互作用の変化及び成熟化が起こると、細胞が未分化細胞のマーカーを喪失したり、又は分化細胞のマーカーを獲得したりする。単一マーカーの喪失又は獲得は、細胞が「成熟したか、又は完全に分化した」ことを示し得る。「分化因子」という用語は、インスリン産生ベータ細胞も含有する成熟した内分泌細胞へのその分化を増強するために、膵臓細胞に添加される化合物を指す。例示的な分化因子としては、肝細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、エキセンディン-4、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子-1、神経増殖因子、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子及びグルカゴン様ペプチド1が挙げられる。いくつかの態様では、細胞の分化は、1種又は複数の分化因子を含む培地における細胞の培養を含む。
【0117】
本明細書で使用するとき、本明細書において、「ヒト多能性幹細胞(hPSC)」とは、いかなる供給源に由来してもよい細胞であって、適切な条件下で、全3胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)の派生体である様々な細胞型のヒト後代を産生することのできる細胞を指す。hPSCは、8~12週齢SCIDマウスにおいてテラトーマを形成する能力及び/又は組織培養において同定可能な全3胚葉の細胞を形成する能力を有し得る。ヒト多能性幹細胞の定義には、30の文献中で多くの場合ヒト胚性幹(hES)細胞として表示される、ヒト胚盤胞由来幹(hBS)細胞を含む様々な種類の胚性細胞(例えば、Thomsonら(1998)、Heinsら(2004)を参照、並びに、人工多能性幹細胞(例えば、Yuら(2007)、Takahashiら(2007)を参照)が含まれる。本明細書に記載されている様々な方法及び他の実施形態は、種々の供給源由来のhPSCを必要とするか又は利用する場合がある。例えば、使用に好適なhPSCは、発生中の胚から得てもよい。更に又はそれに代えて、好適なhPSCは、樹立細胞株及び/又はヒト人工多能性幹(hiPS)細胞から得てもよい。
【0118】
本明細書で使用するとき、「hiPSC」とは、ヒト人工多能性幹細胞を指す。
【0119】
本明細書で使用するとき、「胚盤胞由来幹細胞」という用語は、BS細胞と表示され、ヒト型は、「hBS細胞」と称される。文献において、この細胞は多くの場合、胚性幹細胞、より具体的には、ヒト胚性幹細胞(hESC)と称される。したがって、本発明において使用する多能性幹細胞は、例えば、WO03/055992及びWO2007/042225に記載されている通り、胚盤胞から調製された胚性幹細胞、或いは市販のhBS細胞又は細胞株であり得る。
しかし、例えば、Yuら(2007)、Takahashiら(2007)及びYuら(2009)に開示されているように、OCT4、SOX2、NANOG及びLIN28など、特定の転写因子で成体細胞を処理することにより、多能性細胞へと再プログラム化される分化した成体細胞を含む、任意のヒト多能性幹細胞を、本発明において使用することができることが、更に想定される。
【0120】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているが、それは、各参考文献が参照により組み込まれていることを個々に、具体的に示し、(法律で許容される最大限まで)その全体を本明細書に記載している場合と同程度である。
【0121】
全ての見出し及び小見出しは、本明細書で便宜上使用されているだけであり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0122】
本発明に示すあらゆる例、又は例示語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいずれの文言も、特許非請求の要素が、本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈するべきではない。
【0123】
本発明の特定の特徴が本明細書で説明され記載されてきたが、当業者には多くの改変、置換、変更、及び均等物がここで生じるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に含まれる全てのそのような改変及び変更を包含するように意図されていることが理解されるべきである。
【0124】
略語のリスト
AA:アクチビンA
BC:ベータ細胞
bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)
D'Am:D'Amourプロトコル(Kroonら、2008)
DAPT:N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル
DE:胚体内胚葉
DZNep:3-デアザネプラノシンA
EP:内分泌前駆細胞
FC:フローサイトメトリー
GABA:ガンマ-アミノ酪酸
GSIS:グルコース刺激インスリン分泌
hESC:ヒト胚性幹細胞
hIPSC:ヒト人工多能性幹細胞
hPSC:ヒト多能性幹細胞
KOSR:ノックアウト血清代替物
PE:膵臓内胚葉
RNA:リボ核酸
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
PS:原始線条
【実施例
【0125】
一般に、hPSCを機能的成熟ベータ細胞に分化させるプロセスは、種々の時期を経る。インビトロでhPSCから機能的ベータ細胞を産生するための例示的方法を、図1に概説する。
【0126】
(実施例1)
内分泌前駆細胞の調製
hESC(SA121)を、30ng/mLのbFGF(Peprotech社#100-18B)及び10ng/mLのノギン(Peprotech社#120-10C)を補充したDEF培地(Cellectis社)で培養した。
【0127】
接着培養物については、WO2012/175633のプロトコルに基づいて、hESCを、Chir99021及びアクチビンAを使用して、T75フラスコ中でDEに分化させた。DEを、Tryple Select(Invitrogen社#12563-029)を使用してトリプシン処理し、200K/cm2のT75フラスコ内で、100ng/mlのアクチビンA(Peprotech社#120-14E)、2%のB27(Invitrogen社#17504-044)及び0.1%のPEST(Gibco社#15140)を補充したRPMI1640中に、単一細胞として再播種した。DE細胞は、付着させ、WO2014/033322のプロトコルに基づいて、続いて4日後に、WO2015/028614のEPプロトコルに基づいて、LDN、AM508を使用してPEに分化させた。
【0128】
多数のベータ細胞を産生するために、スケールアップ可能な懸濁ベース培養系を利用して、WO2012/175633のChir99021及びアクチビンAに基づくプロトコルを使用して、再播種工程を必要とせずに、懸濁培養物(100万/ml)として、70RPMでMultitron Standardのインキュベーター(Infors社)内の振盪フラスコ中で、hESCのクラスターをDEに分化させた。DE細胞は、以下のわずかな改変を加えてWO2014/033322のプロトコルに基づいて、LDN、AM508を使用して、PEに更に分化した:LDNは4~10日目PEに添加しない。PE産生後に、4日間EPプロトコルWO2015/028614を実施した。
【0129】
(実施例2)
BC工程1中にINS+/NKX6.1+共発現を誘導する因子のスクリーニング
完全に機能的な成熟ベータ細胞の産生に向けた第1の工程として、最大数の未成熟INS+/NKX6.1+細胞を産生するための因子をスクリーニングした(BC工程1のスクリーニング)。BC工程1のスクリーニングは、EP期に、RPMI1640+2%のB27+10mMニコチンアミド上に添加された、いくつかの文献に基づく化合物を補充したキナーゼ阻害剤、エピジェネティックレギュレーター、レドックス及び生物活性脂質のライブラリー(合計650種の対象化合物)を使用して、開始した。
【0130】
化合物を、INS+、NKX6.1+、二重陽性未成熟BC及び少数のGCG陽性細胞を誘導する能力について7日以内にスクリーニングした。培地の変更は毎日行った。細胞をBC工程1の4日目及び7日目に固定し、フローサイトメトリーを使用してINS NKX6.1及びGCG発現について分析した(Table 1(表1)及び図2参照)。要約すると、TrypLE Expressを用いて37℃で10分間インキュベートして、細胞を単一細胞懸濁液に分散させた。細胞を4%のパラホルムアルデヒド中に再懸濁し、PBSで洗浄した後、一次抗体で一晩インキュベートし、次いで二次抗体で1時間インキュベートした。分化したhPSCは、α細胞ホルモングルカゴンを発現する少数の細胞と共にC-ペプチド+/NKX6.1+を共発現した(図2)。フローサイトメトリーで定量すると、48%の細胞がC-ペプチド+/NKX6.1を共発現しており、これは幹細胞由来ベータ細胞について以前に報告されていたより多かった(Melton、Kieffer参照)。
【0131】
【表1】
【0132】
次いで、一次スクリーニングで同定されたヒットを個別に組み合わせ、BC工程1培地上に添加した(Table 2(表2)及び図3参照)。試験のタイミングは、BC工程1がIns及びGcgのmRNA発現に基づいて4~7日間の最適長を有することが明らかとなった(図4参照)。
【0133】
【表2】
【0134】
(実施例3)
BC工程1からのグルコース感知性インスリン分泌ベータ細胞の産生
完全に機能的な成熟ベータ細胞の重要な機能的特徴は、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)を行う能力である。BC工程1の未成熟INS+/NKX6.1+細胞から機能的ベータ細胞を誘導することができるBC工程2の因子をスクリーニングした。
【0135】
BC工程2のスクリーニングを懸濁培養物にて行った。接着培養物については、T75フラスコ中の細胞を、Tryple Selectを使用してBC工程1の終わりにトリプシン処理し、12%のKOSR(ThermoFisher社#10828028)及び0.1%のPEST、Gibco社#15140を含有するRPMI1640培地(Gibco社#61870)を含む低付着9cmペトリ皿の懸濁液中に細胞を移した。
【0136】
次いで、選択された化合物の効果を、静的GSIS構成において、グルコース応答性細胞の誘導のために7日間試験した(図5参照)。要約すると、細胞クラスターをサンプリングし、2.8mMグルコース培地中で一晩インキュベートして、残留インスリンを除去した。クラスターをクレブス緩衝液で2回洗浄し、2.8mMクレブス緩衝液中で30分間インキュベートし、上清を収集した。次いで、クラスターを16mMグルコースクレブス緩衝液中で30分間インキュベートし、上清を収集した。この手順を繰り返した。最後に、クラスターを、2.8mMグルコースを含有するクレブス緩衝液中で30分間インキュベートし、次いで上清を収集した。分泌型インスリンを含有する上清試料を、ヒトインスリンELISA(Mercodia社)を使用して処理した。
【0137】
次いで、一次スクリーニングで同定されたヒットを個別に組み合わせ、12%のKOSR培地上に添加して、最適な7日間のBC工程2のプロトコルを産生した(Table 3(表3)参照)。
【0138】
【表3】
【0139】
(実施例4)
インビトロで動的ヒトインスリン分泌をアッセイするための灌流アッセイ
成熟ベータ細胞は、グルコース上昇に対する迅速な応答によって機能的に定義される。BC工程2の終わりにベータ細胞によるヒトインスリンの分泌を、灌流系内の20mMグルコース±1μMエキセンディン-4、又は±抗糖尿病性スルホニルウレア化合物トルブタミドに対する反復応答として測定した。
【0140】
要約すると、hESC又はhiPSC由来細胞クラスターのうち手選した300個のクラスターの群を、Biorep PERFUSION SYSTEM(Biorep社#PERI-4.2)のプラスチックチャンバー内でビーズ(Bio-Rad社#150-4124)とともに懸濁した。温度及びCO2制御条件下で、細胞をクレブス緩衝液により0.5ml/分で灌流させた。試料採取の前に、細胞を基本(2mMグルコース)条件下で1h平衡化させた。灌流中に、細胞を、20mMグルコース±1μMエキセンディン-4又は±100μMトルブタミドで反復チャレンジに曝露した。灌流の終わりに、細胞を20mMグルコース上のcAMP上昇剤に曝露した。インスリン分泌は、ヒトインスリンELISA(Mercodia社)によって測定した。
【0141】
灌流分析により、幹細胞由来ベータ細胞は、グルコース濃度の変化と高度に同期したインスリン分泌の第1相及び第2相で、インスリンの迅速かつ強力な放出を示した(図6参照)。GLP-1類似体エキセンディン-4は、hPSC由来ベータ細胞におけるインスリン分泌のレベルを増加させた。重要なことに、BC工程2の3日目(図6A)及び7日目(図6B)に測定した場合、グルコース応答性インスリン分泌細胞の存在を、インビトロで少なくとも4日間観察した。
【0142】
BC工程2の7日目の幹細胞由来ベータ細胞の灌流分析の別の例は、インスリン分泌におけるスルホニルウレアトルブタミドの有意な相加効果を示した(図7)。プロトコルの堅牢性は、独立した多能性細胞株由来の機能的ベータ細胞の誘導によって実証される(図8参照)。これらのデータは、以前の報告(Rezania、2014、Paglucia、2014及びJohnson-J、2016 Diabetologiaのレビュー)と比較して、灌流により測定されたグルコース刺激インスリン放出動力学を示す幹細胞由来ベータ細胞を産生するためのプロトコルの優位性を総合的に示している。
【0143】
(実施例5)
遺伝子発現分析は幹細胞由来ベータ細胞とヒト膵島材料との高レベルの類似性を示した
BC工程2の7日目の分化した細胞クラスター又はヒト膵島を収集し、Qiagen社製のRNeasyキット(カタログ番号/ID:74134)を使用してRNAを精製した。品質はRNA 6000 Nano Kit及び2100 Bianalyser機器(Agilent社)を使用して評価した。100ngのRNAを、Nanostring Technology社からの指示に従ってnCounterアッセイに供した。図9は、hiPSC及び2つの異なるhESC株から産生したヒト膵島及びベータ細胞由来のベータ細胞関連遺伝子の発現プロファイルを示す。遺伝子発現分析は、幹細胞由来ベータ細胞がヒト膵島と分子的に近似していることを示した。
【0144】
特定の幹細胞由来INS+/NKX6.1+細胞の追加の遺伝子発現分析を、FACS細胞選別によって行った。BD FACSARIAfusion(商標)機器で選別する前に、細胞クラスターを解離させ、生細胞と死細胞の分離のために、近赤外色素(Thermo Scientific社)を使用して染色した。固定及び透過処理の後、細胞を、細胞内マーカーNKX6.1及びC-ペプチドを使用して染色した。RNeasy FFPE Kit(QIAGEN社)を使用してRNAを精製し、品質はRNA 6000 Nano Kit及び2100 Bianalyser機器(Agilent社)を使用して評価した。図10は、細胞選別後の、NKX6.1/CPEP二重陽性細胞の重要なベータ細胞成熟遺伝子の濃縮を示す。ナノストリングデータを、非選別細胞集団に対して正規化した。
【0145】
(実施例6)
移植後に機能する工程2からの幹細胞由来ベータ細胞
インビボで機能性を評価するために、BC工程2の3~10日目の幹細胞由来ベータ細胞を、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスモデルに移植した。要するに、複数の低用量(5×70mg/kg)ストレプトゾトシン(STZ)を使用して免疫無防備状態のscid-ベージュマウス(Taconic社)において糖尿病を誘発させ、マウスは、STZ投与前に4h絶食させている。マウスを、血糖、体重及びHbA1cに関して、以下の週にわたってモニターする。血糖値が一貫して16mMを超えると、糖尿病と考えられる。
【0146】
完全麻酔及び鎮痛下で、糖尿病マウスに、腎被膜の下に5×106のヒト胚性幹細胞由来ベータ細胞(未分類集団)を移植する。腎臓は、動物の左背部の皮膚及び筋肉の小さな切開により曝露され、腎実質と腎被膜との間に嚢を設け、そこに細胞クラスターを注入する。腹壁及び皮膚を閉じ、マウスを回復させる。
【0147】
細胞の機能は、血糖、体重、HbA1c及びヒトc-ペプチド/インスリン分泌に関して、その後数週間にわたってモニターする。幹細胞由来ベータ細胞は、移植後最初の2週間以内に糖尿病の急速な改善をもたらし(図11)、この改善は、以前の報告(Rezania、2014)よりも急速であった。重要なことに、85%未満のBWを有する全てのマウス、すなわち非移植糖尿病対照群に、インスリンを毎日注射した。移植した細胞にグルコースをインビボでチャレンジすると、対照マウスより良好なグルコースクリアランス及びグルコース注入60分以内の循環ヒトc-ペプチドの増加レベルを有する幹細胞由来ベータ細胞のインビボ機能性が示された(図12)。別の糖尿病モデルでは、非糖尿病SCID/ベージュマウスの腎被膜に、500万個の分化細胞を移植した。次いで、これらのマウスを、移植の8週間後にストレプトゾトシンで処置した。図13は、移植前マウスが非移植対照マウスと比較してストレプトゾトシン投与後の高血糖症から防御されたが、移植片を除去するとマウスにおいて急速な高血糖症を生じたことを示す(図13参照)。高レベルの循環ヒトc-ペプチドを、全ての移植マウスにおいて、最初のデータポイントから試験の終わりまで測定した(図14参照)。
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