(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】抗TIM-3抗体および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220816BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220816BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220816BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220816BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220816BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220816BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220816BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220816BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220816BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220816BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220816BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220816BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220816BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/02
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K39/395 G
A61K39/395 E
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2018553410
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2017058696
(87)【国際公開番号】W WO2017178493
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-03
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505257682
【氏名又は名称】シムフォゲン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】トリーネ・リンドステッド
(72)【発明者】
【氏名】トーベン・ゲティング
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ローラン・ガラー
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・ガッド
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・モンラズ・グランダル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・コフォード
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・クラウ
(72)【発明者】
【氏名】アイバン・デイビッド・ホラック
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブーキン
(72)【発明者】
【氏名】ミッケル・ヴァンダール・ペダーセン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/155607(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022623(US,A1)
【文献】Int. J. Hematol.,2013年,Vol. 98,pp. 627-633
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 21/08
C07K 16/00-16/46
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体が、それぞれ配列番号7-9のアミノ酸配列のH-CDR1-3を含む重鎖(HC)およびそれぞれ配列番号10-12のアミノ酸配列のL-CDR1-3を含む軽鎖(LC)を含む、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分であって、ここでHCおよびLCが、
i)それぞれ配列番号5および6、または
ii)それぞれ
配列番号25および6のアミノ酸配列、
をさらに含む、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
HCが配列番号15の可変ドメインアミノ酸配列を含み、かつLCが配列番号4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
配列番号15および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含むLCを含む、抗TIM-3抗体。
【請求項4】
以下の特性の少なくとも1つを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分:
a)表面プラズモン共鳴により測定される23nM以下のK
DでヒトTIM-3に結合する;
b)表面プラズモン共鳴により測定される22nM以下のK
DでカニクイザルTIM-3に結合する;
c)ELISAにより測定される1.2nM以下のEC50でヒトTIM-3に結合する;
d)ELISAにより測定される46nM以下のEC50でカニクイザルTIM-3に結合する;
e)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌を増加させる;
f)二方向混合リンパ球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌を増加させる;
g)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいてTNF-α分泌を増加させる;
h)樹状細胞からのTNF-α分泌を増加させる;および
i)TIM-3とホスファチジルセリンとの相互作用を阻害する。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の、重鎖をコードするヌクレオチド配列および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項6】
発現制御配列をさらに含む、請求項5に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の、重鎖をコードするヌクレオチド配列、および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞。
【請求項8】
抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分を作製する方法であって、請求項7に記載の宿主細胞を提供し、該抗体またはその部分の発現に好適な条件下で該宿主細胞を培養し、そして得られた抗体またはその抗原結合部分を単離することを含む、作製方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体の抗原結合部分および別の異なる抗体の抗原結合部分を有する、二重特異性結合分子。
【請求項10】
それを必要とする患者において免疫を増強するまたは癌を処置するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体もしくは抗原結合部分、または請求項9に記載の二重特異性結合分子を含む、医薬組成物。
【請求項11】
化学療法剤、抗腫瘍剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤またはTIM-3経路阻害剤をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
化学療法剤がイリノテカンである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
患者が皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮または膵臓に由来する癌を有する、請求項10-12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
患者が固形腫瘍を有する、請求項10-12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
患者が、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、非小細胞肺癌、結腸直癌、胆管癌または腎細胞癌を有する、請求項10-12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
それを必要とする患者において免疫を増強するまたは癌を処置するための医薬の製造における、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗TIM-3抗体もしくは抗原結合部分、または請求項9に記載の二重特異性結合分子、の使用。
【請求項17】
前記医薬が、化学療法剤、抗腫瘍剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤またはTIM-3経路阻害剤をさらに含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
化学療法剤がイリノテカンである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
患者が皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮または膵臓に由来する癌を有する、請求項16-18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
患者が固形腫瘍を有する、請求項16-18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
患者が、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、非小細胞肺癌、結腸直癌、胆管癌または腎細胞癌を有する、請求項16-18のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月12日に出願された米国特許出願62/321,476に基づく優先権の利益を主張し、その内容全体を、引用により本明細書中に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その内容全体が引用により本明細書中に包含される配列表を含む。2017年3月28日に作成されたASCIIコピーは、022675WO053.txtというファイル名であり、サイズは150,698バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
HAVCR2(A型肝炎ウイルス細胞受容体2)またはCD366としても知られる、TIM-3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン含有分子3)は、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメインタンパク質ファミリーのメンバーである。TIM-3は、ヒトにおいてHavcr2遺伝子によりコードされ、膜遠位のIgVドメインおよび膜近位のムチンドメインを有する33kDaのタイプIの糖タンパク質である。それは、細胞内ドメイン内に5つのTyr残基の保存された領域を含み、それらはリガンド結合の際にリン酸化される。TIM-3は、T細胞、樹状細胞、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞を含む免疫系の獲得免疫群および自然免疫群の両方に由来するある範囲の種々の細胞により発現される。TIM-3発現は、天然のT細胞では低いが、T細胞活性化により高度に上方制御されるようになる。T細胞とは対照的に、樹状細胞、NK細胞および単球のような自然免疫細胞は、TIM-3の高い基礎的発現を有する。TIM-3は、ほとんど無差別に、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン、CEACAM-1およびHMGB-1を含むいくつかのリガンドと結合するが、これらのリガンドの正確な役割は現在のところ知られていない。
【0004】
TIM-3はチェックポイント阻害物質であることが示唆されており、例えば、PD-1と同様の様式でT細胞活性化またはサイトカイン分泌の抑制に直接介在するという考えを支持するやや少数の証拠がある。さらに、PD-1とは対照的に、TIM-3は、自然免疫系の細胞、特に樹状細胞の調節に何らかの役割を果たすように思われる。腫瘍免疫におけるTIM-3およびその役割に関する機能的データの大部分は、種々の抗体を用いたインビボ試験により得られる。これらの試験のほとんどでは、抗体の証明不備のため、TIM-3抗体の効果に、リガンド結合の阻害または標的へのアゴニスト効果が介在するかどうかは明らかではない。
【0005】
その免疫応答調節特性の観点から、TIM-3は、癌および自己免疫疾患の処置を含む、免疫療法の潜在的な標的として研究されている。現在、1つの抗TIM-3抗体が臨床開発中であるが、承認された抗TIM-3抗体は現在のところ存在しない。
【0006】
免疫調節剤としてのTIM-3の重要な役割に鑑みて、TIM-3を標的として、癌および特定の免疫系の障害を処置するための、新規かつ改善された免疫療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、TIM-3を標的とする新規の組換え抗体、ならびに1以上のこれらの抗体、例えば、TIM-3に対する活性を介して、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)およびT細胞(例えば、ヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞)などの種々の免疫細胞を活性化する抗TIM-3抗体、ならびに当該抗体を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、患者の免疫を増強するための、ならびに皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織由来の癌の処置のための、抗体および医薬組成物の使用に関する。抗体処置を含む、かかる癌に対する現在利用可能な処置と比較して、本発明の抗体は、単独で、または別の免疫チェックポイントタンパク質を標的とする抗体のような別の癌処置剤と組み合わせて、優れた臨床効果を提供できることが企図される。
【0008】
ある態様において、本発明は、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分を提供し、ここで、該抗TIM-3抗体は、本明細書中、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144、20131、20293、15105、15107、15109、15174、15175、15260、15284、15299、15353、15354、17244、17245、19324、19416、19568、20185、20300、20362または20621と称される抗体、あるいはこれらの何れかの変異体であり、ここで、該変異体は、例えば、該抗体の抗原結合特異性を損なうことなく、該抗体と比べて最小のアミノ酸変化(例えば、フレームワーク領域内であってもよい、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸変化)を含んでいてよい。
【0009】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、ヒトTIM-3への結合について抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144、20131、20293、15105、15107、15109、15174、15175、15260、15284、15299、15353、15354、17244、17245、19324、19416、19568、20185、20300、20362および20621のいずれか1つと競合し、または抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144、20131、20293、15105、15107、15109、15174、15175、15260、15284、15299、15353、15354、17244、17245、19324、19416、19568、20185、20300、20362および20621のいずれか1つと同じヒトTIM-3のエピトープに結合する。
【0010】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号9、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222または232のH-CDR3アミノ酸配列を含むH-CDR3を含む。
【0011】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、それぞれ配列番号7-9、30-32、40-42、50-52、60-62、70-72、80-82、90-92、100-102、110-112、120-122、130-132、140-142、150-152、160-162、170-172、180-182、190-192、200-202、210-212、220-222または230-232のH-CDR1-3配列を含むH-CDR1-3を含む。
【0012】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228と少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する。
【0013】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228を含むVHを有する。
【0014】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のVHアミノ酸配列ならびに配列番号5または配列番号23、24または25のアミノ酸配列の重鎖定常領域(CH)を含む重鎖(HC)を有する。
【0015】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号12、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225または235のL-CDR3アミノ酸配列を含むL-CDR3を含む。
【0016】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、それぞれ配列番号10-12、33-35、43-45、53-55、63-65、73-75、83-85、93-95、103-105、113-115、123-125、133-135、143-145、153-155、163-165、173-175、183-185、193-195、203-205、213-215、223-225または233-235のL-CDR1-3配列を含むL-CDR1-3を含む。
【0017】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229の軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一の配列を有するVLを有する。
【0018】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のVLアミノ酸配列を含むVLを有する。
【0019】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のVLアミノ酸配列および配列番号6の軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を有する。
【0020】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、上記の重鎖配列のいずれかおよび上記の軽鎖配列のいずれかを含む。
【0021】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、それぞれ配列番号9および12、32および35、42および45、52および55、62および65、72および75、82および85、92および95、102および105、112および115、122および125、132および135、142および145、152および155、162および165、172および175、182および185、192および195、202および205、212および215、222および225、ならびに232および235の、H-CDR3およびL-CDR3アミノ酸配列を含む、H-CDR3およびL-CDR3を含む。
【0022】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、それぞれ配列番号7-12、30-35、40-45、50-55、60-65、70-75、80-85、90-95、100-105、110-115、120-125、130-135、140-145、150-155、160-165、170-175、180-185、190-195、200-205、210-215、220-225、または230-235の、H-CDR1-3およびL-CDR1-3配列を含む、H-CDR1-3およびL-CDR1-3を含む。
【0023】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一の配列を有するVH、ならびに配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一の配列を有するVLを有する。
【0024】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のアミノ酸配列を含むVLを有する。
【0025】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含むLC;ならびに、(i)配列番号3、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列および配列番号5のアミノ酸配列、あるいは(ii)配列番号15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列および配列番号23、24または25のアミノ酸配列を含むHC、を有する。
【0026】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、以下のH-CDR1-3およびL-CDR1-3アミノ酸配列を含む:
a)それぞれ配列番号7-12;
b)それぞれ配列番号30-35;
c)それぞれ配列番号40-45;
d)それぞれ配列番号50-55;
e)それぞれ配列番号60-65;
f)それぞれ配列番号70-75;
g)それぞれ配列番号80-85;
h)それぞれ配列番号90-95;
i)それぞれ配列番号100-105;
j)それぞれ配列番号110-115;
k)それぞれ配列番号120-125;
l)それぞれ配列番号130-135;
m)それぞれ配列番号140-145;
n)それぞれ配列番号150-155;
o)それぞれ配列番号160-165;
p)それぞれ配列番号170-175;
q)それぞれ配列番号180-185;
r)それぞれ配列番号190-195;
s)それぞれ配列番号200-205;
t)それぞれ配列番号210-215;
u)それぞれ配列番号220-225;または
v)それぞれ配列番号230-235。
【0027】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、以下のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変ドメインを有する抗体と競合し、または以下のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変ドメインを有する抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合する:
a)それぞれ配列番号3および4;
b)それぞれ配列番号15および4;
c)それぞれ配列番号28および29;
d)それぞれ配列番号38および39;
e)それぞれ配列番号48および49;
f)それぞれ配列番号58および59;
g)それぞれ配列番号68および69;
h)それぞれ配列番号78および79;
i)それぞれ配列番号88および89;
j)それぞれ配列番号98および99;
k)それぞれ配列番号108および109;
l)それぞれ配列番号118および119;
m)それぞれ配列番号128および129;
n)それぞれ配列番号138および139;
o)それぞれ配列番号148および149;
p)それぞれ配列番号158および159;
q)それぞれ配列番号168および169;
r)それぞれ配列番号178および179;
s)それぞれ配列番号188および189;
t)それぞれ配列番号198および199;
u)それぞれ配列番号208および209;
v)それぞれ配列番号218および219;または
w)それぞれ配列番号228および229。
【0028】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、以下のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む:
a)それぞれ配列番号3および4;
b)それぞれ配列番号15および4;
c)それぞれ配列番号28および29;
d)それぞれ配列番号38および39;
e)それぞれ配列番号48および49;
f)それぞれ配列番号58および59;
g)それぞれ配列番号68および69;
h)それぞれ配列番号78および79;
i)それぞれ配列番号88および89;
j)それぞれ配列番号98および99;
k)それぞれ配列番号108および109;
l)それぞれ配列番号118および119;
m)それぞれ配列番号128および129;
n)それぞれ配列番号138および139;
o)それぞれ配列番号148および149;
p)それぞれ配列番号158および159;
q)それぞれ配列番号168および169;
r)それぞれ配列番号178および179;
s)それぞれ配列番号188および189;
t)それぞれ配列番号198および199;
u)それぞれ配列番号208および209;
v)それぞれ配列番号218および219;または
w)それぞれ配列番号228および229。
【0029】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、以下のアミノ酸配列を有する可変ドメインを有する重鎖および軽鎖を含む:
a)それぞれ配列番号3および4;
b)それぞれ配列番号15および4;
c)それぞれ配列番号28および29;
d)それぞれ配列番号38および39;
e)それぞれ配列番号48および49;
f)それぞれ配列番号58および59;
g)それぞれ配列番号68および69;
h)それぞれ配列番号78および79;
i)それぞれ配列番号88および89;
j)それぞれ配列番号98および99;
k)それぞれ配列番号108および109;
l)それぞれ配列番号118および119;
m)それぞれ配列番号128および129;
n)それぞれ配列番号138および139;
o)それぞれ配列番号148および149;
p)それぞれ配列番号158および159;
q)それぞれ配列番号168および169;
r)それぞれ配列番号178および179;
s)それぞれ配列番号188および189;
t)それぞれ配列番号198および199;
u)それぞれ配列番号208および209;
v)それぞれ配列番号218および219;または
w)それぞれ配列番号228および229。
【0030】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体は、以下を含む:
a)配列番号3および5のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)ならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号28および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号29および6のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号38および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号39および6のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号48および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号49および6のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号58および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号59および6のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号68および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号69および6のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号78および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号79および6のアミノ酸配列を含むLC;
h)配列番号88および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号89および6のアミノ酸配列を含むLC;
i)配列番号98および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号99および6のアミノ酸配列を含むLC;
j)配列番号108および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号109および6のアミノ酸配列を含むLC;
k)配列番号118および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号119および6のアミノ酸配列を含むLC;
l)配列番号128および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号129および6のアミノ酸配列を含むLC;
m)配列番号138および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号139および6のアミノ酸配列を含むLC;
n)配列番号148および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号149および6のアミノ酸配列を含むLC;
o)配列番号158および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号159および6のアミノ酸配列を含むLC;
p)配列番号168および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号169および6のアミノ酸配列を含むLC;
q)配列番号178および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号179および6のアミノ酸配列を含むLC;
r)配列番号188および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号189および6のアミノ酸配列を含むLC;
s)配列番号198および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号199および6のアミノ酸配列を含むLC;
t)配列番号208および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号209および6のアミノ酸配列を含むLC;
u)配列番号218および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号219および6のアミノ酸配列を含むLC;または
v)配列番号228および5のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号229および6のアミノ酸配列を含むLC。
【0031】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体は、以下を含む:
a)配列番号15および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含むLC;
b)配列番号28および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号29および6のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号38および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号39および6のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号48および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号49および6のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号58および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号59および6のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号68および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号69および6のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号78および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号79および6のアミノ酸配列を含むLC;
h)配列番号88および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号89および6のアミノ酸配列を含むLC;
i)配列番号98および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号99および6のアミノ酸配列を含むLC;
j)配列番号108および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号109および6のアミノ酸配列を含むLC;
K)配列番号118および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号119および6のアミノ酸配列を含むLC;
l)配列番号128および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号129および6のアミノ酸配列を含むLC;
m)配列番号138および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号139および6のアミノ酸配列を含むLC;
n)配列番号148および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号149および6のアミノ酸配列を含むLC;
o)配列番号158および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号159および6のアミノ酸配列を含むLC;
p)配列番号168および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号169および6のアミノ酸配列を含むLC;
q)配列番号178および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号179および6のアミノ酸配列を含むLC;
r)配列番号188および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号189および6のアミノ酸配列を含むLC;
s)配列番号198および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号199および6のアミノ酸配列を含むLC;
t)配列番号208および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号209および6のアミノ酸配列を含むLC;
u)配列番号218および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号219および6のアミノ酸配列を含むLC;または
v)配列番号228および23のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号229および6のアミノ酸配列を含むLC。
【0032】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体は、以下を含む:
a)配列番号15および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含むLC;
b)配列番号28および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号29および6のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号38および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号39および6のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号48および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号49および6のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号58および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号59および6のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号68および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号69および6のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号78および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号79および6のアミノ酸配列を含むLC;
h)配列番号88および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号89および6のアミノ酸配列を含むLC;
i)配列番号98および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号99および6のアミノ酸配列を含むLC;
j)配列番号108および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号109および6のアミノ酸配列を含むLC;
k)配列番号118および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号119および6のアミノ酸配列を含むLC;
l)配列番号128および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号129および6のアミノ酸配列を含むLC;
m)配列番号138および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号139および6のアミノ酸配列を含むLC;
n)配列番号148および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号149および6のアミノ酸配列を含むLC;
o)配列番号158および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号159および6のアミノ酸配列を含むLC;
p)配列番号168および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号169および6のアミノ酸配列を含むLC;
q)配列番号178および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号179および6のアミノ酸配列を含むLC;
r)配列番号188および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号189および6のアミノ酸配列を含むLC;
s)配列番号198および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号199および6のアミノ酸配列を含むLC;
t)配列番号208および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号209および6のアミノ酸配列を含むLC;
u)配列番号218および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号219および6のアミノ酸配列を含むLC;または
v)配列番号228および24のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号229および6のアミノ酸配列を含むLC。
【0033】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体は、以下を含む:
a)配列番号15および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含むLC;
b)配列番号28および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号29および6のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号38および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号39および6のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号48および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号49および6のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号58および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号59および6のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号68および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号69および6のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号78および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号79および6のアミノ酸配列を含むLC;
h)配列番号88および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号89および6のアミノ酸配列を含むLC;
i)配列番号98および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号99および6のアミノ酸配列を含むLC;
j)配列番号108および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号109および6のアミノ酸配列を含むLC;
k)配列番号118および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号119および6のアミノ酸配列を含むLC;
l)配列番号128および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号129および6のアミノ酸配列を含むLC;
m)配列番号138および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号139および6のアミノ酸配列を含むLC;
n)配列番号148および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号149および6のアミノ酸配列を含むLC;
o)配列番号158および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号159および6のアミノ酸配列を含むLC;
p)配列番号168および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号169および6のアミノ酸配列を含むLC;
q)配列番号178および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号179および6のアミノ酸配列を含むLC;
r)配列番号188および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号189および6のアミノ酸配列を含むLC;
s)配列番号198および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号199および6のアミノ酸配列を含むLC;
t)配列番号208および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号209および6のアミノ酸配列を含むLC;
u)配列番号218および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号219および6のアミノ酸配列を含むLC;または
v)配列番号228および25のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号229および6のアミノ酸配列を含むLC。
【0034】
ある態様において、本発明は、それぞれ配列番号7-12のアミノ酸配列を含むH-CDR1-3およびL-CDR1-3を含む、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0035】
ある態様において、本発明は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号4のアミノ酸配列を含むVLを含む、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0036】
特定の態様において、本発明は、配列番号15および25のアミノ酸配列を含む重鎖ならびに配列番号4および6のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗TIM-3抗体を提供する。
【0037】
本発明はまた、配列番号236のアミノ酸残基F61およびI117を含むTIM-3のエピトープに結合する抗TIM-3抗体(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144、20293または20131)またはその抗原結合部分を提供する。ある態様において、エピトープはさらに、アミノ酸残基R69を含む(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144または20293)。他の態様において、エピトープはさらに、P50、E62、M118およびD120を含み(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144または20131)、またさらに、アミノ酸残基R69、V60およびG64を含んでいてよい(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、または15086.17144)。
【0038】
特定の態様において、抗体またはその部分は、配列番号236のアミノ酸残基P50、V60、F61、E62、G64、R69、I117、M118およびD120(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145または15086.17144)、配列番号236のアミノ酸残基F61、R69およびI117(例えば、抗体20293)、または配列番号236のアミノ酸残基P50、F61、E62、I117、M118およびD120(例えば、抗体20131)を含むTIM-3のエピトープに結合する。
【0039】
本発明はまた、配列番号236のアミノ酸残基62-67を含むTIM-3のエピトープに結合するモノクローナル抗体(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144または20293)またはその抗原結合部分を提供する。さらに、本発明は、配列番号236のアミノ酸残基114-117を含むTIM-3のエピトープに結合するモノクローナル抗体(例えば、抗体20131)またはその抗原結合部分を提供する。
【0040】
ある態様において、抗TIM-3抗体はIgG抗体、例えばヒトIgG抗体である。ある態様において、抗体は、FC領域内に少なくとも1つの変異を含む。特定の態様において、抗体は、IMGTの番号付けスキームに従って番号付けされている、重鎖アミノ酸位置228、233、234および235の1つまたはそれ以上における変異を含む。例えば、位置234および235のアミノ酸残基の一方または両方は、Alaに変異されていてよく、および/または位置228のアミノ酸残基は、Proに変異されていてよい。
【0041】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、以下の特性の少なくとも1つを有する:
a)表面プラズモン共鳴により測定される23nM以下のKDでヒトTIM-3に結合する;
b)表面プラズモン共鳴により測定される22nM以下のKDでカニクイザルTIM-3に結合する;
c)ELISAにより測定される1.2nM以下のEC50でヒトTIM-3に結合する;
d)ELISAにより測定される46nM以下のEC50でカニクイザルTIM-3に結合する;
e)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌を増加させる;
f)二方向混合リンパ球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌を増加させる;
g)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいてTNF-α分泌を増加させる;
h)樹状細胞からのTNF-α分泌を増加させる;および
i)TIM-3とホスファチジルセリンの相互作用を阻害する。
【0042】
そのような抗体の例としては、抗体15086.15086(少なくとも特性a、c、d、e、gおよびhを有する);抗体15086.17145(少なくとも特性a、c、d、e、g、hおよびiを有する)、抗体15086.16837または15086.17144(少なくとも特性a、cおよびdを有する)、抗体20293または20131(少なくとも特性a、b、c、d、e、fおよびhを有する)、抗体20362(少なくとも特性c、e、fおよびhを有する)、ならびに抗体19324、19416、19568、20185、20300または20621(少なくとも特性c、d、e、fおよびhを有する)が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、上記の特性の全てを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも特性a、c、d、e、gおよびhを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも特性a、c、d、e、g、hおよびiを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体または抗原結合部分は、少なくとも特性a、cおよびdを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも特性a、b、c、d、e、fおよびhを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも特性c、e、fおよびhを有する。ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも特性c、d、e、fおよびhを有する。
【0043】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、NK細胞の活性を増加させる。ある態様において、この活性はADCC(抗体依存性細胞傷害)により介在される。
【0044】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、TIM-3への結合について、ABTIM3と競合しない(PCT公開公報WO2015/117002参照)、および/またはmAb15と競合しない(PCT公開公報WO2016/111947参照)。ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ABTIM3および/またはmAB15と同じエピトープに結合しない;例えば、本発明の抗体またはその部分は、ABTIM3および/またはmAb15によって結合されない、TIM-3上の1以上の残基に結合する。
【0045】
他の側面において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分および薬学的に許容される賦形剤を含む、要すればさらなる治療剤、例えば化学療法剤、抗腫瘍剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤またはTIM-3経路阻害剤を含んでいてよい、医薬組成物を提供する。
【0046】
本発明はさらに、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分の、重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいは両方を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0047】
本発明はまた、かかる単離された核酸分子を含むベクターであって、要すればさらに発現制御配列を含んでいてよいベクターを提供する。
【0048】
本発明はまた、本明細書に記載の抗TIM-3抗体の、重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいは両方を含む、宿主細胞を提供する。
【0049】
本発明はまた、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の作製方法であって、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の、重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、および軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供し、該宿主細胞を抗体またはその部分の発現に適する条件下で培養し、そして得られた抗体またはその部分を単離することを含む、方法を提供する。
【0050】
本発明はまた、本明細書に記載の抗TIM-3抗体の抗原結合部分および別の異なる抗体、例えば別の抗TIM-3抗体(例えば、本明細書に記載の別の抗TIM-3抗体)あるいはその活性が癌のような病状に介在する異なるタンパク質、例えば別の免疫チェックポイントタンパク質、癌抗原もしくは別の細胞表面分子を標的とする抗体、例えば別の異なる抗体の抗原結合部分を有する、多重特異性(例えば二重特異性)結合分子を提供する。
【0051】
本発明はまた、患者(例えば、ヒト患者)において免疫を増強するための方法であって、該患者に本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分または多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子を投与することを含む方法を提供する。
【0052】
本発明はさらに、患者(例えば、ヒト患者)において癌を処置する方法であって、該患者に本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分または多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子を投与することを含む方法を提供する。ある態様において、癌は、皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓からなる群より選択される組織に由来する。ある態様において、患者は、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫を有する。ある態様において、患者は、固形腫瘍(例えば、進行性または転移性固形腫瘍)を有する。ある態様において、患者は、黒色腫、非小細胞肺癌、結腸直腸癌または腎細胞癌腫を有する。ある態様において、該方法はさらに、化学療法剤、抗腫瘍剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤、および/またはTIM-3経路阻害剤を投与することをさらに含む。
【0053】
本発明はさらに、上記の処置における使用;上記の処置のための医薬としての、該抗体、抗原結合部分または多重特異性結合分子の使用;ならびに、上記の処置、すなわち、該患者の免疫系を増強する必要のあるヒト患者の処置および上記の癌のうち1つのようなヒト癌患者の処置のための医薬の製造を目的とする、該抗体、抗原結合部分または多重特異性結合分子の使用を目的とする、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分または多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子を提供する。本発明はまた、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分または多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子を含む製品、ならびに該製品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、一方向混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおけるIFN-γ産生についての抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の用量応答曲線を示す。
【
図2】
図2は、一方向MLRアッセイにおけるTNF-α産生についての抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の用量-反応曲線を示す。
【
図3】
図3は、Meso Scaleの電気化学発光サイトカインアッセイを用いてTNF-αレベルとして測定される、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の精製された樹状細胞サブセットへの影響を示す。
【
図4】
図4は、本発明の抗TIM-3抗体ならびに陽性対照抗TIM-3抗体および2つの陰性対照抗体の存在下での、ホスファチジルセリン(PtdS)陽性(アポトーシス)細胞へのTIM-3-Fc結合を示す。A:本発明の抗TIM-3抗体[15086.17145];B:陰性対照非遮断抗TIM-3抗体[15338.15338];C:対照抗TIM-3抗体[18571.18571];D:陰性対照抗PD-1抗体Keytruda
(登録商標)(ペムブロリズマブ)。
【
図5】
図5は、一方向MLRアッセイにおけるIFN-γ産生についての、9個の抗TIM-3抗体の用量応答曲線を示す。
【
図6】
図6は、二方向MLRアッセイにおけるIFNについての10個の抗TIM-3抗体の用量応答曲線を示す。抗体15086.17145は、“15086”と示されている。
【
図7】
図7は、2人の独立したドナーからの単球由来の樹状細胞におけるTNF-α産生についての9個の抗TIM-3抗体の用量応答曲線を示す。
【
図8】
図8は、18個の抗TIM-3抗体のパネルの結合競合分析によって同定されたエピトープ基(エピトープビン(bin))の概要を示す。黒色の線で結ばれた円で囲まれた抗体は、両方の方向における交差遮断活性を示す。四角で囲まれた抗体は、抗体が溶液中で試験されたときのみ、一方向性の遮断を示す。破線は、抗体が固定化されている場合のみ、一方向性の遮断を示す。抗体は、他の抗TIM-3抗体との競合パターンに従ってグループ分けされる。抗体15086.17145は、“15086”と示されている。
【
図9】
図9は、ヒトTIM-3 IgVドメイン(PDB 5F71)の構造上の抗体エピトープの位置を示す。ヒトTIM-3 IgVドメインの描写(cartoon)は、3つの異なる向きで示され、ホスファチジルセリン結合部位の位置が示されている。マッピングされたエピトープの位置は、各抗体のTIM-3空間充填モデル上に暗色で示されている。Fabフラグメント15086は“15086”として示され、Fabフラグメント20293は“20293”として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0055】
発明の詳細な説明
本発明は、癌患者などのヒト患者における免疫系の増強のために使用され得る新規の抗ヒトTIM-3抗体を提供する。特に断らない限り、本明細書で用いる“TIM-3”は、ヒトTIM-3を意味する。ヒトTIM-3ポリペプチド配列は、Uniprot受託番号Q8TDQ0(HAVR2_HUMAN)の下で利用可能であり、本明細書中、配列番号236として示されている。
【0056】
本明細書で用いる用語“抗体”(Ab)または“免疫グロブリン”(Ig)は、ジスルフィド結合によって互い結合されている、2つの重(H)鎖(約50-70kDa)および2つの軽(L)鎖(約25kDa)を含む四量体を意味する。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。VHおよびVLドメインは、“フレームワーク領域”(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する(interspersed)“相補性決定領域”(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができる。VHおよびVLはそれぞれ、3つのCDR(重鎖のCDRを本明細書中、H-CDRと記載する;軽鎖のCDRを本明細書中、L-CDRと記載する)および4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシル末端に以下の順で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖または軽鎖におけるアミノ酸番号の割り当ては、IMGT(登録商標)の定義(Lefranc et al., Dev Comp Immunol 27(1):55-77 (2003));または、Kabatの定義、免疫学的関心のあるタンパク質の配列(National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987 および 1991)); Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); または Chothia et al., Nature 342:878-883 (1989)に従って行われ得る。
【0057】
用語“組換え抗体”とは、該抗体をコードするヌクレオチド配列(複数可)を含む細胞または細胞株から発現される抗体を意味し、ここで、該ヌクレオチド配列(複数可)は、天然にはその細胞と関連していない。
【0058】
用語“単離されたタンパク質”、“単離されたポリペプチド”または“単離された抗体”は、その起源または派生供給源に基づいて、(1)その天然状態でそれに付随する天然関連成分と結合していない、(2)同じ種由来の他のタンパク質を含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、および/または(4)天然には存在しない、タンパク質、ポリペプチドまたは抗体を意味する。従って、化学的に合成されたか、またはそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、その天然関連成分から“単離”されていてよい。タンパク質はまた、当該分野で周知のタンパク質精製技術を用いる単離によって、天然関連成分を実質的に含まなくされ得る。
【0059】
本明細書で用いる用語“生殖系列”は、それらが生殖細胞を経由して親から子孫に渡される、抗体遺伝子および遺伝子セグメントのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を意味する。生殖系列配列は、B細胞成熟の過程において組換えおよび超変異(hyper-mutation)事象によって改変されている成熟B細胞における抗体をコードするヌクレオチド配列と区別される。特定の生殖系列配列を利用する抗体は、生殖系列ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と整列するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有し、それは他の何れかの生殖系列ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列より密接に特定する。
【0060】
用語“親和性”は、抗原と抗体の間の誘引力の尺度を意味する。抗原に対する抗体の内因性の誘引性は、一般的には、特定の抗体-抗原相互作用の結合親和性平衡定数(KD)として表される。抗体は、KDが≦1mM、好ましくは≦100nMのとき、抗原に特異的に結合すると言われる。KD結合親和性定数は、例えば、表面プラズモン共鳴(BIAcore(商標))または例えばBio-RadのProteOn(商標)XPR36 SPRシステムまたはOctet(商標)システムを用いるバイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)により、測定することができる。
【0061】
用語“koff”は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を意味する。koff解離速度定数は、例えばOctet(商標)システムを用いてバイオレイヤー干渉法により測定することができる。
【0062】
本明細書で用いる用語“エピトープ”は、抗体または二重特異性結合分子などの関連分子に特異的に結合する抗原の一部分(決定基)を意味する。エピトープ決定基は、一般的に、アミノ酸または炭水化物または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、一般的に、特定の三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。エピトープは“直線状”または“立体的”であってよい。直線状エピトープでは、タンパク質(例えば、抗原)と相互作用分子(抗体など)との間の相互作用点の全てが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に生じる。立体的エピトープでは、相互作用点は、アミノ酸の一次配列において互いに離れたタンパク質上のアミノ酸残基に渡って生じる。抗原上の所望のエピトープが決定されると、当技術分野で周知の技術を用いて、そのエピトープに対する抗体を作製することが可能となる。例えば、直線状エピトープに対する抗体は、例えば、該直線状エピトープのアミノ酸残基を有するペプチドを用いて動物を免疫化することにより、作製することができる。立体的エピトープに対する抗体は、例えば、該立体的エピトープの関連アミノ酸残基を含むミニドメイン(mini-domain)を用いて動物を免疫化することにより、作製することができる。特定のエピトープに対する抗体もまた、例えば、目的の標的分子またはその関連する部分(例えば、TIM-3のECD)を用いて動物を免疫化し、その後該エピトープへの結合についてスクリーニングすることにより、作製することができる。
【0063】
当業者は、競合アッセイ、エピトープ・ビニングおよびアラニンスキャニングを含むが、これらに限定されない、当該分野で公知の方法を用いて、抗体が本発明の抗TIM-3抗体と同じエピトープに結合するかどうか、または本発明の抗TIM-3抗体と結合について競合するかどうかを、決定することができる。ある態様において、試験抗体および本発明の抗TIM-3抗体は、TIM-3上の少なくとも1つの共通する残基(例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の共通する残基)に結合する。さらなる態様において、TIM-3上の接触(contact)残基は、試験抗体と本発明の抗TIM-3抗体との間で完全に同一である。一態様において、当業者は、本発明の抗TIM-3抗体を飽和条件下でTIM-3に結合させて、試験抗体のTIM-3に結合する能力を測定することができる。試験抗体が対照抗TIM-3抗体と同時にTIM-3に結合することができる場合、該試験抗体は、対照抗TIM-3抗体とは異なるエピトープに結合する。しかしながら、試験抗体が同時にTIM-3に結合することができない場合は、該試験抗体は、本発明の抗TIM-3抗体が結合するエピトープと同じエピトープ、重複するエピトープ、またはそれに近接するエピトープに結合する。この試験は、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、バイオレイヤー干渉法またはフローサイトメトリーを用いて行うことができる。抗TIM-3抗体が別の抗TIM-3抗体と交差競合するかどうかを試験するために、当業者は、二方向での、すなわち、既知の抗体が試験抗体を阻害するかどうか、および試験抗体が既知の抗体を阻害するかどうかを決定する、上記の競合法を使用することができる。かかる交差競合試験は、IBIS MX96 SPR 装置またはOctet(商標)を用いて実施され得る。
【0064】
特定の場合には、標的エピトープに対する結合親和性を改善するために1またはそれ以上のCDRアミノ酸残基を変化させることも望ましいであろう。これは“親和性成熟(affinity maturation)”として知られている。種々の親和性成熟方法が当技術分野において公知であり、例えばBurks et al., Proc Natl Acad Sci USA, 94:412-417 (1997)に記載されたインビトロスキャニング飽和突然変異誘発、およびWu et al. Proc Natl Acad Sci USA 95:6037-6042 (1998)に記載の段階的インビトロ親和性成熟法が挙げられる。
【0065】
本明細書で用いる用語、抗体の“抗原結合部分”(または、単に“抗体部分”)は、抗原(例えば、ヒトTIM-3またはその一部)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれ以上の部分または断片を意味する。全長抗体の特定の断片が、抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示されている。用語“抗原結合部分”に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片:VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片:ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片;および、(vi)抗原に特異的に結合することが可能な単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の二つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらを一本鎖タンパク質として作製することを可能にする合成ペプチドリンカーにより、組換え法を用いて結合させることができ、そこで、VLおよびVHドメインは対になり一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する。VHおよび/またはVLを含む抗原結合分子もまた本発明の範囲内である。VHの場合、分子はまた、CH1、ヒンジ、CH2、またはCH3領域の1またはそれ以上を含んでいてもよい。かかる単鎖抗体もまた、用語、抗体の“抗原結合部分”に包含されることが意図される。ダイアボディのような単鎖抗体の他の形態もまた包含される。ダイアボディは二価の二重特異性抗体であり、ここで、VHおよびVLドメインは、単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いて、該ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させて2つの抗原結合部位を作り出す。
【0066】
FabおよびF(ab’)2断片のような抗体の部分は、完全長抗体のパパイン消化またはペプシン消化などの従来技術を用いて、完全長抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体の部分および免疫接着分子は、例えば本明細書に記載の、標準的な組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0067】
抗TIM-3抗体のクラス(アイソタイプ)およびサブクラスは、当技術分野で公知の何れかの方法により決定することができる。一般的に、抗体のクラスおよびサブクラスは、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに特異的な抗体を用いて決定することができる。かかる抗体は、市販されている。クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウェスタンブロットならびに他の技術により決定することができる。あるいは、クラスおよびサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常領域の全部または一部を配列決定し、免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの既知のアミノ酸配列とそのアミノ酸配列を比較し、そして抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定することができる。
【0068】
抗体配列の所定の位置における特定のアミノ酸残基を示すとき、例えば、“35S”の表示は、位置および残基を意味し、すなわち、この場合、セリン残基(S)が配列の位置35に存在することを示す。同様に、例えば、“13Q+35S”の表示は、それぞれの位置における2つの残基を意味する。
【0069】
特に断らない限り、本明細書において言及される全ての抗体アミノ酸残基番号は、IMGT(登録商標)の番号付けスキームによるものである。
【0070】
抗TIM-3抗体
本発明は、TIM-3に対する抗体、およびその抗原結合部分を提供する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒトイディオタイプを有する抗体を作製することができるトランスジェニックラットから作製されるヒト抗体である。
【0071】
本発明の新規の抗TIM-3抗体の利点は、それらが樹状細胞を強力に活性化できることである(例えば、実施例4を参照のこと)。特定の理論はともかく、本発明の抗TIM-3抗体は、樹状細胞の活性化を介してT細胞(例えば、腫瘍特異的T細胞)を刺激することができると考えられる。さらに、本出願は、イソ型IgG1またはIgG2の抗TIM-3抗体が高レベルの活性を有する一方で、イソ型IgG4またはIgG1-LALAの抗体は、非機能性または低機能性であることを初めて示している(例えば、実施例3および4を参照のこと)。特定の理論はともかく、本発明者らのデータは、Fc受容体を介してTIM-3を架橋することができる抗TIM-3抗体が、免疫系の特に強力なアクティベーターであることを示唆する。例えば、本発明の抗TIM-3 IgG2抗体は、樹状細胞上に見出されるFcγR2Aに結合することができ、樹状細胞上のTIM-3分子を架橋することによって樹状細胞を活性化すると考えられる。
【0072】
本明細書に記載の抗TIM-3抗体は、5ケタの番号、例えば“20131”、または10ケタの番号、例えば“15086.16837”のいずれかで示され得る。最初の5ケタが同じ10ケタの番号は、同じ親抗体に由来しており、例えば抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144の場合がそれに当たる。同じ6個のCDRを共有するそのような抗体は、同じかまたは実質的に同じ標的結合特性を有すると予期される。本発明で提供されるタンパク質配列およびDNA配列から明らかなように、15086.16837、15086.17145および15086.17144変異体は、親15086抗体(“15086.15086”)と比べてVH配列において単一のアミノ酸相違を有し、すなわち位置6においてQではなくEを有するが、VLアミノ酸配列は同一である。これらの変異体は、主にそれらの抗体フォーマット/サブクラスによって異なることも明らかであり、すなわち:
15086.15086:IgG1
15086.16837:IgG1 LALA
15086.17145:IgG2
15086.17144:IgG4である。
【0073】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-9のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号3および5のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号10-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号3および5のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0074】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-9のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号15および25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号10-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号15および25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0075】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-9のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号15のアミノ酸配列および配列番号23または24のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号10-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号7-12のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号15のアミノ酸配列および配列番号23または24のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号4および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0076】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号30-32のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号28のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号33-35のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号29のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号29および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号30-35のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号28のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号29のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号29および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0077】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号40-42のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号38のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号43-45のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号39および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号40-45のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号38のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号39および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0078】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号50-52のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号48のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号53-55のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号49のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号49および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号50-55のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号49のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号48のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号49および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0079】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号60-62のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号58のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号58のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号63-65のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号59および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号60-65のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号58のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号58のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号59および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0080】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号70-72のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号68のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号68のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号73-75のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号69のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号69および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号70-75のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号68のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号69のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号68のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号69および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0081】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号80-82のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号78のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号78のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号78のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号83-85のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号79のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号79および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号80-85のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号78のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号78のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号79のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号78のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号79および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0082】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号90-92のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号88のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号88のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号88のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号93-95のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号89のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号89のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号89および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号90-95のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号88のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号89のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号88のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号89のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号88のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号89および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0083】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号100-102のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号98のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号98のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号103-105のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号99のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号99のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号99および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号100-105のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号99のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号98のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号99のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号98のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号99および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0084】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号110-112のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号108のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号108のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号113-115のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号109のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号109のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号109および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号110-115のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号109のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号108のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号109のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号108のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号109および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0085】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号120-122のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号118のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号118のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号123-125のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号119のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号119および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号120-125のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号118のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号119のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号118のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号119および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0086】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号130-132のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号128のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号128のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号128のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号133-135のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号129のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号129のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号129および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号130-135のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号128のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号129のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号128のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号129のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号128のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号129および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0087】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号140-142のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号138のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号138のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号138のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号143-145のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号139のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号139のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号139および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号140-145のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号138のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号139のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号138のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号139のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号138のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号139および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0088】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号150-152のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号148のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号148のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号148のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号153-155のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号149のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号149のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号149および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号150-155のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号148のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号149のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号148のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号149のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号148のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号149および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0089】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号160-162のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号158のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号158のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号158のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号163-165のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号159のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号159のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号159および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号160-165のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号158のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号159のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号158のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号159のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号158のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号159および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0090】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号170-172のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号168のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号168のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号168のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号173-175のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号169のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号169のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号169および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号170-175のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号168のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号169のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号168のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号169のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号168のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号169および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0091】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号180-182のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号178のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号178のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号178のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号183-185のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号179のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号179のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号179および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号180-185のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号178のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号179のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号178のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号179のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号178のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号179および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0092】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号190-192のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号188のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号188のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号188のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号193-195のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号189のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号189のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号189および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号190-195のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号188のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号189のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号188のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号189のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号188のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号189および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0093】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号200-202のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号198のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号198のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号198のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号203-205のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号199のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号199のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号199および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号200-205のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号198のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号199のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号198のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号199のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号198のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号199および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0094】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号210-212のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号208のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号208のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号208のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号213-215のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号209のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号209のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号209および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号210-215のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号208のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号209のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号208のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号209のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号208のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号209および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0095】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号220-222のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号218のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号218のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号218のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号223-225のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号219のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号219のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号219および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号220-225のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号218のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号219のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号218のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号219のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号218のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号219および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0096】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、以下からなる群より選択される:
a)H-CDR1-3が、それぞれ配列番号230-232のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号228のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)VHが、配列番号228のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)重鎖(HC)が、配列番号228のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)L-CDR1-3が、それぞれ配列番号233-235のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号229のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)VLが、配列番号229のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)軽鎖(LC)が、配列番号229および6のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)H-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号230-235のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)VHが、配列番号228のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつVLが、配列番号229のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)VHが、配列番号228のアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号229のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)HCが、配列番号228のアミノ酸配列および配列番号5、23、24または25のアミノ酸配列を含み、かつLCが、配列番号229および6のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0097】
ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、IgG1フォーマットを有する抗体15086.15086、IgG1 LALAフォーマットを有する抗体15086.16837、IgG2フォーマットを有する抗体15086.17145、またはIgG4フォーマットを有する抗体15086.17144と競合するか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合する。ある態様において、本発明の抗体はIgGである。ある態様において、本発明の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4フォーマットを有する。
【0098】
ある態様において、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、抗体20131、20293、15105、15107、15109、15174、15175、15260、15284、15299、15353、15354、17244、17245、19324、19416、19568、20185、20300、20362または20621と競合するか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合する。ある態様において、本発明の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4フォーマットを有する。
【0099】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、以下の実施例12に定義される、エピトープビン1由来の抗体(対照抗体mAb 15)、ビン2由来の抗体(例えば、抗体15105および15107)ならびにビン8由来の抗体(例えば、抗体15174および15175)のいずれかまたは全てと競合しないか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合しない。
【0100】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、以下の実施例12に定義される、エピトープビン2由来の抗体(例えば、抗体15105および15107)ならびにビン8由来の抗体(例えば、抗体15174および15175)のいずれかまたは全てと競合しないか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合しない。
【0101】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、ヒトTIM-3への結合について、以下の実施例12に定義される、エピトープビン2由来の抗体(例えば、抗体15105および15107)のいずれかまたは全てと競合しないか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合しない。
【0102】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、ヒトTIM-3への結合について、重鎖(H)CDR1-3および軽鎖(L)CDR1-3が、それぞれ配列番号7-12、30-35、40-45、50-55、60-65、70-75、80-85、90-95、100-105、110-115、120-125、130-135、140-145、150-155、160-165、170-175、180-185、190-195、200-205、210-215、220-225または230-235を含む抗体と競合するか、あるいはこれらの抗体と同じヒトTIM-3のエピトープに結合する。
【0103】
ある態様において、抗TIM-3抗体または抗原結合部分は、配列番号3、15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば、該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を有する。
【0104】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH);ならびに、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖定常領域(CH)を有する。
【0105】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号3、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のVHアミノ酸配列ならびに配列番号5のCHアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を有する。
【0106】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH);ならびに、配列番号23、24または25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖定常領域(CH)を有する。特定の態様において、該CHは、配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する。
【0107】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号15、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、158、168、178、188、198、208、218または228のVHアミノ酸配列ならびに配列番号23、24または25のCHアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を有する。特定の態様において、重鎖は、配列番号25のCHアミノ酸配列を含む。
【0108】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のVLアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する。
【0109】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のVLアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL);ならびに、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、例えば該配列と少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する軽鎖定常領域(CL)を有する。
【0110】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、配列番号4、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、159、169、179、189、199、209、219または229のVLアミノ酸配列ならびに配列番号6のCLアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を有する。
【0111】
ある態様において、抗TIM-3抗体は、上記の重鎖のいずれか1つおよび上記の軽鎖のいずれか1つを含む。
【0112】
ある態様において、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分のいずれかは、ガレクチン-9、CEACAM1、HMGB-1およびホスファチジルセリンなどのリガンドのTIM-3への結合を阻害し得る。
【0113】
一態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の投与は、樹状細胞を活性化し、その成熟を引き起こし、それによりそのT細胞を刺激する能力を形成し得る。特定の理論はともかく、本発明の抗TIM-3抗体は、TIM-3樹状細胞アクティベーターとして機能し、樹状細胞に対するその効果は、T細胞を刺激する働きをすることであると考えられる。従って、腫瘍関連環境では、抗TIM-3抗体は、腫瘍関連樹状細胞の成熟および活性化を引き起こし、結果として腫瘍特異的T細胞の活性化をもたらし得る。
【0114】
ある態様において、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分のいずれかは、少なくとも100、少なくとも50、少なくとも40、少なくとも30、少なくとも25、少なくとも20、少なくとも15、少なくとも10、少なくとも9、少なくとも8、少なくとも7、または少なくとも6nMのKDでヒトTIM-3に結合し得る。ある態様において、KDは、表面プラズモン共鳴を用いて決定される。
【0115】
ある態様において、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分のいずれかは、少なくとも100、少なくとも50、少なくとも40、少なくとも30、少なくとも25、少なくとも24、少なくとも23、少なくとも22、少なくとも21または少なくとも20nMのKDでカニクイザルTIM-3に結合し得る。ある態様において、KDは、表面プラズモン共鳴を用いて決定される。
【0116】
ある態様において、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分のいずれかは、EC50≦2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.15nMのヒトTIM-3に対する親和性(avidity)を有し得る。ある態様において、本明細書に記載の抗TIM-3抗体または抗原結合部分のいずれかは、EC50≦80、70、60、50、40、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.15nMのカニクイザルTIM-3に対する親和性を有し得る。
【0117】
一態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の投与は、T細胞を直接活性化し得る。
【0118】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、配列番号236の以下の残基:P50、V60、F61、E62、G64、R69、I117、M118およびD120の、少なくとも1つ(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9つ)を含む、TIM-3のエピトープに結合する。上記の残基の何れかの組合せを有するエピトープが意図される。
【0119】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、配列番号236の残基62-67および/または114-117を含むTIM-3のエピトープに結合する。ある態様において、抗体またはその部分は、配列番号236の残基62-67(またはその断片、例えば1、2、3、4または5残基の断片)に結合する(例えば、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145、15086.17144および20293)。ある態様において、抗体またはその部分は、配列番号236の残基114-117(またはその断片、例えば1、2または3残基の断片)に結合する(例えば、抗体20131)。上記の残基の何れかの組合せを有するエピトープも意図される。
【0120】
本明細書に記載の方法により得られる抗TIM-3抗体のクラスは、別のクラスまたはサブクラスに変更またはスイッチすることができる。本発明の一側面では、VLまたはVHをコードする核酸分子は、それが、CLまたはCHをコードする核酸配列を含まないように、当技術分野で周知の方法を用いて単離される。次いで、VLまたはVHをコードする核酸分子は、免疫グロブリン分子の異なるクラスから、それぞれCLまたはCHをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。これは、上記の通り、CLまたはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を用いて達成することができる。例えば、元はIgMであった抗TIM-3抗体は、IgGにクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチは、別のIgGサブクラスに変換するために、例えばIgG1からIgG2に変換するために使用されてもよい。κ軽鎖定常領域は、λ軽鎖定常領域に変更されてよい。所望のIgアイソタイプを有する本発明の抗体を産生するための好ましい製造法は、抗TIM-3抗体の重鎖をコードする核酸分子および抗TIM-3抗体の軽鎖をコードする核酸分子を単離する工程、重鎖の可変ドメインを得る工程、重鎖の可変ドメインを所望のアイソタイプの重鎖の定常ドメインとライゲーションする工程、細胞において軽鎖およびライゲートした重鎖を発現させる工程、ならびに所望のアイソタイプを有する抗TIM-3抗体を回収する工程を含む。
【0121】
本発明の抗TIM-3抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgD分子であり得るが、一般的には、IgGアイソタイプであり、例えばIgGサブクラスIgG1、IgG2aもしくはIgG2b、IgG3またはIgG4である。一態様において、抗体はIgG1である。別の態様において、抗体はIgG2である。
【0122】
一態様において、抗TIM-3抗体は、Fc領域に少なくとも1つの変異を含み得る。多くの種々のFc変異が知られており、これらの変異はエフェクター機能を提供する。例えば、多くの場合、例えばリガンド/受容体相互作用が望ましくない場合または抗体-薬剤複合体の場合に、エフェクター機能を低下させる、または欠失させることが望ましい。エフェクター機能を低下させるために変異させるのに有利であり得るFc領域のアミノ酸の位置には、位置228、233、234および235の1以上が含まれ、ここで、アミノ酸の位置は、IMGT(登録商標)の番号付けスキームに従って番号付けされている。
【0123】
一態様において、位置234および235のアミノ酸残基の一方または両方を、例えば、LeuからAlaへ変異させることができる(L234A/L235A)。これらの変異は、IgG1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させる。これに加えて、またはこれに代えて、位置228のアミノ酸残基は、例えばProに変異されてよい。別の態様において、位置233のアミノ酸残基は、例えばProに変異されてよく、位置234のアミノ酸残基は、例えばValに変異されてよく、および/または位置235のアミノ酸残基は、例えばAlaに変異されてよい。アミノ酸の位置は、IMGT(登録商標)の番号付けスキームに従って番号付けされている。
【0124】
別の態様において、抗体がIgG4サブクラスである場合、それは、変異S228Pを含んでいてよく、すなわち、位置228にプロリンを有していてよい(ここで、アミノ酸の位置は、Eu IMGT(登録商標)の番号付けスキームに従って番号付けされている)。この変異は、望ましくないFabアーム交換を減少させることが知られている(Angal et al., Mol Immunol. 30:105-8 (1993))。
【0125】
ある態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、該抗体または抗体部分と1以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成される、大きな免疫接着分子の一部であってよい。そのような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al., Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101 (1995))、ならびに二価およびビオチニル化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al., Mol. Immunol. 31:1047-1058 (1994))が含まれる。他の例には、目的の抗原に特異的に結合する免疫接着分子にするために、抗体由来の1以上のCDRが共有結合または非共有結合により分子内に組み込まれている場合が含まれる。このような態様では、CDR(複数可)は、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれ得る、共有結合的に別のポリペプチド鎖に連結され得る、または非共有結合的に組み込まれ得る。
【0126】
別の態様において、融合抗体または免疫接着分子は、別のポリペプチドに連結された本発明の抗TIM-3抗体の全部または一部を含んで作製され得る。ある態様において、抗TIM-3抗体の可変ドメインのみがポリペプチドに連結されている。ある態様において、抗TIM-3抗体のVHおよびVLドメインが、互いに相互作用して抗原結合部位を形成するように、抗TIM-3抗体のVHドメインは、第一のポリペプチドに連結されており、一方、抗TIM-3抗体のVLドメインは、第一のポリペプチドと結合する第二のポリペプチドに連結されている。別の好ましい態様において、VHドメインは、VHおよびVLドメインが互いに相互作用することができるように、リンカーによってVLドメインから分離されている(例えば、一本鎖抗体)。VH-リンカー-VL抗体は、その後、目的のポリペプチドに連結される。さらに、融合抗体は、2(またはそれ以上)の単鎖抗体が互いに連結されて作製され得る。これは、単一のポリペプチド鎖上に二価もしくは多価抗体を作製したい場合、または二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
【0127】
単鎖抗体(scFv)を作製するために、VHおよびVLをコードするDNA断片は、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に作動可能に連結されており、その結果、VHおよびVL配列は、フレキシブルリンカーにより結合されたVLおよびVHドメインを有する、連続した一本鎖タンパク質として発現され得る。例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988);および、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照。単鎖抗体は、1つのVHおよびVLが用いられる場合、一価であり、2つのVHおよびVLが用いられる場合、二価であり、または3以上のVHおよびVLが用いられる場合、多価であり得る。二重特異性または多価抗体は、例えば、ヒトTIM-3および別の分子に特異的に結合するように作製され得る。
【0128】
他の態様において、他の改変抗体は、抗TIM-3抗体をコードする核酸分子を用いて製造され得る。例えば、“カッパボディ”(Ill et al., Protein Eng. 10:949-57 (1997))、“ミニボディ”(Martin et al., EMBO J. 13:5303-9 (1994))、“ダイアボディ”(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993))、または“一本鎖分子(Janusins)” (Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991) および Traunecker et al., Int. J. Cancer (Suppl.) 7:51-52 (1992))を、明細書の教示に従って標準的な分子生物学的技術を用いて製造することができる。
【0129】
本発明の抗TIM-3抗体または抗原結合部分は、誘導体化するか、または別の分子(例えば、別のペプチドもしくはタンパク質)に連結され得る。一般的に、抗体またはその部分は、TIM-3結合が誘導体化または標識によって悪影響を受けないように誘導体化される。従って、本発明の抗体および抗体部分は、本明細書に記載のヒト抗TIM-3抗体の無傷の形態および改変型の両方を含むことが意図される。例えば、本発明の抗体または抗体部分は、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディ)、検出試薬、医薬品、ならびに/あるいは別の分子(ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグなど)と該抗体または抗体部分との結合を仲介し得るタンパク質またはペプチドなどの、1または複数の他の分子化合物に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合またはその他によって)機能的に連結され得る。
【0130】
誘導体化抗体の1つのタイプは、(例えば、二重特異性抗体を作製するために、同じ種類または異なる種類の)2以上の抗体を架橋することによって作製される。好適な架橋リンカーは、適当なスペーサーで分離された2つの区別できる反応性基を有するヘテロ二官能性であるもの(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、またはホモ二官能性であるもの(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)が含まれる。このようなリンカーは、例えば、Pierce Chemical Company、Rockford、ILから入手可能である。
【0131】
抗TIM-3抗体はまた、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルもしくはエチル基、または炭水化物基などの化学基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特性を改善するのに、例えば血清半減期を増加させるのに有用である。
【0132】
本発明の抗体はまた標識されてもよい。本明細書で用いる用語“標識”または“標識した”は、抗体における別の分子の挿入を意味する。一態様において、標識は、例えば、放射標識したアミノ酸の挿入、または標識アビジン(例えば、光学的方法または熱量測定法により検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの結合などの、検出可能マーカーである。別の態様において、標識またはマーカーは、治療用の、例えば薬物複合体または毒素であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が当技術分野で公知であり、用いられ得る。ポリペプチドの標識の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、蛍光ランタニド)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレートなどの磁性剤、毒素、例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン(emetine)、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールならびにピューロマイシン、およびそのアナログまたはホモログ。ある態様において、標識は、可能性のある立体障害を減ずるために様々な長さのスペースアームにより結合される。
【0133】
ある態様において、本発明の抗体は、中性形態(両性イオン形態を含む)または正もしくは負に帯電した種として存在し得る。ある態様において、抗体は、薬学的に許容される塩を形成する対イオンと複合体を形成することができる。
【0134】
用語“薬学的に許容される塩”は、対イオンが薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基から誘導される、1または複数の抗体および1または複数の対イオンを含む複合体を意味する。
【0135】
二重特異性結合分子
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載の抗TIM-3抗体の結合特異性および別の抗TIM-3抗体(例えば、本明細書に記載の別の抗TIM-3抗体)の結合特異性を有する二重特異性結合分子、あるいはそれらの活性が癌のような病状に介在する、別の免疫チェックポイントタンパク質、癌抗原もしくは別の細胞表面分子などの異なるタンパク質を標的とする抗体を提供する。そのような二重特異性結合分子は、当技術分野で公知であり、種々のタイプの二重特異性結合分子の例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0136】
核酸分子およびベクター
本発明はまた、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。ある態様において、異なる核酸分子は、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖アミノ酸配列をコードする。他の態様において、同じ核酸分子は、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖アミノ酸配列をコードする。
【0137】
特に断らない限り、ヌクレオチド配列への言及は、その相補体を包含する。従って、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補的配列を有するその相補鎖を包含すると理解されるべきである。本明細書で言及される用語“ポリヌクレオチド”は、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマー形態、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれか、あるいはヌクレオチドのいずれかのタイプの修飾された形態を意味する。この用語は、一本鎖および二本鎖形態を含む。
【0138】
本発明はまた、本明細書に記載の1以上のヌクレオチド配列と、例えば、配列番号3、4、7-12、15、28-35、38-45、48-55、58-65、68-75、78-85、88-95、98-105、108-115、118-125、128-135、138-145、148-155、158-165、168-175、178-185、188-195、198-205、208-215、218-225および228-235からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列も提供する。核酸配列において、用語“配列同一性パーセント”は、最大一致のために整列させたとき、同じである2つの配列中の残基を意味する。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約18ヌクレオチド、より通常には少なくとも約24ヌクレオチド、一般的には少なくとも約28ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48またはそれ以上のヌクレオチドの長さであり得る。ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができ、当技術分野で公知の多数の異なるアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0(Genetics Computer Group(GCG),Madison,Wisconsin)におけるプログラムであるFASTA、Gap、またはBestfitを用いて比較され得る。例えば、プログラムFASTA2およびFASTA3を含むFASTAは、クエリー配列と検索配列と間の最適なオーバーラップの領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(Pearson, Methods Enzymol. 183:63-98 (1990); Pearson, Methods Mol. Biol. 132:185-219 (2000); Pearson, Methods Enzymol. 266:227-258 (1996);および、Pearson, J. Mol. Biol. 276:71-84 (1998);引用により本明細書に包含させる)。特に断らない限り、特定のプログラムまたはアルゴリズムのデフォルトのパラメータが使用される。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、引用により本明細書に包含される、そのデフォルトパラメーター(ワードサイズ6およびスコアリングマトリックスのためのNOPAMファクター)を用いてFASTAを使用して、またはGCGバージョン6.1中に提供されているようなそのデフォルトパラメーターを用いてGapを使用して、決定され得る。
【0139】
一側面において、本発明は、配列番号1、2、13、14、26、27、36、37、46、47、56、57、66、67、76、77、86、87、96、97、106、107、116、117、126、127、136、137、146、147、156、157、166、167、176、177、186、187、196、197、206、207、216、217、226および227からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。本発明はまた、該ヌクレオチド配列のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0140】
上記の態様のいずれかにおいて、核酸分子は単離されてよい。本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子は、そのような抗体または部分を産生する供給源から単離され得る。種々の態様において、核酸分子は、ヒトTIM-3抗原で免疫した動物から単離された抗TIM-3抗体を発現するB細胞から、またはそのようなB細胞から産生された不死化細胞から単離される。抗体をコードする核酸を単離する方法は当技術分野において周知である。mRNAを単離し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または抗体遺伝子のcDNAクローニングにおいて使用するためのcDNAを作製するために使用することができる。ある態様において、本発明の核酸分子は、単離よりむしろ合成され得る。
【0141】
ある態様において、本発明の核酸分子は、任意の供給源由来の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで結合された、本発明の抗TIM-3抗体または抗原結合部分由来のVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。同様に、本発明の核酸分子は、任意の供給源由来の軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで結合された本発明の抗TIM-3抗体または抗原結合部分由来のVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0142】
本発明のさらなる側面において、重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)の可変ドメインをコードする核酸分子は、完全長抗体遺伝子に“変換”され得る。一態様において、VHまたはVLドメインをコードする核酸分子は、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(複数可)に作動可能に連結され、および/またはVLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、重鎖定常(CH)または軽鎖定常(CL)ドメインのアミノ酸配列を既にコードする発現ベクター中に挿入することにより完全長抗体遺伝子に変換される。別の態様において、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子は、標準的な分子生物学的技術を用いて、CHおよび/またはCLドメインをコードする核酸分子にVHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を結合させること、例えばライゲーションすることにより、全長抗体遺伝子に変換される。その後、完全長の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子は、それらが導入された細胞から発現させることができ、抗TIM-3抗体が単離される。
【0143】
核酸分子は、抗TIM-3抗体を組換え的に大量に発現させるために使用されてもよい。本明細書に記載の通り、核酸分子はまた、例えばキメラ抗体、二重特異性抗体、単鎖抗体、免疫接着分子、ダイアボディ、突然変異抗体および抗体誘導体を産生するために使用されてもよい。
【0144】
別の態様において、本発明の核酸分子は、特定の抗体配列に対するプローブまたはPCRプライマーとして使用される。例えば、核酸は、診断方法におけるプローブとして、またはとりわけ抗TIM-3抗体の可変ドメインをコードするさらなる核酸分子を単離するために使用され得るDNAの領域を増幅するためのPCRプライマーとして使用することができる。ある態様において、核酸分子はオリゴヌクレオチドである。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、目的の抗体の重鎖および軽鎖の高度可変ドメインに由来する。ある態様において、本明細書に記載の通り、オリゴヌクレオチドは、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の1以上のCDRの全部または一部をコードする。
【0145】
別の態様において、核酸分子およびベクターは、突然変異した抗TIM-3抗体を作製するために使用されてもよい。抗体は、例えば抗体の結合特性を変化させるために、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインにおいて変異させてもよい。例えば、突然変異は、抗TIM-3抗体のKDを増加または減少させる、koffを増加または減少させる、あるいは抗体の結合特異性を変えるために、CDR領域の1以上に行われ得る。別の態様において、1以上の変異は、本発明のモノクローナル抗体において生殖細胞系と比べて変化されていることが知られているアミノ酸残基で行われる。変異は、可変ドメインのCDR領域またはフレームワーク領域において、または定常領域において行うことができる。好ましい態様において、変異は可変ドメインにおいて行われる。ある態様において、1以上の変異は、本発明の抗体またはその抗原結合部分の可変ドメインのCDR領域またはフレームワーク領域において生殖細胞系と比べて変化されていることが知られているアミノ酸残基で行われる。
【0146】
別の態様において、フレームワーク領域(複数可)を、得られたフレームワーク領域(複数可)が対応する生殖細胞系遺伝子のアミノ酸配列を有するように変異させる。突然変異は、抗TIM-3抗体の半減期を増加させるためにフレームワーク領域または定常領域において行われ得る。例えば、PCT公開公報WO00/09560を参照のこと。フレームワーク領域または定常領域における変異はまた、抗体の免疫原性を変化させることもでき、および/または別の分子への共有結合もしくは非共有結合のための部位を提供することもできる。本発明によれば、単鎖抗体は、可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域のいずれか1以上において、または定常領域において変異を有していてもよい。
【0147】
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の鎖の一方または両方を発現するのに好適なベクターを提供する。本明細書で用いる用語“ベクター”は、それが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を意味する。ある態様において、ベクターは、プラスミド、すなわち、さらなるDNAセグメントを連結することができるDNAの環状の二本鎖部分である。ある態様において、ベクターは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに連結することができるウイルスベクターである。ある態様において、ベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、それらが導入される宿主細胞内で自己複製可能である。他の態様では、ベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書中、“組換え発現ベクター”(または、単に“発現ベクター”)と呼ばれる。
【0148】
本発明は、本発明の抗TIM-3T抗体またはその抗原結合部分の重鎖、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の軽鎖、あるいは本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖の両方をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。本発明はさらに、融合タンパク質、改変型抗体、抗体断片およびそのプローブをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0149】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、遺伝子が、転写および翻訳調節配列のような必要な発現調節配列に作動可能に連結されるように、上記で得られた、部分的または完全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入することによって発現される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなど、コスミド、YAC、EBV由来エピソーム等が挙げられる。抗体コーディング配列は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が、該抗体コーディング配列の転写および翻訳を調節するそれらの意図された機能を果たすように、ベクターに連結され得る。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択され得る。抗体軽鎖コーディング配列および抗体重鎖コーディング配列は別々のベクターに挿入されてよく、また同じもしくは異なる発現調節配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。一態様において、両コーディング配列は、同じ発現ベクターに挿入され、同じ発現調節配列(例えば、共通のプロモーター)に、または別個の同一の発現調節配列(例えば、プロモーター)に、または異なる発現調節配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。抗体コーディング配列は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入され得る。
【0150】
便利なベクターは、上記の通り、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入および発現され得るように操作された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターにおいて、HCコーディング遺伝子およびLCコーディング遺伝子は、関連するmRNAを安定化することによって全体的な抗体タンパク質収量を増加させ得るイントロン配列を含み得る。イントロン配列は、RNAスプライシングが起こる場所を決定するスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位に隣接している。イントロン配列の位置は、複数のイントロンが用いられるとき、抗体鎖の可変領域または定常領域のいずれか、あるいは可変領域および定常領域の両方に存在し得る。ポリアデニル化および転写終結は、コーディング領域の下流の天然の染色体上の部位で生じ得る。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることもできる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが免疫グロブリン鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクター内にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0151】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持し得る。当業者が認めるように、発現ベクターの設計は、調節配列の選択を含め、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの因子に左右され得る。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を目的とするウイルス要素、例えば、レトロウイルスLTRに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロウィルス(CMV)(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマおよび強力な哺乳動物プロモーター、例えば天然の免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターが挙げられる。ウイルス性調節要素およびその配列のさらなる記述について、例えば、米国特許第5,168,062号、同第4,510,245号および同第4,968,615号を参照のこと。プロモーターおよびベクターの記載を含む、植物における抗体の発現方法、ならびに植物の形質転換は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,517,529号を参照のこと。細菌細胞または真菌細胞、例えば、酵母細胞におけるポリペプチドの発現法もまた、当技術分野で周知である。
【0152】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などのさらなる配列を有していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照)。例えば、一般的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。例えば、選択可能マーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr-宿主細胞において使用するための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、(G418選択用の)neo遺伝子、およびグルタミン酸合成酵素遺伝子が含まれる。
【0153】
本明細書中で用いる用語“発現調節配列”は、それらが連結されるコーディング配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現調節配列は、適当な転写開始配列、終止配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに、所望により、タンパク質分泌を増強する配列を含む。このような調節配列の性質は宿主生物に応じて異なる。原核生物では、このような調節配列は、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含む。真核生物では、一般に、このような調節配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語“調節配列”は、最低でも、その存在が発現およびプロセシングに必須である成分を含むことを意図しており、また、その存在が有利である追加成分、例えばリーダー配列および融合パートナー配列もまた含まれ得る。
【0154】
宿主細胞ならびに抗体および抗体組成物の産生方法
本発明のさらなる側面は、本発明の抗体組成物ならびに抗体およびその抗原結合部分を産生する方法に関する。本発明のこの側面の一態様は、抗体を発現し得る組換え宿主細胞を提供し、抗体の発現に適した条件下で該宿主細胞を培養し、そして得られた抗体を単離することを含む、本明細書で定義される抗体を産生するための方法に関する。そのような組換え宿主細胞におけるそのような発現によって産生される抗体は、本明細書中、“組換え抗体”と言われる。本発明はまた、そのような宿主細胞の子孫細胞、およびそれにより産生される抗体を提供する。
【0155】
本明細書で用いる用語“組換え宿主細胞”(または、単に“宿主細胞”)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味する。本発明は、例えば、上記の本発明のベクターを含み得る宿主細胞を提供する。本発明はまた、例えば、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分の、重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいはその両方、を含む、宿主細胞を提供する。“組換え宿主細胞”および“宿主細胞”は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も意味することが理解されるべきである。突然変異または環境的影響によって、続く世代で特定の修飾が起こりうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、なお、本明細書で用いる用語“宿主細胞”の範囲内に含まれる。
【0156】
抗TIM-3抗体をコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターは、好適な哺乳動物細胞、植物細胞、細菌細胞または酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用され得る。形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための何れか公知の方法によって行うことができる。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は当技術分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチド(複数可)の封入、および核へのDNAの直接的マイクロインジェクションが含まれる。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入することができる。細胞を形質転換する方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号を参照のこと。植物細胞を形質転換する方法は当技術分野で知られており、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、微粒子銃形質転換、直接注入、エレクトロポレーション、およびウイルス形質転換が含まれる。細菌および酵母細胞を形質転換する方法も当技術分野で周知である。
【0157】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野において周知であり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、293フリースタイル細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリサル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多数の他の細胞株が含まれる。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することよって選択される。使用することができる他の細胞株は、Sf9またはSf21細胞などの昆虫細胞株である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現を可能にするために十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生されるか、または、より好ましくは、宿主細胞が増殖する培養培地中に抗体を分泌させる。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。植物宿主細胞には、例えば、タバコ、シロイヌナズナ、ウキクサ、トウモロコシ、小麦、ジャガイモなどが含まれ、細菌宿主細胞としては、大腸菌およびストレプトミセス種が含まれる。酵母宿主細胞には、分裂酵母、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア酵母が含まれる。
【0158】
さらに、その産生細胞株からの本発明の抗体またはその抗原結合部分の発現は、公知の多数の技術を用いて増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GS系は、EP特許0216846号、同第0256055号、同第0323997号および同第0338841号に関連して、全体または部分的に議論されている。
【0159】
異なる細胞株によってまたはトランスジェニック動物において発現される抗体は、互いに異なるグリコシル化パターンを有することが多い。しかしながら、本明細書において提供される核酸分子によってコードされるか、または本明細書に提供されるアミノ酸配列を含む抗体は全て、抗体のグリコシル化状態に関わらず、本発明の一部であり、より一般的には、翻訳後修飾(複数可)の有無に関わらず、本発明の一部である。
【0160】
医薬組成物
本発明の別の面は、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、二重特異性結合分子、あるいは本発明の抗TIM-3抗体組成物を有効成分として(または、唯一の有効成分として)含む医薬組成物である。医薬組成物は、本明細書に記載のとおり、任意の抗TIM-3抗体組成物、二重特異性結合分子、あるいは抗体またはその抗原結合部分を含み得る。ある態様において、組成物は、TIM-3関連障害(例えば、TIM-3またはそのリガンドのいずれかの過剰発現または過剰活性化により特徴付けられる障害)および/または癌の改善、予防および/または処置を目的とする。ある態様において、組成物は、免疫系の活性化を目的とする。ある態様において、組成物は、皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織に由来する癌の改善、予防および/または処置を目的とする。
【0161】
一般的に、本発明の抗体またはその抗原結合部分あるいは本発明の二重特異性結合分子は、例えば、以下に記載の通り、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤(複数可)と共に製剤として投与されるのに適している。
【0162】
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の本発明の抗TIM-3抗体またはその結合部分、あるいは二重特異性結合分子、例えば、1つまたは2つの抗TIM-3抗体またはその結合部分あるいは二重特異性結合分子を含み得る。一態様において、組成物は、単一の本発明の抗TIM-3抗体またはその結合部分を含む。
【0163】
別の態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、例えば、1つの抗TIM-3抗体または部分、あるいは1つの二重特異性結合分子、ならびに1つまたは複数の関連する細胞表面受容体、例えば、1つまたは複数の癌関連受容体を標的とする1つまたは複数のさらなる抗体を含み得る。
【0164】
用語“賦形剤”は、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために本明細書中で用いられる。賦形剤(複数可)の選択は、特定の投与様式、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに剤形の性質などの要因に多分に依存する。本明細書で用いる、“薬学的に許容される賦形剤”には、生理学的に適合性である任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせがある。多くの場合、例えば、組成物中にマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムなどの、糖類、ポリアルコールなどの等張剤を含むことが好ましい。薬学的に許容される物質のさらなる例は、抗体の貯蔵寿命または有効性を向上させる、湿潤剤、または湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤もしくは緩衝剤などの少量の補助物質である。
【0165】
本発明の医薬組成物およびその製造方法は、当業者には容易に明らかであろう。このような組成物およびそれらの製造方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)に見いだされ得る。医薬組成物は、好ましくは、GMP(適正製造基準)条件下で製造される。
【0166】
本発明の医薬組成物は、単一単位用量として、または複数の単一単位用量として、バルク中に調製され、包装され、または販売され得る。本明細書で用いる“単位用量”は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般的に、対象に投与され得る有効成分の投与量に等しいか、またはそのような投与量の都合のよい画分、例えば、半分または3分の1のような用量である。
【0167】
当技術分野で許容されるペプチド、タンパク質または抗体を投与するための任意の方法は、本発明の抗体および抗原結合部分に適切に使用することができる。
【0168】
本発明の医薬組成物は、一般的に、非経腸投与に適する。本明細書で用いる、医薬組成物の“非経腸投与”には、対象の組織の物理的なブリーチングにより特徴づけられる任意の投与経路、および組織内のブリーチ(breach)を経て医薬組成物を投与する経路が含まれ、これにより、一般的に、血流、筋肉内または内臓への直接投与がもたらされる。従って、非経腸投与には、組成物の注射による、外科的切開を介して組成物を適用することによる、組織貫通非外科的創傷を通しての組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が含まれるが、これらに限定されない。特に、非経腸投与は、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内および滑液嚢内注射または点滴;ならびに、腎臓透析注入技術が含まれるように意図されるが、これらに限定されない。局所灌流もまた意図される。特定の態様には、静脈内および皮下経路が含まれる。
【0169】
非経腸投与に適する医薬組成物の製剤は、一般的に、滅菌水または滅菌等張生理食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせて有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製、包装または販売され得る。注射用製剤は、例えばアンプルまたは防腐剤を含む多用量容器のように、単位投与量形態で調製、包装、または販売され得る。非経腸投与のための製剤としては、油性または水性ビークル中の懸濁液、溶液、エマルジョン、ペーストなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかる製剤はさらに、懸濁剤、安定化剤、または分散剤を含むが、これらに限定されない、1以上の追加の成分を含んでもよい。非経腸投与のための製剤の一態様において、有効成分は、再構成される組成物の非経腸投与前に適当なビークル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態で提供される。非経腸製剤はまた、塩、炭水化物および緩衝剤などの賦形剤を含有していてよい水溶液(好ましくはpH3から9)を含むが、いくつかの用途のために、それらがより好適に無菌の非水性溶液として製剤され得るか、または滅菌された発熱物質を含まない水などの適当なビークルと共に使用される乾燥形態として製剤され得る。非経腸投与形態の例としては、滅菌水溶液の溶液または懸濁液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液が挙げられる。所望であれば、このような投与量形態は、適当に緩衝され得る。有用である他の非経腸的に投与可能な製剤には、微結晶形態の有効成分を含むもの、またはリポソーム調製物中に有効成分を含むものが含まれる。非経腸投与のための製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することができる。放出調節製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0170】
例えば、一側面において、滅菌注射用溶液は、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒中に必要量で、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、二重特異性結合分子あるいは抗TIM-3抗体組成物を組み込み、必要に応じて濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、基本的な分散媒体および上記に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌ビークル中に有効化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分の粉末に加えて、予め濾過滅菌したその溶液からの任意のさらなる所望の成分が得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、また、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射可能な組成物の持続的吸収は、その組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩やゼラチンを含めることによって、および/または放出調節コーティング(例えば、徐放性コーティング)を用いることによって行うことができる。
【0171】
本発明の抗体はまた、鼻腔内に投与される、または吸入によって投与することができ、一般的には、乾燥粉末吸入器から乾燥粉末の形態(混合物として、単独で、または混合成分粒子として、例えば、好適な薬学的に許容される賦形剤と混合した形態)で、適当な噴射剤を使用してまたは使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは微細な霧を生成するために電気流体力学を用いるアトマイザー)からのエアロゾルスプレーとして、またはネブライザーとして、または、点鼻液として投与され得る。
【0172】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、一般的に、例えば、分散剤、可溶化剤または有効成分の放出を延長するのに好適な薬剤、溶媒としての噴射剤(複数可)を含む、本発明の抗体の溶液または懸濁液を含む。
【0173】
乾燥粉末または懸濁液製剤における使用に先立って、薬剤製品は、一般的に、吸入による送達に適した大きさ(一般的には5ミクロン未満)に微粉化される。これは、スパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体プロセシング、高圧均質化、または噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕方法によって行うことができる。
【0174】
吸入器または吹き入れ器(insufflator)において使用するためのカプセル剤、ブリスター剤およびカートリッジ剤は、本発明の化合物、適当な粉末ベースおよび性能改質剤(performance modifier)の粉末ミックスを含有するように製剤化することができる。
【0175】
細かい霧を発生するための電気流体力学を用いるアトマイザーにおいて使用するのに適している溶液製剤は、1動作につき好適な用量の本発明の抗体を含有することができ、作動容量は、1μlから100μlまで変化してよい。
【0176】
吸入/鼻腔内投与を目的とする本発明の製剤には、メントールおよびレボメントールなどの適当な香味剤、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味剤を添加することができる。
【0177】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、即時型放出および/または調節型放出であるように製剤化することができる。放出調節製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。
【0178】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合に、投与量単位は、計量された量を送達するバルブによって決定される。本発明による単位は、一般的には、本発明の抗体の計量された用量、または“一吹き(puff)”を投与するように設計される。全体の1日用量は、一般的には単回用量で投与されるか、またはより通常には、1日を通して分割用量として投与される。
【0179】
本発明の抗体および抗体部分はまた、経口投与用に製剤され得る。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下を、および/または化合物が口から直接、血流に入るように、頬、舌または舌下投与を含んでもよい。
【0180】
経口投与に適する製剤には、錠剤などの固体、半固体および液体系;多成分粒子もしくはナノ粒子、液体または粉末を含有する軟質または硬質カプセル;ロゼンジ(液体充填を包含);チューイング剤;ゲル;迅速分散性の投与形態;フィルム;卵形剤;スプレー;ならびに頬/粘膜接着パッチが包含される。
【0181】
液体製剤には、懸濁剤、液剤、シロップおよびエリキシルが包含される。このような製剤を、軟質または硬質カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)中の充填剤として使用することもでき、一般的には、担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切な油、ならびに1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤はまた、固体、例えばサシェからの再構成により調製することもできる。
【0182】
本発明の抗体および組成物の治療的使用
一側面において、本発明の抗TIM-3抗体およびその抗原結合部分、抗TIM-3組成物および二重特異性結合分子は、それを必要とするヒトにおける免疫系の増強または活性化に使用される。ある態様において、患者は、TIM-3またはそのリガンドのいずれかの過剰発現または過剰活性化により特徴付けられる状態を有する。ある態様において、患者は免疫抑制されている。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子は、癌、例えば、皮膚、肺、腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血組織、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織に由来する癌、ならびにTIM-3活性に依存する癌もしくは他の病状、および/または患者が、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン、CEACAM-1および/またはHMGB-1を発現しているまたは過剰発現している癌もしくは他の病状、の処置に使用するためのものである。本発明の抗TIM-3抗体、その抗原結合部分、抗TIM-3抗体組成物、および/または二重特異性結合分子により処置される癌には、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、および固形腫瘍(例えば、進行性または転移性固形腫瘍)が含まれ得る。
【0183】
ある態様において、本発明の抗TIM-3抗体、抗原結合部分、抗TIM-3組成物、および/または二重特異性結合分子により処置される癌には、例えば、黒色腫(例えば、進行性または転移性黒色腫)、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、膠芽腫、神経膠腫、扁平上皮肺癌、小細胞肺癌、肝細胞癌、膀胱癌、上部尿路癌、食道癌、食道胃接合部癌、胃癌、肝臓癌、直腸癌、結腸直腸癌腫、多発性骨髄腫、肉腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、鼻咽頭癌、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫、卵巣癌、消化器癌、原発性腹膜癌、卵管癌、尿路上皮癌、HTLV関連T細胞白血病/リンパ腫、前立腺癌、尿生殖器癌、髄膜腫、副腎皮質癌、神経膠肉腫、線維肉腫、腎癌、乳癌、膵臓癌、子宮内膜癌、基底細胞上皮腫(skin basal cell cancer)、虫垂癌、胆管癌、唾液腺癌、進行性メルケル細胞癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、中皮腫、および固形腫瘍が含まれ得る。
【0184】
ある態様において、抗体またはその抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子は、ウイルスおよび/または病原体感染の処置において、例えば、病原体が宿主免疫応答を阻害する場合に使用するためのものである。
【0185】
“処置する(treat)”、“処置(treating)”および“処置(treatment)”は、生物学的障害および/またはその付随する症状の少なくとも1つを緩和または抑止する方法を意味する。本明細書で用いる、疾患、障害または病状の“軽減”は、該疾患、障害、または病状の症状の重症度および/または発生頻度を低下させることを意味する。さらに、本明細書での“処置(treatment)”への言及は、治癒的、緩和的および予防的処置への言及を含む。
【0186】
“治療的有効量”とは、処置される障害の症状の1以上をある程度に軽減し得るとき、投与される治療薬の量を意味する。治療的有効量の抗癌治療剤は、例えば、腫瘍の縮小、生存率の増加、癌細胞の排除、疾患の進行の遅延、転移の消失(reversal of metastasis)、または医療従事者が望む他の臨床的エンドポイントをもたらし得る。
【0187】
本発明の抗体組成物または抗体またはその抗原結合部分は、単独で、または1以上の他の薬物もしくは抗体(またはそれらの任意の組み合わせなど)と組み合わせて投与され得る。したがって、以下に詳述するように、本発明の医薬組成物、方法および使用はまた、他の活性剤との組み合わせ(同時投与)の態様を包含する。
【0188】
本発明の抗体組成物、抗体およびその抗原結合部分、および二重特異性結合分子と1またはそれ以上の他の治療剤との組合せへの言及にて、本明細書で用いる用語“共投与(co-administration、co-administered)”および“併用投与”は、以下を意味し、言及し、および包含することを意図する:
- 処置を必要とする患者への、本発明の抗体組成物/抗体/抗原結合部分/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のこのような組み合わせの同時投与であって、かかる成分が単一投与形態に共に製剤されるとき、該患者に実質的に同時に該成分が放出される、同時投与
- 処置を必要とする患者への、本発明の抗体組成物/抗体/抗原結合部分および治療剤(複数可)のこのような組み合わせの実質的同時投与であって、かかる成分が互いに別個の投与形態に分離して製剤されるとき、該患者に実質的に同時に投与されることにより、該患者に実質的に同時に該成分が放出される、同時投与
- 処置を必要とする患者への、本発明の抗体組成物/抗体/抗原結合部分/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のこのような組み合わせの連続投与であって、かかる成分が、互いに別個の投与量形態に分離して製剤されるとき、各投与間に有意な時間間隔で該患者に連続で投与されることにより、該患者に実質的に異なる時間に該成分が放出される、連続投与;および、
- 処置を必要とする患者への、本発明の抗体組成物/抗体/抗原結合部分/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のこのような組み合わせの連続投与であって、かかる成分が単一投与形態に共に製剤されるとき、該成分が制御された様式で放出されることにより、それらが該患者に同時に、連続して、ならびに/または同時におよび/または異なる時間に重複して放出される、ここで、各成分(part)は、同一または異なる経路のいずれかによって投与されてよい、連続投与。
【0189】
本発明の抗体組成物、抗体およびその抗原結合部分、ならびに二重特異性結合分子は、単独の治療法として、すなわち、追加の治療的処置を伴わず投与され得る。あるいは、本発明の抗体組成物および抗体およびその抗原結合部分を用いた処置は、少なくとも1つの追加の治療的処置(併用療法)を含んでいてよい。ある態様において、該抗体組成物または抗体またはその抗原結合部分は同時投与され得るか、または癌を処置するための別の薬物/薬剤と共に製剤され得る。追加の治療的処置は、例えば、化学療法剤、抗腫瘍剤、または抗血管形成剤、別の抗癌抗体、および/または放射線療法を含み得る。
【0190】
本発明の抗体組成物、抗体、または抗原結合部分、あるいは二重特異性結合分子と癌細胞の最終分化を誘導することが知られている薬剤との組合せにより、効果をさらに向上させることができる。そのような化合物は、例えば、レチノイン酸、トランスレチノイン酸、シスレチノイン酸、フェニル酪酸、神経増殖因子、ジメチルスルホキシド、活性型ビタミンD3、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ、12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセテート、ヘキサメチレン-ビス-アセトアミド、トランスフォーミング増殖因子-ベータ、酪酸、サイクリックAMP、およびベスナリノンからなる群より選択され得る。ある態様において、化合物は、レチノイン酸、フェニル酪酸、オールトランスレチノイン酸および活性型ビタミンDからなる群より選択される。
【0191】
本発明の抗TIM-3抗体組成物、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、あるいは二重特異性結合分子、および少なくとも1種の他の薬剤(例えば、化学療法剤、抗新生物剤、または抗血管形成剤)を含む医薬品は、癌療法において、同時、個別または連続投与のための併用処置として使用され得る。他の薬剤としては、問題の特定の癌の処置に適する任意の薬剤、例えば、アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチンおよび/またはオキサリプラチンなどの白金誘導体;植物アルカロイド(alkoid)、例えばパクリタキセル、ドセタキセルおよび/またはイリノテカン;抗腫瘍抗生物質、例えばドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、ルテオマイシン(luteomycin)および/またはマイトマイシン;トポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;ならびに/または、代謝拮抗剤、例えばフルオロウラシルおよび/または他のフルオロピリミジンからなる群より選択される薬物であり得る。
【0192】
本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、二重特異性結合分子、あるいは抗TIM-3抗体組成物はまた、ワクチン、サイトカイン、酵素阻害剤およびT細胞療法などの他の抗癌療法と組み合わせて用いることもできる。ワクチンの場合、それは、例えば、処置される癌に関連する1以上の抗原を含むタンパク質、ペプチドまたはDNAワクチンであり得るか、あるいは抗原とともに樹状細胞を含むワクチンであり得る。適当なサイトカインとしては、例えば、IL-2、IFN-γおよびGM-CSFが挙げられる。抗癌活性を有する1種の酵素阻害剤の例は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、例えば1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MT)である。養子T細胞療法とは、腫瘍を認識して攻撃するために患者自身のT細胞を増殖または改変すること伴う種々の免疫療法技術を意味する。
【0193】
また、本発明の抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分、二重特異性結合分子、あるいは抗TIM-3抗体組成物は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に関連する補助療法において使用され得ることも考えられる。これらは、受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインと相互作用し、細胞内Mg-ATP結合部位に関して競合することによりリガンド誘導性受容体リン酸化を阻害する、合成の、主にキナゾリン由来の低分子量分子である。
【0194】
ある態様において、抗体組成物、二重特異性結合分子、あるいは抗体またはその抗原結合部分は、A2AR、BLTA、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、CD27、CD28、CD39、CD40、CD55、CD73、CD122、CD137、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、CTLA-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/またはCEACAM-5)、ガレクチン-9、GITR、HVEM、ICOS、IDO、KIR、LAIR1、LAG-3、NKG2A、OX40、PD-1/PD-L1/PD-L2、TIGIT、TGFR-beta、TNFR2、VISTAおよび/または2B4の発現または活性を媒介する薬剤を含むが、これに限定されない、免疫系の活性化を媒介する別の薬物/薬剤と組み合わせて用いられ得る。ある態様において、薬剤は、上記の分子のうち1つに結合する抗体または抗原結合断片である。
【0195】
ある側面において、本発明の抗体および抗原結合部分、組成物、ならびに二重特異性結合分子は、TIM-3または1以上のそのリガンドを標的とし得る、TIM-3経路の別の阻害剤と組み合わせて投与され得る。かかる阻害剤の例としては、TIM-3リガンドおよび/またはガレクチン-9、HMGB-1、ホスファチジルセリン脂質、CEACAM1、LILRA1-6もしくはLILRB1-5などの共受容体を標的とする、他の抗TIM-3抗体および抗体が挙げられる。
【0196】
本発明の抗体組成物、二重特異性結合分子ならびに抗体およびその抗原結合部分は、上記の通り処置法において使用することができ、上記の通り処置に用するためのものであってよく、および/または、上記の通り処置のための医薬の製造における使用のためのものであってよいことが理解される。
【0197】
用量および投与経路
本発明の抗体組成物は、問題の病状の処置に有効な量で、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投与量および期間で投与され得る。治療的有効量は、処置される特定の病状、患者の年齢、性別および体重などの因子、ならびに抗体が単独処置剤として投与されるか、または1もしくはそれ以上の付加的な抗癌処置剤と組み合わせて投与されるかによって異なり得る。
【0198】
投与量レジメンは、最適な所望の応答を提供するために調整され得る。例えば単回ボーラスとして投与されるか、いくつかの分割用量を経時的に投与されるか、または治療対象の緊急性によって指示される否定的に増減されてよい投与量で投与され得る。投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与量単位形態で非経腸組成物を製剤することがとりわけ有利である。本明細書で用いる、投与量単位形態とは、処置される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位;必要な医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の有効化合物を含む各単位、を意味する。本発明の投与量単位形態の仕様は、一般的に、(a)化学療法剤の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのそのような有効化合物の調合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0199】
従って、当業者は本明細書で提供される開示に基づいて、用量および投与レジメンが療法の技術分野において周知の方法に従って調整されることを理解しているであろう。すなわち、最大耐用量は容易に確立することができ、患者に検出可能な治療的利益をもたらす有効量も決定することができ、それぞれの薬剤を投与して検出可能な治療的利益を患者に提供するための時間的要素も決定することができる。従って、本明細書において特定の用量および投与レジメンが例示されるが、これらの例は本発明の実施において患者に提供することができる用量および投与レジメンを一切制限しない。
【0200】
投与量の値は緩和すべき病状のタイプおよび重篤度によって変わってよく、1回量または複数回用量が含まれ得ることが特記されるべきである。さらに、いかなる特定の対象についても、具体的な投与量レジメンは個々の要求およびその組成物を投与するまたはその組成物の投与を監督する者の専門的な判断に従って時間の経過に伴って調整されるべきであること、ならびに本明細書に記載の投与量範囲は例示でしかなく、具体的な組成物の範囲または使用態様を制限することを意図していないことは理解されるべきである。さらに、本発明の組成物を用いる投与量レジメンは、疾患の種類、患者の年齢、体重、性別および医学的状態、病状の重篤度、投与経路、ならびに用いる特定の抗体を含む種々の因子に基づき得る。従って、投与量レジメンは広範に変化し得るが、標準的な方法を用いて常套的に決定することができる。例えば、用量は、薬物動態学的または薬力学的パラメータに基づいて調整することができ、それには毒性作用および/または臨床検査値のような臨床作用が含まれ得る。従って、本発明は当業者により決定されるような患者内の用量の段階的増大を包含する。適当な投与量およびレジメンの決定は関連する技術分野において周知であり、当業者は一旦本明細書で開示される教示を提供されればそれが包含されることを理解し得る。
【0201】
本発明の抗体組成物の好適な用量は、0.1~100mg/kg、例えば約0.5~50mg/kg、例えば約1~20mg/kgの範囲内であると考えられる。抗体組成物は、例えば、少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kg、例えば少なくとも1mg/kg、例えば少なくとも1.5mg/kg、例えば少なくとも2mg/kg、例えば少なくとも3mg/kg、例えば少なくとも4mg/kg、例えば少なくとも5mg/kg、および例えば最大50mg/kgまで、例えば最大30mg/kgまで、例えば最大20mg/kgまで、例えば最大15mg/kgまでの投与量で投与され得る。投与は、通常は好適な間隔で、例えば週に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、担当医師が適切と判断する期間に亘って繰り返され、担当医師は場合により必要に応じて用量を増減させ得る。
【0202】
腫瘍治療のための有効量は、患者において疾患の進行を安定化させる、および/または症状を改善する、好ましくは、例えば腫瘍サイズを縮小することによって、疾患の進行を止めるその能力によって測定され得る。癌を阻害する本発明の抗体、抗原結合部分、二重特異性結合分子または組成物の能力は、例えば実施例に記載の通り、インビトロアッセイによって、ならびにヒト腫瘍における効果を予測する好適な動物モデルにおいて評価され得る。好適な投与量レジメンは、個々の特定状況において最適の治療応答を提供するために選択され、例えば単回ボーラスとしてまたは持続点滴として、および場合によりそれぞれの症例の緊急性によって指示される投与量の調整を伴って投与され得る。
【0203】
診断的使用および組成物
本発明の抗体または抗原結合部分はまた、診断的方法において有用である(例えば、インビトロ、エクスビボ)。例えば、抗体およびその部分は、患者からのサンプル(例えば、組織サンプル、または炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液もしくは尿のような体液サンプル)中のTIM-3のレベルを検出および/または測定するために使用可能である。好適な検出および測定方法としては、フローサイトメトリー、酵素免疫吸着アッセイ法(ELISA)、化学発光分析法、放射免疫アッセイ、および免疫組織学のような免疫学的方法が挙げられる。本発明はさらに、本明細書に記載の抗体および抗原結合部分を含む複数部分のキット(例えば、診断用キット)を包含する。
【0204】
本明細書において他に定義しない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験においても用いることができるが、例示的な方法および材料は、以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先されるものとする。
【0205】
一般的に、本明細書に記載されている、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品および医薬品化学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法、ならびにそれらの技術は、よく知られており、当技術分野で一般的に使用されている。当該技術分野において一般的に達成されるよう、または本明細書に記載されるように、酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って行われる。
【0206】
さらに、必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書および態様の全体を通して、用語“有する(have)”および“含む(comprise)”、または変形“有する(has)”、“有する(having)”、“含む(comprises)”または“含む(comprising)”は、記載された整数または整数の群の包含を意味すると理解されるが、他の整数または整数の群を除外するものではない。
【0207】
本明細書で言及する全ての刊行物および他の文献は、その内容全体が引用により本明細書中に包含される。多数の文献が本明細書中に引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当該技術分野における共通の一般知識の一部分を形成するという承認を構成するものではない。
【0208】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみの目的であり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0209】
実施例
実施例1:ラットB細胞からの抗TIM-3抗体のクローニング
この実施例は、本発明の抗ヒトTIM-3抗体を作製するために用いられる方法を記載する。抗体のDNA配列およびアミノ酸配列もまた提供する。
【0210】
材料および方法
本発明の抗TIM-3抗体は、完全なヒトイディオタイプを有する抗体を産生するOMT(Open Monoclonal Technology, Inc.)からのラット株である、OmniRat(登録商標)ラット由来の抗体レパートリーから単離された(Osborn et al., J Immunol. 190(4):1481-90 (2013))。単一細胞選別抗体を分泌するB細胞(ASC)からのラット由来の抗体遺伝子のクローニングは、Symplex(商標)抗体ディスカバリー技術(Meijer et al., J Mol Biol 358(3):764-72 (2006))の手段により実施した。
【0211】
免疫化したOmniRat(登録商標)ラット由来の単一細胞選別B細胞から、Symplex(商標)抗体ライブラリーを調製した。このライブラリーは、各選別されたB細胞について同族のVHおよびVLをコードする対(ペア)を含んでいた。IgG1またはIgG2フォーマットの完全ヒト免疫グロブリンをコードする抗体レパートリー構築物をExpi293細胞にトランスフェクションして、細胞上清をハイスループットスクリーニング法で結合特性についてスクリーニングした。スクリーニングヒットをDNA配列決定によって分析し、抗体をコードするDNA配列を抽出した。選択された抗体クローンを発現させて、以下に記載のように機能を試験した。表1は、抗体クローン15086.15086の重鎖および軽鎖可変ドメイン核酸配列を示す。表2は、該抗体クローンの重鎖および軽鎖アミノ酸配列を示し、表4は、重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を示す。表3は、IgG1重鎖定常領域およびκ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【0212】
抗体をコードするcDNA断片のSymplex(商標)クローニングにおける縮重プライマーの使用により、重鎖および軽鎖のアミノ末端における多数のミスセンス突然変異が、特定の抗体(例えば、抗体15086.16837、15086.17145および15086.17144)について修正された。表5は、15086.16837、15086.17145または15086.17144(これらの3つの変異体は、アイソタイプ亜型が異なるが、同一の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を有する)と称される最適化抗体由来のDNAレベルで重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を示す。最適化プロセスとしては、アミノ末端修正を生殖系列配列と一致させること、ならびにコドン使用の最適化が挙げられる。ヒト生殖系列配列と一致させるための標的は、重鎖可変ドメインについてはIGHV4-31、軽鎖可変ドメインについてはIGKV3-11であった。
【0213】
異なるエピトープビンを規定するさらなる抗体が同定された。これらの抗体の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を、表9および10に示す。さらなる機能的抗体が同定され、これらの重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を、表12および13に示す。
【0214】
結果
表1は、Symplex
(商標)でクローン化された抗体15086.15086をコードするDNA配列を示す。
【表1】
【0215】
表2は、元のSymplex
(商標)でクローン化された抗体15086.15086の推定タンパク質配列を示す。CDRは、太字かつイタリック体で示される。
【表2】
【0216】
【0217】
表4は、抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144によって共有される重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)を示す。本明細書中のCDR配列は、CDR1およびCDR2について、IMGT(登録商標)の定義に従って決定された。重鎖および軽鎖CDR3については、本明細書中の定義は、IMGT-CDR3の上流の1つの余分のアミノ酸残基(Cys)および下流の1つの余分のアミノ酸残基(VH CDR3についてはTrp、VL CDR3についてはPhe)を含む。
【表4】
【0218】
表5は、抗体15086.16837、15086.17145および15086.17144によって共有される重鎖および軽鎖可変ドメインをコードする最適化されたDNA配列を示す。
【表5】
【0219】
表6は、抗体15086.16837、15086.17145および15086.17144によって共有される推定重鎖および軽鎖可変ドメインタンパク質配列を示す。CDRは、太字かつイタリック体で示される。VLタンパク質配列は、非最適化VLタンパク質配列と同じであることが特記される。
【表6】
【0220】
表7は、異なるイソ型フォーマットにおける抗体定常領域をコードするDNA配列を示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0221】
表8は、異なるイソ型フォーマットにおける抗体定常領域のタンパク質配列を示す。
【表14】
【0222】
表9は、エピトープビニングに用いられる抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインをコードするDNA配列を示す。
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0223】
表10は、エピトープビニングに用いられる抗TIM-3抗体の推定重鎖および軽鎖可変ドメインタンパク質配列を示す。CDRは、太字かつイタリック体で示される。
【表22】
【表23】
【0224】
表11は、抗TIM-3ビニング抗体のCDRを示す。CDRの配列番号は、各配列の下に示されている。本明細書中のCDR配列は、CDR1およびCDR2について、IMGT(登録商標)の定義に従って決定した。重鎖および軽鎖CDR3については、本明細書中の定義は、IMGT-CDR3の上流の1つの余分なアミノ酸残基(Cys)および下流の1つの余分なアミノ酸残基(VH CDR3についてはTrp、VL CDR3についてはPhe)を含む。
【表24】
【0225】
表12は、機能的抗体として同定されたさらなる抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインをコードするDNA配列を示す。機能的抗体20131および20293の配列は上記の表9に示されている。
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【0226】
表13は、機能的抗体として同定されたさらなる抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインの推定タンパク質配列を示す。CDRは、太字かつイタリック体で示される。機能的抗体20131および20293の配列は上記の表10に示されている。
【表29】
【0227】
表14は、さらなる機能的抗TIM-3抗体のCDRを示す。CDRの配列番号は各配列の下に示されている。本明細書中のCDR配列は、CDR1およびCDR2について、IMGT(登録商標)の定義に従って決定した。重鎖および軽鎖CDR3については、本明細書中の定義は、IMGT-CDR3の上流の1つの余分なアミノ酸残基(Cys)および下流の1つの余分なアミノ酸残基(VH CDR3についてはTrp、VL CDR3についてはPhe)を含む。機能的抗体20131および20293の配列は、上記の表11に示されている。
【表30】
【0228】
実施例2:抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の結合速度分析
本実施例は、抗体15086.15086(IgG1)、15086.16837(IgG1 LALA)、15086.17145(IgG2)および15086.17144(IgG4 (S228P))の結合親和性が、約19-23nMのKD値で顕著に類似した結合親和性を示したことを実証する。“IgG1 LALA”は、重鎖における“LALA”突然変異(L234A/L235A、Eu番号付けスキーム(Edelman et al., Proc. Natl. Acad. USA 63:78-85 (1969))に従って番号付けされた)の存在を意味し、それは、IgG1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させることが知られている(Armour et al., Eur J Immunol. 29(8):2613-24 (1999);Hezareh et al., J Virol. 75(24):12161-68 (2001);および、Hessel et al., Nature 449(7158):101-104 (2007))。
【0229】
材料および方法
結合速度分析は、Ibis MX96 SPR装置(IBIS Technologies、The Netherlands)と組み合わせた連続フローマイクロスピッター(CFM、Wasatch Microfluidics、Salt Lake City、US)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により行った。表面プラズモン共鳴イメージング分析を、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)SPRセンサ(Ssens BV、The Netherlands)で行った。抗TIM-3抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144を、PBS-T(0.05% Tween20を含む1xPBS、pH7.4)中で0.15μg/mlに希釈した。抗体を、連続フローマイクロスポッターを用いてG-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)上に15分間スポットした。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサ中に置き、いわゆる動的滴定シリーズ(Karlsson et al., Anal Biochem. 349(1):136-47 (2006))を適用することにより動態分析を実施し、ここで、各抗原注射後に表面再生ステップを適用することなく、単量体ヒトTIM-3 ECD抗原(Acro Biosystems)を2nMから100nMの漸増濃度で注射した。抗原結合(association)を5分間行い、抗原解離を45分間行った。記録された結合応答を、結合速度(オンレート)定数(konまたはka)、解離速度(オフレート)定数(koffまたはkd)および親和性定数(KD)の計算のためにスクラバー2ソフトウェアを用いた単純なラングミュア1:1結合モデルに適合させた。
【0230】
結果
IBISシステムで実施された反応速度測定は、4つの異なるイソ型フォーマットの抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144が全て、19-23nMの範囲のKD値で顕著に築地する結合速度を有することを示した(表15)。
【0231】
【0232】
実施例3:抗TIM-3抗体のインビトロ機能評価
IgG1サブクラスにおける複数のユニークなmAbのパネルを上記のようにクローニングし(実施例1)、機能的活性について、一方向混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて単一濃度(25ug/ml)でスクリーニングした。最も機能的な抗TIM-3抗体(15086.15086)を、IgG1 LALA(15086.16837)、IgG2(15086.17145)およびIgG4(15086.17144)サブクラスに再フォーマットした。
【0233】
本実施例は、一方向MLRアッセイにおいて用量依存性サイトカイン分泌を誘導することによって抗TIM-3抗体の種々のIgGサブクラスのインビトロでの機能的活性を実証する。
【0234】
材料および方法
一方向MLRアッセイにおいて、2人の異なる健康なドナーから単離された樹状細胞(DC)およびCD4陽性(CD4+)T細胞を共培養して、同種異系(アロ)抗原特異的反応を誘発させ、結果として、サイトカイン産生およびT細胞活性化/増殖をもたらす。樹状細胞を、20ng/mlの顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および20ng/mlのインターロイキン-4(IL-4)を添加して6日間培養することによりCD14+単球から分化させ、健常なドナー試料由来の末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたCD4+T細胞と1:10の比で混合した。5日間培養後、上清を回収し、IFN-γおよびTNF-αレベルをMeso Scaleの電気化学発光サイトカインアッセイを用いて測定した。このアッセイは、検出抗体に複合体化された電気化学発光標識(SULFO-TAG)を用いる。電流をプレート電極に印加すると、SULFO-TAG標識によって光が放射され、光強度が測定されて試料中のサイトカインを定量する。
【0235】
結果
抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の一方向MLRアッセイにおける用量反応曲線を、
図1および2に示す。用量反応曲線は、50ug/mlの初期濃度で抗体の2回(two-fold)滴定により作製した。グラフ上の各点は3回の反復の平均を表し、エラーバーはSEMを表す。
【0236】
抗体15086.15086および15086.17145(IgG1およびIgG2変異体)は、同様の機能性を示し、一方向MLRアッセイにおいてIFN-γおよびTNF-αの両方で用量依存的な増加を誘導した。抗体15086.17144(IgG4変異体)は、2つの最高濃度でのみ反応を誘導したが、抗体15086.16837(IgG1 LALA変異体)の機能性は観察されなかった。
【0237】
実施例4:精製された細胞サブセットでの抗TIM-3抗体の効果
TIM-3は、IFN-γを産生するCD4+Tヘルパー細胞およびCD8+(CD8陽性)細胞傷害性T細胞により選択的に発現されることが最初に報告され、T細胞応答の負の調節因子であることが実証された。続いて、樹状細胞、単球およびナチュラルキラー(NK)細胞上でTIM-3が内因性に高度に発現されることが発見された(Freeman et al., Immunol Rev 235:172-89 (2010); Kuchroo et al., Nat Rev Immunol 8:577-580 (2008); Anderson et al., Science 318:1141-1143 (2007);および、Da Silva et al., Cancer Immunol Res 2:410-422 (2014))。この実施例は、抗TIM-3抗体によるTIM-3のライゲーション(連結)が、樹状細胞に直接的に効果を有してTNF-α分泌の増加をもたらす方法を示す。
【0238】
材料および方法
PBMC、天然CD4+T細胞および天然CD8+細胞を、健康なドナー試料から単離した。3つの個々の健康なドナー由来の樹状細胞を、実施例3に記載の通りに作製した。単離した細胞サブセットを、10ug/mlの示された抗体と共に5日間インキュベートし、TNF-αレベルをMeso Scale電気化学発光サイトカインアッセイを用いて測定した。
【0239】
結果
抗体15086.15086、15086.16837、15086.17145および15086.17144の精製細胞サブセットに対する直接的効果を
図3に示し、ここで、各バーは、5回の反復の平均を表し、エラーバーはSEMを表している。結果は、抗TIM-3抗体のIgG1(15086.15086)またはIgG2(15086.17145)変異体の存在が、3つ全てのドナー由来の樹状細胞からのTNF-α分泌を増加させることを実証する。同様の効果が、複数のTIM-3発現細胞サブセット(例えば、単球およびNK細胞)を含むPBMC集団において観察された。IgG1 LALA(15086.16837)およびIgG4(15086.17144)変異体は、TNF-α分泌に対して最小限の効果しか有さなかった。試験した抗体はいずれも、天然CD4+T細胞または天然CD8+T細胞に影響を及ぼさなかった。
【0240】
実施例5:ホスファチジルセリンを遮断する(blocking)活性についての抗TIM-3抗体のフローサイトメトリー分析
この実施例は、表面ホスファチジルセリン-陽性アポトーシス細胞および蛍光色素標識可溶性TIM-3を用いてフローサイトメトリー競合アッセイを実施することにより、本発明の抗TIM-3抗体[15086.17145]のホスファチジルセリン(PtdS)を遮断する活性について試験する方法を示す。
【0241】
材料および方法
ホスファチジルセリンを遮断する活性は、Jurkat T細胞が、スタウロスポリン(Streptomyces sp., Sigma-Aldrich、USA提供)処理によってアポトーシスを起こすように誘導される細胞ベースのアッセイにおいて試験された。アポトーシスの間、PtdSは、原形質膜の細胞質面から細胞表面に移行して、フローサイトメトリーによって分析されるR-PE-標識ヒトTIM-3-Fcキメラタンパク質の結合を可能にする。Lightning-Link(登録商標)R-フィコエリスリン結合キット(Innova Biosciences、UK)を用いて、市販の組換えTIM-3-Fcキメラタンパク質(R&D Systems、USA)をR-PEに結合させた。試験する各抗体濃度について、25μlのTIM-3-PE希釈液(約0.33μgのTIM-3-Fcに相当する)を、Annexin V 結合緩衝液(BD Pharmingen(商標)、USA)中、25μlの抗体(20μg/mlの終濃度で開始)と混合し、室温(RT)で20分間インキュベートして、その後に細胞に添加した。Jurkat T細胞を、1μMのスタウロスポリンの存在下で2時間培養し、RT結合緩衝液で1回洗浄し、各試験について、50μlの結合緩衝液中、2x105細胞を、抗体/TIM-3-PEミックスと併せた。RTで15分間インキュベーション後、100μlの結合緩衝液を添加し、細胞を遠心分離によって沈降させ、ペレットを、捕捉のために100μlの結合緩衝液に再懸濁させた。TIM-3-PEのアポトーシス細胞への結合を、PE蛍光(MFI)を検出するフローサイトメトリーによって定量した。並行して、スタウロスポリン処理した細胞上のPtdSの表面曝露を、アネキシン(Annexin)V-PE染色(PE Annexin V アポトーシス検出キットI、BD Pharmingen(商標))によって確認した。抗PD-1抗体であるKeytruda(登録商標)(ペムブロリズマブ;Merck & Co., Inc.)を、TIM-3-結合/PtdS-遮断の陰性対照として用いて、抗TIM-3対照抗体ABTIM3[18571.18571](WO2015/117002A1;Novartis AG)を、TIM-3-結合/PtdS-遮断の陽性対照として用いた。さらに、既に非遮断抗体として同定された異なる抗TIM-3抗体[15338.15338]も、PtdS遮断の陰性対照として用いた。
【0242】
結果
競合実験の結果を
図4に示す。抗TIM-3抗体[15086.17145]は、可溶性TIM-3-Fcと細胞提示PtdSとの相互作用を用量依存的に阻害することができる(
図4A)。3.125μg/mlでは、それは、TIM-3-FcのPtdS陽性細胞への結合を、非遮断抗TIM-3抗体[15338.15338]の存在下で検出された結合の2%まで遮断する(
図4B)。対照抗TIM-3抗体[18571.18571]は、同じ濃度で3.2%まで結合を遮断することができた(
図4C)。陰性対照抗PD-1抗体Keytruda
(登録商標)の結果を、
図4Dに示す。
【0243】
実施例6:抗TIM-3対照抗体類縁体のクローニング
抗TIM-3抗体ABTIM3およびmAb15の対照類縁体を、本明細書のいくつかの実施例で用いる。対照類縁体は下記のように作製された。
【0244】
ABTIM3およびmAb15の重鎖および軽鎖可変ドメインアミノ酸配列は、以下の表16に示す特許出願から得られた。可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)断片のアミノ酸配列を、ヒトコドン使用頻度を有するDNA配列に逆翻訳した。その後、対応するDNA断片を合成し、一定のヒト重鎖定常領域(4つの異なるイソ型フォーマットのうち、いずれか1つ:IgG1、IgG1-LALA、IgG2またはIgG4)あるいはヒトκ軽鎖定常領域を含む発現ベクターにクローニングして、完全長の抗体重鎖および軽鎖配列を得た。IgG4変異体におけるFabアーム交換を防ぐために、位置288(EU番号付け)のセリン残基を、プロリンで置換した(Angal et al., Mol. Immunol. 30:105-108 (1993))。CHO細胞に、標準的なタンパク質発現系を用いて、得られた発現プラスミドをトランスフェクトした。抗体発現後、対応する抗体上清を、標準的なプロテインA精製カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0245】
【0246】
実施例7:一方向MLRアッセイにおけるさらなる抗TIM-3抗体のインビトロ機能評価
この実施例は、一方向混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてIFN-γの用量依存的分泌を誘導することにより、9つのさらなる抗TIM-3抗体のインビトロ機能活性を実証する。
【0247】
材料および方法
一方向MLRアッセイは、上記の実施例3に記載の通りに行った。まとめると、樹状細胞(DC)およびCD4+T細胞を、示された抗体の存在下で5日間共培養した。5日間培養後、上清を回収し、IFN-γレベルを、Meso Scale電気化学発光IFN-γアッセイを用いて測定した。
【0248】
結果
9つのさらなる抗TIM-3抗体の用量反応曲線を
図5に示す。9つの抗体全てが、このアッセイにおいてIFN-γレベルの用量依存的増加を誘導した。注目すべきことに、対照抗体ABTIM3およびmAb15の効果は観察されなかった。用量反応曲線を、100μg/mlの出発濃度の抗体を2回滴定することによって作製した。グラフの各点は、3回の反復の平均を表し、エラーバーはSEMを表す。
【0249】
実施例8:二方向MLRアッセイにおけるさらなる抗TIM-3抗体のインビトロ機能評価
この実施例は、二方向混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてIFN-γの用量依存的分泌を誘導することによって、10個の抗TIM-3抗体のインビトロ機能活性を実証する。
【0250】
材料および方法
二方向MLRアッセイにおいて、2つの異なる健康なドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を共培養し、同種異系特異的反応を誘発して、結果としてサイトカイン産生およびT細胞活性化/増殖をもたらした。2つの異なるドナー由来のPBMCを1:1の比で混合した。5日間培養後、上清を回収し、IFN-γレベルを、Meso Scale電気化学発光サイトカインアッセイを用いて測定した。
【0251】
結果
10個の抗TIM-3抗体の用量反応曲線を
図6に示す。抗TIM-3抗体の全てが、このアッセイにおいてIFN-γレベルの用量依存的増加を誘導した。注目すべきことに、対照抗体ABTIM3およびmAb15の効果は観察されなかった。用量反応曲線を、100μg/mlの出発濃度の抗体を2回滴定することによって作製した。グラフの各点は、3回の反復の平均を表し、エラーバーはSEMを表す。
【0252】
実施例9:樹状細胞アッセイにおけるさらなる抗TIM-3抗体のインビトロ機能評価
この実施例は、単球由来樹状細胞からのTNF-αの用量依存的分泌を誘導することによって、9つの抗TIM-3抗体のインビトロ機能活性を実証する。
【0253】
材料および方法
CD14+単球を、健康なドナー材料由来の末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。樹状細胞(DC)を、20ng/mlの顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および20ng/mlのインターロイキン-4(IL-4)と共に6日間培養することにより、CD14+単球から分化させた。単球由来樹状細胞を集め、示された抗体の存在下で5日間培養した。5日間培養後、上清を回収し、TNF-αレベルを、Meso Scale電気化学発光サイトカインアッセイを用いて測定した。
【0254】
結果
9つのさらなる抗TIM-3抗体の用量反応曲線を
図7に示す。9つの抗TIM-3抗体の全てが、2つの独立したドナーにおいて単球由来樹状細胞からのTNF-αレベルの用量依存的増加を誘導した。注目すべきことに、対照抗体ABTIM3およびmAb15の効果は観察されなかった。用量反応曲線を、100μg/mlの出発濃度の抗体を2回滴定することによって作製した。グラフの各点は、3回の反復の平均を表し、エラーバーはSEMを表す。
【0255】
実施例10:ヒトおよびカニクイザルのTIM-3の抗体親和性の測定
この実施例は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、ヒトおよびカニクイザルのTIM-3細胞外ドメインに対する抗TIM-3 Fabフラグメントの結合親和性を実証する。
【0256】
材料および方法
結合速度分析を、IBIS MX96 SPR装置(IBIS Technologies、The Netherlands)と組み合わせた連続フローマイクロスポッター(CFM、Wasatch Microfluidics、Salt Lake City、US)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)によって行った。
【0257】
抗TIM-3 Fab断片を、標準的な酵素切断キット(Genovis、Sweden)を用いて、IgG1 LALAフォーマット中の選択された抗体の修正された配列変異体から作製した。Fab断片は、Fab[抗体番号]として標識される。Fab15086に用いられる重鎖可変ドメインアミノ酸配列は、配列番号7に示される修正された配列である。ヒトおよびカニクイザルTIM-3の細胞外ドメインをコードするTIM-3 cDNAを合成し、CMVプロモーターおよびヒトIgG1 Fc配列(AA P101-K330)を含むベクターにクローニングして、IgG1 Fcのクローン化されたTIM-3 ECDへのC末端結合をもたらす。TIM-3 Fc融合構築物は、標準的なPCRおよびエンジニアリング技術によって作製され、タンパク質を、ExpiCHO(商標)発現システムを用いて2mlの培養液中で一時的に発現させた。ヒトTIM-3 Fc融合構築物を9日後に回収し、上清を、SPRにより抗TIM-3 Fabフラグメントへの結合親和性について試験した。抗原を、標準的な手順を用いて精製し、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)(Ssens BV、The Netherlands)上で15分間、連続フローマイクロスピッター(CFM、Wasatch Microfluidics、Salt Lake City、US)を用いて捕捉した。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサに配置し、残りの捕捉部位をブロックして、捕捉したタンパク質を、FixITキット(Ssens BV、The Netherlands)を用いて表面に固定した。反応速度分析を、いわゆる反応速度滴定シリーズ(Karlsson R. 2006)を適用することによって行い、ここで、本発明の抗体の単量体Fab断片を、各Fab注入後に表面再生ステップを適用することなく、1nMから100nMの漸増濃度で注入した。Fab連結(association)を15分間行い、抗原解離を15分間おこなった。記録された結合応答を、結合速度(オンレート)定数(konまたはka)、解離速度(オフレート)定数(koffまたはkd)および親和性定数(KD)の計算のためにスクラバー2ソフトウェアを用いた単純なラングミュア1:1結合モデルに適合させた。
【0258】
結果
親和性測定の結果は、Fab 15086、Fab 20293およびFab 20131ならびに2つの対照抗体が、異なる親和性でヒトおよびカニクイザルのTIM-3に結合することを実証する。詳細な結合速度を以下の表17に示す。
【0259】
【0260】
実施例11:ヒトおよびカニクイザルTIM-3 ECDに対する抗体結合のELISA測定
この実施例は、ELISAによって測定した、ヒトおよびカニクイザルTIM-3 ECDに対する抗TIM-3抗体の結合能を実証する。
【0261】
材料および方法
抗体‐抗原結合を、1μg/mlのコーティングしたTIM-3 Fc 融合抗原を用いてELISAにより測定した。ヒトおよびカニクイザル抗原は、Sino Biologicalsから入手した。抗TIM-3抗体を、2回連続滴定で150μg/ml(1000nM)から開始して異なる濃度でコーティングした抗原と共にインキュベートした。洗浄後、結合した抗体をHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)複合2次抗体によって検出した。
【0262】
結果
ELISAは、評価された抗体の全てが、ヒトおよびカニクイザルのTIM-3 ECDの両方に結合可能であることを実証した。最大結合の半分を生じる抗TIM-3抗体の濃度(EC50)が報告されている。全ての試験された抗体が、約1nM以下のEC50値でヒトTIM-3に結合したが、カニクイザルTIM-3への結合においてははるかに多くの変異体が観察された(表18)。抗体20131、20185、20293およびABTIM3のようないくつかの抗体が、ヒトおよびカニクイザルTIM-3の両方に同一の結合を示した。抗体19324、19416、19568および20300のような他の抗体は、カニクイザルTIM-3に中程度の結合を示したが、抗体20362、20621および15086.17145は、カニクイザルTIM-3に対して弱い交差反応性を示した(100倍を超えるEC50の低下)。最も低いカニクイザルTIM-3交差反応性を示す抗体の結合曲線は、ELISA評価において最も高い濃度で試験したとき、明らかに抗原への飽和結合を示した。
【0263】
【0264】
実施例12:抗TIM-3抗体のエピトープビニング
この実施例は、本発明の抗TIM-3抗体を、対形成の競合パターンに基づいてエピトープビンに分類する方法を説明する。異なるエピトープビンに属する抗体は、TIM-3細胞外ドメイン(ECD)上の異なるエピトープを認識する。
【0265】
材料および方法
対形成された抗体競合の試験を、IBIS MX96 SPR装置(IBIS Technologies、The Netherlands)と組み合わせた連続フローμスピッター(CFM)(Wasatch Microfluidics、US)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)分析により行った。表面プラズモン共鳴イメージング分析を、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)SPRセンサ(Ssens BV、The Netherlands)上で行った。合計16個のヒト抗TIM-3 IgG2抗体および2つのIgG4対照抗体(ABTIM3およびmAb15)を、0.05%のTween20を含有するPBS緩衝液(PBS-T)(pH7.0)中で15μg/mlに希釈した。連続フローマイクロスポッターを用いて15分間スポッティングすることにより、抗Fcセンサ表面上に抗体を捕捉した。スポッティング後、SensEye(登録商標)を、IBIS MX96バイオセンサに配置し、残りの抗Fc部位を、30μg/mlの非特異的ヒトIgG1の添加によりブロックした。捕捉抗体をFixItキット(Ssens BV、The Netherlands)を用いて表面に結合させた。センサ調製後、抗体競合分析を、固定化された抗体が200nMの可溶性の一価のTIM-3抗原(Acro Biosystems、China)に結合し、次いで、別の抗TIM-3抗体との結合についてプローブ化する、古典的なサンドイッチアッセイを用いて行った。次に、PBS-T緩衝液中で15μg/mlに希釈した18個の抗TIM-3抗体のそれぞれの個々の注入を、抗体競合パターンを確立するために行った。各競合サイクルの後、センサ表面を、100mM H3PO4緩衝液(pH3.0)を用いて再生した。
【0266】
結果
18個の抗TIM-3抗体の競合パターンを
図8に示す。抗体mAb15(bin1)、15105および15107(bin2)、15260およびABTIM3(bin3)、17244(bin7)、ならびに15174および15175(bin8)は、本明細書に記載の細胞ベースのMLRアッセイにおいて機能的な活性を示さなかったが、異なるエピトープを認識したために含まれていた。TIM-3結合が、これらの抗体がセンサ表面に捕捉されたとき(単方向遮断のとき)顕著に減少したため、Bin8抗体は溶液中でのみ試験した。従って、これらの抗体は、四角で表される。機能的抗TIM-3抗体は、3つの交差競合エピトープビン(bin4,5および6)に結合することが見出された。エピトープビン4に属する機能的抗体には、抗体20621、20293、19568、20362、15086.17145および19416が含まれた。これらの抗体は、相互に、およびエピトープビン3、5、6および7由来の抗体を交差遮断(cross-block)した。エピトープビン5に属する機能的抗体には、抗体20131および20185が含まれた。これらの抗体は、互いに、およびエピトープビン3、4、6および7由来の抗体を交差遮断した。さらに、20131および20185はまた、それらがセンサ表面上に捕捉されたときのみ(単方向遮断のとき、破線)、mAb15が結合するのを妨げた。最後に、エピトープビン6に属する機能的抗体には、抗体19324および20300が含まれた。これらの抗体は、互いに、およびビン2由来の抗体を除く全ての他の抗体を交差遮断した。
【0267】
エピトープビン4、5および6由来の機能性抗体は、各ビニンググループが、パネル中の他の抗TIM-3抗体と比べてユニークな競合パターンを有することから、対照抗体ABTIM3(ビン3)およびmAb15(ビン1)とは異なる結合エピトープである(
図1)ことが、上記の結果から推論され得る。
【0268】
実施例13:TIM-3突然変異誘発による抗TIM-3抗体のエピトープマッピング
抗体エピトープは、一般的に、直線状エピトープ(連続エピトープとも称される)または立体的エピトープ(不連続エピトープとも称される)として特徴付けることができる。直線状エピトープは、単一の連続アミノ酸配列に基づいて定義されるが、立体的エピトープは、多くのより小さい不連続な直線状配列または単一の接触(contact)残基から構成され得る。抗体と抗原との間の分子間タンパク質界面でクラスター化する接触残基の集合はまた、ホットスポットとも称される(Moreira et. al., Proteins 68(4):803-12 (2007))。ほとんどのB細胞エピトープは、15-22アミノ酸残基の平均エピトープ長であって、そのうち2-5アミノ酸が結合に最も貢献し(Sivalingam and Shepherd、上記)、本質的に不連続であることが現在広く認められている(Sivalingam and Shepherd, Mol Immunol. 51(3-4):304-9 (2012))、Kringelum et al., Mol Immunol。53(1-2):24-34 (2013))。
【0269】
29個の異なるTIM-3変異体に結合親和性をランク付けすることにより、この実施例は、Fab15086、Fab20293およびFab20131の結合エピトープが、対照抗体ABTIM3およびmAb15に認識されるエピトープとは異なる直線状エピトープおよびホットスポットに分けることができる方法を示す。
【0270】
材料および方法
ヒトTIM-3受容体は、181個のアミノ酸の細胞外ドメイン(ECD)(残基22-202)、続いて膜貫通ドメイン(残基203-223)および細胞質ドメイン(残基224-301)からなる。TIM-3は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、ECDは、ムチンドメインおよびIgVドメインの2つのドメインからなる。IgVドメインは、一方の側にGFCC’β鎖、反対側にBEDβ鎖を有する2つのβシートに配置された7つの逆平行β鎖の相互作用から作製された2層のβサンドイッチを含む。2つのβシートは、残基C54‐C123の間のジスルフィド結合によって安定化される。ヒトTIM-3 IgV(PDB 5F71)について結晶構造が利用可能である。TIM-3 IgVドメインは、他のIgVドメインと同様にA鎖を有しないが、2つのさらなるジスルフィド結合(C58-C63およびC52-C110)を有して、その位置でCC’ループおよびFGループを近接して有して、ホスファチジルセリン(PS)リガンド結合に独特の結合溝(cleft)を形成している。PSリガンドと複合体を形成するマウスTIM-3の結晶構造が存在し(3KAA)、CC’ループおよびFGループに対するリガンド結合接触が実証される。
【0271】
TIM-3のいくつかのリガンドおよび/またはTIM-3の共受容体が同定されており、それらには、HMGB-1、ガレクチン-9、CEACAM-1およびホスファチジルセリンが含まれる(Chiba et al., Nat. Immunology 13(9):832-42 (2012)、Li et al., Hepatology 56(4):1342-51 (2012)、DeKruyff et al., J Immunology 184(4):1918-30 (2010)、Das et al., Immunol Rev. 276(1):97-111 (2017))。
【0272】
ヒトTIM-3およびオーソログのタンパク質配列を、UniProtからダウンロードした;ヒト(Q8TDQ0;配列番号236)、カニクイザル(Macaca fascicularis、G7P6Q7;配列番号237)、マウス(Mus musculus、Q8VIM0;配列番号238)およびラット(Rattus norvegicus、P0C0K5;配列番号239)。これらの配列を表23に示す。異なる細胞外TIM-3アミノ酸配列間の配列同一性を以下の表19に示す。
【0273】
【0274】
結晶構造およびアミノ酸配列から、表面露出アミノ酸残基を同定し、82個の個々のアラニン置換をヒトTIM-3ECD(アラニンスキャンニング)で設計した。
【0275】
天然ヒトTIM-3構造との関連で直線状エピトープをマッピングするために、47個のキメラタンパク質が、ヒトTIM-3 ECD配列中の10個のアミノ酸を5個のアミノ酸が重複するセグメント中でマウス配列に連続的に交換し、クリティカルループ(critical loop)中でラットおよびカニクイザルバージョンを補充して、作製した。配列交換は、アミノ酸22-199にまたがるヒトTIM-3の細胞外ドメインで行った。
【0276】
ヒトTIM-3の細胞外ドメインをコードするcDNAを合成し、CMVプロモーターおよびヒトIgG1 Fc配列(AA P101-K330)を含むベクターにクローニングして、IgG1 Fcのクローン化したTIM-3 ECDへのC末端融合をもたらした。変異させたヒトTIM-3 Fc融合構築物を、標準的PCRおよびエンジニアリング技術により作製し、タンパク質を、ExpiCHO(商標)発現システムを用いて2ml培養液中で一過的に発現させた。ヒトTIM-3 Fc融合構築物を集め、精製して、表面プラズモン共鳴(SPR)により抗TIM-3 Fabフラグメントへの結合親和性について試験した。TIM-3融合タンパク質を、連続フローマイクロスポッター(CFM、Wasatch Microfluidics、Salt Lake City、US)を用いて15分間、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)(Ssens BV、The Netherlands)上に固定化した。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサに配置し、捕捉したタンパク質を、FixITキット(Ssens BV、The Netherlands)を用いて表面に固定した。反応速度分析を、いわゆる反応速度滴定シリーズ(Karlsson R. 2006)を適用することによって行い、ここで、本発明の抗体の単量体Fab断片を、各Fab注入後に表面再生ステップを適用することなく、1nMから100nMの漸増濃度で注入した。Fab連結(association)を15分間行い、抗原解離を15分間おこなった。記録された結合応答を、結合速度(オンレート)定数(konまたはka)、解離速度(オフレート)定数(koffまたはkd)および親和性定数(KD)の計算のためにスクラバー2ソフトウェアを用いた単純なラングミュア1:1結合モデルに適合させた。
【0277】
結果
抗TIM-3 Fab 15086、20293、20131ならびに対照類縁体ABTIM3およびmAb15の結合親和性を、TIM-3変異構築物に対する結合の変化に関して評価した。
【0278】
突然変異したTIM-3構築物に対するFab断片の結合親和性を、KD変異体/KD野生型の比として表した(正規化結合親和性)。表20および21は、異なる結果をもたらしたキメラタンパク質およびアラニン変異体を示す。少なくとも5倍の親和性低下を、突然変異したTIM-3構築物への結合親和性の減少を検出するためのカットオフ基準として用いた。いくつかの例において、特定のFabに対して結合が検出されなかった。これらの構築物はNB(結合なし)として記載した。
【0279】
分析は、抗TIM-3 Fab 15086、20293および20131の結合エピトープが、対照抗体ABTIM3およびmAb15と比較して明らかに異なることを示した。15086および20293は、リガンド結合ループCC’およびFGに近い位置62-67に挿入されたマウス配列を有するキメラタンパク質には結合しなかったが、対照ABTIM3には結合した(表20)。TIM-3上の15086のエピトープは、アラニンスキャニングから明らかなように、P50、V60、F61、E62、G64、R69およびFGループ残基I117、M118、D120を含むこのアミノ酸配列を超えて延びていた(表21)。Fab 20293は、残基M118およびD120が、アラニンに突然変異したときにのみ、15086への結合に影響を与えたことを除いて、15086と顕著に類似したエピトープを有していた。Fab 20131は、残基114-117のFGループに存在する異なるエピトープに結合することが見出され、これは、残基118、120、またCC’残基F61およびE62を含むようにアラニンスキャンニングによって延長された。15086、20293および20131に共通して、位置F61のアラニン突然変異に対する感受性であるのに対し、2つの対照抗体はどちらも感受性を示さなかった。対照抗体mAb15は、15086および20293と同様に、位置62-67で変異した配列に結合しなかったが、mAb15のエピトープは、この抗体が位置74-85の配列をマウスに交換された2つのさらなる構築物に結合しなかったため、明らかに異なった。抗体ABTIM3は、これらのタンパク質に対する変化した結合親和性によって証明されるように、位置22-28、107-144および123-128で突然変異した直線状構築物によって定義される異なるエピトープを明らかに示した(表20)。エピトープマッピングによる発見のまとめを、以下の表22に示し、エピトープをTIM-3 IgVドメインの表面上にマッピングする方法の分子モデルを
図9に示す。
【0280】
まとめると、本発明者らは、3つのFab 15086、20293および20131が、TIM-3 IgVドメインの上部で、独特であるが部分的に重複するエピトープを認識することを、129個のTIM-3変異体のパネルへの結合を分析することによって分子レベルで示した。この発見は、3つの抗体全てが、TIM-3 IgVドメイン上の機能的表面を共に構成する重複交差競合エピトープに結合することを示すエピトープビニング分析(実施例12)と一致する。これらのエピトープは、ホスファチジルセリン結合部位、ならびにHMGB-1およびCEACAM1結合に必須であるアミノ酸E62と明らかに重複するが(Chiba et al., Nat. Immunology 13(9):832-42 (2012)、Das et al., Immunol Rev. 276(1):97-111 (2017))、一方、2つの対照抗体は、IgVドメインの中央部分(mAb15)およびIgVドメインの他方の側(ABTIM3)により多く位置するエピトープを有する。結果は、mAb15およびABTIM3が、TIM-3に同時に結合することができることを示すエピトープビニングデータと一致する(実施例12)。15086、20293および20131のエピトープ位置に基づいて、各抗体は、TIM3リガンド(ホスファチジルセリン、CEACAM-1およびHMGB-1)の結合を遮断することができると予測される。
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【配列表】