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特許7123805ゴム用添加剤、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ゴム用添加剤、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20220816BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20220816BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220816BHJP
   C08K 5/30 20060101ALI20220816BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220816BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220816BHJP
   C07C 251/76 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L7/00
C08L9/00
C08K5/30
C08K3/04
B60C1/00 A
C07C251/76
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018554217
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2017042920
(87)【国際公開番号】W WO2018101368
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2016233610
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】植野 真布夕
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正樹
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-292834(JP,A)
【文献】特開2002-030058(JP,A)
【文献】FUJIKAWA,F. et al.,Studies on Chemotherapeutics for Myocobacterium tuberculosis. XI. Synthesis and Antibacterial Activity on Mycobacterium tuberculosis of p-Aminosalicyloylhydrazone,Yakugaku Zasshi,1958年,vol.78,pp.559-561
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有してなることを特徴とする、ゴム用添加剤。
【化1】
[式中、 がメチル基であり、R が2-メチルプロピル基、ウンデシル基若しくは2-メチルプロペニル基である;又は;R 及びR のうちの少なくとも一つが、イソプロピル基又はウンデシル基であり、Aは、下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化2】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R)(R)又はニトロ基を示す。ここで、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R及びRのいずれもが水素原子となることはなく、R及びRのいずれもが水素原子となることはない。]
【請求項2】
低発熱化剤として用いられることを特徴とする、請求項1記載のゴム用添加剤。
【請求項3】
ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、請求項1又は2に記載のゴム用添加剤とを含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム用添加剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることを特徴とする、請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴とする、請求項3又は4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記充填材が、カーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~160質量部であることを特徴とする、請求項3~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなることを特徴とする、タイヤ。
【請求項9】
下記式(I)で表されることを特徴とする、ヒドラゾン化合物。
【化3】
[式中、Rがメチル基であり、Rが2-メチルプロピル基、ウンデシル基若しくは2-メチルプロペニル基である;又は;R及びRのうちの少なくとも一つが、イソプロピル基又はウンデシル基であり、Aは、下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化4】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R)(R)又はニトロ基を示す。ここで、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R及びRのいずれもが水素原子となることはなく、R及びRのいずれもが水素原子となることはない。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム用添加剤、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなっており、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く、低発熱性に優れたゴム組成物が望まれている。
【0003】
従来の空気入りタイヤにおいては、低発熱性を実現することを目的として、ゴム組成物中のカーボンブラックの粒子径を大きくしたり、カーボンブラックの配合量を減少させる等、の技術が開発されている。ただし、これらの技術は、同時にトレッドゴムの耐摩耗性の低下や、ゴムの耐カット性や耐チッピング性等の耐破壊性を低下させるという問題があった。
【0004】
そのため、強度等の他の物性を低下させることなく、低発熱性を改善できる技術の開発が望まれていた。
それらの技術の一つとして、例えば特許文献1には、ゴム成分とカーボンブラックとの化学的相互作用を向上させることを目的として、天然ゴムを含むエラストマーに、カーボンブラック及び特定のヒドラジド化合物を配合したゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-501827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術については、低発熱性が十分ではなく、自動車の低燃費化に対する要求に応えるべく、低発熱性のさらなる改善が必要であった。また、ゴム組成物中にヒドラジド化合物を配合した場合、未加硫粘度が上昇し、ゴム組成物の加工性が低下するという問題もあった。
【0007】
そのため、本発明の目的は、ゴム組成物の低発熱性及び加工性を向上できるゴム用添加剤、並びに、低発熱性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低発熱性に優れたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、ゴム組成物中に、特定構造を有するヒドラゾン化合物を含有させることによって、従来のヒドラジド化合物や、ヒドラゾン化合物を用いた技術に比べて、ゴム成分とカーボンブラックとの相互作用を高めることができる結果、より優れた低発熱性及び加工性を実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明のゴム用添加剤は、下記式(I)
【化1】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~16のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、Aは下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化2】
[式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R7)(R8)又はニトロ基を示す。ここで、R7及びR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R3及びR4のいずれもが水素原子となることはなく、R5及びR6のいずれもが水素原子となることはない。]
で表されるヒドラゾン化合物を含有してなることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、ゴム組成物の低発熱性及び加工性を向上できる。
【0010】
また、ゴム用添加剤は、低発熱化剤として用いられることが好ましい。
ゴム組成物中に用いた際に、優れた低発熱性を実現できるためである。
【0011】
また、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、前記本発明のゴム用添加剤とを含むことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、得られるゴム組成物の優れた低発熱性及び加工性を実現できる。
【0012】
また、本発明のゴム組成物については、前記ゴム用添加剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性を実現できるためである。
【0013】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性を実現できるためである。
【0014】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記充填材が、カーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性を実現できるためである。
【0015】
また、本発明のゴム組成物については、前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~160質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性を実現できるためである。
【0016】
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性を実現できる。
【0017】
さらに、本発明のヒドラゾン化合物は、下記式(I)で表されることを特徴とする。
【化3】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~16のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、Aは下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化4】
[式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R7)(R8)又はニトロ基を示す。ここで、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R3及びR4のいずれもが水素原子となることはなく、R5及びR6のいずれもが水素原子となることはない。]
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゴム組成物の低発熱性及び加工性を向上できるゴム用添加剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、低発熱性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性に優れたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を具体的に例示説明する。
(ゴム用添加剤)
本発明のゴム用添加剤は、下記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有することを特徴とする

【化5】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~16のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、Aは下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化6】
[式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R7)(R8)又はニトロ基を示す。ここで、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R3及びR4のいずれもが水素原子となることはなく、R5及びR6のいずれもが水素原子となることはない。]
【0020】
前記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有してなるゴム用添加剤を、ジエン系ゴム成分に添
加することによって、得られたゴム組成物に優れた低発熱性と加工性を付与することができる。
即ち、本発明のゴム用添加剤は、低発熱化剤、発熱防止剤、発熱抑制剤又は加工性改良剤として利用できることから、換言すれば、本発明のゴム用添加剤は、ジエン系ゴム成分に添加することを特徴とする、前記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有してなる低発熱化剤、発熱防止剤、発熱抑
制剤又は加工性改良剤を包含する。
【0021】
ここで、前記R7及びR8の炭素数1~4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
また、前記R1及びR2の炭素数1~16のアルキル基としては、前記炭素数1~4のアルキル基の例に加えて、例えば、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等の炭素数1~16の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。これらの中でも炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0022】
さらに、前記R1及びR2の炭素数2~6のアルケニル基としては、例えばビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、3-メチル-2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基等の任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が挙げられる。
これらの中でも炭素数3~5の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が好ましく、炭素数3~5の分岐鎖状アルケニル基が特に好ましい。
【0023】
さらにまた、前記R7及びR8の炭素数1~4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~3の直鎖状又は分枝状のアルキルカルボニル基が挙げられる。
【0024】
また、前記R3、R4、R5及びR6の、基-N(R7)(R8)で表されるアミノ基の具体的な基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、アセチルアミノ基、ビスアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアシル基がモノ又はジ置換したアミノ基、アセチルメチルアミノ基等の炭素数1~4のアシル基と炭素数1~4のアルキル基が置換したアミノ基を例示することができる。
さらに、本明細書において、基-N(R7)(R8)で表されるアミノ基には、R7とR8が一緒になって環を形成してもよく、アジリジニル基、ピロリジニル基、ピペリジノ基等の複素環基、2-オキソピペリジノ基等の環状アミド基、スクシンイミド基、グルタルイミド基等の環状イミド基を包含する。
【0025】
本発明のゴム用添加剤は、式(I)で表されるヒドラゾン化合物のうち、式(A-1)で表される
基(以下、「基(A-1)」ということがある。)のR3及びR4のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、R3及びR4のうちの少なくとも1つがヒドロキシ基であることが特に好ましい。
【0026】
本発明のゴム用添加剤は、式(I)で表されるヒドラゾン化合物のうち、式(A-2)で表される
基(以下、「基(A-2)」ということがある。)のR5及びR6のうちの少なくとも1つがヒドロキシ基、アミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、R5及びR6のうちの少なくとも1つがヒドロキシ基であることが特に好ましい。
【0027】
また、本発明のゴム用添加剤は、式(I)で表されるヒドラゾン化合物のうち、R1及びR2が炭
素数1~14の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが特に好ましい。
【0028】
本発明のゴム用添加剤は、式(I)で表されるヒドラゾン化合物のうち、R1が水素原子であると
きに、R2がイソプロピル基であることが好ましく、R1がメチル基であるときに、R2が2-メチルプロピル基、ウンデシル基又は2-メチルプロペニル基であることが好ましい。また、R1及びR2のいずれか一方が、イソプロピル基又はウンデシル基であることが好ましく、R1がメチル基であるときに、R2が2-メチルプロピル基であることが特に好ましい。得られるゴム組成物により優れた低発熱性及び加工性を付与できるためである。
【0029】
本発明のゴム用添加剤をジエン系ゴム成分に添加又は配合することで、得られるゴム組成物により優れた低発熱性及び加工性を付与できる。
また、本発明のゴム用添加剤は、式(I)で表されるヒドラゾン化合物の融点が、80℃以上、2
50℃未満である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましく、80~200℃である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましい。ジエン系ゴムとの親和性が高くなり、得られるゴム組成物により優れた低発熱性及び加工性を付与できるためである。
【0030】
以下に本発明の好適な具体的化合物を列挙する。
【化7】
【0031】
本発明のゴム用添加剤に含まれる式(I)で表されるヒドラゾン化合物は、例えば、以下の反応式
-1に示す方法により製造することができる。
【化8】
[式中、R1、R2及びAは前記に同じ。]
反応式-1によれば、式(1)で表されるヒドラジド化合物を式(2)で表されるアルデヒド又はケトンに作用させることにより、式(I)で表されるヒドラゾン化合物を製造することができる。
【0032】
上記反応は、溶媒中で行うことができ、使用できる溶媒としては、反応に対して不活性な溶媒である限り公知の溶媒を広く使用することができ、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、及び水を挙げることができる。
これらの溶媒は、式(1)で表されるヒドラジド化合物1質量部に対して、通常0.1~500質量部程度、好ましくは1~10質量部程度使用すればよい。
【0033】
上記反応においては、式(2)で表されるアルデヒド又はケトン化合物の使用量は、式(1)で表されるヒドラジド化合物に対して、通常0.8~10当量、好ましくは1~2当量とすればよい。
また、本反応においては、触媒を用いてもよく、使用できる触媒としては、例えば、硫酸、塩酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸等の有機酸、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸塩を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、式(1)で表されるヒドラジド化合物に対して、通常0.01~0.5当量、好ましくは0.01~0.2当量とすればよい。
本反応は、通常-10℃付近から使用する溶媒の沸点温度までの範囲内で行うことができるが、通常0~70℃程度、好ましくは室温~50℃付近とすればよい。
反応時間は反応温度等により異なり一概には言えないが、通常0.5~24時間程度で本反応は完結する。
【0034】
本発明のゴム用添加剤は、上記式(I)で表されるヒドラゾン化合物単独であってもよく、該ヒド
ラゾン化合物の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤、充填材、その他成分を含んでいてもよい。
また、本発明のゴム用添加剤をジエン系ゴム成分に添加又は配合する際の添加量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、式(I)で表されるヒドラゾン化合物が0.05~30質量部となるよ
うに調整すればよく、好ましくは0.05~10質量部、特に好ましくは0.05~5質量部とすればよい。
本発明のゴム用添加剤のジエン系ゴム成分への添加は、ミキサー、押出機、混練機又は噴霧によって行われることが好ましい。
【0035】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有してなるゴム用添加剤とを含むゴム組成物である。
【化9】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~16のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、Aは下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化10】
[式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R7)(R8)又はニトロ基を示す。ここで、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R3及びR4のいずれもが水素原子となることはなく、R5及びR6のいずれもが水素原子となることはない。]
【0036】
・ゴム成分
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分については、ジエン系ゴムを含むものであれば特に限定はされない。
前記ジエン系ゴムについては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)等を挙げられるが、これらの中でも、天然ゴムを用いることが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性を実現できるからである。
なお、前記ジエン系ゴムについては、1種単独で含有してもよいし、2種以上のブレンドとして含有してもよい。
【0037】
なお、前記ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有量については、特に限定はされないが、優れた低発熱性を維持するという点からは、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0038】
・充填材
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、充填材を含む。
充填材を、前記ゴム成分及び後述する式(I)で表される化合物とともに含むことで、他の物性を低下させることなく、優れた低発熱性及び加工性を実現できる。
【0039】
ここで、前記充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して10~160質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。充填材の量について適正化を図ることで、より優れた低発熱性及び加工性を実現できるためであり、含有量が10質量部未満の場合、十分な耐破壊性が得られないおそれがあり、含有量が160質量部を超えると、十分な低発熱性が得られないおそれがある。
【0040】
また、前記充填材の種類については特に限定はされない。例えば、カーボンブラックや、シリカ、その他の無機充填材を含むことができる。その中でも、前記充填材は、カーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた低発熱性及び加工性が得られるためである。
ここで、前記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックが挙げられる。
また、前記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等を用いることができる。
【0041】
また、前記その他の無機充填材として、例えば下記式(II)で表される無機化合物を用いることも可能である。
nM・xSiOY・zH2O ・・・ (II)
(式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。)
【0042】
上記式(II)で表される無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al23);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO33]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0043】
・ゴム用添加剤
そして、本発明のゴム組成物は、上述した本発明によるゴム用添加剤を含む。
上記式(I)で表されるヒドラゾン化合物の、Aで示された基A-1又は基A-2がカーボンブラック等の充填材と高い親和性を有し、且つ、ヒドラゾン骨格を有する部分がゴム成分と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分と充填材との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材同士の擦れ合いに起因したヒステリシスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができる。加えて、充填材の分散性向上によって、よりすぐれた補強性についても実現できる。
また、ゴム成分と充填材との化学的相互作用が大きく向上した結果、ゴム組成物の低発熱性を維持しつつ、未加硫粘度を低くできるため、加工性についても向上が可能となる。
【0044】
なお、本発明のゴム組成物における前記ゴム用添加剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記式(I)で表されるヒドラゾン化合物が0.05~30質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。前記含有量を前記ゴム成分100質量部に対して0.05質量部以上とすることで、所望の低発熱性及び加工性が得られ、30質量部以下とすることで、加工性や、強度等の他の物性を良好に維持できるためである。
【0045】
・その他の成分
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、前記充填材及び前記ゴム用添加剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、樹脂、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0046】
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定はされない。例えば、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、前記式(I)で表されるヒドラゾン化合物を含有してなる添加剤とを、公知の方法で、配合し、混錬することで得ることができる。
【0047】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いてなることを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことで、他の物性を低下させることなく、優れた低発熱性を実現できる。
前記ゴム組成物を適用する部位については、タイヤの中でもトレッドに用いることが好ましい。本発明のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低発熱性に優れる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0048】
(ヒドラゾン化合物)
本発明のヒドラゾン化合物は、下記式(I)で表されることを特徴とする。
【化11】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~16のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基を示し、Aは、下記式(A-1)又は式(A-2)で表される基を示す。]
【化12】
[式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、基-N(R7)(R8)又はニトロ基を示す。ここで、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアシル基を示す。ただし、R3及びR4のいずれもが水素原子となることはなく、R5及びR6のいずれもが水素原子となることない。]
上述した本発明のゴム用添加剤に含まれることで、ゴム組成物の低発熱性及び加工性を向上できる。
【実施例
【0049】
以下に、製造例、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の製造例、実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
<製造例1>2,3-ジヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド(化合物a)の製造
2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド1.20g、メチルイソブチルケトン3.00gをメタノール10.0mLに添加し、65℃で12時間攪拌した。反応液を濃縮し、析出した固体にジイソプロピルエーテルを加えてろ過し、更にジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,3-ジヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド1.61g(収率90%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:138℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 0.91(m,6H),2.0(m,4H), 2.2(m,2H),6.8(m,1H),7.0(m,1H),7.4(m,1H),9.6(m,1H),10.9(m,1H),11.2(m,1H)
【0051】
<製造例2>4-アミノ-3-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ナフタレン-2-カルボヒドラジド(化合物b)の製造
4-アミノ-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド39.7g、メチルイソブチルケトン36.6gをメタノール183mLに添加し、65℃で3時間攪拌した。反応液を冷却し、析出した固体をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-3-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ナフタレン-2-カルボヒドラジド52.1g(収率95%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:166℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 0.93(m,6H),2.0(m,4H), 2.2(m,2H),7.3(m,2H),7.4(m,2H),7.8(m,2H),8.0(m,1H),11.1(m,1H),NH(2H)は不検出
【0052】
<製造例3>3,5-ジヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ナフタレン-2-カルボヒドラジド(化合物c)の製造
3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド2.85g、メチルイソブチルケトン2.76gをメタノール12.0mLに添加し、65℃で4時間攪拌した。反応液を濃縮し、析出した固体にジイソプロピルエーテルを加えてろ過し、更にジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体3,5-ジヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ナフタレン-2-カルボヒドラジド3.84g(収率98%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:130℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 0.94(m,6H),2.0(m,4H), 2.2(m,2H),6.8(m,1H),7.1(m,1H),7.4(m,1H),7.6(m,1H),8.5(m,1H),10.1(s,1H),11.2(m,1H),11.6(m,1H)
【0053】
<製造例4>4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタ-3-エン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド(化合物d)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド4.73g、4-メチルペンタ-3-エン-2-オン3.34gをメタノール50.0mLに添加し、65℃で1時間攪拌した。反応液を冷却し、析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタ-3-エン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド3.01g(収率43%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:176℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 1.6(m,3H),1.9(m,3H), 2.0(m,3H),5.6(m,1H),5.7(m,2H),6.08(m,1H),6.13(m,1H),7.6(m,1H),10.9(m,2H)
【0054】
<製造例5>4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(トリデカン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド(化合物e)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド4.81g、トリデカン-2-オン6.85gをメタノール50.0mLに添加し、65℃で1時間攪拌した。反応液を濃縮し、析出した固体にイソプロピルアルコールを加えてろ過し、更にイソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(トリデカン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド8.18g(収率82%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:155℃
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6,δppm): 0.86(m,3H),1.3(m,16H),1.5(m,2H), 1.9(m,3H),2.3(m,2H),5.8(m,2H),6.1(m,2H),7.6(m,1H),10.5(m,1H),11.6(m,1H)
【0055】
<製造例6>4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(トリコサン-12-イリデン)ベンゾヒドラジド(化合物f)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド4.80g、トリコサン-12-オン9.72gをメタノール50.0mLに添加し、65℃で1時間攪拌した。反応液を冷却し、析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(トリコサン-12-イリデン)ベンゾヒドラジド11.1g(収率79%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:151℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 0.86(m,6H),1.2(m,32H),1.5(m,4H), 2.3(m,4H),5.8(br-s,2H),6.1(m,2H),7.6(m,1H),10.7(br-s,1H),11.5(br-s,1H)
【0056】
<製造例7>4-アミノ-N’-(2,4-ジメチルペンタン-3-イリデン)-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド(化合物g)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド4.45g、ジイソプロピルケトン64.0gをメタノール50.0mLに添加し、65℃で48時間攪拌した。反応液を冷却し、析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色固体4-アミノ-N’-(2,4-ジメチルペンタン-3-イリデン)-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド5.25g(収率75%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:162℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm):
1.1(m,12H),2.7(m,1H),3.0(m,1H), 5.7(br-s,2H),6.1(m,2H),7.6(d,1H),10.7(br-s,1H),11.6(br-s,1H)
【0057】
<製造例8>4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド(化合物h)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド1.66g、メチルイソブチルケトン1.05gをメタノール20.0mLに添加し、65℃で2時間攪拌した。反応液にジイソプロピルエーテル20.0mLを添加し、析出した固体をろ過し、更にジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(4-メチルペンタン-2-イリデン)ベンゾヒドラジド1.59g(収率64%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:203℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 0.91(m,6H),2.0(m,4H), 2.2(m,2H),5.7(m,2H),6.1(m,2H),7.6(m,1H),10.6(m,1H),11.6(m,1H)
【0058】
<製造例9>4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(2-メチルプロピリデン)ベンゾヒドラジド(化合物i)の製造
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド5.29g、イソブチルアルデヒド2.74gをメタノール50.0mLに添加し、65℃で1時間攪拌した。析出した固体をろ過後、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシ-N’-(2-メチルプロピリデン)ベンゾヒドラジド4.00g(収率57%)を得た。得られた化合物の融点及び1H-NMRを以下に示す。
融点:95℃
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6,δppm): 1.1(m,6H),2.5(m,1H),5.9(br-s,2H),6.0(m,1H),6.1(m,1H),7.6(m,2H),11.1(br-s,1H),12.6(br-s,1H)
【0059】
(実施例1~9、比較例1~2)
次に、プラストミルで混練して表1に示す配合処方のゴム組成物を調製した。
調製した各ゴム組成物に対して、下記の方法で、低発熱性及び加工性について、評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0060】
(1)tanδ(低発熱性)
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。
なお、tanδは、比較例1の値を100としたときの指数で示し、小さい程、低発熱性に優れることを示す。
【0061】
(2)未加硫粘度(加工性)
各サンプルのゴム組成物について、JIS K 6300-1に準拠し100℃でムーニー粘度試験を実施することで未加硫粘度を測定した。
なお、未加硫粘度は、比較例1の値を100としたときの指数で示し、指数値が小さい程、粘度が低く未加硫ゴムの成型作業が容易であることを示す。
【0062】
【表1】
【0063】
*1 RSS#1
*2 旭カーボン(株)製「♯80」
*3 3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、東京化成工業(株)製
*4 イソフタル酸ジヒドラジド、東京化成工業(株)製
*5 富士興産株式会社製「アロマックス#3」
*6 N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
*7 2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック224」
*8 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーCM」
*9 製造例1~9により得られた化合物a~i
【0064】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物と比較して、いずれも良好な低発熱性及び加工性を示すことがわかった。また、実施例1~3のゴム組成物は、比較例2のゴム組成物と比較しても、良好な低発熱性及び加工性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、ゴム組成物の低発熱性及び加工性を向上できるゴム用添加剤、並びに、低発熱性及び加工性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性に優れたタイヤを提供することができる。