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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】高圧燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
F02M59/44 N
F02M59/44 S
F02M59/44 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018560539
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017056938
(87)【国際公開番号】W WO2017198371
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2018-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】102016208625.1
(32)【優先日】2016-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016213451.5
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン シュトリッツェル
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ ビュアナー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ローペアツ
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】佐々木 正章
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199873(JP,A)
【文献】特開2009-108784(JP,A)
【文献】特開2006-250122(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプ(10)であって、
ポンプハウジング(12)と、
少なくとも1つの環状の取付けフランジ(32)と、
を備え、
前記取付けフランジ(32)は、前記ポンプハウジング(12)の半径方向外側に、溶接部(34)によって取り付けられており、
前記溶接部(34)は、溶接領域(36)と、該溶接領域(36)の側方に配置された少なくとも1つの溶接ビード(40)とを有する、高圧燃料ポンプ(10)において、
前記溶接ビード(40)は、前記ポンプハウジング(12)と前記取付けフランジ(32)との間に形成された収容室(46)内に配置されており、
前記高圧燃料ポンプ(10)は、前記取付けフランジ(32)が前記ポンプハウジング(12)に取り付けられた状態で前記収容室(46)を周辺部(54)に結合する開口(52)を有し、前記収容室(46)は、前記ポンプハウジング(12)の外壁において環状に延びている溝(47)によって形成されており、前記溝(47)は、半径方向において、前記ポンプハウジング(12)と前記取付けフランジ(32)との間に配置されており、前記溝(47)は、前記開口(52)に対して半径方向内側に延びている、
ことを特徴とする、高圧燃料ポンプ(10)。
【請求項2】
前記収容室(46)は、半径方向で見て、前記溶接ビード(40)よりも広幅であることを特徴とする、請求項1記載の高圧燃料ポンプ(10)。
【請求項3】
前記収容室(46)は、環状空間であることを特徴とする、請求項1または2記載の高圧燃料ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載の高圧燃料ポンプに関する。
【0002】
このような高圧燃料ポンプは、独国特許出願公開第102005007806号明細書から公知であり、ポンプハウジングと取付けフランジとを有する。取付けフランジは、溶接部によってポンプハウジングに取り付けられていて、少なくとも1つの結合領域を有し、この結合領域では組み付けた状態で結合要素が係合する。この結合要素を介して、ピストンポンプを保持ボディに取り付けることができる。
【0003】
発明の開示
本発明の根底を成す課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を備える高圧燃料ポンプによって解決される。本発明の有利な改良態様は、従属請求項に記載されている。さらに、本発明にとって重要な特徴は、以下の説明および図面から判る。これらの特徴は、単独でも様々な組合せにおいても、本発明にとって重要であり得る。
【0004】
本発明によれば、溶接プロセスのときに、溶接領域の縁部において流出する溶接ビードの自由表面が、たとえばポンプハウジングまたは取付けフランジの低温のハウジング壁と接触することが阻止される。また、これにより、ポンプハウジングおよび/または取付けフランジおよび/または溶接領域(概して「溶接継ぎ目」と称される)を損傷させるおそれのある溶接スパッタが形成されることが阻止される。したがって、本発明は、ポンプハウジングと取付けフランジとの間の結合が、最適にかつ関与している構成要素への不都合な影響なしに形成されるように働く。
【0005】
この場合、溶接部がコンデンサ放電溶接によって製作されると特に有利である。ここで、このコンデンサ放電溶接は、特に低コストで迅速な溶接のタイプである。コンデンサ放電溶接の場合、溶接に必要とされるエネルギは、予め充電されたコンデンサからサイリスタを介して溶接トランスに接続される。この場合、充電時間は0.5秒~2秒の間の範囲であり、溶接時間は3ミリ秒~10ミリ秒の間の範囲である。これと並行して、溶接準備によって励起された作用抵抗は、溶接箇所における温度を極めて高い速度で上昇させる。この迅速な温度上昇により、熱が排出し得る前に溶接ゾーンが加熱され、ひいては溶接箇所の周辺の領域の加温が阻止される。数ミリ秒後にすでに、事前に溶接箇所の周辺部が完全に十分に加温されることなく、隆起部が溶接される。加温されるべき体積に導入されるエネルギがこのように集中することにより、コンデンサ放電溶接の場合の効率は極めて高い。したがって、コンデンサ放電溶接は極めて経済的な方法である。
【0006】
さらに、収容室が、半径方向で見て溶接ビードよりも広幅であることが提案される。これにより、溶接ビードの自由表面が、ポンプハウジングまたは取付けフランジの低温の壁部と接触することが特に効果的に阻止される。
【0007】
取付けフランジが環状に延びている場合、収容室が環状空間であると有利である。この場合、収容室を、たとえば極めて簡単で低コストの方法で、環状に延びている溝によって製作することができる。
【0008】
さらに、高圧燃料ポンプが、収容室を周辺部に結合する開口を有すると有利である。これにより、収容室内における溶接箇所または溶接結合部の領域での溶接プロセスおよび温度上昇によって、所望されない高い圧力が生じることが阻止される。
【0009】
収容室を製作する簡単な変化態様では、収容室が、少なくとも、ポンプハウジングに設けられた切欠きによっても形成されている。同様の方式で、収容室を、少なくとも、取付けフランジに設けられた切欠きによっても形成することができる。収容室を、ポンプハウジングに設けられた切欠きならびに取付けフランジに設けられた切欠きによって形成することも可能である。
【0010】
別の改良態様は、ポンプハウジングに、ポンプハウジングの接触部分よりも小さい直径を有するアンダカット部分が存在し、接触部分は、取付けフランジと、好ましくはプレス嵌めで接触することを特徴とする。このことにより、取付けフランジの簡単な組付けが可能になる。なぜならば、ポンプハウジングに対する取付けフランジの被嵌は、接触部分の付近でしか行われないからである。
【0011】
以下に、本発明の態様を、添付の図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ポンプハウジングと、取付けフランジと、溶接領域とを備える高圧燃料ポンプの第1の態様の縦断面図である。
図2図1の溶接領域の拡大詳細図である。
図3】第2の態様の、図2と同様の図である。
図4】第3の態様の、図2と同様の図である。
【0013】
以下の図面において同等の機能を有する要素および領域には、同じ参照符号が付されている。
【0014】
図1では、内燃機関(詳細には図示せず)用の高圧燃料ポンプ全体に参照符号10が付されている。高圧燃料ポンプ10は、全体的に略円筒状のポンプハウジング12を備える。このポンプハウジング12内にまたはポンプハウジング12に接して、高圧燃料ポンプ10の主要な構成要素が配置されている。つまり、高圧燃料ポンプ10は、入口/流量制御弁14と、圧送室16内に配置され駆動軸(図示せず)によって往復運動させることが可能な圧送プランジャ18と、出口弁20と、圧力制限弁22とを備える。
【0015】
ハウジング12内には、第1の通路24が存在している。この第1の通路24は、圧送室16および圧送プランジャ18に対して同軸に延在していて、圧送室16から第2の通路26に通じる。この第2の通路26は、第1の通路24に対して90°の角度で配置されていて、第2の通路26内には、圧力制限弁22が収容されている。ポンプハウジング12の縦軸線には、図1では全体に参照符号28が付されている。図1の上側では、ポンプハウジング12内に圧力減衰器30が配置されている。
【0016】
動作中、圧送プランジャ18によって、吸込行程のときには、燃料が入口兼流量制御弁14を通って圧送室16へ吸い込まれる。圧送行程のときには、圧送室16内に存在する燃料が圧縮され、出口弁20を通って、たとえば高圧領域(参照符号なし)へ、たとえば燃料集合管路(「レール」)に向かって吐出される。ここでは高圧下の燃料が蓄積されている。この場合、圧送行程のときに吐出される燃料量は、電磁操作式の入口兼流量制御弁14によって調整される。高圧領域において許容されない過圧が生じると、圧力制限弁22が開放され、これにより燃料は高圧領域から圧送室16内へ流入することができる。
【0017】
高圧燃料ポンプ10は、内燃機関のシリンダヘッド内に設けられた相応の開口内へ挿着することができる、いわゆる「差込みポンプ」である。ポンプハウジング12には、周囲に延びている環状の取付けフランジ32が取り付けられている。この取付けフランジ32によって、高圧燃料ポンプ10をシリンダヘッドに取り付ける、たとえばねじ止めすることができる。図2から詳細が明らかであるように、取付けフランジ32はポンプハウジング12に、溶接部34によって取り付けられている。この溶接部34は、溶接領域36と、この溶接領域36の側方に配置された2つの溶接ビード38,40とを有する。溶接部34は、コンデンサ放電溶接によって製作されている。
【0018】
溶接領域36の長さL1は、ポンプハウジング12に設けられた半径方向外側の接触部分42と、長さまたは高さL2を有する取付けフランジ32に設けられた半径方向内側の接触部分44との重なり部分から生じる。接触部分42,44は、本態様ではプレス嵌めで互いに接触している。図1および図2に示した態様の場合、溶接領域36のすぐ下方でポンプハウジング12の外面に、環状空間として形成された収容室46が存在する。この収容室46は、ポンプハウジング12の外壁において環状に延びている溝47によって形成されている。
【0019】
図2において下側の溶接ビード40は、収容室46内に配置されている。この場合、収容室46は、半径方向で見て溶接ビード40よりも広幅である。したがって、図2において、収容室46の延在長さB1は、溶接ビード40の延在長さB2よりも大きい。これと同様に、収容室46は、軸方向、すなわち縦軸線28に対して平行の方向でも、溶接ビード40よりも高さがある。しかし、見やすくするために、収容室46および溶接ビード40の高さに対応する延在長さは図2に示されておらず、これらの延在長さには参照符号が付されていない。
【0020】
下側の溶接ビード40に対して相対的な収容室46の大きさの比に基づき、溶接ビード40の、本態様では横断面において理想的には四分円の形状を有する自由表面は、ポンプハウジング12の半径方向外側の周壁とは接触していないことが保証される。図2から明らかであるように、ポンプハウジング12の、収容室46の下方に存在する半径方向外側の周面48と、取付けフランジ32の半径方向内側の周面50との間に、収容室46を周辺部54に結合する開口52を形成する、環状に延びている間隙が存在する。
【0021】
図2から、図面において収容室46の下方に配置された半径方向外側の周面48の領域におけるポンプハウジング12の直径は、図面において収容室46の上方に配置された接触部分42の領域におけるポンプハウジング12の直径よりも小さいことが看取可能である。このことにより、半径方向外側の周面48の領域におけるポンプハウジング12の取付けフランジ32を、「クランプ直径」として、取付けフランジ32をポンプハウジング12に予め組み立てるときに利用することが可能になる。
【0022】
図3には、択一的な態様が示されている。この態様では、収容室46は、溝によって形成されるのではなく、単純に、ポンプハウジング12に設けられたいわゆる凹部56によって形成される。本態様では、凹部56は、図面において接触部分42のすぐ下方に配置されている。
【0023】
図4の態様では、収容室46は、取付けフランジ32に設けられた凹部58によって形成される。本態様では、凹部58は、図面において接触部分44のすぐ下方に配置されている。さらに、図4に示された態様では付加的に、ポンプハウジング12に、取付けフランジ32に設けられた凹部58に対向して、アンダカット60も存在する。しかし、このアンダカット60は、接触部分42からいくらか離間していて、接触部分42よりもほんのわずかに小さい直径を有する。
【0024】
アンダカット60によって、取付けフランジ32の簡単な組付けが可能になる。ポンプハウジング12に対する取付けフランジ32の被嵌は、接触部分42の領域でしか行われないからである。その他に付言しておくと、取付けフランジ32に設けられた凹部58の深さを表す半径方向の寸法B3を介して、この領域における取付けフランジ32の弾性特性に影響を及ぼすことができる。これにより、シリンダヘッドにおける取付けフランジ32のねじ止めが溶接部34にかかる荷重に与える影響を調整することができる。取付けフランジ32に設けられた接触部分44の幾何学形状によっても、このような影響の可能性が提供される。
図1
図2
図3
図4