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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】流量調節弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220816BHJP
   F16K 7/16 20060101ALI20220816BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K7/16 F
F16K1/32 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019061143
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159505
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026996
【氏名又は名称】東京計装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】米村 行平
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046725(JP,A)
【文献】特開昭62-209279(JP,A)
【文献】特開平11-270415(JP,A)
【文献】特開平10-082349(JP,A)
【文献】特開2006-153262(JP,A)
【文献】特開平09-144569(JP,A)
【文献】特開平11-051203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 - 31/04
F16K 7/16
F16K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部に回転自在に取り付けられ、昇降する昇降体を備えるモータ部の前記昇降体と一体化する連結部とから成る流量調節弁装置であって、
前記本体部は、側方から流体の流入口と流出口となる一対の管体を接続し、内部で前記管体同士を連通する流路部を備える弁箱と、該弁箱に固定され、軸部の下端の弁体を押し引きすることで前記流路部の断面積を変化させて、通過する流体の流量を調節するダイヤフラム弁とから構成され
前記ダイヤフラム弁は、前記軸部の上方に環状凹部を有し、
前記連結部は、2分割されたカップリング半部を有し、該カップリング半部を一体化させることで、前記環状凹部のみに対して、回転自在に連結する環状凸部を下部に形成すると共に、上部外周面に第1の外ねじ部を形成することを特徴とする流量調節弁装置。
【請求項2】
前記連結部は、更に接続部を有し、該接続部は下部に前記第1の外ねじ部と螺合する内ねじ部が形成されており、上部外周面に第2の外ねじ部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の流量調節弁装置。
【請求項3】
前記第1の外ねじ部が前記昇降体の中心軸下端の内側に設けた内ねじ部と螺合することで、前記モータ部と連結することを特徴とする請求項に記載の流量調節弁装置。
【請求項4】
前記第2の外ねじ部が前記昇降体の中心軸下端の内側に設けた内ねじ部と螺合することで、前記モータ部と連結することを特徴とする請求項に記載の流量調節弁装置。
【請求項5】
前記弁箱には、上下に貫通する貫通孔が設けられており、該貫通孔及び前記モータ部の固定孔に固定ねじを連通することで、前記モータ部に対して前記弁箱が回動不能に固定されることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の流量調節弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を流れる流体の流量調節を行うための流量調節弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流量調節弁装置としては、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1の流量調節弁装置には、流入口から弁室を経て流出口に至る流路が形成された弁箱の上部に、ステッピングモータが載置されている。このステッピングモータの昇降体の上下位置によって開度が制御されるダイヤフラム弁が、弁箱及びステッピングモータ間に配置されている。
【0003】
このようなステッピングモータの回転駆動軸に接続されている昇降体及びダイヤフラム弁は、昇降体下端のねじ部と、ダイヤフラム弁のねじ部とを螺合することによって一体化されている。また、ダイヤフラム弁は、弁箱とモータとの間でねじによる押圧力によって固定されているだけなので、シール性が不十分な場合がある。
【0004】
そこで、ダイヤフラム弁と弁室のシール性を高めるために近年では、ダイヤフラム弁を予め弁室の頂面に、例えばレーザーを用いて溶着したり、接着剤により接着している。その後に、弁室に弁蓋を取り付け、モータの回転駆動軸に接続されている昇降体に、ダイヤフラム弁の軸部を接続している。このように、弁蓋及び弁室から成る弁箱とダイヤフラム弁とを固定することで、シール性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-54954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように弁箱と一体化したダイヤフラム弁を昇降体に螺合させて取り付ける場合には、ダイヤフラム弁と共に弁箱も回転することになる。従って、ダイヤフラムの軸部を昇降体に回転が停止するまで完全にねじ込む必要があるので、回転を受けた弁箱の流入口、流出口の方向は成り行き次第となり、ステッピングモータに対して所定方向を選択することが困難となる。
【0007】
弁箱とステッピングモータとを所定方向に揃って向けられないと、全体をコンパクト化することが困難となる。また、流入口、流出口を流体の供給装置の配管に接続する場合や、ステッピングモータを電気ケーブルに接続する場合に、最短距離での接続が困難となり、接続作業に時間を要し、設置に必要なスペースも大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ダイヤフラム弁を弁箱に固定して流路のシール性を維持すると共に、本体部をモータ部に対して所定方向に容易に取り付け可能な流量調節弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る流量調節弁装置は、本体部と、該本体部に回転自在に取り付けられ、昇降する昇降体を備えるモータ部の前記昇降体と一体化する連結部とから成る流量調節弁装置であって、前記本体部は、側方から流体の流入口と流出口となる一対の管体を接続し、内部で前記管体同士を連通する流路部を備える弁箱と、該弁箱に固定され、軸部の下端の弁体を押し引きすることで前記流路部の断面積を変化させて、通過する流体の流量を調節するダイヤフラム弁とから構成され、前記ダイヤフラム弁は、前記軸部の上方に環状凹部を有し、前記連結部は、2分割されたカップリング半部を有し、該カップリング半部を一体化させることで、前記環状凹部のみに対して、回転自在に連結する環状凸部を下部に形成すると共に、上部外周面に第1の外ねじ部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る流量調節弁装置によれば、ダイヤフラム弁のシール性を維持した状態で、本体部の流入口、流出口をモータ部に対して所定方向に向けた状態を保持することができる。従って、流量調節弁装置を含む筐体の省スペース化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】流量調節弁装置の実施例の分解斜視図である。
図2】斜視図である。
図3】断面図である。
図4】流路部を開放した状態のモータ部を取り付けた断面図である。
図5】流路部を閉塞した状態のモータ部を取り付けた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の流量調節弁装置10の分解斜視図、図2は斜視図、図3は断面図である。流量調節弁装置10は、例えばフッ化水素の水溶液、塩酸等の化学的活性の強い薬液である流体の流量を調節するものであり、流体が流れる本体部20と、本体部20の上部に回転自在に取り付けられている連結部30とから成る。使用に際しては、本体部20は連結部30を介して後述するモータ部と一体化される。
【0013】
本体部20は、内部において流量を調節する弁箱21と、弁箱21の上面に溶着又は接着により固定され弁箱21の内部に挿入されているダイヤフラム弁22とから成っている。弁箱21の両側には、管体から成る一対の流入口23aと流出口23bとが突出されている。弁箱21、流入口23a、流出口23bには、流れる流体の特性に応じて好適な樹脂、例えば耐熱性、耐薬品性を有するPFA等のフッ素樹脂が使用され、射出や押出等の樹脂成型によって製作されている。
【0014】
弁箱21の内部には、流入口23aと流出口23bとを連通する流路部24が形成され、弁箱21の上面中央にはダイヤフラム弁22を固定するための円形状の窪みから成る円状凹部25と、四隅部には上下方向に向けて貫通孔26とが形成されている。
【0015】
樹脂製又はゴム製のダイヤフラム弁22は、中心軸上に形成された円柱状の軸部22aと、軸部22aの下端に形成された略逆円錐状の弁体22bと、軸部22aの周囲に同心円状に形成された薄型のダイヤフラム膜22cとを有する。
【0016】
ダイヤフラム膜22cの外周部には、下方に向けて突起部22dが円環状に形成されており、突起部22dの外側面である周縁部と、円状凹部25の内縁とが溶着や接着により固定されている。また、軸部22aの上方の側面には環状凹部22eが形成されており、この環状凹部22eの上部の頭部22fは円板状とされている。
【0017】
流路部24は、流入口23aから弁箱21の円状凹部25とダイヤフラム膜22cとの内面及び弁箱21内を経由して流出口23bに至っている。弁体22bの略逆円錐状の外側面に対向して、弁箱21の流路部24には略逆円錐状の内面を有する弁座24aが形成されている。ダイヤフラム弁22をモータ部により上下方向に押し引きすることによって、弁体22bは弁座24aに密着したり離間して、その間の流路部24の断面積を変えることにより、流量調節ができるようにされている。
【0018】
連結部30は、軸部22aの環状凹部22eに回転自在に取り付けるために、円筒状部材を縦方向に2つに等分割した半円筒状のカップリング半部31a、31bと、これらのカップリング半部31a、31bをねじ止めにより固定して一体化すると共に、モータ部に接続してダイヤフラム弁22を上下方向に押し引きする接続部32とから成っている。カップリング半部31a、31b、接続部32は樹脂製であり、例えばPOM等のフッ素樹脂部材を研削して製作されている。
【0019】
カップリング半部31a、31bのそれぞれの下部にダイヤフラム弁22の環状凹部22eに回転自在に嵌め込むための半フランジ状の環状凸部33を有し、カップリング半部31a、31b同士を合わせた状態の上部外周面には、接続部32にねじ込むための第1の外ねじ部34が形成されている。接続部32は略円筒状であり、下部に第1の外ねじ部34をねじ込むための内ねじ部35が形成されており、上部外周面にはモータ部に接続するための第2の外ねじ部36が形成されている。
【0020】
軸部22aの環状凹部22e内に、カップリング半部31a、31bの環状凸部33を両側から挟み込むように挿入することにより、2つの環状凸部33は合わされて円環状とされ、軸部22aの環状凹部22eに取り付けられる。カップリング半部31a、31bの第1の外ねじ部34に、接続部32の内ねじ部35を螺合することによって、2つのカップリング半部31a、31bは一体化され、連結部30は本体部20に対して回転自在に、つまりカップリング半部31a、31bの環状凸部33がダイヤフラム弁22の環状凹部22eに回転自在に取り付けられる。
【0021】
このように構成された流量調節弁装置10は、図3に示すようにモータ部が付設されていない状態では、ダイヤフラム弁22の初期形状によって下方に押されて、弁体22bの一部が弁座24aに接触した状態となっている。
【0022】
図4は流量調節弁装置10の本体部20に回転自在に取り付けられている連結部30を介して、流量調節弁装置10をモータ部と一体化した状態の断面図である。流量調節弁装置10の弁箱21及びダイヤフラム弁22の上面とカップリング半部31a、31bの周囲は、上蓋40により覆われている。上蓋40は例えばPTFE等のフッ素樹脂部材を研削して製作され、中央部に連結部30のカップリング半部31a、31bを挿通する円形孔41を有している。
【0023】
上蓋40の四隅部には、弁箱21の四隅部の貫通孔26と連通する貫通孔42が設けられている。弁箱21の下面側から貫通孔26、貫通孔42を連通して金属製又は樹脂製の固定ねじ50が挿通されており、上蓋40の上部にはモータ部60が載置され、固定ねじ50は回転調整をした後にモータ部60にねじ止め固定するために使用される。
【0024】
モータ部60は、ステッピングモータ61と、ステッピングモータ61を覆うケーシング62と、ステッピングモータ61により駆動する回転駆動軸63と、この回転駆動軸63と螺合し、接続部32の第2の外ねじ部36と螺合する昇降体64と、ケーシング62の底部に固定する底板部65と、この底板部65に固定され、昇降体64を上下方向に案内する一対のガイド棒66とが設けられている。
【0025】
なお、昇降体64は連結部30の接続部32を省略して、カップリング半部31a、31bの第1の外ねじ部34と直接螺合してもよい。また、底板部65の四隅部には、貫通孔26及び貫通孔42と連通するねじ孔67が設けられており、このねじ孔67に固定ねじ50先端が螺合可能とされている。
【0026】
なお、実施例ではケーシング62はステッピングモータ61を覆うように設けられているが、ケーシング62は単にステッピングモータ61を上蓋40上に固定するものであってもよい。
【0027】
回転駆動軸63の外周部には外ねじ部63aが形成されており、昇降体64には中心軸上に中央縦孔64aが形成され、中央縦孔64aの上下端の内側には内ねじ部64b、64cがそれぞれ設けられている。昇降体64の上端側の内ねじ部64bが回転駆動軸63の外ねじ部63aに螺合されると共に、下端側の内ねじ部64cは接続部32の第2の外ねじ部36と螺合され、昇降体64はガイド棒66に沿って上下方向に摺動可能とされている。そして、回転駆動軸63の正逆回転駆動に伴い、昇降体64はガイド棒66に沿って上下方向に駆動される。
【0028】
流量調節弁装置10にモータ部60を取り付ける手順を説明すると、弁箱21の上部を上蓋40によって覆い、ダイヤフラム弁22の軸部22aと弁箱21に回転自在に取り付けられている連結部30とを、上蓋40の中央に設けられた円形孔41に回転自在に挿通する。
【0029】
次に、上蓋40上にモータ部60を載置し、回転駆動軸63に昇降体64が螺合した状態である昇降体64の内ねじ部64cに、円形孔41から上方向に突出している連結部30の接続部32の第2の外ねじ部36をねじ込んで螺合する。このようにして、昇降体64を介して連結部30に回転駆動軸63が接続される。
【0030】
連結部30は本体部20に回転自在に取り付けられているので、第2の外ねじ部36を内ねじ部64cに回転が停止するまで完全にねじ込んだ後に、流入口23a、流出口23bが所定方向を向くように、本体部20を連結部30に対して自在な方向に回転させることができる。
【0031】
そして、モータ部60の図示しないコネクタ部による配線方向に応じて、固定ねじ50により流入口23a、流出口23bを接続すべき流体の供給装置の配管方向に合わせて、本体部20を90度単位で所定方向に回転させてから、本体部20とモータ部60とを固定ねじ50によりねじ止め固定する。
【0032】
弁箱21の下面側から弁箱21の貫通孔26、上蓋40の貫通孔42、ねじ孔67に、固定ねじ50を連通して、弁箱21とモータ部60とを相互に回転不能にねじ止め固定する。このようにして、本体部20の弁箱21の流入口23a、流出口23bを所定方向に向けた状態で、流量調節弁装置10とモータ部60とを一体化し、流量調節弁装置10のモータ部60への取付作業が完了する。
【0033】
モータ部60を取り付けた流量調節弁装置10の動作を説明すると、ステッピングモータ61の回転駆動軸63の回転運動を、ねじを介在させて昇降体64の上下運動に変換する。この場合に、昇降体64はガイド棒66によって回転方向の移動は制限され、上下方向にのみ移動が許容される。この昇降体64の上下運動は連結部30に伝達され、連結部30は上下方向に移動する。カップリング半部31a、31bはこの上下方向の移動によって、軸部22aを介してダイヤフラム弁22を引き上げたり押し下げたりする。
【0034】
つまり、ダイヤフラム弁22の弁体22bが引き上げられると、図4に示すように流路部24は開放された状態となり、弁体22bが押し下げられると、図5に示すように流路部24は閉塞された状態となる。その際に、ダイヤフラム膜22cは大きく変形するが、ダイヤフラム膜22cの周縁は弁箱21に固定されているので、高いシール性を維持することができる。
【0035】
なお、実施例では連結部30と昇降体64は別部材としているが、連結部30に昇降体64の機能を備えるようにすることもできる。
【0036】
このように本発明に係る流量調節弁装置10によれば、ダイヤフラム弁22のシール性を維持した状態で、本体部20の流入口23a、流出口23bをモータ部60に対して所定方向に向けた状態を保持することができる。従って、モータ部60の配線方向等を考慮して、流量調節弁装置10を含む筐体の省スペース化を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 流量調節弁装置
20 本体部
21 弁箱
22 ダイヤフラム弁
22a 軸部
22b 弁体
22e 環状凹部
23a 流入口
23b 流出口
24 流路部
30 連結部
31a、31b カップリング半部
32 接続部
33 環状凸部
40 上蓋
50 固定ねじ
60 モータ部
61 ステッピングモータ
63 回転駆動軸
64 昇降体
図1
図2
図3
図4
図5