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特許7123848ディスポーザブルバイオアッセイカートリッジ、複数のアッセイステップを実施しカートリッジ内の流体を搬送する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ディスポーザブルバイオアッセイカートリッジ、複数のアッセイステップを実施しカートリッジ内の流体を搬送する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20220816BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220816BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20220816BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220816BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220816BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220816BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01N35/08 A
C12M1/00 A
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6844 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N37/00 101
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019075353
(22)【出願日】2019-04-11
(62)【分割の表示】P 2017552871の分割
【原出願日】2016-04-11
(65)【公開番号】P2019164140
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/145,330
(32)【優先日】2015-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/165,347
(32)【優先日】2015-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518279772
【氏名又は名称】アングル ヨーロッパ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イズマイロフ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】イングラート,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ポール
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】渡戸 正義
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-527812(JP,A)
【文献】特開2006-149215(JP,A)
【文献】特表平9-504864(JP,A)
【文献】特表2011-506957(JP,A)
【文献】特開2001-83163(JP,A)
【文献】特開2009-80106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037591(US,A1)
【文献】米国特許第7470546(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
G01N33/50
G01N33/68
C12M1/00
C12Q1/6837
C12Q1/6844
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面結合したターゲット分析物分子を検出する微孔性の多孔性基板であって、
対向面と孔とを有する略平坦微孔性基板材料であって前記孔には前記ターゲット分析物分子に対して相補的な分析物固有受容体が結合しており、前記孔は先細り形状の壁を有し前記多孔性基板の厚さ方向に延伸する略平坦微孔性基板材料を備え、
前記孔は、前記多孔性基板の1表面近傍において、前記多孔性基板の他表面上の前記孔の幅と比較して広く、これにより、前記広い孔に対向した前記基板の側から離れて配置されている光検出器によって検出される、前記ターゲット分析物分子が前記分析物固有受容体によって捕捉されたとき前記ターゲット分析物分子に結合した光プローブから出射する光の収集効率を、前記孔が直線状であり先細り形状ではないときにおける前記光プローブから出射する光の収集効率よりも、増加させる
ことを特徴とする多孔性基板。
【請求項2】
前記孔は、前記多孔性基板の一方の表面近傍において次第に広がるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項3】
前記孔は、矩形断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の多孔性基板。
【請求項4】
前記孔は、正方形断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の多孔性基板。
【請求項5】
前記孔は、円形断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の多孔性基板。
【請求項6】
前記孔は、前記多孔性基板の1表面近傍において、前記多孔性基板の他表面上の前記孔の幅と比較して広いことにより、先細りの形状を有し、
前記先細りは円錐状であり、前記先細りは球面状であり、または、前記先細りは放物線状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項7】
前記広い孔の反対側の面における前記孔のサイズはより小さくなっており、これにより構造安定性を付与する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項8】
前記孔は、均一なサイズと形状を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項9】
前記多孔性基板はさらに、構造安定性を付与する強化リブを備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項10】
前記強化リブは、前記基板に統合されている
ことを特徴とする請求項9記載の多孔性基板。
【請求項11】
前記強化リブは、前記基板から分離されており、剛性サポートメッシュの形態に形成されている
ことを特徴とする請求項9記載の多孔性基板。
【請求項12】
前記基板は、前記基板の先細り孔を有する面の反対面に配置された支持メッシュに取り付けられている
ことを特徴とする請求項11記載の多孔性基板。
【請求項13】
前記基板は、前記基板の対向面に配置された2つのサポートメッシュの間に配置されている
ことを特徴とする請求項12記載の多孔性基板。
【請求項14】
前記多孔性基板は、0.15から0.75mmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項15】
前記孔の先細り面は、反射コートによってカバーされている
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項16】
前記多孔性基板はシリコンにより製造されている
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項記載の多孔性基板を製造する方法であって、
シリコンの電気化学エッチングにより前記多孔性基板を製造するステップを有する、
方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項記載の多孔性基板を製造する方法であって、
プラスチック材料のエンボス加工または鋳造により前記多孔性基板を製造するステップを有する、
方法。
【請求項19】
前記多孔性基板の材料は不透明であり、ある孔から隣接孔へ光が伝搬しない
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載の多孔性基板。
【請求項20】
バイオアッセイに組み込まれる微孔性基板であって、
対向面と、離隔配置され前記基板の厚さ方向に延伸する孔を有する微孔性基板を備え、 所与の前記孔の開口は前記対向面の一方に配置され、前記所与の孔の他方の開口は前記対向面の他方に配置され、
前記孔の開口は、前記基板の対向面の一方において、他方よりも広く、
分析物固有受容体が、前記孔内に配置されており、
前記小さい開口を有する面に対向する光源によって前記微孔性基板が照射されるとき前記広い開口に対向する側の検出器が検出する光強度は、前記光源が前記広い開口に対向し前記検出器が前記小さい開口に対向しているとき検出した光強度よりも大きい
ことを特徴とする微孔性基板。
【請求項21】
前記微孔性基板はシリコンによって製造されている
ことを特徴とする請求項20記載の微孔性基板。
【請求項22】
請求項21記載の微孔性基板を製造する方法であって、
シリコンの電気化学エッチングにより前記微孔性基板を製造するステップを有する、
方法。
【請求項23】
前記孔は前記基板の一方の表面に向かって次第に広がる
ことを特徴とする請求項20または21記載の微孔性基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスポーザブルカートリッジ、および、流体を移動させてカートリッジ内で複数のバイオアッセイステップを実施する方法に関するものであり、これにより設計を単純化し、内部バルブや計測デバイスを不要にするものである。設計は、射出成型製造法に準拠し、これにより大規模製造のコストを減少させる。
【背景技術】
【0002】
一般的なバイオアッセイのカートリッジデバイスは、シリンジその他の容積移送式ポンプを収容する器材とのインターフェースを有する。この器材は、ディスポーザブルカートリッジ内の反応ゾーンにおいて順次必要になる流体体積を正確に計測するためのものである。カートリッジ構造内に機械バルブを統合して、流体流を制御する場合もある。正確な流体搬送に多大な影響を与える気泡が生成されないように、流体路の設計に注意を払わなければならない。この問題を緩和するため、設計のなかに複雑な構造や気泡制御メカニズムを組み込む。これにより、製造工程が複雑になり、カートリッジのコストが増す。これは使い捨て用途で用いられることを意味する。
【0003】
診断テストに用いるトレンドの観点から、ディスポーザブルカートリッジの大量生産に適合しつつ、コストを抑えて複数の機能/アッセイステップを単一のカートリッジに統合する要望がある。したがって、自動診断バイオアッセイの分野において、複数の機能を最小個数の可動部品(例えばアクティブポンプやバルブ)と統合したディスポーザブルカートリッジを提供することは、非常に有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、印加された圧力のみを用いて流体を反応ゾーンへ順次搬送し、内部バルブを必要としない、デバイスおよび方法に関するものである。流体搬送は、毛細管圧によりカートリッジ内に制限される。反応ゾーン間の流れは、外部バルブがポート間の圧力または真空を切り替えることにより影響される。これにより、反応ゾーン間を接続するカートリッジ要素の毛細管圧を選択的に超える。圧力源/真空源とバルブは器材自身内に配置されており、反応流体から隔離されている。これら部品はいずれもディスポーザブルカートリッジの一部ではなく、これにより複雑性とコストを大幅に減少できる。
【0005】
実施形態において、複数のバイオアッセイを実施するディスポーザブル試料処理カートリッジを提供する。前記カートリッジは:
a)事前選択された体積を有する上部処理室であって、前記上部処理室の上面に取り付けられた空気ポートを有する、上部処理室;
b)前記上部処理室の下方に配置された下部処理室であって、前記下部処理室の上面に取り付けられた空気ポートを有する、下部処理室;
c)前記上部処理室の底面を形成することにより前記上部処理室を前記下部処理室から分離するように配置された多孔性基板であって、前記多孔性基板は前記上部処理室の本体に接続されており、これにより、前記多孔性基板をまたがる印加差圧が臨界圧を超えたときのみ、流体が前記上部処理室の底面から排出され前記多孔性基板を通過して前記下部処理室に入るように構成された、多孔性基板;
d)前記上部処理室の上部において終端する毛細チャネルにより前記上部処理室と流体連通している1以上の試薬容器であって、前記毛細チャネルはアッセイを実施しているとき前記上部処理室内の液体レベルの上に配置され、各前記試薬容器は、前記試薬容器の上面に配置された少なくとも1つの空気ポートを有し、前記上部処理室の体積は液体体積よりも大きいように選択されており、これにより前記上部処理室の上部において前記毛細チャネルが終端する上部空間を提供する、試薬容器;
e)毛細チャネルにより前記下部処理室と流体連結した追加室であって、前記毛細チャネルは前記追加室の上部で終端し、前記追加室は前記追加室の上面に取り付けられた空気ポートを有する、追加室;
を備え、
選択された室間の流体の搬送は、室間の毛細管圧抵抗を超える空気圧を加えることにより制御される。
【0006】
実施形態において、バイオアッセイを実施する方法を提供する。前記方法は:
少なくとも1セットの処理室を有するディスポーザブル試料処理カートリッジを提供するステップであって、前記処理室の各セットは、多孔性基板によって分離された上部処理室と下部処理室を有し、前記多孔性基板は、表面全体にわたって流体に対して均一抵抗を提供するように選択された孔を有する材料によって構築されており、これにより、前記多孔性基板をまたがる規定差圧において液体は前記孔を通過するが気体は通過しないように構成され、前記多孔性基板は、前記孔に結合した分析物固有受容体を有する、ステップ; 1以上の試薬室と、分析物を収容する試料室と、前記上部試料室との間に差圧を加えて、試薬を含む液体を移動させ、および/または、1以上の試薬室と試料室から毛細チャネルを介して前記上部処理室へ液体を移動させる、ステップ;
前記上部処理室と前記下部処理室との間に差圧を加えて、前記多孔性基板を介して前記液体を前記上部処理室から前記下部処理室へ移動させるステップであって、前記差圧は、前記液体が前記多孔性基板を通過し気体は通過しないように選択されている、ステップ; 前記多孔性基板上の前記分析物固有受容体に結合している分析物を検出するステップ; 前記下部処理室と排出室との間に差圧を加えて、前記下部処理室から前記排出室へ液体を移動させるステップ;
を有する。
【0007】
本開示は、表面結合物質を検出する多孔性基板を提供する。前記多孔性基板は:
対向面と、前記多孔性基板の厚さ方向に延伸する孔とを有する略平坦微孔性基板材料を備え、前記孔は、前記多孔性基板の1表面近傍において、前記多孔性基板の他表面上の前記孔の幅と比較して広く、これにより前記広い孔の内表面に結合した光プローブから出射する光の収集効率を向上させる。
【0008】
前記孔は、前記多孔性基板の1表面近傍において次第に広がるように形成されている。
【0009】
本開示におけるデバイスと方法は特に、医療診断(人間および動物)、食品安全性テスト、環境および生物災害の監視、生物種の一般的計測、の分野において用いることができる。設計を調整して、タンパク質と核酸の双方について、試料準備ステップを含む共通アッセイフォーマットを実施することができる。
【0010】
本開示の機能的および有用な側面は、以下の詳細説明と図面を参照することにより、さらに理解できるであろう。
【0011】
実施形態は、例示目的のみのため、以下の図面を参照して記載している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】空気圧駆動アッセイカートリッジの側立面図であり、主要部品を示す。
図2】液体が開始位置にあるときの図1のカートリッジの詳細側面図である。
図3図2の側面図の拡大図であり、気圧制御のもとで試薬容器から上部処理室へ液体が移動する様子を示す。
図4図3と同様に、気圧制御のもとで多孔性基板を介して上部処理室から下部処理室へ液体が移動する様子を示す。
図5】気圧制御のもとでカートリッジ内の液体が上部処理室へ戻る様子を示す。
図6A】処理ステップが完了した後、カートリッジ内の液体が部分的に排出室へ移動する様子を示す。
図6B】ディスポーザブルカートリッジを有するキットを、複数のアッセイ試薬を収容する専用ブリスターパック、およびアッセイ試薬を収容するパックとマッチングするガスケットとともに示す。これらは事前選択された試薬容器に揃えられる。
図7】組み立てたカートリッジの写真であり、中央上部処理室に接続された5つの試薬/試料室とバルク試薬室を示す。
図8】核酸試料準備と核酸増幅(等温またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR))の双方に用い、複数の生成物を検出するように構成された、カートリッジの上面図を示す。
図9】カートリッジを挿入する器材の一部を形成する、上部空気圧ブロック部品インターフェースと下部熱制御部品とに挟まれた、ディスポーザブルカートリッジの一部解体図を示す。
図10図9のサンドイッチ構造の部分断面図であり、多孔性基板を見るように配置された検出器を示す。
図11】傾斜角が異なる3つの先細り孔を示す。傾斜角が小さいと((a)と(b)の比較)、先細りはより深くなる。傾斜角が充分に小さければ、先細り形状は基板の一方の面から他方の面まで連続する((c)に示す)。
図12】本開示に基づく先細り孔を有するシリコン基板の前面および背面の光学マイクロ写真を示す。これら光学マイクロ写真は、孔が広がっている面において多孔性が高く(図12(a))、基板の反対面は多孔性が低い(図12(b))ことを示す。
図13】孔を有する基板のマイクロ写真を示す。図13(a)は円形、図13(b)は矩形、図13(c)は多角形の孔を示す。
図14】傾斜角が異なりその結果として孔の先細り位置の深さが異なる先細り孔を先細り孔の断面の光学マイクロ写真により図14(a)(b)に示す。図14(c)は上面図であり、図14(a)の基板断面図である。
図15】孔先細りにより多孔性基板の光伝搬が改善したことを示す。図15(a)(b)は、同じ拡散光源により同じ基板を照射した様子を示す。図15(a)において、孔の広い部分が対物レンズに対向している。図15(b)において、孔の狭い部分が対物レンズに対向している。基板上のスポットは、孔内で乾燥したプローブ溶液で基板の孔がブロックされている領域である。
図16】光収集増加に寄与するメカニズムを示す。図16(a)は、有効深さの増加効果を示す。図16(b)は、収集角度の増加効果を示す。図16(c)は、表面領域の増加効果を示す。
図17】ストレート8μm(マイクロメートル)孔(プロット(a))と先細り内壁(プロット(b))について、孔深さの関数として、光収集効率の計算結果を示す。
図18】ストレート孔と先細り孔について測定した信号強度の実験比較の結果を示す。図18によれば、本開示に基づき、光収集効率が40%改善したことが分かる。
図19】円錐先細り形状の円筒孔を有するフロースルーチップ基板の別実施形態を示す。
図20図20(a)は、球状先細り形状の円筒孔を有するフロースルーチップ基板の別実施形態を示す。図20(b)は、図20(a)の実施形態の1つの孔の断面を示す。
図21図21(a)は、放物線先細り形状の円筒孔を有するフロースルーチップ基板の別実施形態を示す。図21(b)は、図21(a)の実施形態の1つの孔の断面を示す。
図22図22(a)は、多孔性基板における先細り円筒孔の配置の第1実施形態を示す。図22(b)は、多孔性基板における先細り円筒孔の第2実施形態を示す。図22(a)の配置よりも密集しており、光収集効率が増加している。
図23】左図の高効率多孔性基板を有するフロースルーチップ基板が右図のフレームにより構造安定性を強化した実施形態を示す。
図24】光検出感度が改善したフロースルーチップ基板の別実施形態を示す。高効率多孔性基板が、基板の両面に2つのフレームを配置することにより構造安定性を強化している。
図25図25(a)は、図7の組立カートリッジを用いて実施した核酸バイオアッセイの結果を示す。図25(b)は、核酸バイオアッセイの最後において、図7の組立カートリッジ内に収容されている多孔性基板の化学発光画像を示す。
図26図7の組立カートリッジを用いて実施したたんぱく質バイオアッセイの結果を示す。
図27図27(a)は、本開示のカートリッジの一部を形成する多孔性基板を用いて試料準備した結果を示す。図27(b)は、試料準備のために構成されている別の多孔性基板によって処理された、溶液内の残留たんぱく質分析物を検出するため用いた多孔性基板の化学発光画像を示す。図27(c)は、試料準備のために構成されている別の多孔性基板によって処理する前における、溶液内の残留たんぱく質分析物を検出するため用いた多孔性基板の化学発光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の様々な実施形態と側面を、以下の詳細記載を参照して説明する。以下の記載と図面は本開示を説明するためのものであり、本開示を限定するものとして解釈すべきではない。複数の具体的詳細を説明して、本開示の実施形態を充分に理解できるようにする。ただし場合によっては、既知のまたは従来から存在する詳細部分については、本開示の実施形態を簡潔に説明するため、記載しないことがある。
【0014】
本開示において、用語“備える”や“備えている”は、包含的かつオープンエンドであり、排他的なものではないと解釈されたい。具体的には、明細書および特許請求範囲において用いるとき、用語“備える”や“備えている”およびその変形語は、指定する特徴、ステップ、または構成要素が含まれていることを意味している。これら用語は、他の特徴、ステップ、構成要素が存在することを排除しているものとして解釈すべきではない。
【0015】
本開示において、用語“例示”は、“例、事例、説明としての役割を有する”ことを意味し、本開示における他の構成よりも望ましく有利なものとして解釈すべきではない。
【0016】
本開示において、用語“約”や“略”は、値範囲の上限と下限に存在するずれをカバーすることを意図している。例えば特性、パラメータ、サイズのずれである。1つの非限定的例として、用語“約”と“略”は、プラスマイナス10%を意味する。
【0017】
明示的に定義しない限り、本開示において用いる全ての技術的科学的用語は、当業者が一般的に理解している意味を有することを意図している。
【0018】
図1を参照する。内部バルブまたは測定デバイスを必要とせずに流体の移動を促進するように構成されたカートリッジ100を示している。設計により、大量生産のコストを削減できる射出成型を用いて製造してもよい。カートリッジ100は、第1試薬室10、第2試薬室12を有する。第1試薬室10は、液体試薬または液体試料を保持する。第2試薬室12は、第2液体試薬を保持する。
【0019】
上部処理室14は、第1試薬室10または第2試薬室12よりも大きい体積を有する。カートリッジ100は、下部処理室16を有する。下部処理室16は、上部処理室14の最大液体容量に等しいかまたはこれを超える体積を有し、室16の内底面と多孔性基板18の底面との間の空間を最小化するように設計されている。多孔性基板18は室16内に配置されている。カートリッジ100は、出口室20を有する。出口室20は、試薬と試料の合計体積よりも大きい体積を有する。
【0020】
第1試薬室10は、空気ポート26を有する。空気ポート26は、負差圧または正差圧を提供し、または室10に対する外部システム制御のもとで排気するように構成されている。上部処理室14は、空気ポート28を有する。空気ポート28は、負差圧または正差圧を提供し、または室14に対する外部システム制御のもとで排気するように構成されている。第2反応室12は、空気ポート30を備える。空気ポート30は、負差圧または正差圧を提供し、または室12に対する外部システム制御のもとで排気するように構成されている。下部処理室16は、空気ポート34を備える。空気ポート34は、負差圧または正差圧を提供し、または室16に対する外部システム制御のもとで排気するように構成されている。同様に出口室20は、空気ポート36を備える。空気ポート36は、負差圧または正差圧を提供し、または室20に対する外部システム制御のもとで排気するように構成されている。
【0021】
空気ポート26、28、34、36は、それぞれの空気導管のなかに、フレキシブル膜を組み込んでいる。これを用いて、室を空気源から隔離するとともに、導管に気体流を通過させることができる。気体流は、膜の変形により制限される。気圧を加えると、膜の背圧が印加気圧と等しくなるまで、気体は導管を通じて流れる。このようなフレキシブル膜は、米国特許7470546号に記載されている。同文献の内容は参照により本願に組み込まれる。
【0022】
フレキシブル膜は、図1の空気ポート28と34に組み込むことができる。これによりポート28に対して正差圧が加えられると、膜が変形して印加圧に等しい背圧を生成するまで、気体は上部処理室14へ流れる。気体が上部処理室14に入ると、液体は多孔性基板18を介して下部処理室16へ流れ、空気はポート34を介して流れ、ポート34内の膜を変形させ、大気へ排気される。ポート34は大気へ排気されるが、カートリッジ100内の物質と大気との間で通過が生じることはない。この構成により、多孔性基板18を介して、液体を出し入れすることができる。これは、ポート28に対して周期的に圧力を加えることによりなされる。ポート28は、圧力が加えられていないとき大気に排気することができる。
【0023】
多孔性基板18は、処理室14と16の間のインターフェースとして機能し、臨界圧を超えたときを除き、処理室14と16の間で流体が通過しないように構成されたサイズと形状を有する。上部空間22は、多孔性基板18が下部処理室16内に突出することにより、下部処理室16内に形成されている。図1は2つの上部空間22を示しているが、カートリッジは1つの上部空間22のみを有するように構成できることを理解されたい。流れの方向は、室14と16の間の差圧の符号に依拠する。
【0024】
下部処理室16は、光学窓40を有する。光学窓40は、下部処理室16の下面の一部を形成し、これにより多孔性基板18をデバイスカートリッジ100の外から撮像することができる。結合試薬の機能を有し光学窓40を介して撮像することができる多孔性基板18を用いる実施形態において、多孔性基板18は撮像デバイスの撮像面に対して平行な剛体平面上に配置された剛体基板であり、これにより移動や変位しないようになっており、その結果として撮像品質は低い。剛体多孔性基板18の望ましい特性と構造について以下説明する。
【0025】
上部処理室14は、固体サポートゾーン44を有する。固体サポートゾーン44は、多孔性基板18の直上の空間であり、多孔性基板18の孔よりも大きいサイズの個体サポート物質によって占有することができる。多孔性基板18を通過できないので、その物質はゾーン44内に留まる。サポート物質は、分析物を結合するか、または結合物質と可溶物質との間の反応をサポートすることができる。
【0026】
毛細フローチャネル48は、試薬室10と上部処理室14を接続し、事前選択された室10と14の間の流れを生じさせる臨界レベルを超える差圧が加えられるまで両方向において流れが生じないようにする内径サイズを有するように設計されている。毛細フローチャネル50は、試薬室12と上部処理室14を接続し、事前選択された室12と14の間の流れを生じさせる臨界レベルを超える差圧が加えられるまで両方向において流れが生じないようにする内径サイズを有するように設計されている。毛細フローチャネル52は、試薬室16と出口室20を接続し、事前選択された流れを生じさせる臨界レベルを超える差圧が加えられるまで両方向において流れが生じないようにする内径サイズを有するように設計されている。例えば毛細内径は、50から500ミクロンの範囲で選択することができ、これにより臨界圧は0.1から0.5psiとなる。
【0027】
流体を収容している開始室に対して、当該開始室の上に取り付けられた空気ポートを介して圧力を加えることにより、ある室から次の室への流れが生じる。これと同時に、毛細チャネルが接続された宛先室が、当該宛先室の上に取り付けられた空気ポートを介して排気される。これに代えて、負差圧を宛先室に対して加え、これと同時に開始室を排気することもできる。いずれの場合も、チャネルの抵抗を上回り流れが生じるだけの充分な差圧を提供しなければならない。
【0028】
流体のサイクルが2つの試薬室間で必要である場合は(例:混合する場合)、これら室間の差圧を正から負へ変更し、正に戻すことができる。これにより流れの向きが変わる。
【0029】
試薬室10と12は、液体試薬または他室から溶液を搬送することによりデバイス内で溶融する乾燥試薬を収容することができる。試薬室10と12のいずれか1以上は、外部源から試料その他物質を受け入れるように設計することができる。2つの試薬室10と12のみが上部処理室14に接続されている例を示しているが、用途に応じてより多くの試薬室を設けてもよいことを付言しておく。試薬室10にはポート26が設けられ、試薬室12にはポート30が設けられ、これらは外部空気圧システムと接続することができる。外部空気圧システムは、外部制御のもとで、正圧、負圧、排気のうち1以上を提供することができる。
【0030】
上部処理室14はポート28を備え、ポート28は、外部制御のもとで正圧、負圧、排気のうち1以上を提供することができる空気圧システムと接続することができる。
【0031】
毛細チャネル48、50、52それぞれの内径は、臨界圧を超える差圧が加えられたときのみ室間の流れがチャネルを介して生じるように選択される。チャネルの長さは、選択した内径との組み合わせで、0.1から1.5psiの圧力を用いて全試薬を室間で搬送するのに必要な時間を1から60秒に制御するように、5から30mmの範囲で設計することができる。毛細チャネル48、50、52の各内径は、チャネルに沿って一定にすることができる。これに代えて、チャネル48、50、52の一部がより小さい内径(例:50μm-500μm)を有し、チャネルの残部がより大きい内径(例:500μm-2mm)を有してもよい。このタイプのチャネル48、50、52により、臨界圧と流速を個別に選択することができる。
【0032】
上部処理室14は、任意の時点において上部処理室14に対して搬送され得る試薬または試料流体の総体積を超えるサイズを有する。図1に示すように、試薬室10と上部処理室14を接続する毛細チャネル48、および試薬室12と上部処理室14を接続する毛細チャネル50は、上部処理室14の上部において終端するように配置されている。これにより、室内の最大流体高さよりも上に位置するようになっている。上部処理室14の底部は、室14の本体に接続された多孔性基板18によって構成されている。臨界圧を超える差圧が加えられたときのみ、多孔性基板18を通過して流体が室14の底部から出ることができるようになっている。
【0033】
上部処理室14は、固体サポート44を収容することができる。固体サポート44は、室内において流体を物質と結合させることができ、または結合物質と流体内の含まれる物質と反応させるサポートとして機能する、ビーズ、粒子、ゲル、その他類似の物質の形態を有する。固体サポート物質44は、多孔性基板18が保持できるだけの充分なサイズを有し、基板18を通過する流れを阻害しないように構成されている。
【0034】
多孔性基板18は、上部処理室14と下部処理室16との間を通過する流体からの物質を結合する固体サポートとして機能し、または結合物質を流体内に含まれる物質と反応させるサポートとして機能する物質によって構成し、またはそのように改質することができる。
【0035】
多孔性基板18は、孔を有する物質によって構築されている。孔は、全面にわたって均一抵抗を提供するように選択されている。これにより、規定の差圧が基板18をまたいで加えられたとき、流体は孔を通過し、気体(例:空気)は通過しない。孔の特性は、上部処理室14内の流体の重さにより流れに対する抵抗を超えないように、または毛細動作が基板18の孔を介して流体を完全に引き込むように、選択されている。多孔性基板18の特性は、オプションとして、毛細チャネル48、50、52を通過する流れを生じさせるために必要な範囲と同じ差圧を必要とするように設計することができる。これにより、外部空気圧システムの設計を簡易化することができる。上部処理室14と下部処理室16との間の流れは、流体を収容する上部処理室14に対して圧力を加えることにより生じる。これと同時に、多孔性基板18によって分離されている下部処理室16は排気される。
【0036】
これに代えて、下部処理室16に対して負圧を加え、これと同時に上部処理室14を排気することもできる。いずれの場合も、基板18の孔の抵抗を超え、液体流を生じさせつつ孔を通過する気体流の抵抗を超えない範囲で、差圧を提供しなければならない。反対向きの流れを生じさせるようにプロセスを反転させ、基板18と上部処理室14内の固体サポート44が繰り返し接触して効率的な混合を提供することができる。
【0037】
下部処理室16は、2以上のポート34(図1は1つのみ示している)を備える。ポート34は、外部制御のもとで正圧、負圧、室16の排気のいずれか1以上を提供することができる外部空気圧システムと接続することができる。下部処理室16は、室16に対して任意時点で搬送される試薬または試料流体の最大体積以上の体積を有する。
【0038】
下部処理室16のベースは、多孔性基板18の下面の近傍に配置されている。上部処理室14の外壁上において室16の一部を延伸することにより、追加容積を提供して、上部空間22を形成することができる。
【0039】
下部処理室16の下面は、光学透過窓40を有する。光学窓40により、例えば電荷結合素子(CCD)カメラその他の適当な光学センサを用いて、多孔性基板18の下面を撮影することができる。
【0040】
下部処理室16は、下部処理室16の最下部から延伸し出口室20が収容する液体の最高レベルよりも上の出口室20上部において終端する1以上の毛細チャネル52により、1以上の出口室20と接続されている。毛細チャネル52の少なくとも1つは、室16の最下レベルに配置されている。これにより、室16内の実質的に全ての流体が、チャネル52を介して除去される。
【0041】
出口室20の1つは、下部処理室16から搬送する必要がある全ての流体の合計よりも大きいサイズを有する場合は、廃液収容のために用いることができる。他の出口室(図示せず)は、実施するテストに応じて、別処理を実施する別の下流室に対して流体を搬送するために用いることができる。
【0042】
流体の流れを制御することに加えて、多孔性基板18を単独または固体サポート44と組み合わせて用いて、流体内の成分を結合することができる。結合物質は、デバイス上の室から少なくとも1つの流体を順次搬送することにより、バルク流体から分離し、洗浄し、改質または複製し、別成分の結合試薬として機能し、別用途で復元し、またはこれらの組み合わせのために用いることができる。
【0043】
流体の流れを制御することに加えて、基板の別領域において流体内の別物質を結合するように、多孔性基板18を設計することができる。基板18の別領域において結合した物質は、後に検出し、および/または定量される。
【0044】
単一のデバイス100は、1以上の処理ゾーンを有することができる(処理室14と16を図示しているが、より多くの室を有することができる)。処理ゾーンは、統合した多孔性基板18を用いて、別の機能を実現することができる。この機能として以下が挙げられる:分析物キャプチャ(核酸、タンパク質、小分子、その他生物的または化学的物質)、キャプチャした分析物の改質(複製、拡張、増幅、ラベル付け、分裂、加水分解)、固定化酵素または触媒を通じた可溶分析物の改質、より高効率のキャプチャのための固体マトリクスの滞留(ビーズ、粒子、ゲル)、光学撮影(比色、蛍光、化学発光、生物発光)を介してキャプチャした分析物のうち1以上の検出および/または定量。全ての場合において多孔性基板18は、これら機能を実施するため必要な流体制御デバイスとして機能する。
【0045】
図2から図6の側面図は、プラスチックを用いて生成した実際のカートリッジの側面図を示す。中央プラスチックカートリッジ試薬プレート82は、上部カートリッジプレート80と下部カートリッジプレート84に挟まれている。図7は、組み立てたカートリッジの写真を示す。図2から図6は、図7の断面図とみなすことができる。
【0046】
図2図3は、液体試薬または試料を上部処理室14へ分注する様子を示す。液体試薬または試料60は、試薬/試料入口ポート64を介してアッセイの前に試薬室10に取り込まれ、ポート64はその後に閉じられる。液体60を収容している室10に対して、ポート26を介して1psiまでの圧力が加えられる。このとき、上部処理室14に接続されたポート28は排気され、これにより差圧が生じて、試薬が試薬毛細チャネル48を介して上部処理室14へ流れる。液体60は、上部処理室14の底部に落ち、統合された多孔性基板18を覆う。余剰空気はポート28を介して排気される。この流体分注方法は、アッセイにおいて用いるその他全ての試薬室について同様である。ただしバルク洗浄バッファ(図示せず)は除く。バルク洗浄バッファは大型容器に保持され、時間ベースで毛細チャネルを介して測定される。これにより、分注の間において正確な体積を搬送することができる。
【0047】
図4を参照する。多孔性基板18を介して流体を吸引するため、ポート28を介して圧力を加えることにより差圧が生成され、ポート34を介して大気へ排気される。サイクルの間、他のポートは全て閉じられる。流体60は、上部処理室14から下部処理室16と上部空間22へ移動する。多孔性基板18を介する液体流に必要な臨界圧を超え、多孔性基板18を介する気流に必要な臨界圧を超えない差圧を加えることにより、液体60全てが上部処理室14から引き出されて停止するまで、流れが継続する。この設計により、気体が排出されることがなくなり、カートリッジの処理や動作に影響を与える気泡を除去できる。
【0048】
図5を参照する。多孔性基板18単独または固体サポート44との組み合わせて繰り返し接触を提供し、効率的な混合を可能にするため、プロセスを反転して流体60を上部処理室14に戻してもよい。ポート34に対して圧力を加えることにより差圧が生成されるとともに、ポート28を介して大気へ排気される。多孔性基板18を介した液体流に必要な臨界圧を超え、多孔性基板18を介した気流に必要な臨界圧を超えない差圧を加えることにより、全ての液体60が下部処理室16から引き出されて上部処理室14に戻り停止するまで、流れは継続する。この原理により、流体を正確に体積制御する必要がなくなり、制御を大幅に簡易化できる。基板18を介した繰り返しサイクルプロセスは、必要な回数だけ繰り返すことができる。
【0049】
図6Aを参照する。下部処理室16からの流体排出は、室20上のポート36を介して負圧を加えることにより生じ、ポート34から大気へ排気される。これにより、下部処理室16を介して空気が上部空間22に入り、液体60は遠位廃液毛細チャネル66を介して下部処理室16の1側面から移動する。毛細チャネル66は、廃液入口76に接続されており、室20に流れ落ちる。近位廃液毛細チャネル70は、近位廃液出口72に接続されており、室16の他側面から延伸して廃液出口78に接続されている。廃液出口78を介して液体60は室20に流れ落ちる。
【0050】
図6Bは、ディスポーザブルカートリッジ100を含むキットの実施形態を示す。キットは、複数のパケット134を含む専用ブリスタ―パック130を有する。パケット134は、選択された液体アッセイ試薬、およびアッセイ試薬を収容するパケット134とマッチングするガスケット132を含む。プラスチックカートリッジ試薬プレート82内でこれらは事前選択された試薬室と揃えられる。上部カートリッジプレート80と組み立てられたカートリッジ100は、対応する試薬室に対して部分的に突出したパケット134を有する。バイオアッセイを実施するため器材に対して挿入されると、各室のプレート80上の空気ポート(図示せず)に接続された空気圧システムを介して圧力を加えることにより、ブリスターパック内の破砕シールが破裂し、試薬が対応する室に対して流れ出す。ガスケット132は、室間の液体と気体を封止する。カートリッジ100を組み立てる前に、別の固体試薬をプラスチックカートリッジ試薬プレート82内の事前選択された試薬室に対して堆積しておくことにより、所望のバイオアッセイのための試薬選択を柔軟にカスタマイズし、蓄積と搬送の要件を簡易化できる。
【0051】
上述のように、図7は組み立てたカートリッジの写真である。5つの試薬/試料室10は中央上部処理室14に接続されている。この写真は、カートリッジが空気接続されていない様子を示す。図7に示す組立カートリッジを用いて、核酸バイオアッセイ(図25)とたんぱく質アッセイ(図26)を実施した。
【0052】
核酸分析は通常、核酸を分離する処理ステップと、検出のためにラベル付与した複製物を生成する処理ステップとを必要とする。多くの用途において、多数のターゲットシーケンスの分析が必要であり、高い分析感度が必要であることも多い。さらに、比較的スキルの低い人がルーチン医療テストのために信頼性高いテストを実施できるようにするため、自動化されたコスト効率のよいシステムが必要である。
【0053】
複数の核酸ターゲットを精製および増幅することは、固体サポート上で核酸をキャプチャし、サポート上で一連の培養および洗浄ステップを実施して、核酸の誘導体を生成することにより、実施できる。誘導体は、多孔性基板上の核酸プローブアレイで分子交雑することにより、分析できる。
【0054】
図8とそのなかの凡例は、バイオアッセイカートリッジ200の構成の上面図を示す。バイオアッセイカートリッジ200は、カートリッジ100を組み込んでいるが、核酸試料準備と核酸増幅(等温またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR))および生成物の多重検出をともに実施できるように構成されている。カートリッジ200は、処理室A209内の多孔性サポート18を用いたサンプル準備と、処理室B224内の第2多孔性基板18を用いた反応生成物検出とをともに実施できるように構成されている。いずれも、多孔性基板18によって分離された上部処理室14と下部処理室16を有する。
【0055】
カートリッジ200は、試料入口208を提供する。これは、溶解または事前処理バッファ210と試料を混合する手段である。カートリッジはさらに、多孔性基板18を含む処理室209を提供する。処理室209内において、室205、207、201、202、203、204、206から供給される乾燥または液体試薬を用いて、試料からの核酸のキャプチャと改質を実施することができる。処理室A209からの流体は、廃液室A226に搬送され、または核酸誘導体を含む流体の場合は熱処理室A211もしくは中間室A212へ搬送される。
【0056】
室212を用いて、室213内で流体を乾燥または液体試薬と混合する。その後、流体は1以上の温度処理室214、216内で処理される。熱処理室214、216内においては、等温または熱サイクル増幅が実施される。これら熱処理室211、214、216は、熱絶縁ゾーン215によってカートリッジから分離され、外部制御部品108(図9)からの加熱または冷却により制御される。増幅した核酸誘導体を含む処理済液体は、中間室B218へ搬送され、多孔性基板18と分子交雑するため適当な結合バッファ219と混合され、試料処理室B224に配置される。試料処理室B224において核酸誘導体は、多孔性基板18上の特定位置に固定された結合核酸プローブ上で検出される。
【0057】
上述の一連のステップは、隣接室217、220、222、223、225からの試薬を用いて実施される。使用された流体は廃液室B227へ移動される。全ての場合において、各室上に配置されたポートを介して印加された空気圧を用いて流体移動を制御する。最終ステップとして、多孔性基板18の画像を、統合レンズ120(図10)を有するCCDカメラにより取得する。CCDカメラは光学窓40の下に配置される(図1)。この画像を分析して、多孔性基板を介して測定した光の強度を取得し、固定プローブを含む既知の特定領域と関連付ける。この情報を用いて、元試料内の特定核酸の存在または不存在または量を計算する。
【0058】
一般に、本開示の原理を用いると、カートリッジは複数の試薬/試料室/容器、上部処理室14と下部処理室16、廃液室20を有するように構成することができる。例えば廃液室20は、第1および第2上部および下部処理室14と16および廃液室20を含む第1処理ステーションからの反応生成物を受け入れる中間室であってもよい。これは、上部処理室14と下部処理室16の第2セットのための試料室を形成する。
【0059】
カートリッジ200は、上部処理室14と下部処理室16との間の第1および第2セットの間において、別機能によって複数の中間処理ステップを実施できるように構成できることを理解されたい。この中間処理ステップの非限定的例として以下が挙げられる:混合、希釈、培養、熱サイクルなどの熱処理。オプションとしてカートリッジ200は、試薬室228を有することができる。試薬室228は、アッセイまたは試料の有害生成物を破壊または中性化するように選択された洗浄液を収容する。
【0060】
本開示のディスポーザブルカートリッジを利用する図8のシステムは、上記核酸アッセイを実施するのに非常に適している。これは、米国特許公開され、2016年3月29日に国際特許出願されているPCT/2016/050367に記載されており、その内容は参照により本願に組み込まれる。したがって本開示は、以下の実施形態のカートリッジを提供する:2つの多孔性基板を備え、各多孔性基板は上部処理室と下部処理室を有し、一方は複数のターゲット核酸を精製しターゲット核酸を処理して核酸誘導体を精製する固体サポートであり、他方は核酸誘導体が結合核酸プローブ上で検出される多孔性基板である。本開示のカートリッジは、これとともに動作するように設計された器材とともに、試料を受け入れ、その後にユーザが操作することなく、関連する臨床情報を提供する。
【0061】
免疫結合反応による生物試料(例:人間の血清)のたんぱく質分析は、免疫結合反応の前に試料を希釈することが必要な場合がある。本開示は、2つの多孔性基板18を有するディスポーザブルカートリッジの実施形態を提供する。各多孔性基板18は上部処理室14と下部処理室16に対応する。連結された処理室14と16の一方は試料を希釈剤と混合するために用い、他方はフロースルー多孔性基板18を有する。多孔性基板18上で、免疫結合反応によりたんぱく質が検出される。
【0062】
特定体積の試料と特定体積の希釈剤は、第1多孔性基板18上の上部処理室14へ搬送される。これらは多孔性基板18を介して下部処理室16へ溶液を通過させることにより混合され、希釈化試料が第1下部処理室16から検出用の第2多孔性基板18上の第2バッファ処理室14へ搬送される前に少なくとも1回、室14と16の間で空気圧により繰り返し循環される。第1多孔性基板18は、試料内の特定成分を結合する固定結合剤を含むことができる。例えば第2多孔性基板上で免疫結合ステップを実施する前に第1多孔性基板18と結合することにより、干渉物質を除去することができる。
【0063】
他実施例において、総合的検出感度を向上させるため、第2多孔性基板18上で免疫結合ステップを実施する前に、第1多孔性基板18に結合し、小体積に高密度で放出することにより、少量物質を大体積から集積することができる。
【0064】
図9は、上部空気ブロック部品インターフェース106と下部熱制御部品108に挟まれたディスポーザブルカートリッジ104の部分分解図を示す。これら部品は、カートリッジ104が挿入される器材の一部を形成する。空気インターフェース106は、カートリッジ104の空気ポートと接続するため必要な全ての空気連結部品、チューブなどを備える。これら部品すべては、インターフェース106内に収容され、ディスポーザブルカートリッジ104の一部を形成しない。
【0065】
同様に熱制御部品108は、例えばヒータ、温度センサ、対応するコントローラ、マイクロプロセッサなどの、カートリッジ104の選択されたゾーンの温度を制御するために必要な要素を全て備える。熱制御部品108は、中央開口110を有する。中央開口110は、カートリッジ104が組み立てられると光学窓40と揃えられ、これにより多孔性基板18を撮像できる。図10は、図9のサンドイッチ構造の部分断面図である。検出器120は、組立システムの多孔性基板18が見える位置に配置される。検出器120は適当な対物レンズを有し、多孔性基板18の底面を撮像して、比色/蛍光/化学発光/生物発光信号を検出するように構成されている。
【0066】
多孔性基板18を生成する望ましい材料は、剛性であり化学発光を通過させないシリコンである。この不透明性により、基板の孔間のクロストークを防ぎ、基板上の密集領域間で別の結合剤とのクロストークを防ぐ。これにより、多くの分析物を小型デバイスで分析することができる。異なる結合剤を密集配置できるからである。例えば基板は、1から15ミクロンのサイズ範囲で、壁厚1から5ミクロンの範囲の孔を含むことができる。
【0067】
図11(a)から図14(c)は、多孔性基板18の実施形態において、2つの対向面が異なる孔サイズを有する例を示す。光を収集して検出と分析を実施できるようにする側の基板18の側面は、図11(a)から図14(c)に示すように、実質的に広い孔を有する。この側面は、下部反応室16と対向し、検出器120(図10)が間隔を開けて配置される光学窓40と対向する。図11(a)から(c)から分かるように、この面における孔の側壁は面に対して法線方向ではなく、先細りになっている。この形状は、検出光学部品に対してより大きい表面積を提供し、孔内の光が通過するに際して制約がより小さい。前面上の孔が大きく多孔性が高いにも関わらず、基板18はフロースルーアプリケーションにとって適切な強度と甲沿い安定性を有する。これは、他面において孔サイズが小さく、孔間に充分な量の材料が存在するからである。
【0068】
図15(a)(b)は、基板の非対称光学特性を示す。図15(a)と図15(b)は、孔の先細り形状により多孔性基板の光伝搬が向上したことを示す。図15(a)と図15(b)は、同じ拡散光源により照射した同じ基板を示す。孔の広がっている部分は図15(a)において対物レンズと対向し、孔の狭い部分は図15(b)において対物レンズと対向する。基板上の点は、孔内で乾燥したプローブ溶液により基板の孔がブロックされている領域である。
【0069】
孔壁の先細り形状により、光収集が向上する。これは、光が収集される深さが増え、孔上部の出射面積が増え、収集角度が増えることによる。この光収集効率のメカニズムを図16(a)から図16(c)に示す。図16(a)は、有効深さの増加効果を示す。図16(b)は、収集角度の増加効果を示す。図16(c)は、表面積の増加効果を示す。
【0070】
図17は、本願が記載する方法の具体的実装についてこれら効果を評価した結果を示す。図17は、ストレート8μm孔(プロット(a))と先細り側壁(プロット(b))について、孔深さの関数として光収集効率の計算結果を示す。評価に用いたパラメータは:1)孔の先細りでない部分の幅は8μm;2)孔間の壁厚さは4μm;3)基板厚さは350μm;4)先細り角度は2度;5)対物レンズの直径は25.4mm;6)対物レンズの作動距離は50mm。
【0071】
図17において、曲線の平坦部分が上昇しているのは、収集面積が増えることによる。曲線のシフトは、孔側壁ではなく光学部品のパラメータによって光収集が制限される孔深さが増えることによる。曲線の勾配の変化は、収集角度の変化に対応する。結果として、光収集効率の増加は1.4から1.5倍である。
【0072】
シリコンを用いる基板18を用いて、個別領域またはスポットに複数のプローブを固定するフロースルーチップを製造した。孔側壁が表面に対して法線方向の高多孔性シリコン基板を用いて、同じフロースルーチップを製造した。これらフロースルーチップが同じターゲット分子と分子交雑し、同じ手順にしたがって処理され、プローブにより結合されたターゲット分子に取り付けられた化学発光ラベルが検出されると、本発明の基板は信号強度が約40%大きかった(図18)。この実験結果により、孔先細りの効率向上の理論評価を確認した。光検出感度が向上することにより、チップ上で実施するアッセイの感度が向上し、および/またはアッセイシステムのスループットが向上する。
【0073】
提案するアプローチは、孔側壁の内面が光収集を妨げない限り、先細り角度に対して必ずしも非常に敏感ではない。上記列挙したパラメータについて、先細り角度は、0.3度(孔の全深さに沿った孔側壁の先細り)から約14度の範囲で選択することができる。この範囲外の角度を有する先細りも、収集する光量を増加させることができるが、その改善効果は小さい。特定の先細り角度と特定の先細り深さは、基板製造プロセス、選択した孔サイズ、膜厚により影響を受ける場合がある。
【0074】
孔の形状は正方形でなくともよい。製造プロセスが必要とするのであれば、孔が異なる断面を有してもよい(例:円形)。この場合、孔は円筒形である(図19(a)、19(b)から21(a)、21(b)参照)。この場合、先細りの最も単純な形状は、図19(a)と19(b)に示すように円錐である。先細り形状を円錐形状から球状(図20(a)と20(b)参照)または放物線状(図21(a)と21(b))に変更することにより、光収集効率をさらに増やすことができる。
【0075】
異なる断面の孔(円形、正方形、多角形)を実装できる。図13(a)から13(c)は、そのようなシリコン基板のマイクロ写真である。図22(b)に示すように孔を密集配置することにより、図22(a)のパック構造の収集効率と比較して、円筒孔を有する基板の光収集効率をさらに向上することができる。
【0076】
基板材料の構造安定性は、材料タイプ(例:シリコンまたはプラスチック)と厚さに依拠する。基盤が薄いまたは/および材料がフレキシブルまたは柔らかい場合、強化フレームを用いて基板を強化してもよい(図23と24参照)。基板を単一のフレームに取り付けるか(図23参照)、または望ましくは2つのフレームで挟む(図24参照)ことができる。これにより、上述のように基板を破損することなく多孔性基板を介して流体を流すために必要な双方向圧力を加えることができる。
【0077】
まとめとして、本開示は、複数のバイオアッセイを実施するディスポーザブル試料処理カートリッジを提供する。カートリッジは、アクティブポンプまたはバルブを必要とすることなく、複雑な流体処理を提供するように設計および構成されている。カートリッジは、標準鋳造技術を用いて容易に生成することができる。ナノ構造は必要なく、公差を正確にすることも必要ない。試料と試薬流体の移動は、差圧を加えることのみによって決定される。これは主に試料基板18の特性に相関する。すなわち基板18における孔サイズと分布、および毛細チャネル(例:チャネル48)の内径である。本開示のカートリッジは、可動部分を含んでおらず、一般にはアクティブポンプやバルブなどを含む現行システムと比較して少数の部品で形成される。
【0078】
本開示のカートリッジは、以下に用いることができるが、これに限らない:たんぱく抗原分析の競合免疫測定法;アレルギー、自己免疫、感染症についての固定抗原への抗体結合の血清;DNA、RNA、mRNA、microRNA(miRNA)などの核酸測定を実施して、以下を識別する:疾患の存在または進行に相関する特定シーケンスの存在または態様;試料内の特定種のバクテリア、真菌、ウイルスを識別するために用いることができるシーケンス;病原体の特定の抵抗性遺伝子の存在を示すシーケンス;疾患のリスクに相関を有するコピー数多型(CNV)または特定遺伝子変異体または特定遺伝子欠損の測定;法医学目的または識別目的の試料タイプ付けに用いる遺伝子サイン。本開示のカートリッジは、薬剤や環境汚染物質を含む小分子測定のために用いることもできる。本開示のカートリッジは、複数試料マトリクスにおいて用いることもできる。これは以下を含む:人間と動物の体液と組織、食物試料と農学試料、環境試料、細胞と細胞溶解物、生物処理流体。
【0079】
核酸アッセイとたんぱく質アッセイを用いて、本開示のディスポーザブルカートリッジの非限定的例を説明する。
【0080】
<実施例>
図25(a)は、核酸バイオアッセイの結果を示す。特定遺伝子シーケンスのコピーを表すビオチンラベル付けしたPCR生成物を含むバクテリアサンプルからの試料を、図7のカートリッジを用いて処理した。カートリッジを組み立てる前に、個別領域において多孔性基板18に機能付与して分析スポットを形成した。各スポットは直径約200μmであり、オリゴヌクレオチドプローブを有する。プローブは以下を含む:増幅バクテリア遺伝子において生じることが知られているシーケンスに対する相補シーケンス(+veプローブ1、2、3、4);増幅バクテリア遺伝子において生じることが知られていないシーケンス(-veプローブ1、2);または試料に対して追加された人工オリゴヌクレオチドに対する相補シーケンス(Fiducial)。さらに、オリゴヌクレオチドプローブを固定化していないブランクスポットを、バックグラウンド信号を測定するための制御として用いた。5つの個別試薬ウェル10とバルク室87を用いた。
【0081】
試薬室に対して個別に、ブロックバッファ、分子交雑バッファ、試料、ストレプトアビジン-HRP、化学発光基板を取り込んだ。バルク容器87に洗浄バッファを取り込んだ。図3に示すように、各ステップにおいて試薬を上部処理室へ搬送した。図4に示すように、各液体は次に下部処理室へ搬送され、図5に示すように上部処理室に戻した。
【0082】
多孔性基板18を介してこのサイクルを各ステップにおいて必要なだけ繰り返した後、図6に示すように試薬を廃液室へ除去した。各ステップ間において、バルク室87からの洗浄バッファのアリコートを同様に処理した。これらステップにより以下を実現した:多孔性基板により非特異的結合を防ぐ;多孔性基板18上の個別領域内に固定化された相補シーケンスを含むプローブへ、試料内のPCR生成物を分子交雑する;キャプチャしたPCR生成物上でビオチンラベルへストレプトアビジン-HRPを結合する;キャプチャしたHRP酵素により処理してその特定領域上で化学発光を生成することができる化学発光基板を導入する。
【0083】
最終ステップの間、光学窓40下に配置したCCDカメラ120で多孔性基板18の画像を取得した。この画像図25(b)を分析して、多孔性基板18を通じて測定した光強度を取得し、固定化プローブを含む特定領域と関連付けた。図25(a)は、同じ試料についてバイオアッセイを3回繰り返した後の蛍光強度を示す。試料が有することが想定される遺伝子シーケンスに対する相補シーケンスを含む固定化プローブによって形成された分析スポットにおいて大きな信号が観察され(+veプローブ1、2、3、4)、試料が有さないことが想定される遺伝子シーケンスに対する相補シーケンスを含む固定化プローブによって形成された分析スポットにおいて最小信号が観察された(-veプローブ1、2)。ブランク分析スポットにおいては信号が観察されなかった。分析前に試料に対して追加された人工オリゴヌクレオチドに対する相補シーケンスを含む分析スポットにおいて、実質的な信号が観察された。
【0084】
図26は、人間の血清または制御バッファに対してタンパク質バイオアッセイを実施して、麻疹ウイルスに対する抗原の存在を判定した結果を示す。図7のカートリッジを用いて実施した。カートリッジの組み立て前に、個別領域において多孔性基板18に機能付与して分析スポットを形成した。各スポットは直径約200μmであり、非活性化した麻疹ウイルスを含む。4つの試薬室に対して個別に、ブロックバッファ、試料、HRPラベル付け抗ヒト免疫グロブリンG、化学発光基板を取り込んだ。バルク容器87に洗浄バッファを取り込んだ。
【0085】
図3に示すように、各ステップにおいて試薬を上部処理室へ搬送した。図4に示すように、各液体は次に下部処理室へ搬送され、図5に示すように上部処理室に戻した。多孔性基板18を介してこのサイクルを各ステップにおいて必要なだけ繰り返した後、図6に示すように試薬を廃液室へ除去した。各ステップ間において、バルク室87からの洗浄バッファのアリコートを同様に処理した。これらステップにより以下を実現した:多孔性基板により非特異的結合を防ぐ;多孔性基板18上の個別領域に固定化された麻疹ウイルス成分に固有の免疫グロブリンを含む領域の試料から結合する;HRP酵素に結合した抗ヒト免疫グロブリンG抗体を抗麻疹免疫グロブリンと結合する;結合したHRP酵素により処理してその特定領域上で化学発光を生成することができる化学発光基板を導入する。
【0086】
最終ステップの間、光学窓40下に配置したCCDカメラ120で多孔性基板18の画像を取得した。この画像を分析して、多孔性基板18を通じて測定した光強度を取得し、固定化ウイルスを含む特定領域と関連付けた。図26のチャートは、これら試料タイプについて記録した蛍光強度を示す。麻疹固有抗体の存在に相関する大きな信号が、麻疹ウイルスに対して免疫を有する(陽性血清)患者から取得した血清サンプルから観察された。非常に小さい信号が、麻疹ウイルスに対して免疫が弱い(陰性血清)患者から取得した血清から観察された。麻疹固有抗体を含まない制御バッファサンプルから最小信号が観察された。
【0087】
図27(a)は、それぞれ上部処理室と下部処理室を有する2つの異なる多孔性基板を利用した処理結果を示す。一方はたんぱく質分析物をキャプチャする固体サポートであり、他方は結合したたんぱく質固有受容体上でたんぱく質分析物が検出される多孔性基板である。この例において、ビオチン化マウスIgG分析物を含む同一サンプルを、多孔性基板18を介してサイクル処理した。多孔性基板18は、マウスIgGに対して結合親和性が高いウサギ抗マウス抗体で機能付与した(処理済)。さらに、機能化していない多孔性基板を介してサイクル処理した(未処理)。
【0088】
得られた流体を、多孔性基板を介して処理した。個別領域において多孔性基板に機能付与して、分析スポットを形成した。各スポットは直径約200μmであり、マウスIgGまたはビオチン化ウシ血清アルブミンに対して高結合親和性を有し基準スポットとして機能するウサギ抗マウス抗原をそれぞれ有する。以下を順次実施した:洗浄;キャプチャしたビオチン-マウスIgGと固定化ビオチン-BSAに対してストレプトアビジン-HRPを結合する;結合したHRP酵素によって処理してその特定領域において化学発光を生成することができる化学発光基板を導入する。最終ステップの間、光学窓40下に配置したCCDカメラ120で多孔性基板18の画像を取得した。ウサギ抗マウスIgGで機能化した各スポットの強度は、溶液内に存在するビオチン化マウスIgG分析物の量と相関する。
【0089】
図27(a)は、検出用の第2多孔性基板18上で処理したとき、第1機能化多孔性基板18によって処理した試料(処理済)がほぼ完全にマウスIgG分析物を有していないことを示す。検出用の第2多孔性基板18上で処理したとき、第1非機能化多孔性基板18(未処理)によって処理された試料が高レベルのマウスIgG分析物を有することが見て取れる。
【0090】
図27(b)は、処理済サンプルについて第2多孔性基板18からCCDカメラ120によってキャプチャした信号を表す。基準ビオチン化BSA分析物スポット上でのみ、大きい信号が観察された。図27(c)は、未処理サンプルについて第2多孔性基板18からCCDカメラ120によってキャプチャした信号を表す。基準ビオチン化BSAとビオチン化マウスIgGの双方の分析物スポットから、大きい信号が観察できる。これは、第2多孔性基板18による検出および定量の前に、分析物固有試薬によって機能付与してその分析物を除去した第1多孔性基板18を用いるのが高効率であることを示す。これは例えば、第2多孔性基板18上の分析物と反応する物質を除去または消費するために用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
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