(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】作業車の駐車用ブレーキ機構及び作業車
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20220816BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B60T7/06 C
B60T7/04 C
(21)【出願番号】P 2019083606
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】柳原 克己
(72)【発明者】
【氏名】木山 和也
(72)【発明者】
【氏名】萬徳 直人
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070176(JP,A)
【文献】実開平03-043035(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211664(US,A1)
【文献】特開2000-185633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00 - 8/1769
8/32 - 8/96
13/00 - 17/22
B62D 41/00 - 67/00
G05G 1/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルと連動する係合部と、
車体フレームに固定された支持部と、
前記支持部に回動可能に設けられ、前記係合部と係合することで、前記ブレーキペダルを保持する保持部と、
前記支持部に固定される固定部と、
前記固定部及び前記保持部を連結するように設けられ、前記保持部を初期位置に向かって付勢する付勢部と、
を具備
し、
前記支持部は、
前記車体フレームに当接された状態で固定される当接部と、
前記当接部から突出するように設けられ、前記保持部を回動可能に支持するとともに前記固定部を固定する回動軸部と、
を具備する、
作業車の駐車用ブレーキ機構。
【請求項2】
前記回動軸部は、前記当接部を貫通するように設けられると共に、前記車体フレームに挿入される、
請求項1に記載の作業車の駐車用ブレーキ機構。
【請求項3】
前記係合部は、
板状の部材を屈曲させて形成される、
請求項1又は請求項2に記載の作業車の駐車用ブレーキ機構。
【請求項4】
前記車体フレームに固定されたステップを上下に貫通するように配置され、前記ステップの下方において前記保持部と連結される操作部をさらに具備する、
請求項1から請求項3
までのいずれか一項に記載の作業車の駐車用ブレーキ機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の駐車用ブレーキ機構を具備する作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の駐車用ブレーキ機構及び作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車の駐車用ブレーキ機構の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、ブレーキペダルに連動する係止部材と、係止部材に係合可能な駐車ブレーキ用の保持部(係合部材)と、を具備する駐車用ブレーキ機構が記載されている。保持部は、支軸を介してステップの底面に揺動自在に設けられている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ブレーキペダルが踏み込まれた状態で、保持部を係止部材に係合させることで、ブレーキペダルをその位置(踏み込み操作された位置)に保持することができる。これによって、作業車が制動された状態を保持することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、保持部が比較的剛性の低いステップに支持されているため、保持部を係止部材に係合させた際に、ステップがたわむおそれがある。ステップがたわむと、保持部の支点の位置が変化し、ブレーキペダルが初期位置側へと若干戻るため、想定した制動力が得られない(制動力が低下する)可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、保持部を強固に支持することができる作業車の駐車用ブレーキ機構及び作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、ブレーキペダルと連動する係合部と、車体フレームに固定された支持部と、前記支持部に回動可能に設けられ、前記係合部と係合することで、前記ブレーキペダルを保持する保持部と、前記支持部に固定される固定部と、前記固定部及び前記保持部を連結するように設けられ、前記保持部を初期位置に向かって付勢する付勢部と、を具備し、前記支持部は、前記車体フレームに当接された状態で固定される当接部と、前記当接部から突出するように設けられ、前記保持部を回動可能に支持するとともに前記固定部を固定する回動軸部と、を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、前記回動軸部は、前記当接部を貫通するように設けられると共に、前記車体フレームに挿入されるものである。
【0013】
請求項3においては、前記係合部は、板状の部材を屈曲させて形成されるものである。
【0014】
請求項4においては、前記車体フレームに固定されたステップを上下に貫通するように配置され、前記ステップの下方において前記保持部と連結される操作部をさらに具備するものである。
【0015】
請求項5においては、前記駐車用ブレーキ機構を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、支持部を介して保持部を車体フレームに設けることで、当該保持部を強固に支持することができる。また、支持部を介して付勢部を車体フレームに設けることで、当該付勢部を強固に支持することができる。また、当接部を車体フレームに当接させることで、支持部を車体フレームに強固に固定することができる。ひいては、保持部を強固に支持することができる。
【0020】
請求項2においては、回動軸部を車体フレームに挿入することで、支持部を車体フレームに強固に固定することができる。ひいては、保持部を強固に支持することができる。
【0021】
請求項3においては、係合部の剛性を向上させることができる。
【0022】
請求項4においては、ステップの上方から操作部を操作することで保持部を回動させる
ことができ、当該保持部の操作性を向上させることができる。
【0023】
請求項5においては、支持部を介して保持部を車体フレームに設けることで、当該保持
部を強固に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【
図2】センターフレーム及びステップを示した下方斜視図。
【
図6】(a)支持部及び固定部を示した上方斜視図。(b)同じく、正面断面図。
【
図7】駐車用ブレーキ機構の動作態様を示した左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0026】
まず、
図1を用いて本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0027】
トラクタ1は、主としてフロントフレーム2、センターフレーム3、エンジン4、ボンネット5、前輪6、後輪7、フェンダ8、ステップ9、座席10、ステアリングホイール11、ブレーキペダル20及び駐車用ブレーキ機構100を具備する。
【0028】
フロントフレーム2及びセンターフレーム3は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。フロントフレーム2は、長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に配置される。センターフレーム3は、長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前後中途部(フロントフレーム2の後方)に配置される。フロントフレーム2の後部及びセンターフレーム3の前部には、エンジン4が固定される。エンジン4は、ボンネット5に覆われる。
【0029】
フロントフレーム2は、フロントアクスル機構(不図示)等を介して左右一対の前輪6に支持される。センターフレーム3は、トランスミッションケース(不図示)等を介して左右一対の後輪7に支持される。後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0030】
センターフレーム3には、運転者がトラクタ1に搭乗した際の足場となるステップ9が左右一対設けられる。ステップ9の後上方には、運転者が着座するための座席10が配置される。座席10の前方には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール11が配置される。
【0031】
ステアリングホイール11の右下方には、トラクタ1を制動させるための操作具であるブレーキペダル20が配置される。ステアリングホイール11の左下方には、トラクタ1を駐車する際に制動させるための駐車用ブレーキ機構100が配置される。
【0032】
次に、
図2から
図4までを用いて、ブレーキペダル20に関する構成についてより具体的に説明する。
【0033】
図2に示すように、ブレーキペダル20は、左側の後輪7を制動させるための左ブレーキペダル30と、右側の後輪7を制動させるための右ブレーキペダル40と、を含んでいる。左ブレーキペダル30及び右ブレーキペダル40は、右側のステップ9の下方において、センターフレーム3に回動可能となるように支持されている。左ブレーキペダル30及び右ブレーキペダル40は、ステップ9の上方まで延設され、搭乗している運転者の足によって踏み込み操作可能となっている。
【0034】
図2から
図4までに示すように、左ブレーキペダル30は、センターフレーム3を左右に貫通するブレーキシャフト31と一体的に回動可能となるように連結されている。ブレーキシャフト31の左端部(センターフレーム3の左方の部分)には、板状の回動アーム32が固定される。回動アーム32には、ブレーキロッド33が連結される。ブレーキロッド33は、回動アーム32から後方に向かって延設され、左側の後輪7を制動させる制動機構(不図示)と連結されている。
【0035】
ブレーキロッド33の中途部には、当接板33aが固定されている。当接板33aの後方には、当該当接板33aと当接可能となるように、ブレーキセンサ34が配置されている。
【0036】
左ブレーキペダル30が運転者によって踏み込み操作されると、ブレーキシャフト31を介して回動アーム32が左側面視反時計回りに回動され、ブレーキロッド33が前方へと引っ張られる。これによって、左側の後輪7を制動させる制動機構(不図示)が作動する。左ブレーキペダル30の操作の有無は、ブレーキセンサ34によって検出することができる。
【0037】
なお、回動アーム32には、当該回動アーム32を左側面視時計回りに回動させる戻しバネ(不図示)が連結される。当該戻しバネの付勢力によって、踏み込み操作されていない左ブレーキペダル30は、
図2から
図4までに示すような初期位置(左側面視時計回りに最も回動した位置)に戻される。
【0038】
図2に示す右ブレーキペダル40も、左ブレーキペダル30と略同様に、右側の後輪7を制動させる制動機構(不図示)と連結され、当該制動機構を作動させることができる。また、所定の連結具(不図示)を用いて、左ブレーキペダル30と右ブレーキペダル40を一体的に回動可能となるように連結させることができる。これによって、左ブレーキペダル30及び右ブレーキペダル40を同時に踏み込み操作することができ、左右の後輪7を同時に制動させることができる。
【0039】
次に、
図3から
図6までを用いて、駐車用ブレーキ機構100について具体的に説明する。
【0040】
駐車用ブレーキ機構100は、ブレーキペダル20を踏み込み操作された状態(位置)で保持することで、後輪7を制動するものである。駐車用ブレーキ機構100は、主として支持部110、固定部120、保持部130、戻しバネ140、操作部150及び係合部160を具備する。
【0041】
支持部110は、後述する保持部130をセンターフレーム3に対して取り付けるものである。支持部110は、主として当接部111及び回動軸部112を具備する。
【0042】
当接部111は、センターフレーム3に対して当接する部分である。当接部111は、長手方向を前後に向けた略矩形板状に形成される。当接部111は、板面を左右に向けて配置される。当接部111には、挿通孔111a及び固定孔111bが形成される。
【0043】
図6に示す挿通孔111aは、後述する回動軸部112を挿通するためのものである。挿通孔111aは、当接部111を左右に貫通するように形成される。挿通孔111aは、当接部111の略中央に形成される。
【0044】
図5及び
図6に示す固定孔111bは、当接部111をセンターフレーム3に固定するためのものである。固定孔111bは、当接部111を左右に貫通するように形成される。固定孔111bは、挿通孔111aを挟んで前後一対形成される。
【0045】
図3から
図6までに示す回動軸部112は、後述する保持部130を回動可能に支持する部分である。回動軸部112は、主として軸中央部112a、軸固定部112b及び軸支持部112cを具備する。
【0046】
図5及び
図6に示す軸中央部112aは、回動軸部112の左右中央部を形成する部分である。軸中央部112aは、長手方向を左右に向けた略円柱状に形成される。
【0047】
軸固定部112bは、回動軸部112の右部を形成する部分である。軸固定部112bは、長手方向を左右に向けた略円柱状に形成される。軸固定部112bの径は、軸中央部112aの径よりも小さく形成される。軸固定部112bは、軸中央部112aの右端から右方に向かって延びるように形成される。軸固定部112bは、軸中央部112aと同一軸線上に位置するように形成される。
【0048】
軸支持部112cは、回動軸部112の左部を形成する部分である。軸支持部112cは、長手方向を左右に向けた略円柱状に形成される。軸支持部112cの径は、軸中央部112aの径よりも小さく形成される。軸支持部112cは、軸中央部112aの左端から左方に向かって延びるように形成される。軸支持部112cは、軸中央部112aと同一軸線上に位置するように形成される。軸支持部112cの外周には、ねじ(雄ねじ)が形成される。
【0049】
回動軸部112の軸固定部112bは、当接部111の挿通孔111aに左方から挿通される。当接部111の左側面と軸中央部112aの右側面とが当接した状態で、当接部111と回動軸部112とが適宜の方法(例えば、溶接)により固定される。この状態において、回動軸部112の軸固定部112bの先端部(右端部)は、当接部111の右側面から右方に向かって突出している。このようにして、支持部110は、当接部111と回動軸部112が一体的に固定されて形成されている。
【0050】
また、支持部110は、ステップ9の下方において、センターフレーム3の左側面に固定される。具体的には、センターフレーム3の左側面には、支持部110の固定孔111b、及び回動軸部112(軸固定部112b)に対応する位置に、貫通孔3a及び貫通孔3bが形成されている。まず、回動軸部112の軸固定部112b(
図6参照)が貫通孔3bに挿通されることで、センターフレーム3に対する支持部110の位置決めがなされる。その後、支持部110の固定孔111b及びセンターフレーム3の貫通孔3aに適宜の固定具(例えば、ボルト、ナット等)が締結されることで、支持部110がセンターフレーム3に固定される。
【0051】
図4から
図6までに示す固定部120は、支持部110に固定されるものである。固定部120は、略矩形板状に形成される。固定部120は、板面を左右に向けて配置される。固定部120には、挿通孔121及び係合孔122が形成される。
【0052】
図5及び
図6に示す挿通孔121は、支持部110の回動軸部112を挿通するためのものである。挿通孔121は、固定部120を左右に貫通するように形成される。挿通孔121は、固定部120の前後中央下部に形成される。
【0053】
係合孔122は、後述する戻しバネ140を係合させるためのものである。係合孔122は、固定部120を左右に貫通するように形成される。係合孔122は、固定部の前後中央上部(挿通孔121の上方)に形成される。
【0054】
固定部120の挿通孔121には、回動軸部112の軸支持部112cが右方から挿通される。固定部120の右側面と軸中央部112aの左側面とが当接した状態で、固定部120と回動軸部112とが適宜の方法(例えば、溶接)により固定される。この状態において、回動軸部112の軸支持部112cの先端部(左端部)は、固定部120の左側面から左方に向かって突出している。このようにして、固定部120は、支持部110と一体的に固定されている。
【0055】
図3から
図5までに示す保持部130は、ブレーキペダル20を保持するためのものである。保持部130は、主として本体部131及び補強部132を具備する。
【0056】
本体部131は、板状に形成される部材である。本体部131は、長手方向を略前後にむけて配置される。本体部131は、板面を左右に向けて配置される。本体部131には、回動孔131a、係合孔131b、連結孔131c、本体当接部131d及び係合歯部131eが形成される。
【0057】
図5に示す回動孔131aは、回動軸部112と回動可能に連結されるためのものである。回動孔131aは、本体部131を左右に貫通するように形成される。回動孔131aは、本体部131の後端部近傍に形成される。
【0058】
図4及び
図5に示す係合孔131bは、後述する戻しバネ140を係合させるためのものである。係合孔131bは、本体部131を左右に貫通するように形成される。係合孔131bは、本体部131の前後中途部に形成される。
【0059】
連結孔131cは、後述する操作部150と連結されるためのものである。連結孔131cは、本体部131を左右に貫通するように形成される。連結孔131cは、本体部131の前端部近傍に形成される。
【0060】
本体当接部131dは、ステップ9と当接する部分である。本体当接部131dは、本体部131の前上端を直線的に切り欠くように形成される。本体当接部131dは、本体部131(保持部130)が所定の位置(初期位置)に回動した際に、ステップ9の底面と面接触するように、当該ステップ9の底面と平行に形成される。
【0061】
係合歯部131eは、後述する係合部160と係合するためのものである。係合歯部131eは、本体部131の底面の前後中途部に形成される。係合歯部131eは、複数の凹凸を前後に並べて形成される。
【0062】
補強部132は、本体部131を補強するものである。補強部132は、板状の部材を側面視略L字状に屈曲させて形成される。具体的には、補強部132は、略前後方向に延びる板状の部材の後端部を上方に向けて屈曲させることで形成される。補強部132は、本体部131の左側面に適宜の方法(例えば、溶接)により固定される。
【0063】
保持部130の回動孔131aには、回動軸部112の軸支持部112cが右方から挿通される。これによって、保持部130は、支持部110(回動軸部112)に回動可能に支持される。また、ナット130aが軸支持部112cに締結されることにより、保持部130が支持部110から脱落するのを防止することができる。
【0064】
図4に示す戻しバネ140は、保持部130を所定の位置(初期位置)へと戻すためのものである。戻しバネ140は、引張りコイルばねによって形成される。戻しバネ140の一端は、固定部120の係合孔122に係合される。戻しバネ140の他端は、保持部130の係合孔131bに係合される。戻しバネ140は、回動軸部112を中心として、保持部130を左側面視時計回りに付勢する。戻しバネ140の付勢力によって、後述する操作部150が踏み込み操作されていない保持部130は、
図2から
図4までに示すような初期位置(左側面視時計回りに最も回動した位置)に戻される。
【0065】
図3から
図5までに示す操作部150は、保持部130を操作するための操作具である。操作部150は、略円柱状の部材を正面視略C字状に屈曲させて形成される。操作部150は、上下両端部が左方に向かって延びるように配置される。操作部150の下端部は、保持部130の連結孔131cに右方から挿通される。操作部150は、保持部130から略上方に延びるように配置される。操作部150は、適宜の方法(例えば、溶接)により保持部130に固定される。
【0066】
ステップ9には、操作部150に対応する位置に、貫通孔9bが形成されている。操作部150は、ステップ9の貫通孔9bに挿通される。これによって操作部150は、ステップ9を上下に貫通するように配置される。トラクタ1に搭乗した運転者は、操作部150の上部を踏み込み操作することができる。
【0067】
図3及び
図4に示す係合部160は、保持部130と係合可能な部材である。係合部160は、板状の部材を側面視略L字状に屈曲させて形成される。具体的には、係合部160は、略前後方向に延びる板状の部材の前端部を上方に向けて屈曲させることで形成される。係合部160は、回動アーム32の右側面に適宜の方法(例えば、溶接)により固定される。係合部160は、保持部130の下方に配置される。
【0068】
以下では、
図7を用いて、上述の如く構成された駐車用ブレーキ機構100の動作態様について説明する。
【0069】
運転者は、トラクタ1を駐車させる場合など、比較的長時間に亘ってトラクタ1を制動させたい場合、駐車用ブレーキ機構100を用いてブレーキペダル20を踏み込み操作した状態で保持することができる。
【0070】
具体的には、まず運転者は、ブレーキペダル20(
図2等参照)を右足で踏み込み、回動アーム32を左側面視反時計回りに回動させる。この状態で運転者は、操作部150を左足で踏み込み、係合部160に保持部130の係合歯部131eを係合させる。これによって、係合部160を介してブレーキペダル20がその位置で保持される。すなわち、ブレーキペダル20を操作して後輪7の制動装置を作動させた状態で保持することができる。
【0071】
この状態では、係合部160と保持部130(係合歯部131e)が係合しているため、回動アーム32及び保持部130はどちらも回動することがない。これによって運転者は、ブレーキペダル20及び操作部150から足を離しても、トラクタ1を制動させ続けることができる。
【0072】
なお、運転者がブレーキペダル20から足を離すと、ブレーキペダル20は初期位置に戻ろうとするため、保持部130にも負荷がかかることになる。しかし、保持部130は、トラクタ1の中でも比較的剛性の高い部材であるセンターフレーム3に取り付けられている。このため、センターフレーム3が変形するなどして保持部130の位置がずれることを抑制することができる。したがって、ブレーキペダル20が保持部130によって保持されているにもかかわらず若干初期位置側に戻り、トラクタ1の制動力が低下するのを抑制することができる。
【0073】
駐車用ブレーキ機構100による制動を解除する場合には、運転者はブレーキペダル20を踏み込む。これによって回動アーム32が左側面視反時計回りに回動すると、係合部160が保持部130の係合歯部131eから離間する。これによって、ブレーキペダル20及び保持部130は、初期位置に戻される。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)の駐車用ブレーキ機構100は、
ブレーキペダル20と連動する係合部160と、
センターフレーム3(車体フレーム)に固定された支持部110と、
前記支持部110に回動可能に設けられ、前記係合部160と係合することで、前記ブレーキペダル20を保持する保持部130と、
を具備するものである。
このように構成することにより、支持部110を介して保持部130をセンターフレーム3に設けることで、当該保持部130を強固に支持することができる。例えば、ステップ9などの板金部材など、比較的剛性の低い支持部材に支持した場合に比べて、当該支持部材の変形を抑制することができる。これによって、当該支持部材の変形に伴うトラクタ1の制動力の低下を抑制することができる。
【0075】
また、駐車用ブレーキ機構100は、
前記支持部110に固定される固定部120と、
前記固定部120及び前記保持部130を連結するように設けられ、前記保持部130を初期位置に向かって付勢する戻しバネ140(付勢部)と、
をさらに具備するものである。
このように構成することにより、支持部110を介して戻しバネ140をセンターフレーム3に設けることで、当該戻しバネ140を強固に支持することができる。これによって、トラクタ1の制動力の低下を抑制することができる。
【0076】
また、前記支持部110は、
前記センターフレーム3に板面を当接させた状態で固定される当接部111と、
前記当接部111から突出するように設けられ、前記保持部130を回動可能に支持する回動軸部112と、
を具備するものである。
このように構成することにより、当接部111をセンターフレーム3に当接させることで、支持部110をセンターフレーム3に強固に固定することができる。すなわち、当接部111をセンターフレーム3に対して面接触させることで、センターフレーム3と当接部111の固定部分の剛性を高めることができる。ひいては、保持部130を強固に支持することができる。
【0077】
また、前記回動軸部112は、前記当接部111を貫通するように設けられると共に、前記センターフレーム3に挿入されるものである。
このように構成することにより、回動軸部112をセンターフレーム3に挿入することで、支持部110をセンターフレーム3に強固に固定することができる。ひいては、保持部130を強固に支持することができる。
【0078】
また、前記係合部160は、
板状の部材を屈曲させて形成されるものである。
このように構成することにより、係合部160の剛性を向上させることができる。
【0079】
また、駐車用ブレーキ機構100は、
前記センターフレーム3に固定されたステップ9を上下に貫通するように配置され、前記ステップ9の下方において前記保持部130と連結される操作部150をさらに具備するものである。
このように構成することにより、ステップ9の上方から操作部150を操作することで保持部130を回動させることができ、当該保持部130の操作性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、
駐車用ブレーキ機構100を具備するものである。
このように構成することにより、支持部110を介して保持部130をセンターフレーム3に設けることで、当該保持部130を強固に支持することができる。
【0081】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るセンターフレーム3は、本発明に係る車体フレームの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る戻しバネ140は、本発明に係る付勢部の実施の一形態である。
【0082】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車両の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0084】
また、本実施形態においては、支持部110はセンターフレーム3に固定されるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、例えばフロントフレーム2など、トラクタ1の主たる構造体となるフレーム(車体フレーム)に固定してもよい。
【0085】
また、支持部110は、トランスミッションケース(不図示)など、車体フレーム以外のトラクタ1の主たる構造体となる部材(剛性の比較的高い部材)に固定してもよい。すなわち支持部110は、ステップ9と比較して剛性の高い部材に固定されるものであればよい。
【0086】
また、本実施形態においては、戻しバネ140を係合させるための固定部120を支持部110に固定するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、例えばその他の部材(ステップ9、ステップステー9a、センターフレーム3等)に固定することも可能である。但し、トラクタ1の制動力の低下を抑制する観点からは、固定部120は、ステップ9よりも剛性の高い部材に固定することが望ましい。
【0087】
また、本実施形態においては、支持部110は当接部111及び回動軸部112を具備するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち支持部110、保持部130をセンターフレーム3に取り付けることができるものであれば、その具体的な構成は限定しない。
【0088】
また、本実施形態においては、支持部110をボルト等の固定具を用いてセンターフレーム3に固定するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、その他の方法(例えば、溶接など)によって固定することも可能である。
【0089】
また、本実施形態においては、操作部150は運転者の足によって操作(踏み込み操作)されるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、運転者の手によって操作する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 トラクタ
3 センターフレーム
20 ブレーキペダル
100 駐車用ブレーキ機構
110 支持部
111 当接部
112 回動軸部
120 固定部
130 保持部
140 戻しバネ
150 操作部
160 係合部