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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】炭化水素油用流動接触分解触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/08 20060101AFI20220816BHJP
   C10G 11/05 20060101ALI20220816BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B01J29/08 M
C10G11/05
C10G11/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019115303
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2020142229
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019036268
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 千鈴
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036934(JP,A)
【文献】特開2010-110698(JP,A)
【文献】特開2017-087204(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145311(WO,A1)
【文献】特開2009-000657(JP,A)
【文献】特開2010-082547(JP,A)
【文献】特表2010-531219(JP,A)
【文献】特表2006-503689(JP,A)
【文献】特表2015-533637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素移行反応活性の異なる2種の流動接触分解触媒を混合してなる炭化水素油用流動接触分解触媒であって、
一の触媒は、格子定数が2.435~2.459nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分とRE として0.5~2.0質量%の希土類とを含んでなる触媒(a)であり、
他の触媒は、格子定数が2.440~2.478nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分とRE として2.5~12質量%の希土類とを含んでなる触媒(b)であり、
触媒(a)の水素移行反応活性が触媒(b)の水素移行反応活性より低いことを特徴とする炭化水素油用流動接触分解触媒。
【請求項2】
前記触媒(a)と前記触媒(b)との質量混合比((a)/(b))が10/90~90/10の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油用流動接触分解触媒。
【請求項3】
前記一の触媒および前記他の触媒の間の、水素移行反応活性の指標である(i-C4/C4=)比(ただし、i-C4およびC4=はそれぞれ炭化水素油の流動接触分解性能評価試験におけるイソブタンおよびブテンの生成質量を表す)の差が、0.10~0.85の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素油用流動接触分解触媒。
【請求項4】
前記触媒(a)は、触媒組成基準で、前記フォージャサイト型ゼオライト(A)を15~60質量%含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の炭化水素油用流動接触分解触媒。
【請求項5】
前記触媒(b)は、触媒組成基準で、前記フォージャサイト型ゼオライト(B)を15~60質量%含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の炭化水素油用流動接触分解触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーク生成の抑制に有効で、高液収率や低ガスなどの選択性に優れた炭化水素油の流動接触分解触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に接触分解用触媒は、常圧蒸留残油などの重質炭化水素油に対する分解能力(「ボトム分解能」ともいう)が高いこと、あるいは、触媒表面に析出するコークの析出量が少ないことなど、種々の観点で高い性能を発揮できるものが求められる。この点に関し、従来、炭化水素油の流動接触分解にあたっては、コークの収率を低くして、ガソリンや中間留分(軽油および灯油)などの収率をあげる(高液収率)ために、異なる二種の触媒を混合して用いる方法などが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭化水素油の流動接触分解に用いられる触媒について、二種の触媒を1:9~9:1の割合で物理的に混合してなるクラッキング触媒につき、一方の触媒をゼオライト含有クラッキング触媒とし、他方の触媒を20~200Å(2~20nm)の細孔直径範囲において、同じ細孔直径範囲における一方の触媒より高い平均細孔体積を有するとともにM41S物質を含まない触媒としたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ゼオライトと、活性マトリックス成分および不活性マトリックス成分からなる無機酸化物マトリックスとを含有する触媒を2種以上混合してなる炭化水素油の流動接触分解触媒であって、各触媒のゼオライトの含有量を変えることを特徴とする炭化水素油の流動接触分解触媒が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ゼオライトおよび結合剤として10~30質量%のシリカ系バインダーを含む触媒と、ゼオライトおよび結合剤として10~30質量%のアルミニウム化合物バインダーを含む触媒とを、質量比が10:90~90:10の範囲内で混合してなる流動接触分解触媒が開示されている。これにより、低コークとボトム(重質留分)分解能に優れたものになるとしている。
【0006】
そして、特許文献4には、格子定数が2.435~2.455nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(a)と、格子定数が2.445~2.462nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分とリンとマグネシウムとを含んでなる触媒(b)とを混合してなる炭化水素接触分解用触媒が開示されている。これにより、希土類酸化物の含有量が少なくても、水熱安定性に優れ、残油(ボトム)分解能が高く、選択性(高液収率、低ガス、低コーク)に優れたものになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2004-528963号公報
【文献】特開2010-110698号公報
【文献】国際公開第2009/145311号
【文献】特開2014- 36934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の前記流動接触分解触媒については、実際には、低コークを十分に達成していないという問題があった。たとえば、特許文献1~3に記載された流動接触分解触媒によっても必ずしも十分な効果を奏さない場合もある。また、特許文献4に記載された流動接触分解触媒では、異なる格子定数のゼオライトを混合しているが、混合する触媒の水素移行反応活性によっては、触媒を混合する効果が表れない場合があった。また、一方の触媒に希土類を含まないため、耐水熱性が低くなって、十分な触媒活性が得られない問題があった。
【0009】
本発明は、従来材が抱えている前記事情に鑑みてなされたものであって、コーク生成の抑制に有効で、選択性(高液収率や低ガス)に優れた炭化水素油の流動接触分解触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような技術的背景のもと、発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、異なる水素移行反応活性をもつ触媒を混合することで、コーク生成を抑制して、高付加価値製品の収率を上げることを知見し、本発明を開発するに至った。
【0011】
前記課題を解決し上記の目的を実現するため開発した本発明は、下記のとおりのものである。すなわち、本発明は、水素移行反応活性の異なる2種の流動接触分解触媒を混合してなる炭化水素油用流動接触分解触媒であって、
一の触媒は、格子定数が2.435~2.459nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(a)であり、
他の触媒は、格子定数が2.440~2.478nmの範囲にあるフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(b)であり、
触媒(a)の水素移行反応活性が触媒(b)の水素移行反応活性より低いことを特徴とする炭化水素油用流動接触分解触媒である。
【0012】
なお、本発明に係る上記炭化水素油用流動接触分解触媒については、
(1)前記触媒(a)と前記触媒(b)との質量混合比((a)/(b))が10/90~90/10の範囲にあること、
(2)前記一の触媒および前記他の触媒の間の、水素移行反応活性の指標である(i-C4/C4=)比(ただし、i-C4およびC4=はそれぞれ炭化水素油の流動接触分解性能評価試験におけるイソブタンおよびブテンの生成質量を表す)の差が、0.10~0.85の範囲にあること、
(3)前記触媒(a)は、触媒組成基準で、前記フォージャサイト型ゼオライト(A)を15~60質量%含むこと、
(4)前記触媒(a)は、触媒組成基準で、前記希土類をREとして、0.5~2.0質量%含むこと、
(5)前記触媒(b)は、触媒組成基準で、前記フォージャサイト型ゼオライト(B)を15~60質量%含むこと、
(6)前記触媒(b)は、触媒組成基準で、前記希土類をREとして、0.5~12質量%含むこと、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、水素移行反応活性の異なる2種の流動接触分解触媒を混合した炭化水素油用流動接触分解触媒とすることにより、コーク収率を低くでき、選択性(高液収率、低ガス)に優れた炭化水素油用流動接触分解触媒を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】触媒の混合比率がコーク収率に与える影響を示すグラフである。
図2】触媒の混合比率がガソリン収率に与える影響を示すグラフである。
図3】触媒の混合比率がHCO+コークの収率に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る炭化水素油用流動接触分解触媒(以下、単に「本触媒」という)は、水素移行反応活性の異なる2種の流動接触分解触媒を混合してなり、特に、一の触媒は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(a)であり、他の触媒は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(b)であり、触媒(a)の水素移行反応活性が触媒(b)の水素移行反応活性より低いことを特徴とする。以下、本触媒について、詳しく説明する。
【0016】
<触媒の構成>
[触媒(a)]
本触媒を構成する触媒(a)は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなるものであり、これ自身も炭化水素油用流動接触分解触媒として機能するものである。以下、これらの各成分について詳細に説明する。
【0017】
[フォージャサイト型ゼオライト(A)]
フォージャサイト型ゼオライトとは、SiOとAlからなる骨格を有するものである。骨格を構成するSiOのモル数(MS)とAlのモル数(MA)とのモル比(MS)/(MA)は5~20であることが好ましく、6~15の範囲にあることがより好ましい。モル比(MS)/(MA)がこの範囲にあると、耐水熱性(高温で再生処理した際の触媒活性の維持率)がより高くなり、また触媒活性やガソリン選択性もより高くなる。
【0018】
モル比(MS)/(MA)が低いと、耐水熱性、触媒活性およびガソリン選択性が不充分となるおそれがある。この場合、流動接触分解プロセスでは分解反応後、再生塔で触媒に析出した炭素質を燃焼除去して再生するが、燃焼熱によって高温となるほか、炭素質が水素を含むため水分が生成し、この結果高温で水熱処理されることとなり、この際、ゼオライトの結晶性が低下することが知られている。一方、モル比(MS)/(MA)が高すぎても、耐水熱性は高いものの活性点が少なくなるためか、触媒活性が不充分となる場合がある。
【0019】
フォージャサイト型ゼオライト(A)の格子定数(UCS)は2.435~2.459nmであり、好ましくは、2.440~2.450nmである。このような格子定数の範囲にあると、ガソリン選択性が非常に高くなる。この格子定数が小さすぎると、触媒活性が不充分となる場合がある。一方、この格子定数が大きすぎると、耐水熱性や耐メタル性が不充分となる場合がある。上述の格子定数を求めるには、X線回折法により、アナターゼ型TiOを標準物質とし、ゼオライトの回折面(553)と(642)の面間隔により測定すればよい。
【0020】
このようなフォージャサイト型ゼオライト(A)としては、NaY型ゼオライトをNHイオン交換したNHYゼオライトを好ましく使用することができるが、これを水熱処理して得られる超安定化Y型ゼオライト(USY)であることが特に好ましい。
【0021】
触媒(a)中のフォージャサイト型ゼオライト(A)の含有量(CZA)は固形分(主にSiOとAl)として15~60質量%、さらには15~40質量%の範囲にあることが好ましい。フォージャサイト型ゼオライト(A)の含有量が固形分として15質量%未満の場合は、ゼオライトが少ないために触媒活性が不充分となる場合がある。フォージャサイト型ゼオライト(A)の含有量が固形分として60質量%を越えると、触媒活性が高すぎて過分解となり、選択性が低下する場合があり、また、ゼオライト以外のマトリックス成分の含有量が少なくなるために耐摩耗性が不充分となり、流動接触分解触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する場合がある。これを補うために触媒の補充量を増加することもできるが経済性が問題となる。
【0022】
[マトリックス成分]
触媒(a)を構成するマトリックス成分とは前記したフォージャサイト型ゼオライト(A)以外のものを意味し、このようなマトリックス成分には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、リン酸アルミニウム、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-アルミナなどの従来公知の無機酸化物、無機化合物を使用することができる。これらには、結合剤や増量剤、金属捕捉剤と呼ばれるものも含まれる。
【0023】
具体的には、シリカゲルやシリカゾル、シリカヒドロゾル、アルミナゲル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゲル、シリカ・アルミナゾル、リン酸アルミニウム化合物等に由来する従来公知の無機酸化物、無機化合物を使用することができる。なかでも、シリカゾルやシリカヒドロゾル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゾル、リン酸アルミニウム化合物等は、フォージャサイト型ゼオライトの担体(母材)あるいは結合剤としても機能し、触媒活性、耐摩耗性等に優れる他、残油分解活性、耐メタル性等にも優れた炭化水素接触分解用触媒が得られるので好適に用いることができる。
【0024】
結合剤として、シリカゾルなどのシリカ系バインダーを用いる場合には、シリカゾルの他に、ナトリウム型、リチウム型、酸型等のコロイダルシリカも使用することができる。これらのうちシリカゾルが好適である。
【0025】
結合剤として、塩基性塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物バインダーを用いる場合には、塩基性塩化アルミニウムの他に、重リン酸アルミニウム溶液、ジブサイト、バイアライト、ベーマイト、ベントナイト、結晶性アルミナなどを酸溶液中に溶解させた粒子や、ベーマイトゲル、無定形のアルミナゲルを水溶液中に分散させた粒子、あるいはアルミナゾルも使用することができる。これらは単独で、もしくは混合して、または複合して用いることができる。
【0026】
前記結合剤は、5~30質量%含有することが好ましい。より好ましくは10~25質量%である。その理由は、結合剤が5質量%より少ないと接触分解活性が高くなるものの、触媒のアトリッション(摩耗)強度が十分に保てないおそれがある。一方、30質量%より多いと、十分な接触分解活性が得られないおそれがある。
【0027】
触媒(a)では、活性アルミナを含むことが好ましく、このとき活性アルミナの含有量は固形分(Al)として1~30質量%、さらには2~20質量%の範囲にあることが好ましい。前記範囲で活性アルミナを含んでいると、ガソリン選択性の向上効果が大きく、さらに残油分解活性、耐メタル性にも優れるようになる。
【0028】
増量剤として、カオリンやベントナイト、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト等の粘土鉱物を含むことができる。増量剤としての粘土鉱物は、触媒(a)に15~45質量%含むことができる。その理由は、粘土鉱物が15質量%未満では、活性成分が多くなるため、コーク生成が過剰となり十分な性能を示さない場合があるためであり、一方、45質量%を超えると触媒中の固体酸量が少なくなりすぎて触媒活性が低下する恐れがある。
【0029】
金属捕捉剤として、アルミナ粒子やリン-アルミナ粒子、結晶性カルシウムアルミネート、セピオライト、チタン酸バリウム、スズ酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マンガン、マグネシア、マグネシア-アルミナなどを用いることができる。また、金属捕捉剤原料として、酸化雰囲気で焼成することによりアルミナなどとなるベーマイトなどの前駆体物質を用いることができる。触媒(a)が金属捕捉剤を含む場合、その含有量は、0.1~10質量%の範囲内とすることが望ましく、より好ましくは0.1~5質量%の範囲である。
【0030】
触媒(a)におけるマトリックス成分の含有量は、固形分として40~85質量%、さらには50~80質量%の範囲にあることが好ましい。
【0031】
マトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、フォージャサイト型ゼオライト(A)の割合が多くなりすぎて、触媒活性は高いものの嵩密度が低くなりすぎたり、耐摩耗性、流動性等が不充分となったりすることがあり、炭化水素接触分解用触媒、とくに炭化水素流動接触分解用触媒として実用的でない。一方、マトリックス成分の含有量が固形分として多すぎても、主要な活性成分であるフォージャサイト型ゼオライト(A)の割合が少なくなり、分解活性が不充分となる場合がある。
【0032】
[希土類]
触媒(a)は、さらに希土類を成分として含む。この希土類の含有量(CREA)は、触媒組成基準でREとして0.5~2.0質量%であることが好ましく、1.0~2.0質量%であることがより好ましい。希土類を含むことで、分解活性、ガソリンなどの選択性に優れた触媒とすることができる。希土類としては、ランタン、セリウム、ネオジムなどの希土類金属およびこれらの混合物などが挙げられる。通常、ランタン、セリウムを主成分とする混合希土類が用いられる。希土類は、触媒粒子を製造後、イオン交換により導入してもよいが、上記フォージャサイト型ゼオライト(A)を事前に希土類によりイオン交換していてもよい。
【0033】
希土類の含有量が少ないと、分解活性や選択性、耐水熱性、耐メタル性等が不充分となるおそれがある。本発明では、触媒(a)を後述する水素移行反応活性の低い触媒として構成するため、希土類の含有量上限を定める。
【0034】
[触媒(a)の製造方法]
触媒(a)の好適な製造方法の1例を以下に示す。
1. 調整工程
前記したシリカゾル(シリカ系バインダーの一例)、カオリン、活性アルミナ粉末をスラリー形成用の液体(例えば純水)に加え、さらに、硫酸にてpHを3.9に調整した超安定化Y型ゼオライトスラリーを加えて、混合スラリーを調整する。添加物の組成は、予め、所定の水素移行反応活性となるように把握したものを用いる。
【0035】
2. 噴霧乾燥、洗浄、乾燥工程
この混合スラリーを噴霧乾燥し球状粒子を得る。得られた球状粒子を洗浄し、さらに希土類金属(RE)塩化物の水溶液と接触させて、REとして0.5~2.0質量%となるようにイオン交換した後、乾燥して、触媒(a)を得る。得られた触媒(a)の平均粒子径は、後述する触媒(b)と混合できる範囲であれば特に制限されないが、発明の効果の観点より、40~100μm、さらには50~80μmの範囲にあることが好ましい。
【0036】
[触媒(b)]
本触媒を構成する触媒(b)は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分と希土類とを含んでなるものであり、これ自身も炭化水素油用流動接触分解触媒として機能するものである。以下、これらの各成分について詳細に説明する。
【0037】
[フォージャサイト型ゼオライト(B)]
触媒(b)を構成するフォージャサイト型ゼオライト(B)の格子定数(UCS)は2.440~2.478の範囲にあることが特徴である。格子定数の好ましい範囲は、2.447~2.460nmである。このような格子定数の範囲にあると、ガソリン選択性が非常に高くなる。この格子定数が小さすぎると、触媒活性が不充分となる場合がある。一方、この格子定数が大きすぎると、耐水熱性、耐メタル性が不充分となる場合がある。その他の好ましい構造などは、触媒(a)を構成するフォージャサイト型ゼオライト(A)と全く同様である。
【0038】
このようなフォージャサイト型ゼオライト(B)としては、NaY型ゼオライトをNHイオン交換したNHYゼオライトを好ましく使用することができるが、これを水熱処理して得られる超安定化Y型ゼオライト(USY)であることが特に好ましい。また、希土類金属をイオン交換等により担持させたレアアース交換Y型ゼオライト(REY)、あるいはレアアース交換超安定化Y型ゼオライト(REUSY)としてもよい。
【0039】
触媒(b)中のフォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量(CZB)は固形分(主にSiOとAl)として15~60質量%、さらには15~40質量%の範囲にあることが好ましい。フォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量が固形分として10質量%未満の場合は、ゼオライトが少ないために触媒活性が不充分となる場合がある。フォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量が固形分として50質量%を越えると、触媒活性が高すぎて過分解となり、選択性が低下する場合があり、また、ゼオライト以外のマトリックス成分の含有量が少なくなるために耐摩耗性が不充分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する場合がある。これを補うために触媒の補充量を増加することもできるが経済性が問題となる。
【0040】
[マトリックス成分]
マトリックス成分としては、基本的に、触媒(a)を構成するマトリックス成分と同様のものが好ましく用いられる。
【0041】
触媒(b)におけるマトリックス成分の含有量は、触媒組成基準で、固形分として40~85質量%、さらには50~80質量%の範囲にあることが好ましい。
【0042】
マトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、フォージャサイト型ゼオライト(B)の割合が多くなりすぎて、触媒活性は高いものの嵩密度が低くなりすぎたり、耐摩耗性、流動性等が不充分となったりすることがあり、炭化水素接触分解用触媒とくに炭化水素流動接触分解用触媒として実用的でない。一方、マトリックス成分の含有量が固形分として多すぎても、主要な活性成分であるフォージャサイト型ゼオライト(B)の割合が少なくなり、分解活性が不充分となる場合がある。
【0043】
[希土類]
触媒(b)は、さらに希土類を成分として含む。この希土類の含有量(CREB)は、触媒組成基準でREとして0.5~12質量%であることが好ましく、2.5~4.0質量%であることがより好ましい。希土類を含むことで、分解活性、ガソリンなどの選択性に優れた触媒とすることができる。希土類としては、ランタン、セリウム、ネオジムなどの希土類金属およびこれらの混合物などが挙げられる。通常、ランタン、セリウムを主成分とする混合希土類が用いられる。
【0044】
希土類の含有量が少ないと、分解活性、選択性、耐水熱性、耐メタル性等が不充分となるおそれがある。本発明では、触媒(b)を後述する水素移行反応活性の高い触媒として構成するため、希土類の含有量が触媒(a)より多い方が好ましい。
【0045】
[触媒(b)の製造方法]
触媒(b)の製造方法の1例を以下に示す。
1. 調整工程
前記した塩基性塩化アルミニウム水溶液(アルミニウム化合物バインダーの一例)を純水で希釈し、カオリン、活性アルミナ粉末およびレアアース交換型超安定化Y型ゼオライトスラリーを加えて、よく撹拌して、調合スラリーを調整する。添加物の組成は、予め、所定の水素移行反応活性となるように把握したものを用いる。
【0046】
2. 噴霧乾燥、焼成、洗浄、乾燥工程
上記の調合したスラリーを噴霧乾燥し球状粒子とする。次に得られた球状粒子の乾燥粉末を焼成し、温水懸濁-脱水濾過後、温水を掛水し、さらに乾燥して、触媒(b)を得る。得られた触媒(b)の平均粒子径は、前記触媒(a)と混合できる範囲であれば特に制限されないが、発明の効果の観点より、40~100μm、さらには50~80μmの範囲にあることが好ましい。
【0047】
<擬平衡化処理>
炭化水素油の流動接触分解触媒の性能を実験室の反応装置で評価する際には、前処理として擬平衡化と呼ばれる処理を行う。その擬平衡化は、流動接触分解触媒にVやNi等のメタルを担持してスチーム処理を行うことで、触媒活性を平衡触媒と同等のレベルまで低下させる処理である。この擬平衡化の処理により、平衡触媒の性状を再現することは、より精度の高い触媒活性評価を得るためには重要である。
【0048】
<比表面積の測定>
擬平衡化した触媒は、BET法、例えば、MOUNT ECH社製Macsorb HM model―1200を用いて、比表面積を測定する。また、マトリックス成分の比表面積は、例えば、日本ベル製ベルソープmini―II型を用いて、窒素の吸着等温線を測定し、得られた吸着側の等温線からVa-tプロットにより求める。なお、全体の比表面積からマトリックス成分の比表面積を差し引くことでゼオライト成分の比表面積を求めることができる。本発明では、触媒全体の比表面積(SA)は、100~250m/gの範囲にあることが好ましい。マトリックス成分の比表面積は30m/g以上が好ましく、さらに50m/g以上であることがより好ましい。
【0049】
<混合触媒の調整>
このような本発明に係る炭化水素接触分解用触媒は、上述した触媒(a)と触媒(b)とを混合して製造することができる。また、これらの触媒同士の混合方法は、公知の方法を用いることができる。触媒(a)と触媒(b)との質量混合比((a)/(b))は10/90~90/10の範囲にあることが好ましく30/70~70/30の範囲にあることがより好ましい。触媒(a)と触媒(b)との質量混合比がこの範囲にあると、発明の効果をより強く発揮できる。特に、50/50の比率において優れた選択性を示す。なお、本触媒は、上述した特定の2種の触媒を混合してなるものであるが、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を混合して使用しても差し支えない。
【0050】
<流動接触分解方法>
本発明に係る流動接触分解触媒を用いる流動接触分解については、通常の炭化水素油の流動接触分解条件を採用することができ、例えば、以下に述べる条件が好適である。
【0051】
接触分解に使用される原料油としては、通常の炭化水素原料油、例えば、水素化脱硫減圧蒸留軽油(DSVGO)や、減圧蒸留軽油(VGO)を用いることができる他、常圧蒸留残渣油(AR)、減圧蒸留残渣油(VR)、脱硫常圧蒸留残渣油(DSAR)、脱硫減圧蒸留残渣油(DSVR)、脱アスファルテン油(DAO)等の残渣油も使用することができ、これらの単独又は混合したものも使用できる。なお、本発明に係る流動接触分解触媒においては、ニッケルおよびバナジウムがそれぞれ0.5ppm以上含まれている残渣油も処理可能であり、原料油として残渣油を単独で用いる残渣油接触分解装置(Resid FCC。RFCC)にも使用できる。ここで、従来の流動接触分解触媒をRFCCで使用した場合には、残渣油中のニッケルおよびバナジウムが触媒に付着して触媒活性が低下するが、本発明の流動接触分解触媒では、バナジウムおよびニッケルがそれぞれ0.5ppm以上含有している残渣油を処理しても、優れた触媒性能を保持できる。また、本発明の流動接触分解触媒は、バナジウムおよびニッケルがそれぞれ300ppm以上含有されていても触媒性能を保持できる。本発明の流動接触分解触媒に含有されるバナジウムおよびニッケルの上限は、それぞれ10000ppm程度である。
【0052】
また、前述の炭化水素原料油を接触分解する際の反応温度は470~550℃の範囲が好適に採用され、反応圧力は一般的にはおよそ1~3kg/cmの範囲が好適であり、触媒/油の質量比(触媒/油比)は2.5~9.0の範囲が好ましく、更に接触時間は10~60hr-1の範囲が好ましい。
【0053】
[水素移行反応活性:イソブタン/ブテン(i-C4/C4=)比]
本発明では、ACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)を用い、同一原油かつ同一反応条件下での触媒の性能評価試験を行い、触媒の水素移行反応活性の指標として、分解生成物のイソブタンの質量とブテンの質量の比を(i-C4/C4=)比として評価する。触媒(a)と触媒(b)の(i-C4/C4=)比の差が、0.10~0.85の範囲にあると、低コーク比率、かつ、低HCO収率が得られる。一方、下限より差が小さいと、同じコーク比率であっても、HCO収率が高くなってしまうことがある。また、上限より大きい場合には、分解活性が低すぎるおそれがある。好ましくは、(i-C4/C4=)比の差が、0.15~0.70の範囲である。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(製造例)
<触媒a1>
a.調合工程
水ガラス(SiO濃度:17質量%)2941gと硫酸(硫酸濃度:25質量%)1059gを同時に連続的に加えて、SiO濃度が12.5質量%のシリカゾル(シリカ系バインダーの一例)4000gを調整した。このシリカゾルにカオリン(固形分濃度:84%質量)893g、活性アルミナ粉末(固形分:81%質量)309gを加え、さらに、硫酸にてpHを3.9に調整した超安定化Y型ゼオライトスラリー(UCS:2.443nm、固形分濃度:33%質量)を3030g加えて混合スラリーを調整した。
【0055】
b.噴霧乾燥、洗浄、乾燥工程
前記混合スラリーを液滴として、入口温度が230℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、平均粒径が70μmの球状粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子を質量で10倍量の温水(60℃)に懸濁し、脱水濾過した。次いで、質量で10倍量の温水(60℃)を掛水した後、さらに懸濁し、希土類金属(RE)塩化物の水溶液(セリウムおよびランタンの塩化物を含む)と接触させて、REとして1.1質量%となるようにイオン交換処理した。その後、触媒粒子を雰囲気135℃の乾燥機で乾燥して、触媒a1を得た。
【0056】
c.比表面積
擬平衡化した触媒a1について、前述の比表面積測定を行ったところ223m/gであった。また、マトリックス成分の表面積は31m/gであり、ゼオライト成分の比表面積は192m/gであった。
【0057】
<触媒a2>
a.調合工程
水ガラス(SiO濃度:17質量%)2941gと硫酸(硫酸濃度:25質量%)1059gを同時に連続的に加えて、SiO濃度が12.5質量%のシリカゾル(シリカ系バインダーの一例)4000gを調整した。このシリカゾルにカオリン(固形分濃度:84%質量)1042g、活性アルミナ粉末(固形分:81%質量)309gを加え、さらに、硫酸にてpHを3.9に調整した超安定化Y型ゼオライトスラリー(UCS:2.458nm、固形分濃度:33%質量)を2652g加えて混合スラリーを調整した。
【0058】
b.噴霧乾燥、洗浄、乾燥工程
前記混合スラリーを液滴として、入口温度が230℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、平均粒径が70μmの球状粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子を質量で10倍量の温水(60℃)に懸濁し、脱水濾過した。次いで、質量で10倍量の温水(60℃)を掛水した後、さらに懸濁し、希土類金属(RE)塩化物の水溶液(セリウムおよびランタンの塩化物を含む)と接触させて、REとして1.1質量%となるようにイオン交換処理した。その後、触媒粒子を雰囲気135℃の乾燥機で乾燥して、触媒a2を得た。
【0059】
c.比表面積
擬平衡化した触媒a2について、前述の比表面積測定を行ったところ181m/gであった。また、マトリックス成分の表面積は149m/gであり、ゼオライト成分の比表面積は32m/gであった。
【0060】
<触媒b1>
a.調合工程
23.5質量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液447gと純水1075gを混合した。次いで、この混合溶液をよく攪拌しながら、カオリン(固形分濃度:84%質量)530g、活性アルミナ粉末(固形分濃度:81%質量)247gおよびRE交換超安定化Y型ゼオライト粉末(RE:11.2質量%、UCS:2.460nm、固形分濃度:85質量%)294gを順次添加した。その後、よく撹拌し、調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理した結果、固形分濃度は38質量%であった。
【0061】
b.噴霧乾燥、焼成、洗浄、乾燥工程
前記のようにして得られた調合スラリーを液滴として、入口温度が230℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が70μmの球状粒子を得た。この乾燥粉末は電気炉にて空気雰囲気下、400℃で1時間焼成した後、焼成品に対して質量にて10倍量の温水(60℃)に懸濁させ、脱水濾過を施した。さらに、質量で10倍量の温水(60℃)を掛水した後、ケーキを回収し、雰囲気温度140℃に保持した乾燥機にて10時間乾燥させて、触媒b1を得た。
【0062】
c.比表面積
擬平衡化した触媒b1について、前述の比表面積測定を行ったところ167m/gであった。マトリックス成分の表面積は90m/gであり、計算されるゼオライト成分の比表面積は77m/gであった。
【0063】
<触媒b2>
a.調合工程
上記触媒b1の調合工程において、RE交換超安定化Y型ゼオライト粉末(RE:18.2質量%、UCS:2.476nm、固形分濃度:85質量%)に変更した以外は同様に実施した。
【0064】
b.噴霧乾燥、焼成、洗浄、乾燥工程
上記触媒b1と同様の噴霧乾燥、焼成、洗浄、乾燥工程を経て、触媒b2を得た。
【0065】
c.比表面積
擬平衡化した触媒b2について、前述の比表面積測定を行ったところ159m/gであった。マトリックス成分の表面積は86m/gであり、計算されるゼオライト成分の比表面積は73m/gであった。
【0066】
<触媒b3>
a.調合工程
触媒a1と同様に調合した。
【0067】
b.噴霧乾燥、焼成、洗浄、乾燥工程
触媒a1とは、REとして2.5質量%となるようにイオン交換した以外は同様の処理を施し、触媒b3を得た。
【0068】
c.比表面積
擬平衡化した触媒b3について、前述の比表面積測定を行ったところ217m/gであった。マトリックス成分の表面積は29m/gであり、計算されるゼオライト成分の比表面積は188m/gであった。
【0069】
<ブレンド触媒a1b1>
得られた触媒a1の固形分50質量部に対し、触媒b1の固形分50質量部を混合し、本発明に係るブレンド触媒a1b1を得た。
<ブレンド触媒a1b2>
得られた触媒a1の固形分50質量部に対し、触媒b2の固形分50質量部を混合し、本発明に係るブレンド触媒a1b2を得た。
<ブレンド触媒a2b1>
得られた触媒a2の固形分50質量部に対し、触媒b1の固形分50質量部を混合し、本発明に係るブレンド触媒a2b1を得た。
<ブレンド触媒a1b3>
得られた触媒a1の固形分50質量部に対し、触媒b3の固形分50質量部を混合し、本発明に係るブレンド触媒a1b3を得た。
【0070】
(比較例)
<ブレンド触媒b3b1>
得られた触媒b3の固形分50質量部に対し、触媒b1の固形分50質量部を混合し、比較例のブレンド触媒b3b1を得た。
【0071】
[触媒活性評価試験]
<性能評価試験>
前記した製造例、比較例に係る各触媒単体および各ブレンド触媒について、ACE-MATを用い、同一原油、同一反応条件下で触媒の性能評価試験を行った。ただし、評価にあたって、すべて、790℃で13時間、100%水蒸気の条件で保持することで、擬平衡化処理を施したものを用いた。
性能評価試験における運転条件は以下の通りである。
反応温度:520℃
再生温度:700℃
原料油:水素化脱硫減圧蒸留軽油(DSVGO)100%
触媒/油比:3.75および5.00質量%/質量%
但し、
・転化率(質量%)=(A-B)/A×100
A:原料油の質量
B:生成油中の216℃以上の留分の質量
・水素(質量%)=C/A×100
C:生成ガス中の水素の質量
・C1+C2(質量%)=D/A×100
D:生成ガス中のC1(メタン)、C2(エタン、エチレン)の質量
・LPG(液化石油ガス、質量%)=E/A×100
E:生成ガス中のプロパン、プロぺン、ブタン、ブテンの質量
・ガソリン(質量%)=F/A×100
F:生成油中のガソリン(沸点範囲:C5~216℃)の質量
・LCO(質量%)=G/A×100
G:生成油中のライトサイクルオイル(沸点範囲:216~343℃)の質量
・HCO(質量%)=H/A×100
H:生成油中のヘビーサイクルオイル(沸点範囲:343℃以上)の質量
・コーク(質量%)=I/A×100
I:触媒混合物上に析出したコーク質量
・(i-C4/C4=)比 =イソブタン質量/ブテン質量
【0072】
上記で調整した触媒a1、a2、b1、b2およびb3単体の触媒活性評価試験の結果を表1に示す。表1中の(i-C4/C4=)比は、触媒/油比:3.75におけるイソブタン質量/ブテン質量を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記で調整した本発明に係るブレンド触媒a1b1(a1:b1の質量比50:50)、ブレンド触媒a1b2(a1:b2の質量比50:50)、ブレンド触媒a2b1(a2:b1の質量比50:50)、ブレンド触媒a1b3(a1:b3の質量比50:50)、比較例のブレンド触媒b3b1(b3:b1の質量比50:50)の触媒活性評価試験の結果を表2に示す。本発明にかかるブレンド触媒は、表2に併記するように単体触媒の(i-C4/C4=)比の差が0.18~0.75であり、一方、比較例の混合触媒b3b1は、単体触媒b3とb1の(i-C4/C4=)比の差が0.02とほとんど差がない。
【0075】
【表2】
【0076】
上記試験結果を整理して、図1図2および図3に示す。図1はブレンド触媒のブレンド比率とコーク収率の関係を示す。横軸には、ブレンド用触媒のうち、水素移行反応活性の高い触媒の比率を百分率で表す。発明例のブレンド触媒は、すべて下に凸のグラフとなっており、均等のブレンドにより単体触媒の相加平均よりコーク収率が低くなっていることがわかる。一方、比較例のブレンド触媒b3b1では、上に凸のグラフとなっており、ブレンドすることで単体触媒よりコーク収率が高くなってしまうことがわかる。図2は、図1と同様、横軸にブレンド比率を縦軸にガソリン収率をとってプロットしたグラフである。発明例のブレンド触媒はすべて上に凸のグラフとなっており、単体触媒の相加平均よりガソリン収率が高いことがわかる。一方、比較例のブレンド触媒b3b1では、下に凸のグラフとなっており、ブレンドすることで単体触媒よりガソリン収率が低くなってしまうことがわかる。図3は、図1と同様、横軸にブレンド比率を縦軸にHCO+コーク収率をとってプロットしたグラフである。発明例のブレンド触媒は、ブレンド触媒a2b1を除き、下に凸のグラフとなっており、重質油の分解と低コークが両立していることがわかる。また、比較例のブレンド触媒は上に凸のグラフとなっており、ブレンドによる改善が見られない。ブレンド触媒a2b1で重質油の分解にブレンドの効果がなかった理由は、水素移行反応活性の差が大きすぎたためと考えられる。
【0077】
以上説明したように、本発明の混合触媒によれば、コーク収率を低くでき、特に高付加価値製品であるガソリンの収率を高くすることができる。
図1
図2
図3