(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】座席装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20220816BHJP
A47C 3/18 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B60N2/14
A47C3/18 Z
(21)【出願番号】P 2019156970
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100084261
【氏名又は名称】笹井 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 照夫
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-253944(JP,A)
【文献】特開昭61-202938(JP,A)
【文献】実開昭61-063945(JP,U)
【文献】実開昭59-040135(JP,U)
【文献】実開平03-078693(JP,U)
【文献】特開平07-300037(JP,A)
【文献】米国特許第05904399(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/14
A47C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席側の回転部品が床面側の固定部品上に回転可能に支持され、前記回転部品の回転に伴い座席の向きが変換され、前記回転部品と共に座席を所定の各回転位置に拘束可能なロック機構を備えた座席装置において、
前記ロック機構は、前記固定部品に設けられ前記各回転位置ごとに配置された複数の受け部と、前記回転部品に設けられ前記各受け部に対して係脱可能に変位する係止部と、を備え
、
前記係止部は、前記回転部品の回転中心の半径方向と直交する水平軸を介して前記半径方向かつ下向きに揺動するロックピンを備え、
前記受け部は、前記ロックピンの下端が、その揺動軌跡に沿って挿通可能な長溝を備え、該長溝の幅は、前記ロックピンの下端の外径に応じた寸法であり、
前記ロックピンは、下端が最下位置に揺動したとき前記長溝に係合する一方、下端が最上位置に揺動したとき前記長溝より離脱し、
前記ロックピンは、前記回転部品に後付けされるブラケットに予め一体に組み付けられてユニットをなし、
前記ブラケットおよび/または該ブラケットを後付けする前記回転部品の取付箇所に、前記長溝に対応して前記ロックピンの下端が下方へ挿通可能な貫通孔が設けられていることを特徴とする座席装置。
【請求項2】
前記ロックピンは、付勢手段によって前記最下位置に常時付勢され、
前記ロックピンを前記付勢手段の付勢力に抗して前記最上位置に移動させる操作手段を備えることを特徴とする請求項
1に記載の座席装置。
【請求項3】
前記長溝は、前記固定部品の上面側に固定されるベース部材に設けられ、
前記ベース部材にて前記長溝の幅方向の両側端に、前記回転部品の回転に伴い円周方向から移動してきた前記ロックピンの下端を上方へ導くテーパを設けたことを特徴とする請求項
1または
2に記載の座席装置。
【請求項4】
前記回転部品上に前記座席を支持する支持部材を、前記回転部品上に後付けした前記ブラケットの両側に配置したことを特徴とする請求項
1,2または3に記載の座席装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席を回転させて向きを変換することができ、座席を所定の各回転位置に拘束可能な座席装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両等に装備される車両用シートとして、例えば進行方向に合わせて座席を回転させて向きを変換できる座席装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような座席装置では、座席の回転を拘束するロック機構のロックピンは、床面ないし脚台側から回転する座席側に向かって上下方向に延びる状態に設けられていた。
【0003】
ロックピンを受ける装置本体は、一般的なロック機構における単なる受け穴ではなく、ロックピンよりも構造が嵩張るものであり、脚台側と座席側の間に位置するように座席側の下方に設けられていた(特許文献1の段落0027参照)。ここでロックピンは、一般的なロック機構と同様に、上下方向に動く差し込みピン方式とすることもできる(特許文献1の段落0041参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の座席装置では、ロック機構のロックピンを床面ないし脚台側で上下方向に延びる状態に設けていたから、ロックピンの高さ分だけ実質的な配置スペースが必要となる。特にロックピンを脚台に設ける場合、ロックピンを含む脚台全体を薄型化することができず、床面上の限られたスペースが侵食されて有効活用できないだけでなく、他の機構の配置が限定されるという設計上の問題もあった。
【0006】
また、ロックピンを上下方向に動く差し込みピン方式とした場合、ロックピンだけでなく、ロックピンを直進運動させるための機構の分まで床面(脚台)側に実質的な配置スペースが必要となる。そのため、いっそう床面上の限られたスペースが侵食されという問題が生じることになる。
【0007】
さらに、特許文献1に記載されたロック機構の特有の問題として、ロックピンを受ける装置本体が、一般的な受け穴ではなく嵩張るものであり、しかも、ロックピンに対向させる構造上、座席下方に設ける必要がある。そのため、座席下方から床面(脚台)上の間にも余計な配置スペースが必要となり、なおさら床面上の限られたスペースが侵食されという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、床面上の限られたスペースを有効活用できると共に、設計上の自由度も高めることができる座席装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、
座席側の回転部品が床面側の固定部品上に回転可能に支持され、前記回転部品の回転に伴い座席の向きが変換され、前記回転部品と共に座席を所定の各回転位置に拘束可能なロック機構を備えた座席装置において、
前記ロック機構は、前記固定部品に設けられ前記各回転位置ごとに配置された複数の受け部と、前記回転部品に設けられ前記各受け部に対して係脱可能に変位する係止部と、を備え、
前記係止部は、前記回転部品の回転中心の半径方向と直交する水平軸を介して前記半径方向かつ下向きに揺動するロックピンを備え、
前記受け部は、前記ロックピンの下端が、その揺動軌跡に沿って挿通可能な長溝を備え、該長溝の幅は、前記ロックピンの下端の外径に応じた寸法であり、
前記ロックピンは、下端が最下位置に揺動したとき前記長溝に係合する一方、下端が最上位置に揺動したとき前記長溝より離脱し、
前記ロックピンは、前記回転部品に後付けされるブラケットに予め一体に組み付けられてユニットをなし、
前記ブラケットおよび/または該ブラケットを後付けする前記回転部品の取付箇所に、前記長溝に対応して前記ロックピンの下端が下方へ挿通可能な貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る座席装置によれば、床面上の限られたスペースを有効活用できると共に、設計上の自由度も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る座席装置の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る座席装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る座席装置の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る座席装置の全体を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る座席装置の脚台を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る座席装置の脚台を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る座席装置の脚台を示す正面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る座席装置の脚台を示す底面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る座席装置の台枠およびフレームを示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る座席装置の台枠およびフレームを示す側面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る座席装置の台枠およびフレームを示す平面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る座席装置の台枠およびフレームを示す底面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構を示す正面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構を示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構を示す側面図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のブラケットを示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のブラケットを示す正面図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のブラケットを示す平面図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のブラケットを示す側面図である。
【
図21】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のロックピンを示す斜視図である。
【
図22】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のロックピンを示す側面図である。
【
図23】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構のロックピンを示す正面図である。
【
図24】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構の受け部を示す斜視図である。
【
図25】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構の受け部を示す平面図である。
【
図26】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構の受け部を示す正面図である。
【
図27】本発明の実施形態に係る座席装置のロック機構の受け部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1~
図27は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係る座席装置10は、座席を回転させて向きを変換することができ、座席を所定の各回転位置に拘束可能なものである。なお、座席の種類は特に限定されないが、以下、鉄道車両の客室内に装備する1人掛けの車両用シートに適用した場合を例に説明する。
【0013】
[座席装置10の概要]
図1および
図2に示すように、座席装置10は、床面側の脚台11上に座席側の台枠20が回転可能に支持され、台枠20の回転に伴い座席の向きが変換され、台枠20と共に座席を所定の各回転位置に拘束可能なロック機構30を備えている。本実施形態では、脚台11が本発明における「床面側の固定部品」の一例に相当し、台枠20が本発明における「座席側の回転部品」の一例に相当する。
【0014】
図3および
図4に示すように、台枠20上には座席のフレーム12が固定されている。フレーム12は、その下端側が台枠20の上面に直接固定されるほか、特にフレーム12の両側壁12a,12aの下端側は、それぞれ両側より支持部材13を介して台枠20上に一体に固定されている。本実施形態では、支持部材13が、本発明における「回転部品上に座席を支持する支持部材」の一例に相当する。
【0015】
フレーム12に装着される座席自体は図示省略したが、座席は1人掛けの車両用シートとして、1人分の座部の後端側に、座部とほぼ同幅の背凭れがリクライニング可能に支持されている。このような座席は、例えば、車両客室内の床面上に通路を挟んで左右に1列ずつ、そして進行方向に所定間隔おきに複数列が並ぶように設置される。
【0016】
座席装置10における座席の向きは、例えば進行方向に合わせて一方向を向く一回転位置と、この一回転位置から180度回転させて逆方向を向く逆回転位置のほか、各回転位置ごとに左右に所定角度(例えば30度)ずらした補助回転位置を含む合計6つの回転位置に拘束可能に設定されている。
【0017】
[脚台11の構成]
脚台11は、客室内の床面上に固定される固定部品であり、例えば円盤形の金属板により形成されている。脚台11は、床面と平行な略水平に配置され、下面側を床面に直に固定しても良く、あるいは別部材を介して床面に固定しても良い。何れにせよ脚台11自体は、薄い板状であるため高さ方向の配置スペースは少なくて済む。
【0018】
脚台11上に、回転機構を介して台枠20が回転可能に支持されている。ここで回転機構は一般的な構成のものであり、例えば上下一対のリング状の回転盤が、その間にベアリング等を介在させて互いに回転可能に組み合わせて構成されている。かかる回転機構の下側回転盤14が脚台11に取り付けられている。なお、図示省略したが回転機構の上側回転盤は後述する台枠20に取り付けられている。
【0019】
図5~
図8に示すように、脚台11の中央には円形の開口11aが設けられており、この開口11aの周りに回転機構の下側回転盤14が取り付けられている。また、脚台11の上面側には、座席が各回転位置に拘束された時、台枠20の下面側に当接して座席のガタ付きを防止する当接部材15が設けられている。当接部材15は、下側回転盤14を取り囲む略正方形上に沿って配置されている。なお、当接部材15は、例えば所定の厚さで細幅状に延びる樹脂製のダンパーからなる。
【0020】
脚台11の上面側の両端側には、ロック機構30を構成する複数の受け部31が設けられている。ここで受け部31は、座席が拘束される各回転位置ごとに配置されている。すなわち、脚台11において座席の回転位置の基準とする両端の一方に、座席が一方向を向く一回転位置に対応する受け部31Aが配置され、両端の他方に、座席が一回転位置から180度回転して逆方向を向く逆回転位置に対応する受け部31Bが配置されている。
【0021】
受け部31Aの左右には、一回転位置から左右に所定角度(例えば30度)ずらした補助回転位置に対応する受け部31C,31Dが配置されている。また、受け部31Bの左右には、逆回転位置から左右に所定角度(例えば30度)ずらした補助回転位置に対応する受け部31E,31Fが配置されている。
【0022】
このような座席の各回転位置と、各回転位置に対応した受け部31A~31Fの配置とは、本実施形態における一例であり、図示した前述のものに限定されることはない。受け部31A~31F自体の詳細については後述する。なお、脚台11の上面側には、台枠20の回転方向を規制するためのストッパ17や、座席の回転位置を検出するセンサ18等の関連部品も必要に応じて取り付けられている。
【0023】
[台枠20の構成]
台枠20は、図示省略した座席を支持する回転部品であり、例えば脚台11にほぼ合致する円盤形の金属板により形成されている。台枠20は、脚台11上に回転機構を介して回転可能に支持されている。
図11および
図12に示すように、台枠20の中央にも、脚台11の開口11aに合致する円形の開口20aが設けられており、この開口20aの周囲に、図示省略したが回転機構の上側回転盤が取り付けられている。
【0024】
図12に示すように、脚台11の下面側には、座席が各回転位置に拘束された時、脚台11の上面側にある当接部材15に重なり座席のガタ付きを防止する被当接部材16が設けられている。被当接部材16は、開口20aを取り囲む略正方形上に沿って配置されている。なお、被当接部材16も前記当接部材15と同様に、例えば所定の厚さで細幅状に延びる樹脂製のダンパーからなる。
【0025】
図9および
図10に示すように、台枠20の上面側には、前述した座席のフレーム12が直接および支持部材13を介して固定されている。ここでフレーム12は、例えばアルミニウム等の金属材を組み合わせてなる。また、支持部材13は、例えば鉄等の金属製の板状のブラケットからなる。
【0026】
図11に示すように、支持部材13は、フレーム12の両側壁12a,12aの下端側を両側から支持するように、フレーム12の両側にそれぞれ一対ずつ固定されている。また、台枠20の上面側の両端のうち一端側には、ロック機構30を構成する一の係止部40が設けられている。なお、台枠20には、座席の回転位置を検出するセンサ18(
図12参照)等の関連部品も必要に応じて取り付けられている。
【0027】
[ロック機構30の構成]
図1~
図3に示すように、本実施形態におけるロック機構30は、前記脚台11に設けられ座席の各回転位置ごとに配置された複数の受け部31と、前記台枠20に設けられ各受け部31に対して係脱可能に変位する一の係止部40と、を備えている。ここで係止部40の主要部をなすロックピン41は、従来では床面側の脚台に設けられていたが、本実施形態では脚台11ではなく座席側にて回転する台枠20に設けられている。
【0028】
<係止部40について>
係止部40は、台枠20の回転中心の半径方向と直交する水平軸42を介して、前記半径方向かつ下向きに揺動するロックピン41を備えている。ここでロックピン41は、台枠20に後付けされるブラケット400に予め一体に組み付けられてユニットをなしている。係止部40は、台枠20の上面側の一端側で前記一対の支持部材13の間に配置されている。
【0029】
詳しく言えばブラケット400は、
図17~
図20に示すように、両側方向に長い矩形の底面壁401と、底面壁401の後端縁より略直角に立ち上がる縦壁402と、底面壁401の前端縁より略直角に立ち上がるフランジ403と、を備える。底面壁401の両側方向の中央には、その前後の縦壁402とフランジ403の間に亘り一対の支持片404,405が一体に立設されている。
【0030】
各支持片404,405の前端側には、ロックピン41が水平軸42を介して下向きで揺動可能に支持されている。ここで水平軸42は、台枠20の回転中心の半径方向と直交するように配置され、ロックピン41は、台枠20の回転中心の半径方向かつ下向きに揺動する。底面壁401にて各支持片404,405の間には、ロックピン41の下端が、その揺動軌跡に亘り下方へ挿通可能な貫通孔406が設けられている。貫通孔406は、長溝32に対応して少なくとも長溝32に合致する面積より大きく設けられている。
【0031】
図21~
図23に示すように、ロックピン41は、そのピン部411の基端が立方体のブロック412に一体に固定され、ブロック412の両側には、一対の保持片413,413が一体に固定されている。各保持片413は、それぞれ先端側がブロック412より前方に突出し、先端側からピン部411の軸方向と直交するようにブロック412より後方へ延出し、その基端側が上方に立ち上がっている。
【0032】
各保持片413の後方寄りの部位(基端側より下側)が、水平軸42を介して前記支持片404,405間に揺動可能に枢支されている。このようにロックピン41は、全体的には側面視で略L字形に設けられており、略L字形の一端がピン部411の下端となり、略L字形の他端が揺動中心となっている。
【0033】
図1に示すように、ロックピン41は、水平軸42を揺動中心として、ピン部411の先端が真下を向く最下位置(
図1中に実線で示す)と、ピン部411の先端が後上方に傾き受け部31から離脱する最上位置(
図1中に想像線で示す)とに揺動する。なお、水平軸42の両端は、
図3中に示すカラー414およびeリング415を介して各支持片404,405に枢支されている。
【0034】
図13~
図16に示すように、ロックピン41は、コイルバネ43によってピン部411の先端が真下を向く最下位置に常時付勢されている。ロックピン41は、自重によってピン部411の先端が下方に垂れるが、コイルバネ43によって通常は最下位置に強制的に維持されている。コイルバネ43は、一端が片方の保持片413の上方を向く基端に連結され、他端が片方の支持片405の後端側に連結されている。本実施形態では、コイルバネ43が、本発明における「付勢手段」の一例に相当する。
【0035】
また、係止部40は、ロックピン41をコイルバネ43の付勢力に抗して最上位置に移動させる操作ケーブル50を備えている。操作ケーブル50は、先端側の途中がブラケット400の縦壁402の上端側にある挿通溝407に案内された状態で、先端にある留め具51が、ロックピン41にある片方の保持片413(コイルバネ43が連結されてない方)の先端にピン52を介して連結されている。
【0036】
操作ケーブル50の図示省略した基端側は、例えば足踏操作用のペダルや手動操作用のレバーに連結されており、ペダル等の操作によって、コイルバネ43の付勢力に抗してロックピン41を最下位置から最上位置に揺動させることができる。本実施形態では、操作ケーブル50が、本発明における「操作手段」の一例に相当する。なお、操作ケーブル50の操作は、手動によるものに限らず、電動によっても行えるように構成しても良い。
【0037】
図3に示すように、係止部40のブラケット400は、台枠20の上面側にて一端側に後付けされている。ここでブラケット400は、その両側方向が台枠20の回転中心の半径方向と直交し、かつ縦壁402が回転中心側を向いて側壁12aに当接する状態で固定されている。
【0038】
また、係止部40の両側には、前述した一対の支持部材13,13が配置されている。ここで各支持部材13は、係止部40を保護するガードを兼ねる構成となっている。ブラケット400が重なる台枠20の取付箇所には、前記底面壁401にある貫通孔406の内側に位置しロックピン41の下端が下方へ挿通可能な貫通孔21(
図1参照)が設けられている。ここで貫通孔21は、長溝32に対応してほぼ合致するように設けられている。
<受け部31について>
受け部31は、前述したように座席の各回転位置ごとに配置され、それぞれ係止部40のロックピン41(正確にはピン部411)の先端が係脱するものである。受け部31は、ロックピン41の下端が、その揺動軌跡に沿って挿通可能な長溝32を備えている。長溝32の幅は、ピン部411の下端の外径に応じた寸法、すなわちピン部411の下端の外径より若干大きく、ピン部411の下端が嵌入して係合したとき少なくとも幅方向にはガタつきが生じない程度のクリアランスとなっている。
【0039】
詳しく言えば受け部31は、脚台11の上面側に固定されるベース部材310からなる。
図2に示すように、ベース部材310は、脚台11の上面側に固定する例えば合成樹脂製の成形品である。詳しく言えばベース部材310は、所定厚さの矩形板状であり、その両側方向(長手方向)が台枠20の回転中心の半径方向と直交する状態に配置される。ここで長溝32は、ベース部材310の両側方向の中心で前後方向(短手方向)に延び、かつ厚さ方向に貫通する状態に穿設されている。
【0040】
図24~
図27に示すように、ベース部材310にて長溝32の幅方向の両側端に、台枠20の回転に伴い円周方向から移動してきたロックピン41の下端を上方へ導くテーパ311が設けられている。また、ベース部材310の両側端にて、台枠20の回転中心側を向く前端縁の角は切り欠かれ、前記テーパ311と共にロックピン41を乗り上げさせるガイド312となっている。
【0041】
テーパ311およびガイド312によって、最下位置にあるピン部411の下端が円周方向からベース部材310に当接すると、コイルバネ43の付勢力に抗してベース部材310上に乗り上げて、そのままピン部411の下端は、ベース部材310の上端面に開口した長溝32に貫入するように設計されている。なお、
図1および
図2に示すように、脚台11の上面側にて各受け部31の取付箇所には、それぞれベース部材310の下面側を浅く嵌入させて位置決めする凹部が形成されている。
【0042】
[座席装置10の作用]
次に、本実施形態に係る座席装置10の作用を説明する。
図5に示すように、床面上に固定する脚台11には、ロック機構30のうち上下方向に嵩張らない受け部31等を配置するだけである。よって、
図7に示すように、脚台11を、その上面側の取付部品も含めて全体的に高さ(厚さ)を抑えて、板状に薄型化することができる。
【0043】
図4に示すように、脚台11上には、座席側の台枠20を直に重ねるように回転可能に支持する。ここで台枠20の上面側に、ロック機構30のうち上下方向に変位して下方の受け部31に係脱する係止部40を設けたことにより、前述した脚台11の薄型化を実現することが可能となる。
【0044】
このような脚台11の薄型化により、床面上において回転する座席側のスペースを、なるべく広く確保することが可能となる。かかるスペースを、例えば当該座席あるいは後方座席の着座者の足元空間の拡大等に有効活用したり、他の機構の配置に利用することで設計上の自由度を高めることができる。
【0045】
<具体的な動作>
座席は、台枠20を脚台11に対して回転させることにより、例えば進行方向に合わせて向きを変換することができる。そして、ロック機構30により、座席を台枠20と共に各回転位置に拘束することができる。すなわち、
図1において、ロック機構30により、台枠20が何れかの回転位置に拘束されているとき、係止部40のロックピン41は、そのピン部411の先端が真下を向く最下位置(
図1中に実線で示す)にあり、受け部31の長溝32に係合している。
【0046】
このとき、ロックピン41は、自重で下方に垂れるだけでなく、コイルバネ43の付勢力によって最下位置に強制的に維持されている。よって、ピン部411の先端が長溝32から不用意に離脱する虞はない。ここで長溝32の幅は、ピン部411の下端の外径に応じた寸法であるため、ピン部411から長溝32に対して力がかかる円周方向へのガタつきを防止することができる。
【0047】
ロックピン41が設けられているブラケット400には、長溝32に対応してロックピン41の下端が下方へ挿通可能な貫通孔406があるので、ロックピン41の揺動がブラケット400に干渉して妨げられることはない。同様に、ブラケット400を後付けする台枠20の取付箇所にも貫通孔21があるので、ロックピン41の下端を下方へ挿通させることができる。
【0048】
本座席装置10によれば、座席の向きはロック機構30によって、進行方向を向く一回転位置と、これと逆方向を向く逆回転位置のほか、各回転位置ごとに左右に所定角度(例えば30度)ずらした補助回転位置に拘束することができる。ここで一回転位置に対して窓側を向く補助回転位置とすれば、着座者は景色を楽しむことができる。また、一回転位置に対して通路側を向く補助回転位置とすれば、着座者は通路にアクセスしやすくなる。
【0049】
座席を別の回転位置に変換するには、先ずロック機構30による拘束を解除する。すなわち、
図1において、操作ケーブル50を図示省略したペダル等を操作して引くと、ロックピン41はコイルバネ43の付勢力に抗して、水平軸42を揺動中心として
図1中で時計回り方向に揺動する。そして、ロックピン41が最上位置(
図1中に想像線で示す)まで揺動すると、ピン部411の先端は受け部31の長溝32から離脱して拘束が解除される。
【0050】
ロック機構30による拘束が解除されたとき、座席を台枠20と共に脚台11に対して回転させて、所望の回転位置に変換することができる。台枠20が所望の回転位置まで回転すると、ロック機構30により、台枠20は当該回転位置に回転不能に拘束される。すなわち、台枠20の回転に伴い円周方向に移動するロックピン41が、所望の回転位置における受け部31の長溝32に嵌入して係合する。
【0051】
詳しく言えば、ロックピン41が所望の回転位置にある受け部31に到達すると、そのベース部材310の両側端にあるテーパ311およびガイド312に当接して乗り上げる。すると、ロックピン41はコイルバネ43の付勢力に抗して、水平軸42を揺動中心として
図1中で一時的に時計回り方向に揺動するが、ピン部411の先端が長溝32に至ると、ロックピン41はコイルバネ43の付勢力により、水平軸42を揺動中心として
図1で反時計回り方向に揺動し、長溝32に嵌入して係合する。
【0052】
ここでロックピン41の揺動軌跡に干渉しないように長溝32を延ばす方向は、ピン部411から長溝32に対して力がかかる円周方向に対して略直交している。よって、前述したように長溝32の幅は、ピン部411の下端の外径にほぼ合致させることが可能となり、長溝32に係合しているロックピン41の回転方向へのガタつきを防止することができる。
【0053】
また、座席が何れかの回転位置に拘束されているときも、脚台11の上面側にある当接部材15に対して、台枠20の下面側にある被当接部材16が水平方向に摺動可能に当接している。これにより、いっそう座席のガタ付きを防止することができる。ここで当接部材15と被当接部材16は、それぞれ座席の回転中心を取り囲む略正方形上に沿って広い範囲に配置されている。よって、当接部材15と被当接部材16は互いに広い範囲で当接し合うことになり、座席全体を安定した状態で支持することができる。
【0054】
<その他の作用>
図13に示すように、係止部40は、ロックピン41等の構成部品を全てブラケット400に予め一体に組み付けられてユニットとして構成した。これにより、係止部40全体をコンパクト化することが可能となり、係止部40を一つの部品として取り扱いや取り付け作業も容易となる。
【0055】
また、
図2に示すように、台枠20上には、フレーム12の両側壁12a,12aが支持部材13を介して一体に固定するが、係止部40は、台枠20の上面側の一端側で一対の支持部材13の間に配置される。このように、ブラケット400の両側を支持部材13で挟むことにより、係止部40を保護することが可能となる。
【0056】
[本発明の構成と作用効果]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0057】
先ず、本発明は、座席側の回転部品20が床面側の固定部品11上に回転可能に支持され、前記回転部品20の回転に伴い座席の向きが変換され、前記回転部品20と共に座席を所定の各回転位置に拘束可能なロック機構30を備えた座席装置10において、
前記ロック機構30は、前記固定部品11に設けられ前記各回転位置ごとに配置された複数の受け部31と、前記回転部品20に設けられ前記各受け部31に対して係脱可能に変位する係止部40と、を備える。
【0058】
従来の座席装置では、一般にロック機構のロックピン(係止部)を、床面側から上方の座席側の受け穴(受け部)に向けて上下方向に延びる状態に設けていた。そのため、ロックピンを例えば床面側の脚台に設ける場合には、脚台においてロックピンや該ロックピンを必要に応じて上下方向に動かすための機構の配置スペースが必要となり、脚台全体を薄型化することはできなかった。
【0059】
そこで、本座席装置10では、床面側の固定部品11に受け部31を設け、座席側の回転部品20に前記受け部31に対して係脱可能に変位する係止部40を設けた。これにより、床面側と座席側との間、特に床面側の固定部品11におけるロック機構30の嵩張る構成の配置を省くことができる。従って、脚台11の薄型化を実現することが可能となり、床面上の限られたスペースを有効活用できると共に、設計上の自由度も高めることができる。
【0060】
また、本座席装置10において、前記係止部40は、前記回転部品20の回転中心の半径方向と直交する水平軸42を介して前記半径方向かつ下向きに揺動するロックピン41を備え、
前記受け部31は、前記ロックピン41の下端が、その揺動軌跡に沿って挿通可能な長溝32を備え、該長溝32の幅は、前記ロックピン41の下端の外径に応じた寸法であり、
前記ロックピン41は、下端が最下位置に揺動したとき前記長溝32に係合する一方、下端が最上位置に揺動したとき前記長溝32より離脱する。
【0061】
このような係止部40の変位形態によれば、ロックピン41を直進運動させる機構は不要であり、ロックピン41を揺動させることで、下方の受け部31に対して上下方向から係脱することが可能となる。ここでロックピン41は、下端が最下位置に揺動したとき長溝32に係合するが、ロックピン41が少なくとも最下位置にあるとき長溝32に係合すれば足りる。よって、ロックピン41と長溝32との係脱が、ロックピン41の最下位置のみに限定されることはない。
【0062】
一方、ロックピン41は、下端が最上位置に揺動したとき長溝32から離脱するが、ロックピン41が少なくとも最上位置にあるとき長溝32から離脱すれば足りる。よって、ロックピン41と長溝32との離脱が、ロックピン41の最上位置のみに限定されることもない。ここでロックピン41の最上位置と最下位置との揺動角度をなるべく小さく設計すれば、ロックピン41の揺動軌跡を最小限に抑えることができ、係止部40をコンパクトに構成することができる。
【0063】
長溝32は、ロックピン41の下端の揺動軌跡に沿って長く延びており、ロックピン41が揺動に伴い上下方向のみならず水平方向にも変位しても、ロックピン41が長溝32の内周縁に干渉して揺動が妨げられることはない。一方、長溝32の幅は、前記ロックピン41の下端の外径に応じた寸法とすることにより、長溝32に係合しているロックピン41の回転方向へのガタつきを防止することができる。
【0064】
また、本座席装置10において、前記ロックピン41は、付勢手段43によって前記最下位置に常時付勢され、
前記ロックピン41を前記付勢手段43の付勢力に抗して前記最上位置に移動させる操作手段50を備える。
【0065】
前記ロックピン41は、自重に対する重力により最下位置となるが、付勢手段43によって最下位置に常時付勢することにより、確実に最下位置に維持することができる。また、操作手段50によって、ロックピン41を付勢手段43の付勢力に抗して最上位置に移動させることができる。このように操作手段50によって、ロック機構30による拘束を容易に解除することができる。
【0066】
また、本座席装置10において、前記長溝32は、前記固定部品11の上面側に固定されるベース部材310に設けられ、
前記ベース部材310にて前記長溝32の幅方向の両側端に、前記回転部品20の回転に伴い円周方向から移動してきた前記ロックピン41の下端を上方へ導くテーパ311を設けた。
【0067】
このように長溝32を、固定部品11の上面側に直接穿設することなく、ベース部材310に設けたことにより、固定部品11の強度の低下を招くことはなく、受け部31の位置の変更も容易に行うことができる。ベース部材310の高さ(厚さ)は、ロックピン41の下端が係脱可能な長溝32の最低限の深さを確保できれば足りる。これにより、固定部品11と回転部品20との間のスペースを、ベース部材310の厚さ程度に抑えることができる。
【0068】
ベース部材310の両側端には、テーパ311を設けたことにより、回転部品20の回転に伴い円周方向から移動してきたロックピン41の下端が、ベース部材310に対して干渉する高さにあっても、ロックピン41の下端を上方へ滑らせつつ、長溝32に嵌入するように導くことが可能となる。
【0069】
また、本座席装置10において、
前記ロックピン41は、前記回転部品20に後付けされるブラケット400に予め一体に組み付けられてユニットをなし、
前記ブラケット400および/または該ブラケット400を後付けする前記回転部品20の取付箇所に、前記長溝32に対応して前記ロックピン41の下端が下方へ挿通可能な貫通孔21,406が設けられている。
【0070】
このように、ロックピン41をブラケット400に予め一体に組み付けられてユニットとすることにより、係止部40をコンパクト化することが可能となり、また係止部40を一つの部品として取り扱いや取り付け作業も容易となる。
【0071】
ブラケット400には、ロックピン41の下端を挿通させる貫通孔406を設けたので、ロックピン41の揺動がブラケット400に干渉して揺動が妨げられることはない。また、ブラケット400を後付けする回転部品20の取付箇所にも、必要に応じてロックピン41の下端を挿通させる貫通孔21を設けると良い。なお、ロックピン41の揺動軌跡がブラケット400や回転部品20に重ならない場合には、貫通孔21,406を設ける必要はない。
【0072】
また、本座席装置10において、
前記回転部品20上に前記座席を支持する支持部材13を、前記回転部品20上に後付けした前記ブラケット400の両側に配置した。
このように、ブラケット400の両側を支持部材13で挟むことにより、係止部40を保護することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、脚台11や台枠20の形状は図示したものに限定されることはない。また、座席は1人掛けの例を説明したが、2人掛けあるいは3人掛けの座席であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、鉄道車両、航空機、自動車、船舶等の客室内に設置される乗物用の座席の他、劇場用、家庭用、事務用の椅子を対象とした座席装置として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10…座席装置
11…脚台(固定部品)
12…フレーム
12a…側壁
13…支持部材
20…台枠(回転部品)
21…貫通孔
30…ロック機構
31…受け部
32…長溝
310…ベース部材
311…テーパ
312…ガイド
40…係止部
41…ロックピン
42…水平軸
43…コイルバネ(付勢手段)
50…操作ケーブル(操作手段)
51…留め具