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特許7123928樹脂膜とパターン化ポリマー層を含むアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】樹脂膜とパターン化ポリマー層を含むアレイ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220816BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20220816BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20220816BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220816BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220816BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20220816BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C08G65/22
C08G59/20
G01N37/00 102
G03F7/20 501
C12Q1/6874 Z
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2019530392
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 US2017067557
(87)【国際公開番号】W WO2018119053
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】62/438,024
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン エヌ ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リシェ
(72)【発明者】
【氏名】エム シェーン ボーエン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エイ ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ダジュン ユアン
(72)【発明者】
【氏名】オードリー ローズ ザック
(72)【発明者】
【氏名】ショーン エム ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド カンポス
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501734(JP,A)
【文献】特開2016-108445(JP,A)
【文献】特表2015-529576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C08G 65/00
C08G 59/00
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持表面上の架橋エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成し、それによって前記架橋エポキシPOSS樹脂膜の不連続領域を露出させること;
ポリマーコーティングを適用し、露出した前記不連続領域上に付着コーティング部分を形成し、かつ、前記パターン化疎水性層上に未付着コーティング部分を形成すること;および
前記パターン化疎水性層の前記未付着コーティング部分を洗い流すこと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記支持体表面上に前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記樹脂前駆体を前記支持体表面上に堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合および前記堆積させることが、同時に起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシシランが、前記支持体表面に結合したエポキシシランである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体表面上に前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSを混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記樹脂前駆体を前記支持体表面上に堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パターン化疎水性ポリマー層の形成の前に、前記方法が、
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜をプラズマアッシングまたは化学処理にかけて前記架橋エポキシPOSS樹脂膜に-OH基を導入すること;および
前記-OH基の少なくとも一部に、以下からなる群より選択される官能基を結合すること、をさらに含む、求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
(式中、
nは、1~20であり、
---は、アルキルシラン、ポリ(エチレングリコール)-シラン、アルキルまたはポリエチレングリコール鎖を表す。)
【請求項7】
前記支持体表面上に前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSS、および少なくとも1つのエポキシ官能基と非エポキシ官能基とを含むPOSSコアを混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記樹脂前駆体を前記支持体表面上に堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
洗い流すことが、水中での超音波処理を含む、求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パターン化疎水性ポリマー層を形成することが、
i)前記架橋エポキシPOSS樹脂膜上に疎水性ポリマーを堆積させること;およびナノインプリントリソグラフィおよびフォトリソグラフィの少なくとも一つを用いて、堆積した前記疎水性ポリマーをパターン化すること;または
ii)インクジェット印刷およびマイクロコンタクト印刷の少なくとも一つを用いて、前記架橋エポキシPOSS樹脂膜上にパターンで前記疎水性ポリマーを堆積させること、を含む、求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
増幅プライマーを前記付着コーティング部分にグラフトすることをさらに含む、求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
支持体;
前記支持体の表面上の架橋エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜;
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層であって、前記架橋エポキシPOSS樹脂膜の露出された不連続領域を画定している、パターン化疎水性ポリマー層;および
前記露出された不連続領域に付着したポリマーコーティング、
を含む、アレイ。
【請求項12】
前記パターン化疎水性層が、フルオロポリマー、ネガ型フォトレジストおよびポリシロキサンからなる群より選択され;および
前記ポリマーコーティングが、以下の式(I)の繰り返し単位を含む、請求項11に記載のアレイ。
【化2】
(式中、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群より選択され;
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群より選択され;
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
pは、1~50の範囲の整数であり;
nは、1~50,000の範囲の整数であり;
mは、1~100,000の範囲の整数である。)
【請求項13】
前記ポリマーコーティングにグラフトした増幅プライマーをさらに含む、請求項11または12に記載のアレイ。
【請求項14】
支持体表面上の変性エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成し、それによって前記変性エポキシPOSS樹脂膜の不連続領域を露出させること、ここで、前記変性エポキシPOSS樹脂膜は、ポリマー成長開始部位を含む;および
露出した前記不連続領域の前記ポリマー成長開始部位からポリマーブラシを成長させること、
を含む、方法。
【請求項15】
前記支持体表面上に前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位およびエポキシ官能化重合剤または制御ラジカル重合(CRP)剤を混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記支持体表面上に前記樹脂前駆体を堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合および堆積させることが、同時に起こる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エポキシシランが、前記支持体表面に結合したエポキシシランである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSSおよびエポキシ官能化重合剤または制御ラジカル重合(CRP)剤を混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記支持体表面上に前記樹脂前駆体を堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
エポキシ官能化CRP剤が、エポキシ官能化可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤またはエポキシ官能化原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSとエポキシ官能化CRP剤とのモル比または質量比が、約1:1~約9:1の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記エポキシPOSS樹脂膜をプラズマアッシングまたは化学的処理にかけて、前記エポキシPOSS樹脂膜に-OH基を導入すること;
官能基を前記-OH基の少なくとも一部に結合させること;および
制御ラジカル重合(CRP)剤を前記官能基の少なくとも一部に結合すること、をさらに含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記官能基は、以下からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【化3】
(式中、
nは、1~20であり、
---は、アルキルシラン、ポリ(エチレングリコール)-シラン、アルキルまたはポリエチレングリコール鎖を表す。)
【請求項23】
前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSSおよび少なくとも1つのエポキシ官能基と制御ラジカル重合(CRP)剤官能基とを含むPOSSコアを混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記樹脂前駆体を前記支持体表面上に堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、当該形成することが、
光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSSおよび少なくとも1つのエポキシ官能基と非エポキシ官能基とを含むPOSSコアを混合して、樹脂前駆体を形成すること;
前記樹脂前駆体を前記支持体表面上に堆積させること;および
前記樹脂前駆体を硬化させて、初期変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること;および
制御ラジカル重合(CRP)剤官能基を前記初期変性エポキシPOSS樹脂膜に導入して、前記変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記パターン化疎水性ポリマー層を形成することが、
i)疎水性ポリマーを前記変性エポキシPOSS樹脂膜上に堆積させること;およびナノインプリントリソグラフィおよびフォトリソグラフィの少なくとも一つを用いて、堆積した前記疎水性ポリマーをパターン化すること;または
ii)パターン化印刷を用いて、前記疎水性ポリマーを前記変性エポキシPOSS樹脂膜上にパターンで堆積させること、を含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
支持体;
前記支持体の表面上の変性エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜であって、ポリマー成長開始部位を含む、変性エポキシPOSS樹脂膜;
前記変性エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層であって、前記変性エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域を画定している、パターン化疎水性ポリマー層;および
前記露出した不連続領域の前記ポリマー成長開始部位に結合したポリマーブラシ、
を含む、アレイ。
【請求項27】
前記ポリマーブラシにグラフトした増幅プライマーをさらに含む、請求項26に記載のアレイ。
【請求項28】
支持体
前記支持体の表面上の架橋エポキシPOSS樹脂膜;および
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層、
を含み、前記パターン化疎水性ポリマー層が、ポリシロキサンである、組成物。
【請求項29】
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜が、不連続領域および介在領域を画定するようにパターン化されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記不連続領域が、穴である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜が、支持体結合エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSから誘導されたモノマー単位を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
パターン化疎水性ポリマー層は、前記不連続領域または穴間の前記架橋エポキシPOSS樹脂膜の前記介在領域の前記架橋エポキシPOSS樹脂膜上に残存しながら、前記不連続領域または穴内の前記架橋エポキシPOSS樹脂膜を露出させるようにパターン化されている、請求項29~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記架橋エポキシPOSS樹脂膜の前記不連続領域に結合したポリマーコーティングをさらに含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
方法であって、
架橋エポキシPOSS樹脂膜を支持体表面上に形成することであって、当該形成することが、光酸発生剤の存在下で、支持体結合エポキシシランを1つ以上のエポキシ官能化POSS試薬と混合して、支持体結合樹脂前駆体を形成することを含む、架橋エポキシPOSS樹脂膜を支持体表面上に形成すること;
前記樹脂前駆体を硬化させて、支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成すること;および
前記支持体表面上の前記支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜上に疎水性ポリマー層を形成することを含み、当該疎水性ポリマー層は、不連続領域または穴間の前記支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜の介在領域の前記支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜上に残存しながら、前記不連続領域または穴内の前記支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜を露出させるようにパターン化されており、前記パターン化疎水性ポリマー層が、ポリシロキサンである、方法。
【請求項35】
前記1つ以上のエポキシ官能化POSS試薬が、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記支持体表面をエポキシシランと反応させ、前記支持体結合エポキシシランを形成することをさらに含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記光酸発生剤の存在下が、光酸発生剤および増感剤の存在下である、請求項2、5、7、15、18、23、24または34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/438,024号の利益を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的アレイは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、分子を検出および分析するために使用される広範囲のツールのうちの1つである。これらの用途において、アレイは、ヒトおよび他の生物における遺伝子に存在するヌクレオチド配列に対するプローブを含むように設計されている。特定の用途では、例えば、個々のDNAおよびRNAプローブは、アレイ支持体上の幾何学的グリッド内(またはランダムに)の小さい位置に付着することがある。例えば既知の人または生物からの、試験試料は、相補的フラグメントがアレイ中の個々の部位でプローブとハイブリダイズするようにグリッドに曝露されることがある。次に、断片がハイブリダイズした部位の蛍光によって、どの断片が試料中に存在するかを同定するために、その部位にわたって特定の周波数の光を走査することによってアレイを検査することができる。
【0003】
生物学的アレイは、遺伝子配列決定に使用され得る。一般に、遺伝子配列決定は、DNAまたはRNAの断片などの、ある長さの遺伝物質におけるヌクレオチドまたは核酸の順序を決定することを含む。ますます長い塩基対の配列が分析されており、得られた配列情報は、断片が由来する広範な長さの遺伝物質の配列を確実に決定するために断片を互いに論理的に合わせるために様々なバイオインフォマティクス方法において使用され得る。特徴的な断片の自動化されたコンピュータベースの検査が開発されており、そしてゲノムマッピング、遺伝子およびそれらの機能の同定、特定の状態および病状の危険性の評価などにおいて使用されている。これらの用途を超えて、生物学的アレイは、広範囲の分子、分子のファミリー、遺伝子発現レベル、一塩基多型、および遺伝子型決定の検出および評価に使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様において、組成物は、支持体および支持体の表面上の架橋エポキシPOSS樹脂膜を含む。いくつかの態様において、組成物は、オリゴヌクレオチド配列決定用のアレイとして、または製造中間体として適している。いくつかの態様では、樹脂膜は、介在領域内に不連続領域を画定するようにパターン化されており、いくつかの態様では、不連続領域は、穴である。他の態様では、組成物は、パターン(例えば、穴内の)と介在領域とによって画定された不連続領域を含む、パターン化樹脂膜上の疎水性ポリマー層を含む。他の態様では、疎水性ポリマー層は、不連続領域または穴間の樹脂膜の介在領域の樹脂膜上に残存しながら、不連続領域または穴内の樹脂膜を露出させるようにパターン化されている。さらに他の態様において、ポリマーコーティングは、架橋エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域においてパターン化樹脂膜に付着される。組成物は、ポリマーコーティングにグラフトされた増幅プライマーをさらに含み得る。架橋POSS樹脂膜は、本明細書に記載のポリマー成長開始部位を任意に含む。さらに他の態様では、ポリマーブラシが、架橋エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域内のポリマー成長開始部位に結合される。
【0005】
いくつかの態様は、支持体と、その支持体の表面上の架橋エポキシPOSS樹脂膜とを含む組成物を製造する方法であって、当該方法は、支持体表面上の架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することと、ここでその形成することは、光酸発生剤および任意に増感剤の存在下で、支持体結合エポキシシランを、1つ以上のエポキシ官能化POSS試薬と混合して、支持体結合樹脂前駆体を形成することを含み、その樹脂前駆体を硬化させて、支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することとを含む。そのような方法は、支持体の表面をエポキシシランと反応させて、支持体結合エポキシシランを形成することをさらに含み得る。いくつかの態様では、樹脂膜は、介在領域内に不連続領域を画定するようにパターン化され、いくつかの態様では、不連続領域は、穴である。このような方法は、支持体表面上の架橋した支持体結合エポキシPOSS樹脂膜上に疎水性ポリマー層を形成することをさらに含んでもよく、疎水性ポリマー層は、不連続領域または穴間の樹脂膜の介在領域の樹脂膜上に残存しながら、不連続領域または穴内の樹脂膜を露出させるようにパターン化される。
【0006】
第1の態様では、支持体、支持体の表面上の架橋エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜、および架橋エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層を含むアレイであり、パターン化疎水性ポリマー層は、架橋エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域を画定し、ポリマーコーティングは、露出した不連続領域に付着されている。
【0007】
いくつかの態様では、この第1の態様のアレイを形成する方法であり、その方法は、支持体表面上の架橋エポキシPOSS樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成し、それによって架橋エポキシPOSS樹脂膜の不連続領域を露出させることを含む。この方法は、ポリマーコーティングを適用して、露出した不連続領域上に付着コーティング部分と、パターン化疎水性層上に未付着コーティング部分とを形成すること;およびそのパターン化疎水性層上の未付着コーティング部分を洗い流すことをさらに含み得る。この方法は、支持体表面上に架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含んでもよく、その形成することは、光酸発生剤および任意に増感剤の存在下で、エポキシシランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を混合して、前駆体を形成すること;樹脂前駆体を支持体表面上に堆積させること;および樹脂前駆体を硬化させて、架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。
【0008】
第2の態様において、アレイは、支持体、支持体の表面上の変性エポキシPOSS樹脂膜、および変性エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層を含み、ここでパターン化疎水性ポリマー層は、架橋エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域を画定する。いくつかの例では、変性エポキシPOSS樹脂膜は、ポリマー成長開始部位を含み、パターン化疎水性ポリマー層は、変性エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域を画定する。ポリマーブラシは、露出した不連続領域のポリマー成長開始部位に結合されている。いくつかの点で、アレイは、支持体、支持体の表面上の変性エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜、ポリマー成長開始部位を含む変性エポキシPOSS樹脂膜、変性エポキシPOSS樹脂膜上のパターン化疎水性ポリマー層、そのパターン化疎水性ポリマー層は、変性エポキシPOSS樹脂膜の露出した不連続領域を画定し、および露出した不連続領域のポリマー成長開始部位に結合されたポリマーブラシを含む。
【0009】
本明細書に記載の第2の態様のアレイを製造する方法は、支持体表面上の変性エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成し、それによって変性エポキシPOSS樹脂膜の不連続領域を露出することを含む。変性エポキシPOSS樹脂膜は、ポリマー成長開始部位を含む。いくつかの態様では、ポリマーブラシは、露出した不連続領域内のポリマー成長開始部位から成長する。したがって、いくつかの態様では、本明細書で開示される方法の第2の態様は、支持体表面上の変性エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成し、それによって変性エポキシPOSS樹脂膜の不連続領域を露出すること、ここで変性エポキシPOSS樹脂膜は、ポリマー成長開始部位を含む;および、露出した不連続領域のポリマー成長開始部位からポリマーブラシを成長させることを含む。いくつかの態様では、方法は、変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含んでもよく、ここでその形成することは、光酸発生剤および任意に増感剤の存在下で、エポキシシラン、少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位、およびエポキシ官能化重合剤(例えば、ラジカル重合剤、カチオン重合剤、アニオン重合剤、開環メタセシス重合剤または制御ラジカル重合剤)または制御ラジカル重合(CRP)剤を混合して、樹脂前駆体を形成すること;樹脂前駆体を支持体表面上に堆積させること;および樹脂前駆体を硬化させて、変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位は、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSである。
【0010】
本開示の例の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになるであろう。それらでは、類似の参照番号は、同一ではなくとも類似の構成要素に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して説明されことがあるまたはされないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1A~1Fは、本明細書に開示する方法の一例を示す断面図であり、図1Eは、形成されるアレイの窪みの拡大図である。
図1-2】図1A~1Fは、本明細書に開示する方法の一例を示す断面図であり、図1Eは、形成されるアレイの窪みの拡大図である。
図2図2A~Dは、本明細書に開示する方法の別の例を示す断面図であり、図2Cは、形成されるアレイの窪みの拡大図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
アレイの第1の態様の任意の特徴を任意の望ましい方式で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、第1の態様および/または第1の方法の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、および/またはこれらの態様のいずれかまたは両方からの任意の特徴を本明細書に開示の例のいずれかと組み合わせることもできる。
【0013】
本明細書に記載の方法、組成物、およびアレイのいくつかの例では、架橋エポキシPOSS樹脂膜をパターン化して、穴などの特徴およびその特徴間の介在する介在領域を画定し、他の例では、エポキシPOSS樹脂膜は、パターン化されていない。架橋エポキシPOSS樹脂膜がパターン化されている場合、その膜中のパターンは、パターン化された疎水性層のパターンによっても露出されている不連続部分である特徴を画定する。例えば、樹脂膜は、穴を含み、パターン化疎水性層によって露出された不連続領域は、膜中の穴である。
【0014】
本明細書に開示される方法の例は、パターン化疎水性層と組み合わせて異なるエポキシPOSS樹脂膜を使用して、ポリマーが適用されるまたは成長する場所を制限する、または露出した樹脂膜を有する領域を覆うパターン化疎水性層を有する領域から、ポリマーを優先的に除去することを可能とする。これらの方法は、ポリマーが樹脂または固体支持体表面全体にわたって一面に堆積されるときに行われる、研磨などの機械的または化学的ポリマー除去プロセスの必要性を排除する。
【0015】
本明細書に開示される方法の一例では、架橋エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)樹脂膜が、パターン化疎水性層と組み合わせて使用される。パターン化疎水性層は、架橋エポキシPOSS樹脂膜の不連続部分を露出させ、このことは、部分的に、ポリマー材料がパターン化疎水性層よりも親水性であるために、後で適用されるポリマー材料のための捕捉パッドとして役立つ。ポリマー材料の表面エネルギーは、パターン化疎水性層の表面エネルギーよりも架橋エポキシPOSS樹脂膜の表面エネルギーに近く、したがってポリマー材料は、架橋エポキシPOSS樹脂膜上によりよく濡れる。いくつかの例では、樹脂膜は、ポリマー材料上の官能基と共有結合を形成することができる捕捉基で化学的に変性されている。
【0016】
方法のこの第1の態様の一例は、支持体表面上に架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、その形成することは、光酸発生剤および任意に増感剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSを混合して、樹脂前駆体を形成すること;樹脂前駆体を支持体表面上に堆積させること;樹脂前駆体を硬化させて、架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。
【0017】
方法のこの第1の態様では、パターン化疎水性ポリマー層を形成する前に、方法は、架橋エポキシPOSS樹脂膜をプラズマアッシングまたは化学処理にかけて、ヒドロキシル(C-OHまたはSi-OH)などの-OH基および/またはカルボキシル基を架橋エポキシPOSS樹脂膜に導入することをさらに含み得る。いくつかの態様では、方法は、官能基を-OH基の少なくとも一部に結合させることをさらに含み、その官能基は、以下からなる群より選択される。
【化1】

式中、---は、アルキルシラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシアルキルシランとの反応による)、ポリ(エチレングリコール)-シラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシシランポリ(エチレングリコール)との反応による)、アルキル(例えば、ヒドロキシル基とハロゲン化アルキルとの反応による)またはポリエチレングリコール鎖を表す。
【0018】
方法のこの第1の態様の別の例は、支持体表面上に架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することをさらに含み、その形成することは、任意の増感剤および光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSSおよび少なくとも1つのエポキシ官能基と非エポキシ官能基とを含むPOSSコアを混合して、樹脂前駆体を形成すること;樹脂前駆体を支持体表面上に堆積させること;および樹脂前駆体を硬化させて、架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。
【0019】
この第1の態様の別の例では、方法は、支持体表面上に架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含み、その形成することは、光酸発生剤および任意に増感剤の存在下で、1つ以上のエポキシ官能化POSS試薬を有する支持体結合エポキシシランおよび1つのエポキシ官能基と非エポキシ官能基とを含むPOSSコアを混合して、支持体結合樹脂前駆体を形成すること;および樹脂前駆体を硬化させて、支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。
【0020】
方法のこの第1の態様の一例では、洗うことは、水中での超音波処理を含む。別の例では、洗うことは、ダンク洗浄および噴霧洗浄または機械的洗浄を含む。
【0021】
方法のこの第1の態様の一例では、パターン化疎水性ポリマー層を形成することは、i)架橋エポキシPOSS樹脂膜上に疎水性ポリマーを堆積させることおよびナノインプリントリソグラフィーおよびフォトリソグラフィーの少なくとも1つを用いて堆積した疎水性ポリマーをパターン化すること;またはii)パターン化印刷、例えば、インクジェット印刷およびマイクロコンタクト印刷の少なくとも1つ、またはエアロゾルパターン化印刷を用いて、架橋エポキシPOSS樹脂膜上にパターンで疎水性ポリマーを堆積させることを含む。
【0022】
方法のこの第1の態様の例において、増幅プライマーを付着したコーティング部分にグラフトすることをさらに含む。アレイの第1の態様の例は、付着したコーティング部分にグラフトされた増幅プライマーをさらに含む。
【0023】
方法およびアレイのこれらの第1の態様において、パターン化疎水性層は、フルオロポリマー、ネガ型フォトレジストおよびポリシロキサンからなる群より選択される。
【0024】
本明細書に開示されている方法の別の例では、変性エポキシPOSS樹脂膜が、パターン化疎水性層と組み合わせて使用される。パターン化疎水性層は、変性エポキシPOSS樹脂膜の不連続部分を露出させる。変性エポキシPOSS樹脂膜は、ポリマー成長のための開始剤種として作用するエポキシ官能化制御ラジカル重合(CRP)剤を含む。パターン化疎水性層はポリマーの成長を不連続部分に限定する。
【0025】
いくつかの例では、重合剤またはCRP剤は、少なくとも1つのエポキシ官能基と重合剤官能基またはCRP剤官能基とを含むPOSSコアである。いくつかの例では、エポキシ官能化CRP剤は、エポキシ官能化可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤またはエポキシ官能化原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤である。特定の例において、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSとエポキシ官能化CRP剤とのモル比または質量比は、約1:1~約9:1の範囲である。
【0026】
方法のこの第2の態様の別の例は、支持体表面上に架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含み、その形成することは、エポキシ官能化制御ラジカル重合(CRP)剤、光酸発生剤、および任意に増感剤の存在下で、支持体結合エポキシシランを1つ以上のエポキシ官能化POSS試薬と混合して、支持体結合樹脂前駆体を形成すること、およびその樹脂前駆体を硬化させて、支持体結合架橋エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。そのような例は、支持体の表面をエポキシシランと反応させて、架橋支持体結合エポキシシランを形成することをさらに含み得る。そのような方法は、本明細書に記載されるように、支持体表面上の架橋支持体結合エポキシPOSS樹脂膜上にパターン化疎水性ポリマー層を形成することをさらに含み得る。
【0027】
方法のこの第2の態様において、パターン化疎水性ポリマー層を形成する前に、方法は、架橋エポキシPOSS樹脂膜をプラズマアッシングまたは化学処理にかけて、-OH基(例えば、ヒドロキシル(C-OHまたはSi-OH)および/またはカルボキシル)基を架橋エポキシPOSS樹脂膜に導入すること;および官能基またはCRP剤をヒドロキシル基の少なくとも一部に結合させることをさらに含み得る。その官能基は、以下からなる群より選択される。
【化2】

式中、---は、アルキルシラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシアルキルシランとの反応による)、ポリ(エチレングリコール)-シラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシシランポリ(エチレングリコール)との反応による)、アルキル(例えば、ヒドロキシル基とハロゲン化アルキルとの反応による)またはポリエチレングリコール鎖を表す。
【0028】
方法のこの第2の態様の別の例は、変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含み、その形成することは、任意の増感剤および光酸発生剤の存在下で、エポキシシラン、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、グリシジルPOSSおよび少なくとも1つのエポキシ官能基と非エポキシ官能基とを含むPOSSコアを混合して、樹脂前駆体を形成すること;樹脂前駆体を支持体表面上に堆積させること;樹脂前駆体を硬化させて、初期変性エポキシPOSS樹脂膜を形成すること;および初期変性エポキシPOSS樹脂膜に制御ラジカル重合(CRP)剤官能基を導入して、変性エポキシPOSS樹脂膜を形成することを含む。非エポキシ官能基は、(a)エポキシ基に対して直交的に反応性である(すなわち、エポキシ基とは異なる条件下で反応する)反応性基であり、これは樹脂を増幅プライマー、ポリマーまたは重合剤に結合するためのハンドルとして機能し;または(b)樹脂の機械的または機能的特性を調整する(例えば表面エネルギー調整)基である。いくつかの態様において、非エポキシ官能基は、アジド、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、およびテトラジンからなる群より選択される。他の態様において、非エポキシ官能基は、アミノ、ヒドロキシル、アルキニル、ケトン、アルデヒド、またはエステル基である。他の態様では、非エポキシ官能基は、アルキル、アリール、アルコキシ、またはハロアルキル基である。
【0029】
方法の第2の態様の一例では、パターン化疎水性ポリマー層を形成することは、i)変性エポキシPOSS樹脂膜上に疎水性ポリマーを堆積させることおよびナノインプリントリソグラフィおよびフォトリソグラフィの少なくとも1つを用いて堆積した疎水性ポリマーをパターン化すること;またはii)インクジェット印刷およびマイクロコンタクト印刷のうちの少なくとも1つなどのパターン印刷、またはエアロゾルパターン印刷を用いて、変性エポキシPOSS樹脂膜上にパターンで疎水性ポリマーを堆積させることを含む。
【0030】
方法の第2の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方式で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、方法および/またはアレイの第1の態様および/または方法の第2の態様の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、および/またはこれらの態様のいずれかからの任意の特徴を本明細書に開示されている例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0031】
アレイおよび方法の第2の態様のいくつかの例では、ポリマーブラシは、ランダムコポリマー、規則コポリマー、またはブロックコポリマーなどのコポリマーである。いくつかの態様において、ポリマーブラシは、ラジカル交換によってさらに官能化される。結合したポリマーネットワークの官能化は、芳香族カルボニル化合物(ジフェニルケトン誘導体)、アゾ化合物、スルホニルアジド、アリールアジド、およびアジリジンなどのC-H挿入反応を媒介する反応単位を使用して実施することができる。
【0032】
この第2のアレイの一例は、ポリマーブラシにグラフトされた増幅プライマーをさらに含む。この第2の方法の一例は、ポリマーブラシに増幅用プライマーをグラフトすることをさらに含む。
【0033】
方法およびアレイのこれらの第2の態様では、パターン化疎水性層は、フルオロポリマー、ネガ型フォトレジストおよびポリシロキサンからなる群より選択される。
【0034】
アレイの第2の態様の任意の特徴を任意の望ましい方式で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、方法および/またはアレイの第1の態様および/または方法および/またはアレイの第2の態様の特徴の任意の組み合わせを共に用いてもよいこと、および/またはこれらの態様のいずれかからの任意の特徴を本明細書に開示されている例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0035】
本明細書に記載の方法、アレイおよび組成物のいくつかの態様において、ポリマーコーティングは、以下の式(I)の繰り返し単位を含む。
【化3】
式中、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群より選択され;
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群より選択され;
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
pは、1~50の範囲の整数であり;
nは、1~50,000の範囲の整数であり;
mは、1~100,000の範囲の整数である。
式(I)の構造において、当業者は、「n」および「m」サブ単位がポリマー全体にわたってランダムな順序で存在する繰り返しサブ単位であることを理解するであろう。
【0036】
ポリマーコーティングの特定の例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-共-アクリルアミド、PAZAMであり(例えば、米国特許公開第2014/0079923A1号または同第2015/0005447A1号をそれぞれ参照のこと。その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、これは、以下に示される構造を含む。
【化4】
式中、nは、1~20,000の範囲の整数であり、mは、1~100,000の範囲の整数である。式(I)と同様に、当業者は、「n」および「m」サブユニットがポリマー構造全体にわたってランダムな順序で存在する繰り返し単位であることを認識するであろう。
【0037】
式(I)またはPAZAMポリマーの分子量は、約10kDa~約1500kDaの範囲であり得るか、または具体例では、約312kDaであり得る。
【0038】
いくつかの例では、式(I)またはPAZAMポリマーは、線状ポリマーである。いくつかの他の例では、式(I)またはPAZAMポリマーは、わずかに架橋したポリマーである。他の例では、式(I)またはPAZAMポリマーは、分岐を含む。
【0039】
適切なポリマー材料の他の例には、アガロースなどのコロイド構造;またはゼラチンなどのポリマーメッシュ構造;またはポリアクリルアミドポリマーおよびコポリマー、シランフリーアクリルアミド(SFA、例えば、米国特許出願公開第2011/0059865号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、またはSFAのアジドリド化バージョンなどの架橋ポリマー構造を有するものが含まれる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、例えば国際公開第2000/031148(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようにアクリルアミドおよびアクリル酸またはビニル基を含有するアクリル酸から、または、例えば、国際公開第2001/001143号または国際公開第2003/0014392号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように[2+2]光環状付加反応を形成するモノマーから形成され得る。他の適切なポリマーは、SFAとブロモ-アセトアミド基で誘導体化されたSFAとのコポリマー(例えば、BRAPA)、またはSFAとアジド-アセトアミド基で誘導体化されたSFAとのコポリマーである。
【0040】
本明細書で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとることが理解されるべきである。本明細書中で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0041】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0042】
「含む」、「含む」、「含む」、およびこれらの用語の様々な形態の用語は、互いに同義語であり、等しく広いことを意味する。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「アクリレート」は、「CH=CHCOO-」官能基(すなわち、以下のもの)を指す。
【化5】
【0044】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有していてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。一例として、「C1~4アルキル」という表示は、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子があることを示し、すなわちアルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択される。
【0045】
アルキルは、ハロゲン化物またはハロゲンで置換されていてもよく、これは元素周期表の第7欄のいずれかの放射線安定原子、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。この基は、「ハロゲン化アルキル」と呼ばれる。
【0046】
アルキルはまた、酸素原子に単結合していてもよい。この基は「アルコキシ」である。アルコキシの一例は、ヒドロキシル末端エトキシである(すなわち、以下のもの、式中、nは、1~20である)。
【化6】
この基は、ヒドロキシル末端ポリ(エチレングリコール)とも呼ばれる。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を有する直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有していてもよい。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが含まれる。アルケニル基は、例えば、「C2~4アルケニル」と命名することができ、これはアルケニル鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」は、1つ以上の三重結合(例えば、以下のもの)を有する直鎖または分岐の炭化水素鎖をいう。
【化7】
アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有していてもよい。アルキニル基は、例えば、「C2~4アルキニル」と命名することができ、これはアルキニル鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0049】
「アミノ」官能基は、-NR基を指し、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、本明細書で定義されるように、水素(例えば以下のもの)、
【化8】
C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリールおよび5~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、「アリール」は、環のバックボーン中に炭素のみを有する芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)をいう。アリールが環系であるとき、その系中の全ての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有していてもよく、これはC6~18と表され得る。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが含まれる。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「結合された」は、2つのものが互いに結合、固定、接着、接続または結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合または非共有結合によってポリマーコーティングに結合され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない化学結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用および疎水性相互作用を含み得る。
【0052】
「アジド」または「アジド」官能基は、-N(例えば、以下のもの)を指す。
【化9】
【0053】
本明細書で使用されるとき、「カルボシクリル」はその環バックボーンに炭素原子を有する環または環系を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2つ以上の環が縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合してもよい。カルボシクリルは、任意の程度の飽和を有していてもよいが、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではない。したがって、カルボシクリルは、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルを含む。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子(すなわち、C3~20)を有していてもよい。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「硬化」は、重合および架橋を促進するためのポリマーまたは樹脂前駆体の処理を意味する。本明細書に記載のPOSS樹脂膜に関して、硬化は、POSS樹脂前駆体および/または成分の重合および架橋を指す。硬化は、可視光線または紫外線(UV)などの化学線、または約240~380nmの波長の放射線、および/または高温などの様々な条件下で達成することができる。硬化放射線は、水銀灯によって提供されてもよい。適切な硬化温度は、約20℃~約80℃の範囲であり得る。いくつかの例では、架橋反応を完了させるのに役立つハードベーク条件への曝露を用いて硬化を完了させることができる(例えば、UVは、重合/架橋プロセスを開始し、その反応は、完了するまで暗所で継続する)。いくつかの例では、ハードベークはまた、架橋エポキシPOSS樹脂膜を乾燥または脱水して、硬化後に残留し得る任意の溶媒を追い出す。適切なハードベーク温度は、約100℃~約300℃の温度を含む。ハードベーキングに使用することができる装置の例は、ホットプレートを含む。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキレン」は、2つの結合点を介して分子の残りの部分に結合されている完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」または「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニルまたはシクロヘキセンおよびノルボルネンまたはノルボルニル(例えば以下のもの)が挙げられる。
【化10】
また本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルケニル」または「ヘテロシクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する環のバックボーン中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は、芳香族ではない。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキニル」または「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は、芳香族ではない。一例は、シクロオクチン(例えば以下のもの)である。
【化11】
他の例は、ビシクロノニン(すなわち、以下のものなどの二環式環系)である。
【化12】
また本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」または「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有し、環のバックボーン中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は、芳香族ではない。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「カルボン酸」または「カルボキシル」は、-C(O)OHを指す。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「堆積」は、手動でも自動でもよい任意の適切な適用技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの具体例には、化学気相堆積(CVD)、プラズマCVD、開始CVD、金属-有機CVD、スプレーコーティング、スピンコーティング、ダンクまたはディップコーティング、パドルディスペンス、インクジェット印刷、スクリーン印刷、またはマイクロコンタクト印刷が含まれる。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「窪み」は、パターン化疎水性層によって画定され、パターン化疎水性層の介在領域によって完全に囲まれている表面開口部を有する、不連続凹特徴を指す。窪みは、例えば円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)などを含む、表面のそれらの開口部において様々な形状のうちのいずれかを有することができる。表面と直交する窪みの断面は、曲線、正方形、多角形、双曲面、円錐形、角形などであり得る。例として、窪みは、穴または流路であり得る。
【0062】
用語「それぞれ」は、項目の集合に関して使用される場合、その集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内のすべての項目を指すとは限らない。明示的な開示または文脈が明らかにそうではないことを示す場合、例外が発生する可能性がある。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「エポキシ」は、以下のものを指す。
【化13】
【0064】
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロアリール」は、環のバックボーンに1つ以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素、これに限定されないが、窒素、酸素および硫黄を含む、を有する芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系であるとき、その系中のすべての環は、芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員を有し得る。
【0065】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクリル」は、環のバックボーン中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する非芳香族環式環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合することができる。ヘテロシクリルは、任意の程度の飽和を有していてもよく、ただし、環系中の少なくとも1つの環は芳香族ではない。環系において、ヘテロ原子は、非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在し得る。ヘテロシクリル基は、3~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む、環のバックボーンを構成する原子の数)を有していてもよい。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」または同様の指定として指定され得る。いくつかの例では、ヘテロ原子は、O、NまたはSである。
【0066】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドラジン」または「ヒドラジニル」は、-NHNH基を指す。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドラゾン」または「ヒドラゾニル」は、以下のものを指し、式中、RおよびRは、本明細書で既に定義したとおりである。
【化14】
【0068】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシル」は、-OH基である。本明細書に記載のヒドロキシル基は、炭素原子またはケイ素原子に結合していてもよい。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「介在領域」は、下にある樹脂膜の露出領域を分離するパターン化疎水性ポリマー層の領域を指す。介在領域は、パターン化疎水性ポリマー層によって画定される1つの特徴(例えば、窪み)を、パターン化疎水性ポリマー層によって画定される別の特徴から分離することができる。互いに分離されている2つの特徴は、不連続、すなわち互いに接触していないことがある。別の例では、介在領域は、特徴の第1の部分を特徴の第2の部分から分離することができる。多くの例では、介在領域は連続的であるが、特徴は不連続である。例えば、別の連続的なパターン化疎水性ポリマー層に画定された複数の穴の場合がそうである。介在領域によって提供される分離は、部分的または完全な分離であり得る。介在領域は、表面材料として疎水性ポリマー層を有し、疎水性ポリマー層によって画定される特徴は、表面材料として樹脂膜を有する。本明細書では、樹脂膜自体がパターン化されている用語「介在領域」も使用され、パターン化膜によって画定された1つの特徴とパターン化膜によって画定された別の特徴とを分離する領域を指す。
【0070】
「N-アミド」基は、「-N(R)C(=O)R」基を指し、ここでRおよびRは、本明細書で定義されるように、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから選択される。N-アミドの一例は、以下のものであり、式中、Rは、水素であり、Rは、C2アルケニルである。
【化15】
この特定のN-アミドもアクリルアミドである。アクリルアミド中のH原子は、アルキルまたは他の官能基で置換することができ、したがって置換アクリルアミドを使用することができることを理解されたい。さらに、Rは、アルキル置換C2アルケニル(例えば、メタクリルアミド基を生じる)であり得る。
【0071】
本明細書で使用される「ニトリルオキシド」は、以下の基を意味し、ここでRは、本明細書で既に定義したとおりである。
【化16】

ニトリルオキシドを調製する例としては、クロラミド-Tでの処理による、または塩化イミドイル[RC(Cl)=NOH]に対する塩基の作用による、アルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される「ニトロン」は、「RC=NR 」基を意味し、ここでRおよびRは、本明細書で先に定義され、Rは、本明細書で定義されるように、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリールおよび5~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、および1つ以上のホスフェート基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAではデオキシリボース、すなわちリボースの2’位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち核酸塩基)は、プリン塩基またはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体が挙げられる。ピリミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体を含む。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。
【0074】
本明細書で使用されるとき、用語「光酸発生剤」は、光を吸収するとより酸性になるかまたはプロトンイオンを放出する化合物である。例示的な光酸発生剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネートまたはビス-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネートなどのヨードニウム塩、および(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレートまたはトリフェニルスルホニウムトリフレートなどのスルホニウムトリフレート化合物が挙げられる。代替の実施形態では、熱に曝されるとその場で強酸を放出する試薬を用いて、熱条件下で硬化を行うことができる。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「プラズマアッシング」は、酸素プラズマまたは空気プラズマによって、パターン化されたウェーハまたは表面(例えば、樹脂膜)から有機物を除去するプロセスを指す。プラズマアッシングから生じる生成物は、真空ポンプ/システムを用いて除去することができる。プラズマアッシングは、反応性-OHまたはヒドロキシル基を導入することによって支持体表面を活性化することができる。導入されるヒドロキシル基は、例えば、樹脂膜中の炭素原子および/またはケイ素原子に結合することができる。導入される基は、カルボキシル基も含み得る。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリマーコーティング」および「ポリマーブラシ」は、液体および気体を透過させ、かつ基板/支持体につながれる半硬質ポリマー材料を意味することを意図している。ポリマーコーティングおよびポリマーブラシは、液体が吸収されるときに膨潤することができ、かつ液体が乾燥によって除去されるときに収縮することができるヒドロゲルであり得る。ポリマーコーティングは、堆積させることができ、ポリマーブラシは、ポリマー成長開始部位から成長させることができる。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(POSS)は、シリカ(SiO)とシリコーン(RSiO)との間のハイブリッド中間体(RSiO1.5)である化学組成物を指す。この組成物は、化学式[RSiO3/2を有する有機ケイ素化合物であり、式中、R基、は同じでも異なっていてもよい。その組成物は、モノマー単位として1つ以上の異なるかご型構造またはコア構造を含み得る。いくつかの例において、その構造は、以下の多八面体かご型構造またはコア構造を含む。いくつかの例において、多面体構造は、
【化17】
など、かつ、
【化18】
で表される、T構造であってもよい。このモノマー単位は、典型的には官能基R~Rである8本の腕を有する。
【0078】
モノマー単位は、
【化19】
など、T10と呼ばれる、10個のケイ素原子と10個のR基とを有するかご型構造を有してもよく、または、
【化20】
など、T12と呼ばれる、12個のケイ素原子と12個のR基とを有するかご型構造を有してもよい。POSS材料は、T、T14、またはT16かご型構造を含み得る。平均かご含有量は、合成中に調整することができ、および/または精製方法によって制御することができ、モノマー単位のかごサイズの分布は、本明細書に開示される例において使用することができる。例として、かご型構造のいずれもが、使用される全POSSモノマー単位の約30%~約100%の範囲の量で存在し得る。POSS材料は、開環かご型構造および部分開環かご型構造の混合物であり得る。したがって、本明細書に記載のPOSS樹脂前駆体および樹脂は、エポキシPOSS材料を含み、それはシルセスキオキサン配置の混合物であり得る。例えば、本明細書に記載の任意のPOSS材料は、個別のPOSSかごおよび非分離のシルセスキオキサン構造および/または、ポリマー、はしご型などの、不完全に縮合した個別の構造の混合物であり得る。したがって、部分的に縮合した材料は、いくつかのケイ素頂点に本明細書に記載のエポキシR基を含むが、いくつかのケイ素原子は、R基で置換されておらず、代わりにOH基で置換され得る。いくつかの例では、POSS材料は、
【化21】

などの、様々な形態の混合物を含む。
【0079】
本明細書に開示される例では、R~RまたはR10またはR12のうちの少なくとも1つは、エポキシを含み、したがって、POSSは、エポキシPOSSと呼ばれる。いくつかの例では、8本、10本、または12本の腕などの腕、またはR基の大部分がエポキシ基を含む。他の例では、R~RまたはR10またはR12は、同じであり、したがってR~RまたはR10またはR12のそれぞれが、エポキシ基を含む。本開示全体を通して、このタイプのPOSS(すなわち、R~RまたはR10またはR12が同じエポキシ基を含む)は、POSSに結合して示される特定のエポキシ官能基を有する「POSS」という言葉で表すことができる。例えば、
【化22】
は、R~RまたはR10またはR12のそれぞれとしてエポキシシクロヘキシルメチル官能基を有するPOSSかごである。他の例では、R~RまたはR10またはR12は、同じではなく、したがって、R~RまたはR10またはR12の少なくとも1つは、エポキシを含み、R~RまたはR10またはR12の他の少なくとも1つは、非エポキシ官能基であり、この非エポキシ官能基は、いくつかの場合、アジド/アジド、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、およびテトラジン、またはさらに例えば、アルキル、アリール、アルコキシおよびハロアルキル基からなる群より選択される。いくつかの態様において、非エポキシ官能基は、樹脂の表面エネルギーを増加させるように選択される。これらの他の例では、エポキシ基と非エポキシ基の比は、7:1~1:7、または9:1~1:9、または11:1~1:11の範囲である。いずれの例においても、二置換または一置換(末端)エポキシ基により、紫外線(UV)および酸を用いて開始すると、モノマー単位を重合して、架橋マトリックス(すなわち樹脂膜)とすることができる。いくつかの態様では、エポキシPOSSは、末端エポキシ基を含む。
【0080】
エポキシPOSSが「変性エポキシPOSS」と呼ばれる場合、制御ラジカル重合(CRP)剤および/または対象となる別の官能基が、1つ以上の官能基R~RまたはR10またはR12として、樹脂またはコアまたはかご型構造に組み込まれていることを意味する。同様に、エポキシPOSS樹脂膜が「変性エポキシPOSS樹脂膜」と呼ばれる場合、制御ラジカル重合(CRP)剤および/または他の対象となる官能基が、架橋マトリックスに組み込まれていることを意味する。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「プライマー」は、DNAまたはRNA合成のための出発点として働く一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNAまたは一本鎖RNA)として定義される。プライマーの5’末端は、官能化分子のコーティング層とのカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。プライマー長は、任意の長さの塩基であり得、そして種々の非天然ヌクレオチドを含み得る。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基を含む短鎖である。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「増感剤」は、フリーラジカル、例えば光開始剤、フリーラジカル開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)、またはチオキサンテノンなどの反応性種の放出によって成分モノマーの光反応性を促進する試薬を指す。いくつかの態様では、増感剤は、選択された紫外線条件下で酸が光酸発生剤から放出されるように、光酸発生剤との向上したエネルギー整合をもたらすように選択される。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「シラン」は、1つ以上のケイ素原子を有する有機または無機化合物を指す。無機シラン化合物の一例は、SiH、または水素が1個以上のハロゲン原子によって置換されているハロゲン化SiHである。有機シラン化合物の例は、X-R-Si(ORであり、式中、Xは、アミノ、メタクリレート、チオール、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、またはエポキシなどの官能化可能な有機基であり、これを使用して、表面および/またはポリマーと結合することができる;Rは、スペーサーであり、例えばアルキレン、ヘテロアルキレン、または-(CH-であり、ここでnは、0~1000または1~100または1~10または2~6である;Rは、本明細書に定義のように、水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたアリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリールおよび任意に置換された5~10員ヘテロシクリルから選択される。いくつかの例では、各Rは同じであり、他の例では、それらは異なっていてもよい。いくつかの例において、Xは、アルケニルまたはシクロアルケニルであり、Rは、-(CH-であり、ここでnは、2~6であり、および/またはRは、アルキルである。他の例では、シラン化合物は、X-R-Si(Rであり、式中、XおよびRは、上で定義したとおりであり、各Rは、独立してRまたはORである。いくつかの例では、Xは、基板または支持体を含む。一般に、アルコキシシラン部分は、金属酸化物またはプラズマ処理されたエポキシPOSSネットワークの表面上などの-OH基と縮合させるために使用される。X官能基は、アルコキシシランと直交しており、CRPまたは他の開始剤と別々にカップリングするために使用される。反応性基の直交性は、POSS樹脂硬化ステップ後、または架橋樹脂のシラン化ステップ後のCRP単位の組み込みを可能にする。本明細書で使用されるとき、用語「シラン」は、異なるシランおよび/またはシラン誘導体化合物の混合物を含み得る。
【0084】
用語「基板」および「支持体」は、本明細書では互換的に使用され、樹脂膜がその上に堆積される材料を指す。適切な支持体の例としては、ガラスおよび変性または官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(Chemours製のTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)またはコポリマー(COC)(Zeon製のZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなど)、ナイロン、セラミック、シリカ、溶融シリカ、または他のシリカ系材料、シリコンおよび変性シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、水素化ケイ素、炭素、金属、無機ガラス、および光ファイバ束などが挙げられる。いくつかの例が提供されているが、他の任意の適切な基板/支持体が使用されてもよいことを理解されたい。
【0085】
本明細書で使用される用語「表面化学」は、支持体/基板の表面上のエポキシPOSS樹脂膜の少なくとも一部に付着したポリマーコーティングまたはポリマーブラシおよびプライマーを指す。
【0086】
「チオール」官能基は、-SH(例えば以下のもの)を指す。
【化23】
【0087】
本明細書で使用されるとき、用語「テトラジン」および「テトラジニル」は、4個の窒素原子を含む6員ヘテロアリール基を意味する。テトラジンは任意に置換され得る。一例では、テトラジンは、環が炭素原子を共有しない多環構造の一部である(例えば以下のもの)。
【化24】
【0088】
本明細書で使用される「テトラゾール」は、4個の窒素原子を含む5員複素環式基を指す。
【0089】
本明細書で使用されるとき、用語「湿潤剤」は、樹脂前駆体混合物の成分による表面被覆を助ける添加剤を指す。例としては、ポリアクリレート界面活性剤またはシリコーン界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「YES法」は、イルミナ社によって開発された、Yield Engineering Systems(「YES」)によって提供されている化学蒸着ツールを使用する、化学蒸着プロセスを指す。このツールは、3つの異なる蒸着システムを含む。自動化されたYES-VertaCoatシラン蒸気システムは、200mmまたは300mmのウェーハに対応できる柔軟なウェーハハンドリングモジュールを使用して、大量生産用に設計されている。手動ロードYES-1224Pシラン蒸気システムは、その構成可能な大容量チャンバで多用途生産のために設計されている。Yes-LabKoteは、実現可能性の研究や研究開発に理想的な低コストの卓上バージョンである。
【0091】
本明細書に記載され特許請求の範囲に記載された態様および例は、上記の定義に照らして理解することができる。
【0092】
図1A図1Fは共に、本明細書に開示のアレイの一例を形成する、本明細書に開示の方法の一例を示す。図1Eは、形成されるアレイの窪みの拡大図である。
【0093】
図1Aは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14がその上に形成された支持体12を示す。本明細書で前述した支持体12の任意の例を使用することができる。一例では、架橋エポキシPOSS樹脂膜14がその上に形成された支持体12は、市販されている。他の例では、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、支持体12上に形成される。
【0094】
通常、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、樹脂前駆体を形成すること、その樹脂前駆体を支持体12の表面上に堆積させること、および紫外線を照射してその樹脂前駆体を硬化させて架橋エポキシPOSS樹脂膜14を形成することによって形成することができる。
【0095】
樹脂前駆体は、混合物であり、これは少なくともエポキシPOSSモノマー単位を含む。その前駆体は、D-シリコン(2つの酸素に結合している)、T-シリコン(3つの酸素に結合している)、およびQ-シリコン(4つの酸素に結合している)などのケイ素含有部分を含む。上述したように、POSS材料は、それぞれ大きさが異なる、かご型多面体構造、分離した不完全に縮合した多面体構造、または非分離シルセスキオキサン構造を含むことができる。エポキシPOSSモノマー単位の例は、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS(アルキルがPOSSかごとエポキシシクロヘキシル基との間のリンカーであり、そしてアルキルが、メチル、エチルなどである)、グリシジルPOSS(R~RまたはR10またはR12基はグリシジルエーテル;例えば以下のもの
【化25】
に結合したアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)を含む)、オクタグリシジルジメチルシリルPOSSなどを含む。いくつかの例では、樹脂前駆体は、1種類のエポキシPOSSモノマー単位を含む。他の例では、樹脂前駆体は、異なるエポキシPOSSモノマー単位を含む。2つの異なるエポキシPOSSモノマー単位を組み合わせて使用するとき、2つの単位の任意の適切な質量比またはモル比を選択することができる。例えば、第1のエポキシPOSSモノマー単位は、エポキシPOSSモノマー単位の総量の約10mol%~約90mol%の範囲の量(X)で存在してもよく、第2のエポキシPOSSモノマー単位は、そのモノマー単位の総量の残りを構成してもよい(すなわち、100mol%~Xmol%)。一例では、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSは、約3:1の質量比またはモル比で一緒に使用されるが、前述のように、他の質量比またはモル比を使用してもよい。
【0096】
いくつかの例では、樹脂前駆体はまた、架橋POSS樹脂マトリックスに組み込むことができるエポキシシランまたは他の反応性シランを含む。エポキシシランは、分子の一端にエポキシ基を含み、その分子の他端にシランを含む。エポキシ基は、エポキシPOSS樹脂膜に共有結合で組み込むことができ(エポキシ基の反応によって)、シラン基は、支持体12の表面基(例えば、-OH)に共有結合させることができる。支持体12が、支持体12にエポキシPOSS樹脂膜を接着することができる表面活性化剤を含まない場合、エポキシシランを含んでもよい。しかしながら、支持体12が、エポキシPOSS樹脂膜を支持体12に接着することができる適切な表面活性化剤を有するシリカ系基板である場合、エポキシシランは排除されてもよいことを理解されたい。
【0097】
他の例では、支持体12が表面活性化剤を含まない場合、架橋エポキシPOSS樹脂膜14を形成するために使用される樹脂前駆体は、エポキシシランまたは他の反応性シランを含まなくてもよい。むしろ、最初にエポキシシランまたは他の反応性シランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を堆積させてシランを支持体12に付着させ、次いで前述の樹脂前駆体(シランなし)をそのシランと反応させ、架橋エポキシPOSS樹脂膜14を形成してもよい。
【0098】
樹脂前駆体は、光酸発生剤(PAG)、増感剤、溶媒、および/または湿潤剤も含み得る。これらの成分は、樹脂前駆体の重合および/または堆積を助けるために任意の適切な量で添加することができる。本明細書に記載のすべての方法のいくつかの態様において、樹脂前駆体は、ポリアクリレート界面活性剤またはシリコーン界面活性剤などの湿潤剤を含む。
【0099】
いくつかの例では、POSS前駆体中の不完全に縮合したシルセスキオキサン材料(これはシラノール基を含有する)は、基板表面と反応してその樹脂をその表面に結合させる。
【0100】
スキーム1は、樹脂前駆体およびそれから形成される架橋エポキシPOSS樹脂膜の一例を示す。
【化26】

スキーム1Aは、架橋樹脂膜の他の例を示す。
【化27】

個々のモノマーが任意の順序またはポリマーパターンで組み合わされてもよく、そして追加のモノマーを示したモノマー単位に結合してもよい、例えば、そのかご型のペンダント腕をさらなるモノマーに結合してもよいので、示したポリマーが例示であることを当業者は理解するであろう。
【0101】
示されるように、この例では、樹脂前駆体は、増感剤およびPAGの存在下で、エポキシシラン(スキーム1に示されるように酸素結合を介して支持体12に結合することができる)、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS、およびグリシジルPOSSを混合することによって形成される。支持体結合エポキシシランは、別の例では、支持体-O-Si(R)-O-C2~6アルキル-(エポキシド)の構造であり得、ここで各Rは、メチルまたはエチル基などのアルキル基である。樹脂前駆体は、特定の例では、支持体結合エポキシ樹脂を1つまたは2つの異なるエポキシPOSSモノマー単位と混合することによって形成される。他の例では、樹脂前駆体は、任意の適切な堆積方法を用いて支持体12の表面上に堆積される。樹脂前駆体の硬化(すなわち、重合および架橋)は、化学線(紫外線(UV)など)に曝露することによって行われる。このプロセスにより、架橋エポキシPOSS樹脂膜14が得られる。最終的な架橋エポキシPOSS樹脂膜14内のモノマーの比率は、初めの樹脂前駆体混合物中のモノマーの化学量論に依存する。
【0102】
図1A図1Fに示す方法のいくつかの例では、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、硬化後にハードベークにかけてもよい。ハードベークは、架橋反応を完了させるのに役立つ(例えば、UVは重合/架橋プロセスを開始し、その反応は完了するまで暗所で続く)。ハードベークはまた、架橋エポキシPOSS樹脂膜14をインキュベートまたは脱水して、硬化後に残る可能性のある溶媒を追い出す。ハードベークの持続時間は、約100℃~約300℃の範囲の温度で約5秒~約10分であり得る。ハードベーキングに使用することができる装置の例は、ホットプレートを含む。
【0103】
図1Aに示すように、いくつかの例では、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、インプリントされていない。
【0104】
図1Aおよび図1Bに示すように、2つの異なるルートAまたはBを実行することができる。ルートAでは、パターン化疎水性ポリマー層16を架橋エポキシPOSS樹脂膜14上に形成し、架橋エポキシPOSS樹脂膜14をさらに処理することはない。ルートBでは、追加の処理を実行して、その後に適用されるポリマーコーティング22の官能基に共有結合することができる官能基を架橋エポキシPOSS樹脂膜14に導入した後、パターン化疎水性ポリマー層16を架橋エポキシPOSS樹脂膜14上に形成する。
【0105】
ルートAでは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、パターン化疎水性ポリマー層16が形成される前に追加の処理にかけられない。このようにして、パターン化疎水性ポリマー層16が、形成されたままの架橋エポキシPOSS樹脂膜14上に形成される。
【0106】
パターン化疎水性ポリマー層16は、架橋エポキシPOSS樹脂膜14よりも疎水性であり、その後に堆積されるポリマーコーティング22に付着しない任意のポリマーで構成されていてもよい。疎水性ポリマーの例は、フッ素化ポリマー、ネガ型フォトレジスト、またはポリシロキサンを含む。フッ素化ポリマーは、アモルファス(非結晶)フルオロポリマー(例えば、Bellex製のCYTOP(登録商標))、結晶質フルオロポリマー、またはアモルファスドメインと結晶質ドメインの両方を有するフルオロポリマーであり得る。エポキシ系ネガ型フォトレジスト(例えば、MicroChem製のSU-8シリーズ)などの任意の適切なネガ型フォトレジストを使用することができる。ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの任意の適切なポリシロキサンもまた使用され得る。
【0107】
パターン化疎水性ポリマー層16は、任意の適切な技術によって形成され得る。パターン化疎水性ポリマー層16を形成する一例では、疎水性ポリマーを架橋エポキシPOSS樹脂膜14上に堆積させ(例えばスピンコートなど)、その堆積された疎水性ポリマーをナノインプリントリソグラフィおよび/またはフォトリソグラフィを使用してパターン形成する。パターン化疎水性ポリマー層16を形成する別の例では、疎水性ポリマーは、インクジェット印刷および/またはマイクロコンタクト印刷を使用して、架橋エポキシPOSS樹脂膜14上に所望のパターンで堆積される。
【0108】
パターン化疎水性ポリマー層16は、隣接する窪み18を隔てる介在領域20を含む連続層であり得る。各窪み18において、架橋エポキシPOSS樹脂膜14の不連続領域が露出される(図1Bに示すように)。
【0109】
規則的パターン、繰り返しパターン、および非規則的パターンを含む、窪み18の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、窪み18は、最密充填および向上した密度のために六角形格子に配置される。他のレイアウトは、例えば、直線(すなわち、長方形)レイアウト、三角形レイアウトなどを含み得る。レイアウトまたはパターンは、行および列にある窪み18のx-yフォーマットであり得る。いくつかの他の例では、レイアウトまたはパターンは、窪み18および/または介在領域20の繰り返し配列であり得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパターンは、窪み18および/または介在領域20のランダム配列であり得る。パターンは、スポット、パッド、穴、ポスト、ストライプ、渦、線、三角形、長方形(例えば、流路を画定する)、円、弧、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、および/またはクロスハッチを含み得る。いくつかの例では、パターンは穴を含む。本明細書に記載の例で使用することができるパターン化表面のさらに他の例は、米国特許第8,778,849号;同第9,079,148号;同第8,778,848号および米国特許出願公開第2014/0243224号公報に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0110】
レイアウトまたはパターンは、画定された領域内の窪み18の密度(すなわち窪み18の数)に関して特徴付けることができる。例えば、窪み18は、約200万個/mmの密度で存在し得る。密度は、例えば、少なくとも約100個/mm、少なくとも約1,000個/mm、少なくとも約10万個/mm、少なくとも約100万個/mm、少なくとも約200万個/mm、少なくとも約500万個/mm、少なくとも約1000万個/mm、少なくとも約5000万個/mmまたはそれ以上の密度を含む様々な密度に調整することができる。代替的または追加的に、密度は、約5000万個/mm以下、約1000万個/mm以下、約500万個/mm以下、約200万個/mm以下、約100万個/mm以下、約10万個/mm以下、約1,000個/mm以下、約100個/mm以下またはそれ未満に調整することができる。さらに、パターン化疎水性ポリマー層16によって画定される窪み18の密度は、上記の範囲から選択される下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得ることを理解されたい。例として、高密度アレイは、約1μm未満の介在領域20によって隔てられた窪み18を有することを特徴とすることがあり、低密度アレイは、約1μmを超える介在領域20によって隔てられた窪み18を有することを特徴とし得る。
【0111】
追加でまたは代替的に、レイアウトまたはパターンは、平均ピッチ、すなわち窪み18の中心から隣接する介在領域20の中心までの間隔(中心間間隔)によって特徴付けることができる。パターンは、平均ピッチの周りの変動係数が小さくなるように規則的とすることができ、またはパターンは非規則的とすることができ、その場合変動係数は比較的大きくなり得る。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、平均ピッチは、例えば、約100μm以下、約10μm以下、約5μm以下、約1μm以下、約0.5μm以下、約0.1μm以下またはそれ未満であり得る。特定のパターンの窪み18の平均ピッチは、上記の範囲から選択される下限値の1つと上限値の1つとの間にあり得る。一例では、窪み18は、約1.5μmのピッチ(中心間距離)を有する。
【0112】
図1Bに示す例では、窪み18は穴である。穴は、マイクロ穴またはナノ穴であり得る。各穴は、その体積、穴開口面積、深さ、および/または直径によって特徴付けられ得る。
【0113】
各穴は、液体を閉じ込めることができる任意の体積を有し得る。最小体積または最大体積は、例えば、アレイ10’(図1Fに示す)の川下での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、分解能、検体組成、または検体反応性に適応するように選択することができる。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、体積は、約1×10μm以下、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.1μm以下またはそれ未満であり得る。
【0114】
表面の各穴開口部によって占有される面積は、穴体積について上述したものと同様の基準に基づいて選択することができる。例えば、表面上の各穴開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的にまたは追加的に、面積は、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.1μm以下、約1×10-2μm以下またはそれ未満であり得る。
【0115】
各穴の深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、深さは、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.1μm以下またはそれ未満であり得る。
【0116】
いくつかの例では、各穴の直径は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、直径は、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.5μm以下、約0.1μm以下またはそれ未満(例えば、約50nm)であり得る。
【0117】
図1A図1Bの間に示したルートBでは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14は、パターン化疎水性ポリマー層16がその上に前述の方法で形成される前に、追加の処理にかけられる。
【0118】
この追加の処理は、プラズマアッシングまたは架橋エポキシPOSS樹脂膜14にヒドロキシル基を導入するための化学処理を含むことができる。いくつかの例では、その処理は、酸素プラズマアッシングであり、そのプロセスは、樹脂膜に遊離の-OH基(例えば、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基)を導入する。スキーム2は、架橋エポキシPOSS樹脂膜14へのヒドロキシル基の導入の一例を示す。
【化28】
【0119】
スキーム2Aは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14へのヒドロキシル基の導入の別の例を示す。
【化29】
【0120】
次いで、ヒドロキシル基含有架橋エポキシPOSS樹脂膜14をシラン化または他の化学プロセスにかけて、ヒドロキシル基に結合可能な官能基(例えば、図1Eの「FG」)を導入することができる。これらの官能基FGは、窪み18内に露出された架橋エポキシPOSS樹脂膜14へのその後適用されるポリマーコーティング22の付着を向上させるアンカー分子であり得る。したがって、官能基FGの選択は、ポリマーコーティング22(図1Cに示される)を形成するために使用される分子に、ある程度依存し得る。これは、官能基FGとその後に堆積されるポリマーコーティング22との間に共有結合および/または非共有結合(例えば、ファンデルワールスまたは水素)を形成することが望ましい場合があるためである。官能基FGの例は、以下からなる群より選択される。
【化30】
式中、---は、アルキルシラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシアルキルシランとの反応による)、ポリ(エチレングリコール)-シラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシシランポリ(エチレングリコール)との反応による)、またはハロゲン化アルキル-シラン(例えば、ヒドロキシル基とハロゲン化アルキルとの反応による)、またはポリエチレングリコール鎖、またはヒドロキシル基と三脚接続を形成し得る任意の他のシラン、またはヒドロキシル基でC-C-O-接続を形成し得る他の基を表す。これらの官能基、またはパターン化疎水性コーティング層16の形成中に行われる処理に耐えることができる他の任意の官能基を使用することができる。プロセス条件はまた、望ましい官能基を利用するように調整されてもよい。官能基のいくつかの例を提供したが、エポキシPOSS樹脂膜14に共有結合させることができる、またはエポキシPOSS樹脂膜14によって捕捉することができ、かつエポキシPOSS樹脂膜14に望ましい官能性を導入することができる、他の親水性または疎水性の官能基を使用し得ることを理解されたい。なおさらに、様々な官能基FGの誘導体および/または官能基FGの置換された変形形態を使用することができる。他の例では、ポリマーコーティングは、プラズマアッシングの直後に、別個のシラン化または官能化ステップなしに、架橋エポキシPOSS樹脂膜にコーティングおよび硬化することができる。
【0121】
官能基FGを架橋エポキシPOSS樹脂膜14のヒドロキシル基に結合させるために使用される方法は、使用されている官能基FGに応じて変わり得る。適切な方法の例には、蒸着、YES法、溶液堆積方法、または他の堆積方法が含まれる。
【0122】
ルートBでは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14を変性して官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’を形成する。次いで、パターン化疎水性ポリマー層16(その介在領域20および窪み18を含む)を前述の方法で、官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’上に形成することができる。この例では、官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の不連続部分が、窪み18で露出している。
【0123】
ルートAまたはルートBのどちらが実施されるかにかかわらず、パターン化疎水性ポリマー層16が形成された後、ポリマーコーティング22がパターン化疎水性ポリマー層16上および窪み18内に適用または成長される。これを図1Cに示す。
【0124】
ポリマーコーティング22は、スピンコーティング、浸漬またはディップコーティング、スプレーコーティングなどを用いて、パターン化疎水性ポリマー層16上および架橋エポキシPOSS樹脂膜14または官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の露出した表面上に堆積させることができる。一例では、ポリマーコーティング22は溶液として堆積され、その一例は、エタノールと水の混合物中のPAZAMを含む。濡れを促進する任意の溶媒または溶媒の組み合わせを使用することができる。濡れを助けるために界面活性剤を溶液に添加することもできる。
【0125】
コーティングされた後、ポリマーコーティング22は硬化プロセスにかけて、付着コーティング部分22’(ポリマーコーティング22が窪み18内の露出された架橋エポキシPOSS樹脂膜14または官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’に付着する)と未付着コーティング部分22”(ポリマーコーティング22はパターン化疎水性ポリマー層16に付着しない(例えば、介在領域20で))とを形成し得る。硬化温度は、約20℃~約80℃の範囲であってもよく、そして硬化時間は、数秒~約120分の範囲であってもよい。一例では、ポリマーコーティング22の硬化は、約60℃で約1時間行われてもよい。硬化温度および時間は、部分的には、形成されるポリマーコーティング22に応じて変わり得る。
【0126】
ルートBを利用して官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’を形成する場合、ポリマーコーティング22を樹脂膜14’の表面から成長させることができる。例えば、樹脂膜14’およびパターン化疎水性ポリマー層16を有する支持体12を、モノマーおよび開始剤を含む適切な浴に浸漬することができる。そのモノマーの重合は、ポリマーコーティング22の付着部分22’を形成するであろう。
【0127】
付着コーティング部分22’および未付着コーティング部分22”が図1Cに示されている。付着コーティング部分22’の付着のメカニズムは、架橋エポキシPOSS樹脂膜14が存在する(ルートA)かどうかまたは官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’が存在するかどうか(ルートB)によるだろう。
【0128】
一例として、ポリマーコーティング22は、架橋エポキシPOSS樹脂膜14の未反応エポキシ基に付着するか、または挿入されて付着コーティング部分22’を形成することができる。例えば、ポリマー構造上の遊離アミン(例えば、式(I))は、架橋エポキシPOSS樹脂膜14中の未反応エポキシ基と反応し得る。
【0129】
別の例として、ポリマーコーティング22は、官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の追加された官能基FGに付着して、付着コーティング部分22’を形成することができる。起こる反応は、官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の官能基FGおよびポリマーコーティング22の官能基によるだろう。以下は、起こり得る反応のいくつかの例である。
【0130】
官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の官能基FGがノルボルネンまたはノルボルネン誘導体である場合、そのノルボルネンまたはノルボルネン誘導体は、以下のことが可能である:i)PAZAMまたは式(I)のポリマーのアジド/アジド基との1,3-双極子付加環化反応(すなわちクリック反応);ii)ポリマー構造(例えば式(I))に結合したテトラジン基とのカップリング反応;iii)ポリマー構造(例えば式(I))に結合したヒドラゾン基との環化付加反応;iv)ポリマー構造(例えば式(I))に結合したテトラゾール基との光クリック反応;またはv)ポリマー構造(例えば式(I))に結合したニトリルオキシド基との環化付加。PAZAMのアジド/アジド基と1,3-双極子付加環化反応をするノルボルネンまたはノルボルネン官能基の例をスキーム3に示す。
【化31】

ここで、-CHC(O)NHR基は、PAZAMポリマーの側鎖である。
【0131】
他の例では、官能化架橋エポキシPOSS樹脂の官能基FGは、上記の表面官能化方法によって付加されたヒドロキシル位置に導入される。一例がスキーム3Aに示されており、FGは本明細書に記載の官能基である。
【化32】
【0132】
いくつかの例では、付加された官能基は、アルケンまたはシクロアルカン基を含む。一例では、そのような基は、スキーム3Bに示される。
【化33】
【0133】
一例では、ポリマーコーティング22の導入は、付属の官能基を有する、式(I)のポリマー、またはPAZAM、またはSFAとアジドまたはブロモ官能化SFAとの組み合わせなどのポリマー材料との反応によって達成される。一例をスキーム3Cに示し、それはPOSS樹脂膜上のただ1つの反応部位を示す。当業者は、ポリマーコーティングと官能化POSS樹脂膜との反応がポリマーおよび樹脂の複数の位置で起こることを認識するであろう。
【化34】
【0134】
官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の官能基FGがシクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体である場合、そのシクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体は、i)PAZAM(または式(I)ポリマーなどの他のポリマー)のアジド/アジドとの歪み促進アジド-アルキン1,3-付加環化(SPAAC)反応、またはii)ポリマー(式(I)など)に結合したニトリルオキシド基との歪み促進アルキン-ニトリルオキシド環化付加反応をすることができる。
【0135】
官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の官能基FGがビシクロノニンである場合、ビシクロノニンは、二環式環系における歪みのため、PAZAM(または式(I)ポリマーなどの他の適切なポリマー材料)に付着したアジドまたはニトリルオキシドとの同様のSPAACアルキン付加環化を受け得る。
【0136】
付着コーティング部分22’および未付着コーティング部分22”が形成された後、未付着コーティング部分22”は、パターン化疎水性層16から洗い流されてもよい(場合によっては付着コーティング部分22’から離れて)。洗浄プロセスは、水浴および超音波処理を利用してもよい。水浴は、約20℃~約60℃の範囲の比較的低い温度に維持することができる。図1Dは、未付着コーティング部分22”を除去した後のアレイ10を示す。
【0137】
図1Eは、その中に付着コーティング部分22’が形成された後の窪み18の1つの拡大図である。図1Eに示す例では、官能化架橋エポキシPOSS樹脂膜14’が形成されており、ノルボルネンシランが、官能基FGであり、架橋エポキシPOSS樹脂膜14’の表面に付加されている。PAZAMは官能基FGに結合して、パターン化疎水性ポリマー層16によって画定された窪み18内に付着コーティング部分22’を形成する。
【0138】
ここで図1Fを参照すると、増幅プライマー24は、付着ポリマーコーティング部分22’にグラフトすることができる。適切なプライマー24の例には、フォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーが含まれる。適切なプライマー24の具体例には、HiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商標)、MiSeq(登録商標)、NextSeq(登録商標)およびGenome Analyzer(登録商標)機器プラットフォームでの配列決定のためにIllumina Inc.によって販売される市販のフローセルの表面で使用される、P5またはP7プライマーが含まれる。
【0139】
増幅プライマー24は、5’末端で、付着コーティング部分22’の官能基(例えば、図1Eに示されるアジド)と反応可能な基で修飾することができる。例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン(BCN)末端プライマーは、歪み促進触媒フリークリックケミストリーによって、付着コーティング部分22’のアジドによって捕捉され得る。別の例では、アルキン末端プライマーは、銅触媒クリックケミストリーによって、付着コーティング部分22’のアジドによって捕捉され得る。さらに別の例では、ノルボルネン末端プライマーは、テトラジン官能化付着コーティング部分22’と無触媒環歪み促進クリック反応を受けることができる。用いることができる末端プライマーの他の例には、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマーおよびトリアゾリンジオン末端プライマーが含まれる。末端プライマーの他の例は、チオホスフェート末端プライマーである。
【0140】
グラフトは、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンスによって、または少なくともいくつかの窪み18においてプライマー24を付着コーティング部分22’に結合する別の適切な方法によって達成され得る。これらの例のそれぞれは、プライマー溶液または混合物を利用することができ、これはプライマー24、水、緩衝剤、および任意の触媒を含むことができる。
【0141】
ダンクコーティングは、アレイ10(図1Dに示す)を一連の温度制御された浴に浸漬すること(自動または手動プロセスによる)を含み得る。その浴は、プライマー溶液またはプライマー混合物を含み得る。様々な浴を通して、プライマー24は、窪み18の少なくとも一部における付着コーティング部分22’に付着する。一例では、アレイ10は、プライマー溶液またはプライマー混合物を含む第1の浴に導入され、そこでプライマー24を付着させるために反応が起こり、次いでそのアレイ10’は、洗浄のために追加の浴に移動される。
【0142】
スプレーコーティングは、アレイ10上にプライマー溶液またはプライマー混合物を直接スプレーすることによって達成され得る。スプレーコーティングされたアレイは、約10℃~約70℃の範囲の温度で約5分~約60分の時間インキュベートされ得る。インキュベーション後、プライマー溶液またはプライマー混合物は、例えばスピンコーターを用いて、希釈および除去することができる。
【0143】
パドルディスペンスは、プールおよびスピンオフ方法に従って実行されてもよく、したがってスピンコーターを用いて達成されてもよい。プライマー溶液またはプライマー混合物をアレイ10に適用する(手動でまたは自動プロセスによって)ことができる。適用されたプライマー溶液またはプライマー混合物をアレイ10の表面全体に適用または広げることができる。プライマー被覆アレイ10を約10℃~約80℃の範囲の温度で、約5分~約60分の範囲の時間、インキュベートすることができる。インキュベーション後、プライマー溶液またはプライマー混合物は、例えばスピンコーターを用いて、希釈および除去することができる。
【0144】
グラフト後、所望の表面化学が適用されており、アレイ10’は、様々な配列決定アプローチまたは技術において使用され得る。
【0145】
図1A~1Fに示される方法の例は、変性エポキシPOSSモノマー単位を用いても実施され得る。この例では、樹脂前駆体は、前述のエポキシPOSSモノマー単位および変性エポキシPOSSモノマー単位を含む。これらの例では、変性エポキシPOSSモノマー単位のR~RまたはR10またはR12の少なくとも1つはエポキシ基であり(エポキシPOSS樹脂膜14への組み込みのため)、そしてR~RまたはR10またはR12の少なくとも1つは、続いて適用されるポリマーコーティング22の官能基に共有結合または非共有結合することができる別の官能基である。このように、この例では、他の官能基は、POSSコアまたはかご型構造に直接組み込まれる。他の官能基の例には、官能基FGの例のいずれかが含まれる。
【0146】
変性エポキシPOSSモノマー単位を含む樹脂前駆体は、約50mol%~約90mol%のエポキシPOSSモノマー単位および約10mol%~約50mol%の変性エポキシPOSSモノマー単位(すなわち、100mol%-エポキシPOSSモノマー単位のXmol%)を含み得る。そのため、樹脂前駆体のいくつかの例では、エポキシPOSSモノマー単位と変性エポキシPOSSモノマー単位との質量比またはモル比は、約1:1~約9:1の範囲である。これらの樹脂前駆体において、2つの異なる(未変性)エポキシPOSSモノマー単位を組み合わせて使用する場合、その2つの単位の任意の適切な質量比またはモル比を選択することができる。例えば、第1のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS)は、エポキシPOSSモノマー単位の総量の約10mol%~約90mol%の範囲の量(Y)で存在してもよく、第2のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、グリシジルPOSS)は、全エポキシPOSSモノマー単位の残り(すなわち、100mol%のエポキシPOSSモノマー単位-Ymol%)を構成してもよい。他の例では、任意のエポキシPOSSモノマー単位および任意の変性エポキシPOSSモノマー単位が、約10mol%~約90mol%の範囲の量で存在してもよい。
【0147】
樹脂膜を形成するための変性エポキシPOSSモノマー単位の使用は、樹脂膜のバックボーンに官能基FGを直接導入し、したがって、ルートBに記載されるように樹脂膜にさらなる処理を行う必要なしに、ポリマーコーティング22の付着のための部位(未反応エポキシ基以外の)を提供する。
【0148】
図2A図2Dは共に、本明細書に開示の方法の別の例を示しており、それは本明細書に開示されるアレイの別の例を形成する。図2Cは、形成されるアレイの窪みの拡大図である。
【0149】
図2A図2Dに示される例示的な方法では、変性エポキシPOSS樹脂膜14”が形成され、これは、架橋マトリックスに組み込まれた制御ラジカル重合(CRP)剤(図2Cにおいて26として模式的に示される)を含む。CRP剤26は、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤または原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤であり得る。RAFT剤については、表面におけるチオカルボニル基の配向が重合に影響を与える。一例では、RAFT剤は、成長するラジカル鎖が表面から離れるように、安定化基によって変性エポキシPOSS樹脂膜14”の表面に共有結合することができる。これはZ基アプローチと呼ばれる。別の例では、RAFTは、脱離基および開始基によって表面に結合する(すなわち、R基アプローチ)。R基アプローチは、分子量に対するより大きな制御を可能にし、鎖-鎖カップリングは最小化され得る。
【0150】
本明細書でさらに説明されるように、CRP剤26は、硬化中または硬化後に架橋マトリックスに組み込まれてもよく、架橋マトリックスのバックボーンに組み込まれてもよく(非POSSモノマー単位または変性エポキシPOSSモノマー単位によって)、または他の官能基によってバックボーンに結合してもよい。
【0151】
図2Aは、その上に形成された変性エポキシPOSS樹脂膜14”を有する支持体12を示す。本明細書で前述した支持体12の任意の例を使用することができる。一例では、変性エポキシPOSS樹脂膜14”が支持体12上に形成され、図2Aは、変性エポキシPOSS樹脂膜14”を形成するための、ルートC、ルートDおよびルートEとして示される3つのルートを示す。
【0152】
ルートCを使用すると、CRP含有モノマー単位を含む樹脂前駆体が形成され、樹脂前駆体は支持体12の表面上に堆積され、そして樹脂前駆体は、UV光を照射されて硬化して架橋エポキシPOSS樹脂膜14”を形成する。そのため、ルートCは、樹脂前駆体の硬化中に樹脂膜14”の架橋マトリックスのバックボーンにCRP剤26を組み込むことを含む。
【0153】
この例では、樹脂前駆体は混合物であり、これは少なくともエポキシPOSSモノマー単位およびCRP含有モノマー単位を含む。本明細書に記載のエポキシPOSSモノマー単位の任意の例を使用することができる。CRP含有モノマー単位は、非POSSモノマー単位または変性エポキシPOSSモノマー単位であり得る。
【0154】
CRP含有非POSSモノマー単位は、POSSコアを含まない。むしろ、CRP剤26は、エポキシPOSSモノマー単位を有する変性エポキシPOSS樹脂膜14”に共有結合的に組み込まれ得る官能基につながれる。一例として、CRP剤26をエポキシ官能基と反応させて、エポキシ官能化RAFT剤(スキーム4)またはエポキシ官能化ATRP開始剤(スキーム5)などの、エポキシ官能化CRP剤を形成することができる。
【化35】
【0155】
スキーム4では、RAFT剤は、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステルであり、エポキシ官能基は、グリシジルプロパルギルエーテルである。他の市販のRAFT剤または他の調製されたRAFT剤を使用してもよいことを理解されたい。他の適切なRAFT剤は、以下の4-シアノ‐4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノールであり、
【化36】
これは、任意のエポキシハロヒドリン(例えば以下のエピクロロヒドリン)
【化37】
と反応して、エポキシ官能化RAFT剤の別の例を形成し得る。
【化38】
【0156】
スキーム5では、ATRP開始剤は、2-アジドエチル 2-ブロモイソブチレートであり、エポキシ官能基は、グリシジルプロパルギルエーテルである。ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル2-ブロモイソブチレートなどの、他の市販のATRP開始剤または他の調製されたATRP開始剤を使用してもよいことを理解されたい。
【0157】
上述のように、CRP含有モノマー単位は、変性エポキシPOSSモノマー単位であり得る。これらの例では、モノマー単位は、R~RまたはR10またはR12の少なくとも1つとしてエポキシ基(エポキシPOSS樹脂膜14”への組み込みのため)を有し、そしてR~RまたはR10またはR12の少なくとも1つとしてCRP剤26を有するPOSSコアである。そのため、この例では、CRP剤26は、POSSコアまたはかご型構造に直接組み込まれている。例として、以下の構造
【化39】
を有する任意のRAFT剤および以下の構造
【化40】
を有する任意のATRP開始剤、例えば、2-アジドエチル2-ブロモイソブチレート、2-ブロモイソ酪酸無水物、ブロモイソブチリルブロミド、またはポリ(エチレングリコール)ビス(2-ブロモイソブチレート)を使用することができる。例えば、RAFT剤は、以下のものであってもよい。
【化41】
他の適切なRAFT剤は、ジチオベンゾエート、トリチオカーボネートおよびジチオカルバメートである。前述の特定のRAFT剤またはATRP開始剤も使用して、エポキシPOSSコア/かご型を変性し得る。
【0158】
ルートCでは、CRP含有モノマー単位を含む樹脂前駆体は、約50mol%~約90mol%のエポキシPOSSモノマー単位および約10mol%~約50mol%のCRP含有モノマー単位(すなわち100mol%-エポキシPOSSモノマー単位のXmol%)を含み得る。そのため、樹脂前駆体のいくつかの例では、エポキシPOSSモノマー単位とCRP含有モノマー単位とのモル比または質量比は、約1:1~約9:1の範囲である。一例として、全エポキシPOSSモノマー単位(例えば、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSS)とエポキシ官能化CRP剤とのモル比または質量比は、約1:1~約9:1の範囲である。これらの樹脂前駆体において、2つの異なる(未変性)エポキシPOSSモノマー単位を組み合わせて使用する場合、その2つの単位の任意の適切な質量比またはモル比を選択することができる。例えば、第1のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS)は、エポキシPOSSモノマー単位の総量の約10mol%~約90mol%の範囲の量(Y)で存在してもよく、第2のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、グリシジルPOSS)は、全エポキシPOSSモノマー単位の残り(すなわち、100mol%のエポキシPOSSモノマー単位-Ymol%)を構成してもよい。他の例では、任意のエポキシPOSSモノマー単位および任意のCRP含有モノマー単位は、約10mol%~約90mol%の範囲の量で存在し得る。
【0159】
ルートCを使用するいくつかの例では、樹脂前駆体は、エポキシシランまたは架橋POSS樹脂マトリックスに組み込むことができる他の反応性シランも含む。エポキシシランは、その分子の一端にエポキシ基を含み、その分子の他端にシランを含む。エポキシ基は、変性エポキシPOSS樹脂膜14”に共有結合させることができ、シラン基は、支持体12の表面基(例えば、-OH)に共有結合させることができる。エポキシPOSS樹脂膜14”を支持体12に接着することができる表面活性化剤を支持体12が含まない場合、エポキシシランを含むことができる。しかしながら、支持体12が、エポキシPOSS樹脂膜14”を支持体12に接着することができる適切な表面活性化剤を有するシリカ系基板である場合、エポキシシランは除外され得ることを理解されたい。
【0160】
他の例では、支持体12が表面活性化剤を含まない場合、変性架橋エポキシPOSS樹脂膜14”を形成するのに使用される樹脂前駆体は、エポキシシランまたは他の反応性シランを含まなくてもよい。むしろ、エポキシシランまたは他の反応性シランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を最初に堆積させて、シランを支持体12に付着させ、次いでルートCのための前述の樹脂前駆体(シランなし)をシランと反応させて、変性エポキシPOSS樹脂膜14”を形成することができる。
【0161】
ルートCで使用される樹脂前駆体はまた、光酸発生剤(PAG)、増感剤、溶媒、および/または湿潤剤を含み得る。これらの成分は、樹脂前駆体の重合および/または堆積を助けるために任意の適切な量で添加することができる。
【0162】
スキーム6および7は、ルートCで使用される樹脂前駆体およびそれから形成される変性エポキシPOSS樹脂膜の例を示す。これらの例は、CRP含有非POSSモノマー単位の使用を説明する。
【化42】

【化43】

当業者は、スキーム6および7に示されるPOSS樹脂膜はまた、前述のスキームに示されるように描かれてもよいこと、樹脂膜は、任意の順序またはポリマーパターン(例えばランダム、ブロック、交互、またはそれらの組み合わせ)でモノマー単位が構成されることを理解するだろう。
【0163】
これらの例では、樹脂前駆体は、増感剤およびPAGの存在下で、CRP含有非POSSモノマー単位(すなわち、エポキシ官能化RAFT剤またはエポキシ官能化ATRP開始剤)、エポキシシランまたは他の反応性シラン(これは、スキーム6および7に示したように酸素結合を介して支持体12に付着し得る)、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSSおよびグリシジルPOSSを混合することによって形成される。樹脂前駆体は、任意の適切な堆積方法を用いて、支持体12の表面上に堆積される。樹脂前駆体の硬化(すなわち、重合および架橋)は、化学線(紫外線(UV)など)に曝露することによって行われる。このプロセスにより、架橋エポキシPOSS樹脂膜14”が得られる。最終的な架橋エポキシPOSS樹脂膜14”内のモノマーの比率は、初めの樹脂前駆体混合物中のモノマーの化学量論に依存する。
【0164】
スキーム6および7の両方に示されるように、CRP含有非POSSモノマー単位は、樹脂前駆体の硬化中に、樹脂膜14”の架橋マトリックスのバックボーンにポリマー成長開始部位(すなわち、CRP開始部位)を導入する。図示しないが、CRP含有非POSSモノマー単位の代わりにCRP含有エポキシPOSSモノマー単位が使用される場合、架橋マトリックスのバックボーンは、ポリマー成長開始部位(すなわちCRP開始部位)が付着している、追加のPOSSかごを含むことを理解されたい。
【0165】
ルートDは、樹脂膜14”が硬化した後に、他の官能基によって架橋マトリックスのバックボーンにCRP剤26を付着させることを含む。
【0166】
この例では、樹脂前駆体は、図1Aを参照して説明したものと同様の混合物である。例えば、ルートDの樹脂前駆体は、エポキシPOSSモノマー単位、エポキシシランまたは他の反応性シラン(例えば、支持体12への付着が望ましい場合)、光酸発生剤(PAG)、増感剤、溶媒および/または湿潤剤を含み得る。樹脂前駆体は、任意の適切な堆積方法を用いて,支持体12の表面上に堆積される。樹脂前駆体の硬化(すなわち、重合および架橋)は、化学線(紫外線(UV)など)に曝露することによって行われる。このプロセスにより、先述した(例えばスキーム1参照)樹脂膜14と同様の、架橋エポキシPOSS樹脂膜が得られる。ハードベークは、前述のように実行することができる。ルートDでは、エポキシシランまたは他の反応性シランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を最初に堆積させて、シランを支持体12に付着させ、次いで、ルートDのための前述の樹脂前駆体(シランなし)をシランと反応させて、架橋エポキシPOSS樹脂膜14を形成し得ることを理解されたい。
【0167】
次いで、架橋エポキシPOSS樹脂膜をプラズマアッシングまたは化学処理にかけて、-OH基(例えば、ヒドロキシル(C-OHまたはSi-OH)および/またはカルボキシル基)を架橋エポキシPOSS樹脂膜に導入する(例えば、スキーム2に示すように)。
【0168】
次いで、ヒドロキシル基含有架橋エポキシPOSS樹脂膜をシラン化または他の化学プロセスにかけて、ヒドロキシル基に官能基を導入することができ、ここで選択された官能基は、所望のCRP剤26に結合し得る。そのため、ルートDにおける官能基の選択は、結合しようとするCRP剤26に部分的には、依存し得る。例えば、末端アジド基を有するRAFT剤は、架橋エポキシPOSS樹脂膜のヒドロキシル基に結合しているアルキン官能基と反応することができる。
【0169】
ルートDにおける適切な官能基の例は、以下からなる群より選択される。
【化44】
式中、---は、架橋エポキシPOSS樹脂膜の-OH基と反応可能な種を表す。---の例は、アルキルシラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシアルキルシランとの反応による)、ポリ(エチレングリコール)-シラン(例えば、ヒドロキシル基とトリアルコキシシランポリ(エチレングリコール)との反応による)、またはハロゲン化アルキル-シラン(例えば、ヒドロキシル基とハロゲン化アルキルとの反応による)、またはポリエチレングリコール鎖、またはヒドロキシル基と三脚接続を形成し得る任意の他のシラン、またはヒドロキシル基でC-C-O-接続を形成し得る他の基を含む。官能基のいくつかの具体例には、シランPEGアジド(Polysciences、Inc.)、シランPEGアルキン(Polysciences、Inc.)、3-アジドプロピルトリエトキシシラン(Gelest)、または(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)トリエトキシシランが含まれる。いくつかの例が提供されているが、架橋エポキシPOSS樹脂膜のヒドロキシル基およびCRP剤26に結合することができる任意の官能基を用いてもよいことが理解されるべきである。
【0170】
官能基を架橋エポキシPOSS樹脂膜のヒドロキシル基に結合させるために使用される方法は、使用される官能基に応じて変わり得る。適切な方法の例には、蒸着、YES法、溶液堆積方法(例えば、ダンクコーティング)、または他の堆積方法が含まれる。
【0171】
次いで、前述の任意のCRP剤26(例えば、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノールなど)を架橋エポキシPOSS樹脂膜の官能基に結合してもよい。CRP剤26を架橋エポキシPOSS樹脂膜の官能基に結合するのに使用される方法は、使用されるCRP剤26に応じて変わり得る。適切な方法の例には、溶液堆積法が含まれる。
【0172】
ルートDでは、架橋エポキシPOSS樹脂膜を最初に変性して前述の官能基を付加し、次にCRP剤26をその官能基の少なくとも一部に結合させて変性エポキシPOSS樹脂膜14”(ポリマー成長開始部位を含む)の例を形成する。
【0173】
ルートDと同様に、ルートEは、樹脂膜14”が硬化した後にCRP剤26を架橋マトリックスのバックボーンに結合させることを含む。
【0174】
ルートEにおいて、樹脂前駆体は、エポキシPOSSモノマー単位と変性エポキシPOSSモノマー単位とを含む混合物である。この変性エポキシPOSSモノマー単位の例では、R~RまたはR10またはR12の少なくとも1つはエポキシ基(エポキシPOSS樹脂膜14”に組み込むため)およびR~RまたはR10またはR12の少なくとも1つは、CRP剤26に結合可能な非エポキシ官能基である(例えば、非エポキシ官能基は、アジド、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネンおよびテトラジンからなる群から選択され得る)。この非エポキシ官能基は、硬化中に初期変性エポキシPOSS樹脂膜に組み込まれるであろう。
【0175】
ルートEのための樹脂前駆体は、約50mol%~約90mol%のエポキシPOSSモノマー単位および約10mol%~約50mol%の変性エポキシPOSSモノマー単位(すなわち、100mol%-エポキシPOSSモノマー単位のXmol%)を含み得る。そのため、樹脂前駆体のいくつかの例では、エポキシPOSSモノマー単位と変性エポキシPOSSモノマー単位とのモル比または質量比は、約1:1~約9:1の範囲である。これらの樹脂前駆体において、2つの異なる(未変性)エポキシPOSSモノマー単位を組み合わせて使用する場合、その2つの単位の任意の適切な質量比またはモル比を選択することができる。例えば、第1のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、エポキシシクロヘキシルアルキルPOSS)は、エポキシPOSSモノマー単位の総量の約10mol%~約90mol%の範囲の量(Y)で存在してもよく、第2のエポキシPOSSモノマー単位(例えば、グリシジルPOSS)は、全エポキシPOSSモノマー単位の残り(すなわち、100mol%のエポキシPOSSモノマー単位-Ymol%)を構成してもよい。他の例では、任意のエポキシPOSSモノマー単位および任意の変性モノマー単位は、約10mol%~約90mol%の範囲の量で存在してもよい。
【0176】
ルートEのための樹脂前駆体はまた、エポキシシランまたは他の反応性シラン(例えば、支持体12への結合が望ましい場合)、光酸発生剤(PAG)、増感剤、溶媒、および/または湿潤剤を含み得る。樹脂前駆体は、任意の適切な堆積方法を用いて支持体12の表面上に堆積される。樹脂前駆体の硬化(すなわち、重合および架橋)は、化学線(紫外線(UV)など)に曝露することによって行われる。このプロセスは、非エポキシ官能基を含む、初期変性エポキシPOSS樹脂膜をもたらす。ハードベークは、前述のように実行することができる。ルートEでは、エポキシシランまたは他の反応性シランおよび少なくとも1つのエポキシPOSSモノマー単位を最初に堆積させてシランを支持体12に結合させ、次いでルートEの前述の樹脂前駆体(シランなし)をシランと反応させて架橋エポキシPOSS樹脂膜14”を形成することができることを理解されたい。
【0177】
次に、所望のCRP剤26を初期変性エポキシPOSS樹脂膜に導入して、ポリマー成長開始部位を含む変性エポキシ樹脂膜14”を形成することができる。CRP剤26は、本明細書で前述した任意の溶液堆積技術(例えば、ダンクコーティングなど)を使用して非エポキシ官能基に結合することができる。CRP剤26は、それが本明細書に開示されている任意の非エポキシ官能基(例えば、アジド、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネンまたはテトラジン官能基)と反応可能なように選択される。
【0178】
ルートC、DおよびEはすべて、支持体12上に変性エポキシ樹脂膜14”を形成する。変性/エポキシ樹脂膜14”は、結合/一体化したCRPによってポリマー成長開始部位を含む。図2Aに示したように、変性エポキシPOSS樹脂膜14”はインプリントされていない。
【0179】
次に、パターン化疎水性ポリマー層16(その介在領域20および窪み18を含む)を、変性エポキシPOSS樹脂膜14”上に前述した方法で形成することができる。この例では、変性エポキシPOSS樹脂膜14”の不連続部分が窪み18で露出している。形成されたパターン化疎水性ポリマー層16を図2Bに示す。
【0180】
次に、図2A図2Dの方法は、ポリマー成長開始部位/CRP剤26からポリマーブラシ28を成長させることを含む。成長したポリマーブラシ28を図2Cに示す。ポリマー成長は、その上に層14”および16を有する支持体12と、重合する適切なモノマーとを含むダンクタンク中で行ってもよい。適切なモノマーの例には、アクリルアミド(例えば、PAZAMモノマーまたはプライマー24を結合可能な別のアクリルアミド)、またはアクリレートが含まれる。
【0181】
スキーム8は、ポリマーブラシ形成の一例を示す。このスキームは、ATRP開始剤/CRP剤26(すなわち以下のもの)
【化45】
から重合したアクリルアミド(左)およびアクリレート(右)の両方を示す。
【化46】
【0182】
変性エポキシPOSS樹脂膜14”は、シラン基と、シラン基およびCRP剤26の間の---によって表されていることに留意されたい。エポキシPOSS樹脂膜14”がそれに結合したRAFT CRP剤26を有する場合、アクリルアミドおよびアクリレートモノマーからのポリマー成長も達成され得る。
【0183】
重合条件は、変性エポキシPOSS樹脂膜14”のモノマーおよびCRP剤26に依存し得る。一例として、溶液状態条件をポリマーブラシ成長に使用することができる。
【0184】
図2Bは、ポリマーブラシ28が窪み18(変性エポキシPOSS樹脂膜14”の露出した不連続領域)に形成された後のアレイ10”を示す。
【0185】
ここで図2Dを参照すると、増幅プライマー24をポリマーブラシ28にグラフトすることができる。任意の適切な増幅プライマー24を使用することができ、増幅プライマー24の5’末端をポリマーブラシ28の官能基と反応可能な基で変性することができる。例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン(BCN)末端プライマーは、歪み促進触媒フリークリックケミストリーによってポリマーブラシ28のアジドによって捕捉され得る。別の例では、アルキン末端プライマーは、銅触媒クリックケミストリーによってポリマーブラシ28のアジドによって捕捉され得る。さらに別の例として、ノルボルネン末端プライマーは、テトラジン官能化結合ポリマーブラシ28と無触媒環歪み促進クリック反応を受け得る。使用され得る末端プライマーの他の例としては、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、およびトリアゾリンジオン末端プライマーが挙げられる。他の末端プライマーにはチオホスフェート末端プライマーが含まれる。
【0186】
グラフトは、例えば、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンスによって、または窪み18の少なくとも一部でプライマー24をポリマーブラシ28に結合させる別の適切な方法によって、前述のように達成することができる。
【0187】
グラフト後、所望の表面化学が適用されており、アレイ10”’(図2D)は、様々な配列決定アプローチまたは技術において使用され得る。
【0188】
エポキシPOSS樹脂膜14、14’、14”のいくつかの例が本明細書に開示されているが、層状エポキシPOSS樹脂膜14、14’、14”を利用することができること、または異なるエポキシPOSS樹脂膜14、14’、14”を支持体12の異なる領域に適用/形成し得ることを理解されたい。層状バージョンでは、異なる場所でアレイの機能を変更するために、異なる領域で異なる層を露光することができる。
【0189】
本明細書に開示されたアレイ10’、10”’は、シーケンシング-バイ-シンセシス(SBS)、シーケンシング-バイ-ライゲーション、パイロシーケンシングなどとしばしば呼ばれる技術を含む、様々な配列決定アプローチまたは技術において使用され得る。これらの技術のいずれにおいても、付着コーティング部分22’またはポリマーブラシ28および付着した配列決定プライマー24は、介在領域20ではなく窪み18に存在するので、増幅は様々な窪み18に限定されるであろう。
【0190】
簡単に説明すると、シーケンシング-バイ-シンセシス(SBS)反応は、イルミナ(サンディエゴ、カリフォルニア州)製のHiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商標)、MiSeq(登録商標)またはNextSeq(登録商標)シーケンサーシステムなどのシステムで実行できる。配列決定される一組の標的DNA分子は、結合された増幅プライマー24にハイブリダイズされ、次いで、例えば、動的排除増幅またはブリッジ増幅によって増幅される。変性によって、付着コーティング部分22’またはポリマーブラシ28に固定された一本鎖鋳型が残り、数百万の二本鎖DNAの密集クラスターが生成される(すなわちクラスター生成)。配列決定反応を実施する。
【0191】
本明細書に開示されているアレイ10’、10”’はまた、フローセルの一部として配置または形成されてもよく、これは、様々なキャリア流体、試薬などを流し得る固体表面を含むチャンバである。一例では、フローセルは、封止材料(例えば、黒色ポリイミドまたは他の適切な結合材料)によって上部基板に接着されたアレイ10’、10”’を含むことができる。接着は、パターン化疎水性ポリマー層16、封止材料、および上部基板の接着領域において起こり得る。封止材料が1つの流路を隣接する流路から物理的に分離するように(交差汚染を防止するために)、接着領域を流路間に配置してもよいし、接着領域をフローセルの周囲に配置してもよい(外部汚染からフローセルを密閉するために)。しかしながら、実装に応じて、接着領域および封止材料を任意の所望の領域に配置することができることを理解されたい。接着は、レーザ接着、拡散接着、陽極接着、共晶接着、プラズマ活性化接着、ガラスフリット接着、または当技術分野で知られている他の方法によって達成することができる。
【0192】
アレイ10’、10”と一体化することができ、および/または本開示の方法で容易に使用することができるフローセルおよび関連する流体システムおよび検出プラットフォームの他の例は、例えば、Bentleyら、Nature 456:53-59(2008)、国際公開第04/018497;米国特許第7,057,026号;国際公開第91/06678号;国際公開第07/123744号;米国特許第7,329,492号;米国特許第7,211,414号;米国特許第7,315,019号;米国特許第7,405,281号;および米国特許出願公開第2008/0108082号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0193】
いくつかの用途では、フローセルを使用して、ヌクレオチドシーケンサーなどの反応自動化装置で制御された化学反応または生化学反応を実施する。ポート(図示せず)は、支持体12、エポキシPOSS樹脂膜14、14’、14”、およびパターン化疎水性ポリマー層16を貫通して穿孔することができる。あるいは、支持体12上の層は、ポートおよび/または接着領域を形成することが望ましい領域から除去することができる。層は、ポートの穿孔および結合の前に除去されてもよい。ポートに接続することによって、反応自動化装置は、密封された流路内の試薬および生成物の流れを制御することができる。反応自動化装置は、いくつかの用途では、フローセルの圧力、温度、ガス組成および他の環境条件を調整することができる。さらに、いくつかの用途では、ポートを上部基板または上部基板と支持体12、エポキシPOSS樹脂膜14、14’、14”、およびパターン化疎水性ポリマー層16を通した両方を貫通させることができる。いくつかの用途では、封止された流路内で起こる反応は、熱、発光および/または蛍光の画像化または測定によって上部基板を通して監視することができる。
【0194】
追記
【0195】
前述の概念(そのような概念が互いに矛盾しないという条件で)のすべての組み合わせが、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられることを理解されたい。特に、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示された発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により本明細書に組み込まれる任意の開示にも現れる可能性がある本明細書で明示的に使用される用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も矛盾しない意味に一致するはずである。
【0196】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0197】
本明細書を通して、「一例」、「他の例」、「一例」などへの言及は、その例に関連して説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書に記載の少なくとも1つの例に含まれること、および他の例に存在してもよいし、またはしなくてもよいことを意味する。さらに、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、任意の例について記載された要素は、さまざまな例において任意の適切な方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0198】
本明細書に提供される範囲は、記載された範囲、および記載された範囲内の任意の値または部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約10kDa~約1500kDaの範囲は、明示的に列挙された約10kDa~約1500kDaの限界だけでなく、約88kDa、約325kDa、約425kDa、約975.5kDaなど、個々の値、および約25kDa~約900kDa、約335kDa~約680kDaなどの下位範囲も含むと解釈されたい。さらに、値を説明するために「約」が使われる場合、これは記載された値からのわずかな変動(±10%以下)を含むことを意味する。
【0199】
いくつかの例が詳細に説明されているが、開示された例は変更されてもよいことを理解されたい。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。
図1-1】
図1-2】
図2