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特許7123943有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220816BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220816BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220816BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220816BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L27/32
G09F9/30 365
G09F9/30 309
G09F9/00 338
C09K3/10 B
C09K3/10 L
C09K3/10 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019537707
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031335
(87)【国際公開番号】W WO2019039587
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2017160727
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058273(JP,A)
【文献】特開2009-079230(JP,A)
【文献】特開2012-116935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H05B 33/10
H01L 27/32
G09F 9/30
G09F 9/00
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン重合性化合物と、(B)光カチオン重合開始剤と、(C1)リン酸エステルと、を含有し、
(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物及び(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含有し、
(C1)リン酸エステルが、式(1-2)で表される化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【化1】

[式中、R 、R 及びR はそれぞれ独立に置換基としてオキシアルキル基を有していてもよい炭化水素基を示す。]
【請求項2】
前記R 、前記R 及び前記R が、それぞれ独立にアルキル基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項3】
(A)カチオン重合性化合物と、(B)光カチオン重合開始剤と、(C2)亜リン酸エステルと、を含有し、
(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物及び(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含有し、
(C2)リン酸エステルが、式(2-3)で表される化合物、式(2-4)で表される化合物及び式(2-5)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【化2】

【化3】

【化4】

[式中、R 10、R11、R12、R13、R14、R15 及び それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。]
【請求項4】
前記R 10 、前記R 11 、前記R 12 、前記R 13 、前記R 14 、前記R 15 及び前記R 16 が、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項5】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上である請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項6】
(B)光カチオン重合開始剤が、オニウム塩である請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項7】
(B)光カチオン重合開始剤の使用量が、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.05~5.0質量部である請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項8】
更に、光増感剤を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項9】
更に、シランカップリング剤を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤の硬化体。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材。
【請求項12】
有機エレクトロルミネッセンス素子と、
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項13】
第一の部材に、請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を付着させる付着工程と、
付着させた前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する照射工程と、
光照射された前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を介して、前記第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、
を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第一の部材が基板であり、
前記第二の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に関する。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子封止用に用いられる封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性に優れる。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有する。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されると共に他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0004】
ところが、このような有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題があった。従って、有機エレクトロルミネッセンス表示素子の安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機エレクトロルミネッセンス表示素子においては、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0005】
特許文献1には、上面発光型有機エレクトロルミネッセンス表示素子等において、有機エレクトロルミネッセンス表示素子基板の間に光硬化性の封止剤を満たし、光を照射して封止する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤について記載がない。
【0006】
特許文献2には、反応性制御剤を遅延硬化剤として使用することなく、十分な可使時間を確保できるUV硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、光照射後の可使時間が短い問題があった。特許文献2は、エポキシ基を有する脂環式化合物について記載がない。特許文献2は、リン酸エステルを光カチオン重合開始剤として例示するだけであり、実施例で使用しておらず、リン酸エステルを、光照射後の粘度の上昇を抑えるために使用しない。
【0007】
特許文献3には、エポキシ樹脂(「末端にエポキシ基を有するポリアルキレンオキサイド付加ビスフェノール誘導体」を除く)、光カチオン重合開始剤、並びに、末端にエポキシ基を有するポリアルキレンオキサイド付加ビスフェノール誘導体を含有し、光照射により硬化反応が開始し、光を遮断した後にも暗反応で硬化反応が進行する光カチオン重合性接着剤からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤が開示されている。特許文献3は、エポキシ基を有する脂環式化合物について記載がない。特許文献3は、光照射時にアウトガスを発生して素子を劣化させるという問題があった。
【0008】
特許文献4には、特定のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤が開示されている。しかしながら、光照射後の可使時間が短い問題があった。特許文献4は、リン酸エステルを光カチオン重合開始剤として例示するだけであり、実施例で使用しておらず、リン酸エステルを、光照射後の粘度の上昇を抑えるために使用しない。
【0009】
特許文献5には、光カチオン重合性化合物100質量部、光カチオン重合開始剤0.1~30質量部、エーテル結合を有する化合物からなる硬化制御剤0.1~30質量部を含有し、硬化制御剤がエーテル結合を有する化合物を有する後硬化組成物による有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法が開示されている。しかしながら、この様な封止方法では、光照射時にアウトガスを発生して素子を劣化させることがあるという問題があった。
特許文献5は、エポキシ基を有する脂環式化合物について記載がない。特許文献5は、リン酸エステルを光カチオン重合開始剤として例示するだけであり、実施例で使用しておらず、リン酸エステルを、光照射後の粘度の上昇を抑えるために使用しない。
【0010】
特許文献6には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と少なくとも1個の活性水素を有するリン酸類との付加物(A)と、脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物(B)と、カチオン性光重合開始剤(C)を含有する紫外線硬化型樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この様な(A)を用いた樹脂組成物では、(A)の製造方法が複雑であり、副生成物によりアウトガスを発生して素子を劣化させるという問題点があった。特許文献6は、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤について記載がない。
【0011】
特許文献7には、放射線硬化性成分を含むと共に、異なる化合物群に属する少なくとも2つの難燃剤を含む放射線硬化性組成物が開示されている。しかしながら、特許文献7では、そもそも他目的に用いられる難燃性の硬化性組成物であり、光照射後の可使時間及び光照射時のアウトガス発生に関する記載はない。特許文献7は、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤について記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-357973号公報
【文献】特許5919574号公報
【文献】特許4800247号公報
【文献】特開2016-58273号公報
【文献】特許4384509号公報
【文献】特開平7-247342号公報
【文献】特表2007-513234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光照射後の粘度の上昇が少なく、有機エレクトロルミネッセンス素子を劣化させにくい有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、以下の通りである。
<1>(A)カチオン重合性化合物と、(B)光カチオン重合開始剤と、(C)リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選択される1種以上のリン酸化合物と、を含有し、(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物及び(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<2>(C)リン酸化合物が(C1)リン酸エステルである<1>記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<3>(C1)リン酸エステルが、式(C1-1)で表される化合物、式(C1-2)で表される化合物及び式(C1-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、<2>記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【化1】
【化2】
【化3】
[式中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。]
<4>(C)リン酸化合物が(C2)亜リン酸エステルである<1>記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<5>(C2)亜リン酸エステルが、式(C2-1)で表される化合物、式(C2-2)で表される化合物、式(C2-3)で表される化合物、式(C2-4)で表される化合物、式(C2-5)で表される化合物及び式(C2-6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、<4>記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
[式中、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。]
<6>(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上である<1>~<5>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<7>(B)光カチオン重合開始剤が、オニウム塩である<1>~<6>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<8>(B)光カチオン重合開始剤の使用量が、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.05~5.0質量部である<1>~<7>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<9>更に、光増感剤を含有する<1>~<8>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<10>更に、シランカップリング剤を含有する<1>~<9>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤。
<11><1>~<10>のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤の硬化体。
<12><11>記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材。
<13>有機エレクトロルミネッセンス素子と、<12>記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
<14>第一の部材に、<1>~<10>のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を付着させる付着工程と、付着させた前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を介して、前記第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
<15>前記第一の部材が基板であり、前記第二の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子である、<14>記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光照射後の粘度の上昇が少なく、有機エレクトロルミネッセンス素子を劣化させにくい有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、
(A)カチオン重合性化合物、
(B)光カチオン重合開始剤、並びに
(C)リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のリン酸化合物
を含有することを特徴とする。
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物、及び(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含有することを特徴とする。
【0018】
次に、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤の成分について説明する。
【0019】
(A)カチオン重合性化合物
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、(A)カチオン重合性化合物を必須成分とする。(A)カチオン重合性化合物は、光重合性であることが好ましい。
【0020】
(A)カチオン重合性化合物は、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物及び(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含有する。これにより、良好な接着性及び低透湿性が得られる。
【0021】
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物
エポキシ基を有する脂環式化合物(以下、脂環式エポキシ化合物ということもある)としては、少なくとも1個のシクロアルカン環(例えば、シクロへキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等)を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物又はその誘導体や、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0022】
脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
脂環式エポキシ化合物の中では、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物の中では、下記式(A1-1)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化10】
(式(A1-1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示し、連結基は、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又は、これらが複数個連結した基である)
【0025】
Xは連結基が好ましい。連結基の中では、エステル結合を有する官能基が好ましい。これらの中では、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0026】
脂環式エポキシ化合物の分子量は、透湿性や保存安定性の点で、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300未満が更に好ましく、100~280が一層好ましい。
【0027】
脂環式エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、脂環式エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
・溶媒(移動相):THF
・脱気装置:ERMA社製ERC-3310
・ポンプ:日本分光社製PU-980
・流速:1.0ml/min
・オートサンプラ:東ソー社製AS-8020
・カラムオーブン:日立製作所製L-5030
・設定温度:40℃
・カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK-GELMULTIPORE HXL-M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
・検出器:RI 日立製作所製L-3350
・データ処理:SIC480データステーション
【0028】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物
エポキシ基を有する芳香族化合物(以下、芳香族エポキシ化合物ということもある)としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、これらの変性物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種以上を選択して使用してもよい。
これらの中では、ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化11】
(式(A2-1)中、nは0.1~30の実数を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
【0030】
21、R22、R23、R24は、水素原子又はメチル基が好ましい。R21、R22、R23、R24は、同一が好ましい。
【0031】
ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0032】
芳香族エポキシ化合物の分子量は、透湿性等の点で、100~5000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~450が最も好ましい。
【0033】
芳香族エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、芳香族エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0034】
本実施形態の(A)カチオン重合性化合物は、モノマー、オリゴマー又はポリマーの何れも使用できる。
【0035】
本実施形態の(A)カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の(A)カチオン重合性化合物は、環状エーテル基、カチオン重合性ビニル基等のカチオン重合性基を2個以上有することが好ましく、2個有することがより好ましい。
【0037】
本実施形態では、(A-1)及び(A-2)以外の他のカチオン重合性化合物を更に使用できる。(A-1)及び(A-2)以外の他のカチオン重合性化合物としては、環状エーテル類、カチオン重合性ビニル化合物等が挙げられる。環状エーテル類としては、エポキシ、オキセタン等の化合物が挙げられる。
【0038】
(A)カチオン重合性化合物100質量部中、(A-1)及び(A-2)以外の他のカチオン重合性化合物の含有量は、40質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が最も好ましい。(A)カチオン重合性化合物100質量部中、(A-1)及び(A-2)以外の他のカチオン重合性化合物の含有量は、例えば1質量部以上であってよく、5質量部以上であってもよく、0質量部であってもよい。
【0039】
カチオン重合性ビニル化合物としては、ビニルエーテル、ビニルアミン、スチレン等が挙げられる。これらの化合物若しくは誘導体は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0040】
(A-1)及び(A-2)以外の他のカチオン重合性化合物の中では、ジグリシジルエーテル化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物からなる1種以上が好ましい。
【0041】
ジグリシジルエーテル化合物としては、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等)、多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。
【0042】
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名アロンオキセタンOXT-101等)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT-121等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT-211等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(同OXT-221等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT-212等)等が挙げられる。オキセタン化合物とは、分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物をいう。
【0043】
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテルo-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0044】
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物の使用量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、30~95質量部が好ましく、50~90質量部がより好ましく、60~80質量部が最も好ましく、65~75質量部が尚更好ましい。30質量部以上であれば耐久性が得られ、95質量部以下であれば耐久性が得られる。
【0045】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物の使用量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、5~70質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましく、20~40質量部が最も好ましく、25~35質量部が尚更好ましい。5質量部以上であれば耐久性が得られ、70質量部以下であれば耐久性が得られる。
【0046】
(A)カチオン重合性化合物100質量部中、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物と(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物の合計の含有量は、60質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が最も好ましく、100質量部が尚更好ましい。
【0047】
(B)光カチオン重合開始剤
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、(B)光カチオン重合開始剤を必須成分とする。光カチオン重合開始剤を用いる場合、本実施形態の封止剤は、紫外線等のエネルギー線照射により硬化可能となる。
【0048】
(B)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、LW-S1、ダブルボンド社製のチバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP-2074)、アレン-イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のカチオン種としては、式(B-1)で表されるオニウム塩が好ましい。
【0049】
(B)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、式(B-1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0050】
【化12】
(AはVIA族~VIIA族の原子価mの元素を示す。mは1~2を示す。pは0~3を示す。m、pは整数が好ましい。RはAに結合している有機基を示す。Dは下記式(B-1-1):
【化13】
で表される2価の基を示す。式(B-1-1)中、Eは2価の基を表し、Gは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン又はフェニレン基(R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基)を示す。aは0~5を示す。a+1個のE及びA個のGはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは整数が好ましい。Xはオニウムの対イオンであり、その個数は1分子当りp+1である。)
【0051】
式(B-1-1)のオニウムイオンは特に限定されないが、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられる。
【0052】
RはAに結合している有機基である。Rは、例えば、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Rの個数はm+p(m-1)+1であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。又2個以上のRが互いに直接又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して元素Aを含む環構造を形成してもよい。ここで、R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基である。
【0053】
上記において炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基等の単環式アリール基及びナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノン等の縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0054】
上記の炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシル等の炭素数1~18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル等の炭素数1~18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3~18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイル等の炭素数7~11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニル等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等の炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニル等の炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等の炭素数6~20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチル等の炭素数6~10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等の炭素数4~20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6~10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等の炭素数6~10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニル等の炭素数の6~10のアリールスルホニル基;式(B-1-2)
【化14】
で表されるアルキレンオキシ基(Qは水素原子又はメチル基を表し、kは1~5の整数を表す);非置換のアミノ基;炭素数1~5のアルキル及び/又は炭素数6~10のアリールでモノ置換若しくはジ置換されているアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。
【0055】
式(B-1)中のpは[D-Am-1]結合の繰り返し単位数を表し、0~3の整数であることが好ましい。
【0056】
式(B-1)中のオニウムイオン[A]として好ましいものはスルホニウム、ヨードニウム、セレニウムであるが、代表例としては以下のものが挙げられる。
【0057】
スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0058】
これらのオニウムイオンの中では、スルホニウムイオンとヨードニウムイオンからなる1種以上が好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムからなる1種以上が好ましい。
【0059】
式(B-1)においてXは対イオンである。その個数は1分子当りp+1である。対イオンは、特に限定されないが、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物、メチド化合物等が挙げられる。Xとしては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO 等のスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2-等の硫酸イオン類;HCO 、CO 2-等の炭酸イオン類;HPO 、HPO 2-、PO 3-等のリン酸イオン類;PF 、PFOH、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等のフルオロリン酸イオン類;BF 、B(C 、B(CCF 等のホウ酸イオン類;AlCl ;BiF 等が挙げられる。その他にはSbF 、SbFOH等のフルオロアンチモン酸イオン類、或いはAsF 、AsFOH等のフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0060】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、式(B-1-3)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
【0061】
[(Rf)PF6-b (B-1-3)
【0062】
式(B-1-3)において、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfの個数bは、1~5であり、整数であることが好ましい。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rfの個数bは、2~4がより好ましく、2~3が最も好ましい。
式(B-1-3)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1~8、更に好ましい炭素数は1~4である。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;更にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられる。具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFC等が挙げられる。
【0063】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF及び[(CFCFCFCFPF等が挙げられる。
【0064】
光カチオン重合開始剤は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂への溶解を容易にするため、あらかじめ溶剤類に溶解したものを用いてもよい。溶剤類としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。
【0065】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0066】
(B)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点で、フッ化物が好ましい。フッ化物の中では、ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0067】
(B)光カチオン重合開始剤の中では、式(B-2)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート、式(B-3)で表されるジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートからなる1種以上が好ましく、トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートがより好ましい。
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
(B)光カチオン重合開始剤の使用量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。光カチオン重合開始剤の使用量が0.05質量部以上であれば光硬化性が悪くなることもないし、5質量部以下であれば接着耐久性を低下させることもない。
【0071】
(C)リン酸化合物
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、(C)リン酸化合物を必須成分とする。リン酸化合物は、(C1)リン酸エステルと(C2)亜リン酸エステルからなる群から選択される1種以上である。リン酸化合物としては、有機リン酸化合物が好ましい。リン酸化合物の中では、(C1)リン酸エステルが好ましい。
【0072】
(C1)リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O[R=ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基]、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチルピロホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、アンモニウムエチルアシッドホスフェート、及び、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート塩等が挙げられる。
【0073】
(C1)リン酸エステルは、式(C1-1)で表される化合物、式(C1-2)で表される化合物及び式(C1-3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、式(C1-2)で表される化合物を含有することがより好ましい。
【0074】
【化17】
【0075】
【化18】
【0076】
【化19】
【0077】
式(C1-1)、式(C1-2)及び式(C1-3)中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0078】
式(C1-2)中のR、R及びR、並びに、式(C1-3)中のR及びRは、各式中で同一の基であることが好ましい。
【0079】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシアルキル基等が挙げられる。R、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、非置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0080】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、例えば1~18であってよく、4~13であることが好ましい。
【0081】
式(C1-1)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルホスフェート(すなわち、Rがアルキル基である化合物)等であってよく、具体例としては、モノエチルホスフェート、モノn-ブチルホスフェート、モノ(ブトキシエチル)ホスフェート、モノ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0082】
式(C1-2)で表される化合物としては、トリアルキルホスフェート(すなわち、R、R及びRがアルキル基である化合物)が好ましい。このとき、R、R及びRのアルキル基の炭素原子数は、1~18であることが好ましく、4~12であることがより好ましく、8であることが更に好ましい。
【0083】
トリアルキルホスフェートの具体例としては、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O(Rは、ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基)等が挙げられる。
【0084】
式(C1-3)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルホスフェート(すなわち、R及びRがアルキル基である化合物)等が挙げられる。ジアルキルホスフェートの具体例としては、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0085】
式(C1-1)、式(C1-2)及び式(C1-3)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を含む炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基、脂肪族環を含む炭化水素基の1種以上であってもよい。炭化水素基は、一部不飽和基を有するものであってもよく、任意の原子や置換基を有しても良い。このとき、R、R、R、R、R及びRは、アルキル基を含む炭化水素基が好ましい。また、炭化水素基は、非置換の飽和基が好ましい。R、R、R、R、R及びRは、同一が好ましい。
【0086】
(C2)亜リン酸エステルとしては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2-エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0087】
(C2)亜リン酸エステルは、式(C2-1)で表される化合物、式(C2-2)で表される化合物、式(C2-3)で表される化合物、式(C2-4)で表される化合物、式(C2-5)で表される化合物及び式(C2-6)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0088】
【化20】
【0089】
【化21】
【0090】
【化22】
【0091】
【化23】
【0092】
【化24】
【0093】
【化25】
【0094】
式(C2-1)~式(C2-6)中、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0095】
、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシアルキル基等が挙げられる。R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基は、非置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0096】
、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17における炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、例えば1~30であってよく、1~18であることが好ましい。
【0097】
式(C2-2)中のR及びR、式(C2-3)中のR10、R11及びR12、式(C2-4)中のR13及びR14、並びに、式(C2-5)中のR15及びR16は、各式中で互いに同一であることが好ましい。
【0098】
式(C2-1)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルホスファイト(すなわち、Rがアルキル基である化合物)等が挙げられる。
【0099】
式(C2-2)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルホスファイト(すなわち、R及びRがアルキル基である化合物)等が挙げられる。
【0100】
式(C2-3)で表される化合物としては、例えば、トリアルキルホスファイト(すなわち、R10、R11及びR12がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(C2-3)で表される化合物の具体例としては、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等が挙げられる。
【0101】
式(C2-4)で表される化合物としては、例えば、ビス(アルキル)ペンタエリスリトールジホスファイト(すなわち、R13及びR14がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(C2-4)で表される化合物の具体例としては、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0102】
式(C2-5)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルハイドロゲンホスファイト(すなわち、R15及びR16がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(C2-5)で表される化合物の具体例としては、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0103】
式(C2-6)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルハイドロゲンホスファイト(すなわち、R17がアルキル基である化合物)等が挙げられる。また、式(C2-6)で表される化合物の具体例としては、モノエチルハイドロゲンホスファイト、モノ(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、モノラウリルハイドロゲンホスファイト、モノオレイルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0104】
式(C2-1)~式(C2-6)中、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立に、アルキル基を含む炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基、脂肪族環を含む炭化水素基の1種以上であってもよい。炭化水素基は、一部不飽和基を有するものであってもよく、任意の原子や置換基を有しても良い。このとき、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、アルキル基を含む炭化水素基が好ましい。また、炭化水素基は、非置換の飽和基が好ましい。R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、同一が好ましい。
【0105】
亜リン酸エステルの中では、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の式(C2-3)で表される化合物で表す化合物、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2-エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイトからなる群から選択される1種以上が好ましく、式(C2-3)で表される化合物がより好ましい。式(C2-3)で表される化合物の中では、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイトが好ましい。トリアルキルホスファイトの中では、トリデシルホスファイトが好ましい。
【0106】
(C)リン酸化合物の使用量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.02~3質量部がより好ましい。(C)リン酸化合物の使用量が0.1質量部以上であれば、光照射後の粘度の上昇を抑えることができ、5質量部以下であれば光硬化性が悪くなることもない。
【0107】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、光増感剤を含有してもよい。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、光カチオン重合開始剤からカチオンを効率よく発生させる化合物をいう。
【0108】
光増感剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のフェニルケトン誘導体及び/又は9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。アントラセン誘導体の中では、9,10-ジブトキシアントラセンが好ましい。
【0109】
光増感剤の使用量は、光硬化性が悪くならず、貯蔵安定性が低下しない点で、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.02~5質量部がより好ましい。
【0110】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することにより、本実施形態の光カチオン重合組成物は、優れた接着性や接着耐久性を示す。
【0111】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0112】
シランカップリング剤の使用量は、接着性や接着耐久性が得られる点で、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0113】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤の硬化や接着に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光カチオン重合開始剤の反応波長に対応するエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0114】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光カチオン重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0115】
上記光源の照射としては、直接照射、反射鏡やファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0116】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、光照射後の硬化速度を促進するために、後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に用いる場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子にダメージを与えない点で、150℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。また、後加熱の温度は、60℃以上が好ましい。
【0117】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、接着剤として用いてもよい。本実施形態の接着剤は、有機エレクトロルミネッセンス素子等のパッケージ等の接着に、好適に用いることができる。
【0118】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤の製造方法については、上記の成分を十分に混合できれば特に制限されない。各成分の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0119】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を用いる基材の接着方法としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を一方の基材の全面又は一部に塗布する工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤が塗布された基材の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する工程と、前記光を照射された有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤が硬化するまでの間に、前記一方の基材に他方の基材を貼合する工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤により貼合された基材を硬化させる工程と、を有することにより、基材を光や熱に晒すことなく接着できる。
【0120】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する方法としては、例えば、一方の基板上(背面板)に本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を塗布し、該有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射して活性化させた後に、光を遮断し、該組成物を介して背面板とエレクトロルミネッセンス素子を形成した基板を貼り合せる方法等が挙げられる。この方法により、有機エレクトロルミネッセンス素子を光や熱に晒すことなく封止できる。
【0121】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を用いて、一方の基板に本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を塗布し、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を介して、他方の基板を貼り合せ、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する方法を用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造できる。
【0122】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、光を照射してから10分後の粘度が、光照射前の粘度と比較して5倍未満であることが好ましい。光としては、UVが好ましい。例えば、高圧水銀灯にてUVを100mW/cmで30秒間照射してから10分後の粘度が、UV照射前の粘度と比較して5倍未満であることが、より好ましい。
【0123】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、(B)光カチオン重合開始剤が、照射した光を吸収して励起し、その励起種が分解して酸を発生することが好ましい。
【0124】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤は、光照射後の粘度の上昇が少なく、アウトガスの発生を抑制でき、有機エレクトロルミネッセンス素子を劣化させにくい。
【0125】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0126】
例えば、本発明の一側面は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を硬化してなる硬化体であってよい。
【0127】
また、本発明の他の一側面は、上述の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材であってよい。この封止材は、硬化体であってよく、封止剤の硬化体と他の構成材料とを含むものであってもよい。他の構成材料としては、例えば、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素等の無機物層、シリカ、マイカ、カオリン、タルク、酸化アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。
【0128】
また、本発明の更に他の一側面は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置であってよい。
【0129】
また、本発明において、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、第一の部材に、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を付着させる付着工程と、付着させた有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を介して、第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を有するものであってよい。この製造方法において、例えば、第一の部材は基板であってよく、第二の部材は有機エレクトロルミネッセンス素子であってよい。この製造方法における各工程の条件等は、上述の実施形態の記載に基づいて適宜選択してよい。
【実施例
【0130】
以下、実験例を挙げて、本実施形態を更に詳細に説明する。本実施形態はこれらに限定されるものではない。特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%で試験した。
【0131】
実験例では、以下の化合物を使用した。
【0132】
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物として下記を用いた。
(a-1-1)3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」)
(a-1-2)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX8000」、分子量380~430)
(a-1-3)3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製「サイクロマーM100」)
【0133】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物として下記を用いた。
(a-2-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、分子量360~390)
(a-2-2)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER806」、分子量320~340)
(a-2-3)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三井化学社製「YL983U」、分子量360~380)
(a-2-4)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ADEKA社製「KRM-2490」、分子量340~380)
【0134】
その他のカチオン重合性化合物として下記を用いた。
(a-3)トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製「エポライト200P」)
(a-4)ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(東亞合成社製「アロンオキセタンOXT-221」)
(a-5)シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHDVE」)
【0135】
(B)成分の光カチオン重合開始剤として下記を用いた。
(b-1)トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP-170」、アニオン種はヘキサフルオロアンチモネート)
(b-2)トリアリールスルホニウム塩(ジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ社製「CPI-200K」、アニオン種はリン化合物)
【0136】
(C)成分のリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルとして下記を用いた。
(c-1)トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(大八化学工業社製「TOP」)
(c-2)トリデシルホスファイト(城北化学工業社製「JP-310」)
(c-3)ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト(城北化学工業社製「JPE-10」)
(c-4)ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト(城北化学工業社製「JPE-208」)
(c-5)ジフェニルモノデシルホスファイト(城北化学工業社製「JPM-311」)
(c-6 比較例)トリ-n-オクチルホスフィンオキサイド(北興化学工業社製「T.O.P.O(登録商標)」)
(c-7 比較例)トリ-n-オクチルホスフィン(城北化学工業社製「TOCP」)
(c-8 比較例)18-クラウン-6-エーテル(日本曹達社製「クラウンエーテル O-18」)
【0137】
光増感剤として下記を用いた。
(g-1)9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製「ANTHRACURE UVS-1331」)
【0138】
シランカップリング剤として下記を用いた。
(f-1)γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-403」)
【0139】
表1~2に示す種類の原材料を、表1~2に示す組成割合で混合し、実施例及び比較例の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を調製した。組成割合の単位は質量部である。
【0140】
実施例及び比較例の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤について、下記の各測定を行った。その結果を表1~2に示した。
【0141】
〔粘度〕
封止剤の粘度(せん断粘度)はE型粘度計(1°34’×R24のコーンローター)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。
【0142】
〔光照射後の粘度変化〕
実施例及び比較例で得られた各有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤をガラス基板の上に塗布し、その基板に紫外線照射装置(HOYA社製超高圧水銀ランプ照射装置、「UL-750」)を用いて波長365nm、100mW/cmの紫外線を30秒間照射した。紫外線を照射し終えてから10分後において、E型粘度計(1°34’×R24のコーンローター)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。そして、光照射前の粘度をV0、光照射後の粘度をVνとしたとき、式:Vν/V0にしたがって粘度変化率を求めた。粘度変化率は、遅硬化性が良好な点で、5以下が好ましい。
【0143】
〔光硬化条件〕
封止剤の硬化物性及び接着性の評価に際し、下記光照射条件により、封止剤を硬化させた。無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cmの条件にて、封止剤を光硬化させた後、80℃のオーブン中で、30分間の後加熱処理を実施し、硬化体を得た。
【0144】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で測定した。透湿度は120g/(m・24hr)以下が好ましい。
【0145】
〔引張せん断接着強さ〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス)を2枚用い、接着面積0.5cm、接着厚み80μmで、上記の光硬化条件にて封止剤を硬化させた。硬化後、封止剤で接合した試験片を用い、引張剪断接着強さ(単位:MPA)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定した。引張せん断接着強さは15MPa以上が好ましい。
【0146】
[アウトガス量]
封止剤をガラス基板の上に単位面積当たりの塗布量が10mg/cmとなるように塗布し、その基板に紫外線照射装置(HOYA社製、超高圧水銀ランプ照射装置「UL-750」)を用いて波長365nm、100mW/cmの紫外線を10秒間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、発生したガス成分を捕集・濃縮して、GC/MS(Agilent Technology社製、「GC/MS 7890B/5977B」)でアウトガス量を測定した。アウトガス量は60ppm以下が好ましい。
【0147】
〔有機ELの評価〕
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板をアセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極 ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層 銅フタロシアニン 厚さ30nm
・正孔輸送層 N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチルベンジジン(α-NPD) 厚さ20nm
・発光層 トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å
・電子注入層 フッ化リチウム 厚さ1nm
・陰極 アルミニウム、陽極の膜厚250nm
【0148】
〔有機EL素子の作製〕
実施例及び比較例で得られた封止剤を、窒素雰囲気下にて塗工装置にてガラスに塗布し、有機EL素子基板と貼り合わせ、接着厚み10μmで前記光硬化条件にて、この封止剤を硬化させ、有機EL素子を作製した。
【0149】
〔有機EL評価〕
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0150】
〔高温高湿度〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0151】
ダークスポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことが最も好ましい。
【0152】
[保存安定性評価]
封止剤の初期粘度(V0、封止剤調製直後の粘度)を測定した後、容器に入れて蓋をした状態(密閉系)で約40℃の高温環境下における促進試験で4週間後の封止剤の粘度(V4)を測定した。そして、式:V4/V0にしたがって粘度変化率を求めた。粘度変化率は、保存安定性が良好な点で、1.5以下が好ましい。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
本実施形態の封止剤は、光照射時にアウトガスを発生しにくいので、耐久性が良好であり、素子を劣化させない。本実施形態以外の封止剤は、効果を有しない。(C)成分を使用しない場合、光照射後の粘度変化が大きい(実験例15)。ホスフィンオキサイドを使用した場合、封止剤が硬化しない(実験例16)。ホスフィンを使用した場合、封止剤がゲル化し、本実施形態の効果を有しない(実験例17)。クラウンエーテルを使用した場合、高温高湿度における耐久性が得られない(実験例18)。(B)成分を使用しない場合、封止剤が硬化しない(実験例19)。(A-2)成分を使用しない場合、耐久性が得られない(実験例20)。(A-1)成分を使用しない場合、高温高湿度における耐久性が得られない(実験例21)。