(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】開裂可能な界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C07C 251/12 20060101AFI20220816BHJP
C07C 251/16 20060101ALI20220816BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C07C251/12 CSP
C07C251/16
C11B9/00 K
C11B9/00 J
C11B9/00 L
C11B9/00 M
(21)【出願番号】P 2019539765
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2018051474
(87)【国際公開番号】W WO2018134410
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】500379381
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】Centre National de la Recherche Scientifique
【住所又は居所原語表記】3 rue Michel Ange, FR-75016 Paris, France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリック ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ジュゼッポーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ チャカロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベンチェディ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531112(JP,A)
【文献】特表2002-524573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 251/12
C07C 251/16
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、互いに独立して水素原子、または直鎖状の飽和もしくは不飽和のC
1~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基、または分岐状もしくは環状の飽和もしくは不飽和のC
3~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表し、またはR
1およびR
2は一緒に解釈して、C
4~C
18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルカンジイル基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表すが、ただし、R
1基またはR
2基の少なくとも1つは、6個の連続した炭素原子を有するものとし、かつR
1およびR
2の両方は一緒に解釈して、最大18個の炭素原子を含むものとし、
Lは、OC
6H
4CR
3
2CR
3
2基または(OCH
2CHR
3)
q基であって、式中、R
3が水素原子またはメチル基を表し、かつqが3から10の間で可変の整数であり、かつ
Qは、CH
3(OC
2H
4)
m基であって、式中、mは、11から30の間で可変の整数である]の、有効鎖長モデルを使用して計算される10から18の間に含まれる全親水性親油性バランスを有する化合物。
【請求項2】
Lは、OC
6H
4CH
2CH
2基または(OCH
2CH(CH
3))
q基[式中、qは、3から10の間の整数である]を表すことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に定義される式(III)の化合物の、界面活性剤としての使用。
【請求項4】
水と、賦香性油またはフレーバー付与性油と、請求項1または2に定義される少なくとも1種の式(III)の界面活性剤とを含む可溶化系。
【請求項5】
前記可溶化系は、水、および請求項1または2に定義される式(III)の界面活性剤により安定化された分散された賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含む油滴を含むことを特徴とする、請求項4記載の可溶化系。
【請求項6】
前記賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含む油は、式R
1CH(O)のアルデヒド、または式(R
1)(R
2)C(=O)のケトンであり、式中のR
1およびR
2が請求項1に定義されるのと同じ意味を有する賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含むことを特徴とする、請求項5記載の可溶化系。
【請求項7】
請求項1または2に定義される式(III)の化合物または請求項4から6までのいずれか一項に定義される可溶化系の、活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出する送達系としての使用。
【請求項8】
a)賦香性成分もしくはフレーバー付与性成分としての、請求項1または2に定義される少なくとも1種の式(III)の化合物および/または請求項4から6までのいずれか一項に定義される可溶化系と、
b)香料キャリアーまたはフレーバーキャリアー、賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
c)任意に、少なくとも1種の香料助剤またはフレーバー助剤と、
を含む、賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物。
【請求項9】
請求項1または2に定義される少なくとも1種の式(III)の化合物および/または請求項4から6までのいずれか一項に定義される可溶化系を含む、賦香化消費者製品またはフレーバー化消費者製品。
【請求項10】
前記
賦香化消費者製品が、香料、ファブリックケア製品、ボディケア製品、化粧用調剤、スキンケア製品、エアケア製品、もしくはホームケア製品であ
るか、または前記
フレーバー化消費者製品が、飲料であ
ることを特徴とする、請求項9記載の賦香化消費者製品
またはフレーバー化消費者製品。
【請求項11】
前記賦香化消費者製品が、精製香料、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブローションもしくはアフターシェーブローション、液体洗剤もしくは固形洗剤、ファブリック柔軟剤、ファブリックリフレッシュナー、アイロン水、ペーパークリーナー、漂白剤クリーナー、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品、シャンプー、染髪用調剤、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、消毒薬、インティメートケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラントもしくは制汗剤、脱毛剤、タニング用製品もしくは日焼け用製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メークアップ、賦香石けん、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、またはフットケア/ハンドケア製品、衛生製品、エアーフレッシュナー、「すぐに使える」粉末状エアーフレッシュナー、カビ取り剤、調度品ケア、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用洗剤、皮革手入れ用製品、または車手入れ用製品であることを特徴とする、請求項
9記載の賦香化消費者製品。
【請求項12】
組成物、物品、または表面へと有効量の請求項1または2に定義される少なくとも1種の式(III)の化合物および/または請求項4から6までのいずれか一項に定義される可溶化系を適用することによる、活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出させる方法。
【請求項13】
水性環境へと有効量の請求項1または2に定義される少なくとも1種の式(III)の化合物を添加することによる、水性環境中で疎水性分子を可溶化および/または安定化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料およびフレーバーの分野に関する。より具体的には、本発明は、フレーバーおよびフレグランスのアルデヒドおよびケトンを水性環境中で可溶化および/または安定化させるのと同時に、それらの加水分解による放出を制御する開裂可能な界面活性剤に関する。
【0002】
背景
多くのフレーバーおよびフレグランスのアルデヒドおよびケトンは、水性の消費者製品配合物中でほとんど溶けず、かつ/または時間をかけてゆっくりと分解するため、適用時の長期持続型のフレーバーまたはフレグランスの知覚の発揮におけるそれらの影響は軽減される。1つの典型的な例は、すべてのシトラスフレーバーに存在するシトラールである。シトラールは、水と接触すると、特にほとんどの飲料でのように酸性条件下で素早く分解する。シトラールの分解は、味覚を変え、シトラスフレーバーの嗅覚的プロフィールを変えるため、シトラス用途における最も大きな問題の1つである。
【0003】
これらの問題は、しばしば、送達システム、例えば香料またはフレーバーを収容するカプセルを使用して、それらを制御された様式で放出することを通じて取り組まれている。しかしながら、多くの種類のマイクロカプセルは、貯蔵の間に、それらのシェルもしくは壁を通した拡散を介して、または香料もしくはフレーバーの漏洩を引き起こし得る表面活性成分を含有する、該マイクロカプセルが中に導入される消費者製品の性質の結果としてフレグランスもしくはフレーバーの一部を失うことが知られている。
【0004】
カプセル化系の代替としては、適用の間もしくは適用後の化学反応により(放出のトリガとしてO2、光、酵素、水(pH)、または温度を使用する)活性物質を放出する多岐にわたる前駆体化合物が記載されている。前駆体化合物の1つの例は、例えば欧州特許出願公開第0971025号明細書(EP0971025)に報告されるイミンを基礎とする化合物(シッフ塩基としても知られる)である。しかしながら、イミン結合は水中で容易に加水分解されるため、相応の前駆体は通常は水性環境中で安定ではない。したがって、イミン結合を含む前駆体化合物はしばしば、その用途では貯蔵の間に分解し、こうして不溶性かつ不安定な化合物が遊離される。
【0005】
このように依然として、アルデヒドまたはケトンを可溶化し、安定化し、そして制御放出させる送達系を開発する必要がある。
【0006】
本発明は、フレーバーおよびフレグランスのアルデヒドおよびケトンを水性環境中で一時的に可溶化および/または安定化することが可能であり、イミン結合の開裂によりその環境中にそれらを放出することが可能な本発明による開裂可能なイミン界面活性剤を使用することにより、上述の問題への解決手段を提供する。
【0007】
発明の概要
本発明は、フレーバー付与性または賦香性のアルデヒドおよびケトンを安定化および可溶化する一方で、前記アルデヒドまたはケトンの遅い放出を制御することが可能な開裂可能なイミン界面活性剤の使用に関する。予想外にも、本発明の界面活性剤は、水性媒体中でミセルまたはベシクルへと組織化し、こうしてイミンを加水分解から保護することが判明した。同時に、本発明の界面活性剤は、フレーバーまたはフレグランス等の有機化合物を水性環境中で可溶化する。本発明の界面活性剤は、このように消費者製品の貯蔵の間にフレーバーまたは香料の分解を制限する。
【0008】
したがって、本発明の第1の主題は、式
【化1】
[式中、
Aは、式(R
1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R
1)(R
2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンを放出することが可能な基であり、かつ式
【化2】
であり、ここで、波線はLとAとの間の結合の位置を示し、R
1およびR
2は、互いに独立して水素原子、または直鎖状の飽和もしくは不飽和のC
1~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基、または分岐状もしくは環状の飽和もしくは不飽和のC
3~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表し、またはR
1およびR
2は一緒に解釈して、C
4~C
18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルカンジイル基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表すが、ただし、R
1基またはR
2基の少なくとも1つは、6個の連続した炭素原子を有するものとし、かつR
1およびR
2の両方は一緒に解釈して、最大18個の炭素原子を含むものとし、
Lは、直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽和のC
3~C
40炭化水素基であって、任意にエーテル基またはエステル基の形の1個~12個の酸素原子で置換された基であり、かつ
Qは、Lとは異なる分枝鎖状、直鎖状、環状の飽和または不飽和のC
3~C
100炭化水素基であって、任意に1個~50個の酸素原子、または1個~50個の窒素原子もしくは1個~10個の硫黄原子で置換された基である]の3から18の間に含まれる全親水性親油性バランスを有する化合物である。
【0009】
本発明の第2の主題は、前記定義の式(I)の化合物の界面活性剤としての使用である。
【0010】
本発明の第3の主題は、水、賦香性油またはフレーバー付与性油、および少なくとも1種の前記定義の式(I)の界面活性剤を含む可溶化系である。
【0011】
本発明のもう1つの主題は、前記定義の式(I)の化合物または可溶化系の、活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出する送達系としての使用である。
【0012】
本発明のもう1つの主題は、
i)賦香性成分もしくはフレーバー付与性成分としての、少なくとも1種の前記定義の本発明の化合物および/または可溶化系と、
ii)香料キャリアーまたはフレーバーキャリアー、賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に、少なくとも1種の香料助剤またはフレーバー助剤と、
を含む、賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物である。
【0013】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1種の前記定義の式(I)の化合物および/または可溶化系を含む、賦香化消費者製品またはフレーバー化消費者製品である。
【0014】
本発明のもう1つの主題は、組成物、物品、または表面へと少なくとも1種の前記定義の式(I)の化合物および/または前記定義の可溶化系を適用することによる、活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出させる方法である。
【0015】
本発明の最後の主題は、水性環境へと有効量の少なくとも1種の前記定義の式(I)の化合物を添加することによる、水性環境中で疎水性分子を可溶化および/または安定化させる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第10表で定義される遊離のシトラールおよび/または本発明の界面活性剤を含む種々の配合物について測定されたシトラール分解の速度論を示す。
【
図2】Journal of Colloid and Interface Science 2006,第298巻,第441頁~第450頁に報告されるECLモデルを使用することにより計算される相応の界面活性剤分子のHLB値に対する、Kruss社のDSA 10 MK2型の液滴形状分析システムによって測定された1質量%の濃度での幾つかの界面活性剤の水溶液の表面活性を示す。
【
図3】イミン化合物FおよびC1に関しての濃度に対する表面張力を示す。
【
図4】市販の界面活性剤(PEG
25モノステアレート)と比較した、式(I)によるイミンと一緒に水中に可溶化されたモデル香料の成分の蒸発に関して測定された動的ヘッドスペース濃度を示す。
【
図5】単独の市販の界面活性剤(PEG
25モノステアレート)と比較した、式(I)によるイミンおよび市販の界面活性剤(PEG
25モノステアレート)の1:1モル比の混合物と一緒に水中に可溶化されたモデル香料の成分の蒸発に関して測定された動的ヘッドスペース濃度を示す。
【0017】
本発明の説明
目下、驚くべきことに、親水性部Qと、中間区間L(リンカー)と、フレーバーまたはフレグランスのアルデヒドまたはケトンから誘導される疎水性部Aとから構成される、3から18の間に含まれる全親水性親油性バランス(HLB)を有する式(I)による両親媒性イミン界面活性剤が、フレーバー油もしくはフレグランス油を水性環境中で可溶化することができ、かつ/またはフレーバー化合物およびフレグランス化合物を早期分解に対して安定化することが可能であることが見出された。実際には、式(I)によるイミンは、水系配合物中で組織化された凝集物を形成し得るため、該イミンは、加水分解から保護される。外部条件の変化は、アルデヒドまたはケトンの加水分解による環境への制御放出の引き金となる。
【0018】
本発明の第1の主題は、式
【化3】
[式中、
Aは、式(R
1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R
1)(R
2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンを放出することが可能な基であり、かつ式
【化4】
であり、ここで、波線はLとAとの間の結合の位置を示し、R
1およびR
2は、互いに独立して水素原子、または直鎖状の飽和もしくは不飽和のC
1~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基、または分岐状もしくは環状の飽和もしくは不飽和のC
3~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表し、またはR
1およびR
2は一緒に解釈して、C
4~C
18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルカンジイル基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表すが、ただし、R
1基またはR
2基の少なくとも1つは、6個の連続した炭素原子を有するものとし、かつR
1およびR
2の両方は一緒に解釈して、最大18個の炭素原子を含むものとし、
Lは、直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽和のC
3~C
40炭化水素基であって、任意にエーテル基またはエステル基の形の1個~12個の酸素原子で置換された基であり、かつ
Qは、Lとは異なる分枝鎖状、直鎖状、環状の飽和または不飽和のC
3~C
100炭化水素基であって、任意に1個~50個の酸素原子、または1個~50個の窒素原子もしくは1個~10個の硫黄原子で置換された基である]の3から18の間に含まれる全親水性親油性バランス(HLB)を有する化合物である。
【0019】
換言すると、本発明の第1の主題は、式
【化5】
[式中、
Aは、式(R
1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R
1)(R
2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンを放出することが可能な基であり、かつ式
【化6】
であり、ここで、波線はLとAとの間の結合の位置を示し、R
1およびR
2は、互いに独立して水素原子、または直鎖状の飽和もしくは不飽和のC
1~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基、または分岐状もしくは環状の飽和もしくは不飽和のC
3~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表し、またはR
1およびR
2は一緒に解釈して、C
4~C
18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルカンジイル基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表すが、ただし、R
1基またはR
2基の少なくとも1つは、6個の連続した炭素原子を有するものとし、かつR
1およびR
2の両方は一緒に解釈して、最大18個の炭素原子を含むものとし、
Lは、直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽和のC
3~C
40炭化水素基であって、任意にエーテル基またはエステル基の形の1個~12個の酸素原子で置換された基であり、かつ
Qは、Lとは異なる分枝鎖状、直鎖状、環状の飽和または不飽和のC
3~C
100炭化水素基であって、任意に1個~50個の酸素原子、または1個~50個の窒素原子もしくは1個~10個の硫黄原子で置換された基である]の、有効鎖長モデルを使用して計算される3から18の間に含まれる全親水性親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤である。
【0020】
式(I)の化合物は、疎水性部A[N=C(R1)(R2)]と、リンカーLと、親水性部Qとから構成される。
【0021】
「6個の連続した炭素原子」または同様の表現とは、当該技術分野における通常の意味を意味する。すなわち、R1またはR2またはR1およびR2は一緒に解釈して共に相次いで連結された少なくとも6個の炭素原子を含む。前記の6個の連続した炭素原子は、脂肪族炭化水素の一部であっても、環であっても、または環の一部であってもよい。前記の6個の連続した炭素原子は、アルキル基またはアルケニル基により置換されていてよい。
【0022】
「全親水性親油性バランス」(HLB)という用語は、当該技術分野における通常の意味を有する。すなわち、HLBは、界面活性剤の可溶性を特徴付け、式(I)の化合物の親水性部と疎水性部との間のバランスである。HLBは、ある化合物が組織化された凝集物および凝集物形状、すなわちミセル、ベシクル、ラメラを形成する能力を特徴付ける。式(I)の化合物のHLBは、いわゆる有効鎖長(ECL)モデル(改良デイビス法)を使用することによってX.Guo,Z.Rong and X.Ying,Journal of Colloid and Interface Science 2006,第298巻,第441頁~第450頁により報告される基特性に基づいて計算/取得することができる。式(I)による化合物の各々の部分の役割を推測するために、HLBは、3つの成分、つまり親水性部のHLB(Q)と、リンカーのHLB(L)と、疎水性部のHLB(A)との合計であるとみなされる。式(I)による化合物の全HLBは、等式1に従って計算される。
【0023】
【0024】
ECL法による基数の値は、X.Guo,Z.Rong and X.Ying,Journal of Colloid and Interface Science 2006,第298巻,第441頁~第450頁により文献に報告されるように、かつ第1表で報告されるように使用されている。イミン基は、第三級イミンとみなされ、基数2.4がイミン基のために使用された。
【0025】
【0026】
分子の表面活性を特徴付けるHLB値は、3から18までの範囲内にあるべきである。これらの限界を下回り、そして上回ると、該分子は、極性相または非極性相中で優先的に可溶化され、こうして該分子は、組織化された凝集物を形成しないこととなる。
【0027】
「…炭化水素基…」とは、前記基が水素原子および炭素原子からなり、かつ脂肪族炭化水素、すなわち直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素(例えば、アルキル基)、直鎖状もしくは分枝鎖状の不飽和炭化水素(例えば、アルケニル基またはアルキニル基)、飽和の環状炭化水素(例えば、シクロアルキル)、または不飽和の環状炭化水素(例えば、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル)の形であってよく、または芳香族炭化水素、すなわちアリール基の形であってよく、または前記の種類の基の混合物の形であってもよいことを意味し、例えば特定の基は、1つだけの種類に具体的に限定されることが述べられていない限り、直鎖状のアルキル部、分枝鎖状のアルケニル部(例えば1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する)、(ポリ)シクロアルキル、およびアリール部を含み得ることを意味すると理解される。同様に、本発明のすべての前記実施形態においては、ある基が1種より多くのトポロジーの形(例えば直鎖状、環状、または分枝鎖状)である、および/または飽和もしくは不飽和(例えばアルキル、芳香族、またはアルケニル)であると述べられている場合に、前記説明のように、前記のトポロジーのいずれか1つを有する、または飽和もしくは不飽和の部を含みうる基も意味する。同様に、本発明のすべての前記実施形態においては、ある基が飽和または不飽和(例えばアルキル)の1つの種類の形であると述べられている場合に、前記基は、任意の種類のトポロジー(例えば直鎖状、環状、または分枝鎖状)であってよく、または様々なトポロジーを有する幾つかの部を有することを意味する。本発明のすべての実施形態においては、炭化水素基が任意に酸素原子、窒素原子、または硫黄原子等のヘテロ原子で置換されていてよいと述べられる場合に、該炭化水素基の水素原子は、ヘテロ原子により置換されていてよく、また炭素原子は、ヘテロ原子により置換されていてよい(すなわち、炭化水素基はポリオールまたはポリアミンである)ことを意味する。
【0028】
式(I)におけるA、L、およびQは、部分A~LがQより疎水性であるように、かつ式(I)の化合物が、水性環境中で組織化された凝集物を形成することができるように選択される。
【0029】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、全親水性親油性バランス(HLB)は、3から18の間に、好ましくは4から18の間に含まれ得る。さらにより好ましくは、全親水性親油性バランス(HLB)は、10から18の間に、好ましくは10から16の間に、さらにより好ましくは10から15の間に含まれ得る。全親水性疎水性バランス(HLB)は、約11、約12、約13、約14であり得る。
【0030】
本発明の特定の実施形態によれば、全親水性親油性バランス(HLB)は、3から10の間に含まれ得る。
【0031】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の化合物は、式
【化7】
[式中、Q、L、R
1、およびR
2は、前記と同じ意味を有する]の化合物である。
【0032】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、Lは、直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽和のC6~C30炭化水素基であって、任意にエーテル基の形の1個~12個の酸素原子で置換された基を表し得る。好ましくは、Lは、3個~10個の繰返単位を有するC6~C30ポリアルキルグリコール、またはC7~C14アルキルフェノキシ基を表し得る。好ましくは、Lは、OC6H4CR3
2CR3
2基または(OCH2CHR3)q基であって、R3が水素原子またはメチル基を表し、かつqが3から10の間で可変の整数である基を表し得る。好ましくは、Lは、OC6H4CH2CH2基または(OCH2CH(CH3))q基であって、qが3から10の間で可変の整数であり、さらにより好ましくはqが3または10である基を表し得る。
【0033】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、Qは、Lとは異なる分枝鎖状、直鎖状、環状の飽和または不飽和のC3~C100炭化水素基であって、任意に1個~50個の酸素原子、または1個~50個の窒素原子もしくは1個~10個の硫黄原子で置換された基を表し得る。好ましくは、Qは、Lとは異なる分枝鎖状、直鎖状、環状の飽和または不飽和のC3~C100炭化水素基であって、任意に1個~50個の酸素原子または1個~10個の硫黄原子で置換された基を表し得る。Qは、ポリイミン、多糖、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、またはポリペプチドを表し得る。好ましくは、Qは、多糖、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、またはポリペプチドを表し得る。さらに好ましくは、Qは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、またはポリペプチドを表し得る。さらにより好ましくは、Qは、T(OC2H4)m基またはT(OC3H6)m基であって、mが7から40の間で可変の整数であり、かつTがH原子またはメチル基である末端基である基を表し得る。好ましくは、Qは、CH3(OC2H4)m基であって、mが11から30の間の幅におよぶ整数である基を表し得る。最も好ましくは、mは、11、19、または30である。
【0034】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の化合物のQ-L部は、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールとの間のモル比が1:3から5:1の間に含まれる範囲にある、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマーであり得る。前記ブロックコポリマーは、通常は単分散性ではなく、平均構造付近で様々な異なる鎖長を有し、こうして特定の分子量分布が生ずるポリマーの混合物である。HLBの計算および化合物名の命名のためには、常にポリマーの平均構造が参照される。
【0035】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の化合物は、式
Q-L-NH2 (IV)
の化合物、および式(R1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R1)(R2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンを放出することができ、前記式中、Q、L、R1、およびR2は、前記と同じ意味を有する。その放出は、水性媒体中で濃度および/またはpHの変化により引き起こされる。
【0036】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、式(IV)Q-L-NH2の化合物はまた、ポリエーテルモノアミンとしても知られるポリエーテルアミン、例えば商標Jeffamine(登録商標)(Huntsman社の商標で、Huntsman社から市販される)として販売されるポリエーテルアミンである。好ましくは、式(IV)の化合物は、Jeffamine(登録商標)Mである。さらにより好ましくは、Q-L-NH2は、Jeffamine(登録商標)M-2070およびJeffamine(登録商標)M-1000からなる群から選択されるポリマーであり得る。
【0037】
前記実施形態のいずれか1つによれば、R1およびR2は、互いに独立して水素原子、または直鎖状の飽和もしくは不飽和のC1~C18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基、または分岐状もしくは環状の飽和もしくは不飽和のC3~C18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表し、またはR1およびR2は一緒に解釈して、C4~C18の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルカンジイル基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、もしくはエステル基の形の1個~3個の酸素原子で置換された基を表すが、ただし、R1基またはR2基の少なくとも1つは、8個の連続した炭素原子を有するものとする。
【0038】
さらにより好ましい実施形態においては、式R1CHOの前記活性アルデヒドは、1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキシアルデヒド(ヘリオトロピン)、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、2,4-デカジエナール、2-デセナール、4-デセナール、8-デセナール、9-デセナール、3-(6,6-ジメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン-2-イル)プロパナール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Triplal(登録商標)、製造元:International Flavors&Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、3,5-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、5,9-ジメチル-4,8-デカジエナール、5,9-ジメチルデカ-8-エナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール(メロナール)、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール(シトラール)、3,7-ジメチルオクタナール、3,7-ジメチル-6-オクテナール(シトロネラール)、2-ドデセナール、3-ドデセナール、4-ドデセナール、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4-エチルベンズアルデヒド、3-(2-、および4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2,4-ヘプタジエナール、4-ヘプテナール、2-ヘキセナール、3-ヘキセナール、2-ヘキシル-3-フェニル-2-プロペナール(ヘキシルシンナムアルデヒド)、2-ヒドロキシベンズアルデヒド、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4-、および3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Lyral(登録商標)、製造元:International Flavors and Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、4-イソプロピルベンズアルデヒド(クミンアルデヒド)、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、2-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)-1-p-メンテン-9-カルバルデヒド(Liminal(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、4-メトキシベンズアルデヒド(アニスアルデヒド)、6-メトキシ-2,6-ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール)、5-、および6-メトキシオクタヒドロ-1H-4,7-メタノインデン-1-、および2-カルバルデヒド(Scentenal(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、2-(4-メチレンシクロヘキシル)プロパナール、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Precyclemone(登録商標)B、製造元:International Flavors&Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド(Empetal、製造元:Givaudan-Roure SA.社、スイス、ヴェルニエ)、(4-メチルフェニル)アセトアルデヒド、3-メチル-5-フェニルペンタナール(Phenexal(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、2-メチルウンデカナール、2,4-ノナジエナール、2,6-ノナジエナール、ノナナール、2-ノネナール、3-ノネナール、6-ノネナール、8-ノネナール、2-オクテナール、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルブタナール(Trifernal(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、2-フェニルプロパナール(ヒドロアトロパアルデヒド)、3-フェニル-2-プロペナール(シンナムアルデヒド)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール(Lilial(登録商標)、製造元:Givaudan-Roure SA社、スイス、ヴェルニエ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal(登録商標)、製造元:Quest International社、オランダ、ナールデン)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-4-カルバルデヒド、エキソ-トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-エキソ-カルバルデヒド(Vertral(登録商標)、製造元:Symrise社、ドイツ、ホルツミンデン)、2,6,6-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-カルバルデヒド(ホルミルピナン)、2,4,6-、および3,5,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-アセトアルデヒド(カンホレンアルデヒド)、2,6,10-トリメチル-2,6,9,11-ドデカテトラエナール、2,5,6-トリメチル-4-ヘプテナール、3,5,5-トリメチルヘキサナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、ウンデカナール、2-ウンデセナール、10-ウンデセナール、または9-ウンデセナール、およびそれらの混合物、例えばイントレレベンアルデヒド(製造元:International Flavors&Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、およびAldehyde Supra(製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)からなる群から選択される。
【0039】
あるいは式(R1)(R2)C(=O)の前記活性ケトンは、好ましくは、ダマセノン類、ダマスコン類、イオノン類、メチルイオノン類(例えばIralia(登録商標)Total、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、イロン類、シクロペンタデカノン(Exaltone(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、3-メチル-4-シクロペンタデセン-1-オン(製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン(デルタムセノン、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、3-メチル-1-シクロペンタデカノン(ムスコン、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、1-(2-アミノフェニル)-1-エタノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン(Neobutenone(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エタン-1-オン、2,5-ジメチル-2-オクテン-6-オン、4,7-ジメチル-6-オクテン-3-オン、1-(2,4-ジメチルフェニル)-1-エタノン、4-(1,1-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキサノン(Orivone(登録商標)、製造元:International Flavors&Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、2,4-ジ-tert-ブチル-1-シクロヘキサノン、1-(4-エチルフェニル)-1-エタノン、2-ヘキシル-1-シクロペンタノン、4-(4-ヒドロキシ-1-フェニル)-2-ブタノン(ラズベリーケトン)、1-(2-、および4-ヒドロキシフェニル)-1-エタノン、4-イソプロピル-2-シクロヘキセン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)エタン-1-オン、1(6),8-p-メンタジエン-2-オン(カルボン)、4(8)-p-メンテン-3-オン、1-(1-p-メンテン-2-イル)-1-プロパノン、メントン、(1R,4R)-8-メルカプト-3-p-メンタノン、1-(4-メトキシフェニル)-1-エタノン、5-メチル-3-ヘプタノン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、メチル 3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタンアセテート(Hedione(登録商標)、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、1-(4-メチルフェニル)-1-エタノン(4-メチルアセトフェノン)、2-(1-メチルプロピル)-1-シクロヘキサノン、5-メチル-エキソ-トリシクロ[6.2.1.0(2,7)]ウンデカン-4-オン、3-メチル-4-(1,2,2-トリメチルプロピル)-4-ペンテン-2-オン、2-ナフタレニル-1-エタノン、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン(異性体混合物、Iso E Super(登録商標)、製造元:International Flavors&Fragrances社、米国、ニューヨーク州)、3,4,5,6,6-ペンタメチル-3-ヘプテン-2-オン、2-ペンチル-1-シクロペンタノン(Delphone、製造元:Firmenich SA社、スイス、ジュネーブ)、4-フェニル-2-ブタノン(ベンジルアセトン)、1-フェニル-1-エタノン(アセトフェノン)、2-、および4-tert-ブチル-1-シクロヘキサノン、1-(4-tert-ブチルフェニル)-1-エタノン)、2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン(カンファー)、2,6,6-トリメチル-1-シクロヘプタノン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン(ジヒドロイオノン)、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、1-(3,5,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-エタノン、および2,2,5-トリメチル-5-ペンチル-1-シクロペンタノンからなる群から選択される。
【0040】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の化合物は、式
【化8】
[式中、QおよびLは、前記と同じ意味を有し、R
1は、式(R
1)CHOのフレーバーまたはフレグランスのアルデヒドから誘導され、ここでR
1は、少なくとも6個の連続した炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽和のC
6~C
18炭化水素基であって、任意にヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基またはエステル基の形の1個~3個の炭素原子で置換された基を表す]の化合物である。好ましくは、R
1は、ベンズアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラール、および(4Z)-4-ドデセナールからなる群から選択されるフレーバーまたはフレグランスのアルデヒドから誘導される。
【0041】
それらの特定の化学構造のため、本発明の式(I)の化合物は、フレーバーおよびフレグランスのアルデヒドまたはケトンを可溶化および/または安定化することができ、かつ加水分解反応を介して式(IV)の化合物およびフレーバー付与性または賦香性のアルデヒドまたはケトンを放出することができる。水性媒体においては、6個の連続した炭素原子を有し、かつ6個から15個の間の炭素原子を含むフレーバー付与性または賦香性のアルデヒドまたはケトンの可溶化、安定化、および制御放出は、水溶液の全質量に対して0.05質量%から95質量%の間、好ましくは0.1質量%から50質量%の間に含まれる式(I)の化合物の濃度、および2から11の間に含まれるpHで得られる。当業者は、所望の放出速度に応じて、前記pHおよび濃度を選択することができるであろう。
【0042】
前記の本発明のすべての態様においては、本発明の化合物は、その他のフレグランス送達系の存在下で、特にその他の水感受性のフレグランス送達系の存在下で、または相補的な放出プロフィールを有するその他の送達系の存在下でも使用され得る。本発明の化合物はまた、その他の界面活性剤の存在下でも使用され得る。適切な界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレス硫酸ナトリウム(例えば商標Texapon(登録商標)NSO ISとして市販される)、ヘキサデシル-トリメチル-アンモニウムブロミド(セトリモニウムブロミド)、2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71,74-ペンタコサオキサヘキサヘプタコンタン-76-イルステアレート(PEG25モノステアレート)、(ポリエチレングリコール)9,10 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(例えば商標Triton(登録商標)X-100として市販される)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(例えば商標Tween(登録商標)80として市販される)、ナトリウムC14~17 sec-アルキルスルホネート(例えば商標Hostapur(登録商標)SAS 60として市販される)、およびエトキシル化されたC12~16アルコール(例えば商標Genapol(登録商標)LA 70として市販される)から選択され得る。
【0043】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1種の式(I)の化合物の界面活性剤としての使用、好ましくは1種の式(I)の化合物の界面活性剤としての使用である。式(I)の化合物は、濃度に応じて、例えばミセル、液晶相、またはベシクルとして自己組織化することができる両親媒性分子である。少なくとも1種の式(I)の化合物の水溶液中での使用は、香料またはフレーバー化合物等の疎水性分子を水性環境中で可溶化させる。
【0044】
既に述べたように、水性媒体中では、本発明の開裂可能な界面活性剤は、反応しやすいイミン官能を加水分解から保護することにより、例えばミセルとして自己組織化する。そのような組織化は、アルデヒドおよびケトンの可溶化、安定化、および放出制御を可能にし、こうして前記可溶化系の貯蔵の間にアルデヒドおよびケトンの分解の大幅な減少をもたらす。こうして、本発明のもう1つの主題は、水、賦香性油またはフレーバー付与性油、および少なくとも1種の前記定義の式(I)の界面活性剤を含む可溶化系である。前記可溶化系は、水中の少なくとも1種の式(I)の界面活性剤により安定化された分散された賦香性成分もしくはフレーバー付与性成分を含有する油滴(例えば水中油型エマルジョン)の形、または賦香性油もしくはフレーバー付与性油中の少なくとも1種の式(I)の界面活性剤により安定化された分散された水含有の液滴(例えば油中水型のエマルジョン)の形で存在し得る。好ましくは、可溶化系は、水と、前記定義の式(I)の界面活性剤により安定化された分散された賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含有する油滴とを含む(例えば水中油型エマルジョン)。前記分子の異なる部分A、L、およびQは、式(I)による最終分子が、水を含有する環境において組織化された凝集物、例えばミセル、液晶相、またはベシクルを形成することが可能であるように選択される。親水性部Qとイミン結合との間の比較的疎水性のリンカーLの存在は、水中でイミン結合を安定化し、それをミセルの疎水性コア中に部分的に導入することを可能にし、したがってイミン結合と水との接触を制限するために重要なパラメーターである。
【0045】
用語「可溶化系」とは、当該技術分野における通常の意味、すなわちマクロエマルジョン、ナノエマルジョン(ミニエマルジョンとも呼ばれる)、またはマイクロエマルジョンを含む水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンと解釈される。好ましくは、本発明の可溶化系は、水中油型エマルジョンである。さらにより好ましくは、本発明の可溶化系は、水中油型マイクロエマルジョンである。
【0046】
油滴は、5nmから1000nmの間に含まれる平均直径を有する。水は、可溶化系の全質量に対して50質量%から95質量%の間に含まれる量で存在する。賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含有する油は、可溶化系の全質量に対して0.01質量%から15質量%の間に含まれる量で存在する。本発明による凝集物を形成するためには、1種以上の界面活性剤が、臨界ミセル濃度より多量に存在することが重要である。臨界ミセル濃度は、本明細書では「CMC」と略記される。式(I)の界面活性剤は、可溶化系の全質量に対して0.05質量%から95質量%の間、好ましくは0.08質量%から50質量%の間に含まれる量で存在する。可溶化系のpHは、2から11の間である。ミセルは、球形状、楕円体形状、円柱形状、または二層形状を有する。好ましくは、ミセルは、球形状または円柱形状を有する。
【0047】
好ましい実施形態によれば、賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含有する油は、式R1CH(O)のアルデヒド、または式(R1)(R2)C(=O)のケトンであり、式中R1およびR2が前記と同じ意味を有する賦香性成分またはフレーバー付与性成分を含む。より好ましくは、界面活性剤のR1、および賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンのR1、ならびに界面活性剤のR2、および賦香性またはフレーバー付与性のケトンのR2は、同一である。
【0048】
上述のように、本発明は、式(I)の化合物の、活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出する送達系としての使用に関する。換言すると、本発明は、賦香性もしくはフレーバー付与性の組成物または賦香もしくはフレーバー付与された物品または表面の匂い特性または味覚特性を付与、増強、改善または変更する方法またはプロセスであって、前記組成物または物品に、有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物を添加して、例えばその典型的なノートを付与する活性の揮発性アルデヒドまたはケトンを放出することを含む方法またはプロセスに関する。最終的な快楽効果は、正確な投与量と本発明の化合物の嗅覚的特性に依存し得ると理解されるが、いずれにしても本発明の化合物の添加は、投与量に応じてノート、タッチ、またはアスペクトの形の典型的なタッチを最終製品に付与することとなる。
【0049】
「式(I)の化合物の使用」とは、本明細書ではまた、化合物(I)を含み、香料産業またはフレーバー産業において有利に使用することができる任意の組成物の使用であるとも理解されるべきである。
【0050】
実際に賦香性成分またはフレーバー付与性成分として有利に使用することができる前記組成物も、本発明の主題である。
【0051】
したがって、本発明のもう1つの主題は、
i)賦香性成分もしくはフレーバー付与性成分としての、少なくとも1種の前記定義の本発明の化合物および/または可溶化系と、
ii)香料キャリアーまたはフレーバーキャリアー、賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に、少なくとも1種の香料助剤またはフレーバー助剤と、
を含む、賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物である。
【0052】
「香料キャリアーまたはフレーバーキャリアー」とは、本明細書においては、香料またはフレーバーの観点から実際に中立的な材料、すなわち賦香性成分またはフレーバー付与性成分の感覚刺激特性を大きく変更しない材料を意味している。前記キャリアーは、液体または固体であってよい。
【0053】
液体キャリアーとしては、限定されるものではないが、例として、乳化系、すなわち溶剤と界面活性剤との系、または香料もしくはフレーバーで通常使用される溶剤を挙げることができる。香料で通常使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は、網羅的にすることはできない。しかしながら、限定されるものではないが、例として、ブチレングリコールもしくはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、トリエチルシトレートのような溶剤またはそれらの混合物を挙げることができ、それらが最も一般的に使用される。香料キャリアーおよび香料補助成分の両方を含む組成物については、先に規定されたもの以外の適切な香料キャリアーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくはその他のテルペン類、イソパラフィン類、例えばIsopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標として知られるイソパラフィン類またはグリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類、例えばDawanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)の商標として知られるグリコールエーテルエステル類、または水素化ひまし油、例えばCremophor(登録商標)RH40(製造元:BASF)の商標として知られる水素化ひまし油であってよい。フレーバーで通常使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は、網羅的にすることはできない。適切な溶剤には、例えばプロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート、ベンゼンアルコール、エタノール、植物油、またはテルペン類が含まれる。
【0054】
固体キャリアーとは、賦香性組成物もしくはフレーバー付与性組成物または賦香性組成物もしくはフレーバー付与性組成物の幾つかの要素が化学的または物理的に結合され得る材料を意味する。一般的に、そのような固体キャリアーは、該組成物の安定化のため、または該組成物もしくは幾つかの成分の蒸発速度を抑えるためのいずれかのために使用される。固体キャリアーの使用は、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果に至る手法を把握している。しかしながら、固体キャリアーとしての限定されない例としては、吸収性ゴムもしくはポリマー、または無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木材系材料、有機ゲルもしくは無機ゲル、クレイ、石膏、タルクもしくはゼオライトを挙げることができる。
【0055】
限定されるものではないが、固体キャリアーのその他の例としては、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例は、壁形成材料および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類もしくは三糖類、天然デンプンもしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、またはさらに、H.Scherz著のHydrokolloide:Stabilisatoren,Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln,Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet,Behr’s Verlag GmbH&Co.,ハンブルク、1996年のような参照テキストに挙げられる材料を含んでもよい。カプセル化は、当業者に良く知られた方法であり、例えば噴霧乾燥、凝集もしくはさらに押出等の技術を使用して行うことができ、またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含む被覆カプセル化からなる。限定されるものではないが、例として特に、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素もしくはポリウレタン型の樹脂またはそれらの混合物(前記樹脂のすべては当業者に良く知られている)によるコア・シェルカプセル化であって、重合、界面重合、コアセルベーションもしくはそれらを一緒にすることによって(前記技術のすべては先行技術に記載されている)、そして任意にポリマー安定化剤またはカチオン性コポリマーの存在下で誘導される相分離法のような技術を使用したカプセル化を挙げることができる。
【0056】
特に、樹脂としては、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、アミン、すなわちウレア、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メタノールメラミン、グアナゾール等の樹脂、およびそれらの混合物との重縮合によって製造される樹脂を挙げることができる。その一方で、商標Urac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.社)、Cymel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.社)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF社)として市販されている予め形成された樹脂のアルキロール化ポリアミンを使用することができる。
【0057】
特に、樹脂としては、ポリオール、例えばグリセロールおよびポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットあるいはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体(商標Takenate(登録商標)として知られる、製造元:Mitsui Chemicals社)、なかでもキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットの重縮合により製造される樹脂を挙げることができる。
【0058】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連した根本文献の幾つかは、K.Dietrich et al.,Acta Polymerica,1989,第40巻,第243頁、第325頁および第683頁、ならびに1990,第41巻,第91頁による文献によって指摘されている。そのような文献は、特許文献にさらに詳説されかつ例示された従来技術の方法に従ってそのようなコア・シェル型マイクロカプセルを製造することに影響を及ぼす様々なパラメータを既に記載している。米国特許第4,396,670号明細書(US4,396,670)(Wiggins Teape Group Limited社)は、その特許文献の該当する初期の例である。それ以来、多くの他の著者および考案者はこの分野で文献を拡充しており、ここですべての公表された発展を網羅することはできないであろうが、この種類のカプセル化における一般知識は非常に重要である。そのようなマイクロカプセルの適切な使用にも取り組む、より近年の適切な文献は、例えばH.Y.LeeらによってJournal of Microencapsulation,2002,第19巻,第559~569頁において、国際特許出願の国際公開第01/41915号(WO01/41915)において、またはさらにS.BoneらによってChimia,2011,第65巻,第177~181頁において指摘されている。
【0059】
「賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分」とは、本明細書においては、快楽効果を付与する賦香性もしくはフレーバー付与性の調製物または組成物において使用される化合物を意味している。言い換えると、何かに賦香またはフレーバー付与するものとみなされるべき、そのような補助成分は、当業者によって、組成物の匂いまたは味覚を良い方向にまたは心地よく、かつ有する匂いまたは味覚と同じにならないように付与または改変することができるものと認識されるはずである。
【0060】
該組成物中に存在する賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、それらはともかく網羅的なものではなく、ここで、当業者は、その一般知識に基づき、かつ意図される使用または適用および所望の感覚刺激効果に従ってそれらを選択することができる。一般用語においては、これらの賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、酢酸塩類、ニトリル類、テルペノイド類、窒素系もしくは硫黄系複素環式化合物および精油のような様々な化学物質クラスに属するものであり、前記賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分は、天然由来または合成由来のものであってよい。
【0061】
特に、香料配合物で通常使用される賦香性補助成分、例えば
- アルデハイディック成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、および/またはノネナール;
- アロマティック-ハーバル成分:ユーカリ油、ショウノウ、ユーカリプトール、メントールおよび/またはα-ピネン;
- バルサミック成分:クマリン、エチルバニリンおよび/またはバニリン;
- シトラス成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、リナリルアセテート、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテートおよび/または1,4(8)-p-メンタジエン;
- フローラル調成分:メチルジヒドロジャスモネート、リナロオール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルサリチレート、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、β-イオノン、メチル 2-(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、ヘキシルサリチレート、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、ベルジルアセテート、ゲラニオール、p-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、アミルサリチレート、高cis-メチルジヒドロジャスモネート、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロピオネート、ゲラニルアセテート、テトラヒドロリナロオール、cis-7-p-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、4-フェニル-2-ブタノン、イソノニルアセテート、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、ベルジルイソブチレートおよび/またはメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーティー調成分:γ-ウンデカラクトン、4-デカノライド、エチル 2-メチルペンタノエート、ヘキシルアセテート、エチル 2-メチルブタノエート、γ-ノナラクトン、アリルヘプタノエート、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル 2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートおよび/またはジエチル 1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
グリーン調成分:2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク調成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、ペンタデセノリド、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、ペンタデカノリド、および/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディー調成分:1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリ油、パチュリ油のテルペン分画、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび/またはイソボルニルアセテート;
- その他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシー、またはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フラン、およびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、クローブ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、および/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール、
を挙げることができる。
【0062】
本発明による賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分は、上述の賦香性補助成分に限定されるものでなくてよく、多くのこれら以外の補助成分は、ともかく、S.Arctander著のPerfume and Flavor Chemicals,1969年、モントクレア(米国、ニュージャージー州)もしくはそのより最新版、または同じ性質のその他の論文、ならびに香料およびフレーバーの分野における豊富な特許文献などの参考書に列挙されている。また、前記補助成分は、様々な種類の賦香性化合物またはフレーバー付与性化合物を制御放出することが知られる化合物であってもよいとも解釈される。
【0063】
「香料助剤またはフレーバー助剤」とは、本明細書においては、追加的に加えられる恩恵、例えば色、特に耐光性、化学的安定性等を付与することができる成分を意味している。賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物中で通常使用される助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅しうるものではないが、前記成分は当業者に周知であると述べる必要がある。しかしながら、香料助剤の具体的な限定されない例としては、以下の、粘度剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化調節剤および/またはレオロジー調節剤)、安定化剤(例えば、保存剤、酸化防止剤、熱/光安定化剤および/または緩衝剤もしくはキレート化剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗細菌剤または抗微生物剤または抗真菌剤もしくは炎症抑制剤)、研磨材、皮膚冷感剤、固定剤、駆虫剤、軟膏、ビタミンおよびそれらの混合物を挙げることができる。
【0064】
当業者であれば、賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物の上述の成分を混合すること、単純に当該技術分野の標準的知識を適用すること、そして試行錯誤の方法論によって、所望の効果に最適な配合物を設計することが十分に可能であると理解される。
【0065】
少なくとも1種の式(I)の化合物および少なくとも1種の香料キャリアーまたはフレーバーキャリアーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態を表すだけでなく、少なくとも1種の式(I)の化合物と、少なくとも1種の香料キャリアーまたはフレーバーキャリアーと、少なくとも1種の賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分と、任意に少なくとも1種の香料助剤またはフレーバー助剤とを含む賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物を表す。
【0066】
本明細書においては、上述の組成物において、本発明の様々な化合物の香調または味覚調性を有するアコード、香料、フレーバーを調香師またはフレーバリストが調合することを可能にし、こうしてそれらの作業のための新たなツールがもたらされるので、1種より多くの式(I)の化合物を有する可能性が重要であると述べることが実用的である。
【0067】
明確にするために、化学合成から直接的に得られる任意の混合物、例えば適切な精製をしておらず、本発明の化合物が出発物、中間体または最終生成物として含まれることとなる反応媒体は、前記混合物により本発明による化合物が香料またはフレーバーのために適切な形で得られない限りは、本発明による賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物としては見なされ得ないとも理解される。このように未精製の反応混合物は、一般的に特段の特定がない限り本発明からは除外される。
【0068】
さらに、本発明の化合物または本発明の可溶化系は、有利には、フレーバーまたは現代の香料のあらゆる分野において、すなわち精製香料または機能性香料の分野において、前記化合物(I)が添加される消費者製品の匂いを良い方向に付与または変更するために使用することもできる。従って、本発明のもう1つの主題は、賦香性成分またはフレーバー付与性成分として、前記定義の少なくとも1種の式(I)の化合物および/または可溶化系を含む賦香化消費者製品またはフレーバー化消費者製品によって表される。
【0069】
本発明の化合物または可溶化系は、そのままで、または本発明の賦香性組成物またはフレーバー付与性組成物の一部として加えることができる。
【0070】
明確にするために、「賦香化消費者製品」とは、適用される表面(例えば皮膚、毛髪、テキスタイルまたは家の表面)に少なくとも1種の心地よい賦香性効果を送達すると見積もられる消費者製品を意味すると述べる必要がある。言い換えると、本発明による賦香化消費者製品は、機能性配合物と、任意に所望の消費者製品、例えば洗剤またはエアーフレッシュナーに相応して追加の恩恵剤(benefit agent)と、嗅覚的有効量の少なくとも1種の本発明の化合物とを含む賦香された消費者製品である。明確にするために、前記賦香化消費者製品は、不可食性製品である。
【0071】
賦香化消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、それらはともかく網羅的なものではなく、当業者は、その一般知識に基づき、かつ前記製品の性質および所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0072】
適切な賦香性消費製品の限定されるものではない例には、香料、例えば精製香料、スプラッシュ、またはオードパルファム、コロンまたはシェーブローションもしくはアフターシェーブローション、ファブリックケア製品、例えば液体洗剤もしくは固形洗剤、ファブリック柔軟剤、ファブリックリフレッシュナー、アイロン水、ペーパークリーナー、漂白剤クリーナー、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品、ボディーケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、染髪用調剤もしくはヘアースプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品)、消毒薬、インティメートケア製品、化粧品調剤(例えば、スキンクリームもしくはスキンローション、バニシングクリームまたはデオドラントもしくは制汗剤(例えば、スプレーまたはロールオン製品)、脱毛剤、タニング用製品もしくは日焼け用製品もしくは日焼け後製品、ネイル用製品、スキンクレンジング製品、メークアップ)、またはスキンケア製品(例えば、賦香石けん、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品もしくはフットケア/ハンドケア製品)、家内空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/または公共空間(ホール、ホテル、モール等)で使用することができるエアケア製品、例えばエアーフレッシュナーもしくは「すぐに使える」粉末状エアーフレッシュナー、またはホームケア製品、例えばカビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用(例えば、床、浴槽、サニタリーまたは窓洗浄用)洗剤、皮革手入れ用製品;車手入れ用製品、例えば磨き剤、ワックスもしくはプラスチッククリーナーが含まれる。
【0073】
明確にするために、フレーバー化消費者製品は、揚げられていても揚げられていなくてもよいだけでなく、凍らされていても凍らされていなくてもよく、低脂肪であっても低脂肪でなくてもよく、マリネにされていてよく、衣が付けられてもよく、冷やされてもよく、脱水されてもよく、インスタントであってもよく、缶詰であってもよく、再構成されてもよく、レトルトであってもよく、または保存されてもよい食品または飲料であり得る可食製品である。したがって、本発明によるフレーバー付与された物品は、所望の可食製品、例えば風味付けキューブ(savory cube)の味覚およびフレーバープロフィールに相応して、式(I)による1種以上の化合物または本発明の可溶化系、ならびに任意の恩恵剤を含む。
【0074】
食料品または飲料の成分の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、当業者は、その一般知識に基づき、かつ前記製品の性質に従ってそれらを選択することができる。
【0075】
前記フレーバー化消費者製品の典型的な例には、
・ シーズニングまたは調味料、例えばストック、風味付けキューブ、粉末ミックス、フレーバー油、ソース(例えばレリッシュ、バーベキューソース、ドレッシング、グレービーソースまたはスイートソースおよび/またはサワーソース)、サラダドレッシング、またはマヨネーズ、
・ 肉ベースの製品、例えば鶏肉、牛肉、または豚肉ベースの製品、シーフード、すり身、または魚肉ソーセージ、
・ スープ、例えばクリアースープ、クリームスープ、チキンスープまたはビーフスープ、またはトマトスープまたはアスパラガススープ、
・ 炭水化物ベースの製品、例えば即席麺、米、パスタ、ポテトフレーク、または揚げ物、麺、ピザ、トルティーヤ、ラップ、
・ 乳製品または脂肪製品、例えばスプレッド、チーズ、または普通脂肪もしくは低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、バター、ピーナッツバター、ショートニング、プロセスチーズもしくはフレーバーチーズ、
・ 風味付け製品、例えばスナック、ビスケット(例えばチップスまたはクリスプ)または卵製品、ポテトチップ/トルティーヤチップ、電子レンジポップコーン、ナッツ、プレッツェル、餅、せんべい等、
・ イミテーション製品、例えば乳製品(例えば油、脂肪、および増粘剤から製造される再形成チーズ)、またはシーフードまたは肉(例えばベジタリアン用代替肉、ベジバーガー)または類似物、
・ ペットフードまたは動物用食料、または
・ 飲料(レディ・トゥ・ドリンク飲料または粉末清涼飲料)、
が含まれる。
【0076】
式(I)による化合物または本発明の可溶化系が利用される特に好ましいフレーバー化消費者製品には、飲料が含まれる。
【0077】
本発明による化合物または本発明の可溶化系が様々な上述の製品または組成物中に導入され得る割合は、広い範囲内の値の幅を有する。これらの値は、本発明による化合物が、当該技術分野で通常使用される賦香性補助成分またはフレーバー付与性補助成分、溶剤または添加剤と混合される場合には、賦香またはフレーバー付与されるべき物品の性質および所望の感覚刺激効果ならびに所定の基剤における補助成分の性質に依存している。
【0078】
例えば、賦香性組成物の場合には、典型的な濃度は、本発明の化合物が導入される組成物の質量に対して0.001質量%~30質量%またはさらに高い本発明の化合物のオーダーである。これらより低い0.01質量%~5質量%のオーダーのような濃度は、これらの化合物が賦香化消費者製品へと導入される場合に使用することができ、その際、パーセンテージは物品の質量を基準とするものである。
【0079】
フレーバー付与性組成物の場合には、典型的な濃度は、本発明の化合物が導入される賦香性組成物の質量に対して0.05%~30%、より好ましくは0.1%~20%、最も好ましくは0.1%~10%の化合物のオーダーである。これらより低い0.5質量ppm~300質量ppm、より好ましくは5質量ppm~75質量ppm、最も好ましくは8質量ppm~50質量ppmのオーダーのような濃度は、これらの化合物が賦香される物品へと導入される場合に使用することができ、その際、パーセンテージは物品の全質量を基準とするものである。
【0080】
本発明の化合物は、Q-L-NH2部と式R1C(O)R2の賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンとの縮合により製造され得る。当業者は、前記縮合の実施のために適した条件を選択することが可能である。Q-L-NH2は、市販されているか、または以下で定義されるように合成される。
【0081】
水中で、式(III)の塩基性化合物、すなわちQ-L-NH2、および式(R1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R1)(R2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンは、式(I)の化合物と平衡化することで、動的混合物が形成される。水の存在下で式(III)の少なくとも1種の第一級アミンと少なくとも1種の賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドおよび/またはケトンとを合することにより得ることが可能な前記動的混合物は、前記賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドおよび/またはケトンを制御放出および延長放出すると同時に、アルデヒドおよび/またはケトンの混合物により一層均一に分配された効果を与えることができる有益な賦香性成分またはフレーバー付与性成分である。本発明の動的混合物は、1種または数種の賦香性化合物またはフレーバー付与性化合物の制御放出を可能にする。式(I)の化合物の構造は、ミセルまたはベシクルの形成によりイミン結合を安定化し、こうして平衡がイミン結合の形成方向にシフトするように選択される。
【0082】
そのような挙動により、本発明の動的混合物は賦香性成分またはフレーバー付与性成分として特に適切となる。したがって、本発明の動的混合物の賦香性成分またはフレーバー付与性成分としての使用は、本発明の主題である。特に、本発明は、賦香性組成物もしくはフレーバー付与性組成物または賦香もしくはフレーバー付与された物品の匂い特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、前記組成物または物品に、有効量の本発明の動的混合物を添加することを含む方法に関する。
【0083】
こうして、本発明の最後の主題は、動的混合物の賦香性成分またはフレーバー付与性成分としての使用であって、含水媒体中で
i)前記定義の少なくとも1種の、式(R1)CHOのフレーバーもしくはフレグランスのアルデヒド、または式(R1)(R2)COのフレーバーもしくはフレグランスのケトンと、
ii)少なくとも1種の、式
Q-L-NH2 (IV)
[式中、QおよびLは、前記と同じ意味を有する]の誘導体と、
を反応させることにより得ることができる賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドおよび/またはケトンの制御放出のための使用である。
【0084】
「動的混合物」とは、本明細書では、溶剤(例えば、含水媒体)、幾つかの出発成分、および様々な出発成分の間の可逆的反応の結果である幾つかの付加生成物を含む組成物を意味する。前記動的混合物では、可逆的化学反応、特に賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンのカルボニル基と式(IV)の化合物の2個のNH2部との間の可逆的な縮合による形成および解離が活用されると考えられる。様々な出発物質および付加生成物の間の比率は、出発成分の間のそれぞれの可能な反応の平衡定数に依存する。前記「動的混合物」の有用性は、すべての成分間の相乗効果から得られる。
【0085】
動的混合物は、1種以上の式(IV)の本発明の第一級アミンと1種以上の賦香性成分またはフレーバー付与性成分とを含水媒体中で反応させることにより得られる。「含水媒体」とは、本明細書では少なくとも10%(質量/質量)またはさらに30%(質量/質量)の水、および任意に脂肪族アルコール、例えばC1~C3アルコール、例えばエタノールを含む分散媒体を意味する。より好ましくは、前記媒体は、任意に最大30%の界面活性剤を含む少なくとも50%(質量/質量)またはさらに70%の水を含む。本発明の特定の実施形態によれば、含水媒体は、2から11の間、特に3から10の間に含まれるpHを有し得る。本発明による第一級アミンは塩基として働くので、それらの使用が意図される媒体のpHを増大させ得る。該媒体のpHは、酸の添加により(酸性へと)再調節され得る。その酸の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、それらはともかく網羅的なものではなく、ここで、当業者は、その一般知識に基づき、かつ意図される使用または適用に従ってそれらを選択することができる。好ましい酸の幾つかのための例としては、鉱酸、例えば塩化水素酸、リン酸、もしくは硫酸、または有機酸、例えばギ酸、酢酸、もしくはクエン酸を挙げることができる。
【0086】
本発明の動的混合物は、水の存在下で本発明の式(IV)の第一級アミンおよび少なくとも1種の賦香性成分またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンを一緒に混合することにより得ることができる。香料またはフレーバーの技術分野においては、より心地よいナチュラルな香気を達成するために、非常に頻繁に幾つかの賦香性成分またはフレーバー付与性成分が一緒に混合される。しかしながら、動的混合物中に存在する各々の単独の化合物は平衡全体に影響を及ぼし、したがって各々の単独の賦香性成分またはフレーバー付与性成分の蒸発に影響を及ぼし得ることを考慮せねばならない。そのような状況下では、すべてを一緒に反応させることができる幾つかの化合物(そのそれぞれは種々の安定性および反応性を有する)の存在により、個々の賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンの放出に容易に悪影響が及ぼされ得ることを予想することができる。この結果、不利な快楽効果がもたらされるか、または少なくとも(最良の場合には)幾つかの特定の賦香性成分またはフレーバー付与性成分だけが増強され、こうしてともかく時間の経過に伴い香料もしくはフレーバーの嗅覚的プロフィールの変更が生ずることとなり、それは明らかに不所望な結果である。ここで、予想に反して、かつ非常に驚くべきことに、本発明によるジアミンの使用が、混合物中のすべてのアルデヒドおよびケトンの性能の全般的な改善をもたらし、この改善された性能が、混合物中の種々のカルボニル化合物の間により均一に広がることが判明した。
【0087】
したがって、前記の発明のすべての態様においては、少なくとも1種の式(IV)の化合物と少なくとも1種のまたはそれより多くの賦香性化合物またはフレーバー付与性化合物とを一緒に反応させることにより得られる動的混合物が特に高く評価される。同様に、前記の発明のすべての態様においては、少なくとも1種または2種の式(IV)の化合物と少なくとも1種以上の賦香性化合物またはフレーバー付与性化合物とを一緒に反応させることによって動的混合物を得ることも特に高く評価される。
【0088】
上述のように、本発明の動的混合物は、それらの間で可逆的な様式で反応して付加生成物を形成し得る幾つかの出発成分を含む。
【0089】
ここで、本発明のさらなる態様は、動的混合物自体に関する。さらに上述の動的混合物は新規でもあり、したがって本発明のもう1つの主題を表す。こうして、本発明のもう1つの態様は、賦香性またはフレーバー付与性のアルデヒドまたはケトンの制御放出のために有用な動的混合物自体である。特に前記動的混合物は、水性媒体、特に適切なpHの水、本発明の式(IV)のアミン、賦香性化合物またはフレーバー付与性化合物、および最後の2つの成分の反応生成物からなっている。
【0090】
動的混合物の主成分は、遊離のアルデヒドおよび/またはケトン、式(IV)の第一級アミン、および得られた付加生成物(例えば式(I)の相応のイミン化合物)であると考えられる。そのような混合物および平衡の具体的な例を、スキーム(I)に表す。
【0091】
スキーム(I):1種の特定のアルデヒドおよび1種の特定のアミン誘導体または相応のイミン誘導体から得られた動的混合物中に存在する平衡および化学種の例
【化9】
【0092】
該反応が可逆的である結果として、動的混合物はまた、幾つかのイミン誘導体を、または1種のイミン誘導体および1種の賦香性化合物もしくはフレーバー付与性化合物を水中に添加して、該混合物をその平衡に至らしめることによって得ることもできる。しかしながら、平衡点に達するために必要な時間は、例えば出発材料として本発明のアミンが使用されることに応じて大幅に変化し得ることを指摘する必要がある。それというのも、前記時間は、可溶性または媒体のpH等の様々なパラメーターに依存していると考えられるからである。
【0093】
実施例
ここで本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明することとする。その際、略語は、当該技術分野の通常の意味を有する。温度は、摂氏度(℃)で示され、NMRスペクトルデータは、CDCl3(特に規定されなければ)中で1Hおよび13Cについては400MHzまたは500MHzの機器で記録し、化学シフトδは、標準としてのTMSに対してppmで示され、結合定数JはHzで表現される。式(I)による化合物の製造のために使用されるポリマーは、単分散性ではない。製造元のデータシートによれば、以下の平均構造が該当する:2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-オール[CH3(OCH2CH2)11OH、PEG11]、Jeffamine(登録商標)M-600[CH3OCH2CH2(OCH2CHCH3)9NH2]、Jeffamine(登録商標)M-1000[CH3(OCH2CH2)19(OCH2CHCH3)3NH2]、およびJeffamine(登録商標)M-2070[CH3(OCH2CH2)31(OCH2CHCH3)10NH2]。
【0094】
実施例1
市販されていない出発材料の合成
a)構造Q-L-NH2の市販されていないアミンの合成
2-(4-((2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)オキシ)フェニル)エタン-1-アミン(PEG11-チラミン)の合成
2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-オール(PEG11、1当量、平均構造)を、ピリジン(1gのPEG11につき1mL)中に0℃で溶解させた。次いで、ピリジン(1mmolの塩化トシルにつき0.3mL)中の塩化トシル(3.6当量)の溶液を-5℃でゆっくりと添加した。該混合物を0℃で4時間~48時間にわたり撹拌し、氷を6NのHCl(ピリジンの全容量の1mLにつき5mL)と一緒に添加することにより処理した。該混合物を、CH2Cl2(1mLの水溶液につき3mL)で3回抽出し、有機層を2NのHCl(3mLの有機溶液につき1mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、蒸発させることで、純粋なトシル化された化合物(PEG11-Tos)が澄明な黄色の油状物として得られた。
【0095】
【0096】
tert-ブチル(4-ヒドロキシフェネチル)カルバメート(1.0g、1当量、4.216mmol)を、アセトニトリル(1gのPEG11-Tosにつき10mL)中に溶解させ、その溶液を還流するまで加熱させた。次いで、炭酸カリウム(932mg、1.6当量、6.746mg)を添加した後に、PEG11-Tos(2.757g、1当量、4.216mmol)を添加した。該混合物を、還流状態で12時間にわたり撹拌した。次いで、溶剤を蒸発させ、CH2Cl2(100mL)を添加し、その溶液を濾過した。その水性混合物を、NaHCO3の飽和水溶液(20mL)で3回洗浄した。次いで、得られた有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、さらに減圧下で蒸発させることで、純粋なtert-ブチル(4-((2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)オキシ)フェネチル)カルバメートが得られた(2.820g、91%)。
【0097】
【0098】
tert-ブチル(4-((2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)オキシ)フェネチル)カルバメート(2.000g)を、CH2Cl2およびTFA(3:1、50mL)の混合物中に溶解させ、室温で撹拌した。2時間後に、該混合物を蒸発させ、CH2Cl2(100mL)を添加し、その溶液をNaHCO3の飽和水溶液(3×20mL)で洗浄した。次いで、その溶液を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、さらに減圧下で蒸発させることで、純粋な2-(4-((2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)オキシ)フェニル)エタン-1-アミンが得られた(PEG11-チラミン、1.228g、87%)。
【0099】
【0100】
b)構造Q-NH2の市販されていない参照アミンの合成
2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-アミン(PEG11-アミン)の合成
フタルイミド(0.8775g、1.4当量)をアセトニトリル(1gのフタルイミドにつき30mL)中に溶解させ、その溶液を還流するまで加熱した。炭酸カリウム(0.9421g、1.6当量)を添加した後に、PEG11-Tos(上記の通りに製造、3.000g、1.0当量)を添加した。該混合物を、還流状態で12時間にわたり撹拌した。次いで溶剤を蒸発させ、水(1gのPEG11-Tosにつき10mL)を添加した。その水性混合物を、CH2Cl2(1mLの水溶液につき3mL)で3回抽出した。次いで、得られた有機相を飽和炭酸ナトリウム溶液(3mLの有機溶液につき1mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、さらに減圧下で蒸発させることで、純粋な2-(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)イソインドリン-1,3-ジオンが得られた(1.981g、72%)。
【0101】
【0102】
2-(2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(1当量)をTHF(1gにつき30mL)中に溶解させ、水性ヒドラジン(40当量)を添加した。該混合物を室温で4時間にわたり撹拌した。溶剤を蒸発させ、水(1gにつき10mL)を添加した。その水相をCHCl3(3回、1mLの水溶液につき3mL)で抽出し、合した有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。さらに減圧下で蒸発させることで、純粋な2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン-34-アミン(PEG11-アミン、76%)が黄褐色の油状物として得られた。
【0103】
【0104】
実施例2
3から18の間に含まれる全HLB値を有する式(I)による開裂可能なイミン界面活性剤の合成
一般手順A:
フレーバーまたはフレグランスのアルデヒド(1当量)および式Q-L-NH2のアミン誘導体(1.2当量)をCHCl3(1gのアミンにつき2mL)中に室温でアルゴン下で溶解させた。硫酸ナトリウムを添加し、その混合物を1週間~3週間にわたり転化率が少なくとも95%に達するまで撹拌した。溶剤を真空下で数日間にわたり蒸発させることで、残りの水が除去されて完全な転化率に達し、こうして式(I)によるイミンが得られた(95%~99%)。
【0105】
(a)PEG11-チラミンとヘキシルシンナムアルデヒドとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンA)が得られた。
【0106】
【0107】
ESI-MS:C46H75NO12[M+H]+についての計算値:834.53、実測値:834.85。
【0108】
(b)Jeffamine(登録商標)M-1000とヘキシルシンナムアルデヒドとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンB)が得られた。
【0109】
【0110】
ESI-MS:C63H117NO22[M+H]+についての計算値:1240.81、実測値:1240.92。
【0111】
(c)Jeffamine(登録商標)M-2070とヘキシルシンナムアルデヒドとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンC)が得られた。
【0112】
【0113】
(d)Jeffamine(登録商標)M-1000とシトラールとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンD)が得られた。
【0114】
【0115】
ESI-MS:C58H113NO22[M+H]+についての計算値:1176.78、実測値:1176.94。
【0116】
このイミンを、代わりに一般手順BおよびDにより製造した(以下参照)。
【0117】
(e)Jeffamine(登録商標)M-2070とシトラールとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンE)が得られた。
【0118】
【0119】
このイミンを、代わりに一般手順Dにより製造した(以下参照)。
【0120】
(f)PEG11-チラミンとシトラールとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンI)が得られた。
【0121】
ESI-MS:C41H71NO12[M+H]+についての計算値:770.50、実測値:770.67。
【0122】
一般手順B:
フレーバーまたはフレグランスのアルデヒド(1当量~1.1当量)を、式Q-X-L-NH2のアミン誘導体(1当量)に添加した。その反応混合物を80℃~100℃に加熱した。次いで真空(8mbar)を適用し、該混合物を80℃~100℃で4時間~7時間にわたり撹拌した後に、室温に冷却した。NMR分析により、その試料は一般的に幾つかの未反応のアミンを含有することが示された。
【0123】
(g)Jeffamine(登録商標)M-1000と(Z)-4-ドデセナールとの一般手順Bによる縮合により、相応のイミン(イミンF)が得られた。
【0124】
【0125】
(h)Jeffamine(登録商標)M-2070と(Z)-4-ドデセナールとの一般手順Bによる縮合により、相応のイミン(イミンG)が得られた。
【0126】
【0127】
一般手順C:
フレーバーまたはフレグランスのアルデヒド(1当量)およびアミン(1.2当量)をCHCl3(1gのアミンにつき2mL)中に室温で溶解させた。該混合物を、1日間~2日間にわたり撹拌した。次いで溶剤を減圧下で数日間にわたり蒸発させることで、残りの水が除去されて完全な転化率に達し、こうしてすぐに使用できるイミンが得られた(98%~100%)。
【0128】
(i)Jeffamine(登録商標)M-1000とベンズアルデヒドとの一般手順Cによる縮合により、相応のイミン(イミンH)が得られた。
【0129】
【0130】
一般手順D:
フレーバーまたはフレグランスのアルデヒド(1当量)およびアミン(1当量)をCHCl3(1gのアルデヒドにつき約32mL)中に溶解させ、そして還流(55℃)下で18時間~24時間わたり水の共沸除去(ディーン・スターク装置)をしながら加熱した。次いで溶剤を減圧下で蒸発させることで、すぐに使用できるイミンが得られた。
【0131】
等式(1)および参考文献のX.Guo,Z.Rong and X.Ying,Journal of Colloid and Interface Science 2006,第298巻,第441頁~第450頁に従って、以下のHLB値を、前記のECL法を使用して、式(I)の種々のイミンについて計算した。それらの値を第1表で報告する。
【0132】
第1表:式(I)による化合物についてのECL法で計算されたHLB値
【表15】
【0133】
実施例3
比較例
a)3を下回るまたは18を上回る全HLB値を有する式(I)による開裂可能なイミン界面活性剤の合成
(a)Jeffamine(登録商標)M-1000とバニリンとの一般手順Cによる縮合により、相応のイミン(イミンC1)が得られた。
【0134】
【0135】
このイミンを、代わりに一般手順Dにより製造した。
【0136】
(b)Jeffamine(登録商標)M-600とヘキシルシンナムアルデヒドとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンC2)が得られた。
【0137】
【0138】
(c)Jeffamine(登録商標)M-600とシトラールとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンC3)が得られた。
【0139】
【0140】
このイミンを、代わりに一般手順Dにより製造した。
【0141】
(d)Jeffamine(登録商標)M-600と(Z)-4-ドデセナールとの一般手順Bによる縮合により、相応のイミン(イミンC4)が得られた。
【0142】
【0143】
b)疎水性リンカー(L)を有しないが、3から18の間に含まれる全HLB値を有する開裂可能なイミン界面活性剤の合成
(e)PEG11-アミンとヘキシルシンナムアルデヒドとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンC5)が得られた。
【0144】
【0145】
(f)PEG11-アミンとシトラールとの一般手順Aによる縮合により、相応のイミン(イミンC6)が得られた。
【0146】
【0147】
(g)Jeffamine(登録商標)M-1000と8-メトキシ-3-フェニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-6-カルバルデヒド(賦香性アルデヒドではない)との一般手順D(0.1gのアルデヒドにつき20mLのCHCl3を用いる)による縮合により、相応のイミンが得られた(Polymer 2014,第55巻,第1443頁~第1451頁に報告されるイミンに相当するイミンC7)。
【0148】
【0149】
A.Van,K.Chiou and H.Ishida,Polymer 2014,第55巻,第1443頁~第1451頁を参照。
【0150】
等式(1)および参考文献のX.Guo,Z.Rong and X.Ying,Journal of Colloid and Interface Science 2006,第298巻,第441頁~第450頁に従って、以下のHLB値を、前記のECL法を使用して、種々の比較イミンについて計算した。その値を第2表で報告する。
【0151】
第2表:参照化合物についてのECL法で計算されたHLB値
【表23】
【0152】
イミンC1~C4およびC7は、3から18の間に含まれないHLBを有し、イミンC5およびC6は、式Q-Aのイミンである。C7は、Polymer 2014,第55巻,第1443頁に界面活性剤であると報告されている。しかしながら、C7は、強力な水溶性を示すHLB値を有することから、前記化合物が本発明のイミンとは異なり賦香性油の可溶化を可能にしないことを意味する。
【0153】
実施例4
イミン界面活性剤の表面活性。ECL法で計算されたHLBとの相関
一般的なよく知られた界面活性剤の1質量%の濃度の水溶液の表面活性を、Kruss社のDSA 10 MK2型の液滴形状分析システムにより測定した。並行して、界面活性剤分子のHLB値を、ECLモデルを使用することにより計算した。
図2では、表面張力と計算されたHLB値との間に相関が示された(黒丸)。その曲線はHLB18で飽和値に達し、それは式(I)の化合物についてのHLB範囲の限界であった。18より高いHLBを有するすべての分子は、強力な水溶性および不十分な表面活性のため本発明の一部ではない。
【0154】
式(I)の化合物:イミンF、イミンD、イミンE、イミンB、および比較イミンC1の表面張力を同様に測定し、データを
図2に加えた(灰色の正方形)。イミン:F、D、E、およびBの表面張力値では、これらの分子の強力な表面活性が確認されることから、申し分ない可溶化能力がもたらされる。化合物のイミンC1は、表面張力プラトーに位置する高い表面張力値を有した。この分子について計算されたHLBは18より高いため、本発明において固定された限界外であった。
【0155】
比較例として、Polymer 2014,第55巻,第1443頁~第1451頁で報告される化合物のイミンC7を合成し(実施例3g)を参照)、この分子の1質量%の水溶液の表面張力を測定した。データを
図2に入れた(黒三角)。その結果により、この分子が、HLB計算法および可溶化基準によれば界面活性剤としてみなすことができないことが確認される。
【0156】
図2は、測定された表面張力とECL法により計算されたHLBとの間の相関を明らかに示すことから、HLB値が表面張力の特徴付けを可能にするパラメーターであることが確認される。
【0157】
イミン化合物FおよびC1の濃度に対する表面張力を測定し、
図3に表す。イミンFに相当する曲線は、これを上回ることで表面張力が一定値を有し、イミンFの化合物がミセルに自己凝集する臨界濃度(CMC)の存在を明らかに裏付けた。イミンC1に相当する曲線は同じ傾向に従わないことから、CMCおよびこの化合物のミセルでの自己凝集が存在しないことが確認される。
【0158】
実施例5
重水中での式(I)によるイミンおよび比較イミンの平衡
種々の濃度(c=10mM~500mM)の式(I)による化合物を、室温で個別に重水(0.7mL)中に溶解させた。pDを測定し、イミンの加水分解に続き、平衡に達するまで1H NMRを行った。平衡時のイミン濃度を測定した。一定のpDでの反応は、不変のpD(塩基性)または4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)バッファー(僅かに酸性)中で行った。第3表にまとめられたデータは、該測定から得られた。
【0159】
第3表:重水中での式(I)によるイミンの初期濃度(c
0)および平衡時の濃度(c
eq)
【表24】
【0160】
第3表におけるデータは、式(I)によるイミンでは比較イミンの場合よりも高いイミン濃度が平衡時に得られたことを示している。イミンC1は、本条件下で大部分が開裂される。この理由は、このイミンが19.30の全HLB値で非常に親水性であり、したがって示される条件下で組織化された凝集物を形成し得ないからである。これらの結果により、本発明のイミンは、比較イミンよりも安定である。
【0161】
実施例6
重水中での式(I)によるイミンの加水分解の速度論
実施例5に記載されるのと同じ実験条件下で、式(I)によるイミンの加水分解の速度論を、参照イミンと1H NMR分光法により比較した。得られたデータを第4表で概説する。
【0162】
第4表:種々の初期濃度(c
0)での重水中における式(I)によるイミンの初期加水分解速度(v
0)および加水分解半減時間(t
1/2)
【表25】
【0163】
第4表におけるデータは、式(I)によるイミンの加水分解の速度論が、比較イミンのそれよりも遅いことを示している。理論により縛られるものではないが、比較イミンに対して高められた式(I)によるイミンの安定性は、2つの現象、つまり(a)式(I)によるイミンにおけるリンカーLの存在が、イミン結合の周りに疎水性環境を作り、こうして水の到達が妨げられ、最終的にイミンの周りの水の濃度が局所的に減少に導かれることにより、平衡がイミン形成に向かってシフトする現象と、(b)疎水性リンカーの存在が、イミンの臨界ミセル濃度(CMC)を減少させ、こうして溶液中での遊離の加水分解され易いイミンの濃度が減少する現象の結果であると考えられる。
【0164】
イミンC5の加水分解の半減時間はすべての濃度で約5時間であり、それは疎水性リンカーLの不存在におけるイミン結合の非常に弱い安定化による擬似一次速度論と一致している。式(I)によるイミンBおよびイミンCは、親水性部Bと疎水性部Aとの間に疎水性リンカーLが存在するため溶液中でより安定なアミンを形成する。それらの加水分解は、加水分解の半減時間(t1/2)と初期濃度(c0)との間で見かけ上線形の関係性、つまり通常は擬似ゼロ次速度論に帰する特徴を示す。この結果は、(a)式(I)のイミンの初期濃度の増大によりフレーバーまたはフレグランスのアルデヒドまたはケトンの加水分解を遅くすること(または同様に、希釈時のイミンの加水分解速度を高めること)が可能であること、かつ(b)系の希釈により加水分解速度を大幅に高めることが可能であるという2つの含意を有する。
【0165】
実施例7
その他の界面活性剤の存在下での式(I)によるイミンの加水分解
式(I)によるイミンの加水分解に対する(補助)界面活性剤の存在の影響を、1H NMR分光法によって、実施例5に記載されるように重水(0.7mL)中で10mMの初期イミン濃度および4質量%の追加の界面活性剤で調査した。以下の界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレス硫酸ナトリウム(Texapon(登録商標)NSO IS、BASF社からの商標であり、BASF社から市販される)、ヘキサデシル-トリメチル-アンモニウムブロミド(セトリモニウムブロミド)、2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41,44,47,50,53,56,59,62,65,68,71,74-ペンタコサオキサヘキサヘプタコンタン-76-イルステアレート(PEG25モノステアレート)、(ポリエチレングリコール)9,10 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(Triton(登録商標)X-100、Dow Chemical社からの商標であり、Sigma Aldrich社から市販される)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80、Uniquema、ICI Americas Inc.社からの商標であり、Sigma Aldrich社から市販される)を試験した。それらの測定により得られたデータを第5表にまとめる。
【0166】
第5表:補助界面活性剤の存在下での重水中での式(I)によるイミンの初期濃度(c
0)および平衡時の濃度(c
eq)
【表26】
【0167】
該データは、補助界面活性剤の存在が、式(I)によるイミンの水性環境中での安定性を高める(またはほぼ等しい水準に保つ)ことを示している。PEG25モノステアレートの存在下では、その系の安定化は酸性条件下でさえも観察される。
【0168】
実施例8
界面活性剤水溶液中での式(I)によるイミンの加水分解
式(I)によるイミンの加水分解を調査するために、重水中の単純なモデル配合物を調製した。凍結乾燥されたTexapon(登録商標)NSO IS(BASF社からの商標であり、BASF社から市販される)(4質量%)を、重水(95質量%)中に室温で溶解させた。式(I)によるイミン(1質量%)を、その配合物に実験開始時(t=0)に添加し、pHを測定し、NMR測定を開始した。それらのデータを第6表にまとめる。
【0169】
第6表:Texapon(登録商標)NSO ISを用いて調製されたモデル配合物における式(I)によるイミンの初期加水分解速度(v
0)および加水分解半減時間(t
1/2)
【表27】
【0170】
式(I)によるイミンは、比較イミンよりも大幅に安定である。
【0171】
第2の界面活性剤水溶液を、凍結乾燥されたナトリウムC14~C17-sec-アルキルスルホネート(Hostapur(登録商標)SAS 60、Clariant GmbH社からの商標であり、Clariant GmbH社から市販される;7質量%)、および凍結乾燥されたエトキシル化されたC12~C16アルコール(Genapol(登録商標)LA 70、Clariant GmbH社からの商標であり、Clariant GmbH社から市販される;17質量%)を重水(75質量%)中に室温で溶解させることにより調製した。次いで、重水中の重水酸化ナトリウム(40%)をpH10に達するまで添加した。式(I)によるイミン(1質量%)を、その配合物に実験開始時(t=0)に添加し、pHを測定し、NMR測定を開始した。それらのデータを第7表にまとめる。
【0172】
第7表:Hostapur(登録商標)SAS 60およびGenapol(登録商標)LA 70を用いて調製されたモデル配合物における式(I)によるイミンの初期加水分解速度(v
0)および加水分解半減時間(t
1/2)
【表28】
【0173】
実施例9
式(I)によるイミンの可溶化能
第8表:香料組成物
【表29】
【0174】
水(9.0g)および第8表のモデル香料組成物(0.3g)を、緩慢にかき混ぜながら混合する。得られた溶液は混濁している。次いで、式(I)のイミンを、透明な溶液が得られるまで加えた。透明な溶液を得るために必要なそれぞれの界面活性剤の最小値を第9表に列挙する。フレグランス対界面活性剤の比率はイミンの可溶化能を示し、ここでより高い比率は、該イミンのより高い可溶化能を示している。
【0175】
第9表:式(I)によるイミンの可溶化能
【表30】
【0176】
したがって、式(I)によるイミンは、水性環境中でフレグランスを可溶化させるために有用である。
【0177】
実施例10
酸性媒体中での式(I)によるイミンの安定性
pH=2.6のバッファー溶液(水中の48%クエン酸および3.2%のNaOH)、Tween(登録商標)80(Uniquema,ICI Americas Inc.社からの商標であり、Sigma Aldrich社から市販される)、およびシトラールを第10表に列挙される量で混合することにより形成されたシトラール含有マイクロエマルジョン中に式(I)による化合物を入れた。式(I)による化合物を含まないマイクロエマルジョンを参照として、バッファー溶液、Tween(登録商標)80、およびシトラールを第10表に列挙される割合で混合することにより調製した。2つの溶液は、等モル量のシトラールを含有していた。
【0178】
【0179】
様々な時間間隔で、種々の配合物(0.305g)を、NaClの水溶液(15%、2.745g)およびイソオクタン(3.050g)を添加することにより抽出した。該混合物を撹拌し(500rpmで10分間)、平衡化(5分間)させることで、十分に区分された2つの相へと分離した。それらの相を慎重に分離し、有機相(20μL)をGC/MSにより分析した。GC/MS分析は、Agilent 6890N Network GCシステムおよびAgilent 5973 Network MS上で実施した。試料(1μL)を、Agilent HP-5MSフューズドシリカキャピラリーカラム(30m、内径250μm、フィルム厚さ0.25μm)において一定流速のヘリウム(1mL/分、37cm/sの平均速度に相当する)で溶出させた。インジェクター温度は250℃であり、オーブンプログラムは80℃で開始し、最初の10℃/分のランプ温度で200℃に達し、その後にもう1つの20℃/分のランプ温度で260℃に達した。この最終温度を1分間にわたり保持する。シトラールは、シングルイオン監視により分析し、抽出されたシトラール濃度を、外部標準較正により測定した。
【0180】
最初の抽出(t=0)は、マイクロエマルジョンの調製の直後に達成された。マイクロエマルジョン配合物は25℃で貯蔵した。分解速度論は20日間にわたり追跡した。
【0181】
シトラール分解過程は、等式2
C(t)=C(0)exp(-kt) 等式2
[式中、C(t)は、時間tでのシトラール濃度であり、C(0)は初期シトラール濃度(t=0での)であり、kはシトラール分解の速度を表す]により表現することができる。抽出実験で測定された時間に対するシトラール濃度(
図1)を等式2とフィッティングした。分解速度も初期最大シトラール濃度も測定した。50%のシトラール分解に至るのに必要な時間を等式2を用いて計算し、それを第11表に列挙する。
【0182】
第11表:シトラール分解の速度、および50%の分解に至るのに必要な時間
【表32】
【0183】
参照試料中の遊離のシトラールの濃度を100%と定める。100%を超える値に相当するシトラール含量は、式(I)のイミンの加水分解により生ずる。
【0184】
該データは、式(I)によるイミンを含有する配合物が、式(I)の化合物を含まない参照配合物と比較してフレーバー分子またはフレグランス分子の分解速度論を大幅に減少させることを裏付けている。イミンEはより効果的な分子であり、分解速度は1.53倍だけ減少する。曲線から分かるように、その分解過程は、初期シトラール濃度に依存する。
【0185】
実施例11
式(I)によるイミンの可溶化能および制御放出特性
第8表(実施例9)に列挙される組成を有するモデル香料を調製した。次いで、水およびモデル香料を混合し、式(I)のイミンまたは市販の界面活性剤(PEG25モノステアレート、参照としての役割を果たす)のいずれかを添加することで、第12表に示される配合物を得た。配合物1、2および参照のために均質なマイクロエマルジョンを得て、これらの分子が界面活性剤として作用すると共に香料を可溶化させる能力が示される。モデル香料を溶解させる試みは当量のイミンC1ではうまくいかなかった。均質な系ではなく香料液滴が形成された。このようにイミンC1は香料を可溶化することができず、界面活性剤として作用しない。
【0186】
【0187】
種々の配合物および参照(25μL)をそれぞれ時計皿(4cm)上にピペッティングし、ヘッドスペースサンプリングセル(約625mLの内容積)内に入れた。一定流速の空気(約200mL/分、約75%の一定の空気湿度を保証するために活性炭を通じて濾過し、NaClの飽和溶液を通じて吸引した)を、ヘッドスペースセルを通じてポンプ圧送した。時計皿から蒸発する揮発物を交互に、廃棄Tenax(登録商標)カートリッジ(w)上に、その後に清浄Tenax(登録商標)カートリッジ(c)上に、以下の時間シーケンス、15分(w)、3分(c)、17分(w)、3分(c)、12分(w)、8分(c)、19分(w)、8分(c)、53分(w)、10分(c)、50分(w)、および10分(c)に従って吸着させ、こうして最後の試料採取後に208分の全試料採取時間が得られた。廃棄カートリッジは廃棄し、清浄カートリッジはAgilent 7890Aガスクロマトグラフに連結され、Agilent 5975C質量分光計(MS)に接続されたPerkinElmer TurboMatrix 350加熱脱着装置上で加熱脱着させた。揮発物を、HP-1キャピラリーカラム(30m×0.250mm、フィルム0.25μm)で2分間にわたり100℃で出発した後に5℃/分で220℃(26分)に動く温度勾配で溶出させ、MSによりシングルイオン監視を使用して時間窓プログラミング(time window programming)により分析した。定量化は、外部標準較正により種々の濃度でのエタノール中の参照溶液を使用して、それを清浄Tenax(登録商標)カートリッジ上に直接的に注入し、同じ条件下で処理することで実施した。濃度に大きな違いがあるので、較正は2つの群で実施した。すべての測定は、少なくとも2連で実施した。
【0188】
モデル香料中の種々のフレグランス成分の蒸発のために記録されたヘッドスペースデータは
図4にまとめられている。
【0189】
該データには、式(I)によるイミンが、香料成分の蒸発に対して参照界面活性剤と同様の影響を有することが示されることから、それらが界面活性剤として作用することが分かる。さらに該イミンは、追加のフレグランス分子(イミンBの場合にはヘキシルシンナムアルデヒド、そしてイミンFの場合には(Z)-4-ドデセナール)を、界面活性剤構造の開裂により制御放出することが可能である。
【0190】
実施例12
第2の界面活性剤との混合物としての式(I)によるイミンの可溶化能および制御放出特性
第8表(実施例9)に列挙される組成を有するモデル香料を調製した。次いで、水およびモデル香料を混合し、式(I)のイミンおよび市販の界面活性剤(PEG25モノステアレート)の混合物(約1:1のモル比)を添加することで、第13表に示される配合物を得た。均質なマイクロエマルジョンが得られた。
【0191】
【0192】
種々の配合物(25μL)をそれぞれ時計皿(4cm)上にピペッティングし、ヘッドスペースサンプリングセル(約625mLの内容積)内に入れ、実施例11に記載されるように分析した。時計皿から蒸発する揮発物を交互に、廃棄Tenax(登録商標)カートリッジ(w)上に、その後に清浄Tenax(登録商標)カートリッジ(c)上に、以下の時間シーケンス、15分(w)、3分(c)、17分(w)、3分(c)、17分(w)、3分(c)、17分(w)、5分(c)、55分(w)、8分(c)、52分(w)、8分(c)、52分(w)および10分(c)、50分(w)、10分(c)、50分(w)、10分(c)に従って吸着させ、こうして最後の試料採取後に385分の全試料採取時間が得られた。すべての測定は、少なくとも2連で実施した。
【0193】
モデル香料中の種々のフレグランス成分の蒸発に関して記録されたヘッドスペースデータは
図5にまとめられている。
【0194】
ヘッドスペース分析に関して記録されたデータにより、式(I)によるイミンと一緒に市販の界面活性剤を含有する配合物1および2が、界面活性剤構造の開裂により相応のフレグランス分子(イミンBの場合にはヘキシルシンナムアルデヒド、そしてイミンFの場合には(Z)-4-ドデセナール)を放出することが示された。同時に、式(I)によるイミンを有しない参照試料に関しては、測定の開始時により多量のフレグランスが蒸発し、その後に実験の終わりには参照と同様のヘッドスペース濃度に達した。したがって、式(I)によるイミンとその他の界面活性剤とを組み合わせることは有利である。
【0195】
実施例13
モデルシャワーゲル用途における式(I)によるイミンの制御放出特性
第14表に列挙される組成を有する2種のモデルシャワーゲル配合物を調製した。
【0196】
【0197】
機械的に撹拌しながら、イミンF(0.5%)を、第14表に列挙されるモデルシャワーゲル配合物(99.5%)のそれぞれに添加した。イミンF(約27mg)を含有する2つの配合物を時計皿(4cm)上にピペッティングし、それぞれヘッドスペースサンプリングセル(約625mLの内容積)内に入れた。一定流速の空気(約200mL/分、約75%の一定の空気湿度を保証するために活性炭を通じて濾過し、NaClの飽和溶液を通じて吸引した)を、ヘッドスペースセルを通じてポンプ圧送した。時計皿から蒸発する揮発物を交互に、廃棄Tenax(登録商標)カートリッジ(w)上に、その後に清浄Tenax(登録商標)カートリッジ(c)上に、以下の時間シーケンス、15分(w)、3分(c)、17分(w)、3分(c)、17分(w)、3分(c)、17分(w)、5分(c)、55分(w)、8分(c)、52分(w)、および8分(c)、52分(w)、および10分(c)に従って吸着させ、こうして最後の試料採取後に265分の全試料採取時間が得られた。廃棄カートリッジは廃棄し、清浄カートリッジはAgilent 7890Aガスクロマトグラフに連結され、Agilent 5975C質量分光計(MS)に接続されたPerkinElmer TurboMatrix 350加熱脱着装置上で加熱脱着させた。揮発物を、HP-1キャピラリーカラム(30m×0.250mm、フィルム0.25μm)で2分間にわたり100℃で出発した後に5℃/分で220℃(26分)に動く温度勾配で溶出させ、MSによりシングルイオン監視を使用して時間窓プログラミングにより分析した。定量化は、外部標準較正により種々の濃度でのエタノール中の参照溶液を使用して、それを清浄Tenax(登録商標)カートリッジ上に直接的に注入し、同じ条件下で処理することで実施した。すべての測定は、少なくとも2連で実施した。
【0198】
第2の測定において、イミンF(約27mg)を含有する2つの配合物を時計皿(4cm)上にピペッティングし、それぞれヘッドスペースサンプリングセル(約625mLの内容積)内に入れた。次いで、シャワーゲルの使用の間に生ずる試料の希釈を模すために水(750μL)を添加した。次いで試料を前記のように分析した。
【0199】
これらの測定により得られた結果を第15表にまとめる。
【0200】
第15表:種々のシャワーゲル配合物中での希釈した場合と希釈していない場合のイミンFから放出される(Z)-4-ドデセナールの動的ヘッドスペース濃度
【表36】
【0201】
それらのヘッドスペースデータは、開裂可能な界面活性剤が、濃縮されたシャワーゲル配合物中に導入された場合に少量の(Z)-4-ドデセナールしか放出しないことを示している。試料の希釈は、界面活性剤の開裂によるアルデヒドの放出の引き金となり、より多量の(Z)-4-ドデセナールが放出された。シャワーゲル1の場合には、希釈は約2倍~6倍だけヘッドスペース濃度を高め、シャワーゲル2の場合には、希釈は一層高く、すなわち約6倍~17倍だけヘッドスペース濃度を高めた。したがって、式(I)による開裂可能な界面活性剤は、希釈が生ずる用途、例えばシャワーゲルにおいて使用するために適している。