(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】eベイピング装置のプレベイパー製剤の安定性を増大させるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20200101AFI20220816BHJP
【FI】
A24F47/00
(21)【出願番号】P 2019541886
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017076509
(87)【国際公開番号】W WO2018073262
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ファリス マーク ダブリュ
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0325228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345635(US,A1)
【文献】特表2016-512033(JP,A)
【文献】特表2010-516272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00 - 15/42
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
eベイピング装置のプレベイパー製剤であって、
イオン交換体、またはイオン交換体およびキレート化剤と、
ニコチンと、
前記プレベイパー製剤のベイパーを形成するように構成されたベイパー形成体とを含
み、
前記イオン交換体が、スチレン-ジビニルベンゼン、架橋ポリアクリレートカルボン酸、およびスチレンジビニルベンゼンコポリマーのうちの少なくとも一つを含む、
プレベイパー製剤。
【請求項2】
前記イオン交換体が前記プレベイパー製剤において不溶性である、請求項1に記載のプレベイパー製剤。
【請求項3】
前記キレート化剤がEDTA、DTPA、NTAのうちの少なくとも一つを含む、請求項1
または2に記載のプレベイパー製剤。
【請求項4】
前記イオン交換体の濃度が、約0.1重量パーセント以上であり、かつ約5重量パーセント以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のプレベイパー製剤。
【請求項5】
前記イオン交換体の前記濃度が、約0.1重量パーセント以上であり、かつ約0.5重量パーセント以下である、請求項
4に記載のプレベイパー製剤。
【請求項6】
前記イオン交換体の前記濃度が、約0.5重量パーセント以上であり、かつ約1重量パーセント以下である、請求項
4に記載のプレベイパー製剤。
【請求項7】
前記イオン交換体の前記濃度が、約1重量パーセント以上であり、かつ約2重量パーセント以下である、請求項
4に記載のプレベイパー製剤。
【請求項8】
前記イオン交換体の前記濃度が、約2重量パーセント以上であり、かつ約4重量パーセント以下である、請求項
4に記載のプレベイパー製剤。
【請求項9】
前記イオン交換体の前記濃度が、約4重量パーセント以上であり、かつ約5重量パーセント以下である、請求項
4に記載のプレベイパー製剤。
【請求項10】
前記イオン交換体が約0.03ミリメートル~約0.5ミリメートルのサイズを有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のプレベイパー製剤。
【請求項11】
前記キレート化剤の濃度が、約0.001パーセント以上であり、かつ約0.05パーセント以下である、請求項1~
10のいずれか一項に記載のプレベイパー製剤。
【請求項12】
前記キレート化剤の前記濃度が、約0.001パーセント以上であり、かつ約0.01パーセント以下である、請求項
11に記載のプレベイパー製剤。
【請求項13】
前記キレート化剤の前記濃度が、約0.01パーセント以上であり、かつ約0.02パーセント以下である、請求項
11に記載のプレベイパー製剤。
【請求項14】
前記キレート化剤の前記濃度が、約0.02パーセント以上であり、かつ約0.05パーセント以下である、請求項
11に記載のプレベイパー製剤。
【請求項15】
少なくとも一つ以上の酸をさらに含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載のプレベイパー製剤。
【請求項16】
eベイピング装置であって、
プレベイパー製剤、および芯を介して前記プレベイパー製剤を加熱するように構成されたヒーターを含むカートリッジと、
前記カートリッジに連結され、かつ前記ヒーターに電力を供給するように構成された電源とを備え、
前記プレベイパー製剤が、
イオン交換体、またはイオン交換体およびキレート化剤と、
ニコチンと、
前記プレベイパー製剤のベイパーを形成するように構成されたベイパー形成体とを含
み、
前記イオン交換体が、スチレン-ジビニルベンゼン、架橋ポリアクリレートカルボン酸、およびスチレンジビニルベンゼンコポリマーのうちの少なくとも一つを含む、eベイピング装置。
【請求項17】
前記芯が、イオン交換体およびキレート化剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項
16に記載のeベイピング装置。
【請求項18】
前記キレート化剤が、EDTA、DTPA、NTAのうちの少なくとも一つを含む、請求項
16または
17に記載のeベイピング装置。
【請求項19】
前記キレート化剤の濃度が、約0.001パーセント以上であり、かつ約0.05パーセント以下である、請求項
16、
17または
18に記載のeベイピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一部の例示的な実施形態は概して、電子ベイピング装置のプレベイパー製剤、およびプレベイパー製剤の成分の安定性を増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ベイピング装置は、成人ベイパー吸引者がこのeベイピング装置の一つ以上の出口を通してベイパー(蒸気)を引き出す目的で、液体材料をベイパーへと気化するために使用される。これらの電子ベイピング装置は、eベイピング装置と呼ばれる場合がある。eベイピング装置は典型的に、電源セクションおよびカートリッジなど、幾つかのeベイピング要素を含む場合がある。電源セクションは電池などの電源を含み、またカートリッジはヒーターと、プレベイパー製剤または液体材料を保持する能力のある貯蔵部とを含む。カートリッジは典型的に、芯を介してプレベイパー製剤と連通するヒーターを含み、ヒーターはベイパーを生成するためにプレベイパー製剤を加熱するように構成されている。プレベイパー製剤は典型的に、ベイパー形成体だけでなく、ある量のニコチンも含み、場合によっては水、酸、風味剤、芳香剤のうちの少なくとも一つを含む。プレベイパー製剤は、ベイパーへと変形される場合がある材料または材料の組み合わせを含む。例えば、プレベイパー製剤は、水、ビーズ、溶媒、活性成分、エタノール、植物抽出物、天然または人工風味、グリセリンおよびプロピレングリコールのうちの少なくとも一つなどのベイパー形成体、ならびにその組み合わせ(ただしこれらに限定されない)を含む、液体製剤、固体製剤、またはゲル製剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一部の場合において、プレベイパー製剤容器内のプレベイパー製剤の成分は、他の成分、またはプレベイパー製剤容器またはカートリッジの固体金属部分と反応する場合がある。例えば、特に「乾燥吸引」が発生する時(成人ベイパー吸引者によって吸煙が開始される前にeベイピング装置の芯にプレベイパー製剤が十分に供給されない時)に、カートリッジが空である場合、またはeベイピング装置の動作中にコイルまたはヒーターの一部分が過熱している場合、酸素の存在下でプレベイパー製剤の成分が、eベイピング装置の固体部分の一つ以上の金属(銅、ニッケル、または鉄など)と反応する場合があり、また反応性フリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカルなど)を生成する場合がある。例えば、銅イオンCu2+などの金属イオンは、酸素または過酸化水素と反応し、フリーヒドロキシルラジカルなどのフリーラジカルを生成する場合がある。または、フリーラジカルは、カートリッジまたはプレベイパー製剤容器の金属部分の酸化を介して生成される場合がある。プレベイパー製剤成分、カートリッジ、または容器の酸化は典型的に、酸素の存在、およびヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種を生成する酸化還元活性遷移金属に依存する。酸化還元活性遷移金属は、カートリッジまたは容器の金属部分に由来する場合があり、またはニコチン、水、ベイパー形成体(グリセリンおよびプロピレングリコールのうちの少なくとも一つなど)、酸、風味剤、芳香剤のうちの少なくとも一つなどのプレベイパー製剤に添加されるその他の構成要素に含有される場合がある。
【0004】
その結果、反応性フリーヒドロキシルラジカルは、eベイピング装置の金属部分によって生成されると、プレベイパー製剤の成分と反応する場合がある。フリーラジカルはまた、eベイピング装置によって生成されたベイパーと混合する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも一つの例示的な実施形態は、eベイピング装置のプレベイパー製剤に関する。
【0006】
一つの例示的な実施形態において、プレベイパー製剤は、ニコチンだけでなく少なくとも一つのイオン交換体と、グリセロールおよびプロピレングリコールのうちの少なくとも一つの組み合わせと、随意に風味剤と、随意に有機酸とを含む。例示的な実施形態において、イオン交換体は、遊離遷移金属に結合するように構成されていて、また不溶性樹脂または粒子を含んでもよく、これらの樹脂または粒子のサイズは約0.03ミリメートル~約0.5ミリメートルの範囲内である。例示的な実施形態において、イオン交換体または吸着剤は、例えばプレベイパー製剤の約0.1重量パーセント~約5重量パーセントの範囲内の濃度でプレベイパー製剤内に含まれてもよく、また例えば約0.1パーセント~約0.5パーセント、約0.5パーセント~約1パーセント、約1パーセント~約2パーセント、約2パーセント~約4パーセント、および約4パーセント~約5パーセントの濃度で含まれてもよい。
【0007】
例示的な実施形態において、プレベイパー製剤の成分の反応は、酸素または酸素から生成される過酸化水素の存在下で、銅、ニッケル、または鉄などの遊離遷移金属から生成されたヒドロキシルラジカルの存在からもたらされるため、遊離遷移金属および酸素の捕捉剤または結合剤である不溶性イオン交換体の添加は、プレベイパー製剤中の酸化還元活性な遷移金属の量および酸素の量を実質的に低減することによってフリーヒドロキシルラジカルの形成を実質的に防止する。例えば、上記で考察したイオン交換体は、水素またはナトリウムを放出した後に遊離遷移金属イオンに結合する場合があり、従ってヒドロキシルフリーラジカルの形成を防止または実質的に低減する場合がある。同様に、上記で考察した酸素のためのイオン交換体は、プレベイパー製剤から酸素を除去し、ヒドロキシルフリーラジカルの形成の劇的な低減をもたらす。このように、eベイピング装置の固体部分によって生成される場合がある遊離遷移金属は、ベイパーへ移動すること、またはプレベイパー製剤の他の成分と反応して、フリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカルなど)を形成することが実質的に防止される。その結果、プレベイパー製剤の安定性が増大する。
【0008】
一つの例示的な実施形態において、イオン交換体は、H+またはNa+イオン形態の球状粒子の細かいメッシュの形態の、および約0.03ミリメートル~約0.3ミリメートルの範囲のサイズの、スルホン酸官能基である、Dowex 50W-X8、またはスチレン-ジビニルベンゼンを含んでもよい。Dowex 50W-X8は、強酸性の、カチオン交換体粒子であり、例えば紙クロマトグラフィーで、またはストリッパー樹脂として一般的に使用される。例示的な実施形態において、このイオン交換体には、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの金属を効果的なpH1~14の範囲内で結合する能力があり、これはH+イオンまたはNa+イオンの放出をもたらす。
【0009】
例示的な実施形態において、イオン交換体はまた、架橋ポリアクリレートカルボン酸であるLewait CNP80を含んでもよく、これは弱酸性、マクロ多孔性、アクリルベースのカチオン交換樹脂であり、約0.3ミリメートルの範囲内のビーズサイズ、実質的に高い動作能力ならびに良好な化学的安定性および機械的安定性を有する。Lewait CNP 80には、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの重金属を結合する能力がある。
【0010】
例示的な実施形態において、イオン交換体はまた、スチレンジビニルベンゼンコポリマーであるAmberlite IR-120を含んでもよく、これは強酸性(スルホン酸)のカチオン交換樹脂であり、H+またはNa+イオン形態の球状粒子を有する。Amberlite IR-120は典型的に、水および大部分の一般的な溶剤において不溶性であり、高温で安定であり、幅広いpH範囲にわたり高い交換能力を有する。Amberlite IR-120は、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの重金属の吸着に有効である。
【0011】
例示的な実施形態において、上記で考察したイオン交換体または吸着剤は、eベイピング装置の部分内に存在する銅、ニッケル、鉄などの遷移金属を結合することによって、フリーヒドロキシルラジカルなどのフリーラジカルの形成を実質的に防止することによって、eベイピング装置の成分の酸化を低減または実質的に防止する。その結果、フリーヒドロキシルラジカルなどのフリーラジカルは、形成が実質的に防止され、従ってプレベイパー製剤の成分との反応、またはeベイピング装置の動作中に生成されたベイパーの中への移動、および製剤成分との反応が防止され、結果として寿命の長い反応性ラジカルをもたらす。結果として、eベイピング装置のプレベイパー製剤のより長い貯蔵寿命が達成される場合があり、成人ベイパー吸引者に対する潜在的な有害な影響が低減または実質的に防止される場合がある。
【0012】
例示的な実施形態において、eベイピング装置の芯は、イオン交換体または吸着剤で形成されてもよく、またはイオン交換体または吸着剤を含んでもよい。例えば、芯は透明フィルムの形態のナノ結晶セルロースで形成されてもよく、または透明フィルムの形態のナノ結晶セルロースを含んでもよい。セルロースナノ吸着剤には、例えばCuなどの重金属イオンを水溶液から除去する能力がある。
【0013】
例示的な実施形態において、イオン交換体または吸着剤は、重金属の封鎖剤またはキレート剤などの他の剤と組み合わせられてもよい。封鎖剤はまた、高親和性の低能力キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)吸着剤)、および高能力の低親和性イオン交換剤も含んでもよい。例示的な実施形態において、例えばEDTAなどのキレート剤またはキレート化剤はプレベイパー製剤中に、例えば0.001パーセント~約0.05パーセントの範囲内の濃度で含まれてもよく、また例えば約0.001パーセント~約0.01パーセント、約0.01パーセント~約0.02パーセント、および約0.02パーセント~約0.05パーセントの範囲内の濃度で含まれてもよい。上記で考察したキレート剤などの封鎖剤は、遊離酸化還元活性遷移金属に結合し、従ってフリーヒドロキシルラジカルなどのフリーラジカルの形成を防止する場合がある。このように、eベイピング装置の固体部分によって生成される遊離遷移金属は、ベイパーの中への移動、またはプレベイパー製剤の他の成分との反応を実質的に防止する。その結果、プレベイパー製剤の安定性が増大する。
【0014】
例示的な実施形態において、封鎖剤と組み合わせたイオン交換体は、eベイピング装置の部分内に存在する遷移金属(銅、ニッケル、鉄など)によって生成された遊離金属を封鎖するまたはこれと結合することによって、およびヒドロキシルラジカルの形成を実質的に防止することによって、eベイピング装置の成分の酸化を低減または実質的に防止する場合がある。その結果、ヒドロキシルラジカルの形成を低減または実質的に防止することは、プレベイパー製剤の成分の酸化を低減または実質的に防止し、プレベイパー製剤中の追加的なフリーラジカルの生成を低減または実質的に防止する。結果として、eベイピング装置のプレベイパー製剤のより大きい安定性が達成される場合がある。
【0015】
例示的な実施形態の上記およびその他の特徴および利点は、例示的な実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明することによってさらに明らかとなる。添付の図面は、例示的な実施形態を描写することを意図したものであり、意図された特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。添付の図面は、明示的に注記されていない限り、実寸に比例して描かれているとは考えられない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の側面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の長軸方向の断面図である。
【
図3】
図3は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。
【
図4】
図4は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
幾つかの詳細な例示的な実施形態が本明細書で開示されている。しかしながら、本明細書に開示されている特定の構造面および機能面の詳細は、例示的な実施形態を説明することを目的とした単なる典型にすぎない。しかしながら、例示的な実施形態は、数多くの代替的な形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態のみに限定されるものと解釈されるべきではない。
【0018】
それに応じて、例示的な実施形態は、様々な修正および代替的形態の能力を有する一方で、その実施形態は例として図面に示されており、本明細書で詳細に説明される。しかし当然のことながら、開示された特定の形態に対する例示的な実施形態に限定する意図はなく、反対に、例示的な実施形態は、例示的な実施形態の範囲の中に収まるすべての修正、均等物、代替物を網羅するものである。同様の数字は、図の説明の全体を通して同様の要素を指す。
【0019】
当然のことながら、要素または層が別の要素もしくは層「の上にある」、「に接続される」、「に連結される」、または「を覆う」と言及されるとき、これはもう一方の要素もしくは層の上に直接あってもよく、それに直接的に接続されてもよく、それに直接的に連結されてもよく、またはそれを直接的に覆ってもよく、あるいは介在する要素もしくは層が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素もしくは層「の上に直接ある」、「に直接的に接続される」、または「に直接的に連結される」と言及される時、介在する要素もしくは層は存在しない。同様の数字は、本明細書の全体を通して同様の要素を指す。
【0020】
当然のことながら、第一の、第二の、第三のなどという用語は、様々な要素、領域、層、またはセクションを説明するために本明細書で使用されてもよく、これらの要素、領域、層、またはセクションはこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、一つの要素、領域、層、またはセクションを別の要素、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。従って、下記で考察される第一の要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示内容から逸脱することなく、第二の要素、領域、層、またはセクションと呼ぶこともできる。
【0021】
空間的関係の用語(例えば、「下に」、「下方に」、「下部」、「上方に」、「上部」、およびこれに類するもの)は、図中で図示する際に、一つの要素または特徴と他の要素または特徴との間の関係を説明しやすくするために本明細書で使用されてもよい。空間的関係の用語は、図に図示されている方向に加えて、使用時または動作時に装置の異なる方向を包含することが意図されていると理解されるべきである。例えば、図中の装置をひっくり返した場合、他の要素または特徴の「下方に」または「下に」と説明されている要素は、その後は他の要素または特徴の「上方に」方向付けられることになる。従って、「下方に」という用語は上方および下方の両方の向きを包含する場合がある。装置は、別の方法で(90度回転して、または他の向きで)向きが決められる場合があり、本明細書で使用される空間的関係の記述語は適宜に解釈される。
【0022】
本明細書で使用される用語は、様々な実施形態を説明する目的のみのものであり、例示的な実施形態の制限を意図しない。本明細書で使用される単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は複数形も含むことが意図されているが、文脈によって明らかにそうではないことが示される場合は、その限りではない。「含む(includes)」、「含む(including)」「備える(comprises)」、および「備える(comprising)」という用語は本明細書で使用される時、述べられた特徴、整数、工程、動作、または要素の存在を特定するが、一つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、またはこれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0023】
例示的な実施形態は、例示的な実施形態の理想的な実施形態の概略図(および中間構造)である断面図を参照して本明細書で説明される。このように、例えば製造技法または公差の結果としてもたらされた図の形状からの変形が予想される。従って、例示的な実施形態は、本明細書に図示された領域の形状を限定するものとして解釈されるべきでなく、例えば製造の結果としてもたらされる形状の逸脱を含むものである。従って、図に図示された領域は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を図示することを意図せず、例示的な実施形態の範囲を限定することを意図しない。
【0024】
別の方法で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的用語および科学的用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当該技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。用語(一般的に使用されている辞書で定義された用語を含む)は、関連する技術分野の文脈でのそれらの用語の意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、理想的なまたは過度に正式な意味で解釈されないが、本明細書で明示的にそのように定義されている場合はその限りではないことがさらに理解されるであろう。
【0025】
本明細書において「約」または「実質的に」という用語を数値と組み合わせて使用する場合、それに伴う数値が、述べられた数値の前後±10パーセントの公差を含むということを意図する。さらに、本明細書において百分率に言及する場合、それらの百分率は重量に基づく、すなわち重量百分率であることが意図される。「最大~まで」という表現は、ゼロから、その表現した上限までの量およびそれらの間にあるすべての値を含む。範囲を特定する時、その範囲はそれらの間にあるすべての値(例えば0.1%ずつに異なる値)を含む。その上、「一般に」および「実質的に」という単語が幾何学的形状に関連して使用される時、その幾何学的形状の正確さは要求されないが、形状の許容範囲が本開示の範囲内であることが意図される。実施形態の管状要素は円筒状であってもよいが、正方形、長方形、楕円形、三角形、およびその他などの、その他の管状の断面形態も意図される。
【0026】
図1は、例示的な実施形態による、eベイピング装置または「紙巻たばこ様(cigalike)」装置60の側面図である。
図1では、eベイピング装置60は、ねじ継手74にて、または滑り嵌め、スナップ嵌め、戻り止め、クランプまたは留め金、もしくはこれに類するもののうちの少なくとも一つなどの他の接続構造によって共に連結された、第一のセクションまたはカートリッジ70および第二のセクション72を含む。少なくとも一つの例示的な実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70は、交換可能なカートリッジであってもよく、また第二のセクション72は再使用可能なセクションであってもよい。別の方法として、第一のセクションまたはカートリッジ70および第二のセクション72は、一つの部品として一体的に形成されてもよい。少なくとも一つの実施形態において、第二のセクション72は、その遠位端28にLEDを含む。
【0027】
図2は、eベイピング装置の例示的な実施形態の断面図である。
図2に示すように、第一のセクションまたはカートリッジ70は、口側端インサート20、毛細管18、貯蔵部14を収容することができる。
【0028】
例示的な実施形態において、貯蔵部14は内側管(図示せず)の周りに巻き付けたガーゼを含んでもよい。例えば、貯蔵部14は、内側に巻き付けたガーゼを囲む外側に巻き付けたガーゼで形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。少なくとも一つの例示的な実施形態において、貯蔵部14は、ばらの粒子、ばらの繊維、または織布繊維もしくは不織布繊維の形態のアルミナセラミックで形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。別の方法として、貯蔵部14は、ばらの繊維を束ねた形態の、綿もしくはガーゼ材料などのセルロース系材料、またはポリエチレンテレフタラートなどのポリマー材料で形成されてもよく、またはこれらを含んでもよい。貯蔵部14のより詳細な説明を下記に提供する。
【0029】
第二のセクション72は、電源12と、電源12を制御するように構成された制御回路11と、吸煙センサー16とを収容することができる。吸煙センサー16は、成人ベイパー吸引者がeベイピング装置60を吸っている時に感知するように構成されており、これは制御回路11を介して電源12の動作を引き起こして、貯蔵部14内に収容されたプレベイパー製剤を加熱し、これによってベイパーを形成する。第二のセクション72のねじ部分74は、第一のセクションまたはカートリッジ70に接続されていない時に、電池充電器に接続して電池または電源セクション12を充電することができる。
【0030】
例示的な実施形態において、毛細管18は、導電性材料から形成され、または導電性材料を含み、従って管18を通して電流を流すことによって管自体がヒーターとなるように構成されてもよい。毛細管18は、毛細管18が経験する動作温度で必要な構造的完全性を維持しながらも、加熱、例えば抵抗加熱が可能であり、プレベイパー製剤と反応しない任意の導電性材料であってもよい。毛細管18を形成するために適切な材料は、ステンレス鋼、銅、銅合金、フィルム抵抗性材料で被覆された多孔性セラミック材料、ニッケルクロム合金、およびこれらの組み合わせのうちの一つ以上である。例えば、毛細管18はステンレス鋼毛細管18であり、毛細管18の長さに沿った直流電流または交流電流の通過のためにこれらに取り付けられた導線26を介してヒーターとして機能する。従って、ステンレス鋼毛細管18は、例えば抵抗加熱によって加熱される。別の方法として、毛細管18は、例えばガラス管などの非金属管でもよい。こうした実施形態において、毛細管18はまた、ガラス管に沿って配置され、かつ加熱される(例えば、抵抗的に加熱される)能力がある導電材料(例えば、ステンレス鋼、ニクロム、またはプラチナワイヤーなど)を含む。ガラス管に沿って配置されている導電材料が加熱される時、毛細管18内に存在するプレベイパー製剤は、毛細管18内のプレベイパー製剤を少なくとも部分的に揮発させるのに十分な温度まで加熱される。
【0031】
少なくとも一つの実施形態において、導線26は毛細管18の金属部分に結合されている。少なくとも一つの実施形態において、一本の導線26は毛細管18の第一の上流部分101に連結され、また第二の導線26は毛細管18の下流の端部分102に連結される。
【0032】
動作において、成人ベイパー吸引者がeベイピング装置を吸う時に、吸煙センサー16は成人ベイパー吸引者の吸引によって生じた圧力勾配を検出し、制御回路11は毛細管18に電力を供給することによって、貯蔵部14内に位置するプレベイパー製剤の加熱を制御する。毛細管18が加熱されると、毛細管18の加熱部分内に含まれるプレベイパー製剤は揮発されて出口63から放出され、ここでプレベイパー製剤は拡張し、空気と混合して、混合チャンバー240内でベイパーを形成する。
【0033】
図2に示す通り、貯蔵部14は、貯蔵部14内にプレベイパー製剤を維持し、貯蔵部14が圧迫されて、そこに圧力が適用されると開くように構成された弁40を含み、成人ベイパー吸引者が口側端インサート20でeベイピング装置を吸う時に圧力が生成され、その結果、貯蔵部14は貯蔵部14の出口62を通してプレベイパー製剤を毛細管18に押し出す。少なくとも一つの実施形態において、弁40は臨界の最小圧力に達した時に開き、プレベイパー製剤が貯蔵部14から不注意に分与されることが回避される。少なくとも一つの実施形態において、圧力スイッチ44を押すのに必要な圧力は十分に高いので、物理的動作または外側の物体の衝突などの外的要因によって圧力スイッチ44が不注意に押されることによる偶発的な加熱が回避される。
【0034】
例示的な実施形態の電源12は、eベイピング装置60の第二のセクション72内に配置された電池を含むことができる。電源12は、電圧を印加して貯蔵部14内に収容されたプレベイパー製剤を揮発するように構成されている。
【0035】
少なくとも一つの実施形態において、毛細管18と導線26の間の電気的接続は実質的に導電性かつ温度抵抗性であり、一方で毛細管18は実質的に抵抗性があるので、発熱は接点ではなく主に毛細管18に沿って生じる。
【0036】
電源セクションまたは電池12は再充電可能であってもよく、外部充電装置による電池の充電を可能にする回路を含んでもよい。例示的な実施形態において、回路は充電された時に、所与の回数の吸煙のための電力を提供し、その後、回路は外部充電装置に再接続しなければならない場合がある。
【0037】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、例えばプリント基板上に搭載することができる制御回路11を含んでもよい。制御回路11は、装置が起動された時に発光するように構成されたヒーター作動灯27も含んでもよい。少なくとも一つの実施形態において、ヒーター作動灯27は、少なくとも一つのLEDを備え、eベイピング装置60の遠位端28にあって、ヒーター作動灯27が吸煙中に燃焼する石炭の外観をしたキャップを照らすようにする。さらに、ヒーター作動灯27は、成人ベイパー吸引者に見えるように構成されうる。灯27はまた、所望する場合に灯27がベイピング中に点灯しないように、成人ベイパー吸引者が所望する時に灯27を点灯する、消灯する、または点灯および消灯の両方を行うことができるように構成されてもよい。
【0038】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、少なくとも二つの軸から離れた分岐出口21を有する口側端インサート20をさらに含み、分岐出口21は口側端インサート20の周りに均一に分布され、eベイピング装置の動作中、成人ベイパー吸引者の口内にベイパーを実質的に均一に分布するようにする。少なくとも一つの実施形態において、口側端インサート20は、少なくとも二つの分岐する出口21(例えば、3~8個以上の出口)を含む。少なくとも一つの実施形態において、口側端インサート20の出口21は、軸から離れた通路23の端に位置し、eベイピング装置60の長軸方向に対して外向きの角度を有する(例えば、分岐状)。本明細書で使用される「軸から離れた」という用語は、eベイピング装置の長軸方向に対してある角度を有することを意味する。
【0039】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、たばこ由来の製品とほぼ同じサイズである。一部の実施形態において、eベイピング装置60は、約80ミリメートル~約110ミリメートルの長さ、例えば約80ミリメートル~約100ミリメートルの長さおよび約7ミリメートル~約10ミリメートルの直径であってもよい。
【0040】
eベイピング装置60の外側円筒状ハウジング22は、任意の適切な材料または複数の材料の組み合わせから形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。少なくとも一つの実施形態において、外側円筒状ハウジング22は、少なくとも部分的に金属で形成され、制御回路11と、電源12と、吸煙センサー16とを接続する電気回路の一部である。
【0041】
図2に示す通り、eベイピング装置60はまた、プレベイパー製剤貯蔵部14および毛細管18を収容することができる中間セクション(第三のセクション)73を含むことができる。中間セクション73は、第一のセクションまたはカートリッジ70の上流端でねじ継手74’に、および第二のセクション72の下流端でねじ継手74に嵌合されるように構成されることができる。この例示的な実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70は口側端インサート20を収容し、一方で第二のセクション72は電源12と、電源12を制御するように構成された制御回路11とを収容する。
【0042】
図3は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の断面図である。少なくとも一つの実施形態において、毛細管18をクリーニングする必要性を回避するように、第一のセクションまたはカートリッジ70は交換可能である。少なくとも一つの実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70と、第二のセクション72とを、ねじ接続なしで一体として形成されて、使い捨て可能なeベイピング装置を形成してもよい。
【0043】
図3に示す通り、他の例示的な実施形態において、弁40は二方弁とすることができ、貯蔵部14は加圧することができる。例えば、貯蔵部14は、貯蔵部14に一定の圧力を印加するように構成された加圧機構405を用いて加圧することができる。そのため、貯蔵部14内に収容されているプレベイパー製剤の加熱によって形成されたベイパーの放出が促進される。貯蔵部14に対する圧力が軽減されると弁40は閉じ、加熱された毛細管18は、弁40の下流に残留しているプレベイパー製剤があれば排出する。
【0044】
図4は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。
図4では、eベイピング装置60は、上流シール15内に中央空気通路24を含むことができる。中央空気通路24は内側管65に対して開く。さらに、eベイピング装置60は、プレベイパー製剤を貯蔵するよう構成された貯蔵部14を含む。貯蔵部14は、プレベイパー製剤と、随意に貯蔵媒体25(中にプレベイパー製剤を貯蔵するように構成されたガーゼなど)とを含む。一実施形態において、貯蔵部14は外側管6と内側管65の間の外側環状部の中に収容されている。貯蔵部14からのプレベイパー製剤の漏れを防止するために、環状部は上流端でシール15によって密封され、下流端でストッパー10によって密封されている。ヒーターが起動された時、芯220の中央部分内に存在するプレベイパー製剤が気化されてベイパーを形成するように、ヒーター19は芯220の中央部分を少なくとも部分的に囲む。ヒーター19は、間隙を介した2本の導線26によって電池12に接続されている。eベイピング装置60は、少なくとも二つの出口21を有する口側端インサート20をさらに含む。口側端インサート20は、内側管65の内部と、ストッパー10を通して延びる中央通路64とを介して中央空気通路24と流体連通している。
【0045】
eベイピング装置60は、シール15内の中央空気通路24の下流端82で不浸透性プラグ30を備える気流ダイバーターを含んでもよい。少なくとも一つの例示的な実施形態において、中央空気通路24はシール15内で軸方向に延びる中央通路であり、シール15は外側管6と内側管65の間の環状部の上流端を密封する。半径方向空気チャネル32は、中央通路20から内側管65に向かって外側に空気を方向付ける。動作において、成人ベイパー吸引者がeベイピング装置を吸煙する時に、吸煙センサー16は、成人ベイパー吸引者がeベイピング装置を吸い、これによって陰圧を作り出すことによって生じた圧力勾配を検出し、結果として制御回路11は、ヒーター19に電力を提供することによって、貯蔵部14内に位置するプレベイパー製剤の加熱を制御する。
【0046】
一つの例示的な実施形態において、プレベイパー製剤は、Dowex 50W-X8、Lewait CNP 80、Amberlite IR-120などの少なくとも一つのイオン交換体または吸着剤を含み、およびプレベイパー製剤はまた、ニコチンと、グリセロールおよびプロピレングリコールのうちの少なくとも一つの組み合わせと、随意に風味剤だけでなく有機酸と、随意に水と、これに類するものとを含んでもよい。例示的な実施形態において、イオン交換体は不溶性粒子を含み、この粒子は約0.03ミリメートル~約0.5ミリメートルの範囲内のサイズである。例示的な実施形態において、イオン交換体または吸着剤は、プレベイパー製剤の中に、例えばプレベイパー製剤の約0.1重量パーセント~約5重量パーセントの濃度で含まれてもよく、また例えば約0.1パーセント~約0.5パーセント、約0.5パーセント~約1パーセント、約1パーセント~約2パーセント、約2パーセント~約4パーセント、または約4パーセント~約5パーセントの濃度で含まれてもよい。
【0047】
例示的な実施形態において、例えばDowex 50W-X8、Lewait CNP 80、Amberlite IR-120などのイオン交換体または吸着剤をeベイピング装置のプレベイパー製剤に添加することは、プレベイパー製剤中に存在する様々な他の成分の酸化を低減または実質的に防止する場合があり、eベイピング装置の固体部分(プレベイパー製剤の成分と接触するカートリッジなど)の酸化を低減または実質的に防止する場合があり、またeベイピング装置によって生成されたベイパーの中へのフリーラジカルまたは金属の移動を実質的に防止する場合がある。従って、有効な量のイオン交換体の添加は、プレベイパー製剤の安定性を増大させることができる。
【0048】
例示的な実施形態において、プレベイパー製剤の成分の酸化は、酸素または遊離遷移金属によって触媒作用を受けた酸素から生成される過酸化水素との反応によって生成されるヒドロキシルラジカルの生成からもたらされるため、遊離遷移金属および酸素の捕捉剤または結合剤であるイオン交換体の添加は、ヒドロキシルラジカルの形成を低減または実質的に防止し、従ってヒドロキシルラジカルがプレベイパー製剤の成分と反応するのを低減または実質的に防止する。その結果、ヒドロキシルラジカルの存在によるプレベイパー製剤の成分の酸化は、低減または実質的に防止される場合がある。
【0049】
例示的な実施形態において、プレベイパー製剤はまた、ニコチン、水、プロピレングリコールおよびグリセロールのうちの少なくとも一つ、イオン交換体、および潜在的に有機酸の混合物に加え、キレート化剤を含んでもよい。eベイピング装置の動作中、プレベイパー製剤内に存在するイオン交換体は、遊離遷移金属の大部分または大多数を結合する場合があり、またプレベイパー製剤内の酸素の大部分を結合する場合がある。イオン交換体によって結合されていないあらゆる残留酸化還元活性金属は次に、高親和性であるが低能力のキレート化剤と反応する場合があり、ここでEDTA、DTPA、またはNTAなどのキレート化剤は残留遊離遷移金属と結合する場合がある。イオン交換体とキレート化剤の組み合わせられた作用または連続的な作用の結果として、遊離遷移金属がeベイピング装置の動作中に生成されたベイパーの中へと移動することが低減もしくは実質的に防止され、または有害なヒドロキシルラジカルを形成することが低減もしくは実質的に防止される。同様に、製剤溶液中の酸素含有量は、酸素イオン交換体の存在下で実質的に低減され、活性酸素種(例えば、ヒドロキシルラジカルなど)の実質的な減少をもたらす。
【0050】
一部の例示的な実施形態において、イオン交換体は、約0.03ミリメートル~約0.3ミリメートルのサイズ範囲の球状粒子の微細メッシュの形態のDowex 50W-X8を含む。例示的な実施形態において、イオン交換体には、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの金属を結合する能力があり、これはH+イオンまたはNa+イオンの放出をもたらす。
【0051】
例示的な実施形態において、イオン交換体はLewait CNP80を含み、これは弱酸性、マクロ多孔性、アクリルベースのカチオン交換樹脂であり、約0.3ミリメートルのサイズ範囲のビーズ、実質的に高い動作能力ならびに良好な化学的安定性および機械的安定性を有する。Lewait CNP 80には、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの重金属を結合する能力がある。
【0052】
例示的な実施形態において、イオン交換体はAmberlite IR-120を含み、これは強酸性のカチオン交換樹脂であり、H+またはNa+イオン形態の球状粒子を有する。Amberlite IR-120は水および大部分の一般的な溶剤において不溶性であり、高温で安定であり、幅広いpH範囲にわたり高い交換能力を有する。Amberlite IR-120は、Cu、Ni、Zn、Cd、Pbなどの重金属の吸着に有効である。
【0053】
例示的な実施形態において、イオン交換体または吸着剤は、eベイピング装置の部分内に存在する銅、ニッケル、鉄などの遷移金属によって典型的に生成されるヒドロキシルラジカルの形成を防止することによって、eベイピング装置の成分の酸化を低減または実質的に防止する場合があり、従ってプレベイパー製剤の成分のヒドロキシルラジカルとの反応を実質的に防止する。結果として、eベイピング装置のプレベイパー製剤のより長い貯蔵寿命が達成される場合があり、eベイピング装置の動作中に生成するベイパーの中へのフリーラジカルの望ましくない移動が実質的に防止される場合がある。
【0054】
例示的な実施形態において、eベイピング装置の芯は、イオン交換体または吸着剤で形成されてもよく、またはイオン交換体または吸着剤を含んでもよい。例えば、芯は、例えば透明フィルムの形態のナノ結晶セルロースで形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。セルロースナノ吸着剤には、例えばCu、Ni、またはFeなどの重金属イオンを水溶液から除去する能力がある。
【0055】
例示的な実施形態において、イオン交換体または吸着剤は、重金属の封鎖剤またはキレート剤などの他の剤と組み合わせられてもよい。封鎖剤はまた、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)吸着剤などのキレート剤、およびイオン交換剤を含んでもよい。例示的な実施形態において、封鎖剤と組み合わせたイオン交換体は、eベイピング装置の固体部分の遊離遷移金属、または製剤成分内に存在する遊離遷移金属を封鎖するまたはこれと結合することによって、およびヒドロキシルラジカルの生成を低減または実質的に防止することによって、eベイピング装置の成分の酸化を低減または実質的に防止する場合がある。製剤へのポリオールの添加はまた、その成分の酸化を実質的に防止することによって、プレベイパー製剤の安定性を増大させる確率を高めることになる。結果として、eベイピング装置のプレベイパー製剤のより長い貯蔵寿命が達成される場合があり、またeベイピング装置の動作中に生成されたベイパー内での有害なフリーラジカルまたは遊離金属の放出もまた実質的に低減される場合がある。
【0056】
eベイピング装置の動作中に、eベイピング装置のカートリッジ内のヒーターによってプレベイパー製剤を加熱すると、多量のプロトン化ニコチンと少量の非プロトン化ニコチンとを有するベイパーが生成されるように、酸は典型的に、プレベイパー製剤中の分子ニコチンをプロトン化し、これによってすべての揮発した(気化した)ニコチンのうちのわずかな部分のみが典型的に、ベイパーの気相内に残留する。例えば、プレベイパー製剤は最大5パーセントのニコチンを含む場合があるが、ベイパーの気相内のニコチンの比率は、送達された総ニコチンの実質的に1パーセント以下となる場合がある。
【0057】
少なくとも一つの例示的な実施形態によると、プレベイパー製剤内に存在する酸は、ベイパーの中へと移動する能力を有する。酸の移動効率は、液体中の酸の質量分率に対するベイパー中の酸の質量分率の比である。少なくとも一つの実施形態において、プレベイパー製剤内に存在する酸または酸の組み合わせは、約50パーセント以上の蒸発効率、例えば約60パーセント以上の蒸発効率を有する。例えば、ピルビン酸、酒石酸、酢酸は約50パーセント以上の蒸発効率を有する。
【0058】
少なくとも一つの実施形態において、プレベイパー製剤内に存在する一つ以上の酸は、ニコチン気相部分の量を、一つ以上の酸を含まない同等のプレベイパー製剤によって生成されたニコチン気相部分のレベルの約30重量パーセント以上、または約60重量パーセント~約70重量パーセント、または約70重量パーセント以上、または約85重量パーセント以上低減するのに十分な量である。
【0059】
少なくとも一つの例示的な実施形態によると、プレベイパー製剤内に存在する一つ以上の酸としては、ピルビン酸、ギ酸、シュウ酸、グリコール酸、酢酸、イソ吉草酸、吉草酸、プロピオン酸、オクタン酸、乳酸、レブリン酸、ソルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、オレイン酸、アコニット酸、酪酸、ケイ皮酸、デカン酸、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、1-グルタミン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、3-ヘキサン酸、トランス-2-ヘキサン酸、イソ酪酸、ラウリン酸、2-メチル酪酸、2-メチル吉草酸、ミリスチン酸、ノナン酸、パルミチン酸、4-ペンテン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、塩酸、リン酸、硫酸、およびこれらの組み合わせのうちの一つ以上が挙げられる。プレベイパー製剤はまた、ベイパー形成体、随意に水、および随意に風味剤を含んでもよい。
【0060】
少なくとも一つの実施形態において、ベイパー形成体は、プロピレングリコール、グリセリンおよびこれらの組み合わせのうちの一つである。別の実施形態において、ベイパー形成体はグリセリンである。少なくとも一つの実施形態において、ベイパー形成体は、プレベイパー製剤の重量に基づき約40重量パーセント~プレベイパー製剤の重量に基づき約90重量パーセント(例えば、約50パーセント~約80パーセント、約55パーセント~約75パーセント、または約60パーセント~約70パーセント)の範囲の量で含まれる。
【0061】
プレベイパー製剤は随意に水を含む。水は、プレベイパー製剤の重量に基づき約5重量パーセント~プレベイパー製剤の重量に基づき約40重量パーセントの範囲の量で、またはプレベイパー製剤の重量に基づき約10重量パーセント~プレベイパー製剤の重量に基づき約15重量パーセントの範囲の量で含まれうる。
【0062】
プレベイパー製剤はまた、風味剤を約0.01重量パーセント~約15重量パーセント(例えば約1パーセント~約12パーセント、約2パーセント~約10パーセント、または約5パーセント~約8パーセント)の範囲の量で含んでもよい。風味剤は天然風味剤または人工風味剤でありうる。少なくとも一つの実施形態において、風味剤はたばこ風味、メントール、ウインターグリーン、ペパーミント、ハーブ風味、果実風味、ナッツ風味、酒風味、およびこれらの組み合わせのうちの一つである。
【0063】
実施形態において、ニコチンはプレベイパー製剤の総重量に基づき約2重量パーセント~約6重量パーセント(例えば、約2パーセント~約3パーセント、約2パーセント~約4パーセント、約2パーセント~約5パーセント)の範囲の量でプレベイパー製剤に含まれる。少なくとも一つの実施形態において、ニコチンはプレベイパー製剤の総重量に基づき最大約5重量パーセントの量で添加される。少なくとも一つの実施形態において、プレベイパー製剤のニコチン含有量は、プレベイパー製剤の総重量に基づき約2重量パーセント以上である。別の実施形態において、プレベイパー製剤のニコチン含有量は、プレベイパー製剤の総重量に基づき約2.5重量パーセント以上である。別の実施形態において、プレベイパー製剤のニコチン含有量は、プレベイパー製剤の総重量に基づき約3重量パーセント以上である。別の実施形態において、プレベイパー製剤のニコチン含有量は、プレベイパー製剤の総重量に基づき約4重量パーセント以上である。別の実施形態において、プレベイパー製剤のニコチン含有量は、プレベイパー製剤の総重量に基づき約4.5重量パーセント以上である。
【0064】
例示的な実施形態において、プレベイパー製剤のベイパー相内のニコチンの濃度は、実質的に1重量パーセント以下である。
【0065】
例示的な実施形態が説明されているため、これらは多くの方法で変化しうることが明らかであろう。こうした変化は、例示的な実施形態の意図される範囲を逸脱するものと見なされず、当業者にとって明らかであろうすべての修正は、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。