(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】フルオロアリール化合物及びその誘導体の新しい製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/35 20060101AFI20220816BHJP
C07C 25/13 20060101ALI20220816BHJP
C07C 201/12 20060101ALI20220816BHJP
C07C 205/12 20060101ALI20220816BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
C07C17/35
C07C25/13
C07C201/12
C07C205/12
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019548957
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2019094380
(87)【国際公開番号】W WO2020164217
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2019-09-09
(31)【優先権主張番号】102019103836.7
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519299739
【氏名又は名称】福建永晶科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU NANPING, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲き▼龍
(72)【発明者】
【氏名】杜 宏軍
(72)【発明者】
【氏名】呉 文挺
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02275924(GB,A)
【文献】国際公開第2015/151116(WO,A2)
【文献】西独国特許出願公告第01044091(DE,B)
【文献】特開2015-047585(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/35
C07C 25/13
C07C 205/12
C07C 201/12
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体の製造方法であって、
前記フルオロアリール化合物は、フルオロベンゼン又はフルオロビフェニルであり、
前記フルオロアリール化合物は、置換又は非置換であり、
Rn-Ar-F (I)
(式中、Arは置換または非置換のフェニル基であり、
Rnは、水素(H)、二酸化窒素(NO
2)、フッ素(f)以外のハロゲン(Hal)、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基であり、前記ハロゲン(Hal)は、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)である。)
前記方法は、以下のステップ(a)からステップ(f)を含み、
ステップ(a)において、式(II)の化合物を原料として提供し、
Rn-Ar-Hal (II)
(式中、Ar及びRnは上記と同義であり、Halは塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンである。)
ステップ(b)において、HF(フッ化水素)及び触媒となる五フッ化アンチモン(SbF
5)を提供し、
ステップ(c)において、ステップ(a)における式(II)の化合物とステップ(b)におけるHF及び触媒とを混合し、
ステップ(d)において、ステップ(c)で得られた混合物を少なくとも1つの反応器に入れ、前記触媒の存在下でHFと式(II)の反応を行い、式(I)の化合物を含む反応混合物を得、
具体的には、以下条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにフィーディングして反応させ、
流速:約10ml/h-約400l/h
温度:約30℃-約150℃
圧力:約5bar-約50bar、および
滞留時間:約1秒-約60分間
ステップ(e)において、前記ステップ(d)で得られた前記反応混合物を取り出し、式(I)の化合物である生成物を得、
ステップ(f)において、任意にステップ(e)で得られた式(I)の化合物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得る、方法。
【請求項2】
(iii)前記式(I)のフルオロアリール化合物は、式(Ic)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物であり、化合物の前記原料は、式(IIc)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【化1】
(式(Ic)及び式(IIc)中、
式(IIc)中のHalは、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンであり、
式(Ic)及び(IIc)におけるR1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、ジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシで
ある。)
【請求項3】
ステップ(d)における少なくとも1つの前記マイクロリアクターは、独立してSiC-マイクロリアクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化反応において、前記触媒は、オートクレーブ中でSbCl
5とHFとの反応により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、ステップ(f)において請求項1に記載のステップ(e)の式(I)の化合物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のステップ(f)において、前記式(I)の化合物の精製及び/又は分離は、相分離法を含むか、又は相分離法からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載のステップ(f)において、式(I)の化合物の精製及び/又は分離は、蒸留を含まない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアリール化合物及びその誘導体、特にフルオロベンゼン及びその誘導体の新しい製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フルオロアリール化合物及びその誘導体を製造するための全ての従来技術方法は、特に、環境、操作安全及び体積の面でますます受け入れがたくなる。今まで、例えば、フルオロベンゼン及び誘導体の大部は、工業的にはBalz Schiemann又はSandmeyer反応により製造されており、一部はHalex反応により製造されている。Balz Schiemann又はSandmeyer反応は、化学的には非常に優れているが、大量の廃棄物及び非常に有毒な廃水をもたらす問題がある。Halex反応は、その応用(特に大規模の応用)が制限されるとともに、大量の廃棄物をもたらす問題もある。この原因で、例えば中国では、多くの化学プラントが倒産しており、世界中の多くの企業は、信頼性が高く環境的に許容されるフルオロベンゼンの供給源を持っていない。本明細書において、フルオロベンゼンを例にして説明される同様又は類似する問題は、通常他のフッ素化芳香族及びヘテロ芳香族化合物の製造(例えば、薬物及び農業化学分野)、及び特殊なポリマーの構造単位の製造にもある。
【0003】
従って、例えば、フルオロベンゼンの製造には、重大な問題(特にBalz-Schiemann及びSandmeyer反応による廃棄物、及びHalex反応による廃棄物)がある。例えば、フルオロベンゼン及びその誘導体は、農業用化学品、薬物及び特殊ポリマーの重要な構造単位であり、対応するBalz-Schiemann反応により製造される。この2種の反応タイプは、いずれもそれぞれアニリンステップによりジアゾニウム塩を生成する必要がある。このような反応技術、特にテトラフルオロホウ酸塩、ジアゾニウム塩の分解は、液化された有毒廃水の影響を受ける。フルオロホウ酸塩は、その4つフッ素原子のうちの1つのみが生成物に入り、3つのフッ素原子が廃水に入る。非限定的な例示的文献として、http://orgsyn.org/demo.aspx?prep=CX2P0295及びhttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cber.19270600539が挙げられる。
【0004】
Schiemann反応(Balz-Schiemann反応とも呼ばれる)は、化学反応であり、当該反応では、芳香族第一級アミンがジアゾテトラフルオロホウ酸塩中間体によりアリールフッ化物に変換される。ジアゾ中間体の熱分解および光分解は、いずれも芳香族カチオンにより行われる。これは、この2つの場合での生成物比が同じであることによって証明された。Balz-Schiemann反応は、ドイツの化学者Gunther Schiemann及びGunther Balzにちなんで命名され、フルオロベンゼン及びいくつかの関連誘導体(4-フルオロ安息香酸を含む)の第一選択である。反応式は、
【化1】
である。
【0005】
当該反応は、Sandmeyer反応と類似し、ジアゾニウム塩を他のアリールハロゲン化物に変換する。テトラフルオロホウ酸塩の代わりに、他の対イオン、例えばヘキサフルオロリン酸塩(PF6
-)及びヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6
-)が用いられることにより、いくつかの基質では、収率が向上する。ジアゾニウム塩の大規模な熱分解には、爆発の可能性があるため、この反応のさらなる欠点となっている。
【0006】
Sandmeyer反応は、アリールジアゾニウム塩からアリールハロゲン化物を合成する化学反応であり、フリーラジカル求核芳香族置換の実例である。Sandmeyer反応は、ベンゼンに対してハロゲン化、シアン化、トリフルオロメチル化及びヒドロキシル化のような独特な変換を行うことができる方法を提供する。反応式は、
【化2】
である。
【0007】
この反応は、1884年にスイスの化学者Traugott Sandmeyerが塩化ベンゾジアゾニウム及びアセチレン銅からフェニルアセチレンを合成した時に発見したものである。この反応は、そのジアゾニウム塩を製造した後、求核試薬により置換することにより置換芳香族アミノを生成する方法であり、通常銅(I)塩で触媒する。求核試薬は、ハロゲンアニオン、シアン化物、メルカプタン、水等である。フッ化物アニオンを用いると、反応はうまく進行できないが、テトラフルオロホウ酸アニオン(Balz-Schiemann反応)を用いてフッ素化することができる。
【0008】
Balz-Schiemann反応は、1927年に発見され、資源節約が提唱されている現在では、改良される必要がある。また、廃物の産生が僅かに減少されたいわゆるHalex反応が考えられる場合がある。Halex反応は、化学的には「活性化」芳香族炭化水素のみとともに作用し、工業的にはフルオロベンゼンの製造に適せず、大量の有毒廃棄塩をもたらす問題もある。さらに、高価な「F」供与体、例えば、AgF(US6087543、WO2001/096267、WO2008/073471、US2005/0096489を参照)又はCsFの使用により、この方法の経済性が低下する。WO2001/081274にはやや高い収率が開示されているが、比較的安いが、量が多いフルオロベンゼン及びその誘導体に鑑みて、高価な反応生成物(ホスファゼン)のコスト的利益にも不利である。
【0009】
GB2275924には、CrO3触媒の存在下で、気相中でクロロベンゼンからフルオロベンゼンを製造することが開示されているが、この方法の工業規模は、僅かな4%のみである。
【0010】
JP63111192には、電気フッ素化によりフルオロベンゼンを製造することが開示されている。当該方法は、エネルギー消費が大きく、選択性が十分ではないため、工業には適していない。Electrochimica Acta(1993),38(4),619-24;Electrochimica Acta(1993),38(8),1123-30及びReviews in Chemical Engineering (2003), 19 (4), 357-385にも、当該方法が開示されている。
【0011】
クロロベンゼンの製造方法は多くある。例えば、DE219242(1907年10月5日)には、Fe触媒の存在下でのベンゼンの塩素化が開示されている。また、US1180964(1916年4月25日)には、ベンゼンからのクロロベンゼンの合成が開示されている。今見て、これらの方法は非常に簡単である。しかし、クロロベンゼンを工業用原料としてフルオロベンゼンを大規模に製造することは、従来技術から想到できないものである。
【0012】
フルオロベンゼンそれ自体は、出発原料として多くの異なる核のフッ素化芳香族炭化水素に用いられる。例えば、GB2291871には、F
2の存在下でのHNO
3を有するマルチ核フッ素化ニトロ芳香族化合物の製造が開示されている。IN187711A1(2002年6月15日)には、2,4-ジニトロフルオロベンゼンの製造(収率>90%)が開示されている。
【化3】
【0013】
しかし、現在、無水HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造する時にハロゲン化水素(市販品)のみが形成される工業的に適切な方法がない。また、上記のように、クロロベンゼンを出発原料としてフルオロベンゼンの製造に用いることは、従来技術から想到できないものである。
【0014】
本発明は、従来技術の欠点を克服すること、特に、核フッ素化芳香族炭化水素、好ましくは核フッ素化フルオロベンゼンを製造するためのより効果的で省エネの方法、及び環境により優しい方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、フルオロアリール化合物及びその誘導体、特にフルオロベンゼン及びその誘導体の新しい製造方法に関する。特許請求の範囲での定義及び本明細書での説明の通り、前記製造方法は、環境に優しく前記化合物を生産することができる。
【0016】
従って、本発明は、従来技術方法に存在する欠点を簡単且つ有益的に克服するとともに、従来技術と比較して、より効果的で省エネな方法を提供し、さらに、核フッ素化芳族化合物、好ましくは核フッ素化フルオロベンゼンを製造するための環境により優しい方法を提供する。
【0017】
従って、本発明の一態様によれば、HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造する時にハロゲン化水素が形成される工業に有益な方法が提供される。さらに、本発明によれば、フルオロベンゼンの工業製造におけるクロロベンゼンの原料とする簡単な使用が提供される。本発明の前の従来技術においては、クロロベンゼンの当該使用が知られていない。
【0018】
<触媒>
本発明の方法で用いられるハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒は、いわゆるルイス酸であってもよいが、これに限定されない。ハロゲン化は、化学反応の1種であり、化合物又は材料に1種又は複数種のハロゲンを添加することに関する。ハロゲン化の経路及び化学量論比は、有機基質の構造特徴及び官能基及び特定のハロゲンに依存する。例えば、金属の無機化合物の合成にもハロゲン化が必要である。フッ素化は、ハロゲン化の1種であり、F(フッ素)は導入化合物又は材料におけるハロゲンである。ハロゲン化及び/又はフッ素化、及びこれらの反応で用いられるハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によって知られている。例えば、中間体ハロゲン塩イオンを活性物質としてオレフィンにハロゲン(例えば、塩素及び/又はフッ素)を付加する。有機化学における「ハロゲンイオン」は、ハロゲン原子を含むいかなるハロゲン塩化合物(イオン)、例えば、本明細書において、正電荷を持つフッ素原子をいう。
【0019】
ハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によく知られており、本発明において、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくものである。より好ましくはフッ素化触媒、特に、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒である。SbHal5である場合、過剰なHFが保持される。
【0020】
例えば、本発明の一態様では、フッ素化反応を提供する。フッ素化芳香族系(「フルオロベンゼン」)に用いられるアンチモン(Sb)触媒の使用は新しく有利である。例えば、触媒は、HF中のSbF5であり、SbCl5で作製される。もちろん、新鮮な触媒との反応が始まるときに、触媒アンチモン(Sb)上の1つ又は2つの塩素原子を置換し、一定時間のフッ素化後、全ての塩素原子を置換する。
【0021】
今まで、例えば、フルオロベンゼン及び誘導体は、工業的には、Balz Schiemann又はSandmeyer反応により製造されている。これらの反応は、化学的には非常に優れているが、大量の廃棄物及び非常に有毒な排水をもたらす問題がある。この原因で、多くの化学プラントが倒産した。例えば、中国、さらに世界中の多くの企業は、信頼性が高く環境的に許容されるフルオロベンゼンの供給源を持っていない。ここで、フルオロベンゼンの実施例にて説明される同様又は類似する問題は、通常他のフッ素化芳香族及びヘテロ芳香族化合物(例えば、製薬及び農業化学分野における構造単位)の製造にもある。
【0022】
本発明の化学的新規性及び概念は、ハロゲン化触媒を用いる新しいフッ素化方法であり、例えば、好ましい実施形態において、アンチモン(Sb)ハロゲン化物をハロゲン化触媒として用いる。本発明に記載されているように、本発明の製造方法は、如何なる(少なくとも如何なる顕著な)廃物である副生成物をもたらすことなく、フルオロベンゼン及びその誘導体を触媒で生産することである。例えば、本発明の方法では、市販可能な塩化水素(HCl)しか生成されない。
【0023】
<反応器>
さらに、本発明の一態様は、本発明で使用、本明細書で説明されるように、工場エンジニアリングに関する発明を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、当該方法は、マイクロリアクター中で実施される好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約5mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0025】
マイクロリアクター及びその中で物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)について、マイクロプロセス工学分野において研究を行なった。前記マイクロリアクターは、通常連続流通反応器(回分式反応器に対して)をである。マイクロリアクターは、通常の拡大反応器と比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になる。
【0026】
「フローケミストリー」においてマイクロリアクターを用いて化学反応を行う。
【0027】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0028】
連続流通反応器(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管状であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、反応器の直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続流通反応器は、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。反応器内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、反応器体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=反応器体積/流速)。従って、より長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングしたり、体積がより大きな反応器及び/又は複数のマイクロリアクターを直列に配置したり、任意にそれらの間にいくつかのシリンダーを追設することで反応の完成に必要な滞留時間を増加したりすることができる。後者の場合において、それぞれのマイクロリアクターの後ろのサイクロンセパレータは、形成されたHClの脱出に役に立つとともに、反応性能に積極的な影響を与える。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0029】
フロー式反応器の例には、回転ディスク反応器(ColinRamshaw)、回転管反応器、マルチセルフロー式反応器、振動流反応器、マイクロリアクター、熱交換反応器、吸引式反応器が含まれる。吸引式反応器において、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式反応器及び管型流通反応器がさらに含まれる。
【0030】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】フルオロベンゼン又はフルオロベンゼンの誘導体を連続的に製造する(例えば、マイクロリアクター中で合成する)ための工程を示す例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の概要での簡単な説明、及び特許請求の範囲での限定、以下の発明の詳細な説明及び実施例での詳しい説明によれば、本発明は、従来技術の不足を克服する。本発明の前にはHFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造する時にハロゲン化水素が形成される工業的に適切な方法がない。
【0033】
従って、上記のように、本発明の一態様によれば、HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造する時にハロゲン化水素が形成される工業に有益な方法が提供される。さらに、本発明によれば、フルオロベンゼンの工業製造におけるクロロベンゼンの原料とする簡単な使用が提供される。本発明の前の従来技術においては、クロロベンゼンの当該使用が知られていない。
【0034】
上記のように、HFを用いてハロゲン化ベンゼン前駆体からフルオロベンゼンを製造する時にハロゲン化水素が形成される工業的に適切な方法がない。フッ化水素は、鉱山から得たれた天然資源である蛍石(CaF2)の第1化学利用段階であり、本発明のハロゲン化水素はさらに化学合成に適用できるため、芳香族化合物で触媒されるハロゲン-フッ素交換は、最良の環境およびプロセス技術である。これは、本発明により達成される。
【0035】
過剰な無水HFにおける五フッ化アンチモンは、強求核性フッ化物であるスーパーアシッドH
2F
+SbF
-が生成する。無水HFにおける高度にフッ素化されたSbF
5は、溶媒として求核置換反応においてベンゼン、不活性なハロゲン化ベンゼン、特にクロロベンゼン、ブロモベンゼン、及びそれらの誘導体をフッ素化し、非常に不活性な前駆体は原料として用いることができる。これは、以下の一般式で表される。
【化4】
【0036】
過フッ素化溶媒のような不活性溶媒において、Sb-五ハロゲン化物は、主にルイス酸として作用し、加水分解のときにフェノール及びビフェニルを提供する。SbHal5がSbHal3に還元されて初めてハロゲン化は可能となるが、触媒されることではない。五フッ化アンチモンとコロロベンゼンとの反応は未知のものであり、当業者は、通常Friedel-Crafts生成物、又は重合、分解により不確定な生成物及びオリゴマーを生成することしか期待しない。Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry (1997) (11),2301-2306には、クロロベンゼンとジフェニルジスルフィドとの反応が記載されており、当該反応において、SbCl5は、ハロゲン化試薬ではなく、Friedel-Crafts触媒として用いられる。Theoretical and Experimental Chemistry (2011),47 (2),123-128では、SbCl5は、ジクロロベンゼン、クラウンエーテル及び塩素ガスを生産するための塩素化試薬の一部であるが、工業生産に適合しないかもしれない。
【0037】
しかし、フッ素化反応が溶媒である無水HF中、環境温度よりもやや高い温度以上の温度範囲内で行われる場合、求核ハロゲン-フッ素置換は、非常に良い収率及び高い反応速度で進行する。これは、(過剰)HFにおいて五フッ化アンチモンのFriedel-Crafts触媒機能から求核フッ素化機能又はフッ素化剤機能への変化が発生し、つまり、超酸性が極めて強い求核フッ素アニオン(F-)の形で、例えばクロロベンゼンに反応配偶体として提供され、好ましくは核フッ素化フルオロベンゼンを生成する。例えば、より活性が高い場合、フッ素化はすでに約40℃から始まる温度で起こり得る。しかし、前記40℃よりもやや高い温度は、HClが形成された直後に気相に入るのにも有利であるため、フッ素化反応が速くなる。酸化段階Vでのアンチモン(Sb)(即ち、Sb-V)は約130℃から始まる温度下でSb-IIIに分解するため、いかなる反応物が存在しない場合において、反応温度の上限は高すぎてはならない。従って、一実施形態において、フッ素化反応の温度範囲は約40℃から130℃である。好ましい実施形態において、フッ素化反応の温度範囲は約40℃から110℃であり、より好ましい範囲は、約50℃から110℃であり、さらに好ましい範囲は約60℃から110℃であり、より好ましい範囲は約70℃から110℃である。最も好ましくは、フッ素化反応の温度範囲は約80℃から110℃である。これは最適な温度範囲である。上記内容は、他のハロゲンなどの化学的不活性化置換基またはシアノ基やニトロ基などの強力な置換基を持つクロロベンゼンを含む、全てのクロロベンゼン及びその誘導体に適用される。同様に、他の核フッ素化芳香族が対応する核塩素化芳香族を出発物質として製造される場合、他の核フッ素化芳香族の製造に適用される。例えば、理論に束縛されることを望まないが、求核反応では、通常は不活性なCNやNO2などの置換基は、電子が置換基に引き付けられるため、求核剤に対する反応性を高め、したがって、他の位置および芳香環におけるδ+はで増加する。
【0038】
以下、本発明の一般的な実施形態をより詳細に説明し、当業者の教育的推測に基づいて適切に調査されることで、以下でさらに説明されるより具体的な実施形態から導出可能な本発明の幅を例示する。
【0039】
第1の実施形態において、本発明は、下式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体、好ましくはフルオロベンゼン又はフルオロビフェニルの製造方法に関する。ここで、前記フルオロアリール化合物は、置換または非置換であってもよい。
Rn-Ar-F (I)
式中、
Arは、置換または非置換の単環式同素環式アリール基、置換または非置換の同素環式、窒素及び/又は酸素を含む二環式複素環式(-Ar-)アリール基、前記単環式アリール基及び/又は二環式(-Ar-)アリール基の置換または非置換のビアリール基(-Ar-Ar’-)であり、ここで、Ar及びAr’は、同じでも異なっていてもよく、好ましくは、Arは置換または非置換のフェニル基(-Ph-)、ナフチル基又はビフェニル基(-Ph-Ph’-)であり、より好ましくは、Arは置換または非置換のフェニル基又はビフェニル基である。
Rnは、水素(H)、二酸化窒素(NO2)、フッ素(f)以外のハロゲン(Hal)、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルキル基、置換または非置換のC1-C4ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基であり、好ましくはジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基、より好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシであり、前記ハロゲン(Hal)は、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)である。
前記方法は、以下のステップ(a)からステップ(f)を含む。
ステップ(a)において、式(II)の化合物を原料として提供し、
Rn-Ar-Hal (II)
式中、Ar及びRnは上記と同義であり、Halは塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンである。
ステップ(b)において、HF(フッ化水素)及び触媒、好ましくはハロゲン化促進触媒、より好ましくはフッ素化促進触媒を提供する。
ステップ(c)において、ステップ(a)における式(II)の化合物とステップ(b)におけるHF及び触媒とを混合する。
ステップ(d)において、ステップ(c)で得られた混合物を少なくとも1つの反応器に入れ、前記触媒の存在下でHFと式(II)の反応を行い、式(I)の化合物を含む反応混合物を得る。
ステップ(e)において、前記ステップ(d)で得られた前記反応混合物を取り出し、式(I)の化合物を含む生成物、好ましくは式(I)の化合物である生成物を得る。
ステップ(f)において、任意にステップ(e)で得られた式(I)の化合物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得る。
【0040】
第2の実施形態において、本発明は、第1の実施形態に記載の式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体の製造方法に関する。
Rn-Ar-F (I)
前記方法は、以下のステップ(a)からステップ(f)を含む。
ステップ(a)において、式(II)の化合物を原料として提供する。
Rn-Ar-Hal (II)
式中、Rn、Ar及びHalは第1の実施形態と同義である。
ステップ(b)において、HF(フッ化水素)及び触媒、好ましくはハロゲン化促進触媒、より好ましくはフッ素化促進触媒を提供する。
ステップ(c)において、ステップ(a)における式(II)の化合物とステップ(b)におけるHF及び触媒とを混合する。
ステップ(d)において、ステップ(c)で得られた混合物を少なくとも1つの上部横寸法が約5mm以下又は約4mm以下の連続流通反応器、好ましくは、少なくとも1つのマイクロリアクターにフィーディングし、前記触媒の存在下でステップ(a)における式(II)の化合物とHFとを反応させ、式(I)の化合物を含む反応混合物を得る。
好ましくは、1種又は複数種の以下条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにフィーディングする。
流速:約10ml/h-約400l/h
温度:約30℃-約150℃
圧力:約5bar-約50bar
滞留時間:約1秒-約60分間、好ましくは約1分間-約60分間
ステップ(e)において、前記連続流通反応器、好ましくは前記マイクロリアクターからステップ(d)で得られた前記反応混合物を取り出し、式(I)の化合物を含む生成物、好ましくは、式(I)の化合物である生成物を得る。
ステップ(f)において、任意にステップ(e)で得られた前記式(I)の化合物である生成物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得る。
【0041】
第3の実施形態において、本発明は、第1の実施形態又は第2の実施形態に記載の式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体の製造方法に関する。
(i)前記式(I)のフルオロアリール化合物は、式(Ia)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物であり、化合物の前記原料は、式(IIa)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物であり、Rn及びHalは、それぞれ独立して第1の実施形態と同義であり、或いは
【化5】
(ii)前記式(I)のフルオロアリール化合物は、式(Ib)の置換または非置換のビフェニル(-Ph-Phh-)を有する化合物であり、化合物の前記原料は、式(IIb)の置換または非置換のビフェニル(-Ph-Ph’-)を有する化合物であり、Rn及びHalは、それぞれ独立して第1の実施形態と同義である。
【化6】
【0042】
第4の実施形態において、本発明は、第1の実施形態又は第2の実施形態に記載の式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体の製造方法に関する。
(iii)前記式(I)のフルオロアリール化合物は、式(Ic)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物であり、化合物の前記原料は、式(IIc)の置換または非置換のフェニル基(-Ph-)を有する化合物である。
【化7】
式(Ic)及び式(IIc)中、
式(IIc)中のHalは、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択されるハロゲンであり、
式(Ic)及び(IIc)におけるR1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素(H)、二酸化窒素(NO
2)、フッ素(f)以外のハロゲン(Hal)、置換または非置換のC
1-C
4アルキル基、置換または非置換のC
1-C
4アルコキシ基、置換または非置換のC
1-C
4ハロゲン化アルキル基、置換または非置換のC
1-C
4ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選択される置換基であり、好ましくはジフルオロアルコキシ基又はトリフルオロアルコキシ基、より好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシであり、前記ハロゲン(Hal)は、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)から選択され、或いは、
式(Ic)及び式(IIc)におけるR1、R2及びR3は、それぞれ独立して前記置換基であり、R4及びR5は、それらのベンゼン環に結合した炭素原子と共に置換または非置換の同素環式の窒素及び/又は酸素を含む複素環式の5員環又は7員環系を形成し、好ましくは、R4とR5は一緒になって、
(a)-CH=CH-CH=CH-、
(b)-CH=CH-NR6-(R6は、水素又はC
1-C
4アルキル基である。)、
(c)-CH=N-CH-、及び
(d)-CRxRy-O-CR’xR’y
からなる群より選択される基であり、
ここで、Rx、Ry、R’x及びR’yは、それぞれ独立して水素(H)、原料とする式(IIc)におけるフッ素以外のハロゲン(Hal)であり、或いは、得られた式(Ic)の化合物において、Rx、Ry、R’x及びR’yは、それぞれ独立してフッ素又は塩素であり、好ましくは、-CF
2-O-CF
2である。
【0043】
第5の実施形態において、本発明は、第2の実施形態から第4の実施形態のいずれか1項に記載の式(I)のフルオロアリール化合物及びその誘導体の製造方法に関する。ステップ(d)における少なくとも1つの前記連続流通反応器、好ましくは少なくとも1つの前記マイクロリアクターは、独立してSiC-連続流通反応器、好ましくはSiC-マイクロリアクターである。
【0044】
第6の実施形態において、本発明は、第1の実施形態から第5の実施形態のいずれか1項に記載の方法に関する。前記フッ素化反応において、前記触媒は、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒であり、より好ましくは、前記フッ素化触媒は、Sbフッ素化触媒からなる群より選択される活性物質H2F+SbF6
-を提供するフッ素化触媒であり、全ての前記触媒の混合物を含む。特定の系に対して活性が高すぎる触媒又は触媒混合物である場合、過フッ素化又は重合が発生する可能性があり、この場合、反応系を活性が低い反応系(例えば、EP0781745(1997年)に記載されている反応系)で希釈することができる。不活性化の他の選択は、触媒混合物により多いSbIIIを使用することである。
【0045】
第7の実施形態において、本発明は、第6の実施形態6に記載の方法に関する。フッ素化反応において、前記ハロゲン化触媒は、五塩化アンチモン及び/又は五フッ化アンチモンであり、好ましくは、前記触媒は、五フッ化アンチモン(SbF5)であり、且つオートクレーブ中でSbCl5とHFとの反応により調製され、より好ましくは、HFにおけるSbF5からなる。HFにおけるSbF5は、第1の実施形態から第5の実施形態のいずれか1項に記載の方法における反応ステップ(d)の前に前記活性物質H2F+SbF6
-を形成する。
【0046】
第8の実施形態において、本発明は、第1の実施形態から第7の実施形態のいずれか1項に記載の方法に関する。前記方法は、ステップ(f)において第1の実施形態又は第2の実施形態におけるステップ(e)の式(I)の化合物を精製及び/又は分離し、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得ることを含む。
【0047】
第9の実施形態において、本発明は、第8の実施形態に記載の方法に関する。第1の実施形態又は第2の実施形態に記載のステップ(f)において、前記式(I)の化合物の精製及び/又は分離は、相分離法を含むか、又は相分離法から構成される。
【0048】
第10の実施形態において、本発明は、第1の実施形態から第9の実施形態のいずれか1項に記載の方法に関する。少なくとも第2の実施形態に記載のステップ(f)において、式(I)の化合物の精製及び/又は分離は、蒸留を含まず、精製及び/又は分離された式(I)の化合物を得る。
【0049】
以下、本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、これらの実施形態に限定されない。
【0050】
フルオロベンゼンは、多くの異なる核フッ素化芳香族炭化水素の出発原料として用いられている。上記のように、従来技術には、F2の存在下でHNO3により多核フッ素化ニトロ芳香族化合物を製造すること、及び従来技術の反応により2,4-ジニトロフルオロベンゼンを製造することが開示されている。
【0051】
勿論、2,4-ジニトロフルオロベンゼンの合成手順を変更することで、クロロベンゼンのみがニトロ化され、その後、本発明の方法により強く不活性化された芳香族系(例えば、ジニトロクロロベンゼン)を用いて塩素/フッ素変換を行ってもよい。このような合成手順は、例えばJP60237051A(1985)及びJP04124159(1992)に記載されている。しかし、これらの特開に開示された方法において、金属フッ化物又はHFを用いるとともに、塩基を脱離基の反応物として用いる。しかし、これらの従来技術の方法は、スケールアップ可能であれば、触媒的ではないため、環境に優しいものでもないし、資源を節約するものでもない。例えばJournal of the American Chemi-Society Society(1919)41,1013-20及びCN102070457A(2011)には、第1段階について開示されている。2,4-ジニトロクロロベンゼンを調製しておき、第2段階で本発明に係る以下の反応式で表されるフッ素化反応を行う。
【化8】
【0052】
原料として用いられているもう1つの化合物は、例えば4-フルオロ-ニトロベンゼンである。ロシュのIsavuconazole及びアストラゼネカのゲフィチニブなどの活性医薬成分、及びバイエルクロップサイエンスのFlufenacetなどの農業活性成分の製造に用いられる。CN107129511(2017)には、従来技術として記載された、Halex反応においてリン触媒(相転移条件)及びDMSOにおけるKFの存在下で、4-クロロニトロベンゼンを4-フルオロニトロベンゼンにフッ素化するという方法は、がかなり面倒であり、大量の有毒物質に汚染されたKClが生成されるとともに、大量の浄化、焼却が必要であり、又は地下有害廃棄物処理施設で保存される必要がある。同様に、US5946638に記載のように、ステップ1において、クロロベンゼンの4-位のみが選択的にニトロ化され(収率96%)る。その後、不活性芳香族系は、本発明によれば、以下の反応式のように、選択的に4-フルオロ-ニトロベンゼンにフッ素化され得る。
【化9】
【0053】
最近の従来技術においても、4-ニトロフェニルフルオロ硫酸塩の分解により4-フルオロニトロベンゼンを生産する。この方法において、まず対応するフェノールとSO2F2とを反応させる必要がある(WO2017/192564を参照)。本発明の方法と比較して、当該従来技術の方法は、有利ではなく、且つ非常に面倒であり、標的分子に1つのF原子のみが残っているため、もっと大量のフッ素含有廃水が生成される。
【0054】
対応するF-アニリン、例えば、4-フルオロアニリンは、工業的に大きな意義があり、対応するフルオロニトロベンゼンから産生される。Catalysis Letters(2018),148(5),1336-1344及びGreen Chemistry (2018), 20 (5), 1121-1130に証明されたように、水素還元により4-ニトロアニリンから4-フルオロアニリンを定量産生するか、又はApplied Organometallic Chem-ettry(2018),32(1)に記載のようにNaBH4を用いて4-フルオロアニリンを産生する。しかし、工業には、通常Fe/HCl還元を使用する。
【0055】
4-フルオロアニリンは、例えば、ロシュのフルマゼニル、三菱化学の抗真菌薬であるフルオロイミド、バイエルの抗真菌薬であるビフェンピラミン、及びFMC/Kumiai/Syngentaの除草剤であるフルチアセットメチルの原料として使用できる。
【0056】
2,4-ジフルオロニトロベンゼン及び2,4-ジフルオロアニリンも工業的に大きな意義があり、例えば、バイエルクロップサイエンス/Adamaの除草剤であるピリドキサミド、Abbottのジフロキサシン、動物製剤、及び住友の除草剤であるプロピフルフェナミドの原料として使用できる。
【0057】
本発明によれば、例えばフッ素化工程は、工業的に入手可能なm-ジクロロベンゼンから次のように実施される。
【化10】
【0058】
最近の出版物にもジクロロニトロベンゼンから2,4-ジフルオロニトロベンゼンを定量製造することが開示されているが、その方法において、環境に優しくないHalex反応が使用される(Catalysis Today(2012),198(1),300-304,Tetrahedron(1995年),51(22),6363-76、EP635482及びWO98/05610)。
【0059】
本発明の製造によれば、第1段階でフッ素化し、その後ニトロ化する。
【化11】
【0060】
非創造的な第2段階であるm-ジフルオロベンゼンのニトロ化は、例えばNongyao(2005),44(1),13-15に記載されている。
【0061】
化合物2,3,4-トリフルオロニトロベンゼンは、特にいわゆるフルオキセチン(抗生物質)、例えば、ファイザーのBalofloxacin、ロシュのElsulfavirine及びバイエルのモキシフロキサシンに対して、ライフサイエンスにおけるもう1つの非常に重要な合成構造単位である。CN107325001(2017)には、環境に優しくないHalex反応による定量生産が開示されており、EP635482には、トリハロゲノニトロ前駆体が開示されている。
【0062】
本発明によれば、前記非催化Halex反応は、SbF
5/HFを用いて触媒的に行われる。
【化12】
【0063】
同様にCN107325001、広東華工(2009),36(3),20-22、及び精細化工中間体(2006),36(1),45-46には、本発明の反応によらず、1,2,3-トリクロロベンゼンのニトロ化により2,3,4-トリクロロニトロベンゼンを生産することが開示されている。CN106008143(2016)には、1,2,3-トリクロロベンゼン及び他のクロロベンゼンの新しい製造方法が記載されている。
【0064】
勿論、本発明によれば、まずトリクロロベンゼンをフッ素化し、次にニトロ化してもよい。US5091580及びJournal of Fluorine Chemistry(1991)には、Halex反応により一部のみがフッ素化されたベンゼンの混合物が開示されており、その収率は、工業的に適切でない。しかし、この従来技術の研究は、主要製品としてのトリフルオロベンゼンに焦点を合わせていなかった。
【化13】
【0065】
特に興味深い他の物質は、フルオロキノロンである。これらの物質は、例えば、CN107778160(2018)に記載のようにテトラフルオロフタル酸を原料として調製され、CN105693507(2016)に記載のように、テトラフルオロフタルアミドを原料として調製され、CN102627553(2012)に記載のように、2,3,4,5-テトラフルオロフタルヒドラジドを原料として調製され、Journal Fluorine Chemistry(1988),41(2),241-5に記載のように、1,1,3,3,4,5,6,7-オクタフルオロ-1,3-ジヒドロイソベンゾフランを原料として調製される。しかし、テトラクロロフタル酸の誘導体から全てのテトラフルオロフタル酸誘導体を製造することには、好ましくない且つ環境に優しくないいわゆる(非催化)Halex反応が必要がある。しかし、本発明によれば、本発明の特許請求の範囲及び明細書に記載のように、フッ素化は、超酸性アンチモン(Sb)触媒系を用いて実施される。
【化14】
【0066】
原料4,5,6,7-テトラクロロ-1,1,3,3-テトラフルオロ-フタル酸エステルは、通常高価なSF4を用いてテトラクロロ無水フタル酸から製造される(Journal of Fluorine Chemistry(1987),37(3),429-38)。EP741123に記載のように、N-アミノ-3,4,5,6-テトラクロロフタルイミドからテトラクロロフタル酸を生産する。EP578165に記載のように、オクタフルオロビスフタルイミドからテトラクロロフタル酸を生産する。又はCN106699539(2017)に記載のように、テトラクロロフタロニトリルからテトラクロロフタル酸を生産する。
【0067】
さらに、前記オクタフルオロビスフタルイミドは、EP510491の実施例2に従って調製され、Halex反応は69%である一方、本発明によれば、HFにおける超酸性アンチモン(Sb)によって置き換えられる。
【化15】
【0068】
CN107311869(2017)に記載のように、2,3,4-トリフルオロニトロベンゼンにとって、3,4,5-ニトロベンゼンもライフサイエンスの重要な中間体、例えば、BASFの抗真菌剤であるFluxopyroxadであり、従来技術において、依然としてHalex反応により生産され、或いは、GB2291871に記載の直接フッ素化/ニトロ化された混合物、又はCN106946659(2017)に記載のペンタフルオロアニリンから製造され、CN106673964(2017)においてペンタクロロベンゾニトリルから製造され、CN106673964(2017)においてフッ化テトラブチルアンモニウム(Bu4N+F-)から製造される。
【0069】
図1のスキームでさらに説明したように、前記反応は、いずれもマイクロリアクターを使用することができる。いくつかの実施形態において、回分式反応器中で行われ、或いは、プラグフロー又はマイクロリアクター中で連続的に(連続式で)行われる。SbVは、部分的にはSbIIIに還元され得るため、塩素又はフッ素であるハロゲンは、相分離器の下流のいかなるHF/触媒の再循環流にフィードされ得る(WO03/053580)。また、高度にフッ素化されたアンチモン(Sb)触媒と過剰なHFとの混合物は、非常に強い腐食性を有するため、本発明によれば、これらの反応は、SiC反応器またはHDPDFEが塗布された反応器中で行われるか、或いはSiC又はHDPDFEで裏付けられた反応器中で行われることが最も好ましい。一部のAl塗層にも正性抵抗がある。
【0070】
最終生成物が固体である場合、再結晶により精製することが好ましい。生成物が液体又は低融点固体である場合、蒸留により精製し、必要に応じて、いわゆる加熱コンデンサを有する固体蒸留により精製する。
【0071】
<反応器の詳細>
好ましい実施形態において、本発明に係る使用及び方法では、マイクロリアクターを用いる。しかし、本発明のより一般的な実施形態において、マイクロリアクターを用いる前記好ましい実施形態に加えて、例えば、上部横寸法が約1cmに達する連続流通反応器を用いてもよい。従って、上部横寸法が約5mm以下又は約4mm以下であるこのような管型連続流通反応器とは、本発明の好ましい実施形態、例えば、マイクロリアクターを指す。連続的に操作するSTRシリーズは、別の選択肢であるが、マイクロリアクターを使用することがより好ましい。
【0072】
本発明の前記実施形態において、例えば好ましくは、管型連続流通反応器の最小横寸法は約>5mmであってもよいが、通常約1cm以下である。従って、例えば、好ましくは、管型連続流通反応器の横寸法は、約>5mm-約1cmの範囲内、又はこの範囲内の任意の値であってもよい。例えば、例えば好ましくは管状連続流通反応器の横寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm、約10mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0073】
本発明の前記実施形態において、好ましくはマイクロリアクターを使用する。マイクロリアクターの最小横寸法は、約0.25mm以上、好ましくは約0.5mm以上であってもよいが、マイクロリアクターの最大横寸法は、約5mm以下である。従って、例えば、マイクロリアクターの横寸法の範囲は、約0.25mm-約5mmであってもよいが、好ましくは約0.5mm-約5mmであり、この範囲内の任意値であってもよい。例えば、マイクロリアクターの横寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約5mm、又は前記値の間の任意値であってもよい。
【0074】
上記のように、本発明の実施形態において、横寸法が約1cm以下の管型連続流通反応器を使用することが好ましい。このような連続流通反応器は、例えばプラグフロー式反応器(PFR)である。
【0075】
プラグフロー式反応器(PFR)は、連続管型反応器、CTR又はプラグフロー式反応器とも呼ばれ、是用于在連続的、流動的な円筒状システム中で化学反応を行う反応器である。PFR反応器モデルは、このように設計された化学反応器の挙動を予測するために用いられ、それにより、重要な反応器の変量、例えば、反応器のサイズを推測することができる。
【0076】
PFRを流れる流体は、一連の無限に薄い緊密な「プラグ(plug)」にモデル化されて反応器を流れることができる。前記プラグは、それぞれ均一な組成を有し、反応器において軸方向に沿って移動し、且つ各プラグは、前後のプラグと異なる組成を有する。主要な仮定は、流体がプラグフローにつれてPFRを経過して軸方向(前又は後)ではなく、径方向(即ち、横方向)において完璧に混合することである。
【0077】
従って、本明細書において、本発明で用いられる反応器タイプを定義するための用語、例えば「連続流通反応器」、「プラグフロー式反応器」、「管型反応器」、「連続流通反応器システム」、「プラグフロー式反応器システム」、「管型反応器システム」、「連続流通システム」、「プラグフローシステム」、「管型システム」は、互いに同義であり、交換することができる。
【0078】
反応器又はシステムは、複数のパイプとして配置することができ、(例えば)線状、環形、蛇状、環状、旋回管型又はそれらの組み合わせであってもよい。(例えば)旋回管型である場合、反応器又はシステムは、「旋回管型反応器」又は「旋回管型システム」とも呼ばれる。
【0079】
径方向、即ち横方向において、このような反応器又はシステムは、約1cm以下の内径又は内部断面サイズ(即ち、それぞれ縦寸法又は横寸法)を有する。従って、一実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約1cm、好ましくは約0.5mm-約1cm、より好ましくは約1mm-約1cmのであってもよい。
【0080】
さらなる実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約>5mm-約1cm又は約5.1mm-約1cmの範囲内であってもよい。
【0081】
横寸法が約5mm以下又は約4mm以下である場合、反応器は、「マイクロリアクター」と呼ばれる。さらなるマイクロリアクターの実施例において、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約5mm、好ましくは約0.5mm-約5mm、より好ましくは約1mm-約5mmの範囲であってもよい。或いは、反応器又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約4mm、好ましくは約0.5mm-約4mm、より好ましくは約1mm-約4mmの範囲であってもよい。
【0082】
反応物が固体である場合、不活性溶媒を使用することができる。従って、固体原料を使用する場合、前記固体原料を不活性溶媒に溶解する。適切な溶媒は、例えばアセトニトリル、又は過フッ素化若しくは部分フッ素化アルカン(例えば、ペンタフルオロブタン(365mfc))、線状又は環状の部分フッ素化または過フッ素化エーテル(如CF3-CH2-OCHF2(E245))、又はオクタフルオロテトラヒドロフランである。通常、利用可能な場合、または最初の合成後に、生成物自体も不活性溶媒として機能する。
【0083】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続流通反応器を使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は前記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続流通反応器を使用することが好ましい。この場合には、連続流通反応器は、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続流通反応器を使用する。用語「連続流通反応器」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、前記横寸法を有するプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を連続流通反応器として使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、前記横寸法を有する連続流通反応器、好ましくはプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器は、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい前記連続流通反応器、より好ましいプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0084】
本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0085】
本発明の好適な実施例では、本発明に係るマイクロリアクターを用いるが、マイクロリアクターに加えて又はそれの代わりに、それぞれプラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用してもよい。
【0086】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0087】
本発明において上部の横寸法が約4mm以下又は約4mm以下の連続流通反応器、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式反応器のチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0088】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0089】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続流通反応器であり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続流通反応器であり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用の反応器は、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0090】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiC反応器であり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0091】
例えば、本発明の実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがマイクロリアクター中で行われる方法によって目的を実現する。特に、本発明の好適な実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがSiCを含むか又はSiCで作製されたマイクロリアクター(「SiC-マイクロリアクター」)、或いは合金を含むか又は合金で作製されたマイクロリアクター、例えばHastelloy C中で行われる方法によって実現される。詳細は後述する。
【0092】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。このようなマイクロリアクターは、本発明に係るフッ素化生成物の好適な工業生産に特に適している。
【0093】
生産規模のフロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0094】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0095】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続流通反応器であり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiC反応器(熱膨張係数=4.1x10-6K-l)を得るための製造方法である。
【0096】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)反応器は、独特なフロー式反応器であり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式反応器の一般的なパラメーターは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)反応器の技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0097】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的な反応器サイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフロー反応器とのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメーターは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの反応器は、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、前記反応器上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0098】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。前記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。前記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。前記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5-約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0099】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0100】
本発明の別の実施例において、例えば、前記生産、好ましくは前記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0101】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0102】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社の反応器Plantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0103】
場合によっては、マイクロリアクターのガスケットがHDPTFE以外の材料で作られていると、多少の膨張のために短時間の操作ですぐに漏れみが生じる可能性があるため、HDPTFEガスケットは、マイクロリアクターの長い動作時間を確保し、セトラーや蒸留塔などの他の機器部品を使用する。
【0104】
例えば、工業フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて前記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。前記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、前記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0105】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0106】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0107】
本発明のフッ素化方法の詳細は、以下の通りである。
本発明の方法は、ハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒を使用する。ハロゲン化は、化合物又は物質に1つ又は複数のハロゲンを付加する化学反応である。ハロゲン化の経路及び化学量論は、有機基質の構造特徴、官能基及び特定のハロゲンに依存する。無機化合物(例えば金属)もハロゲン化することができる。フッ素化は、化合物又は物質に導入されるハロゲンがF(フッ素)であるハロゲン化である。ハロゲン化及び/又はフッ素化、及びこれらの反応に係るハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者に知られているものである。例えば、オレフィンにハロゲン(例えば塩素及び/又はフッ素)を付加することは、活性物質である中間ハロゲン塩イオンにより行われる。ここで、「ハロゲン塩イオン」は、有機化学において、ハロゲン原子を含む正電荷を持つ任意の塩化合物(イオン)を示し、例えば、本発明において、フッ素原子である。
【0108】
ハロゲン化触媒及び/又はフッ素化触媒は、当業者によく知られており、本発明において、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくものである。より好ましくはフッ素化触媒、特に、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒である。
【0109】
一実施形態において、本発明は、フッ素化生成物を製造するためのフッ素化方法に関する。少なくとも1つの前記連続フロー反応器、好ましくは、少なくとも1つのマイクロリアクターは、独立してSiC-連続フロー反応器、好ましくはSiC-マイクロリアクターである。
【0110】
他の実施形態において、本発明は、前記実施形態に記載のフッ素化方法、及び本発明のフッ素化生成物の製造方法に関する。前記触媒は、Sb、As、Bi、Al、Zn、Fe、Mg、Cr、Ru、Sn、Ti、Co、Ni、好ましくはSbに基づくハロゲン化触媒、好ましくはフッ素化触媒、より好ましくはフッ素化触媒である。フッ素化触媒は、活性物質H2F+SbF6
-を提供するSbフッ素化触媒からなる群より選択される。
【0111】
他の実施形態において、本発明は、前記実施形態に記載のフッ素化方法、及び本発明のフッ素化生成物の製造に関する。ハロゲン化触媒は、五塩化アンチモン及び/又は五フッ化アンチモンである。好ましくは、触媒は、五フッ化アンチモン(SbF5)であり、オートクレーブ中でSbCl5とHFとの反応により調製され、より好ましくは、過剰量のHFにおけるSbF5からなる。HFにおけるSbF5は、前記実施形態に記載の方法のフッ素化反応の前に活性物質H2F+SbF6
-を形成する。本発明は、本発明のフッ素化生成物の製造に関する。
【0112】
他の実施形態において、本発明は、前記実施形態に記載のフッ素化方法、及び本発明のフッ素化生成物の製造に関する。前記方法は、得られたフッ素化生成物を精製及び/又は分離し、本発明の精製及び/又は分離されたフッ素化生成物を得ることを含む。
【0113】
他の実施形態において、本発明は、前記実施形態に記載のフッ素化方法、及び本発明のフッ素化生成物の製造に関する。前記フッ素化生成物の精製及び/又は分離は、相分離法を含むか、又は相分離法から構成される。
【0114】
他の実施形態において、本発明は、前記実施形態に記載のフッ素化方法、及び本発明のフッ素化生成物の製造に関する。前記精製及び/又は分離は、蒸留を含まず、本発明の精製及び/又は分離されたフッ素化生成物を得る。
【0115】
本発明で用いられる反応器の詳細は以下の通りである。
【0116】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」とは、典型的な横寸法が約5mm以下又は約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0117】
マイクロリアクターは、マイクロプロセスの分野において、物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)と共に研究されている。前記マイクロリアクターは、通常連続流通反応器(回分式反応器に対して)をである。マイクロリアクターは、従来の規模の拡大反応器と比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になるなどの利点を有する。
【0118】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0119】
連続流通反応器(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管状であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、反応器の直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続流通反応器は、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。反応器内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、反応器体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=反応器体積/流速)。従って、比較的長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングする、及び/又は体積がより大きな反応器を使用することができる。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0120】
フロー式反応器の例には、回転ディスク反応器(ColinRamshaw)、回転管反応器、マルチセルフロー式反応器、振動流反応器、マイクロリアクター、熱交換反応器、吸引式反応器が含まれる。吸引式反応器において、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式反応器及び管型流通反応器がさらに含まれる。
【0121】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【0122】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続流通反応器を使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は前記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続流通反応器を使用することが好ましい。この場合には、連続流通反応器は、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続流通反応器を使用する。用語「連続流通反応器」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約5mm又は約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、前記横寸法を有するプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を連続流通反応器として使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、前記横寸法を有する連続流通反応器、好ましくはプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器は、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい前記連続流通反応器、より好ましいプラグフロー式反応器及び/又は管型流通反応器を使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0123】
本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、前記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続流通反応器を使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0124】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0125】
本発明において上部の横寸法がそれぞれ約5mm以下又は約4mm以下の連続流通反応器、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式反応器のチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0126】
プラグフロー式反応器又は管型流通反応器を使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0127】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続流通反応器であり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続流通反応器であり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用の反応器は、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0128】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiC反応器であり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0129】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。
【0130】
生産規模のフロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0131】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0132】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続流通反応器であり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式反応器に対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造された反応器は、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiC反応器(熱膨張係数=4.1x10-6K-l)を得るための製造方法である。
【0133】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)反応器は、独特なフロー式反応器であり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式反応器の一般的なパラメーターは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)反応器の技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0134】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的な反応器サイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフロー反応器とのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメーターは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの反応器は、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、前記反応器上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0135】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。前記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。前記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。前記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5-約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、前記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0136】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0137】
本発明の別の実施例において、例えば、前記生産、好ましくは前記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0138】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0139】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社の反応器Plantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0140】
例えば、工業フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて前記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。前記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、前記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0141】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0142】
工業用フロー式反応器(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0143】
以下、実施例にて本発明を説明するが、この実施例は本発明の範囲を制限しない。
【0144】
〔実施例〕
(実施例1)
回分式反応器(オートクレーブ)においてクロロベンゼンからフルオロベンゼンを製造する。
【化16】
<触媒の予備フッ素化>
Rothの250mlオートクレーブ(内側のライニングはHDPTFEで作製される)に36.78g(0.123mol)SbCl
5を入れた後、20倍モル過剰の無水HF(2.46mol、49.22g)を入れ、反応混合物を100℃で3時間保持した。当該方法により、アンチモンが結合した約95%の塩素原子はフッ素原子で置換されるため、オートクレーブには、約26.7g(0.123mol)のSbF
5を触媒として含む。
【0145】
<クロロベンゼンとの反応>
冷却後、オートクレーブ内の圧力を環境圧力まで低下させ、予備フッ素化触媒が入っているオートクレーブに49.22g(2.46mol)HF(窒素ガス(N2)が充填された1 kg HF圧力シリンダーに由来)を入れた。次いで、HPLC-ポンプ(HPLC=高圧液体クロマトグラフィー)により27.69g(0.246mol)クロロベンゼンをオートクレーブにゆっくり加えた。この過程において、放熱反応及び圧力の増加が観察された。次いで、オートクレーブの内部温度を60℃に継続して加熱し、3時間持続した後、得られた反応混合物を冷却し、オートクレーブの圧力を解放した後、反応混合物全体を慎重な加水分解により処理することにより、97%の目的のフルオロベンゼンを含む有機相を形成し、有機相を乾燥して精密蒸留し、純粋なフルオロベンゼンを得た。
【0146】
(実施例2)
マイクロリアクターにおいてフルオロベンゼンを連続して生産する。
マイクロリアクターを使用したこの手順の反応スキームを
図1に示します。この実施例2によるマイクロリアクターでのフルオロベンゼンの連続生産では、SiCマイクロリアクターが使用された。
【0147】
SbCl
5を出発原料として、実施例1の方法により500g(2.31mol)SbF
5をバッチ式で製造した。
図1に示される反応式のように、500gのSbF
5及び462.23g(23.1mol)の無水HFをHFタンクに入れた。用いられるマイクロリアクターは、SiCで作製された体積が27mlのChemtrixマイクロリアクター(Protrix)であった。
【0148】
注意:Hastelloyおよびステンレス鋼1.7571などのステンレス鋼製マイクロリアクターは、遅くとも1時間の操作後に腐食するため使用できない。また、腐食は触媒の求核性を低下させた(SbIIIの形成による強力な失活)ため、反応速度も低下する。
【0149】
別の貯蔵タンクはクロロベンゼンで満たされている。HClパージ(必要に応じて長時間の操作中に行われる)のために、サイクロンセパレータには、10barに設定された圧力保持バルブが設けられた。次いで、フッ素化反応の開始前に、SiCマイクロリアクターの温度を60℃に昇温した。
【0150】
次いで、体積が100ml/hのHF/触媒混合物を出発原料として、100ml/hの用量でクロロベンゼン(基質とHFとの比が約1:5.7である)を加えた。
【0151】
SiC-マイクロリアクターを出た反応混合物を体積が2lの相分離器に導入し、HF/触媒相に相分離し、有機相を分離した。反応系から有機相を取り出して分析し、残留フッ化物を除去するために、NaOH洗浄機中に入れた。洗浄機の有機相のGC-分析(GC=ガスクロマトグラフィー)では、収率が98%のフルオロベンゼン及び微量のジフルオロビフェニルが示された。より長期的な連続操作では、HF/触媒相(特定のSbIIIの含有量に依存する)は、HF/触媒相は再生のために少量のハロゲンで置き換えられ、HFタンクに戻された。連続運転中において、フルオロベンゼンの生成量と有機相による除去(HClパージによるHClにおけるHFの置換)に応じて、新鮮なHFをHFタンクに供給した。
【0152】
(実施例3)
<4-フルオロニトロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
クロロベンゼンの代わりに4-クロロニトロベンゼンを原料として使用する以外、実施例1と同様に実験を行った。4-フルオロニトロベンゼンの収率は97%であった。
【0153】
(実施例4)
<2,4-ジフルオロニトロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
クロロベンゼンの代わりに2,4-ジニトロクロロベンゼンを原料として使用する以外、実施例1と同様に実験を行った。2,4-ジフルオロニトロベンゼンの収率は96%であった。
【0154】
(実施例5)
<2,4-ジフルオロニトロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
クロロベンゼンの代わりに23.62g(0.123mol)2,4-ジクロロニトロベンゼンのみを原料として使用する以外、同じ量のHF/触媒を使用し、実施例1と同様に実験を行った。2,4-ジフルオロニトロベンゼンの収率は98%であった。
【0155】
(実施例6)
<1,3-ジフルオロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
【化17】
HF中の超酸性SbF
5の強い求核性は、ジクロロベンゼン、例えば、m-ジクロロベンゼンなどの電子不足系では特に顕著である。予備フッ素化触媒の調製は、オートクレーブ中でバッチ手順で実施例1と同様に実施される。次いで、冷却した後、オートクレーブ内の圧力を環境圧力まで解放し、予備フッ素化物触媒を含むオートクレーブに49.22g(2.46mol)のHF(窒素ガス(N
2)が充填された1kgのHF圧力シリンダーに由来)を加えた。次いで、HPLC-ポンプ(HPLC=高圧液体クロマトグラフィー)により27.69g(0.246mol)のクロロベンゼンをオートクレーブにゆっくりと加えた。この過程において、放熱反応及び圧力の増加が観察された。その後、HPLC-ポンプ(HPLC=高圧液体クロマトグラフィー)により18.1g(0.123mol)のm-ジクロロクロロベンゼンをオートクレーブオートクレーブにゆっくりと加えた。この過程において、放熱反応及び圧力の増加が観察された。次いで、オートクレーブの内部温度を60℃に継続して加熱し、3時間保持した後、得られた反応混合物を冷却し、オートクレーブの圧力を解放した後、反応混合物全体を慎重な加水分解により処理した。97%の目的の1,3-ジフルオロベンゼンを含む有機相を得た。有機相を乾燥して精密蒸留することで、純粋な1,3-ジフルオロベンゼンを得た。
【0156】
(実施例7)
<1,4-ジフルオロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
1,4-ジクロロベンゼンを出発原料として使用する以外、実施例6と同様に反応を行った。生成物1,4-ジフルオロベンゼンの収率は95%であった。
【0157】
(実施例8)
<トリフルオロニトロベンゼンの生産(オートクレーブ)>
上記と比較して、さらに低い電子収量系は、本発明によるフッ素化反応の出発物質としてのトリクロロニトロベンゼンである。
【化18】
【0158】
実施例1と同様に反応を行い、収率93%でトリフルオロニトロベンゼンを得た。
【0159】
(実施例9)から(実施例14)
<マイクロリアクターでの連続生産>
実施例2の方法と同様に、実施例3から8の実験をマイクロリアクターで連続的に行った。交換される各ハロゲン原子については、実施例2と同様に反応が行われたが、HFの量は2倍になった。
【0160】
使用される原料(出発原料)が固体である場合、液体計量のために、反応前に固体原料を少量のHFに加えた。
【0161】
ハロゲン化ベンゼンは、反応せずに無水HFに可溶である。
【0162】
なお、触媒がない場合においても、ベンゾトリハライド(トリクロロトルエンなど)は、HFと反応する。
【0163】
従って、実施例8において、100ml/hのトリクロロベンゼン(出発原料)の用量及び300ml/hのHF(+触媒)の用量で化合物を計量した。反応が不完全である可能性がある場合、両方の用量の割合、トリクロロニトロベンゼンの用量及びHF(+触媒)用量の必要に応じて、滞留時間(HF用量の相対的な増加によって短縮される)を再度延長することができる。
【0164】
マイクロリアクターによる収率は、いずれもオートクレーブよりも2-8%高かった。