(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】飛行時間(TOF)質量分析計用の2.5チャネル検出システム
(51)【国際特許分類】
H01J 49/02 20060101AFI20220816BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220816BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20220816BHJP
H01J 49/40 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01J49/02 500
G01N27/62 E
H01J49/00 360
H01J49/40
(21)【出願番号】P 2019549578
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 IB2018051317
(87)【国際公開番号】W WO2018167595
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-26
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シェルヌシェビッチ, イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ブルームフィールド, ニック ジー.
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-302622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0111597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/02
G01N 27/62
H01J 49/00
H01J 49/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行時間(TOF)質量分析器用の電気2チャネルイオン検出システムであって、
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートであって、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと、
2つ以上の区画化されたアノード電極板であって、前記2つ以上の区画化されたアノード電極板は、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと平行な平面内に配列され、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上の前記長方形パターンから前記放出された電子を受容するように、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの隣に位置付けられ、前記2つ以上の
区画化されたアノード電極
板はともに、前記長方形パターンから電子を受容するために十分に大きい面積を有し、
前記2つ以上の
区画化されたアノード電極
板は、前記長方形パターンの中心内側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側電極と、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側電極とを含む、2つ以上の区画化されたアノード電極板と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記1つ以上の内側電極によって受容される前記電子
の電子束の強度を第1のデジタル値に変換する前記1つ以上の内側電極に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記1つ以上の外側電極によって受容される前記電子
の電子束の強度を第2のデジタル値に変換する前記1つ以上の外側電極に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、電気2チャネルイオン検出システム。
【請求項2】
前記1つ以上の内側電極は、1つの内側電極を備える、請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
前記1つ以上の内側電極は、電気的に接続される2つの内側電極を備える、請求項1に記載の電気システム。
【請求項4】
前記1つ以上の外側電極は、電気的に接続される2つの電極を備え、前記2つの電極はそれぞれ、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積のうちの異なる面積から電子を受容する、請求項1に記載の電気システム。
【請求項5】
前記1つ以上の内側電極は、単一のディスク電極を備え、前記1つ以上の外側電極は、単一のリング電極を備え、前記ディスク電極および前記リング電極は、同心である、請求項1に記載の電気システム。
【請求項6】
前記2チャネルデジタイザは、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)である、請求項1に記載の電気システム。
【請求項7】
前記2チャネルデジタイザは、2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である、請求項1に記載の電気システム。
【請求項8】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルはさらに、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの曲率を考慮するように独立して較正される、請求項1に記載の電気システム。
【請求項9】
飛行時間質量分析計用の光電2チャネルイオン検出システムであって、
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートであって、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと、
シンチレータであって、前記シンチレータは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと平行に位置付けられ、かつ前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの隣に位置付けられ、前記シンチレータは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面から前記シンチレータの第1の側面上で前記長方形パターンにおいて前記放出された電子を受容し、前記電子を、前記シンチレータの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される光子に変換する、シンチレータと、
前記シンチレータの第2の側面から前記光子を受容するように前記シンチレータの第2の側面に接続される2つ以上の区画化された光パイプであって、前記2つ以上の
区画化された光パイプはともに、前記長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有し、
前記2つ以上の
区画化された光パイプは、前記長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側光パイプと、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側光パイプとを含む、2つ以上の区画化された光パイプと、
前記1つ以上の内側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第1の増倍した電子に変換する前記1つ以上の内側光パイプに接続される第1の光電子増倍管と、
前記1つ以上の外側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第2の増倍した電子に変換する前記1つ以上の外側光パイプに接続される第2の光電子増倍管と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記第1の増倍した電子
の電子束の強度を第1のデジタル値に変換する前記第1の光電子増倍管に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記第2の増倍した電子
の電子束の強度を第2のデジタル値に変換する前記第2の光電子増倍管に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、光電2チャネルイオン検出システム。
【請求項10】
前記1つ以上の内側光パイプは、1つの内側
光パイプを備える、請求項9に記載の光電システム。
【請求項11】
前記1つ以上の内側光パイプは、接続される2つの内側光パイプを備える、請求項9に記載の光電システム。
【請求項12】
前記1つ以上の外側光パイプは、接続される2つの光パイプを備え、前記2つの光パイプはそれぞれ、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積のうちの異なる面積から光子を受容する、請求項9に記載の光電システム。
【請求項13】
前記1つ以上の内側光パイプは、単一のディスク光パイプを備え、前記1つ以上の外側光パイプは、単一のリング光パイプを備え、前記ディスク光パイプおよび前記リング光パイプは、同心である、請求項9に記載の光電システム。
【請求項14】
前記2チャネルデジタイザは、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)または2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である、請求項9に記載の光電システム。
【請求項15】
飛行時間質量分析計用の平面光電2チャネルイオン検出システムであって、
磁場を生成するための磁石と、
電場を生成するように電圧源によってバイアイスをかけられるイオンに対して透過性である複数の伝導メッシュと、
平面イオン/電子変換器であって、前記平面イオン/電子変換器は、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記平面イオン/電子変換器の同一の第1の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、平面イオン/電子変換器と、
シンチレータであって、前記シンチレータは、前記平面イオン/電子変換器と隣り合わせで位置付けられ、前記シンチレータは、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面から
前記シンチレータの第1の側面上で前記長方形パターンにおいて前記放出された電子を受容し、前記電子を、前記シンチレータの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される光子に変換し、前記磁石および前記複数の伝導メッシュは、前記磁場および前記電場が、前記平面イオン/電子変換器から前記シンチレータまでの半円形の経路において前記放出された電子を送信するように、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面および前記シンチレータの第1の側面の前に前記磁場および前記電場を作成するように位置付けられる、シンチレータと、
前記シンチレータの第2の側面から前記光子を受容するように前記シンチレータの第2の側面に接続される2つ以上の区画化された光パイプであって、前記2つ以上の
区画化された光パイプはともに、前記長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有し、
前記2つ以上の
区画化された光パイプは、前記長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側光パイプと、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側光パイプとを含む、2つ以上の区画化された光パイプと、
前記1つ以上の内側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第1の増倍した電子に変換する前記1つ以上の内側光パイプに接続される第1の光電子増倍管と、
前記1つ以上の外側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第2の増倍した電子に変換する前記1つ以上の外側光パイプに接続される第2の光電子増倍管と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記第1の増倍した電子
の電子束の強度を第1のデジタル値に変換する前記第1の光電子増倍管に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記第2の増倍した電子
の電子束の強度を第2のデジタル値に変換する前記第2の光電子増倍管に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、平面光電2チャネルイオン検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年3月13日に出願された米国仮特許出願第62/470,486号の利益を主張するものであり、該米国仮特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本明細書の教示は、飛行時間(TOF)質量分析器または質量分析計用のイオン検出システムに関する。より具体的には、本明細書の教示は、電極または光パイプの新規の配列と、イオン検出システムが、ダイナミックレンジまたは分解能を犠牲にすることなく、イオンパケットの非一様な形状およびマイクロチャネルプレートの非一様な形状を考慮することを可能にする、2チャネルデジタイザとを含む、イオン検出システムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、いくつかの従来のTOF質量分析器は、4チャネルデジタイザを含む、イオン検出システムを使用する。4チャネルデジタイザは、例えば、時間/デジタル変換器(TDC)またはアナログ/デジタル変換器(ADC)のいずれかを含むことができる。マルチチャネルイオン検出システムは、2つの主要な利益、すなわち、チャネルの独立較正(チャネル整合としても公知である)を通した、向上したダイナミックレンジおよび改良された分解能を提供する。アナログ検出の使用は、原則として、ダイナミックレンジ側面からの複数のチャネルの必要性に取って代わることができ、また、ADCのより良好なタイミング分解能をもたらし得る。しかしながら、チャネル整合利益は、消滅するであろう。これは、イオンパケットまたは検出器自体のいずれかをタイル状にする種々の手段によって、部分的に補償されることができるが、分解能へのイオンパケット曲率の悪影響を除去しない。したがって、高価な4チャネルADCが、従来的に使用されている。
【0004】
しかしながら、残念ながら、4チャネルTDCまたはADCデジタイザは、TOF質量分析計の費用の10%近くを占め得る。結果として、より低い費用においてであるが、4チャネルシステムと同一のダイナミックレンジおよび分解能を提供し得る、マルチチャネルイオン検出システムの必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
2チャネル電気、光電、および平面光電TOFイオン検出システムが、提供される。これらのシステムは、より低い費用においてであるが、4チャネルシステムの分解能およびダイナミックレンジ利点を維持する。
【0006】
電気2チャネルイオン検出システムは、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート(MCP)と、2つ以上の区画化されたアノード電極板と、2チャネルデジタイザとを含む。一連の1つ以上のMCPは、第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突される。一連は、衝突を、第2の側面上で長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換する。各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って長方形パターンの長さに沿って異なる時間に第1の側面に衝突する。イオンパケットの凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0007】
2つ以上の区画化されたアノード電極板は、一連の1つ以上のMCPと平行な平面内に配列され、第2の側面上の長方形パターンから放出された電子を受容するように、一連の1つ以上のMCPの隣に位置付けられる。それらは、長方形パターンの中心内側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側電極と、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側電極とを含む。
【0008】
2チャネルデジタイザは、受容される電子を第1のデジタル値に変換する、1つ以上の内側電極に電気的に接続される第1のチャネルを含む。これは、受容される電子を第2のデジタル値に変換する、1つ以上の外側電極に電気的に接続される第2のチャネルを含む。第1のチャネルおよび第2のチャネルは、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状および/または一連の1つ以上のMCPの曲率を考慮するように独立して較正される。
【0009】
光電2チャネルイオン検出システムは、一連の1つ以上のMCPと、シンチレータと、2つ以上の区画化された光パイプと、第1の光電子増倍管(PMT)と、第2のPMTと、2チャネルデジタイザとを含む。
【0010】
一連の1つ以上のMCPは、第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突される。それらは、衝突を、第2の側面上で長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換する。各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って長方形パターンの長さに沿って異なる時間に第1の側面に衝突する。イオンパケットの凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0011】
シンチレータは、一連の1つ以上のMCPの隣に、かつそれと平行に位置付けられる。シンチレータは、一連の1つ以上のMCPの第2の側面から第1の側面上で長方形パターンにおいて放出された電子を受容する。シンチレータは、電子を、その第2の側面上で長方形パターンにおいて放出される光子に変換する。
【0012】
2つ以上の区画化された光パイプは、放出される光子を受容するようにシンチレータの第2の側面に接続される。それらは、長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側光パイプと、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側光パイプとを含む。
【0013】
第1のPMTは、1つ以上の内側光パイプに接続され、受容される光子をパケット毎に第1の増倍した電子に変換する。第2のPMTは、1つ以上の外側光パイプに接続され、受容される光子をパケット毎に第2の増倍した電子に変換する。
【0014】
2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する、第1のPMTに電気的に接続される第1のチャネルと、イオンパケット毎に第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する、第2のPMTに電気的に接続される第2のチャネルとを含む。第1のチャネルおよび第2のチャネルは、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状および/または一連の1つ以上のMCPの曲率を考慮するように独立して較正される。
【0015】
平面光電2チャネルイオン検出システムは、磁石と、イオンに対して透過性である複数の伝導メッシュと、平面イオン/電子変換器と、シンチレータと、2つ以上の区画化された光パイプと、第1の光電子増倍管(PMT)と、第2のPMTと、2チャネルデジタイザとを含む。
【0016】
磁石は、磁場を生成するために使用される。複数の伝導メッシュは、電場を生成するように電圧源によってバイアイスをかけられる。
【0017】
平面イオン/電子変換器は、第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突される。平面イオン/電子変換器は、衝突を、同一の第1の側面上で長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換する。各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って長方形パターンの長さに沿って異なる時間に第1の側面に衝突する。イオンパケットの凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0018】
シンチレータは、平面イオン/電子変換器と隣り合わせで位置付けられる。シンチレータは、平面イオン/電子変換器の第1の側面から第1の側面上で長方形パターンにおいて放出された電子を受容する。シンチレータは、電子を、その第2の側面上で長方形パターンにおいて放出される光子に変換する。磁石および複数の伝導メッシュは、磁場および電場が、平面イオン/電子変換器からシンチレータまでの半円形の経路において放出された電子を送信するように、平面イオン/電子変換器の第1の側面およびシンチレータの第1の側面の前に磁場および電場を作成するように位置付けられる。
【0019】
2つ以上の区画化された光パイプは、放出される光子を受容するようにシンチレータの第2の側面に接続される。それらは、長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側光パイプと、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側光パイプとを含む。
【0020】
第1のPMTは、1つ以上の内側光パイプに接続され、受容される光子を、パケット毎に第1の増倍した電子に変換する。第2のPMTは、1つ以上の外側光パイプに接続され、受容される光子を、パケット毎に第2の増倍した電子に変換する。
【0021】
2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する、第1のPMTに電気的に接続される第1のチャネルと、イオンパケット毎に第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する、第2のPMTに電気的に接続される第2のチャネルとを含む。第1のチャネルおよび第2のチャネルは、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状および/または一連の1つ以上のMCPの曲率を考慮するように独立して較正される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
飛行時間(TOF)質量分析器用の電気2チャネルイオン検出システムであって、
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートであって、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと、
2つ以上の区画化されたアノード電極板であって、前記2つ以上の区画化されたアノード電極板は、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと平行な平面内に配列され、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上の前記長方形パターンから前記放出された電子を受容するように、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの隣に位置付けられ、前記2つ以上の電極はともに、前記長方形パターンから電子を受容するために十分に大きい面積を有し、2つ以上の電極は、前記長方形パターンの中心内側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側電極と、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側電極とを含む、2つ以上の区画化されたアノード電極板と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記1つ以上の内側電極によって受容される前記電子を第1のデジタル値に変換する前記1つ以上の内側電極に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記1つ以上の外側電極によって受容される前記電子を第2のデジタル値に変換する前記1つ以上の外側電極に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、電気2チャネルイオン検出システム。
(項目2)
前記1つ以上の内側電極は、1つの内側電極を備える、項目1に記載の電気システム。
(項目3)
前記1つ以上の内側電極は、電気的に接続される2つの内側電極を備える、項目1に記載の電気システム。
(項目4)
前記1つ以上の外側電極は、電気的に接続される2つの電極を備え、前記2つの電極はそれぞれ、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積のうちの異なる面積から電子を受容する、項目1に記載の電気システム。
(項目5)
前記1つ以上の内側電極は、単一のディスク電極を備え、前記1つ以上の外側電極は、単一のリング電極を備え、前記ディスク電極および前記リング電極は、同心である、項目1に記載の電気システム。
(項目6)
前記2チャネルデジタイザは、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)である、項目1に記載の電気システム。
(項目7)
前記2チャネルデジタイザは、2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である、項目1に記載の電気システム。
(項目8)
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルはさらに、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの曲率を考慮するように独立して較正される、項目1に記載の電気システム。
(項目9)
飛行時間質量分析計用の光電2チャネルイオン検出システムであって、
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートであって、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと、
シンチレータであって、前記シンチレータは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートと平行に位置付けられ、かつ前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの隣に位置付けられ、前記シンチレータは、前記一連の1つ以上のマイクロチャネルプレートの第2の側面から前記シンチレータの第1の側面上で前記長方形パターンにおいて前記放出された電子を受容し、前記電子を、前記シンチレータの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される光子に変換する、シンチレータと、
前記シンチレータの第2の側面から前記光子を受容するように前記シンチレータの第2の側面に接続される2つ以上の区画化された光パイプであって、前記2つ以上のパイプはともに、前記長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有し、2つ以上の光パイプは、前記長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側光パイプと、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側光パイプとを含む、2つ以上の区画化された光パイプと、
前記1つ以上の内側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第1の増倍した電子に変換する前記1つ以上の内側光パイプに接続される第1の光電子増倍管と、
前記1つ以上の外側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第2の増倍した電子に変換する前記1つ以上の外側光パイプに接続される第2の光電子増倍管と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する前記第1の光電子増倍管に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する前記第2の光電子増倍管に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、光電2チャネルイオン検出システム。
(項目10)
前記1つ以上の内側光パイプは、1つの内側電極を備える、項目9に記載の光電システム。
(項目11)
前記1つ以上の内側光パイプは、接続される2つの内側光パイプを備える、項目9に記載の光電システム。
(項目12)
前記1つ以上の外側光パイプは、接続される2つの光パイプを備え、前記2つの光パイプはそれぞれ、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積のうちの異なる面積から光子を受容する、項目9に記載の光電システム。
(項目13)
前記1つ以上の内側光パイプは、単一のディスク光パイプを備え、前記1つ以上の外側光パイプは、単一のリング光パイプを備え、前記ディスク光パイプおよび前記リング光パイプは、同心である、項目9に記載の光電システム。
(項目14)
前記2チャネルデジタイザは、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)または2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である、項目9に記載の光電システム。
(項目15)
飛行時間質量分析計用の平面光電2チャネルイオン検出システムであって、
磁場を生成するための磁石と、
電場を生成するように電圧源によってバイアイスをかけられるイオンに対して透過性である複数の伝導メッシュと、
平面イオン/電子変換器であって、前記平面イオン/電子変換器は、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面上で長方形パターンにおいてイオンパケットによって衝突され、前記衝突を、前記平面イオン/電子変換器の同一の第1の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換し、前記長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、前記長方形パターンの短い方の辺は、幅であり、各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って前記長方形パターンの長さに沿って異なる時間に前記第1の側面に衝突し、各パケットのイオンは、前記長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、前記長方形パターンの中心内側面積に衝突する、平面イオン/電子変換器と、
シンチレータであって、前記シンチレータは、前記平面イオン/電子変換器と隣り合わせで位置付けられ、前記シンチレータは、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面からシンチレータの第1の側面上で前記長方形パターンにおいて前記放出された電子を受容し、前記電子を、前記シンチレータの第2の側面上で前記長方形パターンにおいて放出される光子に変換し、前記磁石および前記複数の伝導メッシュは、前記磁場および前記電場が、前記平面イオン/電子変換器から前記シンチレータまでの半円形の経路において前記放出された電子を送信するように、前記平面イオン/電子変換器の第1の側面および前記シンチレータの第1の側面の前に前記磁場および前記電場を作成するように位置付けられる、シンチレータと、
前記シンチレータの第2の側面から前記光子を受容するように前記シンチレータの第2の側面に接続される2つ以上の区画化された光パイプであって、前記2つ以上のパイプはともに、前記長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有し、2つ以上の光パイプは、前記長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の内側光パイプと、前記長方形パターンの各端部における前記2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる1つ以上の外側光パイプとを含む、2つ以上の区画化された光パイプと、
前記1つ以上の内側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第1の増倍した電子に変換する前記1つ以上の内側光パイプに接続される第1の光電子増倍管と、
前記1つ以上の外側光パイプによって受容される前記光子をパケット毎に第2の増倍した電子に変換する前記1つ以上の外側光パイプに接続される第2の光電子増倍管と、
2チャネルデジタイザであって、前記2チャネルデジタイザは、イオンパケット毎に前記第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する前記第1の光電子増倍管に電気的に接続される第1のチャネルと、パケット毎に前記第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する前記第2の光電子増倍管に電気的に接続される第2のチャネルとを含み、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルは、前記第1のデジタル値および前記第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットの前記イオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される、2チャネルデジタイザと
を備える、平面光電2チャネルイオン検出システム。
【0022】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
当業者は、後述の図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、本教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
【0024】
【
図1】
図1は、TOFイオン検出システムのマイクロチャネルプレート(MCP)に衝突する直前に、理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、飛行時間(TOF)イオン検出システムの側面図である。
【0025】
【
図2】
図2は、TOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、理想的形状および非理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面図である。
【0026】
【
図3】
図3は、TOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、非理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面図である。
【0027】
【
図4】
図4は、同様に非理想的形状を有するTOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、非理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面図である。
【0028】
【
図5】
図5は、非理想的形状をそれぞれ有する例示的イオンパケットのデジタル化信号が、分解能を改良するように4つの電極および4チャネルデジタイザを使用して取得される方法を示す、TOFイオン検出システムの側面図である。
【0029】
【
図6】
図6は、イオンパケットが長方形パターンにおいてMCPに衝突することを示す、
図5のMCPの衝突側の正面図である。
【0030】
【0031】
【
図8】
図8は、
図5の4チャネルデジタイザの4つのチャネルからの測定が、イオンパケットの非理想的形状を補償し、イオン検出システムの全体的分解能を改良するように整合される、または組み合わせられる方法を示す、例示的な一連のタイミング図である。
【0032】
【
図9】
図9は、重複する例示的イオンパケットを伴う、
図5に示されるものと同一のTOFイオン検出システムの側面図である。
【0033】
【
図10】
図10は、
図9の4チャネルデジタイザの4つのチャネルからの測定が、イオンパケットが重複するときでさえも、イオンパケットの非理想的形状を補償し、イオン検出システムの全体的分解能を改良するように整合される、または組み合わせられる方法を示す、例示的な一連のタイミング図である。
【0034】
【
図11】
図11は、種々の実施形態による、3つの電極が電気的に接続され、電極の2つのみのセットを生成し、放出された電子の長方形パターンの内側および外側部分を検出するために使用され得る方法を示す、3つの区画化されたアノード電極板の正面図である。
【0035】
【
図12】
図12は、種々の実施形態による、2つだけの電極が、放出された電子の長方形パターンの内側および外側部分を検出するように構成され得る方法を示す、2つの区画化されたアノード電極板の正面図である。
【0036】
【
図13】
図13は、種々の実施形態による、TOF質量分析器用の電気2チャネルイオン検出システムの側面図である。
【0037】
【
図14】
図14は、種々の実施形態による、TOF質量分析器用の光電2チャネルイオン検出システムの側面図である。
【0038】
【
図15】
図15は、種々の実施形態による、TOF質量分析器用の平面イオン/電子光電2チャネルイオン検出システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本教示の1つ以上の実施形態が詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、その用途において、以下の詳細な説明に記載される、または図面に図示される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであって、限定的と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0040】
(2チャネルイオン検出システム)
上記で説明されるように、いくつかの従来の飛行時間(TOF)質量分析器は、4チャネルデジタイザを含む、イオン検出システムを使用する。4チャネルデジタイザは、例えば、時間/デジタル変換器(TDC)またはアナログ/デジタル変換器(ADC)のいずれかを含むことができる。マルチチャネルイオン検出システムは、2つの主要な利益、すなわち、チャネルの独立較正(チャネル整合としても公知である)を通した、向上したダイナミックレンジおよび改良された分解能を提供する。
【0041】
しかしながら、残念ながら、4チャネルTDCまたはADCデジタイザは、高価であり、TOF質量分析計の費用の10%近くを占め得る。結果として、より低い費用においてであるが、4チャネルシステムと同一または類似のダイナミックレンジおよび分解能を提供し得る、マルチチャネルイオン検出システムの必要性がある。
【0042】
当業者は、用語「質量分析器」および「質量分析計」が同義的に使用され得ることを理解することができる。概して、質量分析器は、質量分析計の1つ以上の段階におけるデバイスを指す。換言すると、質量分析器は、典型的には、質量分析計の1つの構成要素にすぎない。しかしながら、業界の慣行では、その質量分析器の観点から質量分析計全体を指すことが一般的である。例えば、TOF質量分析器を含む質量分析計は、多くの場合、TOF質量分析器が1つの構成要素にすぎなくても、TOF質量分析計と称される。
(分解能およびチャネル整合)
【0043】
マルチチャネルイオン検出システムの利益のうちの1つは、チャネル整合と呼ばれる、チャネルの独立較正を通した改良された分解能である。チャネル整合は、イオンパケットが検出器に衝突するときに成形される、非理想的な方法に起因して必要とされる。
【0044】
図1は、TOFイオン検出システムのマイクロチャネルプレート(MCP)に衝突する直前に、理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面
図100である。MCPは、MCPの一方の側面上のイオン衝突を、MCPの対応する他方の側面上の電子放出に変換する、デバイスである。典型的には、MCPは、イオン衝突毎に多くの電子を生成する。結果として、MCPは、イオン衝突の増倍器または増幅器として作用する。本増幅効果に起因して、複数のMCPもまた、イオン衝突の増幅を増加させるために直列に使用されることができる。
【0045】
イオンパケット101および102の形状は、それらがMCP110と本質的に同一の平坦な形状であるため、
図1のMCP110に対して理想的である。換言すると、本形状に起因して、イオンパケット101のイオンの全ては、同時にMCP110に衝打し、イオンパケット102のイオンの全てもまた、同時にMCP110に衝打するであろう。
【0046】
イオンパケット101および102の配向は、それらがMCP110と略平行であるため、MCP110に対して理想的である。再度、本配向は、イオンパケット101のイオンの全てが同時にMCP110に衝打し、イオンパケット102のイオンの全てが同時にMCP110に衝打することを可能にする。
【0047】
イオンパケットの形状および配向は、それらがTOFイオン検出システムの分解能に影響を及ぼすため、重要である。TOFイオン検出システムでは、分解能は、本質的に、イオンパケットの間の距離が測定され得る程度を指す。換言すると、最高分解能は、2つのイオンパケットが依然として分解され得る、これら2つの異なるイオンパケットの間の最小距離であろう。
【0048】
図1のイオンパケット101および102の理想的形状および理想的配向は、非常に高い分解能を可能にする。本形状および配向を伴うイオンパケットは、それらがイオンパケット101および102よりもはるかに近く設置されても、分解されることができる。しかしながら、非理想的形状および非理想的配向を伴うイオンパケットは、2つのイオンパケットが依然として分解され得る、これら2つの異なるイオンパケットの間の最小距離を増加させることによって、分解能を劣化させ得る。
【0049】
図2は、TOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、理想的形状および非理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面
図200である。
図2では、イオンパケット201および202は、MCP110に対して、ある角度において配向される、または傾転される。イオンビーム内のイオンパケット201および202の本傾転は、分解能の減少を引き起こす。
【0050】
本分解能の減少は、イオンパケット201および202が、ともにより近く設置され、依然として、MCP110において区別され得るかどうかを決定することによって、見られ得る。イオンパケット201がイオンパケット202により近く設置される場合、その前縁は、即時にイオンパケット202の後縁に重複し始める。これらの縁が重複する場合、イオンパケットは、MCP110において区別されることができない。これは、イオンパケット201および202がともにはるかに近く設置されることができないことを意味する。したがって、
図1および2の比較は、非理想的配向が分解能を劣化させ得る方法を示す。
【0051】
実践では、TOF質量分析器が傾転または非理想的配向を伴うイオンパケットを生成することが一般的である。しかしながら、幸いにも、本問題の従来の改善措置が存在する。傾転パケットを補償するために、MCPは、それに対応して、傾転または非理想的配向を伴うイオンパケットを考慮するように、較正ステップで傾転されることができる。非理想的イオンパケット形状もまた、分解能を劣化させ得る。
【0052】
図3は、TOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、非理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面
図300である。
図3では、イオンパケット301および302は、MCP110に対する弓形ソーセージまたは凸形状を有する。イオンパケット301の長さ311は、約40mmであり、イオンパケット301の凸性312の深度は、例えば、1mmよりもはるかに少ない。TOF質量分析器内のイオンパケット301および302の凸形状は、一般的である。
【0053】
本凸形状は、イオン検出システムの分解能を低減させる。
図2のイオンパケット201および202のように、
図3のイオンパケット301および302は、
図3に示されるよりもはるかに近い場合に、MCP110において分解されることができない。これは、例えば、イオンパケット301および302がともに任意により近く設置される場合に、イオンパケット302の2つの後縁が、イオンパケット301の前縁と重複するであろうためである。イオンパケットのように、MCPもまた、非理想的形状を有することができる。実践では、MCPは、多くの場合、凸形状を有する。
【0054】
図4は、同様に非理想的形状を有するTOFイオン検出システムのMCPに衝突する直前に、非理想的形状および理想的配向をそれぞれ有する、例示的イオンパケットを示す、TOFイオン検出システムの側面
図400である。
図4では、MCP210は、多くの場合、実践で見られる、凸形状を有する。MCPの任意の凸性もまた、イオン検出システムの分解能に影響を及ぼすであろう。
【0055】
イオンパケット310および320もまた、凸形状を有するが、MCPおよびイオンパケットで見られる凸性の量は、典型的には、対応しない。結果として、両方が、多くの場合、分解能を改良するために考慮される必要がある。
(4チャネルデジタイザ)
【0056】
従来のTOFイオン検出システムは、4つの電極および4チャネルデジタイザを使用することによって、イオンパケットの凸形状およびMCPの凸形状によって引き起こされる、分解能の損失を補償してきた。
【0057】
図5は、非理想的形状をそれぞれ有する例示的イオンパケットのデジタル化信号が、分解能を改良するように4つの電極および4チャネルデジタイザを使用して取得される方法を示す、TOFイオン検出システムの側面
図500である。
図5では、直列に位置付けられる2つのMCP510が、凸形状を有するイオンパケット301および302によって衝突される。MCP510によって生成される増倍した電子は、4つの区画化されたアノード電極板521、522、523、および524によって収集される。アノード電極板521、522、523、および524はそれぞれ、4チャネルデジタイザ530の別個のチャネルに電気的に接続される。
【0058】
4チャネルデジタイザ530は、例えば、ADCまたはTDCである。アノード電極板521、522、523、および524はそれぞれ、また、例えば、4チャネル前置増幅器(図示せず)を通して、4チャネルデジタイザ530に電気的に接続されることもできる。4チャネル前置増幅器は、電極板から受信される電気信号を増幅する。
【0059】
MCP510は、本質的に、一方の側面上のイオン衝突画像を、他方の側面上の対応する電子放出画像に変換する。イオンパケット301および302は、凸形状を有するが、MCP510のいずれか一方の側面上のそれらの画像は、長方形パターンまたは形状を有する。
【0060】
図6は、イオンパケットが長方形パターンにおいてMCPに衝突することを示す、
図5のMCPの衝突側の正面
図600である。
図6では、
図5のMCP510の側面511は、長方形パターンまたは画像305において
図5のイオンパケット301および302によって衝突される。
図5のイオンパケット301および302が凸形状を有するため、各パケットのイオンは、最初に、
図6の長方形パターン305の中心または内側部分に衝突する。後の時間に、各パケットのイオンは、長方形パターン305の外側の2つの縁に衝突する。典型的には、長方形パターン305は、約10mmの幅307と、約40mmの長さ309とを有する。電子は、長方形パターン305と同一の長方形パターンにおいて
図5のMCP510の他方の側面から放出される。
【0061】
図7は、
図5の4つの電極の正面
図700である。
図7は、4つの区画化されたアノード電極板521、522、523、および524が、例えば、円形MCPからのイオンを検出するように位置付けられることを示す。電子は、電子の対応する長方形パターン305を生成するMCPを使用して、電極521、522、523、および524上に放出される。
【0062】
アノード電極板521、522、523、および524はそれぞれ、経時的に長方形パターン305の異なる部分を検出することができる。長方形パターンが幅よりもはるかに長いため、長方形パターンが長方形パターンの長さに沿って最も凸状であることに留意されたい。経時的に長方形パターン305の異なる部分を検出することによって、各イオンパケットの凸形状が検出される。
【0063】
図5に戻ると、4チャネルデジタイザ530の4つのチャネル531、532、533、および534は、異なる時間における異なるチャネルからの測定を組み合わせ、または整合させ、イオンパケットの縦凸性を考慮するように較正される。
【0064】
図8は、
図5の4チャネルデジタイザの4つのチャネルからの測定が、イオンパケットの非理想的形状を補償し、イオン検出システムの全体的分解能を改良するように整合される、または組み合わせられる方法を示す、例示的な一連のタイミング
図800である。タイミング図はそれぞれ、時間の関数としての電子束の強度のプロットである。
【0065】
図8では、タイミング
図831は、
図5の4チャネルデジタイザ530のチャネル531内で測定される、それぞれ、
図5のイオンパケット302および301に関する強度812および811を示す。
図8のタイミング
図832は、
図5の4チャネルデジタイザ530のチャネル532内で測定される、それぞれ、
図5のイオンパケット302および301に関する強度822および821を示す。
図8のタイミング
図833は、
図5の4チャネルデジタイザ530のチャネル533内で測定される、それぞれ、
図5のイオンパケット302および301に関する強度832および831を示す。最後に、
図8のタイミング
図834は、
図5の4チャネルデジタイザ530のチャネル534内で測定される、それぞれ、
図5のイオンパケット302および301に関する強度842および841を示す。
【0066】
図8のタイミング
図850では、タイミング
図831、832、833、および834内で測定される強度が、組み合わせられる。例えば、これらの値は、略
図850内で合計される。これは、
図5のイオンパケット302および301毎に2つの強度ピーク、すなわち、
図5の2つの内側電極板522および523からの測定の組み合わせであるもの、および
図5の2つの外側電極板521および524からの測定の組み合わせであるものをもたらす。例えば、
図8のタイミング
図850では、ピーク851および852は、
図5のイオンパケット302から測定される2つの強度ピークであり、ピーク853および854は、
図5のイオンパケット301から測定される2つの強度ピークである。
【0067】
図5では、イオンパケットの凸形状に起因して、電極522および523におけるイオンパケットの中心または内側イオンの検出と、電極521および524におけるイオンパケットの外側イオンの検出との間の時間差が、Δt501であることに留意されたい。
図8では、これは、ピーク851および852の中心の間の差としてのΔt501、ピーク853および854の中心の間の差としてのΔt502である。イオンパケットの凸形状によって生成される本時間差Δt501またはΔt502は、検出分解能を減少させる。これは、2つの異なるパケットに関して測定され得る強度の間の空間を減少させることによって、検出分解能を減少させる。換言すると、タイミング
図850に示されるように、単一のイオンパケットの強度がイオンパケットの凸形状に起因して経時的に拡散されるため、分解能が低減される。
【0068】
しかしながら、複数のチャネルがイオンパケットの凸形状の異なる部分を測定するために使用されるため、強度の拡散を補償することが可能である。これは、タイミング
図860に示される。本質的に、
図5のイオンパケット302に関するピーク851および852は、ピーク861に組み合わせられ、
図5のイオンパケット302に関するピーク853および854は、
図8のタイミング
図860内のピーク862に組み合わせられる。換言すると、
図5のデジタイザ530は、チャネル531および534の強度をチャネル532および533の強度と整合させるように較正される。本較正は、例えば、mが、質量であり、aが、傾斜であり、tが、時間であり、t
0が、時間オフセットである、較正方程式m=a×(t-t
0)
2を使用して、行われる。いったん較正されると、4つ全てのチャネルの強度が、組み合わせられる。
【0069】
図8のタイミング
図860は、分解能が復元されていることを示す。換言すると、異なるパケットのピーク(861および862)の間の間隔が、増加されている。これは、
図5のイオンパケットが重複している場合に、より明確に示されることができる。
【0070】
図9は、重複する例示的イオンパケットを伴う、
図5に示されるものと同一のTOFイオン検出システムの側面
図900である。
図9では、イオンパケット901の前縁が、イオンパケット902の後縁と重複する。1つだけの電極および1つのデジタル化チャネルが使用された場合、イオンパケット901および902は、区別されることができない。しかしながら、分離された電極および4チャネルデジタイザを使用することによって、パケット901および902は、区別されることができる。
【0071】
図10は、
図9の4チャネルデジタイザの4つのチャネルからの測定が、イオンパケットが重複するときでさえも、イオンパケットの非理想的形状を補償し、イオン検出システムの全体的分解能を改良するように整合される、または組み合わせられる方法を示す、例示的な一連のタイミング
図1000である。
図10では、タイミング
図1031は、
図9の4チャネルデジタイザ530のチャネル531内で測定される、それぞれ、
図9のイオンパケット902および901に関する強度1012および1011を示す。
図10のタイミング
図1032は、
図9の4チャネルデジタイザ530のチャネル532内で測定される、それぞれ、
図9のイオンパケット902および901に関する強度1022および1021を示す。
図10のタイミング
図1033は、
図9の4チャネルデジタイザ530のチャネル533内で測定される、それぞれ、
図9のイオンパケット902および901に関する強度1032および1031を示す。最後に、
図10のタイミング
図1034は、
図9の4チャネルデジタイザ530のチャネル534内で測定される、それぞれ、
図9のイオンパケット902および901に関する強度1042および1041を示す。
【0072】
図10のタイミング
図1050では、タイミング
図1031、1032、1033、および1034内で測定される強度が、組み合わせられる。これは、
図9のイオンパケット902および901毎に2つの強度ピーク、すなわち、
図9の2つの内側電極板522および523からの測定の組み合わせであるもの、および
図9の2つの外側電極板521および524からの測定の組み合わせであるものをもたらす。例えば、
図10のタイミング
図1050では、ピーク1051および1052は、
図9のイオンパケット902から測定される2つの強度ピークであり、ピーク1053および1054は、
図5のイオンパケット901から測定される2つの強度ピークである。
【0073】
図10では、
図9のイオンパケット902のピーク1052が
図9のイオンパケット901のピーク1053と重複することに留意されたい。これは、
図9のイオンパケットの凸形状によって引き起こされる重複が分解能を低減させることを示す。
【0074】
しかしながら、複数のチャネルがイオンパケットの凸形状の異なる部分を測定するために使用されるため、本重複を補償することが可能である。これは、タイミング
図1060に示される。本質的に、
図9のイオンパケット902に関するピーク1051および1052は、ピーク1061に組み合わせられ、
図9のイオンパケット902に関するピーク1053および1054は、
図10のタイミング
図1060内のピーク1062に組み合わせられる。これは、例えば、チャネル532および533上のピーク位置に合致するようにチャネル531および534を再較正することによって行われる。いったん較正されると、4つ全てのチャネルの強度が、組み合わせられ、重複が、排除される。
(2チャネルデジタイザ)
【0075】
しかしながら、上記で説明されるように、4チャネルTDCまたはADCデジタイザは、高価であり、TOF質量分析計の費用の10%近くを占め得る。種々の実施形態では、2チャネルデジタイザが、TOF質量分析計の費用を削減するために代わりに使用される。
【0076】
イオンパケットおよびMCPの凸性の対称性質に起因して、2チャネルデジタイザを使用することが可能である。
図8に示されるように、外側チャネルに関するタイミング
図831および834は、類似する時間において強度を測定している。同様に、内側チャネルに関するタイミング
図832および833もまた、類似する時間において強度を測定している。
【0077】
結果として、種々の実施形態では、2チャネルデジタイザを使用して、電極の2つのみのセットから強度を測定することが可能である。例えば、
図7では、外側電極521および524は、電気的に接続されることができ、内側電極521および524は、電気的に接続されることができ、電極の2つのみのセットを生成する。電極のこれらのセットはそれぞれ、次いで、2チャネルデジタイザのチャネルに接続されることができる。同様に、
図7の内側電極521および524は、単一の内側電極に組み合わせられることができる。
【0078】
図11は、種々の実施形態による、3つの電極が電気的に接続され、電極の2つのみのセットを生成し、放出された電子の長方形パターンの内側および外側部分を検出するために使用され得る方法を示す、3つの区画化されたアノード電極板の正面
図1100である。
図11では、外側電極板1121および1123が、電気的に接続され、電極の第1のセットを生成する。単一の電極板1122は、電極の第2のセットを提供する。結果として、電極板1121および1123は、2チャネルデジタイザの第1のチャネルに電気的に接続され、電極板1122は、2チャネルデジタイザの第2のチャネルに電気的に接続される。
【0079】
本構成では、外側電極板1121および1123は、MCPから放出された電子305の長方形パターンの外側部分を検出する。同様に、単一の電極板1122は、MCPから放出された電子305の長方形パターンの内側部分を検出する。
【0080】
また、各セットが1つの電極のみを含む、電極の2つのセットを有することも可能である。本質的に、内側または中心電極は、外側リング電極によって囲繞されることができる。そのような構成は、円形であり得る。しかしながら、ほぼあらゆる他の形状も可能である。例えば、中心長方形は、長方形リングによって囲繞されることができる。
【0081】
図12は、種々の実施形態による、2つだけの電極が、放出された電子の長方形パターンの内側および外側部分を検出するように構成され得る方法を示す、2つの区画化されたアノード電極板の正面
図1200である。
図12では、外側リング電極板1221は、2チャネルデジタイザの第1のチャネルに電気的に接続される。内側ディスク電極板1222は、2チャネルデジタイザの第2のチャネルに電気的に接続される。
【0082】
本構成では、外側リング電極板1221は、MCPから放出された電子305の長方形パターンの外側部分を検出する。同様に、内側ディスク電極板1222は、MCPから放出された電子305の長方形パターンの内側部分を検出する。
(2チャネルデジタイザダイナミックレンジ)
【0083】
上記で説明されるように、4チャネルデジタイザの1つの利点は、高いダイナミックレンジである。ダイナミックレンジは、デジタイザが測定することができる、最大値および最小値の比である。例えば、4チャネル10ビットADCは、4×210または4,096のダイナミックレンジを有する。
【0084】
4チャネルデジタイザを2チャネルデジタイザと置換することは、ダイナミックレンジを2分の1に縮小するであろう。しかしながら、ダイナミックレンジは、2チャネルデジタイザのビット数を増加させることによって、再捕捉されることができる。例えば、14ビット2チャネルADCが、使用されることができる。この場合、ダイナミックレンジは、2×214または32,768値である。結果として、チャネルの数を減少させることによって失われるダイナミックレンジは、回復されることができるだけではなく、使用されるビット数を増加させることによって、増加されることもできる。
(2チャネル電気イオン検出システム)
【0085】
図13は、種々の実施形態による、飛行時間(TOF)質量分析器用の電気2チャネルイオン検出システムの側面
図1300である。電気2チャネルイオン検出システムは、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310と、2つ以上の区画化されたアノード電極板1321、1322、および1323と、2チャネルデジタイザ1330とを含む。
【0086】
種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1330は、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)である。種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1330は、2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である。さらに、種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1330は、その2つのチャネル毎に前置増幅器を含むことができる。
【0087】
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310のうちの第1のプレートは、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310の第1の側面1311上で長方形パターンにおいてイオンパケット1301および1302によって衝突される。一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310は、衝突を、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310の第2の側面1312上で長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換する。長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、長方形パターンの短い方の辺は、幅である。各イオンパケットのイオンは、凸形状に従って長方形パターンの長さに沿って異なる時間に第1の側面1311に衝突する。イオンパケット1301および1302の凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0088】
2つ以上の区画化されたアノード電極板1321、1322、および1323は、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310と平行な平面内に配列される。2つ以上の電極1321、1322、および1323は、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310の第2の側面1312上の長方形パターンから放出された電子を受容するように、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310の隣に位置付けられる。2つ以上の電極1321、1322、および1323はともに、長方形パターンから電子を受容するために十分に大きい面積を有する。
【0089】
2つ以上の電極1321、1322、および1323は、長方形パターンの中心内側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側電極1322を含む。2つ以上の電極1321、1322、および1323は、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から放出された電子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側電極1321および1323を含む。
【0090】
種々の実施形態では、1つ以上の内側電極は、
図11に示されるように、1つの内側電極を含む。種々の実施形態では、1つ以上の内側電極は、電気的に接続される2つの内側電極(図示せず)を含む。
【0091】
種々の実施形態では、1つ以上の外側電極は、
図11に示されるように、電気的に接続される2つの電極を備え、2つの電極はそれぞれ、長方形パターンの各端部における2つの外側面積のうちの異なる面積から電子を受容する。
【0092】
種々の実施形態では、1つ以上の内側電極は、単一のディスク電極を含み、1つ以上の外側電極は、単一のリング電極を含み、ディスク電極およびリング電極は、
図12に示されるように、同心である。
【0093】
図13に戻ると、2チャネルデジタイザ1330は、1つ以上の内側電極1322に電気的に接続される第1のチャネル1331を含む。2チャネルデジタイザ1330は、イオンパケット毎に1つ以上の内側電極1322によって受容される電子を第1のデジタル値に変換する。
【0094】
2チャネルデジタイザ1330は、1つ以上の外側電極1321および1323に電気的に接続される第2のチャネル1332を含む。2チャネルデジタイザ1330は、パケット毎に1つ以上の外側電極1321および1323によって受容される電子を第2のデジタル値に変換する。
【0095】
第1のチャネル1331および第2のチャネル1332は、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される。
【0096】
種々の実施形態では、第1のチャネル1331および第2のチャネル1332はさらに、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1310の曲率を考慮するように独立して較正される。
(2チャネル光電イオン検出システム)
【0097】
種々の実施形態では、TOF質量分析器用の2チャネルイオン検出システムは、一連の1つ以上のMCPによって生成される電子を検出するための光学構成要素を含むことができる。本質的に、これらの光学構成要素は、上記に説明される電気システムの区画化されたアノード電極板に取って代わる。結果として、上記に説明される電極の構成の全てはまた、光電システムの光学構成要素または光パイプにも適用される。
【0098】
図14は、種々の実施形態による、TOF質量分析器用の光電2チャネルイオン検出システムの側面
図1400である。光電2チャネルイオン検出システムは、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410と、シンチレータ1420と、2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434と、第1の光電子増倍管(PMT)1441と、第2のPMT1442と、2チャネルデジタイザ1450とを含む。
【0099】
種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1450は、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)である。種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1450は、2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である。
【0100】
一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410のうちの第1のものは、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の第1の側面1411上で長方形パターンにおいてイオンパケット1401によって衝突される。一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410は、衝突を、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の第2の側面1412上で長方形パターンにおいて放出される増倍した電子に変換する。長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、長方形パターンの短い方の辺は、幅である。例えば、イオンパケット1401の凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0101】
シンチレータ1420は、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410と平行に、かつ一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の隣に位置付けられる。シンチレータ1420は、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の第2の側面1412からシンチレータ1420の第1の側面1421上で長方形パターンにおいて放出された電子を受容する。シンチレータ1420は、電子を、シンチレータ1420の第2の側面1422上で長方形パターンにおいて放出される光子に変換する。
【0102】
2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434は、シンチレータ1420の第2の側面1422から光子を受容するようにシンチレータ1420の第2の側面1422に接続される。2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434はともに、長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有する。2つ以上の光パイプ1431、1432、1433、および1434は、長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側光パイプ1432および1433を含む。2つ以上の光パイプ1431、1432、1433、および1434は、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側光パイプ1431および1434を含む。
【0103】
種々の実施形態では、1つ以上の内側光パイプは、
図11の1つの電極に類似する、1つの光パイプを含む。種々の実施形態では、1つ以上の光パイプは、
図14に示されるように、接続される2つの内側光パイプを含む。
【0104】
種々の実施形態では、1つ以上の外側光パイプは、接続される2つの光パイプを含み、2つの光パイプはそれぞれ、
図14に示されるように、長方形パターンの各端部における2つの外側面積のうちの異なる面積から光子を受容する。
【0105】
種々の実施形態では、1つ以上の内側光パイプは、単一のディスク光パイプを含み、1つ以上の外側光パイプは、単一のリング光パイプを含み、ディスク光パイプおよびリング光パイプは、
図12に示される電極と同様に、同心である。
【0106】
図14に戻ると、第1の光電子増倍管1441は、1つ以上の内側光パイプ1432および1433に接続され、1つ以上の内側光パイプ1432および1433によって受容される光子を、パケット毎に第1の増倍した電子に変換する。第2の光電子増倍管1442は、1つ以上の外側光パイプ1431および1434に接続され、1つ以上の外側光パイプ1431および1434によって受容される光子を、パケット毎に第2の増倍した電子に変換する。
【0107】
2チャネルデジタイザ1450は、イオンパケット毎に第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する、第1の光電子増倍管1441に電気的に接続される第1のチャネル1451を含む。2チャネルデジタイザ1450は、イオンパケット毎に第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する、第2の光電子増倍管1442に電気的に接続される第2のチャネル1452を含む。
【0108】
第1のチャネル1451および第2のチャネル1452は、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される。
【0109】
種々の実施形態では、第1のチャネル1451および第2のチャネル1452はさらに、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の曲率を考慮するように独立して較正される。
(2チャネル平面光電イオン検出システム)
【0110】
種々の実施形態では、TOF質量分析器用の2チャネルイオン検出システムは、平面イオン/電子変換器と、磁場と、イオンを検出するための光学構成要素とを含むことができる。本質的に、平面イオン/電子変換器、電場および磁場の組み合わせ、および光学構成要素は、上記に説明される電気システムのMCPおよび区画化されたアノード電極板に取って代わる。
【0111】
図15は、種々の実施形態による、TOF質量分析器用の平面イオン/電子光電2チャネルイオン検出システムの側面
図1500である。平面イオン/電子光電2チャネルイオン検出システムは、平面イオン/電子変換器1510と、垂直磁場1513と、シンチレータ1420と、2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434と、第1の光電子増倍管(PMT)1441と、第2のPMT1442と、2チャネルデジタイザ1450とを含む。
【0112】
種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1450は、2チャネルアナログ/デジタル変換器(ADC)である。種々の実施形態では、2チャネルデジタイザ1450は、2チャネル時間/デジタル変換器(TDC)である。
【0113】
平面イオン/電子変換器1510は、平面イオン/電子変換器1510の第1の側面1511上で長方形パターンにおいてイオンパケット1401によって衝突される。平面イオン/電子変換器1510は、CVDダイヤモンドまたは酸化物またはそれらの高い二次電子放出係数で公知である他の材料等の衝突するイオンあたり高い電子放出確率を有する材料を含む。
【0114】
2チャネルイオン検出システムはさらに、永久磁石または電磁石(図示せず)からのDC均一磁場1513を含む。磁場1513は、平面イオン/電子変換器1510およびシンチレータ1420の前に確立される。電場1414はまた、平面イオン/電子変換器1510およびシンチレータ1420の前にも確立される。電場1514は、例えば、電圧源(図示せず)を使用して、高度に透明なメッシュ1515に適切にバイアスをかけることによって確立される。電場1514および磁場1513は、平面イオン/電子変換器1510の第1の側面1511からも放出される電子を、シンチレータ1420までの半円形の経路において移動させるように設計される。米国特許第7,180,060号(参照することによって本明細書に組み込まれる)は、検出器部材までの半円形の経路においてイオンから放出される電子を移動させるための平面イオン/電子変換器、磁場、および電場の使用を説明する。
【0115】
平面イオン/電子変換器1510は、衝突を、平面イオン/電子変換器1510の同一の第1の側面1511上で同一の長方形パターンにおいて放出される電子に変換する。長方形パターンの長い方の辺は、長さであり、長方形パターンの短い方の辺は、幅である。例えば、イオンパケット1401の凸形状に起因して、各パケットのイオンは、長方形パターンの各端部における2つの外側面積に衝突する前に、長方形パターンの中心内側面積に衝突する。
【0116】
シンチレータ1420は、平面イオン/電子変換器1510と隣り合わせで位置付けられる。シンチレータ1420は、平面イオン/電子変換器1510の第1の側面1511からシンチレータ1420の第1の側面1421上で長方形パターンにおいて放出された電子を受容する。シンチレータ1420は、電子を、シンチレータ1420の第2の側面1422上で長方形パターンにおいて放出される光子に変換する。
【0117】
2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434は、シンチレータ1420の第2の側面1422から光子を受容するようにシンチレータ1420の第2の側面1422に接続される。2つ以上の区画化された光パイプ1431、1432、1433、および1434はともに、長方形パターンから光子を受容するために十分に大きい面積を有する。2つ以上の光パイプ1431、1432、1433、および1434は、長方形パターンの中心内側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の内側光パイプ1432および1433を含む。2つ以上の光パイプ1431、1432、1433、および1434は、長方形パターンの各端部における2つの外側面積から光子を受容するように位置付けられる、1つ以上の外側光パイプ1431および1434を含む。
【0118】
種々の実施形態では、1つ以上の内側光パイプは、
図11の1つの電極に類似する、1つの光パイプを含む。種々の実施形態では、1つ以上の光パイプは、
図15に示されるように、接続される2つの内側光パイプを含む。
【0119】
種々の実施形態では、1つ以上の外側光パイプは、接続される2つの光パイプを含み、2つの光パイプはそれぞれ、
図15に示されるように、長方形パターンの各端部における2つの外側面積のうちの異なる面積から光子を受容する。
【0120】
種々の実施形態では、1つ以上の内側光パイプは、単一のディスク光パイプを含み、1つ以上の外側光パイプは、単一のリング光パイプを含み、ディスク光パイプおよびリング光パイプは、
図12に示される電極と同様に、同心である。
【0121】
図15に戻ると、第1の光電子増倍管1441は、1つ以上の内側光パイプ1432および1433に接続され、1つ以上の内側光パイプ1432および1433によって受容される光子を、パケット毎に第1の増倍した電子に変換する。第2の光電子増倍管1442は、1つ以上の外側光パイプ1431および1434に接続され、1つ以上の外側光パイプ1431および1434によって受容される光子を、パケット毎に第2の増倍した電子に変換する。
【0122】
2チャネルデジタイザ1450は、イオンパケット毎に第1の増倍した電子を第1のデジタル値に変換する、第1の光電子増倍管1441に電気的に接続される第1のチャネル1451を含む。2チャネルデジタイザ1450は、イオンパケット毎に第2の増倍した電子を第2のデジタル値に変換する、第2の光電子増倍管1442に電気的に接続される第2のチャネル1452を含む。
【0123】
第1のチャネル1451および第2のチャネル1452は、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、各イオンパケットのイオン衝突の凸形状を考慮するように独立して較正される。
【0124】
種々の実施形態では、第1のチャネル1451および第2のチャネル1452はさらに、第1のデジタル値および第2のデジタル値を時間的に整合させ、一連の1つ以上のマイクロチャネルプレート1410の曲率を考慮するように独立して較正される。
【0125】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替案、修正、および均等物を包含する。
【0126】
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない限り、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する限定として解釈されるべきではない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、それらのステップの実施を書かれた順序に制限されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まることを容易に理解することができる。