(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】熱可塑性繊維シート
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220816BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20220816BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20220816BHJP
D21H 13/10 20060101ALI20220816BHJP
D21H 15/10 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H02G3/04
D04H1/425
D04H1/541
D21H13/10
D21H15/10
(21)【出願番号】P 2019550927
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037296
(87)【国際公開番号】W WO2019082622
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017206268
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
(72)【発明者】
【氏名】蔵原 卓
(72)【発明者】
【氏名】山路 舞香
(72)【発明者】
【氏名】土師 圭一朗
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-160996(JP,A)
【文献】特開平02-258007(JP,A)
【文献】特開平10-191529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
H02G3/00-3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とから少なくとも構成されており、前記セルロー
ス系繊維と前記熱可塑性樹脂繊維との重量比(前記セルロース系繊維:前記熱可塑性樹脂
繊維)が6.5:3.5~2:8である熱可塑性繊維シートであって、WET強度が7N
/cm以上20N/cm未満であることを特徴とする
、ワイヤーハーネスのプロテクター用の熱可塑性繊維シート。
【請求項2】
前記熱可塑性繊維シートの保水率が、50~220%である、請求項1記載の熱可塑性
繊維シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂繊維は、一種以上の熱可塑性樹脂からなる主体繊維である、請求項1
又は2記載の熱可塑性繊維シート。
【請求項4】
前記熱可塑性繊維シートは、前記熱可塑性繊維シートを対象物に仮固定した後、前記熱
可塑性樹脂繊維を加熱融着させることにより前記対象物に前記熱可塑性繊維シートを本固
定する用途にて使用されるものである、請求項1~3のいずれか一項記載の熱可塑性繊維
シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスは、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にして集合部品としたものである。自動車の車内配線等、多くの電気配線を必要とする多様な機械装置で用いられている。
【0003】
ここで、ワイヤーハーネスを構成する複数の電線は、プロテクターで纏められている。それら纏め方の一手法として、複数の電線を纏めるに際し、複数の電線を不織布で巻き付け、加熱成形する手法が提案されている。ここで、前記不織布として、例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂繊維である基本樹脂と、当該基本樹脂よりも低い融点を有する接着樹脂と、から構成される不織布が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る不織布を用いてワイヤーハーネスを製造する方法では、まず、複数の電線を不織布で巻き付ける工程(仮固定工程)を実施し、次いで、複数の電線に巻き付けられた不織布を加熱溶融する工程(本固定工程)を実施する。
【0006】
ここで、この仮固定工程の際、巻き付けられた不織布の端部がその剛性のために浮いてしまう場合がある。この場合、巻き付けられた不織布が解けてしまう事象を招く。更には、当該端部が浮いた状態にて加熱溶融した場合に至っては、当該端部が浮いた状態で本固定されてしまい、当該端部の浮いた箇所の除去等が必要となる。したがって、これらを防止すべく、当該端部が浮かない状態となるよう当該端部を強固に固定しながら加熱溶融させる必要があり面倒である。
【0007】
よって、本発明は、対象物(例えば、複数の電線)に被覆した(例えば、巻き付けた)後、加熱溶融させて対象物に付着(例えば、固定)させる用途に適した熱可塑性繊維シートにおいて、加熱溶融前の仮固定の際に、熱可塑性繊維シートの端部を簡素に固定する程度で済むか固定する必要が無い手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維とを組み合わせてシート化すること、更には、WET強度が所定範囲となるようシート化すること、により、前記課題を解決できることを見出し、本発明(1)~(5)を完成させた。
【0009】
本発明(1)は、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とから少なくとも構成されており、前記セルロース系繊維と前記熱可塑性樹脂繊維との重量比(前記セルロース系繊維:前記熱可塑性樹脂繊維)が6.5:3.5~2:8である熱可塑性繊維シートであって、WET強度が7N/cm以上20N/cm未満であることを特徴とする熱可塑性繊維シートである。
【0010】
本発明(2)は、前記熱可塑性繊維シートの保水率が、50~220%である、前記発明(1)の熱可塑性繊維シートである。
【0011】
本発明(3)は、前記熱可塑性樹脂繊維は、一種以上の熱可塑性樹脂からなる主体繊維である、前記発明(1)又は(2)の熱可塑性繊維シートである。
【0012】
本発明(4)は、前記熱可塑性繊維シートは、前記熱可塑性繊維シートを対象物に仮固定した後、前記熱可塑性樹脂繊維を加熱融着させることにより前記対象物に前記熱可塑性繊維シートを本固定する用途にて使用されるものである、前記発明(1)~(3)のいずれか一つの熱可塑性繊維シートである。
【0013】
ここで、熱可塑性繊維シートは、前記仮固定を前記熱可塑性繊維シートが含液した状態(前記熱可塑性繊維シートに液体が含浸された状態)にて実施する用途にて使用してもよい。更に、この場合、熱可塑性繊維シートは、前記加熱融着の前に、前記仮固定された前記熱可塑性樹脂繊維に含まれている(含浸されている)液体の少なくとも一部を高温処理(高温下に晒す処理)で除去させる用途にて使用してもよい。
【0014】
本発明(5)は、ワイヤーハーネスのプロテクター用である、前記発明(1)~(4)のいずれか一つの熱可塑性繊維シートである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対象物(例えば、複数の電線)を被覆した(例えば、巻き付けた)後、加熱溶融させて対象物に付着(例えば、固定)させる用途に適した熱可塑性繊維シートにおいて、加熱溶融前の仮固定の際に、熱可塑性繊維シートの端部を簡素に固定する程度で済むか固定する必要が無い手段を提供することができる。
【0016】
ここで、本発明に係る熱可塑性繊維シートが上記の効果を奏する理由は、必ずしも定かではないが、下記の通りと推定される。尚、以下では後述する液体として水を使用した場合を例に採り説明する。
【0017】
まず、本発明に係る熱可塑性繊維シートは、水を付着させた状態で巻回等すると、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とを所定比率とし、且つ、WET強度を所定範囲とすることにより(換言すれば、後述する構造となる結果)、任意の形状に加工した際、フレキシブルに動きやすくなり、こわさが低下する。この理由として下記の点が考えられる。
【0018】
まず、前記構成下にて浸水することにより、セルロース系繊維間の水素結合が適度に切れてセルロース系繊維間の結合力が適度に弱くなる。更に、適度に膨潤することで、シートが適度に疎となる。これらの理由から、熱可塑性繊維シートは、適度にフレキシブルに動きやすくなり、こわさが適度に低下すると理解される。
【0019】
次に、任意の形状に加工した後、乾燥させて水を除去すると、当該任意の形状を維持する。この理由として下記の点が考えられる。
【0020】
まず、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とを所定比率とし、且つ、WET強度を所定範囲とすることにより(換言すれば、後述する構造となる結果)、水分が無くなる過程で、膨潤していたセルロース系繊維が徐々に密になっていく。そして、熱可塑性樹脂繊維が適度に曲げられた形状のまま、新たにセルロース系繊維間にて適度に絡み合いが生じ、セルロース系繊維間に水素結合が形成される。この理由から、熱可塑性繊維シートは、任意の形状に曲げられたまま、固定が可能となると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<<熱可塑性繊維シート>>>
本発明に係る熱可塑性繊維シートは、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とから少なくとも構成されており、前記セルロース系繊維と前記熱可塑性樹脂繊維との重量比(前記セルロース系繊維:前記熱可塑性樹脂繊維)が6.5:3.5~2:8である熱可塑性繊維シートであって、WET強度が7N/cm以上20N/cm未満である。
【0022】
尚、当該シートは、単層構造であっても、複層構造であってもよい。但し、単層構造の方が、以下で説明するように、熱可塑性繊維シートの厚み断面方向での均一性や繊維間の絡みを担保しやすいため、好適である。
【0023】
ここで、「単層」、「複層」における「層」とは、当該層中での繊維組成が略同一となる構造単位を意味するものとする。単層である場合、当該層に少なくともセルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含んでいれば良く、複層である場合、いずれかの層にセルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維をそれぞれ含んでいれば良い。なお、複層である場合、セルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維の重量比が本発明の特定範囲を満たす層を少なくとも1層含む形態が好ましい(この場合、その他の層はどのような層であってもよい)。
【0024】
以下、本発明に係る熱可塑性繊維シートを構成する各要素、本発明に係る熱可塑性繊維シートの各要素の組成、本発明に係る熱可塑性繊維シートの性質について、順に説明する。
【0025】
<<熱可塑性繊維シートの要素>>
<セルロース系繊維>
本発明に係る熱可塑性繊維シートのセルロース系繊維は、特に限定されず、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイドパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)等の化学パルプ;グランドウッドパルプ(GP)、プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;等が挙げられる。
【0026】
また、セルロース系繊維は、N材、L材等を原料とする木材パルプ;木綿、わら、竹、エスパルト、洋麻(ケナフ)、綿(コットン)、マニラ麻(バガス)、亜麻、麻、黄麻、雁皮等を原料とする非木材パルプ;のいずれであってもよい。
【0027】
ここで、クラフトパルプの具体例としては、針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP;N材)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP;N材、NB材)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP;L材)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP;L材)等が挙げられる。
【0028】
なお、セルロース系繊維は、デインキングパルプ(DIP)、ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプであってもよい。
【0029】
これらセルロース系繊維は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
セルロース系繊維としては、これらの中でも、NBKP、洋麻、マニラ麻のパルプが好適であり、NBKPが特に好適である。セルロース系繊維としてこれらを用いた場合、理由は定かでないが、熱可塑性樹脂との相性が良好(特に、本明細書において好適とされる樹脂繊維との組み合わせにおいて顕著に良好)となり、湿潤状態において引張り強度の強い熱可塑性繊維シートを得ることができる。
【0031】
セルロース系繊維の濾水度は、200~700mlであることが好適である。セルロース系繊維の濾水度は、カナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)の値を意味し、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に準拠して測定することができる。
【0032】
<熱可塑性樹脂繊維>
本発明に係る熱可塑性繊維シートの熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維である限り特に限定されない。
【0033】
また、熱可塑性樹脂の具体例として、非晶質ポリエステル、非晶質ポリオレフィン、共重合ポリエステル、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルスチレン、ABS、ポリ塩化ビニル、PMMA、ポリカーボネート、エチルセルロース等を挙げることができる。
【0034】
これら熱可塑性樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0035】
尚、低い加熱温度でも本固定できるという観点からは、好適には、熱可塑性樹脂の軟化温度が100℃以上140℃以下(より好適な下限値は110℃、より好適な上限値は130℃)である。
【0036】
ここで、軟化温度は、熱機械分析装置(TMA)を用いることにより測定することができる。
【0037】
(軟化温度の測定方法)
熱可塑性樹脂繊維の軟化温度は例えば、以下の方法により、測定することができる。厚み1mm、大きさ100×150mmのSUS304製の金属板で任意量の熱可塑性樹脂繊維を挟み、プレス温度が100℃、プレス圧力が0.1MPaの条件で60分間プレスし、熱可塑性樹脂繊維の成形ブロックを作製し、成形ブロックから透過光観察で気泡が無い部分を選び、厚さが2mm、大きさ5mm角の試験片を切り出して測定用試料とする。軟化温度は、日立ハイテクサイエンス製TMA、SS6100をTMA測定装置として使用し、石英ガラス製の1mmφの針入プローブで、昇温速度5℃/分、荷重30mNの条件で測定する。
【0038】
ここで、熱可塑性樹脂繊維は、主体繊維であることが好適である。主体繊維とは、断面において略単一組成の繊維を示し、例えば、非芯鞘構造等の繊維(芯鞘構造等を有さない繊維)をいう。略単一組成の繊維は、より詳細には、繊維断面における組成の分布が略一様な繊維(略均一組成の繊維)と解釈することも可能である。尚、略単一組成を構成する成分は、前記のように、1種の熱可塑性樹脂からなるものであっても、2種以上の熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。以下、主体繊維が好適である理由を述べる。
【0039】
例えば、芯鞘構造を有する繊維は、芯を有するが故に曲げ応力に対して、抗する力が発生しやすい。すなわち、曲げ応力を受けた際に、芯と鞘の界面において歪を蓄えやすいために、曲げに抗してもとの形状に戻ろうとする力が働きやすいものと推察される。このような特性を有しない主体繊維は、仮固定性を妨げ難い。
【0040】
また、本固定工程の際には、加熱溶融させることが必要となる。実際の製造工程では、例えばワイヤーハーネスの用途を前提とした場合、ワイヤーハーネスへの熱ダメージを低減するために極力低温かつ短時間で加工できることが望ましい。
【0041】
この際、主体繊維を用いることで、外周部の溶融温度と中心部の溶融温度が同等となり、本固定工程では外周部の溶融温度に合わせた温度設定等が不要となる。仮に中心部の溶融温度が外周部より高い場合には、加熱時の樹脂繊維全体の剛性が上がり、固定力の低下を招く場合がある。逆に中心部の溶融温度が外周部より低い場合には、本固定工程で内部のみが先に溶融し、繊維形状の維持が困難となり、機械強度の低下を招く場合がある。
【0042】
以上説明したように、主体繊維とした場合、芯鞘構造の繊維とした場合に比して、本発明の効果をより高めることが可能となる。
【0043】
熱可塑性樹脂繊維の繊度は、1~10dtexであることが好適であり、2~6dtexであることがより好適である。熱可塑性樹脂繊維の繊度が当該範囲内であると、本発明の効果をより高めることが可能となる。
【0044】
また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、1~10mmであることが好適であり、4~6mmであることがより好適である。熱可塑性樹脂繊維の繊度が当該範囲内であると、本発明の効果をより高めることが可能となる。
【0045】
特に、熱可塑性樹脂繊維が共重合ポリエステル繊維の繊度及び/又は繊維長さが当該範囲である場合、本発明の効果をより高めることが可能となる。
【0046】
<その他>
本発明に係る熱可塑性繊維シートは、必要に応じ、他の公知の成分、例えば、染料、濾水向上剤、紙力増強剤、粘剤、分散剤、消泡剤、填料等を含有していてもよい。また、これら成分は、熱可塑性繊維シートの繊維間に存在していても、熱可塑性樹脂繊維表面又は内部に存在していても、セルロース系繊維表面又は内部に存在していてもよい。
【0047】
但し、本発明に係る熱可塑性繊維シートは、紙力剤及びサイズ剤を含有していないか含有量が少ないことが好適である。紙力剤及びサイズ剤を含有していないか含有量が少ない場合、仮固定時に、熱可塑性繊維シートに液体(例えば水やエタノール)を添加すると、セルロース系繊維のみがスラリー様になりやすい。このことが、本発明の効果をより高める作用機序の一つと推測される。
【0048】
<<熱可塑性繊維シートの配合>>
本発明に於ける、前記セルロース系繊維と前記熱可塑性樹脂繊維との重量比(前記セルロース系繊維:前記熱可塑性樹脂繊維)は6.5:3.5~2:8であり、6:4~2.5:7.5であることが好ましく、5:5~3:7であることがより好適である。以下で述べるWET強度が所定範囲内であることに加え、当該重量比が前記範囲内であることにより、本発明の効果を奏することが可能となる。
【0049】
熱可塑性繊維シートは、熱可塑性繊維シートの全質量を基準として、セルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維の含有量が、80質量%以上であることが好適であり、90質量%以上であることがより好適である。
【0050】
また、熱可塑性繊維シートは、熱可塑性繊維シートの全質量を基準として、紙力剤、サイズ剤それぞれの含有量が1質量%以下であることが好適である。
【0051】
<<熱可塑性繊維シートの性質>>
【0052】
<WET強度>
本発明に係る熱可塑性繊維シートのWET強度は、7N/cm以上20N/cm未満であり、8N/cm以上18N/cm以下であることが好ましく、10N/cm以上17N/cm以下であることがより好適である。WET強度が前記範囲内の場合、実際仮固定に必要な引張強度を担保することができると共に、セルロース系繊維の膨潤・変形効果を維持することができる。
【0053】
(WET強度の測定方法)
ここで、WET強度は下記手法にて測定した値である。尚、本方法を含めた各測定方法は、特記しない限り、大気圧下で25℃にて実施されたものである。
【0054】
まず、熱可塑性繊維シート(サンプル)を、10mm×200mmに切断する。当該サンプルを水道水に浸水させる(温度:20℃、時間:10秒)。その後、浸水させたサンプルを、乾いたベンコットで余剰水分除去する。その後、オリエンテック社製テンシロンにて引っ張り強度測定を、JIS P8113に準拠した方法で行う{試験条件:試験長は180mm(各端部約10mmをチャッキング)、試験速度は30mm/min}。試験は各サンプルで3回(N=3)実施し、平均値を採用する。
【0055】
<接着強度>
本発明に係る熱可塑性繊維シートの接着強度は、1.2N以上であることが好ましく、1.5N以上であることがより好適である。
【0056】
(接着強度の測定方法)
ここで、接着強度は下記手法にて測定した値である。
【0057】
まず、熱可塑性繊維シート(サンプル)を、100mm×40mmに切断する(2枚準備)。これら2枚のサンプルを重ねて、熱プレスにて圧着する。熱プレス条件は、100℃/0.5MPa/10秒である。その後、オリエンテック社製テンシロンにて引っ張り強度測定をJIS K6854-3に準拠して行う{試験条件:T形ピール強度測定;試験速度:30mm/min}。試験は各サンプルで3回(N=3)実施し、平均値を採用する。
【0058】
<保水率>
本発明に係る熱可塑性繊維シートの保水率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好適である。また、保水率の上限値は、特に限定されないが、例えば220%である。
【0059】
保水率は、本発明の熱可塑性繊維シートに、膨潤によるこわさの低下効果を与える重要な要素である。すなわち、熱可塑性繊維シートの保水率が50%~220%にある時、熱可塑性繊維シート中に存在するセルロース系繊維は、セルロース系繊維間の水素結合が適度に切れてセルロース系繊維間の結合力が適度に弱くなりやすい。更に、適度に膨潤することで、シートが適度に疎となりやすい。これらの理由から、熱可塑性繊維シートは、適度にフレキシブルに動きやすくなり、こわさが適度に低下しやすいと理解される。その後、熱可塑性繊維シートが乾燥することにより、実用上に耐えうる一次固定効果が発現されやすくなるものと推察される。
【0060】
(保水率の測定方法)
ここで、保水率は下記手法にて測定した値である。
【0061】
まず、熱可塑性繊維シートを、50mm×50mmに切断する。その後、耐圧容器の中に入れ、ロータリーポンプを用いて真空にした状態で1時間放置し、熱可塑性繊維シートを絶乾する。その後、熱可塑性繊維シートを取り出した直後に絶乾状態の重量測定を実施する(小数点以下3桁)。次いで、熱可塑性繊維シートを浸水する(温度:20℃;時間:5秒)。その後、余剰水分を除去する。
【0062】
具体的には、乾いたベンコットで熱可塑性繊維シートを挟み、5cm□、厚み1mmのアルミ板を熱可塑性繊維シートの真上に置き、アルミ板の上に500gのおもりを乗せて30秒待つ。その後、吸水した熱可塑性繊維シートのみを取り出し、おもりを外してから30秒後に再度重量測定を実施し、保水後の重量(余剰水分が除去された熱可塑性繊維シート)とする。
【0063】
そして、保水後の重量から絶乾状態の重量を差し引いて保水量を算出し、当該保水量を乾燥時の重量で除することで、保水率を算出する。試験は各熱可塑性繊維シートで3回(N=3)実施し、平均値を採用する。
【0064】
<<熱可塑性繊維シートの製造方法>>
本発明に係る熱可塑性繊維シートの製造方法は、概ね、公知の抄紙方法により製造することができる。例えば、セルロース系繊維、熱可塑性樹脂繊維、必要に応じて他の成分を水に分散させて原料スラリーを調製し、得られた原料スラリーを湿式抄紙して熱可塑性繊維シートを得る手法である。
【0065】
ここで、セルロース系繊維は、予め叩解しておくことが好ましい。叩解は、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、ビーター等の叩解機により適宜行なうことができる。
【0066】
また、湿式抄紙に用いる湿式抄紙機としては特に限定されず、一般の抄紙技術に適用されている抄紙機、具体的には長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜式抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等を使用できる。
【0067】
但し、本発明に係る熱可塑性繊維シートの一特徴は、WET強度を7N/cm以上20N/cm未満にする点にあり、この点にて、公知の抄紙方法に工夫を施すことが好ましい。
【0068】
WET強度を7N/cm以上20N/cm未満にするには、第一に、熱可塑性繊維シートの厚み断面方向で、セルロース系繊維・熱可塑性樹脂繊維の偏在がないようにすることに留意することが好ましい。仮にセルロース系繊維・熱可塑性樹脂繊維が偏在している場合には、浸漬→膨潤時のフレキシブル性向上及び乾燥後のパルプの絡みつきによる固定のメカニズムがうまく働かないからである。
【0069】
WET強度を7N/cm以上20N/cm未満にするには、第二に、セルロース系繊維・熱可塑性樹脂繊維を適度に絡みつかせることが好適である。浸漬して膨潤することが重要である一方、セルロース系繊維間が近すぎると空間が狭くなり、結果として浸漬時の保水量(=膨潤量)が低減してしまう。その結果、フレキシブル性の低下を招き、加工時にセルロース系繊維がダメージを受けやすくなり、乾燥後の仮固定能力の低下を招くからである。
【0070】
以上のように、WET強度を7N/cm以上20N/cm未満とするには、材料の選定やプロセスに留意することが好ましい。
【0071】
まず、材料の選定については、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維との重量比(前記セルロース系繊維:前記熱可塑性樹脂繊維)を6.5:3.5~2:8とすることが好ましい。このような重量比とし、後述するプロセスを実施することで、7N/cm以上20N/cm未満のWET強度を実現し得る。
【0072】
そして、通常の抄紙法からの好ましい工夫点は下記の通りである。
【0073】
第一に、スラリー分散工程において、予め熱可塑性樹脂繊維のみが分散したスラリーに、セルロース系繊維を徐々に投入することが好ましい。所定量のセルロース系繊維を一度に全量投入してしまうと、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維間に適度な隙間が形成されにくく、また、セルロース系繊維同士も近付きすぎてしまい、シートの均一性を損ないやすく、保水量の低下を招く恐れがあるからである。
【0074】
第二に、抄造工程においては、脱水のためのサクションを緩やかに実施することが好ましい。緩やかな脱水を実施することで、特に面方向においてセルロース系繊維や熱可塑性樹脂繊維が偏在することを防止しやすくなるからである。
【0075】
第三に、抄紙後の乾燥工程では、セルロース系繊維間に含まれていた水分が蒸発することで繊維間距離が狭くなる。ここで、抄紙後の乾燥工程において、気中水蒸気量を通常の抄紙法より高い濃度に保ちながら乾燥させること、即ち、徐々に乾燥させることで、セルロース繊維間の隙間の収縮が抑えられた均質性の高いシートを得やすくなる。
【0076】
第四に、紙力剤、サイズ剤を使用しないかわずかの使用に留めることが、WET状態での引張強度と充分な保水量を保つ上で好適である。
【0077】
<<熱可塑性繊維シートの使用方法>>
本発明に係る熱可塑性繊維シートは、対象物に熱可塑性繊維シートを付着させる工程(仮固定:第1の固定)、前記付着前(即ち仮固定前)又は前記付着後(即ち仮固定後)に熱可塑性繊維シートに液体を付着させる工程、熱可塑性繊維シートから液体を除去する工程、対象物に熱可塑性繊維シートを熱融着する工程(本固定:第2の固定)、を含む。以下、各要素を説明する。
【0078】
<対象物に熱可塑性繊維シートを付着させる工程:熱可塑性繊維シート付着工程>
まず、対象物に熱可塑性繊維シートを付着させる工程を説明する。
【0079】
対象物は、特に限定されず、例えば、曲面を有する対象物(例えば、複数のワイヤーを並べたもの)であっても、平面状の対象物(例えば、壁)であってもよい。但し、従来の熱可塑性繊維シートにおける問題点である、曲面を有する対象物に熱可塑性繊維シートを仮固定した際の「端部の浮き」や「解け」を考慮すると、本発明に係る熱可塑性繊維シートの対象物としては、曲面を有する対象物に特に適している。
【0080】
<熱可塑性繊維シートに液体を付着させる工程:液体付着工程>
次に、付着前又は付着後に熱可塑性繊維シートに液体を付着させる工程を説明する。
【0081】
熱可塑性繊維シートに対してどのタイミングで液体を付着させるかに関しては、対象物の形状・大きさ等、付着態様等に基づき適宜決定する。
【0082】
例えば、複数のワイヤーのように端部の曲率半径が小さいものに対して熱可塑性繊維シートを巻回させる場合には、液体が無い状態で無理に曲げると、セルロース系繊維が破断する等して曲げ痕跡が付いてしまう恐れがある。したがって、この場合には、対象物に熱可塑性繊維シートを付着させる前に、熱可塑性繊維シートに液体を付着させる。
【0083】
他方、対象物の曲面が緩やかなものや対象物が平面状であるものに対しては、タイミングを問わず、即ち、乾燥状態の熱可塑性繊維シートを対象物に付着させた後、熱可塑性シートに液体を付着させてもよいし、液体を付着させた熱可塑性繊維シートを対象物に付着させてもよい。
【0084】
尚、熱可塑性繊維シートへの液体の付着は、熱可塑性繊維シート全体であっても、熱可塑性繊維シートの一部(例えば、浮きが問題となる端部)であってもよい。
【0085】
尚、付着させる「液体」は、熱可塑性樹脂繊維を実質的に溶解させないものであれば特に限定されない。ここで、「実質的に溶解させない」とは、熱可塑性樹脂繊維を25℃の液体中で1分間攪拌させても、攪拌後の熱可塑性樹脂の重量減少が5重量%以下のものである。このような液体媒体としては、例えば、水やエタノールを挙げることができる。
【0086】
<熱可塑性繊維シートから液体を除去する工程:液体除去工程>
次に、熱可塑性繊維シートから液体を除去する工程を説明する。
【0087】
この工程は、後述する熱融着工程に先立って行うものである。但し、加熱することで液体除去と熱融着を同時に実施してもよい。
【0088】
尚、液体除去は、周知の手法、例えば、風や熱をかけることで実施可能である。好適には、高温{例えば、室温(例えば25℃)よりも高い温度}下に晒す手段(例えば熱風乾燥)を挙げることができる。
【0089】
<対象物に熱可塑性繊維シートを熱融着する工程:熱融着工程>
次に、対象物に熱可塑性繊維シートを熱融着する工程を説明する。
【0090】
熱融着は、周知の手法、例えば、熱可塑性繊維シートを極短時間の熱プレス(熱圧着)することにより固着可能である。また、端部のみ固着することでも形状維持は可能である。
【0091】
ここで、軟化温度が100℃以上140℃以下である熱可塑性樹脂繊維を熱可塑性繊維シートの原料として使用した場合、低温での熱融着にて対象物に固着可能である。
【0092】
ここで、「低温での熱融着」は、加熱温度が140℃以下且つ加熱時間が10分以内で実施されることが好適であり、加熱温度が120℃以下且つ加熱時間が5分以内で実施されることがより好適であり、加熱温度が100℃以下且つ加熱時間が3分以内で実施されることが更に好適である。尚、加熱温度の下限値は、例えば、軟化温度以上であり、加熱時間の下限値は、例えば数秒(例えば3秒)である。
【0093】
また、熱圧着の際の圧力は、特に限定されないが、0.1MPa以上であることが好適である。
【0094】
<<熱可塑性繊維シートの用途>>
本発明に係る熱可塑性繊維シートは、熱圧着加工用シートとして有用である。例えば、本発明に係る熱可塑性繊維シートは、結束用(ワイヤハーネス固定用)、ワイヤハーネスのプロテクター用、熱プレス成形用(ICカード、ICタグ、薄型電池を内蔵した接触型又は非接触型の通信媒体等)、熱圧着による簡単な接合用、加飾成形用、フィルムインサート成形用、耐水壁紙等の建材用として利用可能である。
【実施例】
【0095】
<<製造例>>
(実施例1)
予め、熱可塑性樹脂繊維である共重合ポリエステル繊維(軟化温度:110℃、繊度:2dtex、繊維長:5mm、主体繊維)を水中で充分に分散させた。共重合ポリエステル繊維スラリー中に、NBKPを叩解してカナダ標準ろ水度650mlに調整したセルロース系繊維を徐々に(所定量を4回に分けて、それぞれ投入後に10分以上を置いてから)投入して抄造スラリーを作製した。共重合ポリエステル繊維と、NBKPの添加量はそれぞれ50重量部とした。
【0096】
抄造工程においては、サクション真空室の真空度を600mmHgに設定し、極力緩やかにサクションを実施した。
【0097】
抄紙後の乾燥工程において、ヤンキードライヤー表面温度を120℃に設定し、排風ファンの排気量を落とすことで、蒸気室内を80~100RH%の水蒸気量に保った。
【0098】
(実施例2~7、比較例1~4)
表1に示した原料配合としたこと以外は実施例1と同様の手法にて、実施例2~7及び比較例1~3に係る熱可塑性繊維シート並びに比較例4に係るセルロース系繊維シートを得た。
【0099】
<<試験例>>
実施例及び比較例に係るシートに関し、形状安定性、保水率、WET強度及び接着強度を評価した。結果を表1に示す。尚、保水率、WET強度及び接着強度の評価手法は上述したので、以下では形状安定性の評価手法を説明する。
【0100】
<形状安定性>
形状安定性試験は、仮固定がしっかりなされているかの確認試験である。
【0101】
(測定方法)
ここで、形状安定性は下記の三パターン(条件1~3)で実施した。
【0102】
条件(1):水浸漬あり
当該試験では、概略、実施例及び比較例に係るシート(WET状態)を筒に巻回し、乾燥させた一次固定体を得る。その後、一次固定体を筒から取り外した直後及び所定時間放置した後(常温常圧)における、形状維持性を確認する試験である。
【0103】
ここで、形状維持性が十分であると、一次固定体を筒から外した後でも、一次固定体(シート)が端部も含めて巻回形状に追従しているため(即ち、端部の浮きが無いため)、巻回形状が維持される(即ち、筒の外径と、一次固定体の内径が略同一)。他方、形状維持性が不十分であると、巻回後に筒を外した後、シートの端部が巻回形状に追従していないため(即ち、端部の浮き等があるため)、巻回形状が解けてしまう(即ち、筒の外径よりも、一次固定体の内径が大きくなる)。
【0104】
以上を具体的に説明すると、まず、熱可塑性繊維シート(サンプル)を10mm×200mmに切断する。当該サンプルを水道水に浸水させる(温度:20℃、時間:10秒)。その後、浸水させたサンプルから、乾いたベンコットで余剰水分除去する。次いで、25mmφの塩ビの筒にサンプルを巻く(テンションゲージを用い、7Nに固定し、サンプルを引っ張りすぎて切れないよう注意しながらずれないように巻く)。次いで、巻いたサンプルの端を、目玉クリップで留める。そして、常温(25℃)で送風機にて30分間風乾を実施する。その後、目玉クリップを外して、一次固定体を塩ビ筒から外す。その直後に、定規で一次固定体の内径を測定する。その後、常温にて一次固定体を30分間放置した後に再び内径を測定する。
【0105】
条件(2):水浸漬あり、50℃乾燥
常温(25℃)送風風乾を、50℃加熱乾燥(オーブン乾燥)に変更したこと以外は、条件(1)と同様にして、塩ビ筒から取り外した直後と、常温30分放置後の一次固定体の内径を測定する。
【0106】
条件(3):エタノール浸漬あり
浸漬させる液体を水からエタノールに変更したこと以外は、条件(1)と同様にして、塩ビ筒から取り外した直後と、常温30分放置後の一次固定体の内径を測定する。
【0107】
(評価基準)
◎:25mm
○:25mm超30mm未満
△:30mm以上35mm未満
×:35mm以上及び実施不可
【0108】
<保水率>
前述した測定方法に基づき、保水率を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0109】
(評価基準)
◎:80%以上220%以下
○:70%以上80%未満
△:50%以上70%未満、220%超
×:50%未満
【0110】
<WET強度>
前述した測定方法に基づき、WET強度を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0111】
(評価基準)
◎:10N/cm以上17N/cm以下
○:8N/cm以上10N/cm未満、17N/cm超18N/cm以下
△:7N/cm以上8N/cm未満、18N/cm超20N/cm未満
×:0N/cm以上7N/cm未満、20N/cm以上
【0112】
<接着強度>
前述した測定方法に基づき、接着強度を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0113】
(評価基準)
◎:1.5N/cm以上
○:1.2N/cm以上1.5N/cm未満
×:0N/cm以上1.2N/cm未満
【0114】
尚、上記評価基準において、形状安定性については、条件(1)~(3)のいずれについても、経過0分時点での評価が◎~△であれば実用に耐え得る。なお、経過30分時点での評価については、作業条件の設定容易性等の観点から、◎~△以上であることが好ましい。形状安定性以外については、◎~△が実用レベルである。
【0115】
【0116】
以上、実施例1~7の熱可塑性繊維シートは、水浸漬あり、経過時間0分の条件において、充分な形状安定性を示した。更に実施例1~4、実施例6、7の熱可塑性繊維シートは、水浸漬あり、経過時間30分の条件においても形態安定性を示すという優れた効果を示した。また、浸漬させる液体をエタノール(有機溶剤)に変更した場合にも高い形態安定性を示した。即ち、実施例1~7の全ての熱可塑性繊維シートは、少なくとも、仮固定から加熱溶融(本固定)までの作業時間が比較的短時間であるような作業条件において非常に有用であることが示された。
【0117】
これに対して、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の重量比が6.5/3.5を上回り、WET強度が7N/cmを下回る比較例1の熱可塑性繊維シートは、筒に巻き回す際のテンションで同シートが破断してしまうために形態安定性の評価が実施できなかった。セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の重量比が2/8を下回り、WET強度が20N/cmを上回る比較例2~4の可塑性繊維シートは、水浸漬あり、経過時間0分の条件においても形態安定性を発揮することができなかった。