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特許7123968医療流体のための容積式ポンプおよび医療流体のための容積式ポンプを備える血液処理装置ならびに医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法
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  • 特許-医療流体のための容積式ポンプおよび医療流体のための容積式ポンプを備える血液処理装置ならびに医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】医療流体のための容積式ポンプおよび医療流体のための容積式ポンプを備える血液処理装置ならびに医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220816BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61M1/36 153
F04B43/02 D
F04B43/02 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019554012
(86)(22)【出願日】2017-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017083184
(87)【国際公開番号】W WO2018114727
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】102016015110.2
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ペータース、アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ビクトル、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】エルター、ゲクハン
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06302653(US,B1)
【文献】特開昭60-259781(JP,A)
【文献】特開昭56-011064(JP,A)
【文献】特表2002-519685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0120438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療流体のための容積式ポンプであって、ポンピングチャンバと、容積式要素と、ポンピングチャンバへと、または前記ポンピングチャンバから前記流体を搬送するために前記容積式要素を変位または変形させるための、前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁と、設けられている前記駆動デバイスおよび前記吸込弁ならびに前記吐出弁を制御するための制御ユニットとを備え、
前記作動部材は、気体が充填され、かつ密閉体積を有する作動チャンバを介して前記容積式要素と動作接続し、
前記制御ユニットは、前記作動チャンバ内の圧力を測定するための圧力測定デバイスを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、圧力段階で、前記作動部材が変位されたときに前記作動チャンバ内の前記圧力が一定のままとなるように、前記吐出弁が前記圧力センサによって測定された前記圧力に依存して制御されるように設計される、
積式ポンプ。
【請求項2】
前記制御ユニットは、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように、前記駆動デバイスが制御されるように設計されることを特徴とする、請求項に記載の容積式ポンプ。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記作動部材の変位経路を測定するための経路センサを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、前記作動部材の前記測定された変位経路に基づいて実際のポンプ出力または実際の搬送速度が計算されるように設計され、前記駆動デバイスは、前記実際のポンプ出力が前記目標ポンプ出力に対応するか、または前記実際の搬送速度が前記目標搬送速度に対応するように制御される、請求項に記載の容積式ポンプ。
【請求項4】
医療流体のための容積式ポンプであって、ポンピングチャンバと、容積式要素と、ポンピングチャンバへと、または前記ポンピングチャンバから前記流体を搬送するために前記容積式要素を変位または変形させるための、前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁と、設けられている前記駆動デバイスおよび前記吸込弁ならびに前記吐出弁を制御するための制御ユニットとを備え、
前記作動部材は、気体が充填され、かつ密閉体積を有する作動チャンバを介して前記容積式要素と動作接続し、
前記制御ユニットは、前記作動チャンバ内の圧力を測定するための圧力測定デバイスを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、圧力段階で、前記作動部材が変位されたときに前記作動チャンバ内の前記圧力が一定のままとなるように、前記駆動デバイスが前記圧力測定デバイスによって測定された前記圧力に依存して制御されるように設計される、
容積式ポンプ
【請求項5】
前記制御ユニットは、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度が目標搬送速度に対応するように前記吐出弁が制御されるように設計されることを特徴とする、請求項に記載の容積式ポンプ。
【請求項6】
ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスは、前記作動チャンバ内に密封された気体の体積を介して前記作動部材と前記容積式要素との間に動作接続がもたらされることができるように、前記使い捨て品上の前記ポンピングデバイスが前記ユニット上の前記作動デバイスに結合されることができるように設計されることを特徴とする、請求項に記載の容積式ポンプ。
【請求項7】
前記容積式要素は、前記ポンピングチャンバを密閉する膜であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
【請求項8】
前記作動チャンバは円筒体であり、前記容積式要素は、前記円筒体内を誘導されるピストンであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
【請求項9】
前記駆動デバイスは電気モータを備えることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
【請求項10】
医療処理流体を搬送するための請求項1乃至のいずれか一項に記載の少なくとも1つの容積式ポンプを備える、医療技術デバイス。
【請求項11】
医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法であって、
前記ポンプは、ポンピングチャンバと、容積式要素と、前記容積式要素を変位または変形させるために前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁とを備え、
前記容積式要素は、作動空間内に密封された気体の密閉体積を介して前記作動部材によって作動されることを特徴とし、
前記吐出弁は、前記作動部材が変位されたときに前記作動空間内の圧力が一定のままとなるように前記作動空間内の前記圧力に依存して作動され、前記作動部材は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように変位されることを特徴とする、
方法。
【請求項12】
医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法であって、
前記ポンプは、ポンピングチャンバと、容積式要素と、前記容積式要素を変位または変形させるために前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁とを備え、
前記容積式要素は、作動空間内に密封された気体の密閉体積を介して前記作動部材によって作動されることを特徴とし、
前記作動部材は、前記作動部材が変位されたときに前記作動空間内の圧力が一定のままとなるように前記作動空間内の前記圧力に依存して制御され、前記吐出弁は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように作動されることを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンピングチャンバ(pumping chamber)と容積式要素とを有する、医療流体を搬送するための容積式ポンプ(positive displacement pump)、および容積式ポンプを備える血液処理装置に関する。加えて本発明は、医療流体を搬送するための容積式ポンプを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の容積式ポンプは、ポンピングチャンバおよび容積式要素を有する。流体は、ポンピングチャンバ内の容積式要素の移動によって引き起こされる体積の変化の結果として搬送される。既知の往復ポンプの場合、容積式要素は、中空円筒内を誘導され、かつ駆動ユニットによって作動されるピストンである。
【0003】
医療技術では、膜ポンプが医療流体を搬送するために使用される。膜ポンプの利点は、膜によって、搬送される流体から駆動ユニットを分離することにある。医療技術では、膜ポンプの高い要求がなされる。膜ポンプは、非常に高い搬送精度を有することが意図される。高い搬送精度を有する膜ポンプが、例えば透析で使用される。
【0004】
透析ユニットでは、ユニット上のアセンブリと、単回使用のみを意図し、かつカセット(使い捨て品(disposable))の形態であり得るアセンブリとを有する膜ポンプが使用される。カセットは、弾性膜によって閉鎖されているポンピングチャンバを備える。ユニット上のアセンブリは作動部材(actuation member)を備え、これによってポンピングチャンバ内の体積の変化があるように膜が変形され、その結果として医療流体が搬送される。吸入段階で、ポンピングチャンバの吐出口は吐出弁によって閉じられるが、一方、ポンピングチャンバの吸込口は圧力段階で吸込弁によって閉じられる。
【0005】
使い捨て品上の膜ポンプのアセンブリは、作動部材が膜を変形させることができるようにユニット上のアセンブリに結合され得る。膜ポンプのツーピース設計により、作動部材と膜との間の永久接続が可能でなくなる。
【0006】
往復膜ポンプは、機械内に高圧力を発生させるための先行技術から既知であり、このポンプにおいて膜は、作動流体(working fluid)として油圧オイルが充填された作動空間を介して動作接続(operative connection)している。結果として、膜に対する負荷が軽減されるはずであり、その耐用年数が増加する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、医療流体を搬送するための医療技術で使用するための容積式ポンプを提供することであり、当該ポンプは、ユニット上のアセンブリと使い捨て品上のアセンブリとの分離を可能にする。特に本発明の目的は、高い搬送精度で医療流体を搬送するためにツーピース構造の容積式ポンプを提供することである。加えて本発明の目的は、容積式ポンプを備える血液処理装置を提供すること、および膜ポンプを制御するための方法を指定することであり、容積式ポンプをユニット上のアセンブリと使い捨て品上のアセンブリとに分離することが可能である。
【0008】
これらの目的は、本発明にしたがって、独立請求項に記載の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態に関連する。
【0009】
本発明による医療流体のための容積式ポンプは、ポンピングチャンバと、容積式要素と、ポンピングチャンバへと、またはポンピングチャンバから流体を搬送するために容積式要素を変位または変形させるための、容積式要素と動作接続している作動部材と、作動部材を変位させるための駆動デバイスとを有する。駆動デバイスおよび吸込弁ならびに吐出弁を制御するための制御ユニットが提供される。制御ユニットは、吸入段階では吸込弁が開いて吐出弁が閉じ、圧力段階では吸込弁が閉じて吐出弁が開くように設計される。
【0010】
原理上、容積式要素は様々な設計を有し得る。好ましい実施形態では、容積式ポンプは、容積式要素として変形可能な膜を備える膜ポンプであり、この膜はポンピングチャンバを密閉する。しかしながら、容積式要素はまた、中空円筒内のピストンでもあり得る。
【0011】
本発明による容積式ポンプでは、作動部材は容積式要素に剛性的に接続されておらず、むしろ作動部材は、気体が充填され、かつ密閉体積を有する作動チャンバ(working chamber)を介して容積式要素と動作接続している。作動部材と容積式要素との間に剛性接続がないので、本発明による容積式ポンプは、ユニット上のアセンブリと使い捨て品上の単回使用アセンブリとを有するツーピース構造を可能にする。
【0012】
作動部材が移動されると、作動チャンバ内に密封された気体の体積が変位され、その結果、容積式要素は、気体の体積だけ作動される。作動部材によって変位される気体の体積は、容積式要素によってポンピングチャンバから変位される流体の体積に対応する。
【0013】
本発明による容積式ポンプは、ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスと、駆動デバイスと、ユニット上の作動デバイスの構成要素である作動部材および作動チャンバと、使い捨て品上のポンピングデバイスの構成要素である容積式要素およびポンピングチャンバとを提供する。ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスが提供されないことも可能である。
【0014】
ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスを備える実施形態では、ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスは、好ましくは、使い捨て品上のポンピングデバイスがユニット上の作動デバイスに結合されることができるように設計される。ポンピングデバイスが作動デバイスに結合されると、作動チャンバ内に密封された気体の体積を介して作動部材と容積式要素との間に動作接続がもたらされ、その結果、作動部材が容積式要素を作動、例えば変位または変形させ得る。
【0015】
作動チャンバは様々な設計を有し得る。作動チャンバは好ましくは円筒体(中空円筒)であり、ここをピストンが作動部材として誘導される。ピストンが中空円筒内を移動されると、中空円筒内に密封された気体の体積が変位され、その結果、容積式要素は気体の体積だけ作動される。
【0016】
駆動デバイスは、好ましくは、作動部材を駆動するための電気モータを備え、この電気モータは制御ユニットによって制御される。
【0017】
ポンプ出力または搬送速度を正確に設定するために、本発明による容積式ポンプは、作動チャンバ内に密封された気体の体積、特に空気の体積を介して作動部材と容積式要素を結合したときの制御ユニットの特定の設計を提供する。
【0018】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、作動チャンバ内の圧力を測定するための圧力測定デバイス、例えば電子圧力センサを備える。制御ユニットは、圧力段階で、作動部材が変位されたときに作動チャンバ内の圧力pが一定のままとなるように、吐出弁が圧力測定デバイスによって測定された圧力に依存して制御されるように設計される。これは、実際に仮定され得る、温度Tも変化しないことを前提としている。
【0019】
加えて、制御ユニットは、好ましくは、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように駆動デバイスが制御されるように設計される。圧力段階では、すなわち容積式要素がポンピングチャンバから流体を変位させるとき、作動チャンバ内の実際の圧力は一定であり、それゆえ液体の搬送体積は作動部材の変位経路に起因する。特定の目標ポンプ出力を送り出すために、制御ユニットは作動部材が変位される特定の距離を指定し、一方、特定の目標搬送速度を設定するために、制御ユニットは容積式要素の移動のための特定の速度を指定する。この実施形態は、作動部材の変位経路を介して目標流量が設定されることができるという利点を有し、作動チャンバ内の一定圧力を設定するために制御ユニットによって対応して制御されるのが、作動部材ではなく吐出弁である。
【0020】
特に好ましい実施形態は、作動部材の変位経路を測定するための経路センサを提供し、制御ユニットは、作動部材の測定された変位経路に基づいて実際のポンプ出力または実際の搬送速度が計算されるように設計され、駆動デバイスは、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度が目標搬送速度に対応するように制御される。
【0021】
代替の実施形態では、制御ユニットは、圧力段階で、作動部材が変位されたときに作動チャンバ内の圧力が一定のままとなるように圧力測定デバイスによって測定された圧力に依存して制御されるのが、吐出弁ではなく駆動デバイスであるように設計される。加えて、制御ユニットは、好ましくは、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度が目標搬送速度に対応するように吐出弁が制御されるように設計される。代替の実施形態では、圧力は、作動部材の移動を制御することによって一定に保たれる。作動部材の移動は、実際の流量を決定する。目標流量は、この実施形態では、吐出弁が制御ユニットによって対応して制御されるという点で設定される。
【0022】
本発明による容積式ポンプは、特に、医療用処理流体を搬送するための医療技術デバイスにおける、例えば抗凝固液の正確な計量のための血液処理装置(透析装置)における膜ポンプとして使用される。
【0023】
医療流体のための容積式ポンプを制御するための本発明による方法であって、当該ポンプは、ポンピングチャンバと、容積式要素と、容積式要素を変位または変形させるために容積式要素と動作接続している作動部材と、作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁とを備え、当該方法は、容積式要素が、作動空間内に密封された空気の密閉体積を介して作動部材によって作動されることを特徴とする。
【0024】
第1の特に好ましい実施形態では、吐出弁は、作動部材が変位されたときに作動空間内の圧力が一定のままとなるように作動空間内の圧力に依存して制御され、作動部材は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように変位される。
【0025】
第2の代替の実施形態では、作動部材は、作動部材が変位されたときに作動空間内の圧力が一定のままとなるように作動空間内の圧力に依存して制御され、吐出弁は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように制御される。
【0026】
本発明の実施形態が、以下の図面を参照して下記に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による容積式ポンプの実施形態の単純化された概略図である。
図2】容積式ポンプの吐出弁および作動部材を制御するための第1の実施形態を例示する概略図である。
図3】容積式ポンプの吐出弁および作動部材を制御するための第2の実施形態を例示する概略図である。
【詳細な説明】
【0028】
図1は、本発明による容積式ポンプ1を有する、医療用処理装置、特に透析装置を示す非常に単純化された概略図である。透析装置は、概略的にしか示されていない体外血液回路2を備える。医療流体が、処理を実施するために容積式ポンプ1によって搬送され、その流体は容器3中に供給されている。本実施形態では、抗凝固液が容積式ポンプ1によって体外血液回路2に供給される。
【0029】
容積式ポンプ1は、単回使用を意図し、かつ透析装置の受容ユニット7に差し込まれるカセット6(使い捨て品)の構成要素であるポンピングチャンバ5を有する、ポンピングデバイス4を備える。ポンピングチャンバ5は、吸込ライン9が接続される吸込口8と、吐出ライン11が接続される吐出口10とを備える。吸込ライン9は、処理流体、特に抗凝固液のための容器3に接続されており、吐出ライン11は、体外血液回路2に接続されている。流体、特に抗凝固液のポンピングチャンバ5への流入量は、吸込弁12によって制御され、ポンピングチャンバ5からの流体の流出量は、吐出弁13によって制御される。電磁弁または空気圧弁の形態であり得る吸込弁12および吐出弁13は、処理装置の中央制御ユニットの構成要素であってよい制御ユニット14によって制御される。
【0030】
円筒状のポンピング空間を有し得るポンピングチャンバ5は、カセット6の上部に取り付けられた可撓性膜15によってしっかりと密閉されている。
【0031】
加えて、容積式ポンプ1はユニット上に作動デバイス16を備え、この作動デバイスに使い捨て品上のポンピングデバイス4が密閉状に結合され得る。密閉は、ポンピングデバイス4の、および作動デバイス16の対向する接触表面17、18によって達成される。
【0032】
作動デバイス16は、密閉状に作動デバイス4のポンピングチャンバ5に結合され得る円筒状の作動空間を有してよい作動チャンバ19を備える。ピストンであってよい作動部材20が、作動チャンバ19内を縦方向に変位可能に誘導される。作動部材20は、結合機構(図示せず)を介してピストンを作動する電気モータ22を有してよい駆動デバイス21によって駆動される。
【0033】
ポンピングデバイス16が作動デバイス4に結合されると、作動部材20、すなわちピストンの端面との間で、作動デバイスの作動チャンバ19内に、ある体積の空気が密封され、その結果、ピストンのストローク運動は、容積式要素(膜)15の変形につながり、その結果として流体がポンピングチャンバ5から変位される。この場合、ピストンによって変位される空気の体積は、ポンピングチャンバから変位される液体の体積に対応する。
【0034】
駆動デバイス21および吸込弁ならびに吐出弁12、13を制御するための制御ユニット14は、圧力または流量を制御するための個々の方法ステップを実行するために、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号を連続処理するためのデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理要素から成る集積回路(FPGA)または他の集積回路(IC)、もしくはハードウェア構成要素を有してよい。データ処理プログラム(ソフトウェア)は、方法ステップを実施するためにハードウェア構成要素上で動作し得る。
【0035】
制御ユニット21は、吸入段階では吸込弁12が開いて吐出弁13が閉じ、圧力段階では吸込弁12が閉じて吐出弁13が開くように、吸込弁および吐出弁12、13を制御する。
【0036】
図1では、すべての構成要素が概略的にしか示されていない。吸込弁および吐出弁はまた、使い捨て品上およびユニット上に構成要素を有してもよい。
【0037】
正確なポンプ出力または搬送速度を設定するために、制御ユニット14は、作動部材20の駆動デバイス21に、および吸込弁12ならびに吐出弁13に以下の制御を提供する。
【0038】
本発明は、理想気体の熱状態方程式(p V = n Rm T 、ここでpは圧力であり、Vは体積であり、nは物質量であり、Rmはモル気体定数であり、Tは温度である)に基づいている。一般の気体方程式によれば、作動チャンバ19内の圧力pおよび温度Tは一定に保たれ、作動空間内に密封された空気の体積は、作動部材(ピストン)のストローク運動中変化しない。それゆえ圧力は一定に保たれる。制御ユニット14は、圧力測定デバイス23、例えば電子圧力センサを備え、これは作動チャンバ19内の実際の圧力を測定する。
【0039】
制御の2つの代替の実施形態が以下に説明される。図2および図3は、圧力および流量の制御を例示している。図2および図3において個々の構成要素には図1と同じ参照記号が設けられており、ポンピングチャンバ19および作動チャンバ5は、非常に単純化されて示されている。
【0040】
第1の実施形態では、制御ユニット14は、圧力段階で、作動チャンバ19内の圧力pがピストン20のストローク運動中一定のままとなるように、制御ユニットが、圧力センサ23によって測定された圧力に依存して吐出弁13を制御するように構成される。この場合、制御ユニット14は、圧力センサ23によって実際の圧力pistを測定し、一定に保たれることが意図された目標圧力psollと実際の圧力を比較する。実際の圧力を増加または減少させるために、吐出弁13の弁体は、圧力が一定となるように対応して開いたり閉じたりする。
【0041】
第1の実施形態では、容積式ポンプのポンプ出力は、作動部材の変位経路を介して制御され、この経路は経路センサ24によって測定される。制御ユニット14は、実際のポンプ出力または実際の搬送速度が、作動部材の測定された変位経路に基づいて計算されるように構成される。ポンプ出力に対応する空気の変位体積は、経路センサ24によって測定された変位経路xと、作動チャンバ19またはピストン20の端面の断面積との積から計算される。制御ユニット14は、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度Qistが目標搬送速度Qsollに対応するように駆動デバイス21を制御する。
【0042】
代替の実施形態では、制御ユニット14は、圧力段階で、作動部材が変位されたときに作動チャンバ内の圧力pが一定のままとなるように、駆動デバイス21が圧力センサ23によって測定された圧力に依存して制御されるように構成される。実際の圧力pistを一定の目標圧力psollに増加または減少させるために、制御ユニット14は、作動部材の送り速度をそれぞれ増加または減少させる。この目的のために、電気モータ22の速度は増加または減少され得る。この場合、吐出弁13は、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度Qistが目標搬送速度Qsollに対応するように制御ユニット14によって制御される。ポンプ出力または搬送速度を増加または減少させるために、吐出弁はさらにそれぞれ開いたり閉じたりする。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
医療流体のための容積式ポンプであって、ポンピングチャンバと、容積式要素と、ポンピングチャンバへと、または前記ポンピングチャンバから前記流体を搬送するために前記容積式要素を変位または変形させるための、前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁と、設けられている前記駆動デバイスおよび前記吸込弁ならびに前記吐出弁を制御するための制御ユニットとを備え、
前記作動部材は、気体が充填され、かつ密閉体積を有する作動チャンバを介して前記容積式要素と動作接続している
ことを特徴とする容積式ポンプ。
[C2]
前記制御ユニットは、前記作動チャンバ内の圧力を測定するための圧力測定デバイスを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、圧力段階で、前記作動部材が変位されたときに前記作動チャンバ内の前記圧力が一定のままとなるように、前記吐出弁が前記圧力センサによって測定された前記圧力に依存して制御されるように設計される、C1に記載の容積式ポンプ。
[C3]
前記制御ユニットは、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように、前記駆動デバイスが制御されるように設計されることを特徴とする、C2に記載の容積式ポンプ。
[C4]
前記制御ユニットは、前記作動部材の変位経路を測定するための経路センサを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、前記作動部材の前記測定された変位経路に基づいて実際のポンプ出力または実際の搬送速度が計算されるように設計され、前記駆動デバイスは、前記実際のポンプ出力が前記目標ポンプ出力に対応するか、または前記実際の搬送速度が前記目標搬送速度に対応するように制御される、C3に記載の容積式ポンプ。
[C5]
前記制御ユニットは、前記作動チャンバ内の圧力を測定するための圧力測定デバイスを備えることを特徴とし、前記制御ユニットは、圧力段階で、前記作動部材が変位されたときに前記作動チャンバ内の前記圧力が一定のままとなるように、前記駆動デバイスが前記圧力測定デバイスによって測定された前記圧力に依存して制御されるように設計される、C1に記載の容積式ポンプ。
[C6]
前記制御ユニットは、実際のポンプ出力が目標ポンプ出力に対応するか、または実際の搬送速度が目標搬送速度に対応するように前記吐出弁が制御されるように設計されることを特徴とする、C5に記載の容積式ポンプ。
[C7]
ユニット上の作動デバイスおよび使い捨て品上のポンピングデバイスは、前記作動チャンバ内に密封された気体の体積を介して前記作動部材と前記容積式要素との間に動作接続がもたらされることができるように、前記使い捨て品上の前記ポンピングデバイスが前記ユニット上の前記作動デバイスに結合されることができるように設計されることを特徴とする、C6に記載の容積式ポンプ。
[C8]
前記容積式要素は、前記ポンピングチャンバを密閉する膜であることを特徴とする、C1乃至7のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
[C9]
前記作動チャンバは円筒体であり、前記容積式要素は、前記円筒体内を誘導されるピストンであることを特徴とする、C1乃至8のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
[C10]
前記駆動デバイスは電気モータを備えることを特徴とする、C1乃至9のいずれか一項に記載の容積式ポンプ。
[C11]
医療処理流体を搬送するためのC1乃至10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの容積式ポンプを備える、医療技術デバイス。
[C12]
医療流体のための容積式ポンプを制御するための方法であって、
前記ポンプは、ポンピングチャンバと、容積式要素と、前記容積式要素を変位または変形させるために前記容積式要素と動作接続している作動部材と、前記作動部材を変位させるための駆動デバイスと、吸込弁および吐出弁とを備え、
前記容積式要素は、作動空間内に密封された気体の密閉体積を介して前記作動部材によって作動されることを特徴とする、方法。
[C13]
前記吐出弁は、前記作動部材が変位されたときに前記作動空間内の圧力が一定のままとなるように前記作動空間内の前記圧力に依存して作動され、前記作動部材は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように変位されることを特徴とする、C12に記載の方法。
[C14]
前記作動部材は、前記作動部材が変位されたときに前記作動空間内の圧力が一定のままとなるように前記作動空間内の前記圧力に依存して制御され、前記吐出弁は、ポンプ出力がプリセットの目標ポンプ出力に対応するか、または搬送速度がプリセットの目標搬送速度に対応するように作動されることを特徴とする、C12に記載の方法。
図1
図2
図3