(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ガス拡散層として有用な疎水性の導電性微多孔質層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20220816BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01M4/88 C
H01M4/88 H
B32B5/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105312
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・オズーフ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・フォウダ-オナナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・ポシェ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・ピカール
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/023135(WO,A1)
【文献】特開2015-063127(JP,A)
【文献】特開2014-075354(JP,A)
【文献】特開平10-092440(JP,A)
【文献】特表2007-516080(JP,A)
【文献】特開2016-104852(JP,A)
【文献】特表2001-513125(JP,A)
【文献】特開昭59-058759(JP,A)
【文献】特開昭59-055315(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0046445(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0071445(US,A1)
【文献】特表2020-528952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の表面に疎水性の導電性微多孔質層(MPL)を形成するために有用な方法であって、
(a)炭素粒子の非水性分散液を提供するステップと、
(b)支持体の表面に、この分散液の堆積物を形成するステップと、
(c)ステップ(b)において形成された前記堆積物を乾燥して前記微多孔質層を形成するステップと、
からなるステップを少なくとも含み、
前記炭素粒子が、有機溶媒中の少なくとも1つのポリペンタフルオロスチレンポリマー溶液とともに前記分散液中に配合されており、
前記分散液が、0.5重量%から20重量%の炭素粒子、0.2重量%から20重量%のポリペンタフルオロスチレン、及び60重量%から99重量%の溶媒を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ポリペンタフルオロスチレンが溶媒N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)中に可溶化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペンタフルオロスチレンが、10000gmol
-1から1000000gmol
-1の間の数平均モル質量M
nを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペンタフルオロスチレンが、36000gmol
-1から50000gmol
-1の間の数平均モル質量M
n及び1.6~2.5の質量分散度D
Wを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素粒子が、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維、粉砕炭素繊維、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分散液が、1重量%から10重量%の炭素粒子、0.5重量%から10重量%のポリペンタフルオロスチレン、及び80重量%から98.5重量%の溶媒を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素粒子及び前記ポリペンタフルオロスチレンが、2対10の炭素粒子/ポリペンタフルオロスチレン重量比で使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)における乾燥が、90℃から115℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)における堆積が、コーティングによって行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体が炭素繊維で形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(d)ステップ(c)の最後に得られた前記微多孔質層を洗浄するステップ、からなるステップ(d)を少なくとも含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が非プロトン性溶媒から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、クロロホルム、トルエン、フルオロベンゼン、THF、ジメチルアセトアミド(DMAc)、Nメチル-2-ピロリドン(NMP)、及びN,N-ジメチルホルムアミドから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガス拡散層を形成する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法から得られた疎水性導電性微多孔質層
で導電性支持体
を被覆するステップを含む、ガス拡散層を形成する方法。
【請求項15】
燃料電池における、請求項14に記載の
方法で形成されたガス拡散層の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池で使用される種類のガス拡散層を形成するのに適した導電性微多孔質層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料電池の単一の個別のセルまたは複数の個別のセルのスタックによって形成され、個別のセルは通常、イオン交換電解質によって分離された2つの電極で構成され、このアセンブリは2つの双極板の間に挟まれている。これらの電極は、典型的には、触媒が充填された、電気化学反応の場である活性層、およびガス拡散層を含む。活性層(アノード、カソード)と試薬(H2、空気またはO2)の分配のためのチャネルとの間に挿入されたこのガス拡散層は、多孔性の導電性構造で構成され、通常は炭素をベースとする。これは、複数の役割(機械的応力、チャネルから活性層へのO2およびH2の輸送、カソードからチャネルへの水管理(液体および/または蒸気)、電子輸送など)を果たす。
【0003】
したがって、燃料電池の性能は、ガス拡散層の特性に大きく依存する。それは、まず活性層に燃料または酸化剤を供給し、次に活性層から双極板に電子を輸送するために重要である。
【0004】
しかし、電気化学反応中に水が形成され、これにより、燃料電池の性能に有害なフラッディング現象が発生する可能性がある。より具体的には、フラッディング現象が発生した場合、電極へのガスの拡散が遅くなるか、さらには遮断される。この現象は、特にガス拡散層の細孔が液体水で満たされると増加し、したがって、セルがより高い相対湿度に曝されると悪化する。したがって、セルが提供できる最大電流は、電極へのガスの拡散メカニズムに依存する。
【0005】
このフラッディング現象の望ましくない影響を制限するために、ガス拡散層として、基板(例えば、炭素繊維基板)上に支持された疎水性導電性微多孔質層(MPL)を使用することがすでに提案されている。
【0006】
第1の変形例によれば、この疎水性導電性微多孔質層は、電気伝導に必要とされる、粉砕されるか又は気相で製造される炭素粒子又は炭素繊維がその中に分散されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される(特許文献1)。この層は典型的に、PTFEと炭素粒子の水溶液分散体を炭素含有支持体上に堆積し、次いで、200℃より高い温度、一般的に350℃程度の温度で、形成された堆積物に焼結タイプの熱処理を施すことによって形成される(特許文献1)。明らかな理由により、この焼結ステップはコストと実施の点で厳しい場合がある。
【0007】
第2の変形例では、支持体上に堆積された分散体は、有機溶媒中に溶解されたポリフッ化ビニリデンポリマーを含む(特許文献2)。微多孔質層(MPL)は、この場合、微多孔質層の特性を制御できるようにする転相プロセスによる形成された堆積物の凝固によって得られる(非特許文献1)。疎水性導電性微多孔質層を形成するこの変形実施形態は、層の表面不均一性に関する懸念を生じさせる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】仏国特許出願公開第3028352号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2755541号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Bottino et al、International Journal of Hydrogen Energy、40、2015年、14690-14698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
その結果、疎水性であり、ガス拡散と互換性のある導電性微多孔質層を形成するための、単純で、安価で、特に、産業的に互換性のある技術が必要である。本発明は、特にこの期待を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第1の主題は、支持体の表面に疎水性の導電性微多孔質層(MPL)を形成するために有用な方法であって、
(a)炭素粒子の非水性分散液を提供するステップと、
(b)支持体の表面に、この分散液の堆積物を形成するステップと、
(c)ステップ(b)において形成された前記堆積物を乾燥して前記微多孔質層を形成するステップと、該当する場合には、
(d)ステップ(c)の最後に得られた前記微多孔質層を洗浄するステップと、
からなるステップを少なくとも含み、
前記炭素粒子が、有機溶媒中の少なくとも1つのポリペンタフルオロスチレンポリマー溶液とともに前記分散液中に配合されていることを特徴とする、方法である。
【0012】
本発明において、層は、その構成材料の外表面がその上に堆積された水滴が拡散しないものである場合、疎水性であると言う。特に、水滴の液体/気体界面は、90°より大きい表面接触角をなす。当然ながら、この疎水性の特性は、特に材料の多孔性において、層の厚さ全体にわたって再現される。これは特に、この層を通る断面の表面のXPS分析によって観察され得る。
【0013】
「非水性分散液」との用語は、水を含まないか、または非常に少量の水を含む有機溶媒中の固体粒子の分散液を指す。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、上で定義された方法から得られるガス拡散層に関する。
この態様によれば、このガス拡散層は、本発明による疎水性導電性微多孔質層で被覆された、例えば炭素を含む導電性支持体で形成される。
【0015】
最後に、本発明は、特に燃料電池、特にプロトン交換膜燃料電池における、本発明によるガス拡散層の使用に関する。
【0016】
本発明の様々な主題の他の特徴、変形、および利点は、以下の説明、実施例、および図を読むことによりより明確になるが、これらは例示であり、本発明を限定するものではない。
【0017】
本文の残りの部分では、「・・・から・・・の間」、「・・・から・・・まで」および「・・・から・・・の範囲」という表現は同等であり、特に明記しない限り、エンドポイントが含まれることを示す。
【0018】
特に明記しない限り、「含む(containing)/含む(comrising)」という表現は、「少なくとも1つを含む」として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】相対湿度20%、圧力1.5bar、及び温度80℃での本発明(試験1)または非発明(対照試験2)の東レTGP-H-060支持体上のガス拡散層を含むセルの分極曲線を示す。
【
図2】相対湿度50%、圧力1.5bar、及び温度80℃での本発明(試験1)または非発明(対照試験2)の東レTGP-H-060支持体上のガス拡散層を含むセルの分極曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の主題は、支持体の表面に疎水性の導電性微多孔質層(MPL)を形成するために有用な方法であって、
(a)炭素粒子の非水性分散液を提供するステップと、
(b)支持体の表面に、この分散液の堆積物を形成するステップと、
(c)ステップ(b)において形成された前記堆積物を乾燥して前記微多孔質層を形成するステップと、該当する場合には、
(d)ステップ(c)の最後に得られた前記微多孔質層を洗浄するステップと、
からなるステップを少なくとも含み、
前記炭素粒子が、有機溶媒中の少なくとも1つのポリペンタフルオロスチレンポリマー溶液とともに前記分散液中に配合されていることを特徴とする、方法である。
【0021】
本発明の文脈では、ステップ(a)において提供される非水性分散体は、ポリペンタフルオロスチレンの有機溶媒の溶液であって、前記溶液中に少なくとも炭素粒子が含まれる、溶液を含む。
【0022】
ポリペンタフルオロスチレン(PPFS)ポリマーは、それらの疎水性と高い機械的安定性に有利なポリマーである。
【0023】
本発明に適したポリペンタフルオロスチレンは、10000gmol-1から1000000gmol-1の間、好ましくは10000gmol-1から100000gmol-1の間、より好ましくは12000gmol-1から50000gmol-1の間の数平均分子量Mnを有する。さらに、有利には、1から2.5の間の質量分散度DWを有する。
【0024】
質量分散度DWは、方程式Dw=Mw/Mnから計算することができ、式中、MWは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0025】
重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、特に、ヨウ素アレイUVシステムをさらに備えたTDA305トリプル検出器(RI/UV、IV、LALS/RALS)に接続されたMalvern Instruments Viskotek GPCMax装置などを使用した、トリプル検出を備えたサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定され得る。
【0026】
これらのポリマーは商業的に入手可能であるか、または有利には、以下の実施例1に記載されているプロトコルによって得ることができる。
【0027】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、ポリペンタフルオロスチレンは、36000gmol-1から50000gmol-1の数平均分子量Mn及び1.6から2.5の質量分散度DWを有する。
【0028】
有機溶媒は、具体的に選択されるようにするためにポリペンタフルオロスチレンを可溶化し、炭素粒子を分散させるように選択される。
【0029】
溶媒は、例えば、非プロトン性溶媒から、特に、クロロホルム、トルエン、フルオロベンゼン、THF、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)およびN、N-ジメチルホルムアミドから選択され得る。
【0030】
好ましい1つの実施形態によれば、ポリペンタフルオロスチレンは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で可溶化する。
【0031】
本発明の変形実施形態によれば、ポリペンタフルオロスチレンは、0.2%から20%、好ましくは0.5%から10%、より好ましくは0.5%から3%の質量濃度で溶媒中に可溶化される。
【0032】
分散液中の炭素粒子の目的は、微多孔質層に導電性を付与することである。また、熱伝導率を高め、燃料電池で発生した熱を逃がすことを可能にする。
【0033】
これらの炭素粒子は、有利には1ミリメートル未満、好ましくは、250μm未満の寸法を有し、20から50nmの範囲でさえ可能である。
【0034】
炭素粒子は、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維、粉砕炭素繊維およびそれらの混合物、好ましくはカーボンブラック、炭素繊維およびそれらの混合物から選択される。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、炭素粒子は少なくともカーボンブラックを含む。
【0036】
別の実施形態によれば、炭素粒子は、炭素繊維であってもよい。これらの炭素繊維は、有利には気相で製造される。特に、これらの繊維は、黒鉛状炭素を含み得る。それらは、1から50μm、好ましくは5から25μmの長さによって特徴付けられる。
【0037】
例えば、炭素繊維は、VGCF(登録商標)繊維であってよい。特に、気相で製造された炭素繊維は、微多孔質層の乾燥の間に形成されるクラックの数を制限しながら、熱および電気伝導率の増加を可能にする。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、炭素粒子は、カーボンブラックと炭素繊維、特に気相で生成されたもの混合物である。
【0039】
分散液の組成は、特に炭素粒子、ポリペンタフルオロスチレンポリマー、および溶媒の比率が、以下の微多孔質層を得るように調整される。
・ガスの拡散および最適な製品輸送に適合した多孔度、
・低い電気抵抗、
・十分な機械的安定性、および
・十分な熱伝導率。
【0040】
分散液は、0.5重量%から20重量%の炭素粒子、0.2重量%から20重量%のポリペンタフルオロスチレン、及び60重量%から99重量%の溶媒、好ましくは、1重量%から10重量%の炭素粒子、0.5重量%から10重量%のペンタフルオロスチレン、および80重量%から98.5重量%の溶媒、より好ましくは3重量%から7重量%の炭素粒子、0.5重量%から3重量%のポリペンタフルオロスチレン、及びから90重量%から96.5重量%の溶媒を含んでよく、好ましくは、溶媒はN-メチル-2-ピロリドンである。
【0041】
水性分散液のポリマー含有量は、この分散液の総重量に対して、固形分として表すと、10重量%から30重量%の間の範囲であってもよい。
【0042】
本発明の別の態様によれば、炭素粒子及びポリペンタフルオロスチレンは、2対10、好ましくは3対7、さらに好ましくは4対5の炭素粒子/ポリペンタフルオロスチレン重量比で使用され得る。
【0043】
本発明の一変形形態によれば、ステップ(a)で使用される分散液の成分は、超音波によって、または例えば回転子-固定子タイプの機械的分散機を用いて事前に分散されてもよい。分散液は、好ましくは、真空分散機を用いて調製される。特に、分散ステップの前に、様々な炭素粒子がまず混合され、その後、ポリペンタフルオロスチレンが添加され、最後に溶媒が添加される。
【0044】
ステップ(b)の過程で、分散液は支持体の表面に堆積される。
【0045】
支持体は、一般に導電性炭素で構成される基板である。支持体は、特に炭素繊維で形成され得、好ましくは、カーボンペーパー、フェルト又は織物であってもよい。この支持体は、特に、より好ましくは50μmから500μmの厚さ、より好ましくから80μmから150μmのの厚さを有する。
【0046】
堆積ステップは、支持体の表面上に形成される堆積物の量および均一性を制御することを可能にする。
【0047】
本発明の一態様によれば、ステップ(b)における堆積は、コーティングにより行われる。例えば、コーティングは、分散液に支持体を浸漬することによって、または支持体上の分散液を蒸発させることによって実行され得る。コーティングはまた、ローラ、ドクターブレードまたはナイフによって行われてもよい。また、遠心コーティングが必要になる場合もある。コーティングは、好ましくは、バーを使用して、特に、200μmの高さを有するバー、および、例えば、200μmの高さを有するナイフコーティングバーをし応して行われる。
【0048】
分散液のこの堆積は、100℃未満の温度、好ましくは周囲温度(これは18から25℃の範囲の温度である)で行われる。
【0049】
ステップ(c)では、予想される微多孔質層を形成するように、上記の堆積物を乾燥させる。このステップは、機械的に安定で、導電性であり、疎水性である微多孔質層を得るために特に必要である。
【0050】
本発明の文脈では、微多孔質層は、有利には、ステップc)における乾燥後に得られ、これは90℃から115℃の範囲の温度で行うことができる。
【0051】
有利には、本発明による方法は、焼結工程を必要としない。
【0052】
堆積物は、オーブン内、炉内、あるいはホットプレート上、特に誘導板上で乾燥させることができる。乾燥時間は、使用する加熱方法によって異なる。方法に関係なく、一般に5時間未満、好ましくは1から2時間で行われる。
【0053】
有利には、得られた堆積物は、乾燥後、10μmから60μm、好ましくは10μmから30μmの厚さを有する。
【0054】
上記のように、この乾燥ステップの後に、必要に応じて、不純物、残留溶媒、またはポリマーに結合されていない炭素粒子を除去するために、洗浄ステップ(d)を続けてもよい。特に、得られる微多孔質層を水で、好ましくは超純水で洗浄することができる。
【0055】
本発明に従って処理された支持体は、特に、10g/m2から50g/m2の間、好ましくは15g/m2から40g/m2の間の表面重量を有する疎水性導電性微多孔質層で被覆され得る。
【0056】
疎水性は、特に、以下の実施例で詳述される水滴試験により、層の表面で特徴付けることができる。
【0057】
本発明による方法により得られる、疎水性導電性微多孔質層で被覆された支持体は、ガス拡散層を形成するのに適しており、したがって、そのような層で知られている様々な機能に使用できる。
【0058】
したがって、本発明は、同様に、本発明の方法によって得られるガス拡散層、および燃料電池、特にプロトン交換膜燃料電池におけるその使用に関する。
【0059】
特に、本発明に係るガス拡散層を含むセルは、特に100%の相対湿度において、ガス中の高い相対湿度で高い電流密度を達成することができる。
【0060】
本発明によるガス拡散層、特に実施例における試験1による層は、80℃および1.5bar、相対湿度20%および相対湿度50%で、電流密度2A/cm2で0.6V以上の電圧を有することができ、したがって期待される効率を実際に示すことができる。
【0061】
以下の例は、例示の目的で与えられており、本発明の範囲に限定的な影響を与えるものではない。
【0062】
[実施例]
設備と技術
使用した原料は以下の通りであった:
‐東レTGP-H-060の名称で販売されている炭素繊維支持体
‐Cabot社によって販売されている99%の固体含有量を有するVulcan XC72(登録商標)カーボンブラック
‐昭和電工社によって販売されている99%の固体含有量を有するVGCF(登録商標)炭素繊維
‐Sigma Aldrich社によって販売されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
【0063】
電気化学的性能は、25cm2の表面領域に、動作条件をシミュレートして、単セルテストベンチで試験した。試験は市販のCCM(触媒被覆膜)電極GORE GFCGO113 A510.1/M820.15/C580.4で行った。これらのCCMには、アノードに表面濃度0.1mg/cm2で、カソードに0.4mg/cm2で白金が充填される。
分極曲線は、空気中、80℃及び1.5bar、20%および50%の相対湿度(RH)で測定される。
【0064】
〔実施例1〕
ポリ(2,3,4,5,6‐ペンタフルオロスチレン)(PPFS)の合成
丸底フラスコ中で、500μLののTiCl4を6mLのトルエンに加えた。6mLのトルエン中の750μLのトリエチルアルミニウム溶液をそこに滴下添加することによって触媒を調製する。混合物を30分間安定させる。
【0065】
形成された1.5mLのTiCl4/AlEt3触媒系を、その後、Sigma-Aldrich社によって196916-25G(CAS:653-34-9)として販売されている3mLの2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFS)に一度に加える。
【0066】
混合物を攪拌し、12時間70℃にして、次いで36時間120℃にする。
得られた生成物をフルオロベンゼンに溶解し、次いで触媒をエタノールで中和して、濾過する。
【0067】
ポリマー溶液をメタノールから沈殿させる。
92%の質量収率が得られる。
トリプル検出を備えたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定された数平均分子量はMn=24kg/molであり、質量分散度はDw=Mw/Mn=1.6である。
1HNMR(400MHz;THF-d8;298K):δppm2.1;2.5;2.9
13CNMR(400MHz;THF-d8;298K):δppm32.4;37.3;115;136.1;138.7;141.3;143.8;146.2
19FNMR(400MHz;THF-d8;298K):δppm-143.8(t、2F);-157(s、1F);-163(s、1F)
【0068】
〔実施例2〕
本発明または非本発明の微多孔質層の調製
炭素粒子及びNMP中のPPFSの本発明の分散液、試験1、並びにPPFSの代わりに水中のポリテトラフルオロエチレンを使用した非本発明の分散液、対照試験2、を以下の通り調製する。
カーボンブラック(Vulcan XC 72)及び気相で製造した炭素繊維(VGCF)を制御された雰囲気下で混合する。次いで、対象の疎水性ポリマー、続いて溶媒(NMPまたは水)が加えられる。次いで、混合物を真空下(-0.9bar)で、6000rpmで20分間Dispermatで分散させ、分散液を形成する。
【0069】
以下の表1は、各試験において、各分散液で使用された比率を、分散液の総質量に対する質量百分率として表し、また使用した支持体を報告する。
【0070】
【0071】
分散液は、試験1及び対照試験2のために、200μmの高さを有するナイフコーティングバー使用して、周囲温度でコーティングによって東レTGP-H-060支持体上に堆積する。試験1の堆積物を周囲温度で20分間放置した後、コーティングプレートを95℃で1時間30分間加熱する。
【0072】
逆に、対照試験2の堆積物は、空気中で350℃で30分間焼結することにより得られる。
得られた各層を乾燥後、超純水で3回すすぎ、支持体及び微多孔質層(MPL)で形成されたガス拡散層が得られる。
【0073】
〔実施例3〕
実施例2で得られた微多孔質層の特性評価
実施例2で得られた微多孔質層の表面特性は、水滴の付着によって評価する。様々な試験で得られたすべての堆積物は、疎水性の表面を示す。逆に、この特性は、熱処理後にのみ対照試験2で得られることに留意すべきである。
【0074】
炭素支持体上に形成されたこれらの様々な微多孔質層を、燃料電池のガス拡散層として使用して、ガス拡散層の電気化学的性能は、設備及び技術のセクションで上述したプロトコルに従って試験した。
【0075】
実施例2において試験1及び対照試験2で得られた微多孔質層の20%及び50%の相対湿度で測定した分極曲線を
図1及び2図にそれぞれ示す。東レTGP-H-060支持体上のこれら二つの微多孔質層の性能は同様であり、約0.6Vの電圧で2A/cm
2の電流密度に達する。従って、PPFSは、微多孔質層の調製のためにPTFEに確かに代わるものであり、PPFSの場合には焼結工程なしで低温での方法によって得られる。