(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】工具ホルダシャンクの制御された安定化装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20220816BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B23B31/117 610C
B23Q3/12 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020120649
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】102019000011766
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518045476
【氏名又は名称】アルグラ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ALGRA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】VIA MAGNAVACCHE 4,FRAZIONE LOCALITA BREMBILLA,24012 VAL BREMBILLA(BG),ITLIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェツォリ、ジョバンニ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009030386(DE,A1)
【文献】実開平06-011907(JP,U)
【文献】実開平04-057307(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00 - 31/42
B23Q 3/12
F16B 7/20
F16L 19/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式または非電動式であり、ER
接続タイプまたは他の
接続タイプの
固定のために予め配置されている、各リングナット上の工具ホルダシャンクを制御して安定させるための工具ホルダシャンクの制御された安定化装置であって、
リングナット(12)と、
接続手段により前記リングナット(12)に接続される部位が前記リングナットの内部に配置されることが意図されている溝(18)を外部に備える切頭円錐台形状の工具ホルダシャンク(10)と、
を具備し、
前記接続手段は、外方および中央に突出して対向する突起を画定し、アーチ型凸面状の外形プロファイルをもつ成形凸部(20)を形成する成形半割リング(14,16)に形成された少なくとも2つに形成された環状体
からなり、
前記成形半割リング(14,16)の前記成形凸部(20)の各々の上に、弾性ピン(24)を収容するのに適した前記成形半割リングの厚さ方向に延びる凹部(22)がそれぞれ形成されており、前記成形半割リングが矩形状の断面を画定する、
ことを特徴とする工具ホルダシャンクの制御された安定化装置。
【請求項2】
前記凹部(22)は、前記成形半割リング(14,16)の中央に形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記リングナット(12)は、前記工具ホルダシャンク(10)の前記溝(18)に配置された前記成形半割リング(14,16)の成形凸部(20)を挿入して、前記工具ホルダシャンクの角回転後に前記リングナットでバヨネットカップリングを形成する対向部(26)と下降領域(26´)とが交互に形成されてなる一体化不連続円形クラウンを内部で画定する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記成形半割リング(14,16)および前記工具ホルダシャンク(10)を前記リングナット(12)に堅固に接続するための弾性ピン(24)の通過のための貫通穴(28)が前記対向部(26)にそれぞれ形成されていることを特徴とする
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記リングナット(12)は、
該リングナットの軸方向において前記対向部(26)
よりも後方に形成され、前記対向部(26)の前記貫通穴(28)と向き合いかつ位置合わせされた止まり穴(32)を備えた
円形クラウン(30)を内部的に画定し、前記弾性ピン(24)の前端部が前記止まり穴(32)に隣接している、ことを特徴とする
請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工具ホルダシャンクの制御された安定化装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、それぞれのリングナット上の工具ホルダシャンクをブロックして、回転シャフト内で前記シャンクを安定させるのに適した安定化装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電動式または非電動式のいずれであっても、工具ホルダシャンクは、これに限られるものではないが、予め配置されているERタイプの締結要素で組み立てるのが好ましい。本発明の安定化装置は、電動式または非電動式の工具ホルダ、複数または単一の工具ホルダとして知られている機械本体のスピンドルまたは回転シャフトの対応する座部に異なる工具ホルダシャンクを方位付けしてクランプするために、マルチスピンドルまたはシングルスピンドル旋盤、ターニングおよびミリングセンタ、トランスファ工作機械などのCNC工作機械に有利に適用されるものである。
【0004】
周知のように、シャンク自体の中央外側部分に形成された特殊な溝のなかに配置される2つの半割リングは、それぞれのリングナットの工具ホルダシャンクをブロックするために伝統的に使用されている。コーティングされたグリースの作用により、半割リングは溝内の所定の位置に留まる。目釘(合わせくぎ)によってシャンクとリングナットとの間がその後に取り付けられる。これらの目釘は、前記リングナットに作製されたそれぞれのねじ穴に半径方向に挿入され、尖った端で半割リングに当接して固定される。このようにして、シャンクおよびリングナットは自由に回転することができ、リングナットはその雌ねじによって回転シャフトの前部に接続される。
【0005】
この公知の解決策には、リングナットに半径方向に挿入されたロック目釘の使用に関連する大きな欠点がある。実際には、機械加工中に発生する振動の結果として、上記の目釘が緩んで徐々にねじを緩める可能性がある。それらのねじがリングナットの回転のために受ける遠心力は、それらのねじをそれぞれのねじ穴から完全に抜け落ちさせるおそれがある。脱落した目釘が作業環境のなかに激しい勢いで飛び跳ねると、近傍エリアにいる人に対して重大な傷害を引き起こすおそれがある。また、このような場合に、工具ホルダのシャンクロックリングナットが取り付けられている工作機械に対して深刻なダメージを及ぼすおそれもある。
【0006】
フランス特許 2616071号公報には、ERタイプの締結工具ホルダシャンクのそれぞれのリングナットの制御された安定化のための装置が記載されている。この従来技術では、円錐台形状のシャンクは、工具ホルダへの取り付け手段を収容するための溝に外部から取り付けられている。米国公開2006/197292号公報は、コレット自体の溝の内側に保持タブを挿入することにより、ロックナットを用いてコレットアセンブリを組み立てる解決策を開示している。英国特許第2256381号公報には、異なるコレットを工作機械チャックのチャック本体に解放可能に固定するための固定装置が記載されている。この固定装置は、チャックに恒久的にボルトで固定された外部本体と、半径方向外向きのフィンが取り付けられたリングインサートとで構成されている。ドイツ特許 39 38 689号公報には、工作機械のチャック用コレットホルダが記載されている。この従来技術のコレットホルダでは、コレットをねじ付きリングによって前端で保持し、工具シャンク上のコレットをクランプするための2つの反対側の可動ウェッジがあるスライドカップにフィットさせている。ドイツ公開10 2005 016161号公報には、チャックを保持位置に固定するためのクランプナットに関し、ばね式ボールなどの要素を備えるクランプユニットが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した様々な欠点を克服することにある。
【0008】
より具体的には、本発明の目的は、工具ホルダシャンクの各リングナットへの遮断が、リングナットに接続された部品の偶発的な脱落の危険性なしに安全に実行される、工具ホルダシャンクの制御された安定化のための装置を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、リングナットと工具ホルダシャンクとの間の接続手段がリングナット自体の内側に配置され、よって完全に安全な位置に配置される、上述のように規定された装置を提供することにある。
【0010】
重要なことが後回しになったが、本発明の目的は、前記接続手段がリングナットおよび工具ホルダシャンクに関して恒久的に安定化されている装置を提供することにある。
【0011】
本発明のさらなる目的は、軸方向の変位の可能性なしに、工具ホルダシャンクが動作位置に恒久的に留まることを保証する装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、容易かつ経済的に製造されることに加えて、経時的に高レベルの抵抗および信頼性を確保するのに適した工具ホルダシャンクの制御された安定化のための装置をユーザに利用可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらおよび他の目的は、主請求項による、本発明の工具ホルダシャンクの制御された安定化装置によって達成される。
【0014】
本発明の装置の構造および機能的特徴は、好ましい非限定的な実施形態を示す添付の図面/図表を参照し、以下の詳細な説明からより明確に理解することができる。
【発明の効果】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、工具ホルダシャンクをそれぞれのリングナットに固定するのに適した本発明の装置を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、それぞれのリングナットに接続するための工具ホルダシャンクに設けられた手段を強調するために
図1と同じ装置を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、前記接続手段がリングナットと係合するのに適した弾性ピンを備える
図1と同じ装置を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1と同じ装置及びねじ付きシャフトヘッドからなる追加要素を概略的に示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の構成要素を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず
図1を参照すると、本発明の工具ホルダシャンクの制御された安定化装置は、工具ホルダシャンク10、リングナット12、および少なくとも2つの成形半割リング14,16から形成される環状本体を備えている。工具ホルダシャンク10は、円錐台形状を慣用的に画定するものであり、例えば、成形半割リング14,16を収容するためにその外周面に沿って作られた矩形のプロファイルを有する溝18が設けられている。半割リング14,16は、2つより多いいくつかの相補的な部分で作製され得ることが理解される。
【0018】
本発明によれば、半割リングの各々は、実質的に半円形の延長部を画定し、中央位置において隆起が突出し、外周に成形凸部20を形成する。凸部20は、リングナット12で形成された以下に説明する座部のプロファイルと一致する外側凸状湾曲プロファイルを有している。成形された半割リング14,16の各凸部20上に、好ましくは中央の位置に、例えば矩形断面をもつ半割リングの厚さ方向に延び出す凹部22が形成される。凹部22は、弾性ピン24をそれぞれ収容するために予め配置されており、弾性ピン24によって成形半割リング14,16がリングナット12の内側に堅固に接続されている。
【0019】
リングナット12は、対向部26(
図2、
図3、
図4には1つのみを示す)から形成された一体化不連続円形クラウンを内部に画定し、対向下降領域26´は、シャンク10の溝18に配置された成形半割リング14,16の成形凸部20の通過を可能にする。成形凸部20は、それと結合する所謂「バヨネット」型カップリングを生成するためにリングナット内側の円形クラウンを乗り越えて通過する。円形クラウンの2つの対向する部分26に沿って貫通穴28が弾性ピン24の通過のためにそれぞれ形成されている。これらの弾性ピン24は、半割リング14,16およびシャンク10をリングナット12に堅固に接続するものである。対向部26の後方のリングナット12上に形成された付加的な円形クラウン30には、対向部26の貫通穴28と向き合い、かつ位置が揃うように位置付けられた他の止まり穴32が設けられている。
【0020】
成形半割リング14,16が溝18に配置され、予めコーティングされたグリースによってそこに保持されたシャンク10は、リングナット12内に挿入され、約90°回転した後に、上述したバヨネットカップリングの手段によりリングナット12内で安定化する。この動作により、弾性ピン24を部分の穴28と位置合わせし、それらに押し込んで、シャンク10をリングナット12に確実に固定することができる。これにより、弾性ピン24は、対向部26の貫通穴28と恒久的に係合し、貫通穴からそれぞれ突出して、円形クラウン30上に形成された止まり穴32にさらに嵌まり込み、固定の追加的な保証およびいかなる移動の可能性からも保護される。
【0021】
次いで、成形半割リング14,16が取り付けられたシャンク10、貫通穴28および止まり穴32に弾性ピンが挿入されたリングナット12からなる組立品が、
図5に示すように、工作機械の回転軸38の内側に形成された座部に取り付けられる。アセンブリの組み立ては、リングナット12を手動で時計回りに回転させることにより行われ、リングナット12は、フロントまたはねじ付ヘッド40にねじ込まれている。リングナット12を反時計回りに回転させると、組立品のロックが解除され、取り外すことができる。
【0022】
上記の説明から明らかなように、本発明が達成する利点は明らかである。
【0023】
本発明の工具ホルダシャンクの制御された安定化装置は、工具ホルダシャンク10を安定させ、それらが取り外されることなく回転することを可能にするためにリングナット12に半径方向に挿入される合わせ釘の使用を含まないものである。弾性ピン24を備えたリングナット12の内部で実行されるこの安定化は、非常に効果的であり、偶然に合わせ釘そのものが緩み、リングナットから猛烈な力で振り飛ばされ、周囲に居る人々の安全と工作機械の完全性と操作の継続性の両方に深刻な危険をもたらす従来技術の危険を回避する。さらに、本発明の装置は、工具ホルダシャンクが軸方向の変位の可能性なしに、恒久的にその動作位置に留まることを保証する。
【0024】
非限定的な例としてのみ与えられた、その実施形態の1つを特に参照して上記に記載された本発明にもかかわらず、多数の改変および変形は、上記説明を参照して当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲および範囲内にあるすべての修正および変形を包含するものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 電動式または非電動式であり、ERまたは他のタイプの固定が予め配置されている、各リングナット上の工具ホルダシャンクを制御して安定させるための工具ホルダシャンクの制御された安定化装置であって、
リングナット(12)と、
接続手段により前記リングナット(12)に接続される部位が前記リングナットの内部に配置されることが意図されている溝(18)を外部に備える切頭円錐台形状の工具ホルダシャンク(10)と、
を具備し、
前記接続手段は、外方および中央に突出して対向する突起を画定し、アーチ型凸面状の外形プロファイルをもつ成形凸部(20)を形成する成形半割リング(14,16)に形成された少なくとも2つに形成された環状体からなる、ことを特徴とする工具ホルダシャンクの制御された安定化装置。
[2] 前記成形半割リング(14,16)の前記成形凸部(20)の各々の上に、弾性ピン(24)を収容するのに適した前記成形半割リングの厚さ方向に延びる凹部(22)がそれぞれ形成されており、前記成形半割リングが矩形状の断面を画定する、ことを特徴とする[1]に記載の装置。
[3] 前記凹部(22)は、前記成形半割リング(14,16)の中央に形成されていることを特徴とする[2]に記載の装置。
[4] 前記リングナット(12)は、前記工具ホルダシャンク(10)の前記溝(18)に配置された前記成形半割リング(14,16)の成形凸部(20)を挿入して、前記工具ホルダシャンクの角回転後に前記リングナットでバヨネットカップリングを形成する対向部(26)と下降領域(26´)とが交互に形成されてなる一体化不連続円形クラウンを内部で画定する、ことを特徴とする[1]に記載の装置。
[5] 前記成形半割リング(14,16)および前記工具ホルダシャンク(10)を前記リングナット(12)に堅固に接続するための弾性ピン(24)の通過のための貫通穴(28)が前記対向部(26)にそれぞれ形成されていることを特徴とする[4]に記載の装置。
[6] 前記リングナット(12)は、前記対向部(26)の後方に形成され、前記対向部(26)の前記貫通穴(28)と向き合いかつ位置合わせされた止まり穴(32)を備えた前記一体化不連続円形クラウン(30)を内部的に画定し、前記弾性ピン(24)の前端部が前記止まり穴(32)に隣接している、ことを特徴とする[5]に記載の装置。
【符号の説明】
【0025】
10…工具ホルダシャンク、12…リングナット、14,16…半割リング、18…溝、
20…凸部、22…凹部、24…弾性ピン、26…対向部、26´…下降領域、28…貫通穴、
30…付加円形クラウン、32…止まり穴(めくら穴)、38…回転軸、40…フロントまたはねじ付ヘッド