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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】コンデンサ構造体
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220816BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20220816BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20220816BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20220816BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20220816BHJP
   H01G 2/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01G4/30 511
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01G4/30 201Z
H01G4/30 201H
H01G4/38 A
H01G4/30 201G
H01G4/30 201A
H01G4/12 450
H01G4/30 201F
H01G4/228 G
H01G4/228 J
H01G2/02 101E
H01G2/04
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020178192
(22)【出願日】2020-10-23
(62)【分割の表示】P 2018152689の分割
【原出願日】2014-02-10
(65)【公開番号】P2021036593
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】102013102278.2
(32)【優先日】2013-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル, ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ショスマン, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】コイニ, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】テシーノ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン クリスチャン
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-143954(JP,A)
【文献】特開平02-015606(JP,A)
【文献】国際公開第2011/085932(WO,A1)
【文献】特開2009-164190(JP,A)
【文献】特開平08-213278(JP,A)
【文献】特開2007-189099(JP,A)
【文献】特開2009-006337(JP,A)
【文献】特開昭64-065825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/38
H01G 4/12
H01G 4/228
H01G 2/02
H01G 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小さなESR値および小さなESL値を有するコンデンサ構造体であって、前記コンデンサ構造体は、
複数のセラミック層と、当該複数のセラミック層の間に配設された複数の第1の電極層および複数の第2の電極層と、を備える基体と、第1の外部接続部および第2の外部接続部を、互いに対向する2つの側面上に備える、セラミック多層コンデンサを備え、
前記第1の外部接続部は前記複数の第1の電極層と電気的に導通して接続され、前記第2の外部接続部は前記複数の第2の電極層と電気的に導通して接続され、
前記第1の電極層の各々は、前記基体の同じ層レベルにおいて前記第2の電極層から離間して配設され、
前記基体は、前記複数のセラミック層の間の複数の第3の電極層を有し、当該複数の第3の電極層は、前記第1の外部接続部および前記第2の外部接続部のいずれとも電気的に導通して接続されておらず、且つ前記第1の電極層および前記第2の電極層と重なっており、
前記複数の第1の電極層、前記複数の第2の電極層、および前記第3の電極層は、それぞれ卑金属を有し、
前記複数のセラミック層は、反強誘電体からなり、
前記複数のセラミック層は、積層方向に沿って積層体となるように配設され、
前記基体は、前記積層方向に沿って幅Bを有し、
前記基体はさらに、前記第1の外部接続部および前記第2の外部接続部が配設された前記2つの側面に垂直な方向に高さHを有し、
前記基体は、前記高さHと垂直な方向および前記幅Bと垂直な方向で長さLを有し、
L/B≧1、L/H≧1、B/H≧0.3である、
コンデンサ構造体。
【請求項2】
L/H≧1.2、および/またはB/H≧1.0である、請求項1に記載のコンデンサ構造体。
【請求項3】
前記複数の第1の電極層、前記複数の第2の電極層、および前記第3の電極層は、それぞれ銅からなる、請求項1または2に記載のコンデンサ構造体。
【請求項4】
前記第1の外部接続部および前記第2の外部接続部が配設された前記の2つの側面は、ラッピングされ、又は研磨されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項5】
第1の金属接続プレート及び第2の金属接続プレートを更に備え、
前記第1の外部接続部は、前記第1の金属接続プレートと電気的に導通して接続され、前記第2の外部接続部は、前記第2の金属接続プレートと電気的に導通して接続され、前記セラミック多層コンデンサは、前記第1の金属接続プレートと前記第2の金属接続プレートとの間に配設されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項6】
前記第1の金属接続プレートと前記第2の金属接続プレートは、銅板またはAgもしくはAuでパッシベーションされた銅板である、請求項5に記載のコンデンサ構造体。
【請求項7】
第1の金属格子が、前記第1の外部接続部と前記第1の金属接続プレートとの間に配設され、第2の金属格子が、前記第2の外部接続部と前記第2の金属接続プレートとの間に配設されている、請求項5または6に記載のコンデンサ構造体。
【請求項8】
前記第1の金属格子及び前記第2の金属格子は、銅格子である、請求項7に記載のコンデンサ構造体。
【請求項9】
第1のはんだ層が、前記第1の外部接続部と前記第1の金属接続プレートとの間に配設され、第2のはんだ層が、前記第2の外部接続部と前記第2の金属接続プレートとの間に配設されている、請求項5から8までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項10】
前記第1のはんだ層および前記第2のはんだ層のそれぞれは、銀ナノ粒子を有するはんだ層である、請求項9に記載のコンデンサ構造体。
【請求項11】
複数の前記セラミック多層コンデンサが、前記第1の金属接続プレートと前記第2の金属接続プレートとの間に配設されている、請求項5から10までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項12】
前記第1の外部接続部および前記第2の外部接続部のそれぞれは、Cr/Cu/Au、Cr/Cu/Ag、Cr/Ni/Au、またはCr/Ni/Agの層配列からなるスパッタ層を有し、当該スパッタ層は、前記第1の電極層または前記第2の電極層と直接接触している、請求項1から11までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項13】
前記複数のセラミック層は、以下の式で表されるセラミック材料を含み、
Pb(1-1.5a-0.5b+1.5d+e+0.5f)(Zr1-xTi(1-c-d-e-f)LiFeSi+yPbO、
Aは、La,Nd,Y,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,ErおよびYbから成るグループから選択されており、
Bは、Na,KおよびAgから成るグループから選択されており、
Cは、Ni,Cu,CoおよびMnから成るグループから選択されており、
0<a<0.12,0.05≦x≦0.3,0≦b<0.12,0≦c<0.12,0≦d<0.12,0≦e<0.12,0≦f<0.12,0≦y<1であり、かつb+d+e+f>0となっている、請求項1から12までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項14】
前記基体は、少なくとも10層の前記複数のセラミック層を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項15】
この基体は、幅1mm当たりで少なくとも10層の第1の電極層を備え、幅1mm当たりで少なくとも10層の第2の電極層を備える、請求項1から14までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項16】
前記セラミック層はセラミック材料を備え、前記セラミック材料は、125℃の温度で測定された比誘電率であって、2~5kV/mmの電界強度で、少なくとも500の比誘電率を有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載のコンデンサ構造体。
【請求項17】
前記セラミック材料は、125℃の温度で測定された比誘電率であって、1kV/mm~10kV/mmの電界強度で、少なくとも1500の比誘電率を有する、請求項16に記載のコンデンサ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサを有するコンデンサ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパワー用途、たとえばAC/DCコンバータまたはDC/DCコンバータのコンデンサは、大きなパワー密度を必要とする。
【0003】
特許文献1には、ヒーター素子および誘電体層(複数)を有するコンデンサ領域と、これらの層間に配設された内部電極とを備えたコンデンサが記載されており、たとえばこれらのコンデンサを、パワー密度ができる限り大きくなる温度で動作させるために、このヒーター素子とコンデンサ領域とは、熱伝導するように互いに結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/085932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の実施形態の少なくとも1つの課題は、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサを有する1つのコンデンサ構造体を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は独立請求項に記載の発明によって解決される。本発明の有利な実施形態および変形実施例は、従属請求項に記載されており、さらに以下の明細書および図面で説明される。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、1つのコンデンサ構造体は、1つのセラミック多層コンデンサおよび1つの接続構造体を備え、この接続構造体によってこの多層コンデンサが電気的に接続される。
【0008】
ここに記載するコンデンサ構造体は、たとえばハイパワー用途に適合することができる。このコンデンサ構造体は、たとえばAC/DCまたはDC/DCコンバータにおけるフィルター素子として使用することができる。
【0009】
もう1つの実施形態によれば、上記のセラミック多層コンデンサは1つの基体を備える。好ましくはこの基体は直方体形状を有する。この基体は、誘電体層(複数)を備え、これらの誘電体層は積層方向に沿って配設されて積層体とされている。これらの誘電体層は、好ましくはセラミック層(複数)として形成されている。この基体は、さらに第1および第2の電極層を備え、これらは上記のセラミック層の間に配設されている。たとえばそれぞれの第1および第2の電極層は、同じ層レベルに互いに離間して配設されていてよい。さらにこれらの第1および第2の電極層は、それぞれ上記の積層体の異なる層レベルに配設されていてよい。
【0010】
もう1つの実施形態によれば、上記の基体は第1の外部接続部(Ausenkontaktierung)を備える。この外部接続部は、好ましくはこの基体の第1の側面に配設されており、上記の第1の電極層と電気的に導通して接続されている。この第1の電極層は、好ましくは上記の第1の外部接続部と直接電気的に導通して接続されている。すなわちこの第1の電極層は、上記の第1の外部接続部に直接接しており、この第1の外部接続部と直接接続され
ている。この第1の電極層は、好ましくは上記の第1の側面まで達している。
【0011】
この基体は、さらに第2の外部接続部を備え、この第2の外部接続部は、上記の基体の第1の側面に対向している第2の側面上に配設されており、この第2の外部接続部と電気的に導通して接続されている。上記の第2の電極層は、好ましくは上記の第2の外部接続部と直接電気的に導通して接続されている。すなわちこの第2の電極層は、上記の第2の外部接続部に直接接しており、この第2の外部接続部と直接接続されている。この第2の電極層は、好ましくは上記の第2の側面まで達している。
【0012】
もう1つの実施形態によれば、上記の接続構造体は、2つの金属接続プレートを備えこれらの間には、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサが配設されており、ここで上記の第1および第2の外部接続部は、それぞれこの金属プレートの1つと電気的に導通して結合されている。この際これらの金属接続プレートは、このセラミック多層コンデンサの構成部となっていない。むしろ1つ以上の、焼結されかつ外部接続部が設けられているセラミック多層コンデンサがこれらの金属接続プレートの間に配設されているものである。
【0013】
もう1つの実施形態によれば、上記の金属接続プレートは銅を含む。特に上記の金属接続プレートは、銀および/または金でパッシベーションされた銅を備える。すなわち銀および/または金めっき層が設けられている銅プレートを備える。
【0014】
もう1つの実施形態によれば、上記の接続構造体は、上記の外部接続部と上記の接続プレートとの間に金属格子を備える。詳細には、上記の第1の外部接続部と、この第1の外部接続部との間を電気的に接続している接続プレート、および上記の第2の外部接続とこの第2の外部接続部との間を電気的に接続している接続プレートには、それぞれ1つの金属格子が配設されている。この金属格子は、具体的には銅の格子であってよい。具体的には微細メッシュ(feinmaschige)の銅格子として形成されていてよい。この銅格子は、好ましくはスパッタリングされたコンデンサ部分(複数)の間のバランシング層(複数)、すなわち上記の外部接続部(複数)および金属接続プレート(複数)として用いられてよい。これはたとえば、以下に説明するように、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサが、これらの金属接続プレートの間に圧接されるか、またはこれらと共にはんだ付けされる場合に有利であり得る。
【0015】
もう1つの実施形態によれば、本発明によるコンデンサ構造体は、さらに少なくとも2つのハウジング部品を備え、これらの間には上記の接続構造体および上記のセラミック多層コンデンサが配設されている。これらのハウジング部品は、たとえばセラミックまたはプラスチックから形成されていてよく、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサの保護および/またはカプセル化のために設けられていてよい。
【0016】
もう1つの実施形態によれば、本発明によるコンデンサ構造体は、1つの圧接機構(Klemmvorrichtung)を備え、この圧接機構は上記のハウジング部品および少なくとも1つのねじを備え、ここでこれらのハウジング部品は、このねじを用いて、上記の接続プレートを上記の外部接続部に押圧している。たとえばこれらのハウジング部品は、1つに組み立てられた形状においては、1つの直方体状の形状を備え、ここで上記のコンデンサ構造体は、それぞれ半殻形状(halbschalenfoermig)に形成されている2つのハウジング部品を備える。これらの互いに接するハウジング部品のそれぞれの側面のエッジに沿ってねじ止めすることによって、これらのハウジング部品を締め付けることができ、こうしてその中に配設されている金属接続プレートも、少なくとも1つのセラミック多層コンデンサに押圧される。
【0017】
圧接機構の代替または追加として、上記の金属接続プレートは、上記の少なくとも1つのセラミック多層コンデンサの外部接続部にはんだ付けされていてよい。このため標準的なはんだが用いられてよく、または好ましくは、銀ナノ粒子を含むはんだが用いられてよい。銀ナノ粒子とは、平均的粒子サイズが1μmより小さくかつ50nmより大きい銀粉末である。上記の金属接続プレートは、具体的には上記の少なくとも1つのセラミック多層コンデンサの外部接続部に300℃未満の温度で、必要な場合は1軸方向の圧力を印加しつつ、はんだ付けすることができ、これは具体的には銀ナノ粒子のはんだを用いて可能である。以上によりはんだ接続部を得ることができ、このはんだ接続部はさらなる加工処理において安定した電気的および機械的接続部を維持する。
【0018】
上記の圧接接続部(Klemmkontaktierung)、また同様に上記のはんだ接続部は、金属格子と共にあるいは金属格子無しに、上記の外部接続部と上記の接続プレートとの間に設けられていてよい。
【0019】
もう1つの実施形態例によれば、本発明によるコンデンサ構造体は、上記の接続プレート(複数)の間に複数のセラミック多層コンデンサを備える。所定のアプリケーションでこのコンデンサ構造体に必要な静電容量が大きいほど、より多くの個々の部品が集合される。換言すれば、このコンデンサ構造体に要求されている静電容量により、所望の数のセラミック多層コンデンサが、上記の接続構造体の2つの金属接続プレートの間に配設される。以上によりこれらの個々のセラミック多層コンデンサは、たとえば1つの標準化されたサイズを有することができる。これに対して従来技術においては、セラミック多層コンデンサの静電容量を大きくするために、より多くの数の電極層およびセラミック層を基体内に配設することができるように、その大きさを増大することが知られている。このようなデバイスの1つの単体が大きく実装されるほど、加工においてまた使用時間中においてもデバイス故障の危険性がさらに増大する。ここで記載するコンデンサ構造体の構造によって、このような危険性、およびユーザが加工することによるこのような危険性を全く避けることができる。
【0020】
もう1つの実施形態によれば、上記のセラミック多層コンデンサの基体は、その誘電体層の積層方向に沿って幅Bを有する。ここでBは、上記の多層デバイスの基体の、積層方向に沿った空間的拡がりを示す。この基体はさらに、上記の第1の側面に垂直な方向に高さHを有する。このようにこの高さHは、この基体の第1の側面に垂直な方向での、この基体の空間的拡がりとして理解される。好ましくはこの高さHは、上記の基体の第2の側面に垂直な方向に延在している。この基体はさらに、上記の高さHに垂直な方向かつ上記の積層方向に垂直な方向に長さLを有する。このようにこの長さLは、上記の幅Bおよび高さHに垂直な方向における上記の基体の空間的拡がりを示す。
【0021】
もう1つの実施形態によれば、これらの寸法B,H,およびLには以下の関係が成り立つ。B/H≧0.2,好ましくはB/H≧0.3,とりわけ好ましくはB/H≧1.0であり、またはB/H≒0.35であってもよい。L/B≧1,好ましくはL/B≦5,とりわけ好ましくはB/H≦3.5である。L/H≧0.8,好ましくはL/H≧1,とりわけ好ましくはL/H≧1.2である。
【0022】
ここで示した上記の基体の高さHと幅Bとの間の関係によって、ここで説明するセラミック多層コンデンサでは、有効断面積(Nutzquerschnitt)、すなわち静電容量を決定する面積に対する上記の電極層のリード部断面積(Zufuehrungsquerschnitt)の比を顕著に大きくすることができる。これにより、ここで記載するセラミック多層コンデンサは、とりわけ小さなESR値(等価直列抵抗、equivalent series resistance, aequivalenter Serienwiderstand)を備える。たとえばここで記載する、約4μF~10μFの静電容量を有するセラミック多層コンデンサは、100kHz~1MHzでの動作において3mΩ~5mΩのESR値を有することができる。
【0023】
もう1つの実施形態によれば、上記の基体は、第3の電極層(複数)を備え、この第3の電極層は、上記の第1の外部接続部とも、また上記の第2の外部接続部とも電気的に導通して接続されていない。この第3の電極層は、好ましくはどの外部接続とも電気的に導通して接続されていない。この第3の電極層は、以下では自由電極(フローティング電極)と呼称される。
【0024】
もう1つの実施形態によれば、この第3の電極層は、上記の第1の電極層と重なっている。換言すれば、これらの第3の電極層はそれぞれ、少なくとも1つの部分領域を備え、この部分領域は、上記の積層体の積層方向において投影したと考えた場合に、上記の第1の電極層の少なくとも1つの部分領域によって覆われるようになっていてよい。この第3の電極層は、さらに上記の第2の電極層と重なってよい。たとえば第1および第2の電極層はそれぞれ、上記の基体の同じ層レベルにおいて互いに離間して配設されていてよく、それぞれ少なくとも1つの、他の層レベルに配設された第3の電極と重なってよい。
【0025】
第1,第2の電極および第3の自由電極の利用、すなわち直列接続された内部電極の利用は、絶縁破壊電界強度を有利に増大することができ、これは本発明の多層コンデンサの堅牢性および信頼性に貢献する。以上によって、さらに上記の誘電体層厚、すなわちセラミック層の層厚を小さくすることが可能となり、この結果、セラミックの単位体積当たりの電極層の断面積が大きくなり、またこれによって上記のESR値が改善され、使用電流に対するこのデバイスの電流耐性が改善される。
【0026】
1つの実施形態によれば、上記のセラミック層(複数)は3μm~200μmの層厚を有する。もう1つの好ましい実施形態によれば、これらのセラミック層は、10μm~100μmの層厚を有する。とりわけ好ましくは、これらのセラミック層は、約25μmの層厚を有する。
【0027】
もう1つの実施形態によれば、上記の電極層(複数)は0.1μm~10μmの層厚を有する。1つの好ましい実施形態によれば、これらの電極層は、1μm~4μmの層厚を有する。とりわけ好ましくは、これらの電極層は、約3.5μmの層厚を有する。
【0028】
もう1つの実施形態によれば、上記の基体は、少なくとも10個のセラミック層を備える。もう1つの実施形態によれば、この基体は、少なくとも10個の第1の電極層を備える。もう1つの実施形態によれば、この基体は、少なくとも10個の第2の電極層を備える。
【0029】
もう1つの実施形態によれば、上記の基体に設けられる第1の電極層の数とこの基体の幅Bには、以下の関係が成り立つ。上記の幅Bに対する第1の電極層の数の比≧10/mm。換言すれば、この基体は、幅1mm当たりで少なくとも10個の第1の電極層を備える。さらにこの基体は、好ましくは、幅1mm当たりで少なくとも10個の第2の電極層を備える。
【0030】
もう1つの実施形態によれば、上記の電極層は貴金属でない金属を含む。好ましくはこれらの電極層は、銅を含む。1つの好ましい実施形態によれば、これらの電極層は銅から成っている。特に上記の多層コンデンサの焼結後には、これらの電極層は純粋な銅から成っている。銅の熱伝導率および導電率が高いおかげで、ここで記載する多層コンデンサはとりわけ小さなESR値を得ることができる。貴金属でない金属を用いることにより、さらにこの多層コンデンサの製造プロセスを安価に行うことができ、有利である。
【0031】
もう1つの実施形態によれば、上記の外部接続部が取り付けられている上記の第1および第2の側面は、表面処理されている。とりわけ好ましくはこれらの第1および第2の側面は、ラッピングされていてよい。さらに、これらの第1および第2の側面は、研磨、ラビング、またはプラズマエッチングされていてもよい。表面処理された側面を用いることにより、上記の外部接続部と上記の第1あるいは第2の電極層とのとりわけ良好な接続が達成でき、有利である。特に上記の第1および第2の側面の表面処理によって、個々の第1の電極層間あるいは個々の第2の電極層間に存在するセラミック材料を後退させることができ、これによりこれらの第1および第2の電極層をプロセス技術で上記の基体の表面に確実に取り付けることができる。たとえば上記の外部接続部は、次にガスを流して焼成すること無しに、たとえば標準的なスパッタ処理を用いて取り付けることができる。
【0032】
もう1つの実施形態によれば、上記の第1および第2の外部接続部は、それぞれ少なくとも1つの第1のスパッタ層を備え、これらの第1のスパッタ層は、上記の第1または第2の電極層と直接接続されている。好ましくは上記の基体の第1の側面上に第1の層が取り付けられ、この第1の層は、この基体からの第1の電極層(複数)の出口面(Austrittsflachen)と直接接続している。同様にこの基体の第2の側面上に第1の層が取り付けられていてよく、この第1の層は、この基体からの第2の電極層(複数)の出口面(Austrittsflachen)と直接接続していてよい。これらのスパッタ層は、たとえば0.1μm~1.5μmの層厚を有してよい。好ましくはこれらの第1の層(複数)は、クロムを含み、またはクロムから成っている。
【0033】
もう1つの実施形態によれば、上記の第1および第2の外部接続部は、それぞれ1つの第2のスパッタ層を備え、ここでこれらの第2のスパッタ層は、好ましくは上記の第1の電極層上に直に取り付けられている。これらの第2の層は、好ましくは銅またはニッケルを含み、あるいは銅またはニッケルから成っている。
【0034】
もう1つの実施形態によれば、上記の第1および第2の外部接続部は、それぞれ1つの第3のスパッタ層を備え、これらの第3のスパッタ層は、好ましくは上記の第2の電極層上に直に取り付けられている。これらの第3のスパッタ層は、好ましくは金を含みまたは金からなっている。代替としてこれらの第3のスパッタ層は、銀を含んでよく、または銀から成っていてよい。
【0035】
具体的には上記の外部接続部は、たとえばCr/Cu/AuまたはCr/Cu/AgまたはCr/Ni/AuまたはCr/Ni/Agのスパッタ層積層部を備え、このスパッタ層積層部は、上記の第1あるいは第2の電極層と直に接続されている。
【0036】
もう1つの実施形態によれば、上記のセラミック層は、以下の式で表されるセラミック材料を含んでいる。
Pb(1-1.5a-0.5b+1.5d+e+0.5f)(Zr1-xTi(1-c-d-e-f)LiFeSi+ y・PbO
ここでAは、La,Nd,Y,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,ErおよびYbから成るグループから選択され、Bは、Na,KおよびAgから成るグループから選択され、Cは、Ni,Cu,CoおよびMnから成るグループから選択されており、0<a<0.12,0.05≦x≦0.3,0≦b<0.12,0≦c<0.12,0≦d<0.12,0≦e<0.12,0≦f<0.12,0≦y<1であり、かつb+d+e+f>0である。
【0037】
好ましくは、特にZrリッチなPZT混晶層が相図から選択される。さらにb+d+e+f>0の条件によって、上記のセラミック材料における、上記で規定されたグループA(希土類元素)からなるドーピング剤の他に、Li,Na,K,Ag,Fe,Ni,Cu,CoおよびMnから成るグループから少なくとも1つの元素(リチウム,鉄およびグループBとC)が存在しなければならない。以上により1000℃~1120℃の温度で焼結可能なセラミック材料が準備され、これは他の高い温度に耐えられない物質/材料との組み合わせを、既にこのセラミック材料の製造プロセスの間に可能としている。たとえばこのセラミック材料を、たとえば銀または銅のような貴金属でない金属からなる電極層と共に焼結すること(同時焼成プロセス、“Cofiring”-Verfahren)が可能となる。さらにこのセラミック材料は、グループAのみからドーピングされたPZT材料と比較して、大きな反転電界強度(Schaltfeldstaerke)および/または大きな比誘電率(誘電定数、Dielektrizitaetskonstante)を有する。
【0038】
低い焼結温度は、さらに、このセラミック材料の小さな結晶粒サイズ(Korngroesen)の形成を促進し、これはこの誘電体の特性を好ましくするように作用する。正確には、このPZTセラミックの誘電体特性は、一般的にドメインサイズ(Domaenengroese)によって決定される。ドメインとは、同じ分極を有するセラミックにおける領域のことである。このドメインサイズは、結晶粒サイズに依存している。結晶粒当たりのドメインの数は、結晶粒サイズと共に増加する。変化したドメインサイズは、このセラミックの材料特性に影響を与える。このためこの結晶粒サイズあるいは結晶粒成長を制御できるようにすることは重要である。
【0039】
好ましくは上記のドーピングされたチタン酸ジルコン酸鉛セラミックは、一般式ABOで記述されるペロブスカイト格子を備え、Aはこのペロブスカイト格子のAサイトを示し、BはBサイトを示す。このペロブスカイト格子は、ドーピングおよび空位に対し大きな許容範囲を有する。
【0040】
上記のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のペロブスカイト構造は、一般式ABOで記述される。このPZT結晶格子の単位格子は、立方体で記述される。上記のAサイトはPb2+イオンによって占有され、これらはこの立方体の頂点に位置している。それぞれの立方体面の中央には、それぞれ1つのO2-イオンが位置している。この立方体に中心には、Ti4+イオンおよびZr4+イオン(Bサイト)が存在している。この構造は、金属イオンの他の金属イオンおよび欠陥(Fehlstellen)との置換に対して大きな許容範囲を有し、これにより良好にドーピングすることができる。
【0041】
ドーピングによって導入されたイオンと置換されたイオンとの間の大きさの違いによって、この高対称性配位多面体の歪がもたらされる。この歪は、この結晶の対称中心を変化させ、分極率に影響を与える。
【0042】
様々なドーピング可能性は、ドーピングイオンの価数によって分類される。等原子価ドーピング、すなわち1つのイオンを同じ価数を有する他のイオンによって置換することは、このセラミック材料のおける可能な空位に影響を与えない。低い価数のカチオン(アクセプター)を高い価数のカチオンと置換すると、アニオン格子における空位が生成される。高原子価のカチオン(ドナー)は、これらが低価数のカチオンを置換された場合、このカチオン格子の空位の原因となる。アクセプターおよびドナーのドーピングは、それぞれこの材料特性の特徴的変化をもたらす。アクセプターがドーピングされたセラミックは、「硬質」セラミックと呼ばれ、ドナーがドーピングされたセラミックは「軟質」セラミックと呼ばれる。
【0043】
たとえばNd3+(またはグループAの他の希土類元素の1つ)を用いたAサイトへのドーピングは、ドナードーピングである。ネオジムのイオン半径のために、これはPb2+サイトに組み込まれる。Pb空位が適宜形成されることによって電荷の均等化が行われる。
ドーピングの効果は格子の寸法変化であり、単位格子間の長い距離で作用する相互作用の影響である。
【0044】
たとえばKまたはFe3+を用いたAサイトあるいはBサイトへのドーピングは、アクセプタードーピングである。カリウムのイオン半径のために、これはPb2+サイトへ組み込まれ、これに対しFe3+は、Zr4+サイトあるいはTi4+サイトへ組み込まれる。Pb2+空位(A空孔“A-Vakanzen”)の減少および/またはこれに対応した酸素空位の形成によって電荷の均等化が行われる。このドーピングの効果は、結晶粒成長と焼き締り(Sinterverdichtung)を促進する酸素空位の形成であり、これらはこの焼結温度でKアクセプターによってもたらされる。冷却のプロセスにおいて、Ndドナーとの再結合が準中性の{Nd/K}欠陥対の形成下で行われ、完成したセラミックにおいては、鉛あるいは酸素の空位が全く無いかまたはごくわずかの濃度で存在する。
【0045】
このドーピングは、この材料の結晶粒成長に作用し、この結晶粒成長は、注入されるドーピングの濃度に依存している。ここで少ないドーピング量は、結晶粒成長に寄与するが、これに対してドーピングイオンの量が多すぎると結晶粒成長を阻害する可能性がある。
【0046】
ドナーがドーピングされたPZT材料の特性は、NdがPbサイトを占有する上記の場合のように、大きくなったドメイン移動度(Domaenenbeweglichkeit)にほぼ基づいており、このドメイン移動度はPb空位によってもたらされるものである。この空位は、小さな電界によってもすでにこのドメインが影響されるように働く。これは、ドーピングされていないPZTセラミックと比べて、ドメイン境界の容易な移動性をもたらし、これによって大きな誘電率をもたらす。
【0047】
このセラミック材料には、アクセプターおよびドナーのドーピングが同時に存在している。これは、このセラミックがこれら両方のドーピング方法の内の1つのみでドーピングされた場合に起こる良くない特性を補償するように働く。たとえばアクセプターのドーピングのみが存在すると、これはしばしば誘電率の低下をもたらし、すなわちこの誘電率はドーピングされていないセラミックより小さくなる。ドナーのドーピングのみが存在すると、結晶粒成長が阻害され、このセラミック体は、望ましい大きさに達しない。これらのドーピングが組み合わされて存在することで、ドーピングされていないセラミックからこれらの点が良い方向に取り除かれる。本発明によるセラミックは大きな誘電率を備え、この大きな誘電率は低い焼結温度でももたらされる。
【0048】
1つの好ましい実施形態によれば、0.1≦x≦0.2である。これはこの範囲で分極曲線(Polarisationskurven)をより良好に設定することができるからである。
【0049】
もう1つの実施形態によれば、0≦y<0.05となっている。
【0050】
もう1つの実施形態によれば、0.001<b<0.12となっており、ここで好ましくはd=e=f=0となっている。
【0051】
もう1つの実施形態によれば、0.001<e<0.12となっており、ここで好ましくはb=d=f=0となっている。
【0052】
もう1つの好ましい実施形態によれば、Bはナトリウム(Na)である。以上によってこれらの材料特性は、特に1つの希土類元素のみを含むPZT材料に比べて焼結温度を低下させるようにかつ同時に反転電界強度を大きくするように、とりわけ有利に影響を与える。
【0053】
もう1つの好ましい実施形態によれば、上記の比誘電率は、1kV/mm、好ましくは2kV/mmの電界強度において、0kV/mmの電界強度での比誘電率の少なくとも60%となっている。さらに好ましくは、このセラミック材料の2~5kV/mm、好ましくは1kV/mm~10kV/mmの電界強度での比誘電率(誘電定数、Dielektrizitaetskonstante)は、0kV/mmの電界強度での比誘電率の少なくとも60%となっている。これらの測定は好ましくはこのセラミック材料が125℃の温度の場合に行われる。
【0054】
もう1つの好ましい実施形態によれば、上記のセラミック材料は、1kV/mm、好ましくは2kV/mmの電界強度で、少なくとも500、好ましくは少なくとも1500の比誘電率を有する。さらに好ましくは、上記のセラミック材料は、2~5kV/mm、好ましくは1kV/mm~10kV/mmの電界強度で、少なくとも500、好ましくは1500の比誘電率を有する。これらの測定は好ましくはこのセラミック材料が125℃の温度の場合に行われる。
【0055】
分極ヒステリシスの測定は、この比誘電率(誘電定数、Dielektrizitaetskonstante)の決定の1つの標準的方法である。周波数依存性の測定には、このヒステリシスループが点毎に測定される準静的方法が知られている。分極測定は、たとえばaixACCT Systems GmbH社のTFアナライザ2000を用いて行うことができる。
【0056】
もう1つの好ましい実施形態によれば、上記のセラミック材料は、反強誘電体である。このため好ましくは反強誘電性の斜方晶相(O相)の基本材料PZTが用いられる。この反強誘電性の配列は、複数の分極した部分格子の重ね合わせで特徴付けられ、これらの電気双極子モーメントは互いに打消しあう。このように反強誘電性結晶は、全く自発分極しないが、しかしながら特別な誘電体特性を備えている。この反強誘電体に電界を印加すると、これはまず線形誘電体のように振舞う。所定の臨界電界強度から、突然反強誘電性相への転移が誘発され、それまでの反平行の双極子は、エネルギー的により安定な平行な方向に反転する。これに対し、これの反転した転移は、より小さな電界で起こる。これがいわゆるダブルヒステリシスループとなる。
【0057】
反強誘電性セラミック材料は、強誘電性セラミック材料と比較して分極電界ヒステリシスは大きくはない。これは、コンデンサに用いた場合、より僅かなエネルギー損失をもたらす。この理由から、反強誘電性セラミック材料を使用することが好ましい。
【0058】
純粋かつ様々にドーピングされたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末の製造には、一般的な混合酸化物の方法、または「ゾル-ゲル法」とも呼ばれる、溶剤ベースの方法が用いられる。たとえば成分金属のアセテートまたはアルコラート(Alkoholate)から開始されるが、これらは様々な乾燥処理によって、セラミック前駆体物質である粉砕されたキセロゲル(Xerogele)に変換される。乾燥にはスプレードライおよびスプレーフリーズドライがこれに続くフリーズドライと共に用いられる。続いてこれらの前駆体は、酸化物に熱分解される。このように製造された粉末は、僅かな労力でデアグロメーション(deagglomerieren)され、さらなる処理のための調整が行われる。
【0059】
ここに記載するコンデンサ構造体は、とりわけ小さなESR値(等価直列抵抗、equivalent series resistance、aequivalenter Serienwiderstand)および特に小さなESL値(等価直列インダクタンス、equivalent series inductivity、aequivalente Serieninduktivitaet)を特徴とする。
【0060】
さらに、ここに記載する電極層の構成は、ここで記載される多層コンデンサの製造におけるプロセスを実施するのに有利である。脱バインダにおいてもまた焼結においても、脱バインダおよびプロセスガスのガスの交換あるいは平衡が必要であり、これはここで記載される多層コンデンサに有利である。この構造は側面方向に渡り相対的に短い電極層がより良好にプロセスを実施できるようにすることを助け、この結果、容積においても、従来の多層コンデンサに対して、相対的に大きなセラミック部品が可能である。さらにここで記載するコンデンサ構造体は、上記の電極層の構成、および選択されたこのセラミック層のセラミック材料、およびこのコンデンサ構造体の構造からの相乗効果をもたらし、これは上記のESR値、ESL値および機械的かつ熱的な堅牢さにおいて有利に作用する。たとえば上記に示したB,H,およびLのアスペクト比および上記の電極層の幾何形状を組み合わせたセラミックは、デバイスの電気的特性および熱的特性を改善する。こうしてたとえば、上記の電極を通る電流が短い経路を取ることができるように作用し(幾何形状効果)、絶縁抵抗(セラミックの特性)の熱的安定性がこのデバイスの電流耐性の特性に対して極めて有利となるように作用する。
【0061】
ここに記載された方法によって、350Vで30.5μFの静電容量を備えたコンデンサ構造体を作ることができた。さらに本発明によるコンデンサ構造体は、0.5mΩのESR値を有し、これは約15mΩμFのESR値および静電容量の製品に相当する。さらにこのコンデンサ構造体では、10nHのESL値,5.5μF/cm3の誘起された正味出力密度,1.5J/cm3のエネルギー密度,約±25%のバイアス依存性(200-500V),-40℃~+105℃の範囲における約±15%の温度依存性,および0.5%の損失角となった。他の技術、たとえばフィルムコンデンサ,アルミニウム電解コンデンサ,および一般的な多層コンデンサ等の特性値と比較して、ここで記載するコンデンサ構造体は、従来達成されなかったコンデンサ特性値が可能であることを示している。具体的にはここに記載するコンデンサ構造体の本質的な2つの利点は以下のようになる。1つには上記のESR値が小さいことであり、リップル電圧の平滑のために出来る限り小さな静電容量値が必要なことである。ここで小さな静電容量値は、他の技術での部分的にもっと大きな値でのものと同じ機能を達成し、これはシステムレベルあるいは結合レベルでの大きなコスト的利点を意味している。さらに静電容量密度が他の技術におけるよりも大きく、これよりこのデバイスがもたらす小型化のおかげで、このデバイスはパワー半導体により近接して設けることができる。これにより導電体のインダクタタンスを低減することができる。ここで記載するコンデンサ構造体の本質的に小さなインダクタンスはこれより非常に重要であり、またここで記載するコンデンサ構造体は、全体として一般的な技術の同じ機能のものと比較して顕著に安価に実現することができる。
【0062】
さらなる利点,有利な実施形態,および派生実施例が、図を参照して以下に説明する実施形態例から示される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】1つの実施形態例による、コンデンサ構造体の概略図である。
図2】もう1つの実施形態例による、セラミック多層コンデンサの断面概略図である。
図3】もう一つの実施例による、コンデンサ構造体の概略図である。
図4】もう一つの実施例による、コンデンサ構造体の概略図である。
図5】もう一つの実施例による、コンデンサ構造体の概略図である。
図6】もう一つの実施例による、コンデンサ構造体の概略図である。
図7】もう一つの実施例による、コンデンサ構造体の概略図である。
【0064】
これらの実施形態例および図において、同等の、または同等に機能する要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。これらの図示された要素およびこれらの大きさの関係はそれぞれ、正確な寸法を示すものでなく、むしろたとえば層,部品,デバイスおよび領域などの個々の要素をより見易くするため、および/またはより理解し易くするために誇張した厚さまたは大さの寸法で示してある。
【0065】
図1には1つの実施形態例による、1つのコンデンサ構造体10が示されている。このコンデンサ構造体10は、1つの接続構造体7に1つの多層コンデンサ1を備える。
【0066】
多層コンデンサ1は、6つの側面を有する1つの直方体から成る1つの基体2を備える。この基体2は、セラミック層(複数)3と、これらのセラミック層3の間に配設された第1および第2の電極層41,42とを備え、これらのセラミック層3および電極層41,42は、積層方向Sに沿って積層体となるように配設されている。詳細にはこの基体2は、少なくとも10個の第1の電極層41と、少なくとも10個の第2の電極層42とを備える。これらのセラミック層3は、ここに示す実施形態例においては、約25μmの層厚を有する。これらの電極層41,42は、約3.5μmの層厚を有する。代替として、これらのセラミック層3および電極層41,42は、他の層厚を有してよい。
【0067】
これらの電極層は、ここで示す実施形態例においては、銅を含んでいる。これによって、一方ではこの多層コンデンサ1はできる限り小さなESR値を有することが達成され、また他方ではこの多層コンデンサ1の製造プロセスを安価に行うことが達成され得る。
【0068】
さらにこの多層コンデンサ1は、上記の基体2の1つの第1の側面61上に配設された、1つの第1の外部接続部51と、さらに、上記の基体2の反対側にある1つの第2の側面62上に配設された、1つの第2の外部接続部52とを備える。ここで上記の第1の電極層41は、この第1の外部接続部51と電気的に導通して接続されており、上記の第2の電極層42は、第2の外部接続部52と電気的に導通して接続されている。これらの第1および第2の側面61,62は、表面処理されており、ここでこの表面処理は、好ましくはこれらの外部接続部51,52を取り付ける前に行われる。特にこれらの第1および第2の側面61,62は、好ましくはラッピングされていてよく、代替としてラビング、研磨、またはプラズマエッチングされていてもよい。表面処理された側面61,62を用いることにより、上記の外部接続部51,52と上記の第1あるいは第2の電極層41,42とのとりわけ良好な接続が有利に達成できる。
【0069】
ここで示す実施形態例においては、1つの第1の電極層41および1つの第2の電極層42は、互いに離間して同じレベルに配設されている。このレベルは、層レベルによって形成されており、この層レベルは、上記の積層体の積層方向Sに垂直な方向に形成されている。ここで上記の第1の電極層41と上記の第2の電極層42との間には、いわゆるギャップ、すなわち間隙(Luecke)が存在している。この間隙は、この層レベルにおける1つの第1の電極層41と1つの第2の電極層42との間の領域となっており、この領域には電極層が全く配設されていない。1つの代替の実施形態例によれば、この第1および第2の電極層41,42は、それぞれ異なる層レベルに配設されていてもよい。
【0070】
上記の基体2は、さらに第3の電極層(複数)43を備え、この第3の電極層は、上記の第1の外部接続部51とも、また上記の第2の外部接続部52とも電気的に導通して接続されていない。これらの第2の電極層43は、上記の第1の電極層41とも、また上記の第2の電極層42とも重なっている。すなわちこれらの第3の電極層43は、それぞれ少なくとも1つの部分領域を備え、この部分領域は、上記の積層体の積層方向において投影したと考えた場合に、上記の第1の電極層41の部分領域の少なくとも1つの部分領域によって、また上記の第2の電極層42の部分領域の少なくとも1つの部分領域によって、覆われるようになっていてよい。代替の実施形態例によれば、上記の第1および第2の電極層41,42は、それぞれ異なる層レベルに配設されており、これらの第1および第2の電極層41,42は、互いに重なりあっていてよい。
【0071】
上記の第1および第2の外部接続部51,52は、それぞれ第1のスパッタ層を備え、これらの第1のスパッタ層は、それぞれ上記の基体2上に直接取り付けられている。具体的にはここに示された実施形態例においては、この外部接続部は、たとえばCr/Cu/AuまたはCr/Cu/AgまたはCr/Ni/AuまたはCr/Ni/Agの層配列から形成されている。
【0072】
接続構造体7は、2つの金属接続プレート70を備え、これらの間にはセラミック多層コンデンサ1が配設されている。ここで外部接続部51,52は、それぞれこれらの金属プレート70の1つと電気的に導通して接続されている。この電気的接続は、図1に示す実施形態例においては、これらの金属接続プレートと外部接続部51,52との直の接触によって生成される。これらの外部接続部51,52と接続プレート70との間の他の形態の電気的接続部は、図3~6の実施形態例に関連して説明される。
【0073】
これらの金属接続プレートは、具体的には銅から成り、とりわけ好ましくはAgおよび/またはAuでパッシベーションされた銅から成っている。
【0074】
一般的な多層コンデンサではその静電容量を大きくするためにその体積が大きくされ、またこのため電極層とセラミック層の数が増大されるのに対し、ここに示す接続構造体10では、複数のセラミック多層コンデンサ1を接続構造体7の金属接続プレート(複数)70の間に配設することができる。これによってこれらのセラミック多層コンデンサ1自体を大きくすることは必要でなく、こうして加工における損傷のリスクや、使用の際の損傷のリスクを避けることができる。
【0075】
図2には、1つのセラミック多層コンデンサの1つの実施形態が示されており、この多層コンデンサは、有利な幾何形状の構造を有する、図1に関連して説明したような多層コンデンサ1の構造を備える。
【0076】
この多層コンデンサ1の基体2は、上記の積層方向Sに沿って幅Bを有する。換言すれば、Bは、この積層方向Sに平行な方向での基体2の拡がりを示している。好ましくはこの基体2においては、この基体の幅Bの1mm当たりで少なくとも10個の第1の電極層と少なくとも10個の第2の電極層とが設けられている。この基体2はさらに、上記の第1の側面51に垂直な方向に高さHを有する。こうしてこの基体2は、上記の第1の側面51に垂直な方向に拡がりを有しており、この拡がりが上記の高さに対応している。さらにこの基体2は、上記の高さHと垂直な方向および上記の積層方向Sに垂直な方向で長さLを有し、この長さは上記の積層方向に対して垂直な方向および上記の高さHに垂直な方向のこの基体2の拡がりに対応している。この基体2の高さHに対する幅Bの比は、B/H≧0.2となっている。さらに、この基体の幅Bに対する長さLの比は、L/B≧1となっており、またこの基体の高さHに対する長さLの比は、L/H≧1となっている。
【0077】
ここで示す実施形態例においては、上記の基体2は、約2.5mmの幅B、約7.0mmの高さH、および約7.0mmの長さLを備える。このように上記の比B/Hは、ここで示す実施形態例においては、ほぼ0.36となっている。上記の比L/Bは、約2.8であり、上記の比L/Hは、約1.0である。
【0078】
ここで示す実施形態例によれば、本発明による多層コンデンサ1はとりわけ、小さなESR値、小さなESL値、そして高い機械的および熱的堅牢性を特徴とする。たとえばここに示す多層コンデンサ(380V/10μF)は、以下のような周波数依存の値を有する。ESR(min)=3mΩ,ESR(100kHz)=5mΩ,およびESL<4nH。さらに本発明による多層コンデンサ1は、安価に製造することができる。
【0079】
図1および2に関連して説明したセラミック多層コンデンサ1は、特に先に一般的説明の部分に記載したセラミック材料、具体的には反強誘電体を含んでよい。
【0080】
図3~6に示すコンデンサ構造体のさらなる実施形態例は、図1に示すコンデンサ構造体10の変形例および派生実施例を示し、したがって以下の説明は概ねその差異および派生実施例に限定されている。
【0081】
図3にはもう1つの実施形態例による1つのコンデンサ構造体11が示されており、このコンデンサ構造体では、接続構造体7は、各々の金属接続プレート70の、セラミック多層コンデンサ1に向いた面上に、1つの金属格子71を銅格子の形態で備える。このような、好ましくは微細メッシュの銅格子が、上記のスパッタリングされた外部接続部51,52と金属接続プレート70との間でバランス層として用いられている。このセラミック多層コンデンサ1は、外部接続部51,52と接続構造体7の金属接続プレート70との間のはんだ層72によって、これらの金属接続プレート70と結合されている。標準的なはんだ層の他に、1μmより小さくかつ50nmより大きな平均的粒子サイズを有する銀粉末である銀ナノ粒子を有するはんだ層がはんだ付けされてよく、有利にはこのはんだは300℃未満の温度で適宜1軸方向の圧力を印加しつつはんだ付けされてよい。以上によりはんだ接続部を得ることができ、このはんだ接続部はさらなる加工処理において安定した電気的および機械的接続部を可能とする。
【0082】
図4には、もう1つの実施形態例による1つのコンデンサ構造体12が示されており、この実施形態例では、接続構造体7の金属接続プレート(複数)70と、セラミック多層コンデンサ1の外部接続部(複数)51,52との間にただ1つのはんだ層72が、たとえば図3に関連して説明したように、追加の金属格子無しに配設されている。さらにこのコンデンサ構造体12は、2つのハウジング部品73を備え、これらの間には接続構造体7およびセラミック多層コンデンサ1が配設されている。これらのハウジング部品73は、たとえばプラスチックおよび/またはセラミック材料を備え、またはこれから成っている。
【0083】
図5および6には、複数のセラミック多層コンデンサ1を有するさらなる実施形態例による接続構造体13,14が部分的に示されており、これらの実施形態例では、ハウジング部品(複数)73は、少なくとも1つのねじ74と共に、1つのクランプ構造体を形成し、こうしてこれらのハウジング部品73は、この少なくとも1つのねじ74を用いて、接続プレート70をセラミック多層コンデンサ1の外部接続部に押圧している。図5に示すように、接続構造体7は、図3に関連して説明したように、金属格子71およびはんだ層72を備える。この代替として、セラミック多層コンデンサ1は、図6に示すように、接続構造体7の接続プレート(複数)70の間のはんだ層(複数)72無しにクランプして配設することも可能である。特に、図5および6に示すクランプ構造体によって、小さなESL値およびESR値が大きな機械的および熱的堅牢性を同時に備えるコンデンサ構造体を生成することができる。
【0084】
図5および6に示す実施形態例の代替として、接続構造体7は、金属格子71無しに形成されていてもよい。
【0085】
図7には、もう1つの実施形態例による1つのコンデンサ構造体15が3次元的な外観図で示されており、このコンデンサ構造体は、静電容量の絶対値を大きくするために、2つの重なって配設されているクランプされたセラミック多層コンデンサの層を、2つのハウジング部品73を有する1つのハウジング内に備える。コンタクト部75を介して、このハウジングの内部のこれらのセラミック多層コンデンサは、電気的に導通することができ、ここで上記の接続構造体およびこれらのハウジング内部の多層コンデンサの構造が上述の実施形態例のように形成されていてよい。これらのハウジング部品73は、それぞれ半殻形状(halbschalenfoermig)に形成されており、かつ1つの直方体の形状に合体されている。2つのハウジング部品73の隣接したエッジに沿って、このハウジング部品73の対応する収容部(複数)にねじ(複数)74が設けられており、これらによって上記で図5および6に関連して説明した圧接接続が可能となっている。
【0086】
以上の図に示す接続構造体の実施形態例は、代替としてまたは追加的に、上記の一般的説明の部分に記載したようなさらなる特徴をも、これらが図に関連して顕わに説明されていないとしても、備えることができる。
【0087】
本発明は、実施例を参照した上記の記載によってこれらに限定されない。むしろ本発明はいかなる特徴およびいかなる特徴の組み合わせ、とりわけ請求項における特徴のあらゆる組み合わせを含んでいる。また、特徴またはこれらの組み合わせ自体が請求項または実施例に顕わに示されていない場合も含んでいる。
【符号の説明】
【0088】
1 : 多層コンデンサ
2 : 基体
3 : セラミック層
41,42,43 : 電極層
51,52 : 外部接続部
61,62 : 側面
7 : 接続構造体
70 : 接続プレート
71 : 金属格子
72 : はんだ層
73 : 品ウジング部品
74 : ねじ
75 : コンタクト部
10,11,12 : コンデンサ構造体
13,14,15 : コンデンサ構造体
H : 高さ
B : 幅
L : 長さ
S : 積層方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7