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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】アクリジニウム臭化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 453/02 20060101AFI20220816BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20220816BHJP
   A61K 31/439 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
C07D453/02
A61P11/00
A61K31/439
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020185042
(22)【出願日】2020-11-05
(62)【分割の表示】P 2017551330の分割
【原出願日】2016-03-30
(65)【公開番号】P2021020965
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】108370
(32)【優先日】2015-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】メンデス,ジタ
(72)【発明者】
【氏名】カセラ,コンスタンサ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノ,アナ カリナ
(72)【発明者】
【氏名】サントス,ブルノ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136534(JP,A)
【文献】特表2003-504368(JP,A)
【文献】特表2009-544591(JP,A)
【文献】特表2007-500151(JP,A)
【文献】特表2009-522278(JP,A)
【文献】国際公開第2015/062560(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/071824(WO,A1)
【文献】特表2006-525267(JP,A)
【文献】MARIA PRAT; ET AL,DISCOVERY OF NOVEL QUATERNARY AMMONIUM DERIVATIVES OF (3R)-QUINUCLIDINOL ESTERS AS POTENT 以下備考,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2009年08月27日,VOL:52, NR:16,PAGE(S):5076 - 5092,http://dx.doi.org/10.1021/jm900132z,AND LONG-ACTING MUSCARINIC ANTAGONISTS WITH POTENTIAL FOR MINIMAL SYSTEMIC EXPOSURE AFTER 以下省略
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 453/02
A61P 11/00
A61K 31/439
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートと、3-フェノキシプロピルブロミドとを反応させることで、(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(アクリジニウム臭化物)を製造する製造方法であって、
前記反応は、DMF、DMFを含有する溶媒の混合物、DMA、DMAを含有する溶媒の混合物、DMSO、DMSOを含有する溶媒の混合物を含む群から選択される溶媒または溶媒の混合物中で行われることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
反応温度が100℃未満である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
反応温度が30℃~20℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が、不活性ガスのフローの下で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応が、乾燥不活性ガスのフローの下で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応が、乾燥窒素、乾燥ヘリウムまたはそれらの混合物のフローの下で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応が、大気圧より低い圧力の下で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートに対する3-フェノキシプロピルブロミドのモル当量の比が、1.2~2.0の範囲である請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートに対する3-フェノキシプロピルブロミドのモル当量の比が、1.5~2.0の範囲である請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートに対する3-フェノキシプロピルブロミドのモル当量の比が、1.8である請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
反応時間が、8時間以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
反応時間が、6時間以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
反応時間が、4時間以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
DMSO中に生成物を溶解させ、共溶媒としてアセトニトリルを使用して精製生成物を沈殿させることにより、アクリジニウム臭化物を精製するステップをさらに含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
得られたアクリジニウム臭化物が結晶性である請求項1乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記アクリジニウム臭化物は、7.7±0.2°2θ, 10.4±0.2°2θ, 13.2±0.2°2θ, 13.8±0.2°2θ, 19.9±0.2°2θ, 20.3±0.2°2θ, 20.8±0.2°2θ, 24.2±0.2°2θ, 25.7±0.2°2θ, 26.1±0.2°2θ, 29.2±0.2°2θ, 30.8±0.2°2θにピークを有する粉末XRPDパターンを特徴とする結晶性アクリジニウム臭化物である請求項1乃至15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記アクリジニウム臭化物は、TGAによる重量減少がないことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記アクリジニウム臭化物は、228℃に吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
前記アクリジニウム臭化物は、以下に示すXRPDパターンを特徴とする結晶性アクリジニウム臭化物及び非晶質アクリジニウム臭化物の混合物である請求項1乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
【化1】
【請求項20】
前記混合物の全質量に対する非晶質アクリジニウム臭化物の割合が、20質量パーセント以下である請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記混合物の全質量に対する非晶質アクリジニウム臭化物の割合が、10質量パーセント以下である請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
ルホキシド基を有する溶媒の群から選択された少なくとも1つの溶媒を含む溶媒または溶媒の混合物中で、アクリジニウム臭化物の溶液を乾燥させる乾燥工程をさらに含む請求項1乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記溶媒が、DMSOである、または、前記溶媒の混合物が、DMSOを含む請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記乾燥工程は、噴霧乾燥を含む請求項22に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリジニウム塩(aclidinium salts)、特にアクリジニウム臭化物(aclidinium bromide)の製造方法に関する。本発明はまた、乾燥粉末、溶液または懸濁液の形態のアクリジニウムを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アクリジニウム塩の新規な製造方法に関する。アクリジニウムの化学名は、(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン((3R)-3-[2-hydroxy(di-2-thienyl)acetoxy]-1-(3-phenoxypropyl)-1-azoniabicyclo[2.2.2]octane)である。アクリジニウム塩の構造を以下に示す(1)。
【0003】
【化1】
-は、薬学的に許容されるアニオン(anion)、例えば臭化物(bromide)、塩化物(chloride)またはヨウ化物(iodide)である。
【0004】
好ましい塩は、アクリジニウム臭化物、第四級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)である。
【0005】
アクリジニウム臭化物は、白色からオフホワイトの結晶性粉末である。活性型(active form)は、R-異性体(R-isomer)であり、S-異性体(S-isomer)は、イン・ビトロ(in vitro)でムスカリン性受容体(muscarinic receptors)に対して小さな親和性(affinity)を有し、アセチルコリン誘発性の気管支収縮(acetylcholine induced bronchoconstriction)に限定された効果を有する。薬物は、微粉化した(micronized)アクリジニウム臭化物とα‐ラクトース・一水和物(α-lactose monohydrate)との混合物からなる吸入粉末(inhalation powder)として処方される。
【0006】
アクリジニウム臭化物は、ムスカリン・アンタゴニスト(muscarinic antagonist)であり、Bretaris Genuair(EU加盟国)、Tudorza Pressair(米国およびカナダ)、Eklira Genuair(英国)として商業的に入手可能である。
【0007】
本組成物及び製造方法は、国際公開第01/04118号(特許文献1)に記載されている。その後、改良された製造方法が、国際公開第2008/009397号(特許文献2)に記載されており、また、J.Med.Chem. 2009, 52, 5076-5092(非特許文献1)の記事にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第01/04118号
【文献】国際公開第2008/009397号
【非特許文献】
【0009】
【文献】J.Med.Chem. 2009, 52, 5076-5092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
国際公開第01/04118号に開示されたアクリジニウム臭化物の製造方法は、2つの主な欠点を有する:
・潜在的な遺伝毒性試薬(potential genotoxic reagent)である3-フェノキシプロピルブロミドを過剰に使用する-当量(equivalents)5
・反応時間が長い-72時間。
【0011】
国際公開第2008/009397号に開示された製造方法は、特定の溶媒の群を使用し、3-フェノキシプロピルブロミドの使用量を減らし、最終生成物内のこの試薬の含有量を制御することでこれらの欠点を克服することである。
【0012】
この方法は、試薬3-フェノキシプロピルブロミドの量を減らしながら、特定の溶媒(50℃~210℃の間の沸点を有するケトンまたは環状エーテル)を使用して、反応時間を8時間に短縮することができる。しかしながら、これは還流(reflux)の下で反応を実施する必要がある。
【0013】
さらに、考慮した溶媒が50℃~210℃の間の沸点を有することを考慮すると、場合によっては反応温度が非常に高くなければならず、製造方法に余計な操作上の問題が生じる。
【0014】
本発明者らは、上述の欠点を最小化または排除しながら、高い化学的純度(chemical purity)、99.0%を超える、好ましくは99.5%を超える、安定的に(consistently)生成物を提供する製造方法、及び、安定した(consistent)多形体を発明した。本発明の方法はまた、制御された粒子サイズを有する生成物の製造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様によれば、(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートと、3-フェノキシプロピルブロミドとを反応させることで、(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(アクリジニウム臭化物)を製造する製造方法であって、反応は、アミド基、及び/または、スルホキシド基を有する溶媒の群から選択される溶媒または溶媒の混合物中で行われることを特徴とする製造方法を提供する。
【0016】
他の態様では、本発明は、7.7±0.2°2θ, 10.4±0.2°2θ, 13.2±0.2°2θ, 13.8±0.2°2θ, 19.9±0.2°2θ, 20.3±0.2°2θ, 20.8±0.2°2θ, 24.2±0.2°2θ, 25.7±0.2°2θ, 26.1±0.2°2θ, 29.2±0.2°2θ, 30.8±0.2°2θにピークを有する粉末XRPDパターンを特徴とする結晶性アクリジニウム臭化物を提供する。
【0017】
他の態様では、本発明は、以下に示す粉末XRPDパターンを特徴とする本明細書に記載の記載の製造方法により任意に得られるアクリジニウム臭化物の結晶性及び非晶質(amorphous)の混合物を提供する:
【0018】
【化2】
他の態様では、アクリジニウム臭化物の製造方法であって、溶媒または溶媒の混合物中で、アクリジニウム臭化物の溶液を乾燥させる乾燥工程を含み、乾燥工程は、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる製造方法を提供する。
【0019】
他の態様では、本発明は、本明細書に記載の医薬上許容される(pharmaceutically acceptable)アクリジニウム塩(好ましくはアクリジニウム臭化物)と、医薬上許容される添加物(excipient)を含む医薬組成物を提供する。アクリジニウム臭化物は、本明細書に記載の製造方法によって製造することが好ましい。
【0020】
他の態様では、本発明は、本明細書に記載のアクリジニウム臭化物、または、本明細書に記載の製造方法によって得られたアクリジニウム臭化物、または、本明細書に記載のアクリジニウム臭化物を含む医薬に使用される医薬組成物であり、好ましくは、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)(COPD)の治療に使用するものを提供する。
【0021】
アクリジニウム臭化物の製造は、N-デスプロピルアクリジニウム(N-despropylaclidinium)(IV)を生成するための3R-キヌクリジノール(3R-quinucidinol)(II)とMDTG(III)との間のエステル交換反応(transesterification reaction)、続く、N-デスプロピルアクリジニウムと3-フェノキシプロピルブロミド(3-phenoxypropyl bromide)(V)(四級化反応[quaternization reaction])でアクリジニウム臭化物を合成することを含む(スキーム1)。
【0022】
【化3】
エステル交換反応には、様々な塩基を使用することができる。特に、K2CO3、ナトリウムメトキシド(sodium methoxide)、ナトリウムエトキシド(sodium ethoxide)、ナトリウムtertブトキシド(sodium tert butoxide)、トリアザビシクロデセン(triazabicyclodecene)(TBD)、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)(DBU)を使用することができる。
【0023】
四級化反応において異なる溶媒または溶媒の混合物を使用することにより、本発明の製造方法は、100℃未満の温度で、すなわち室温付近の温度で、最も好ましくは20℃~30℃で、好ましくは30℃または20℃近辺で、反応を実施しながら、従来技術の欠点を克服することができる。
【0024】
驚くべきことに、反応時間は8時間未満、好ましくは6時間未満、より好ましくは4時間未満に維持され、使用される遺伝子毒性試薬の量は、好ましくは1.2~2.0モル当量の範囲に維持される。
【0025】
選択される溶媒は、スルホキシド基を有する溶媒、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、または、アミド基の溶媒のいずれか、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)、(ジメチルアセトアミド)DMA、または、これらの混合物であってよい。
【0026】
本明細書に記載の四級化反応の更なる利点は、このようにして得られた固体の生成物を微粉化して、所望の粒径範囲、例えば吸入に適した粒度分布(particle size distribution)を達成することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】無水結晶形態のアクリジニウム臭化物の粉末XRPDパターンである。
図2】板状の粒子を有する生成物の電子走査顕微鏡(SEM)画像である。
図3】立方体形状の粒子を有する生成物の電子走査顕微鏡(SEM)画像である。
図4】非常に小さい平行に並ぶパイプ状の粒子を有する生成物の電子走査顕微鏡(SEM)画像である。
図5】無水アクリジニウム臭化物の熱重量分析結果である。
図6】無水アクリジニウム臭化物の示差走査熱量測定(DSC)結果である。
図7】噴霧乾燥工程によって得られた結晶形態と非晶質アクリジニウム臭化物の混合物のXRPDパターンである。
図8】微粉化した生成物の電子走査顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートと3-フェノキシプロピルブロミドとを反応させることで、(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミドを製造する製造方法であって、反応が、アミド基、及び/または、他の溶媒の群から選択される、または、沸点より低い温度のスルホキシド基(sulfoxide group)を有する溶媒の混合物から選択される溶媒または溶媒の混合物中で行われることを特徴とする。反応温度は100℃未満、好ましくは50℃未満であり、好ましい態様では、反応温度は約30℃~約20℃、適切には約30℃、または約20℃である。
【0029】
好ましい態様において、反応は不活性ガスのフロー(flow)中で、好ましくは乾燥不活性ガスのフローの中で、好ましくは乾燥窒素、乾燥ヘリウムまたはそれらの混合物のフロー中で行われる。
【0030】
好ましい態様では、反応は大気圧より低い圧力で行われる。標準大気圧は101325pa(760mmHg相当)であり、圧力はこれ以下であることが好ましい。代わりに、圧力は、反応が起こっている場所に基づいて、周囲大気圧より低くてもよい。
【0031】
反応混合物から、形成されたアルコールが除去されることが好ましい。
【0032】
反応溶媒が、DMFまたはDMFを含有する溶媒の混合物、DMAまたはDMAを含有する溶媒の混合物、DMSOまたはDMSOを含有する溶媒の混合物であることが好ましい。1つの好ましい溶媒は、DMSOまたはDMSOを含有する溶媒の混合物である。
【0033】
例えば、溶媒としてDMSOを使用する場合、結晶化ステップを必要とせずに、99.5%を超える純度を達成することができる。他の溶媒については、所望の純度を達成するために、結晶化ステップが必要な場合がある。
【0034】
好ましい態様では、(3R)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートに対する3-フェノキシプロピルブロミドのモル当量の比が、1.2~2.0の範囲であり、好ましくは、1.5~2.0の範囲であり、より好ましくは1.8である。
【0035】
最終生成物中の遺伝毒性不純物3-フェノキシプロピルブロミドの含有量は、常に500ppm未満、より好ましくは200ppm未満である。
【0036】
本発明の製造方法の全反応時間は、8時間以下であることが好ましい。好ましい態様では、反応時間は、6時間以下であり、より好ましくは、4時間以下である。
【0037】
本発明の方法は、必要に応じて、DMSO(または他の適切な溶媒)中に生成物を溶解させ、共溶媒としてアセトニトリル(または他の適切な溶媒)を使用して精製生成物を沈殿させることにより、アクリジニウム臭化物を精製するステップをさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の製造方法によって得られたアクリジニウム臭化物は、結晶性であることが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法1つの好ましい態様では、得られたアクリジニウム臭化物は、結晶性物質と非晶質物質の混合物である。
【0040】
本発明の好ましい態様では、アクリジニウム臭化物の無水結晶形態(anhydrous crystalline form)が得られる。この形態は、図1に示す粉末XRPDパターンを有し、7.7±0.2°2θ, 10.4±0.2°2θ, 13.2±0.2°2θ, 13.8±0.2°2θ, 19.9±0.2°2θ, 20.3±0.2°2θ, 20.8±0.2°2θ, 24.2±0.2°2θ, 25.7±0.2°2θ, 26.1±0.2°2θ, 29.2±0.2°2θ, 30.8±0.2°2θにピークを有する粉末XRPDパターンを特徴とする。
【0041】
この無水結晶形態は、異なる結晶習性および形態(morphologies)で得ることができる。
【0042】
この無水結晶形態のアクリジニウム臭化物は、TGAによる重量減少がないことをさらに特徴とすることが好ましい。また、さらに、228℃に吸熱ピーク(endotherm peak)を有するDSCサーモグラムを特徴とすることが好ましい。
【0043】
1つの態様では、結晶形態のアクリジニウム臭化物は、少量の非晶質アクリジニウム臭化物を含んでいてもよい。非晶質アクリジニウム臭化物の割合が、20質量パーセント濃度以下、好ましくは10質量パーセント濃度以下であることが適切である(質量パーセント濃度は、材料の全質量に対するものである)。
【0044】
アンチソルベント結晶化技術(anti-solvent crystallization technique)を実施すると、異なる形態(morphology)が観察された。図2に示すように、電子走査顕微鏡(Electro Scanning Microscopy)(SEM)分析によって、粒子は、板状の形状(plate like shape)を示した。
【0045】
熱サイクル法(thermocycling process)を用いて生成物を結晶化させると、図3に示すように立方体形状の粒子(cube-shape particles)が得られる。
【0046】
そして、反応混合物を冷却して結晶化を行うと、図4に示すように、生成物の形態は非常に小さい平行に並ぶパイプ状の粒子(very small parallel piped shape particles)からなる。
【0047】
本明細書に記載の方法に従って得られる無水結晶性アクリジニウム臭化物は、図5の熱重量分析(TGA)による溶融および分解まで重量損失がないことをさらに特徴とする。
【0048】
無水結晶性アクリジニウム臭化物は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)(DSC)サーモグラム(図6)によってさらに特徴付けられる。転移開始温度(temperature given by the onset of the transition)(Tonset)である227℃で、単一の吸熱転移を有している。この転移は、結晶形態の融解に対応する。
【0049】
本発明はまた、凍結乾燥または噴霧乾燥または他の適切な乾燥方法によって、溶媒中または溶媒混合物中のアクリジニウム塩の溶液を乾燥することによって、アクリジニウム塩、好ましくはアクリジニウム臭化物を得る方法に関する。乾燥ステップは、噴霧乾燥ステップが好ましい。
【0050】
1つの好ましい態様において、溶媒または溶媒の混合物は、スルホキシド基を有する溶媒から選択される。混合物はDMSOを含むことが好ましく、溶媒はDMSOであることが最も好ましい。
【0051】
好ましい態様では、乾燥ステップが噴霧乾燥工程である場合、得られる生成物は、結晶、少量の非晶質を有する結晶、純非晶質(pure amorphous)、少量の結晶を有する非晶質、または、様々な比率で非晶質と結晶形態が混ざった混合物のいずれであってもよい。
【0052】
XRPDパターン(図7)は、噴霧乾燥工程によって得られた結晶形態と非晶質アクリジニウム臭化物の混合物を示している。
【0053】
本発明はまた、アクリジニウムを含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、医薬上許容される塩の乾燥粉末、溶液または懸濁液の形態である。例えば、医薬品添加物(好ましくは医薬上許容される乾燥粉末担体)と混合された上述の無水物(anhydrous)、水和物(hydrate)または溶媒和物(solvate)である。
【0054】
好ましくは、医薬上許容される塩の形態は、アクリジニウム臭化物である。
【0055】
適切には、医薬上許容される担体は、ラクトースまたはα-ラクトース・一水和物である。
【0056】
本発明はまた、医薬上許容される添加物と共に、本明細書に記載の、または、本明細書に記載の製造方法によって得られる医薬上許容される塩の乾燥粉末、溶液、または、懸濁液の形態のアクリジニウムを含む吸入用の医薬組成物を提供する。
【0057】
好ましくは、医薬組成物は、医薬上許容される添加物が乾燥粉末担体である乾燥粉末製剤の形態である。医薬上許容される担体は、好ましくはラクトースまたはα-ラクトース・一水和物である。
【0058】
本発明は、アクリジニウム臭化物が、別の医薬上許容される塩形態のアクリジニウムで置き換えられた、本明細書に記載の医薬組成物を包含することができる。しかしながら、使用される塩形態は、好ましくはアクリジニウム臭化物である。
【0059】
例えば、塩化物塩(chloride salts)またはヨウ化物塩(iodide salts)を使用することができる。これらの塩の合成経路(synthetic route)は、適切な塩化物またはヨウ化物試薬を使用すべきであることを除いて、臭化物塩の製造方法と本質的に同一である。例えば、3-フェノキシプロピルブロミドの代わりに3-フェノキシプロピルクロライドを使用することができる。
【0060】
[実施例]
本発明を以下の実施例により説明する。これらの実施例は、本開示の特定の態様を例示するために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0061】
下記の実施例の生成物のHPLC分析を、Zorbaz SB-C3カラム(150mm×3.0mm×3.5μm)で行った。
【0062】
1.2ml/分の流速での移動相は、水(pH3.0でメタンスルホン酸ナトリウム[sodium methanesulfonate]及びリン酸二水素カリウム[potassium dihydrogenphosphate]を含有-A相(Phase A))と、メタノール:アセトニトリル:A相(10:40:50 v/v/v)の混合物の二成分系(binary system)である。全実行時間は、50分であった。
【0063】
実施例1-エステル交換反応(Transesterification reaction)
(3R)-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート(化合物IV)の合成
500mlのトルエンの(3R)-キヌクリジノール溶液(10.30g,81.0mmol)に、ジ(2-チエニル)グリコール酸メチル(MDTG)(20g,78mmol)を加えた。溶液をトルエンの連続蒸留および新鮮なトルエンとの置換を伴って還流した;
蒸留後、ナトリウムメトキシド(1.70g、31mmol)を添加し、反応が完了したとみなされるまで、窒素フロー下80°/90℃で蒸留を行った。MDTG含量がHPLCにより面積(area)で≦2.0%である場合、反応は完了したとみなされる;
反応混合物を、2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)酢酸(DTG)の含有量が≦1.5%になるまで、水およびブライン(brine)で洗浄する;
有機溶液を50℃以下の温度で、真空下で、最終容量50mlまで濃縮する;
懸濁液を20°/25℃まで冷却し、この温度で少なくとも2時間にわたって撹拌した;
懸濁液を10℃から15℃の間まで冷却し、この温度で少なくとも4時間にわたって撹拌した;
生成物を濾過し、予め10℃~15℃の温度に冷却しておいたイソプロピルエーテルで洗浄した;
所望の生成物(18.4g)が、HPLCにより面積99.20%以上(not less than)の純度で得られた。
【0064】
実施例2-エステル交換反応
(3R)-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート(化合物IV)の合成
250mlのトルエンの(3R)-キヌクリジノール溶液(5.15g,40.5mmol)を65℃から70℃の間の温度まで加熱し、ナトリウムメトキシド(0.65g,11.8mmol)を加えた;
75℃~85℃の間の温度の窒素フロー下で、100mlのトルエンのMDTG溶液(10.0g;39.3mmol)を1時間かけて加えた;
75℃~85℃の間の温度の窒素フロー下で、トルエンおよびメタノールの共沸混合物(azeotrope)を、反応が完了したとみなされるまで、蒸留(新鮮なトルエンの置換を伴う)によって除去した;
有機相中のDTG副生物の含有量が≦1.5%になるまで、反応混合物を20%NaCl水溶液で4回洗浄した;
有機相を乾燥させ、40℃以下の温度で、真空下で、最終容量25mlまで濃縮した;
懸濁液を10°/15°まで冷却し、この温度で少なくとも5時間にわたって撹拌した;
所望の生成物(8.5g)が、HPLCにより面積98.0%以上(not less than)の純度で得られた。
【0065】
実施例3-四級化反応
アクリジニウム臭化物-(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(化合物I)の合成
不活性雰囲気下、30mlのDMFの(3R)-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート(5g;14.26mmol)の懸濁液に、3-フェノキシプロピルブロミド(3.42ml,21.68mmol)を20℃~25℃の温度でゆっくりと加えた;
この懸濁液を、出発物質(starting material)の含有量がHPLCにより面積で0.5%未満になるまで約30℃で撹拌した;
反応が完了したら、懸濁液にアセトニトリル(43ml)を加えた。懸濁液を20℃~25℃の温度で冷却し、温度を20℃~25℃に維持しながら2時間撹拌した;
生成物を濾過し、予め10℃~15℃の温度に冷却しておいたアセトニトリルで洗浄した;
アクリジニウム臭化物が、HPLCにより面積99.4%の純度で得られた(7.48g)。
【0066】
実施例4~8-四級化反応
実施例4~8の方法は、異なる量の反応溶媒および試薬3-フェノキシプロピルブロミドを使用したこと以外は、実施例3に記載された方法と同じである。
【0067】
【表1】
溶媒としてDMFを使用し、選択したパラメータは、3-フェノキシプロピルブロミドの当量は、1.88であり;溶媒量は3.7ml/gであり;温度は30℃である。
【0068】
実施例9-四級化反応
アクリジニウム臭化物-(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(化合物I)の合成
不活性雰囲気下、30mlのDMAの(3R)-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート(5g,14.26mmol)の懸濁液に、3-フェノキシプロピルブロミド(4.23ml,26.82mmol)を20℃~25℃の温度でゆっくりと加えた;
この懸濁液を、出発物質の含有量がHPLCにより面積で0.5%未満になるまで約30℃で撹拌した;
反応が完了したら、懸濁液にアセトニトリル(43ml)を加えた。懸濁液を20℃~25℃の温度で冷却し、温度を20℃~25℃に維持しながら2時間撹拌した;
生成物を濾過し、予め10℃~15℃の温度に冷却しておいたアセトニトリルで洗浄した;
アクリジニウム臭化物が、HPLCにより面積98.98%の純度で得られた(7.4g)。
【0069】
実施例10-四級化反応
アクリジニウム臭化物-(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(化合物I)の合成
不活性雰囲気下、27.7mlのDMSOの(3R)-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イルヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート(4.50g,12.84mmol)の懸濁液に、3-フェノキシプロピルブロミド(3.80ml,24.14mmol)を30℃の温度で加えた;
この懸濁液を、出発物質の含有量がHPLCにより面積で0.5%未満になるまで約30℃で撹拌した;
反応が完了したら、懸濁液にアセトニトリル(54ml)を加えた。懸濁液を20℃~25℃の温度で冷却し、温度を20℃~25℃に維持しながら2時間撹拌した;
生成物を濾過し、予め10℃~15℃の温度に冷却しておいたアセトニトリルで洗浄した;
アクリジニウム臭化物が、HPLCにより面積99.88%の純度で得られた(5.8g)。
【0070】
実施例11-化合物(I)の精製
アクリジニウム臭化物-(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(化合物I)の精製
不活性雰囲気下、40℃~45℃の間の温度で、500mlのジメチルスルホキシドに(3R)-3-[2-ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド(50g)を加えた。得られた溶液に、ゆっくり1lのアセトニトリルを加えた;
生成物を結晶化し、温度が20℃~25℃の間になるまで、ゆっくりと冷却した;
温度を20℃~25℃に維持しながら懸濁液を2時間撹拌した;
精製されたアクリジニウム臭化物が、HPLCにより面積99.91%の純度で得られた(33g)。
【0071】
実施例12-微粉化(Micronization)
アクリジニウム臭化物の粒度分布(PSD)が吸入に適した範囲(1~5μm)に容易に調整できるかどうかを判断するために、ジェットミリングによって微粉化を行った。微粉化には、純粋な窒素の供給を受ける、A1.5”ジェットミラー(流体ジェットミル J20/DS20)を使用した。この実施例では、ベンチュリおよびノズルの圧力が4~10barの二重スクリュー型フィーダにより、一定の流量で粉末を添加した。
【0072】
得られた分析結果を以下の表に要約する。得られた生成物は、99.5%より高い純度および高収率(90重量%)で、吸入可能範囲内のPSDを有していた。わずか1回の通過で、粉末は所望のPSDに達し、生成物上に、非晶質物質は検出されなかった。さらに、微粉化した生成物のSEM画像は均質な(homogeneous)PSDを示した(図8)。
【0073】
【表2】
測定条件
全てのXRPDは、高スループットXRPDセットアップを用いて得られた。データ収集は、室温において、単色CuKα放射線を用いて、1.5°から41.5°の範囲の2θ領域で行った。
【0074】
TGA/DSC
使用した装置は、In及びAlを用いて温度較正した、TGA/SDRA 851e(Mettler-Toledo)である。シールにピンホールをあけ、10℃/minの割合で、25℃から300℃まで、坩堝(crucible)をTGAで加熱した。
【0075】
SEM
使用した装置は、外付けSEディテクタ(external SE detector)を備えたPhillips SEM 525顕微鏡である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8