(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】方法、コンピュータプログラム製品、装置、および周波数変調連続波レーダーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/36 20060101AFI20220816BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20220816BHJP
G06F 17/14 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01S7/36
G01S13/34
G06F17/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020186310
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンナシュテン, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】サクニーニ, アダム
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074527(JP,A)
【文献】特開2008-180703(JP,A)
【文献】特開2006-171001(JP,A)
【文献】米国特許第06810342(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第03173812(EP,A1)
【文献】小林 遼爾 ほか,ゼロ挿入補間干渉抑圧法を適用したFMCWレーダにおける検出誤り発生メカニズムと閾値設計に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年08月23日,第118巻 第200号,Pages: 1-6,ISSN: 0913-5685
【文献】HE, Mi et al.,Polarimetric Extraction Technique of Atmospheric Targets Based on Double sLdr and Morphology,2011 IEEE International Geoscience and Remote Sensing Symposium,米国,IEEE,2011年10月20日,Pages: 3245-3248,インターネット: <URL: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6048811><DOI: 10.1109/IGARSS.2011.6049911>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉低減されたレーダー画像を生成するための
、コンピュータに実装された方法であって、
処理ユニットにより、
ビート信号の測定シーケンスを受信することであって、各ビート信号は複数のセグメントを含み、各セグメントは或る振幅を有し、j番目のビート信号のi番目のセグメントは、振幅A
i,jを有するセグメントi,jとして識別可能であり、ここで、i=1、…、a、j=1、…、bである、ビート信号の測定シーケンスを受信すること、
ビート信号の前記測定シーケンス内で1つまたは複数の干渉セグメントを識別することであって、干渉セグメントは干渉を受けるセグメントである、1つまたは複数の干渉セグメントを識別すること、
ビート信号の前記測定シーケンスの改変された表現を、要素y
i,jを有する行列Y
の形式で作成することによって、ビート信号の前記測定シーケンスを改変することであって、
ここで、y
i,j=m
i,j×A
i,jであり、m
i,jはマスキング値であり、前記マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されるか否かに依存し、前記マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントでない場合と比較して、セグメントi,jが干渉セグメントである場合、より低い値に設定される、ビート信号の前記測定シーケンスを改変すること、
ビート信号の前記測定シーケンスの前記改変を表す改変用マスクを作成することであって、前記改変用マスクは、要素m
i,jを有する行列M
である、改変用マスクを作成すること、および、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定することであって、前記再構成されるレンジ・ドップラ画像は、Mを使用して逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像であり、レンジ・ドップラ画像は、ビート信号のシーケンスの表現の時間周波数変換である、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定すること
を含み、
これにより、ビート信号の前記測定シーケンスを改変することは干渉効果を少なくとも部分的に除去し、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定することは、前記改変によって作成される画像アーチファクトを少なくとも部分的に除去する、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の干渉セグメントの少なくとも1つは、
セグメン
ト振幅、
前記セグメント振幅と参照セグメント振幅との差、および、
前記セグメント振幅と参照セグメント振幅との前記差の微分
のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数の閾値と比較することによって識別される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定するステップは、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
の第1の予備推定を見出すこと、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
の第2の予備推定を見出すこと、及び、
に比べて、Yに対する良好な最小二乗近似である場合、推定された前記再構成されるレンジ・ドップラ画像
として決定することであって、
はハダマール積を指し、X
1は
の逆フーリエ変換であり、X
2は
の逆フーリエ変換である、決定すること
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成されるレンジ・ドップラ画像
は、ウィーナー逆畳み込みを使用してMを用いて逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
セグメントi,jが干渉セグメントとして識別される場合、マスキング値m
i,jを最小値に設定することをさらに含み、前記最小値は前記行列Mの最小値である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最小値は0である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
干渉セグメントとして識別されるセグメントに対応する全てのマスキング値は同じ最小値に設定される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されない場合、マスキング値m
i,jを最大値に設定することをさらに含み、前記最大値は前記行列Mの最大値である、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスキング値は、前記行列M内の少なくとも1つの窓関数を形成するように構成され、前記窓関数は、
前記行列Mの行i内の要素であって、前記行内の前記要素のうちの1つの要素は、干渉セグメントとして識別されるセグメントi,jに対応する要素i,jであり、前記窓関数は、前記行に沿って要素i,jの最小値から、干渉セグメントとして識別されないセグメントに対応する要素の最大値まで連続して増加する要素値を有するように構成される、前記行列Mの行i内の要素、または、
前記行列Mの列j内の要素であって、前記列内の前記要素のうちの1つの要素は、干渉セグメントとして識別されるセグメントi,jに対応する要素i,jであり、前記窓関数は、前記列に沿って要素i,jの最小値から、干渉セグメントとして識別されないセグメントに対応する要素の最大値まで連続して増加する要素値を有するように構成される、前記行列Mの列j内の要素
を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記窓関数は、ハン窓、ブラックマン窓、ハミング窓、バートレット窓、またはフラットトップ窓のうちの1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定するステップは、
を形成するためにYをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
を形成するためにMをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
逆マスクGを作成することであって、Gは要素g
u,vを有する行列であり、各要素g
u,vは、行列
の推定信号対雑音比に基づき、これにより、
は、大きい推定信号対雑音比の場合に比べて小さい推定信号対雑音比の場合に、より小さい値を形成する、逆マスクGを作成すること、および、
(ここで
はハダマール積を指す)
の逆フーリエ変換であるように
を設定すること
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Gの前記要素g
u,vは、
に設定され、
ここで、
の複素共役を示し、
の絶対値を示し、R(u,v)は、要素u,vにおける
の推定信号対雑音比の二乗に反比例する数字である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ可読命令を記憶するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読命令は、処理ユニット上で実行されると、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を前記処理ユニットに実施させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
干渉低減されたレーダー画像を生成するための装置であって、当該装置は制御回路を備え、前記制御回路は、
ビート信号の測定シーケンスを受信することであって、各ビート信号は複数のセグメントを含み、各セグメントは或る振幅を有し、j番目のビート信号のi番目のセグメントは、振幅A
i,jを有するセグメントi,jとして識別可能であり、ここで、i=1、…、a、j=1、…、bである、ビート信号の測定シーケンスを受信することと、
ビート信号の前記測定シーケンス内で少なくとも1つの干渉セグメントを識別することであって、前記干渉セグメントは干渉を受けるセグメントである、少なくとも1つの干渉セグメントを識別することと、
ビート信号の前記測定シーケンスの改変された表現を、要素y
i,jを有する行列Y
の形式で作成することによって、ビート信号の前記測定シーケンスを改変することであって、
ここで、y
i,j=m
i,j×A
i,jであり、m
i,jはマスキング値であり、前記マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されるか否かに依存し、前記マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントでない場合と比較して、セグメントi,jが干渉セグメントである場合、より低い値に設定される、ビート信号の前記測定シーケンスを改変することと、
ビート信号の前記測定シーケンスの前記改変を表す改変用マスクを作成することであって、前記改変用マスクは、要素m
i,jを有する行列M
である、改変用マスクを作成することと、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定することであって、前記再構成されるレンジ・ドップラ画像は、Mを使用して逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像であり、レンジ・ドップラ画像は、ビート信号のシーケンスの表現の時間周波数変換であり、前記時間周波数変換は、ビート信号の前記シーケンスの前記表現を時間領域から周波数領域に変換する、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定すること
を行うよう構成され、
これにより、ビート信号の前記測定シーケンスを改変することは干渉効果を少なくとも部分的に除去し、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定することは、前記改変によって作成される画像アーチファクトを少なくとも部分的に除去する、装置。
【請求項15】
レーダーユニットおよび請求項14に記載の装置を備える周波数変調連続波(FMCW:frequency-modulated-continuous-wave)レーダーシステムであって、
前記レーダーユニットは、
信号の第1のシーケンスを送信するように構成された送信アンテナと、
前記送信アンテナによって送信される信号の前記第1のシーケンスに応答して、信号の第2のシーケンスを受信するように構成された受信アンテナと、
ビート信号のシーケンスを生成するために信号の前記第1のシーケンスおよび信号の前記第2のシーケンスを混合するように構成されたミキサーとを備え、
前記レーダーユニットは、ビート信号の前記シーケンスをビート信号の測定シーケンスとして前記装置に送出するように構成され、これにより、前記装置は前記干渉低減されたレーダー画像を生成する、レーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、レーダー画像化に関し、より詳細には、干渉低減されたレーダー画像を生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
監視モニタリングのためにまた乗り物においてレーダーを使用することは、益々一般的になっており、なぜならば、これが、オブジェクトの距離、速度、および角度が測定されることを可能にするからである。例えば、レーダーユニットは、監視カメラに対する補完物として使用されて、シーン内のオブジェクトに関する情報を提供することができる。
【0003】
1つのタイプのレーダーは、周波数変調連続波(FMCW:frequency-modulated-continuous-wave)レーダーである。FMCWレーダーは、「チャープ(chirp)」と呼ばれるレーダー波信号を送信する。チャープは、その周波数が、時間と共に、しばしば線形に変化する、周期的な、しばしば正弦的な信号である。FMCWレーダーは、例えば、受信アンテナによって、レーダー波信号の反射を受信し、反射は、例えば、シーン内の可動オブジェクトからやって来る。送信信号を受信信号と混合することによって、ビート信号を生成することができる。ビート信号のシーケンスを生成するために、プロセスを順次反復することができる。ビート信号のシーケンスは、その後、例えばオブジェクトまでの距離およびオブジェクトの速度の情報を含むレンジ・ドップラ画像に変換することができる。FMCWレーダーは、しばしば、チャープのシーケンスを送信し、その後、新しいチャープのシーケンスを送信する前に、しばらくの間、沈黙している。こうして、幾つかのビート信号のシーケンスを受信することができ、ビート信号の各シーケンスをフレームと呼ぶことができ、フレームは、シーンの所定の時点のスナップショット(snapshot in time)に対応する。FMCWレーダーシステムは、しばしば幾つかの受信アンテナを備える。少なくとも2つのアンテナが使用されるとき、オブジェクトに対する角度を推定することもできる。
【0004】
現在のレーダーシステムは多くの利点を有するが、改善の余地が存在する。
【0005】
レーダーの使用がより一般的になってきているため、異なるレーダーが互いに干渉し始めるリスクの増加が存在する。例示するために、交通量をモニターするために使用されるレーダーは、そばを通過する乗り物に搭載されたレーダーからの干渉を受ける場合がある。干渉の結果として、レーダーの機能は、悪化するまたは最悪の場合完全に失敗する場合がある。
【0006】
したがって、FMCWレーダーシステムからのレーダー画像における干渉を低減する方法を提供することが本発明の目的である。ターゲット検出の高い可能性および誤ったターゲット検出の低い可能性を可能にするレーダー画像を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0007】
本発明の上記のまた他の目的は、独立請求項において規定される発明によって少なくとも部分的に満たされる。好ましい実施形態は、従属請求項において述べられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、干渉低減されたレーダー画像を生成するための方法が提供され、方法は、
ビート信号の測定シーケンスを受信することであって、各ビート信号は複数のセグメントを含み、各セグメントは或る振幅を有し、j番目のビート信号のi番目のセグメントは、振幅A
i,jを有するセグメントi,jとして識別可能であり、ここで、i=1、…、a、j=1、…、bである、受信すること、
ビート信号の測定シーケンス内で1つまたは複数の干渉セグメントを識別することであって、干渉セグメントは干渉を受けるセグメントである、識別すること、
ビート信号の測定シーケンスの改変された表現を、要素y
i,jを有する行列Y
の形式で作成することによって、ビート信号の測定シーケンスを改変する(doctor)ことであって、
ここで、y
i,j=m
i,j×A
i,jであり、m
i,jはマスキング値であり、マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されるか否かに依存し、マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントでない場合と比較して、セグメントi,jが干渉セグメントである場合、より低い値に設定される、改変すること、
ビート信号の測定シーケンスの改変を表す改変用マスクを作成することであって、改変用マスクは、要素m
i,jを有する行列M
である、作成すること、および、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定することであって、再構成されるレンジ・ドップラ画像は、Mを使用して逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像であり、レンジ・ドップラ画像は、ビート信号のシーケンスの表現の時間周波数変換である、推定すること
を含み、
これにより、ビート信号の測定シーケンスを改変することは干渉効果を少なくとも部分的に除去し、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定することは改変によって作成される画像アーチファクトを少なくとも部分的に除去する。
【0009】
図1は、周波数変調連続波レーダーシステムからのビート信号の測定シーケンス1を概略的に示す。ビート信号の測定シーケンス1は、それぞれがセグメント3を有するb個のビート信号2のシーケンスを含む。セグメント3は、本明細書において、ビート信号の時間サンプルであって、時間サンプルが記録された時刻におけるビート信号の振幅を表す、時間サンプルとすることができる。b個のビート信号2は、第1の信号から初めて、
図1の水平軸に沿って互いに隣り合うように編成される。或るビート信号は、そのビート信号インデックスjによって識別することができ、ここで、1≦j≦bである。各ビート信号2のセグメント3は、垂直軸に沿って配置される。或るセグメントは、そのセグメントインデックスiによって識別することができ、ここで、1≦i≦aである。
【0010】
レーダーシステムが、干渉、例えば、競合するレーダーシステムからの干渉を受ける場合、セグメントの一部は、不正確な振幅、例えば、競合するレーダーシステムが周りにない状態で、レーダーシステムが単独で作動していた場合に予想されるであろう振幅を反映しない振幅を有することになる。そのため、ビート信号の測定シーケンス1内の一部のセグメントは、干渉セグメント4とすることができる。干渉セグメント4は、例えば、レーダーシステム自身によって引き起こされるレーダー反射の振幅に比べて、競合するレーダーシステムの送信振幅により強く関連する振幅を有するセグメントとすることができる。
【0011】
ビート信号のシーケンス1は、時間周波数変換によってレンジ・ドップラ画像に変換することができる。これを行う1つの方法は、フーリエ変換、例えば、2Dフーリエ変換である。例えば、離散的フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)が、新しい行列を作成するために各列に対して実施され、それに続いて、新しい行列の各行についてDFTが実施されて、レンジ・ドップラ画像を形成することができる。
【0012】
レンジ・ドップラ画像内の各ピクセルは、そのレンジ・ドップラビンにおけるリターンエコーの信号に対応する振幅として見ることができる。振幅は、本明細書で複素値とすることができる。レンジ・ドップラ画像がグラフィカルに提示されると、振幅の絶対値、すなわち、そのレンジ・ドップラビンにおけるリターンエコーの信号強度が提示される。こうして、レンジ・ドップラ画像は、それぞれの軸におけるレンジおよびドップラを有し、ピクセル値が、対応する反射信号強度である、2次元画像とすることができる。
【0013】
以下において、
図2~5は、概念の選択を導入し、レンジ・ドップラ画像が作成されるときに生じる場合がある問題の幾つかを例示し、発明の概念の利点の一部を例示するために使用されることになる。しかしながら、
図2~5の例は、特許請求される主題の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。
図2~5で使用されるデータは、測定データではなく、シミュレーテッドデータ(simulated data)である。しかしながら、シミュレーテッドデータを参照する述べる任意の動作が、対応する方法で、測定データを参照することができることが理解されるべきである。
【0014】
図2は、干渉がない状態での、ビート信号の測定シーケンス1のシミュレーションを示す。
【0015】
図2bは、1つの単一ビート信号2を示す。
図2bのx軸は複数のセグメントを表すセグメントインデックスである。
図2bのy軸はビート信号の振幅である。ビート信号の振幅は、
図2bに示すように、セグメントごとに変動する場合がある。1つのセグメントの絶対振幅は、ビート信号のサンプルの、測定された信号電力レベルを表すことができる。
【0016】
図2aは、干渉がない、ビート信号の全体のシミュレーテッドシーケンス1を、グレースケール画像の形式で示す。
図2aのx軸は複数のビート信号を表すビート信号インデックスである。
図2aのy軸は、各ビート信号の複数のセグメントを表すセグメントインデックスである。
図2aにおいて、ビート信号は、第1のビート信号1から初めて、x軸に沿って互いに隣り合うように編成される。各ビート信号のセグメントはy軸に沿って配置される。こうして、
図2aの各列は、
図2bで提示したタイプのビート信号に対応する。
図2aのグレースケール画像において、各セグメントの実数部は、デシベルスケール上のグレースケール値として表される。
【0017】
図2cは、
図2aのビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンスから作成されたレンジ・ドップラ画像を示す。レンジ・ドップラ画像において、可動オブジェクトは、増加した輝度のピクセルの群によって表すことになる。レンジ・ドップラ画像の各ピクセルの輝度は、信号のエネルギーレベルを表すことができ、また、レーダー信号を反射するオブジェクトの能力を基本的に表すことができる。輝度は、この図において、右側のスケールバーに対応するグレースケールで表される。特に、
図2cのx軸は速度の尺度を表し、
図2cのy軸は受信機からの距離の尺度を表す。その結果、レンジ・ドップラ画像の各ピクセルは、或る速度および受信機からの或る距離を表す。ピクセルの輝度が高ければ高いほど、信号のエネルギーレベルが高い。ピクセルの輝度が低ければ低いほど、信号のエネルギーレベルが低い。
図2cのレンジ・ドップラ画像において、バックグラウンドノイズフロア(background noise floor)より目立つ3つの可動オブジェクトが存在する。ノイズフロアは、この場合、-160.0dBの値を有するグレースケールに対応し、信号対雑音比(SNR)は42.3dBである。
【0018】
図3は、干渉を伴うビート信号の測定シーケンス1のシミュレーションを示し、干渉は、幾つかの干渉セグメント4を生じる。
図3aは、干渉を伴うビート信号の全体の測定(シミュレーテッド)シーケンス1を、グレースケール画像の形式で示す。
図3bは、干渉を伴うビート信号のシミュレーテッドシーケンスの1つの単一ビート信号2を示す。干渉は、異なるビート信号2内の干渉セグメント4として見られる。この例のビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンス1において、干渉セグメント4は対角パターンを形成する。
図3cは、
図3aのビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンスから作成されたレンジ・ドップラ画像を示す。
図3のシミュレーションのために使用されるデータならびにデータの提示は、干渉の導入を除いて、
図2のシミュレーションと類似する。
図3において、干渉がノイズフロアを上げる場合があることを見ることができる。この場合、ノイズフロアは、-148.6dBまで上げられ、SNRは31.3dBになる。付加ノイズは、例えば、真のオブジェクト(真の反射)を曖昧にする場合があり、付加ノイズは、同様に偽りのオブジェクトを生じさせる場合があり、人間オペレータまたは機械が結果として得られるレーダー画像を解釈することを難しくする。
図3cの例において、
図2cのレーダー画像内のおよその座標[95,55]において以前は見えているオブジェクトは、今やバックグラウンドノイズ内に消えている。
【0019】
干渉の悪い影響は、干渉を受けるセグメントをビート信号の測定シーケンス1内で識別し、これらのセグメントを、例えば、それらをゼロに設定することによってマスクすることによって、ある程度、軽減することができる。
図3aの干渉を伴うビート信号のシーケンスは、こうして、例えば、干渉を受けるビート信号のシーケンスの全てのセグメントをゼロに設定することによって改変することができる。しかしながら、改変を異なるように行うこともできることが理解されるべきである。例えば、干渉を受けるビート信号のシーケンスの全てのセグメントの振幅を、或るパーセンテージ、例えば90%だけ減少させることができる。改変は、干渉を受けないセグメントに影響を及ぼす場合もある。改変は、例えば、識別された干渉セグメントに隣接するまたはそれに近いセグメントの振幅を減少させる場合がある。これは、識別ステップが必ずしも完全でない場合があるため、予防措置として行うことができる。
【0020】
図4は、
図3からのシミュレーションの改変を示す。ビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンスの改変された表現6は、識別された干渉セグメントをゼロに設定することによって作成される。
図4aは、グレースケール画像の形式で、Yとして参照される行列フォーマット(matrix format)で、ビート信号の測定シーケンスの全体の改変された表現6を示す。
図4bは、改変後の1つの単一ビート信号を示す。
図4cは、Yのレンジ・ドップラ画像20、すなわち、
図4aのビート信号の測定シーケンスの改変された表現から作成されたレンジ・ドップラ画像を示す。
【0021】
図4cに提示された、ビート信号の改変されたシーケンスに起因したレンジ・ドップラ画像は、
図3cに提示された、改変前の干渉を伴うビート信号のシーケンスに起因したレンジ・ドップラ画像ほどにはノイジーでない。ノイズフロアが
図4cにおいて-160.6dBまで減少し、SNRが40.9dBまで変化しているように思われる。こうして、干渉を受けるビート信号のシーケンスのセグメントをゼロに設定することによって、ビート信号の改変されたシーケンスに起因したレンジ・ドップラ画像は、バックグラウンドノイズの点、改変前のビート信号のシーケンスに起因したレンジ・ドップラ画像より明瞭になることができる。その結果、識別されるオブジェクトを表すピクセルの群とバックグラウンドノイズとの間の輝度レベルの差は、
図4cのレーダー画像において大きくなることができる。こうして、干渉を伴うビート信号の改変されたシーケンスに起因したレーダー画像において、オブジェクトを識別することがより容易になることができる。
【0022】
しかしながら、
図4cのレンジ・ドップラ画像は(減少したノイズフロアの点で)
図3cのレンジ・ドップラ画像より明瞭であるが、およその座標[45,235]において識別されるオブジェクトから延在する回折スパイク(diffraction spike)として見られる、
図4cのレーダー画像内のアーチファクトが存在する。
【0023】
図4cのアーチファクトと同様のアーチファクトが、シーン内に実際には存在しないオブジュエクトとして誤って解釈される可能性があり、したがって、アーチファクトがゴーストオブジェクトを形成する場合があることが本発明の認識である。
図4cのアーチファクトと同様のアーチファクトが実際のオブジェクトを曖昧にする可能性があることが本発明のさらなる認識である。アーチファクトをゴーストオブジェクトとして解釈すること、または、アーチファクトによって曖昧にされる実際のオブジェクトを識別しないことは、レンジ・ドップラ画像が、人間オペレータによってではなく、機械によって自動的に解釈されるときに、特に問題となる場合がある。
【0024】
アーチファクトを予測することができ、アーチファクトが予測されると、アーチファクトを、位置特定し、結果として得られるレンジ・ドップラ画像から除去することができることがさらなる認識である。
【0025】
図5は、
図4のビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンスの改変を示す。
【0026】
図5aは、
図4aのビート信号の測定(シミュレーテッド)シーケンスの改変を表す改変用マスク8を示す。上記で述べたように、改変用マスク8は、行列フォーマットでMと呼ばれる。
図5aはバイナリー画像であり、白色エリアはマスキング値0、すなわち、
図4aにおいてゼロに設定されたセグメントを表し、黒色エリアはマスキング値1、すなわち、
図4aにおいて全くマスクされなかったセグメントを表す。
【0027】
図5bは、
図5aのバイナリー画像から導出されたレンジ・ドップラ画像を示す。
図5bのレンジ・ドップラ画像は、
図2c、
図3c、および
図4cのレンジ・ドップラ画像が受けたのと同じレーダー信号処理、例えば、フーリエ変換を、
図5aの改変用マスクに受けさせることによって生成することができる。
【0028】
図5bのレーダー画像において、回折スパイクの形のアーチファクトは、画像の中央に見られる。見られるように、アーチファクトは、
図4cの3つのオブジェクトのアーチファクトと同様である。そのため、
図5aの改変用マスクの生成画像は、ビート信号の改変されたシーケンスによって引き起こされる、結果として得られたレンジ・ドップラ画像内のアーチファクトを予測することができる。
図4cにおけるYのレンジ・ドップラ画像は、改変用マスクMのレンジ・ドップラ画像によって畳み込まれる正しいが未知のレンジ・ドップラ画像と考えることができる。
【0029】
正しいレンジ・ドップラ画像を完全に再構成することは可能でない場合があり、なぜならば、干渉によって一部の情報が取り消し不能に曖昧にされる場合があるからである。しかしながら、再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定であって、Mを使用して逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像である、再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定が、再構成されるレンジ・ドップラ画像の他の推定と比べて、人間および/または機械によって正しく解釈される可能性が高い画像を提供することができることが本発明の認識である。
図5cは、再構成されるレンジ・ドップラ画像22のそのような推定を示す。
図5cのノイズフロアは-169.9dBであり、SNRは48.5dBである。
【0030】
図5cを
図3cと比較すると、再構成されるレンジ・ドップラ画像22の推定が、改変なしで干渉を伴うビート信号のシーケンスから直接導出されたレンジ・ドップラ画像より少ないバックグラウンドノイズを有することができることが明らかである。さらに、
図4cと比較すると、再構成されるレンジ・ドップラ画像22の推定が、改変が引き起こす場合があるアーチファクトを除去することができることが明らかである。
【0031】
人間および/または機械によって正しく解釈される可能性がある再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定は、ターゲット検出の高い確率および偽りのターゲット検出の低い確率を可能にする。例えば、小さいターゲット、例えば、歩行者であって、大きいターゲット、例えば、歩行者の近くでゆっくり移動する車に近い、歩行者は、大きいターゲットからのノイズによっても、回折スパイクによっても曖昧にされることなく、再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定において検出することができる。
【0032】
発明の概念によれば、測定ビート信号を、送信レーダー信号と受信レーダー信号の混合から導出される信号とすることができることが理解されるべきである。ビート信号の測定シーケンスは、例えば、1つの測定フレームを構成するビート信号のシーケンスとすることができる。
【0033】
さらに、干渉セグメントを識別することを多くの異なる方法で行うことができることが理解されるべきである。例えば、干渉セグメントを、ビート信号を参照ビート信号と比較することによって識別することができる。競合するレーダーシステムからのレーダー信号が、測定用レーダーシステムと比較して、時間的にオフセットするまたはわずかに異なる繰り返し周波数を有する可能性がある。その結果、ビート信号の測定シーケンスにおいて、異なるビート信号は、異なるセグメント内に分配される可能性がある。干渉セグメントは、例えば、ビート信号のシーケンス内で対角に配置することができる。したがって、ビート信号の干渉セグメントは、そのシーケンス内の異なるビート信号の対応するセグメントに関して計算される平均または中央値にほとんど影響を与えないことになる。そのため、参照ビート信号は、ビート信号のシーケンス内のビート信号の1つまたは複数の平均または中央値として計算することができる。ビート信号内のセグメントの振幅と参照ビート信号内の対応するセグメントの振幅との差が閾値より大きい場合、セグメントを干渉セグメントとして識別することができる。連続するビート信号が参照ビート信号と比較される場合、差の微分を計算することができる。差の微分が閾値より大きい場合、セグメントを干渉セグメントとして識別することができる。微分は、例えば、一次微分、二次微分、三次微分などとすることができる。
【0034】
2つ以上の干渉セグメントを、単一ビート信号内で識別することができることが理解されるべきである。一部のビート信号において、干渉セグメントが存在しない場合があることも理解されるべきである。干渉セグメントの識別を、オンザフライで(on the fly)で行うことができることが理解されるべきである。それぞれの新しいビート信号が測定されるにつれて、新しいビート信号を、例えば、参照ビート信号と比較することができ、干渉セグメントを識別することができる。こうして、それぞれの新しい測定ビート信号が利用可能になるため、Yの各列およびMの各列を作成することができる。識別は、こうして、全体のシーケンスが測定される前に行うことができる。識別が行われる前に、ビート信号の1つの測定シーケンスにおいて複数の測定ビート信号を最初に収集することができることも理解されるべきである。例えば、ビート信号の全体の測定シーケンスを、要素z
i,jを有する行列Z
として表すことができる。Zが作成されると、干渉セグメントの識別を実施することができ、Mを作成することができる。その後、Yを、
として作成することができ、ここで、
は、ハダマール積、すなわち、MおよびZ内の要素の要素ごとの乗算を指す。以下において、Zは、改変前のビート信号の測定シーケンスを指すために使用されることになる。しかしながら、これが例証のためだけのものであることが理解されるべきである。方法は、Zが計算されない場合でも、測定ビート信号が利用可能になるにつれてZがオンザフライで計算される場合に、または、ビート信号の全体のシーケンスが測定された後に、適用可能である。
【0035】
マスキング値を任意の小数(decimal number)とすることができることが理解されるべきである。マスキング値を0~1の任意の小数とすることができることも理解されるべきである。マスキング値を0または1の数値とすることができることも理解されるべきである。
【0036】
YおよびMからの再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定することを、幾つかの異なる方法で行うことができることが理解されるべきである。1つの方法は、
を解くこととすることができ、
ここで、
はMのフーリエ変換であり、
はYのフーリエ変換であり、
は畳み込み演算子である。式1は多くの解を有することができる。例えば、
を1つの解とすることができる。求める解を、推定され再構成されるレンジ・ドップラ画像がビート信号の測定シーケンスのレンジ・ドップラ画像と異なる解とすることができる、例えば、解が
を満たすことが理解されるべきである。
の多くの解の中で、1つの解が、改変がない、干渉なしのビート信号の測定シーケンスから得られるレンジ・ドップラ画像に対応することができることが理解されるべきである。この厳密な解を見出すことが可能でない場合があることも理解されるべきである。しかしながら、別の解が、依然として、再構成されるレンジ・ドップラ画像の他の推定に対する改善である場合がある。
【0037】
1つまたは複数の干渉セグメントの少なくとも1つは、例えば、
セグメント振幅、
セグメント振幅と参照セグメント振幅との差、および、
セグメント振幅と参照セグメント振幅との差の微分
のうちの少なくとも1つを1つまたは複数の閾値と比較することによって識別することができる。
【0038】
干渉セグメントは、例えば、閾値より大きい振幅を有する全ての要素を見出すことによって識別することができる。干渉セグメントは、例えば、参照セグメント振幅を計算し、セグメント振幅と参照セグメント振幅との差を閾値と比較することによって識別することもできる。参照セグメント振幅は、例えば、同じセグメントインデックスを有するビート信号の測定シーケンス内の全てのセグメント、または、同じセグメントインデックスを有するビート信号の測定シーケンス内のセグメントのサブセットの平均または中央値であるとすることができる。干渉セグメントは、例えば、セグメント振幅と参照セグメント振幅との差の微分を計算することによって識別することもできる。時間的に隣接する、すなわち、同じセグメントインデックスを有するが異なるビート信号インデックスを有する2つ以上のセグメントの振幅を比較することによって、差の微分を計算することができる。微分が閾値より大きい場合、2つ以上のセグメントの1つまたは複数を干渉セグメントとして識別することができる。
【0039】
これらは、干渉セグメントを識別する計算的に効率的な方法である場合がある。
【0040】
再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定するステップは、例えば、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
の第1の予備推定を見出すこと、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
の第2の予備推定を見出すこと、及び、
に比べて、Yに対する良好な最小二乗近似である場合、推定され再構成されるレンジ・ドップラ画像
として決定することであって、
はハダマール積(Hadamard product)を指し、X
1は
の逆フーリエ変換であり、X
2は
の逆フーリエ変換である、決定することを含むことができる。
【0041】
これは最適化プロセスを容易にする。異なる推定
を互いに比較することができ、最良の推定を選択することができる。例えば、X
1およびX
2は、
を生じたであろうビート信号のシーケンスを表す。干渉セグメントとして識別されるセグメントにおいて、X
1およびX
2が良い推定であるか、悪い推定であるかを見分けることが不可能である場合がある。しかしながら、他のセグメントにおいて、おそらくは正確な測定データが存在し、そのデータがYにおいて表される。こうして、X
1およびX
2内の干渉セグメントが、未処理データがマスクされるのと同じ方法でマスクされる(X
1およびX
2内の対応するセグメントが干渉を含まない場合でも)場合、セグメントの残りをYと比較することができる。これは、例えば、
を計算し、これらの行列を最小二乗の意味でYと比較することによって実装することができる。例えば、
の各要素を、Yの対応する要素と比較することができ、残差(residual)を計算することができる。残差二乗和(sum of the squared residuals)(重み付けありまたは重み付けなし)を、
について計算することができる。最小和は最適解を表すことができる。
【0042】
再構成されるレンジ・ドップラ画像
は、ウィーナー逆畳み込みを使用してMを用いて逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像とすることができる。
【0043】
ウィーナー逆畳み込みは、ゼロに近い要素による分割を回避する逆畳み込み法である。したがって、ウィーナー逆畳み込みは、ノイジーなレンジ・ドップラ画像の復元に特に適する場合がある。ウィーナー逆畳み込みは、マスキング値を用いて振幅を下げることによって一部のセグメントがマスクされたビート信号の測定シーケンスの改変された表現から導出されるレンジ・ドップラ画像の復元に特に適するとすることもできる。
【0044】
方法は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別される場合、マスキング値mi,jを最小値に設定することをさらに含むことができ、最小値は行列Mの最小値である。
【0045】
最小値は、本明細書では、ゼロに最も近い行列M内の値とすることができる。最小値に設定されたマスキング値は、干渉セグメントが、干渉セグメントとして識別されないセグメントより大きく減衰することを保証することができる。
【0046】
最小値を0とすることもできることが理解されるべきである。そのため、少なくとも一部の干渉セグメントについてのマスキング値をゼロに設定することができ、これにより、これらのセグメントが、改変プロセスにおいて完全にマスクされる。これらの干渉セグメントがシーンに関する関連情報を全く含まない場合がある。そして、これらの干渉セグメントの振幅をゼロに設定することは有利である場合がある。
【0047】
干渉セグメントとして識別されるセグメントに対応する全てのマスキング値を同じ最小値に設定することができることが同様に理解されるべきである。
【0048】
これは、例えば、干渉セグメントがいずれも、シーンに関する関連情報を含まないときに有利である場合がある。
【0049】
方法は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されない場合、マスキング値mi,jを最大値に設定することをさらに含むことができ、最大値は行列Mの最大値である。これは、非干渉セグメントについての振幅の再スケーリングが干渉セグメントについての振幅の再スケーリングと十分に異なることを保証することができる。
【0050】
最大値を1とすることができることが理解されるべきである。そのため、少なくとも一部の非干渉セグメントについてのマスキング値を1に設定することができ、これにより、これらのセグメントは、改変後にそれらの振幅を保持する。
【0051】
干渉セグメントとして識別されないセグメントに対応する全てのマスキング値を同じ最大値に設定することができることも理解されるべきである。新しいアーチファクトを導入しないように、全ての非干渉セグメントを同じ方法で処理することが有利である場合がある。
【0052】
マスキング値は、行列M内で少なくとも1つの窓関数を形成するように構成することができ、窓関数は、
行列Mの行i内の要素であって、行内の要素のうちの1つの要素は、干渉セグメントとして識別されるセグメントi,jに対応する要素i,jであり、窓関数は、行に沿って要素i,jの最小値から、干渉セグメントとして識別されないセグメントに対応する要素の最大値まで連続して増加する要素値を有するように構成される、行列Mの行i内の要素、または、
行列Mの列j内の要素であって、列内の要素のうちの1つの要素は、干渉セグメントとして識別されるセグメントi,jに対応する要素i,jであり、窓関数は、列に沿って要素i,jの最小値から、干渉セグメントとして識別されないセグメントに対応する要素の最大値まで連続して増加する要素値を有するように構成される、行列Mの列j内の要素
を含む。
【0053】
窓関数は、最大値から最小値への円滑な移行を提供することができる。これは、鋭利な縁がビート信号の測定シーケンスの改変された表現内に形成されることを防止することができる。本明細書の縁は、1つのセグメントから別のセグメントへの振幅の突然の変化を指す。鋭利な縁は、改変にって作成されるアーチファクトをより深刻にする場合がある。そのため、窓関数の使用は、推定され再構成されるレンジ・ドップラ画像の品質を改善することができる。行と列の両方に沿って窓関数を表示する行列の例は、
である。
【0054】
本明細書の0.0マスキング値は干渉セグメントの対角セクションをマスクし、1.0マスキング値は、セグメントであって、それらの振幅を保持するべきである、セグメントに対応する。0.5マスキング値は、0.0マスキング値から1.0マスキング値への円滑な移行を作成する。0.5マスキング値を有する行列要素は、本明細書において、干渉セグメントとして識別されないが、干渉セグメントの隣に位置するセグメントに対応することができる。
【0055】
窓関数は、ハン窓(Hann window)、ブラックマン窓(Blackman window)、ハミング窓(Hamming window)、バートレット窓(Bartlett window)、またはフラットトップ窓(flat top whndow)を含むことができる。これらは、アーチファクト生成を効果的に低減する窓関数とすることができる。
【0056】
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定するステップは、
を形成するためにYをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
を形成するためにMをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
逆マスクGを作成することであって、Gは要素g
u,vを有する行列であり、各要素g
u,vは、行列
の要素
の推定信号対雑音比に基づき、これにより、
は、大きい推定信号対雑音比の場合に比べて小さい推定信号対雑音比の場合により小さい値を形成する、作成すること、および、
の逆フーリエ変換であるように
を設定することであって、
はハダマール積を指す、設定すること
を含む。
【0057】
これは、フーリエ変換に基づくため、推定を実施する計算的に効率的な方法である場合がある。
【0058】
これは、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定する1つの方法とすることもでき、その方法は、既存のレーダーハードウェアに実装するのが容易である。既存のレーダーハードウェアは、例えば、
を送出することができる。そのため、再構成されるレンジ・ドップラ画像の上記推定の複数の部分を、既に実施している場合がある。推定の残りの部分を、例えば、他のところで実施することができる。
【0059】
Gのg
u,v要素を、
に設定することができ、
ここで、
の複素共役を示し、
の絶対値を示し、R(u,v)は、要素u,vにおける
の推定信号対雑音比の二乗に反比例する数字である。
【0060】
の推定信号対雑音比を、
を知ることなく推定することができることが理解されるべきである。それを、例えば、
から推定することができる。それを、同様のシナリオにおいて以前に集めたデータに基づいて推定することもできる。
【0061】
本発明の概念の第2の態様によれば、コンピュータ可読命令を記憶するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提供され、コンピュータ可読命令は、処理ユニット上で実行されると、第1の態様による方法を処理ユニットに実施させる。
【0062】
本発明の第2の態様によるコンピュータプログラム製品は、本出願の特許請求の範囲によって包含される第1の態様による方法と同じ利点または同様の利点を有することができ、また、おそらくは、将来の分割出願の主題とすることができる。
【0063】
本発明の第3の態様によれば、干渉低減されたレーダー画像を生成するための装置が提供され、装置は制御回路を備え、制御回路は、
ビート信号の測定シーケンスを受信するように構成され、各ビート信号は複数のセグメントを含み、各セグメントは或る振幅を有し、j番目のビート信号のi番目のセグメントは、振幅A
i,jを有するセグメントi,jとして識別可能であり、ここで、i=1、…、a、j=1、…、bであり、
ビート信号の測定シーケンス内で少なくとも1つの干渉セグメントを識別するように構成され、干渉セグメントは干渉を受けるセグメントであり、
ビート信号の測定シーケンスの改変された表現を、要素y
i,jを有する行列Y
の形式で作成することによって、ビート信号の測定シーケンスを改変するように構成され、ここで、y
i,j=m
i,j×A
i,jであり、m
i,jはマスキング値であり、マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントとして識別されるか否かに依存し、マスキング値は、セグメントi,jが干渉セグメントでない場合と比較して、セグメントi,jが干渉セグメントである場合、より低い値に設定され、
ビート信号の測定シーケンスの改変を表す改変用マスクを作成するように構成され、改変用マスクは、要素m
i,jを有する行列M
であり、
YおよびMから、再構成されるレンジ・ドップラ画像
を推定するように構成され、再構成されるレンジ・ドップラ画像は、Mを使用して逆畳み込みされるYのレンジ・ドップラ画像であり、レンジ・ドップラ画像は、ビート信号のシーケンスの表現の時間周波数変換であり、時間周波数変換は、ビート信号のシーケンスの表現を時間領域から周波数領域に変換し、
これにより、ビート信号の測定シーケンスを改変することは干渉効果を少なくとも部分的に除去し、再構成されるレンジ・ドップラ画像を推定することは、改変によって作成される画像アーチファクトを少なくとも部分的に除去する。
【0064】
本発明の第3の態様による装置は、本出願の特許請求の範囲によって包含される第1および第2の態様と同じ利点または同様の利点を有することができ、また、おそらくは、将来の分割出願の主題とすることができる。
【0065】
本発明の概念の第4態様によれば、レーダーユニットおよび第3の態様による装置を備える周波数変調連続波FMCWレーダーシステムが提供され、
レーダーユニットは、
信号の第1のシーケンスを送信するように構成される送信アンテナと、
送信アンテナによって送信される信号の第1のシーケンスに応答して、信号の第2のシーケンスを受信するように構成される受信アンテナと、
ビート信号のシーケンスを生成するために信号の第1のシーケンスおよび信号の第2のシーケンスを混合するように構成されるミキサーとを備え、
レーダーユニットは、ビート信号のシーケンスをビート信号の測定シーケンスとして装置に送出するように構成され、これにより、装置は干渉低減されたレーダー画像を生成する。
【0066】
本発明の第4の態様によるFMCWレーダーシステムは、本出願の特許請求の範囲によって包含される第1、第2、および第3の態様と同じ利点または同様の利点を有することができ、また、おそらくは、将来の分割出願の主題とすることができる。
【0067】
本発明の第4の態様によるFMCWレーダーシステムは、費用効果的なレーダーシステムとすることができる。従来のレーダーシステムにおいて、幾つかの受信アンテナは、干渉効果を軽減するために使用することができる。複数のアンテナによって、空間的ヌルを、干渉の方向に向けて適用することができる。しかしながら、これは、大きいブラインド領域を示唆し、ブラインド領域は、少数の受信アンテナが使用されるとき大きい。そのため、満足のいく性能のために、従来のFMCWレーダーシステムは、多くの受信アンテナを必要とする場合がある。これは、ハードウェアコストの点と計算負荷の点の両方で費用がかかる場合がある。第3の態様による装置を使用して干渉効果を軽減することによって、少数のアンテナを必要とすることができ、それは、コストの一部を軽減することができる。
【0068】
本発明の概念の上記のならびにさらなる目的、特徴、および利点は、添付図面を参照した、以下の例証的かつ非制限的な詳細な説明を通してより良く理解される。図面において、同様の参照符号は、別段に述べられない限り、同様の要素のために使用されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図2a】干渉がないビート信号のシーケンスの図である。
【
図2c】干渉がないビート信号のシーケンスから作成されたレンジ・ドップラ画像である。
【
図3a】干渉を伴うビート信号のシーケンスの図である。
【
図3b】干渉を伴うビート信号のシーケンスの図である。
【
図3c】干渉を伴うビート信号のシーケンスから作成されたレンジ・ドップラ画像である。
【
図4a】ビート信号のシーケンスの改変された表現の図である。
【
図4c】ビート信号のシーケンスの改変された表現から作成されたレンジ・ドップラ画像である。
【
図5b】改変用マスクのレンジ・ドップラ画像である。
【
図5c】再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定の図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
添付図面と連携して、本発明の技術的内容および詳細な説明が、好ましい実施形態に従って以降で述べられ、好ましい実施形態は、特許請求される範囲を制限するために使用されない。本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、また、本明細書で述べる実施形態に限定されるものと解釈されるべきでない;むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性(thoroughness and completeness)のため、また、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0071】
図6は、FMCWレーダーシステム200を示す。レーダーシステム200は、ビデオカメラに対する補完物として使用することができる。例えば、レーダーシステム200をビデオカメラに含むことができる。レーダーシステム200は、レーダーユニット201および干渉が低減されたレーダー画像212a、212bを生成するための1つまたは複数の装置を備える。レーダーシステムはレーダー処理デバイス214を備えることもできる。レーダーユニット201は、1つまたは複数の送信アンテナ204、1つまたは複数の受信アンテナ206a、206b、および1つまたは複数のミキサー208a、208bを備える。レーダーユニット201は、シンセサイザーを備えることもできる。
【0072】
送信アンテナ204は、信号のシーケンスを送信するように構成される。信号のシーケンスはフレームで送信することができる。例えば、送信アンテナ204は、信号のシーケンスを第1のフレームで送出することができる。その後、送信アンテナ204は、信号のさらなるシーケンスを第2のフレームで送出する前に、しばらくの間、沈黙状態であるとすることができる。
【0073】
特に、送信アンテナ204は、信号の第1のシーケンス203を送出することができる。信号の第1のシーケンス203は第1のフレームに対応することができる。信号の第1のシーケンス203をシンセサイザー202によって生成することができる。第1のシーケンス203内の各信号は、その周波数が時間と共に線形に増加する正弦曲線とすることができる-各信号はチャープと呼ぶことができる。
【0074】
送信される信号の第1のシーケンス203内の信号は、シーン内のオブジェクトに反射する。反射信号205は、その後、各受信アンテナ206a、206bによって異なる角度で受信される。したがって、各受信アンテナ206a、206bは、送信アンテナ204によって送信される信号の第1のシーケンス203に応答して、信号の第2のシーケンス207a、207bを受信する。反射信号205に加えて、受信アンテナ206a、206bは、他のレーダーユニットの送信機など、レーダーユニット201の一部でない送信機から送信される信号を受信することができる。それらの信号は、受信アンテナ206a、206bにおいて反射信号205と重ね合わされることになる。したがって、信号の受信される各シーケンス207a、207bは、反射信号205に由来する成分、および、干渉する送信機に由来する別の成分を有することができる。ここで、2つの受信アンテナ206a、206bが示される。しかしながら、実際には、レーダーシステム200は、任意の数の受信アンテナを有することができる。
【0075】
受信アンテナ206a、206bによって受信される信号のシーケンス207a、207bのそれぞれは、その後、対応するミキサー208a、208bによって信号の第1のシーケンス203と混合される。原理上、各ミキサー208a、208bは、入力信号の積を計算することによって、その入力信号を混合する。ミキサー208a、208bによって生成される出力信号は、ビート信号の測定シーケンス1と呼ばれる。したがって、ビート信号のシーケンス1a、1bが、各受信アンテナ206a、206bについて生成される。ミキサー208a、208bは、その入力信号の周波数帯を変更するのに役立つ。送信機204によって送出される信号203はGHzレンジにあるとすることができるが、ビート信号は、典型的には、MHzレンジ、例えば、0~10MHzである。ビート信号の測定シーケンス1a、1bは、レーダーシステム200のベースバンドデータを構成すると言うことができる。
図1に示すように、1つのフレーム内のビート信号の幾つかの測定シーケンス1a、1bは、干渉を受ける場合がある。
【0076】
受信アンテナに対応するビート信号の各測定シーケンス1a、1bは、その後、干渉が低減されたレーダー画像を生成するために装置212a、212bに入力される。干渉が低減されたレーダー画像を生成するために装置212a、212bの役割は、レーダーユニット201から離れている送信機によって引き起こされる干渉を低減することである。干渉が低減されたレーダー画像を生成するために装置212a、212bは、再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定を出力する。
【0077】
再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定を、その後、レーダー処理デバイス214に渡すことができ、レーダー処理デバイス214は、画像を処理し始める。レーダー処理デバイス214は、シーン内のオブジェクトの距離、速度、および角度を計算する周波数解析などの、任意の知られているタイプのレーダー処理を実施することができる。レーダー処理デバイス214は、再構成されるレンジ・ドップラ画像の推定の自動検査および解析などのマシンビジョンタスクを実施することもできる。レーダー処理デバイス214は、例えば、1つのフレーム内のオブジェクトを識別し、オブジェクトの位置がシーンの所定のエリア内にあるか否かをチェックし、複数の後続のフレームを使用してシーン内のオブジェクトの経路を登録し、例えば、オブジェクトの経路およびオブジェクトの速度に基づいてオブジェクトの将来の位置を予測することができる。
【0078】
図7は、干渉が低減されたレーダー画像を生成するための方法100のフローチャートを示す。
【0079】
ステップS102にて、ビート信号の測定シーケンス1が受信される。
【0080】
ステップS104にて、少なくとも1つの干渉セグメント4が識別される。干渉セグメント4は、例えば、閾値より大きい振幅を有する全ての要素を見出すことによって識別することができる。干渉セグメントは、例えば、参照セグメント振幅を計算し、セグメント振幅と参照セグメント振幅との差を閾値と比較することによって識別することもできる。参照セグメント振幅は、例えば、同じセグメントインデックスを有するビート信号の測定シーケンス1内の全てのセグメント、または、同じセグメントインデックスを有するビート信号の測定シーケンス1内のセグメントのサブセットの平均または中央値であるとすることができる。干渉セグメントは、例えば、セグメント振幅と参照セグメント振幅との差の微分を計算することによって識別することもできる。時間的に隣接する、すなわち、同じセグメントインデックスを有するが異なるビート信号インデックスを有する2つ以上のセグメントの振幅を比較することによって、差の微分を計算することができる。微分が閾値より大きい場合、2つ以上のセグメントの1つまたは複数を干渉セグメント4として識別することができる。
【0081】
ステップS106にて、ビート信号の測定シーケンス1が改変される。識別された干渉セグメント4の振幅は、例えば、他のセグメントの振幅を維持しながら、ゼロに設定することができる、すなわち、干渉セグメントにマスキング値m=0を与え、非干渉セグメントにマスキング値m=1を与える。別の代替法は、他のセグメントの振幅を維持しながら、識別された干渉セグメント4の振幅を減少させることである、すなわち、干渉セグメント4にマスキング値0<m<1を与え、非干渉セグメントにマスキング値m=1を与えることである。もちろん、1より大きいマスキング値も可能である。セグメントインデックスiおよびビート信号インデックスjを有する各セグメントについて、セグメント振幅の改変された値を、セグメントインデックスiおよびビート信号インデックスjに対応する位置において行列Yに入力することができる。こうして、行列Yは、yi,j=mi,j×Ai,jと設定することによって形成される。こうして、Yは、ビート信号の測定シーケンスの改変された表現6を形成する。Yにおいて1つのセグメントから別のセグメントへの振幅の突然の変化を回避しながら、円滑なマスキングを提供するために、窓関数を使用することができる。例えば、インデックスi,jを有するセグメントは干渉セグメント4であるが、周囲のセグメントは非干渉セグメントであると仮定する。干渉セグメント4をマスクするために、mi,j=0と設定することができる。iインデックスに沿う円滑な移行を提供するために、セグメント(i±1,j)および(i±2,j)が干渉セグメント4として識別されない場合でも、mi±1,j=0.3、mi±2,j=0.6、mi±3,j=1と設定することができる。もちろん、同じ原理を、jインデックスに沿う円滑化に適用することができる。窓関数は、例えば、ハン窓、ブラックマン窓、ハミング窓、バートレット窓、またはフラットトップ窓、あるいは、任意の標準的な窓関数を含むことができる。
【0082】
ステップS108にて、改変用マスク8が作成される。これは、例えば、改変S106と同時に行うことができる。Y行列へのエントリーyi,j=mi,j×Ai,jが作成されるたびに、行列Mにおいて、対応するエントリーを行うことができる。すなわち、マスキング値mi,jを、改変S106中に行われた変更を記録するために、M内のインデックスi,jに入力することができる。
【0083】
ステップS110にて、再構成されるレンジ・ドップラ画像
が推定される。これは、例えば、
を形成するためにYをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
を形成するためにMをフーリエ変換すること、
を形成するために
をフーリエ変換することであって、
の要素ごとの絶対値である、フーリエ変換すること、
逆マスクGを作成すること
によって行うことができる。ここで、Gの各要素g
u,vは、行列
の推定信号対雑音比に基づく。Gの要素は、
として計算することができる。ここで、R(u,v)は、要素u,vにおける
の推定信号対雑音比の二乗に反比例する数字である。R(u,v)を、同様のシナリオにおいて以前に集めたデータに基づいて推定することができる。例えば、正規化パラメータと共にラプラスカーネル(Laplace kernel)から、以下のPythonコードは、R(u,v)およびGをどのように計算することができるかを例示する:
カーネル=np.array([[0,-1,0],[-1,4,-1],[0,-1,0]])
kappa=0.1#正規化パラメータ-先験的に選択される
Rhathat=fftshift(fft2(カーネルs=Mhat.shape))
Mhathat= fftshift(fft2(np.abs(Mhat)))
R_uv=kappa
*np.abs(Rhathat)
**2
G= np.conj(Mhathat)/(np.abs(Mhathat)
**2+R_uv)
ここで、R_uvは、行列R(u,v)全体を表し、Mhatは
を表す。
【0084】
Gが計算されると、Gは、
を要素ごとに乗じられて、
を形成することができる。その結果は、その後、逆フーリエ変換されて、
を形成することができる。
【0085】
フーリエ変換は、ここでは2Dフーリエ変換とすることができる。例えば、新しい行列を作成するために、行列の各列について離散的フーリエ変換(DFT)を行い、それに続いて、新しい行列の各行についてDFTを行うことができる。
【0086】
方法100のステップが、必ずしも提示される順序で実施されない場合があることが理解されるべきである。例えば、ビート信号の測定シーケンス1全体が、最初に受信され、行列Zによって表すことができる。干渉セグメント4は、行列演算によって識別されてS104、改変用マスクMを作成するS108ことができる。改変用マスクMは、その後、Zに適用されて、ビート信号の測定シーケンス1を改変するS106ことができる。これは、Y=M*Zと設定することによって行うことができ、*は、要素ごとの乗算を表す。別の例において、方法はオンザフライで実施される。測定された新しいビート信号が受信されるS102と、S104、S106、およびS108のステップを、その特定の測定されたビート信号について実施することができ、Mおよび/またはYおよび/またはZ内の対応するj列を埋めることができる。測定された次のビート信号が受信されると、Mおよび/またはYおよび/またはZ内の後続のj列を埋めることができる。識別ステップS104にて、参照セグメント振幅を、例えば、最後の5つの測定されたビート信号、最後の10の測定されたビート信号、または同じフレーム内の全ての先行するビート信号に基づいて計算することができる。
【0087】
上記において、発明の概念は、制限された数の例を参照して主に述べられた。しかしながら、当業者によって容易に認識されるように、上記で開示した例以外の例が、添付特許請求項によって規定される発明の概念の範囲内で同様に可能である。