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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】尿試料中の検体の存在の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20220816BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01N33/493 Z
C12Q1/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020511932
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018047874
(87)【国際公開番号】W WO2019046115
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】62/550,852
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/608,656
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ダス,カウシク
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-079853(JP,A)
【文献】特表2002-503093(JP,A)
【文献】G. A. Hoeltge, et al.,A Quality control System for the General Urinalysis Laboratory,American Journal of Clinical Pathology,1980年03月01日,vol. 73, no. 3,403-408
【文献】CHIEN TZU-I et al.,Urine sediment examination:A comaparison of automated urinalysis systems and manual microscopy,CLINICA CHIMICA ACTA,2007年,Vol.384.No.1,PP.28-34
【文献】ZAMAN, Z et al.,Urine sediment analysis: Analytical and diagnostic performance of sediMAX-A new automated microscopy imaged-based urine sediment analyser,Clinica Chimica Acta,2009年02月02日,Vol.411,No.3-4,PP.147-154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者由来の尿試料中の検体の存在の検出方法であって、
顕微鏡による尿沈渣分析装置を用いて尿マトリックス、並びに、SKBR-3細胞若しくはH-1975細胞である癌細胞、珪藻である藻類細胞、卵白又はこれらの任意の組み合わせを含有する精度管理物質を分析して前記精度管理物質中の成分の形態を決定し
前記精度管理物質中の前記成分の形態と前記尿試料中の検体の形態とを比較し、前記検体の形態と前記精度管理物質中の成分の形態とが一致することにより、前記尿試料中での前記検体の存在が示されることを特徴とする、検出方法。
【請求項2】
(i)前記検体が非扁平上皮細胞であって、前記精度管理物質が癌細胞を含むか
(ii)前記検体が異常な円柱であって、前記精度管理物質が藻類細胞を含むか、
(iii)前記検体が粘液であって、前記精度管理物質が卵白を含むか、又は
iv)前記(i)~(iii)の任意の組合せを含む、
請求項に記載の検出方法。
【請求項3】
前記精度管理物質が、更に、結晶、細菌細胞、精子細胞、白血球、赤血球若しくは硝子円柱、又はこれらの任意の組合せを更に含む、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記精度管理物質が被験者由来の尿試料中の1つ以上の検体の存在を同定するために使用される請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、平成29年8月28日に出願された米国仮出願第62/550,852号、及び平成29年12月21日に出願された米国仮出願第62/608,656号に対する優先権を主張するものであり、参照としてその全体を本明細書で援用する。
【0002】
顕微鏡による尿沈渣分析装置と共に使用する精度管理物質及びその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡による尿沈渣分析装置は、検体の形態に基づいて様々な検体の存在について尿試料を評価する。沈殿物分析装置がその形態に基づいて検体を正しく検出するようにするには、精度管理が必要である。しかしながら、現行の沈査尿検査精度管理(QC)物質は、全ての一般的な検体に対する適切な対照物質として役に立たない。
【発明の概要】
【0004】
顕微鏡による尿沈渣分析装置と共に使用する精度管理物質を提供する。この精度管理物質は、尿マトリックス及び癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0005】
被験者由来の尿試料中の検体の存在の検出方法も提供する。この検出方法は、精度管理物質中の成分の形態を決定するために、顕微鏡による尿沈査分析装置を用いて精度管理物質を分析し、精度管理物質中の成分の形態と尿試料中の検体の形態とを比較することを含み、精度管理物質中の成分の形態と尿試料中の検体の形態とが一致することは、尿試料中に検体が存在することを示す。
【0006】
また、被験者由来の尿試料中の1つ以上の検体の存在を同定し、顕微鏡による尿分析装置と共に使用する精度管理物質の製造において、癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はそれらの任意の組合せを用いる際に使用する精度管理物質を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の概要並びに以下の発明の詳細な説明は、添付図面と併せて読むとさらに理解が深まる。本発明の精度管理物質及び方法を例示するために、精度管理物質及び方法の例示的な実施形態を図面に示したが、精度管理物質及び方法は開示された特定の実施形態に限定されない。
図1図1は、目標赤血球濃度500/μLの試料の代表的なUrised2(自動尿沈査分析装置)画像である。
図2図2は、尿中にハイブリドーマ細胞懸濁液を加えて調製したWBC(白血球)及びNEC(非扁平上皮細胞)陽性尿試料の代表的な画像である。
図3図3は非扁平上皮細胞濃度82.28/μLの尿試料の代表的なUrised2画像である。画像は、明確な平滑縁を有する円形細胞の存在を示す。
図4図4は、YEA(酵母)濃度が18.48/μLの尿試料の代表的なUrised2画像である。画像は楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。
図5図5は、酵母濃度(菌体数)80~100/μLの尿試料の代表的なAtellicaUAS800(尿中有形成分分析装置)画像である。画像は、楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。
図6図6は、酵母濃度652~674/μLの尿試料の代表的なAtellicaUAS800画像である。画像は楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。
図7図7は、MUC(粘菌糸)陽性尿試料の代表的なAtellicaUAS800画像である。
図8図8は、尿中のPAT(病的円柱)の存在を示す代表的なUrised2画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の精度管理物質及び方法は、本開示の一部を構成する添付図面に関してなされた以下の詳細な説明を参照することで、より容易に理解することができる。本発明の精度管理物質及び方法は、ここで説明及び/又は図示した特定の精度管理物質及び方法に限定するものではなく、ここで使用する用語は、あくまで例示として特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、特許請求の範囲に記載された精度管理物質及び方法の限定を意図したものではないことを理解すべきである。
【0009】
特に明記しない限り、考えられる機構つまり作用機序又は改善理由に関する説明は、単なる例示を目的とするものであり、本発明の精度管理物質及び方法は、そのように示唆された機構つまり作用機序又は改善理由の正確性又は不正確性によって制約されない。
【0010】
本明細書を通して、精度管理物質及びその使用方法について説明する。開示が精度管理物質に関連する特徴又は実施形態を説明又は請求する場合、上述の特徴又は実施形態は、当該精度管理物質の使用方法に等しく適用可能である。同様に、開示が、精度管理物質の使用方法に関連する特徴又は実施形態を説明又は請求する場合、上述の特徴又は実施形態は、精度管理物質に等しく適用可能である。
【0011】
明確にするために、別の実施形態として本明細書に記載した精度管理物質及び方法の特定の特徴を、1つの実施形態に組み合わせてもよい。逆に、本発明の精度管理物質及び方法の様々な特徴は、簡潔にするために、1つの実施形態に記載しているが、別々に、又は任意のサブコンビネーションにしてもよい。
【0012】
「1つの実施形態」つまり「実施形態」への何らかの言及は、実施形態に関連して説明した特定の要素、特徴、構造、又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」という語句は、必ずしも同一の実施形態を指しているわけではない。
【0013】
特に明記しない限り、「又は」は包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは以下のいずれかによって満たされる。Aが真(又は、存在する)でBが偽(又は、存在しない)、Aが偽(又は、存在しない)でBが真(又は、存在する)、AとBの両方が真(又は、存在する)。包括的な「又は」は、条件A又はBの少なくとも1つと同等であると理解してよい。
【0014】
本明細書中で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形を含む。
【0015】
明細書の態様に関連する種々の用語を使用する、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、このような用語は、特に指示がない限り、当該技術分野においてその通常の意味を与えるものとする。他の具体的に定義された用語は、本明細書に規定された定義と一致する方法で解釈するものとする。
【0016】
非限定的用語「…から成る」は、限定的用語「実質的に…から成る」及び「…から成る」に包含される実施例を含むことを意図している。同様に、限定的用語「実質的に…から成る」という用語は、限定的用語「…から成る」に包含される実施例を含むことを意図している。
【0017】
用語「陰性尿」とは、沈渣分析で陰性結果を示す尿検体をいう。
【0018】
本明細書中で使用するとき、「尿マトリックス」という用語は、例えばBDバキュティナ(登録商標)UA保存用チューブ(BD Diagnostics、カタログ番号364992)の使用により、抗菌剤で安定化される尿を指す。天然尿と保存尿の違いは、保存尿中に保存液が存在する点にある。
【0019】
以下の略語は明細書全体を通して使用する。BAC(細菌)、CRY(結晶)、NEC(非扁平上皮細胞)、PAT(病的円柱)、QC(精度管理)、RBC(赤血球)、UA(尿検査)、WBC(白血球)、YEA(酵母)。
【0020】
現在の市販の精度管理物質には、尿中にみられる沈渣検体(赤血球、白血球、結晶等)の一部しかない。しかし、これらの精度管理物質には、細菌、酵母、病的円柱、又は非扁平上皮細胞を分析するための対照物質は含まれていない。少量であっても細菌、酵母、異常な円柱、及び/又は非扁平上皮細胞の存在は病態を示す場合があるため、分析装置がこれらの検体を正常に検出していることを確認することが重要である。本明細書は、これらの検体の検出のための精度管理物質を説明する。
【0021】
顕微鏡による尿沈渣分析装置を使用と共にする精度管理物質を説明する。
精度管理物質は、尿マトリックスと、
癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はこれらの任意の組合せと、を含む。
【0022】
癌細胞は、尿試料中に存在する非扁平上皮細胞の形態制御として役立つように、精度管理物質に含めることができる。適切な癌細胞は、平滑で明確な辺縁を有する円形、30~40μmの範囲の大きさ、顆粒状の細胞質及び円形の濃染核を含む、非扁平上皮細胞と類似した形態を有する。適切な癌細胞としては、SKBR-3細胞又はH-1975細胞が挙げられる。SKBR-3細胞はヒト乳癌細胞であり、ATCC(登録商標)HTB-30(登録商標)細胞を含むことができる。H-1975細胞はヒト肺癌細胞であり、ATCC(登録商標)CRL-5908TM細胞を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、SKBR-3細胞を含む。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、H-1975細胞を含む。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、SKBR-3及びH-1975細胞の両方を含む。SKBR-3細胞は、10%FBS(ウシ胎児血清)を有するマッコイ5A培地中で培養することができ、H-1975細胞は、DMEM(ダルベッコイーグル改変培地)中で培養することができる。十分な数の細胞を採取した後、細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄して、培養培地を除去することができる。次いで、細胞を2~8℃で24時間リン酸緩衝生理食塩水中の2%ホルムアルデヒド中で培養することによって、H-1975細胞を固定することができる。SKBR-3細胞は、細胞をリン酸緩衝生理食塩水中の2%ホルムアルデヒド中で2~8℃で24時間培養することによって固定することができる。上記の方法で得られ、グルタルアルデヒド、又は他の一般的な細胞保存液(ジアゾリジニル尿素又はイミダゾリジニル尿素を含む)で固定された細胞は、非扁平上皮細胞の形態学的対照として使用することができる。
【0023】
藻類細胞は、尿試料中に含まれる病的円柱の形態学的対照として役立つように、精度管理物質に含めることができる。任意の藻類細胞は、円筒形状及び顆粒状の細胞内部を含む病的円柱と類似した形態を有する。任意の藻類細胞は、例えば珪藻(例えば、ニュー・バイオロジカル社から入手可能)を含むことができる。珪藻類は真核生物の藻類で、顕微鏡下では顆粒状の細胞内部を有する2枚の平行した被殻に覆われているようである。このような明確な形態学的側面は、病的円柱の円筒形状と顆粒状の細胞内部に似ている。珪藻は水懸濁液中で得ることができる。この懸濁液は容器を反転させて混合し、3mLの陰性尿に(約0.5mL)加えることができる。
【0024】
酵母細胞は、尿試料中に含まれる酵母の形態学的対照として役立つように精度管理物質に含めることができる。例示的酵母としては、尿又は出芽酵母中に含まれる天然に存在する酵母を含む。幾つかの実施形態において、酵母細胞(カンジダ・アルビンカス)を、対照被験者(尿が分析されている被験者ではない)の尿から単離し、精度管理物質に加えることができる。幾つかの実施形態において、出芽酵母を精度管理物質に加えることができる。ショ糖溶液を含む尿培地で培養した酵母細胞は、尿沈渣分析装置により酵母として正しく認識される。しかしながら、ショ糖溶液無しで尿又はリン酸緩衝生理食塩水中で培養した酵母細胞は、両方とも酵母として正しく認識されるが、尿沈渣分析装置によって誤って赤血球として認識される(表7)。従って、幾つかの実施形態において、酵母細胞は、ショ糖溶液を含む溶液中に存在するか、又はショ糖溶液から得られる。
【0025】
卵白は精度管理物質に含まれ、尿試料中の粘液の形態学的対照として役立つ。卵白は少量の炭水化物及びナトリウム塩を含むたん白質溶液である。卵白粘液様物質(約1mL)を陰性の尿(3mL)に加えて、粘液陽性試料を作製することができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞及び藻類細胞を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞及び酵母細胞を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、藻類細胞及び酵母細胞を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞及び卵白を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、藻類細胞及び卵白を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、酵母細胞及び卵白を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞、藻類細胞、及び卵白を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、藻類細胞、酵母細胞、及び卵白を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞、藻類細胞、及び酵母細胞を含むことができる。幾つかの実施形態において、精度管理物質は、癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、及び卵白を含むことができる。
【0027】
本発明の精度管理物質は、結晶、細菌細胞、精子細胞、白血球、赤血球、硝子円柱、又はこれらの任意の組合せをさらに含むことができる。
【0028】
また、被験者由来の尿試料中の検体の存在の検出方法も提供する。本発明の検出方法は、精度管理物質中の成分の形態を、尿試料中の検体の形態と比較するために、顕微鏡による尿検査分析装置を用いて、本明細書に開示された精度管理物質のいずれかを分析し、精度管理物質中の成分の形態と尿試料中の検体の形態とを比較することを含み、ここで、精度管理物質中の成分と尿試料中の検体の形態とが一致することは、尿試料中での検体の存在を示す。
【0029】
本発明の検出方法は、尿試料中の非扁平上皮細胞の存在の検出に使用することができる。検体が非扁平上皮細胞である実施形態において、精度管理物質は癌細胞を含むことができる。
【0030】
本発明の検出方法は、尿試料中の病的円柱の存在の検出に使用することができる。検体が病的円柱である実施形態において、精度管理物質は藻類細胞を含むことができる。
【0031】
本発明の検出方法は、尿試料中の酵母の存在の検出に使用することができる。検体が酵母細胞である実施形態において、精度管理物質は酵母細胞を含むことができる。
【0032】
本発明の検出方法は、尿試料中の粘液の存在の検出に使用することができる。検体が粘液である実施形態において、精度管理物質は卵白を含むことができる。
【0033】
本発明の検出方法は、非扁平上皮細胞及病的円柱、非扁平上皮細胞及び酵母、病的円柱及び酵母、非扁平上皮細胞及び粘液、病的円柱及び粘液、酵母及び粘液、非扁平上皮細胞、病的円柱及び酵母、非扁平上皮細胞、病的円柱及び粘液、非扁平上皮細胞、病的円柱及び粘液、非扁平上皮細胞、酵母及び粘液、又は非扁平上皮細胞、病的円柱、酵母及び粘液、又は非扁平上皮細胞、病的円柱、酵母及び粘液の存在の検出に使用することができる。上記検体の組合せの検出にこの検出方法を使用する実施形態において、精度管理物質は、癌細胞(SKBR-3細胞又はH-1975細胞等)、藻類細胞(珪藻等)、酵母細胞(カンジダ・アルビカンス又は出芽酵母等)、及び/又は卵白の組合せを有する。
【0034】
また、被験者由来の尿試料中の1つ以上の検体の存在を同定する際に使用する精度管理物質を提供する。
【0035】
顕微鏡による尿分析装置と共に使用する精度管理物質の製造における癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はそれらの任意の組合せの使用方法を提供する。
(実施例)
【0036】
以下の実施例では、本明細書に開示された幾つかの実施形態をさらに詳しく説明する。実施例は、開示された実施形態を例示することを意図しているが、これを限定されない。
(赤血球陽性尿の調製)
【0037】
赤血球陽性尿を以下のように調製した。
1)ヒト血液(7~8ml)を10mLヘパリン採血管に採取し、室温で2日間保存した結果、赤血球は安定した。
2)一定分量10μLの安定化血液を、表1に示すように、3種類の異なる培地(10mL)に別々に加えた。各調製物からの一定分量3mLをUrised2で分析した。
表1:安定化赤血球の尿検体の様々な調製液

3)上記のストックから、希釈液として各培地を用いて3000/μL及び500/μLの赤血球を目標として希釈試料を作製した。

表2:目標赤血球濃度を得るための希釈試料の調製

4)表3に示すように、同様の希釈を尿ストック及び2日齢の赤血球(ヘパリン採血管中で2日齢の全血)で陰性尿を用いて繰り返し、1000、800、400、100及び50/μLの赤血球濃度を得た。10mLの陰性尿に10μLの2日齢全血を加えてストックを作製した。ストックの赤血球濃度は6875.44/μLであった。

表3:目標赤血球濃度による直線性試料の調製
【0038】
目標赤血球濃度500/μLを有する試料の代表的なUrised2画像を図1に示す。
(ハイブリドーマ細胞を用いた非扁平上皮細胞及び白血球陽性尿の調製)
【0039】
非扁平上皮細胞及び白血球陽性尿検体を以下のように作製した。
1)ハイブリドーマ細胞(マウス脾臓細胞と骨髄腫細胞(p653細胞)とのハイブリダイゼーション)を、内部手続き後にシーメンス・ヘルスケ研究室内で培養した。細胞は生育培地で得た。10mLの培養液に細胞を加え、遠心分離(5~7分で200~500g)して保存液を除去し、培地中に再懸濁し、細胞をCOインキュベーターに入れた。十分な量の細胞が増殖したら、培地を遠心分離により除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水中に回収した。
2)次いで、細胞をMDM(寒天)培地中の2%ホルムアルデヒドで24時間、2~8℃で固定した。ホルムアルデヒド溶液を遠心分離により除去し、固定細胞をMDM培地中に再懸濁した。
3)0.5mLの細胞懸濁液(conc.=500/μL)を陰性尿5mLに加えた。懸濁液を均質にし、表4に示すように、試料をUrised2で分析した。
表4:陰性尿中のハイブリドーマ細胞懸濁液の複数のバッチ処理における白血球及び非扁平上皮細胞の濃度
【0040】
上記の結果は、ハイブリドーマ細胞がUrised2により白血球及び非扁平上皮細胞として認識されることを示している。図2は、尿中にハイブリドーマ細胞懸濁液を加えて調製した白血球及び非扁平上皮細胞陽性試料の代表的な画像である。

(ヒト肺癌上皮細胞由来非扁平上皮細胞陽性試料の調製(M1975))
【0041】
M1975陽性尿を以下のように調製した。
1)ヒトM1975細胞をダルベッコイーグル改変培地で培養し、2~8℃で2%ホルムアルデヒド中で24時間固定した。保存した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(ウシ血清アルブミン(BSA)とアジ化物で)に24時間保存した。
2)陰性尿(3mL)に細胞懸濁液(100μL)を添加した。一定分量3mLをUrised2で分析した。その結果、非扁平上皮細胞濃度=31.68/μLであった。
3)陰性尿(3mL)に細胞懸濁液(500μL)を添加した。一定分量3mLをUrised2で分析した。その結果、非扁平上皮細胞濃度=176.44/μLであった。(図3
4)1.5mLの500μL-懸濁液を1.5mLの陰性尿(バッチ処理-2ストック)で希釈した。一定分量3mLをUrised2で分析した。表5に示すように、結果は非扁平上皮細胞濃度=77.88/μLを示した。
5)再現性を確認するため、陰性尿(3mL)に細胞浮遊液(500μL)を加えて別のセットを作製した。一定分量3mLをUrised2で分析した。その結果、非扁平上皮細胞濃度=164.12/μLであった。
6)500μL-懸濁液の2回目のバッチ1.5mLを1.5mLの陰性尿(バッチ-3原液)で希釈した。一定分量3mLをUrised2で分析した。表5に示すように、NEC濃度は82.28/μLであった。
表5:陰性尿に添加したM1975細胞懸濁液を加えて調製した非扁平上皮細胞陽性尿材料の複数のバッチ処理における非扁平上皮細胞の濃度
【0042】
図3は、バッッチ-3ストックの代表的なUrised2画像であり、非扁平上皮細胞濃度は82.28/μLである。画像は、平滑な辺縁を有する円形細胞の存在を示している。
【0043】
上記の手順に従い別々にM1975細胞を培養し、次いで、沈渣陰性尿(5mL)中に2種類の複数の一定分量の細胞懸濁液(100μL)を添加することにより、培養物の再現性を試験した。
表6:M1975細胞懸濁液を陰性尿に添加して調製した非扁平上皮細胞陽性尿材料の複数のバッチ処理における非扁平上皮細胞の濃度

(酵母細胞の酵母陽性試料の作製)
【0044】
酵母陽性尿を以下のように調製した。
1)酵母細胞(ペニシリウム・ロックフォルティ又はパン酵母)を、37℃でショ糖存在下(約0.5%)でリン酸緩衝生理食塩水溶液及び陰性尿中で別々に培養した。
2)酵母陽性臨床尿検体から得た酵母細胞も、1mLの酵母陽性尿検体を40mLの沈渣陰性尿に加えて培養した。臨床分離尿試料中に見られる酵母細胞は、一般的には、カンジダ・アルビンカスである。酵母細胞は、炭水化物の非存在下及び1mLの5%ショ糖溶液の存在下で培養した。混合物を室温で24時間保持し、酵母細胞が増殖できるようにした。
3)上記の方法で培養した酵母細胞を陰性尿試料に加え、試料をUrised2及びAtellicaUAS800で分析した。
【0045】
酵母と赤血球の形態(円形で濃い縁)は互いに非常に似ている。多くの場合、酵母と赤血球は顕微鏡による尿検査で互いに邪魔し合う。同様の結果は、人工的に培養した酵母細胞を陰性尿検体に作製し、沈渣尿分析装置で分析した場合にも認められる。しかし、ショ糖溶液の存在下で培養した酵母細胞は酵母としてのみ検出され、赤血球としては誤検出されない。
【0046】
図4は、尿試料(表7の実験番号040616-20)の代表的なUrised2画像であり、酵母濃度は18.48/μLである。画像は楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。図5は、尿試料の代表的なAtellicaUAS800画像であり(表7の実験ID=YEA-2AM-1)、酵母濃度は80~100/μLである。画像は楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。図6は、尿試料の代表的なAtellicaUAS800画像であり(表7の実験ID=11082017-YEA-Contrived)、酵母濃度は652-674/μLである。画像は楕円形の単一出芽酵母細胞の存在を示す。
表7:実験室で培養した酵母細胞懸濁液を陰性尿に添加して調製した酵母陽性尿材料の複数のバッチ処理における酵母濃度

(卵白由来のMUC陽性試料の調製)
【0047】
一般に卵白はその主成分として、最大90%の水と最大10%のタンパク質を含むが、少量の炭水化物とナトリウム塩も含む。卵白は厚い粘液様の外観を呈している。卵白陽性尿を以下のように調製した。
1)5mLの陰性尿に約1mLの卵白を加えた。
2)容器を非常にゆっくりと反転させて混合液を混合した。
3)AtellicaUAS800で試料を分析した。
【0048】
表8及び図7は、陰性尿中に卵白を添加すると、粘液濃度が陽性となることを示している。
表8:陰性尿に卵白を添加した試料中の粘菌糸濃度

(アミミドロ藻類由来の病的円柱陽性試料の調製)
【0049】
以下の手順に従い、病的円柱陽性尿試料を採取した。
1)水中の10mLのアミミドロ藻類懸濁液を3000rpmで2分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、残留物を残りの1mL容積の懸濁液に再懸濁した。
2)1mLの遠心再懸濁液を3mLの陰性尿と混合した。
3)混合試料をUrised2で試験した。
【0050】
その結果、図8に示すように病的円柱(3.08/μL)の存在を示した。
【0051】
上記の例に示すように、顕微鏡画像で観察された外観の類似性に加えて、尿沈渣分析装置からの対応する結果は、機器がこれらの類似物を尿沈渣検体としても認識していることを示した。従って、本発明の精度管理物質は、病的円柱、非扁平上皮細胞及び酵母のような病理学的に重要な検体を測定する尿沈査分析装置の性能のより良い評価を可能にする。
【0052】
当業者は、精度管理物質及び方法の好適な実施形態に対して多数の変形及び変更を加えることができ、本発明の趣旨から逸脱することなく、変形及び変更を加えることができることを理解するであろう。従って、添付した特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内に包含されるような全ての均等な変形形態を網羅することを意図している。
(実施形態)
【0053】
以下の実施形態のリストは、上記の説明を置き換えたり取り替えたりするのではなく、補足することを意図している。
実施形態1.顕微鏡による尿沈渣分析装置と共に使用する精度管理物質であって、
尿マトリックスと、
癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はこれらの任意の組合せと、
を含む精度管理物質。

実施形態2.癌細胞がSKBR~3細胞又はH-1975細胞である、実施形態1に記載の精度管理物質。

実施形態3.藻細胞が珪藻である、実施形態1に記載の精度管理物質。

実施形態4.酵母細胞が、尿又は出芽酵母中に含まれる天然に存在する酵母(カンジダ・アルビンカス)である、実施形態1に記載の精度管理物質。

実施形態5.結晶、細菌細胞、精子細胞、白血球、赤血球、硝子円柱、又はこれらの任意の組合せをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の精度管理物質。

実施形態6.被験者由来の尿試料中の検体の存在を検出する方法であって、
精度管理物質中の成分の形態を決定するために、顕微鏡による尿沈渣分析装置を用いて実施形態1~5のいずれか1つに記載の精度管理物質を分析し、
精度管理物質中の成分の形態と尿試料中の検体の形態とを比較し、精度管理物質中の成分の形態と尿試料中の検体の形態とが一致することは、尿試料中での検体の存在を示す、検出方法。

実施形態7.
(i)検体が非扁平上皮細胞であり、精度管理物質が癌細胞を含み、
(ii)検体が異常な円柱であり、精度管理物質が藻細胞を含み、
(iii)検体が酵母細胞であり、精度管理物質が酵母細胞を含み、
(iv)被検体が粘液であり、精度管理物質が卵白を含み、
(v)(i)~(iv)の任意の組合せを含む、実施形態6に記載の検出方法。

実施形態8.癌細胞がSKBR-3細胞又はH-1975細胞である、実施形態7に記載の検出方法。

実施形態9.藻類細胞が珪藻類である、実施形態7に記載の検出方法。
実施形態10.酵母細胞が、尿又は出芽酵母中に含まれる天然に存在する酵母(カンジダ・アルビンカス)である、実施形態7に記載の検出方法。

実施形態11.被験者由来の尿試料中の1つ以上の検体の存在を同定する際に使用する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の精度管理物質。

実施形態12.顕微鏡による尿分析装置と共に使用する精度管理物質の製造における癌細胞、藻類細胞、酵母細胞、卵白、又はそれらの任意の組合せの使用方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8