(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】熱画像化装置のための凸状ウォームシールド
(51)【国際特許分類】
G01J 5/02 20220101AFI20220816BHJP
【FI】
G01J5/02 J
(21)【出願番号】P 2020517821
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018044254
(87)【国際公開番号】W WO2019067073
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-05-22
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,スティーブン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-316426(JP,A)
【文献】特開平09-130678(JP,A)
【文献】特開2013-033198(JP,A)
【文献】特開2013-047667(JP,A)
【文献】特表2008-508569(JP,A)
【文献】特表2006-524823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0180765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00-5/90
G01J 1/00-1/60
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱画像化システムであって、
開口を有するデュワー筐体と、
デュワー筐体の中で支持されている検出器であり、熱放射を検出するように構成されている、検出器と、
前記デュワー筐体の前記開口に近接して配置されたウォームシールドであって、前記ウォームシールドは、さらに、
凸状湾曲を含む反射面であり、前記デュワー筐体の前記開口に対して配置される場合に、前記凸状湾曲に入射する前記デュワー筐体の前記開口から発生する熱エネルギが、前記デュワー筐体の前記開口から離れていくように、前記デュワー筐体
の表面と前記反射面との間で反射されていく、反射面と、
前記反射面に形成された開口部であり、前記熱画像化システムの前記開口へ向かう方向における外部の熱エネルギの通過を促進するように配置されており、かつ、前記熱エネルギのうち少なくともいくらかは、前記熱画像化システムから離れていくように前記熱画像化システムの内部から発生している、開口部と、を含む、
ウォームシールドと、
を含む、熱画像化システム。
【請求項2】
前記熱画像化システムは、さらに、
前記ウォームシールドと前記デュワー筐体との間に配置されているウィンドウ、を含む、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項3】
前記熱画像化システムは、さらに、
前記デュワー筐体の中で支持されているコールドストップであり、前記ウォームシールドと前記検出器との間に配置されている、コールドストップ、を含む、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項4】
前記熱画像化システムは、さらに、
前記デュワー筐体の中に収容されているコンポーネントを冷却するために、前記デュワー筐体と協働する冷却システム、を含む、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項5】
前記熱画像化システムは、さらに、
前記ウォームシールドを支持するブラケットを含み、
前記ブラケットは、さらに、レンズを含み、
前記ブラケットは、前記ウォームシールドと前記レンズのうち一方が、前記デュワー筐体における前記開口と位置合わせされるように、選択的に移動可能である、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項6】
前記反射面の凸状湾曲は、前記デュワー筐体の中のコンポーネントから発生する熱エネルギによって引き起こされ、前記熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように調整されている、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項7】
前記開口部は、前記デュワー筐体の中のコンポーネントから発生する熱エネルギによって引き起こされ、前記熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように調整された構成を含む、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項8】
前記反射面は、電磁スペクトルにおける中間波帯および長波帯を含む前記熱エネルギを反射するように構成されている、
請求項
1に記載の熱画像化システム。
【請求項9】
熱画像化を促進するための方法であって、
検出器を収容しているデュワー筐体の開口に近接して配置されるように動作するウォームシールドを備えるステップと、
凸状湾曲を有する反射面を含むようにウォームシールドを構成するステップであり、前記デュワー筐体の開口に対して配置される場合に、前記凸状湾曲に入射する前記デュワー筐体の開口から発生する熱エネルギが、前記デュワー筐体の前記開口から離れていくように、前記デュワー筐体
の表面と前記反射面との間で反射されていく、ステップと、
前記反射面に形成された開口部を含むようにウォームシールドを構成するステップであり、前記検出器に向かう方向における外部熱エネルギの通過、および、熱画像化システムから離れていくように前記デュワー筐体内部から発生する熱エネルギの少なくとも一部の通過を促進する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記方法は、さらに、
前記デュワー筐体と共に動作するブラケットを備えるステップ、を含み、
前記ブラケットは、前記ウォームシールドを支持し、かつ、前記デュワー筐体における前記開口に対して前記ウォームシールドを位置決めするために選択的に移動するように構成されている、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、さらに、
レンズを支持するように前記ブラケットを構成するステップ、を含み、
前記ブラケットは、前記デュワー筐体における前記開口に対して前記レンズを位置決めするために選択的に移動可能である、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、さらに、
前記ウォームシールドおよび前記熱画像化システムを航空機に搭載することを促進するステップ、を含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、さらに、
前記熱画像化システムの中のコンポーネントから発生する熱エネルギによって引き起こされる前記熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように、前記反射面の凸状湾曲を調整するステップ、を含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、さらに、
前記熱画像化システムの中のコンポーネントから発生する熱エネルギによって引き起こされる前記熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように、前記開口部を調整するステップ、を含む、
請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像化システムは、画像の可視化を生成するために使用されている。人間の眼は、画像化システム(imaging system)の主要な例である。可視スペクトルにおいて動作するように本質的にデザインされており、眼は、網膜(retina)が必要とするフラックス(flux)を発生するために、天体(celestial bodies)または人工エミッタといった光源による外部照明を必要とする。画像化システムまたは装置は、人間のユーザが、人間の眼には見えないオブジェクトの画像または視覚化(visualizations)を見ることができるようにデザインされ得る。例えば、画像化システムは、可視スペクトルの外側のスペクトルを使用して検出されるオブジェクトを表示することができる。代替的に、画像化システムは、人間の眼が動作するには不十分な光が存在するところでオブジェクトを表示するように作動し得る。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかであり、図面は、例示として、本発明の特徴を一緒に示している。
【
図1】
図1は、ウォームシールドを有さない熱画像化システムのブロック図を示している。
【
図2】
図2は、ウォームシールドを有する熱画像化システムのブロック図を示している。
【
図3】
図3は、凹状湾曲のウォームシールドを含む従来の熱画像化システムの側面断面図を示している。ここでは、コールド開口部(cold aperture)に対する立体角(solid angle)の一部分が、コールド開口部を通じて戻るように示されており、そしてえ、別の一部分が、デュワー(Dewar)ウィンドウで反射し、かつ、ウォームシールド開口部を通じて後退して戻るように示されている。
【
図4A】
図4Aは、本開示に係る一つの実施例に従った、凸状湾曲(convex curvature)のウォームシールドの上面図を示している。
【
図5A】
図5Aは、本開示に係る一つの実施例に従った、凸状湾曲のウォームシールドを含む熱画像化システムの側面断面図を示している。ここでは、コールド開口部に対する立体角の実質的に全てが、ウォームシールドとデュワーウィンドウとの間の複数の反射によって、デュワーウィンドウを通じて戻るように示されている。
【
図6】
図6は、本開示に係る別の実施例に従った、熱画像化システムの側面断面図を示している。
【
図7】
図7は、
図6の熱画像化システムの側面断面図であり、ウィンドウとウォームシールドとの間で反射している熱エネルギの進行を示している。
【
図8】
図8は、
図6の熱画像化システムの側面断面図であり、ウィンドウとウォームシールドとの間で反射している熱エネルギの進行を示しており、ウォームシールドは、さらに、熱エネルギを反射して、リダイレクト(redirect)する垂直な表面またはスカートを有している。
【
図9】
図9は、本開示に係る一つの実施例に従った、画像化システムの3次元ビュー(view)を示している。
【
図10】
図10は、本開示に係る一つの実施例に従った、画像化システムの中でウォームシールドを用いて動作可能なブラケットの斜視図を示している。
【
図11】
図11は、本開示に係る実施例に従った、ウォームシールドの性能を表示する2つのグラフを示している。
【
図12】
図12は、本開示に係る一つの実施例に従った、熱画像化を促進するための1つの例の方法のフローチャートを示す。
【0003】
これから、図示された例示的な実施例が参照され、そして、同様なものを説明するために、ここにおいては、特定的な言語が使用される。にもかかわらず、それによって、本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ここにおいて使用されるように、用語「実質的に(“substantially”)」は、作用、特徴、特性、状態、構造、アイテム、または結果の、完全または完全に近い範囲もしくは程度を参照するものである。例えば、「実質的に」囲まれたオブジェクトは、そのオブジェクトが完全に囲まれているか、または、ほぼ完全に囲まれていることのいずれかを意味する。絶対的完全性からの正確な許容可能な逸脱の程度は、場合によって、特定のコンテキスト(context)に依存し得る。しかしながら、一般的に言って、完全の近さ(nearness)は、絶対的かつ全体的な完全が獲得されたかのように、同一の全体的な結果を有するようになる。「実質的に」の使用は、作用、特徴、特性、状態、構造、アイテム、または結果の完全または完全に近い欠如(lack)を参照するように、否定的な含意(connotation)で使用される場合、同様に適用可能である。
【0005】
ここにおいて使用されるように、「隣接(“adjacent”)」は、2つの構造体またはエレメントの近接(proximity)を意味している。特に、「隣接」であると特定されるエレメントは、隣接する、または、接続されるのいずれかであり得る。そうしたエレメントは、また、必ずしも相互に接触することなく、相互に近く、または、近接してもよい。正確な近接の程度は、場合によって、特定のコンテキストに依存し得る。
【0006】
技術事例の最初の概要が以下に示され、そして、次いで、具体的な技術事例が、後で詳細に説明される。この最初の概要は、読者が本技術をより迅速に理解するのを手助けするように意図されたものであるが、本技術の重要な特徴または本質的な特徴を特定するように意図されたものではなく、また、クレームされる技術的事項(subject matter)の範囲を限定するように意図されたものでもない。
【0007】
大まかに言えば、この発明は、熱画像化システムにおけるノイズ低減の特定の態様を取扱う。熱画像化システムにおけるMWIRおよびLWIRカメラ、または検出器は、センシング素子が極低温に冷却されることを要求し得る。これらの冷却された素子は、真空シールされたケースまたはデュワー(Dewar)の中に収容され得る。使用される半導体材料の低ノイズな動作のためには冷却が必要である。一つの例において、現代の冷却された検出器は、タイプおよび性能レベルに応じて、60Kから100Kまでの範囲において動作する。センシング素子は、デュワーに対して内部に取り付けられた開口部(aperture)または「コールドストップ(“cold stop”)」を通じてだけ、外部放射線に曝され得る。一つの例においては、システムストップがこの場所に配置された場合に、最大性能の利益が達成される。コールドシールドは、従って、放射が通過し、かつ、フォーカルプレーンアレイ(focal plane array)またはFPAに入射する立体角を制限する。
【0008】
一つの例において、高性能な熱画像化カメラは、異なる倍率でシーン(scenes)を検査するために複数のFストップ(f-stop)および視野(field-of-view、FOV)構成を備えることができる。これらの構成のうちの少なくとも1つについては、コールドストップがシステムのFナンバー(f-number)を定義する。現在、デュワーについて内部のコールドストップ直径を変化させるための信頼できる方法が存在しないので、可変なFナンバーを実現するためには外部開口部が挿入されることが必要である。一つの例においては、機械的開口部が熱画像化システムの中へ挿入され得る。FOVスイッチングが、レンズ群の機械的な挿入または除去によって達成される。別の例においては、機械的開口部がレンズ群と共に挿入され得る。開口部の配置は、レンズカウント(lens count)が変化したときに生じるストップ位置(stop location)におけるデザインに関連するシフトと一致するように成され得る。
【0009】
極低温で維持されるコールドシールドとは異なり、前述のウォームシールドは常温になる。そうした装置は、一般に、ウォームシールドと呼ばれている。一つの例において、熱画像化システムは、開口部を伴うウォームシールドを含んでいる。最先端のウォームシールドは、反射性であり、かつ、凹形状(concave in shape)である。
【0010】
凹状(concave)構成を含む現在の最先端のウォームシールドとは異なり、本開示の例は、開口部を有する凸状(convex)ウォームシールドを含む。凸状ウォームシールドは、熱画像化システムまたはデュワーに対する開口(opening)に関して凸状表面を用いて形成され得る。凸状ウォームシールドの有効性および有用な実施は、ウォームシールドのデュワーへの近接性(closeness)に依存し、そして、また、デュワーにおける開口のサイズにも依存し得る。別の言葉で言えば、多くの構成において、従来のソリューションは、当業者によって認識されるように、凸状ウォームシールドよりも効果的であり得る。
【0011】
凸状ウォームシールドは、熱画像化システムのコンポーネント、アクセサリ、アタッチメント、または熱画像化システムとは別個のものとして考えることができる。有利なことに、いくつかの例において、凸状ウォームシールドは、従来のウォームシールドと比較して、熱画像化システムの構造的コンポーネントを画像化し、かつ、熱バックグラウンドを削減する2次的光路(secondary path)を排除または軽減する。いくつかの例において、従来のソリューションと比較して、凸状ウォームシールドは、また、熱画像における異物(foreign object)のデブリ(debris)および欠陥に関連するアーチファクトを排除または軽減する。
【0012】
凸状ウォームシールドの凸状湾曲は、生成される特定のアーチファクトについて補償するように調整または形成され得ることが正しく理解されるべきである。加えて、凸状ウォームシールドにおける開口部のサイズまたは形状は、同様に、特定のアーチファクトについて補償するように調整または形成され得る。一つの例において、凸状ウォームシールドは、凸状ウォームシールドを支持するようにブラケットに取り付けられ得る。ブラケットは、2つ以上の(more than one)開口を有し、または、2つ以上のウォームシールド、レンズ、またはウィンドウを支持することが可能であり得る。ブラケットは、選択的に移動または回転させることができ、凸状ウォームシールドが、熱画像化システムの開口の上の位置へ、または開口から離れて移動することができる。従って、凸状ウォームシールドは、熱画像化システムの動作中に任意的に使用され得る。
【0013】
熱画像化システムおよび凸状ウォームシールドは、車両といったシステムまたは装置に取り付けられ得る。一つの例において、熱画像化システムおよび凸状ウォームシールドは、航空機に取り付けることができる。別の例においては、熱画像化システムおよび凸状ウォームシールドが、標的化(targeting)を支援するために、兵器システムにおいて採用され得る。
【0014】
熱画像化システム100の一つの例が
図1に示されている。熱画像化システム100は、収集光学系(collection optics)110、および、熱画像化システムストップのコンポーネントおよびセンサ素子を収容する筐体(enclosure)またはコンテナを参照する、デュワー筐体102を含み得る。熱画像化システム100は、ウォームシールドを用いずに描かれた従来の熱画像化システムであってよい。デュワー筐体102は、収容されているコンポーネントを保護するためにシール(sealed)され得る。例えば、デュワー筐体102は、センシング素子または検出器108を収容する。デュワー筐体102は、ウィンドウ109を含み、ウィンドウはデュワー筐体102の開口に配置され得る。ウィンドウ109は、ガラス、または、熱エネルギを透過する、半導体合金といった他の材料で構成され得る。ウィンドウ109は、デュワー筐体102内のコンポーネントを汚れおよび他のデブリから保護するように機能することができ、一方で、熱エネルギが通過するのを許容している。コールドストップ106は、デュワー筐体102の中の内部筐体であり得る。コールドストップ106は、人間の眼における虹彩またはカメラにおける開口部と同様の方法で、熱画像化システム100のための開口絞り(limiting aperture)として動作する開口部(aperture)または開口(opening)107を含み得る。
【0015】
一般的に言えば、熱画像化システム100によって見える冷たいオブジェクト(cold object)は、人間の眼または一般的なカメラに例えれば、暗い又は薄暗いものであり、一方で、温かいものは明るい。その結果として、熱画像化システム100は、その光学系を通して見た外部ソース(source)からの放射線だけでなく、熱画像化システム100を構成する光学系およびハードウェアからの放射線も、それらは「温かい(“warm”)」ので、見ることができる。従って、熱画像化システム100自体によって放出される熱エネルギは、そのセンシング素子によって収集される全エネルギの本質的に一部である。熱画像化システムにおけるこのセンシング素子は、しばしば、フォーカルプレーンアレイ(focal plane array、FPA)として参照される。
【0016】
レンズ、ミラー、およびハードウェアは、一般的に、観察される外部シーンと同様な温度にあるので、以前の又は従来の熱画像化システムは、典型的には、その自己寄与(self-contribution)を最小限にするようにデザインされている。従来のアプローチは、FPAをデュワー内に取り囲むことである。外部の熱力学的な圧縮機エンジンは、内部筐体およびその内容物を、観察される外部オブジェクトの温度よりもはるかに低い温度に維持することができる。熱画像化システム100においては、デュワー筐体102内のウィンドウ109により、光学系110によって収集された外部放射線が、コールドストップ106の円形開口部107を通じてFPAに衝突することができる(開口部、および開口部を画定するコールドストップまたはシールド構造は、しばしば、単にコールドストップとして参照されている)。
【0017】
熱画像化システムは、2つ以上(more than one)の視野(FOV)を用いてデザインされることが非常に多い。FOVは、
図1に示されるように、オブジェクト空間(object space)における光学系112の限界視角(angular subtense)として考えることができる。広いFOVシステムは大きな角度で見て、一方で、狭いFOVは小さな角度で見る。限界視角におけるこの変化は、機械的な手段、すなわち、レンズのサブセットを光学系列の中へ又は外に移動させることによって達成される。いくつかの例において、最適な光学性能は、ストップの場所をシフトできるようにすることによってだけ達成することができる。場所のこうした移動は、必然的にFPAから遠く離れており、たいてい、デュワーの境界(confines)の外側である。この場合に、ストップは、もはや低温ではなくなり、そして、FPAの視野内で温かいオブジェクト(warm object)になる。
【0018】
オブジェクトから検出器108上に落下する熱流束(thermal flux)は、オブジェクトの放射輝度(radiance)L 掛ける、検出器の面積A 掛ける、オブジェクトに対する立体角Ω、によって与えられ得る。等式1は、この関係を等式の形で示している。
【数1】
等式1
【0019】
オブジェクトの熱放射輝度(thermal radiance)は、放射率(emissivity)ε 掛ける、分数黒体積分(fractional blackbody integral)f(λ1、λ2、T) 掛ける、σT
4、で与えられる。ここで、σはシュテファン-ボルツマン定数(Stefan-Boltzman constant)、Tはケルビン(Kelvin)温度である。等式2は、この関係を等式の形で示している。
【数2】
等式2
【0020】
式(2)から、放射率εは、所与の波長帯および温度に対するスケールファクタとして作用する。従って、検出器108上の全磁束は、以下の通りである。
【数3】
等式3
【0021】
以下の説明は、FPAがデュワーの内側の位置から見るもの辺りに焦点を当てている。
【0022】
図1は、コールドシールド114およびコールドストップ106を有する熱画像化システム100を示している。
図1は、熱画像化システム100に関連するデュワー102の内側の位置からFPAが見るものを示すことができる。熱画像化システム100の近く又は周囲のシーン120からのフラックス、並びに、熱画像化システム100の光学系110からのフラックスおよび自己放射(self-emission)は、コールドストップ106を通過することができる。開口又は開口部107の領域の外側で、FPAは、コールドシールド114からのフラックスだけを見る。その温度のせいで、低ウォームシールド114の寄与は無視できる。極低温でのその放射強度が、周囲温度での温かいオブジェクトよりも著しく小さいからである。例えば、一つの例として、同じサイズおよび放射率の2つの本体(bodies)について、120Kでの放射率毎の1平方センチメートル当たり放射パワーは2.6μWであり、一方で、300Kでは、8-12μmの波長バンドで3.8mWであり、1500倍である。3.5-5μmのバンドでは、差異は1.7E-11Wmに対して175μWであり、または、10
7倍である。従って、結果として得られる関係は、等式4によって表される。
【数4】
等式4
【0023】
図2は、
図1の熱画像化システム100と同様なシーン220に隣接する熱画像化システム200を示す。そのようなものとして、上記の説明は、当業者によって認識されるように、ここにおいて組み込まれ、または適用可能であるように意図されている。例えば、熱画像化システム200は、光学系210、および、センシング素子208を収容するデュワー筐体202を含んでいる。デュワー筐体202は、ウィンドウ209を含み得る。熱画像化システム200は、さらに、開口部(aperture)207を有するコールドストップ206を含み得る。
図1の熱画像化システム100とは異なり、熱画像化システム200は、さらに、ウォームストップ(warm stop)230およびウォームシールド(warm shield)232を含む。ウォームストップ230は、あらゆる特定の形状を構成するものとしては示されていないが、この図は、ウォームストップが使用されるときに、FPAが見るものを示している。一般的に言えば、ウォームストップ230は、シーンおよび自己放射が通過する、
図1の開口109と比較して開口を減少させている。ウォームストップとコールドストップ206との間の環状領域(annular region)において、FPAはウォームシールドの表面を見る。この関係は等式5で表される。
【数5】
等式5
【0024】
等式5から、ウォームシールドの表面からの熱的寄与は、その放射率を減少させることによって最小化され得る。このことは、ウォームシールドを高い反射性にすることによって達成され得る。しかしながら、ウォームシールドが反射性であるときに、FPAは反射における他のオブジェクトを見ることができる。ウォームシールドの形状は、次いで、何の追加的なオブジェクトがFPAによって見られ得るかを決定する。
【0025】
開口334を含むウォームシールド330を有する
図3に示される熱画像化システム300といった、従来のソリューションにおいて、ウォームシールド330の表面は、デュワー筐体302およびデュワーウィンドウ309に関して凹状の構成を有している。そうした凹形状は、デュワー302に対向しているウォームシールド330の表面からのすべてのフラックスを、コールドストップ306を通じて、かつ、コールドボリュームの中へと戻すように方向付ける。このフラックスの大きさ(flex of magnitude)(M)は、等式6で表される。
【数6】
等式6
かつ、大きさは、上記に説明されたシーンおよびウォームシールドフラックスと比較して無視でき、そうして、結果は等式7で表される。
【数7】
等式7
【0026】
理想的な条件の下で、熱画像化システム300の環状領域内の熱的寄与は、ウォームシールド330の表面の低い放射率だけの熱的寄与である。しかしながら、デュワーウィンドウ309の存在を考慮する必要がある。その表面も、また、反射性であり得るからである。その結果、デュワーウィンドウ309からの反射の一部分は、ウォームシールド330の開口334に向かって方向付けられ、そうして、それらの熱的寄与は、FPAが環状領域において見るものの一部分になる。従って、FPAにおける全フラックスは等式8で表される。
【数8】
等式8
ここで、R
winはデュワーウィンドウの反射率であり、そして、qは環状領域の面積に比例するスケールファクタである。一般的に、シーン内のフラックスおよび光学系自体のフラックスからの画像の形成に関与する複数の光学素子は、放射源(emission source)である。次に、凹状ウォームシールドおよびデュワーウィンドウの両方から反射された光線が、ウォームシールド330の開口部334を通じて異なる経路をたどることは、留意する価値がある。この異なる経路をたどることにおいて、反射された磁束は、均一であり、そして、バックグラウンドの高さ(elevation)だけを生じさせ得る。または、FPAのいくらかの領域において集中され、そして、顕著な画像アーチファクトを生成し得る。デュワーウィンドウの反射率(R)は、あらゆるアーチファクトの相対的な大きさ(magnitude)に影響し得る。従って、等式8の第4項におけるフラックスの大きさは、シーンのフラックスと比較して小さくなり得るが、それだけが重要な要因ではない。例えば、光学系内で瞳に近接した光学素子および機械素子は、そうした寄生的な(parasitic)経路だけのせいで、画像アーチファクトを形成し得る。
図3において、コールドストップ306のそれぞれの限界(limiting)開口部307および334と、ウォームシールド330との間の環状立体角の一部分は、コールドストップ306を通じて方向付けされ、一方で、同じ立体角の一部分は、デュワーウィンドウ309の表面からの反射によって、ウォームシールド330の開口部334を通じて方向付けされる。結果として不均一性およびアーチファクトを生じさせ得るのは、ウォームシールド330の湾曲によって影響される、この後者の部分である。
【0027】
この不均一性によって生じるアーチファクトを除去する必要性は、困難であることが従来より判明している。先のソリューションは、凹状湾曲を有するウォームシールドを含み、そして、ウォームシールドの凹状湾曲を増加または減少させる試みは、わずかに良好に、または、より下手にフォーカスされる不均一性を生じさせるだけであった。そういうものとして、本開示は、効果的なアーチファクトの低減及び/又は除去を提供するために戦略的に配置された凸状反射面(convex reflective surface)を有するウォームシールドのユニークなデザインを明らかにする。この湾曲の反転は、結果としてアーチファクトを生じる寄生的経路を効果的に排除する。以下でより詳しく説明されるように、凸状ウォームシールドは、立体角内の熱エネルギを、ウォームシールドの開口部から離れて、かつ、コールドシールドの頂部の上へ方向付ける。一つの例においては、立体角の大部分を中心に向かって戻すように、追加的な反射性の「スカート(“skirt”)」または「カーテン(“curtain”)」がエッジの周囲に配置され得る。
【0028】
図4A-4Bは、本開示の一つの実施例に従った、ウォームシールド402を示しており、ここで、ウォームシールド402またはウォームストップは、アーチファクトを低減または除去するのに有効であり得る、凸状湾曲を有する反射面を含んでいる。例えば、凸状湾曲を増加または減少させることによってウォームシールドの湾曲を変更するように成された先の試みは、結果としてアーチファクトの性質について無視できる変化を生じさせるだけであった。本技術は、結果としてアーチファクトが消失または大幅に減少する凸状デザインを明らかにする。ウォームシールド402の凸形状は、ウォームストップ開口部404を出て行くデュワーウィンドウからの反射を防止し、それによって寄生的経路を排除している。凸状ウォームシールド402は、熱画像化システムの内部から又は外部で発生する熱エネルギを遮蔽し、ブロックし、もしくは、反射することができる。一つの例において、凸状ウォームシールド402は、金属、金属合金、アルミニウム、または他の同様な材料で作成され得る。
【0029】
凸状ウォームシールド402は、そこでの熱エネルギの通過を可能にするように構成された開口部404を含み得る。その熱エネルギは、熱画像化システム自身の中から発生し得るか、または、熱画像化システムの外部のものであり得る。開口部404は、特定のアーチファクトを補償するように調整または形成され得る。一つの例においては、関心ある特定のアーチファクトがもはや現れなくなるか、または、それが熱画像内の他の望ましい画像と干渉しないよう最小限に抑えられるまで、異なる構成を有する種々の反復的なウォームシールドデザインが実装され、そして、交換され得る。開口部404は、また、反復的な実装を回避するように、数学的にも調整またはデザインされ得る。凸状ウォームシールド402の外側形状は円形として示されているが、凸状ウォームシールドは任意の周辺形状(perimeter geometry)を含むことができるので、このことは、決して限定するように意図されたものではないことが正しく理解されるべきである。
【0030】
ウォームシールド402は、さらに、反射面(reflecting surface)406を含み得る。反射面406は、熱画像化システムの開口部から離れて熱画像化システムの中から発生する熱エネルギを反射するようにデザインされ、かつ、構成され得る。反射面406は、熱画像化システムの開口部に近接して配置され得る。凸状湾曲は、熱画像化システムの開口と関連することが正しく理解されるべきである。一つの例において、凸状湾曲反射面406は、特定のアーチファクトについて補償するように調整され得る。例えば、湾曲の程度は、多かれ少なかれ厳しくされ得る。湾曲は、均一な様式で曲がることができ、または、曲線の別の領域と比較して曲線の一部の領域においてより厳しく曲がり得る。凸状湾曲は、一つのプロトタイプが作成されテストされて、そして、次いで、後続のプロトタイプが作成されテストされる、反復的な様式で調整され得る。それぞれが、次のものとは異なる湾曲を有している。テストは、熱画像化システムの中から発生する熱エネルギによって生じる特定のアーチファクトを除去または最小化することにおいて、どの凸状湾曲が最善であるかを決定するのに役立ち得る。加えて、凸状湾曲は、プロトタイプが構築される前または後で、数学的に調整され得る。例えば、凸状湾曲は、数学的な等式よって記述され得る。
【0031】
凸状ウォームシールド402は、さらに、凸状湾曲から(例えば、
図4Bに示されるような垂直方向に)延び、かつ、熱画像化システムの隣接する表面に対して垂直な側壁408を含み得る。側壁408は、凸状ウォームシールド402の周辺の周りで円周方向に延在し得る。側壁408は、熱エネルギを反射するようにも構成し得る、垂直表面またはスカート410を含み得る。熱エネルギは、最初に反射面406に反射し(reflect off)、そして、次いで、表面410に反射し得る。側壁408および表面410は、立体角の大部分を中心に向かって戻す(turn back)ように凸状ウォームシールド402のエッジの周囲に配置されたスカートまたはカーテンとして説明され得る。ここにおいて説明されるように、立体角は、オブジェクトが1つのポイントに対する(subtend)、3次元空間における2次元の角度である。例えば、熱エネルギは、単一のポイントから外向きに2つ以上(more than one)の方向において発生または放射され得る。立体角は、次いで、2つの方向の間に放射される全ての熱エネルギを参照し得る。
【0032】
デュワーに対するウォームシールド402の配置に関して、ウォームシールド402がデュワーウィンドウからあまりにも遠い場合には、反射された熱エネルギの一部分がデュワーウィンドウの開口部の外側へ降り(fall)始め得る。許容範囲の外にウォームシールドを動かすことは、立体角の中で放射している熱エネルギの封じ込め(containment)のロスを引き起こし得る。そして、ウォームシールド402は、従って、デュワーの周辺環境から熱エネルギの一部分を受け入れる(admit)。一般的に、環境が温かくなり、そして、FPAの上に降る望ましくないフラックスの著しい増加を導くからである。その結果として、ウォームシールドの有効性は、立体角の中で放射している熱エネルギを封じ込めるように、その特定の構成およびデュワーに対する近傍に少なくともいくらかは依存することであると言える。このことは、さらに、以下でより詳細に説明される。
【0033】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、本開示に係る一つの実施例に従った、熱画像化システム500が図示されている。熱画像化システム500は、少なくとも部分的に、
図4Aおよび
図4Bの凸状ウォームシールド402に関連して上述したのと同様な凸状ウォームシールド530を含み得る。熱画像化システム500は、さらに、ウィンドウ509を有し、かつ、センシング素子または検出器508を収容しているデュワーまたはデュワー筐体502を含み得る。熱画像化システム500は、さらに、開口部597を有するコールドストップ506を含み得る。これらのデュワー、ウィンドウ、およびコールドストップエレメントは、それぞれに、
図1のウィンドウおよびコールドストップと同様な特徴を有し得る。
図5は、さらに、熱画像化システム500の中から発生している熱エネルギ508、510、512、および514を示している。ライン508および510によって表される熱エネルギは、コールドストップ506を通して許容され、そして、熱画像化システム500の中の同じポイントから放射されている熱エネルギの境界を含み得る。ここにおいて説明されるように、熱エネルギ508、510、512、および514は、熱画像化システム500のコンポーネントによって生成され得る。当業者によって認識されるように、画像化システムを構成し、または、支持するコンポーネントといったものである。
図5Aは、コールドストップ506の開口部507を通過し、ウィンドウ509を通過し、そして、凸状ウォームシールド530の表面に入射している熱エネルギ508および510を示している。ウォームシールド530に入射すると、熱エネルギ508および510は、次いで、凸状ウォームシールド530の中心から離れて(すなわち、外側へ) 反射され得る。加えて、ウォームシールド530の凸形状のせいで、熱エネルギ508および510は、同様に、コールドストップ506の開口507から離れて反射され得る。この場合に、熱エネルギ508および510は、従って、熱画像化システム500の検出器508によって検出されない。同様に、熱エネルギ512および514は、コールドストップ506の開口507を通過し、ウィンドウ509を通過し、そして、凸状ウォームシールド530の開口部534を通過するように示されている。従って、このエネルギは、熱画像化システム500の中へと反射される。
【0034】
図5Bは、熱画像化システムの中から発生する熱エネルギ510を示しており、コールドストップ506の開口を通過し、ウィンドウ507を通過し、そして、凸状湾曲を含み得る、ウォームシールド530に入射することができる。熱エネルギ510は、凸状ウォームシールド530における開口534から離れて反射され、そして、ウィンドウ509の表面に入射するようにされ得る。このように、熱エネルギ510を遠くへさらに反射させている。ウィンドウ509の材料構成に基づいて、熱エネルギ510の一部分はウィンドウ509を通過し、そして、一部分は反射され得る。ウィンドウ509の表面は、熱エネルギ510、ならびに他の熱エネルギが、反射されて、通過しないようにするためにコーティングされ得る。熱エネルギ510は、最終的に熱画像化システム500から離れて方向付けされる前に、凸状ウォームシールド530とウィンドウ509の表面との間で何度もあちこちに反射され得る。熱エネルギ510は、また、凸状ウォームシールド530の垂直表面またはスカートに反射するように示されている。熱エネルギ510、512は、熱エネルギ510と512との間の方向における単一ポイントから放射されている全ての熱放射に対する立体角の境界として説明され得る。
【0035】
図6、7、および8を参照すると、本開示の一つの実施例に従った、熱画像化システム600が示されている。熱画像化システム600は、少なくとも部分的に、デュワー筐体608内に収容されたFPA 602を含み得る。熱画像化システム600は、また、デュワー筐体608に対して凸状である表面を有するウォームシールド610も含み得る。デュワー筐体608は、コールドシールド606を含み得る。デュワー筐体608またはデュワー筐体608によって収容されるコンポーネントは、熱エネルギ604を放射することができる。
図6は、FPA 602においてデュワー筐体の中で発生する熱エネルギ604を示している。図示されているように、熱エネルギ604の第1部分は、コールドシールド606の表面の上に衝突するように経路に沿って移動する。熱エネルギ604の第2部分は、コールドシールド606の開口または開口部を通過し、次いで、デュワー筐体608のウィンドウを通過し、そして、次いで、さらに、ウォームシールド610の開口を通過するように、経路に沿って移動する。これらの特定された開口を通過する熱エネルギ604の第2部分は、熱エネルギ605として示されている。熱エネルギ604の第3部分は、コールドシールド606の開口を通過し、次いで、デュワー筐体608のウィンドウを通過するように経路に沿って移動するが、次いで、ウォームシールド610において受け入れられて、そこで、ウォームシールド610の凸面によって図示された方向に反射される。熱エネルギのこの第3部分は、熱エネルギ612として示され得る。図示されるように、熱エネルギ612は、ウォームシールド610で反射されると、デュワー筐体608のウィンドウを再び通過し、そこで、コールドシールド606の上面に続いて衝突する。凸状ウォームシールド610の湾曲は、熱画像化システムの特定のアプリケーションおよび構成に応じて調整され得る。一つの態様において、凸状ウォームシールド610の湾曲は、熱エネルギ612が、コールドシールド606の開口部を通って戻ることを許容するのではなく、むしろ、コールドシールド606の開口から離れて熱エネルギをリダイレクト(redirect)するために十分な角度で反射されるように、調整され得る。このことは、熱エネルギ612が、熱画像化システム600内で支持され、かつ、動作可能な検出器によって検出されることを防止する。ここで、そうした検出は、アーチファクトの発生および存在を引き起こし得るものである。コールドシールド606の開口から離れて熱エネルギ612をリダイレクトすることによって、熱画像化システムが自身の放射線で溢れること(flooding)が回避され、そして、熱画像化システム500によって生成される画像におけるアーチファクトの機会が大幅に低減される。
【0036】
図7は、ウィンドウとウォームシールドとの間で反射している熱エネルギの進行を示している。そして、より具体的には、コールドシールド606の開口を通過し、次いで、デュワー筐体608のウィンドウを通過し、次いで、ウォームシールド610の凸面で反射されて、次に、デュワー筐体608のウォーム頂部(top)に衝突する、熱エネルギ604の一部分である。熱エネルギのこの特定的なリダイレクトされた部分は、熱エネルギ614として示されている。一つの態様において、ウォームシールド610の凸面で反射する熱エネルギの光線は、反射を経験した後でさえも、ウォームシールド610の開口を通じて抜け出して戻ることができない。別の言葉で言えば、凸状湾曲は、デュワー筐体608のウォーム表面とウォームシールド610との間で熱エネルギがあちこちに反射されるようにするのに十分な角度で熱エネルギを反射するように動作する。
【0037】
図8は、凸状ウォームシールド610が、さらに、垂直表面またはスカート611を形成する円周方向の側壁を有する、熱画像化システム600を示している。
図8は、さらに、ウィンドウとウォームシールドとの間で反射している熱エネルギの進行を示している。垂直なスカートまたは表面611は、
図4B、または、
図5Aおよび
図5Bの垂直表面またはスカート410と同様の特徴を有し得る。一つの態様において、垂直表面611は、熱エネルギ612の一部分(
図6を参照のこと)、または、デュワーのウォーム頂部のウィンドウの開口の外側で終了することが分かった反射をリダイレクトするように機能することができる。表面611は、ウォームシールド610の周囲の反射性スカートとして参照し得る。この「スカート(“skirt”)」は、これらの抜け出す(escaping)光線をコールドシールド606の上面に戻すように反射し、かつ、リダイレクトするように働く。この経路を移動する熱エネルギの部分は、熱エネルギ616として示され得る。
図8は、さらに、凸状ウォームシールド620および垂直表面すなわち「スカート」611の存在の結果として、ウォームシールド610とデュワー筐体608のウィンドウとの間で反射される全ての熱エネルギが、コールドシールド606の上面において終了することを示している。
【0038】
等式9は、凸状ウォームシールドが凹状ウォームシールドを上回ることを示している。
【数9】
等式9
この結論は、しかしながら、部分的に、幾何学的な考察に依存している。例えば、
図6-8に示されている熱画像化システムにおいて、デュワーウィンドウのサイズは、凸状ウォームシールドからの全ての反射を許容するために十分に大きく構成されるべきであることが認識されるべきである。凸面を有するウォームシールドを既存のデュワー筐体に適用することにおいて、この条件は満たされないかもしれないが、デュワー筐体の特定の構成に依存し得るものである。結果として、凹状から凸状ウォームシールドへ単に変更することは、成功の保証とはならない。
【0039】
FPA面積、(コールドシールド、ウォームシールド)開口部の形状と寸法、FPAから(コールドシールド、ウィンドウ、ウォームシールド)までの距離、ウォームシールドの湾曲、ウィンドウ反射率、放射率、および表面の温度の組み合わせは、全て、凸状ウォームシールドが有効であるかを決定することにおいて役割を果たす。有効(effective)とは、検出器が低温黒体を見ているときに、凸状ウォームシールドを使用してアセンブリの自己放射によるFPAによって収集されたバックグラウンドフラックスが、凹状ウォームシールドのバックグラウンドフラックスと同等、または、より良好であることを意味している。
【0040】
デュワーおよびウォームシールドはクローズドシステムを含まないことに留意する。ウォームシールド開口部(ストップ)に対する立体角が存在し、その中へと光学系およびシーンは放射する。放射(radiation)は、また、ウォームシールドとデュワーウィンドウの間のギャップを通じてシステムに進入することもできる。凸状ウォームシールドの成功または失敗が見られるのは、この周辺領域である。
【0041】
図9は、凸面の有効湾曲を決定または調整し、そして、ウォームシールドとデュワー筐体との間の距離を決定するために使用される数学的な関係を示し、かつ、説明している。
図9は、FPA 902、コールドストップ904、デュワーウィンドウ906、およびウォームシールド908を有する熱画像化システム900を示している。FPA 902の寸法は、2w×2hとして示されており、ここで、l(エル)は、FPA 902とコールドストップ904との間の距離である。
図9は、コールドストップ904の半径としてのa、デュワーウィンドウ906の半径としてのρ、コールドストップ904とデュワーウィンドウ906との間の距離としてのs
1、デュワーウィンドウ906とウォームシールド908との間の距離としてのs
2、ウォームシールド908の湾曲の表面中心(surface center)としてのcを示している。等式10は、ウォームシールド908の曲率半径(radius of curvature)を示している。
【数10】
等式10
図9は、さらに、nは交点におけるウォームシールド908表面の表面法線(surface normal)であり、xは球状のウォームシールド表面における交点(point of intersection)であり、dはFPA 902のコーナーからウォームシールド908表面までのベクトルであることを示している。ベクトルdは、その中心でFPA 902に垂直な直線を通過し、そして、その原点から最も遠い点でコールドストップ904の開口部のエッジに接触している。ベクトルuは、dの先端から始まり、デュワーウィンドウ906を含む平面と交差する。その方向は、dの方向およびウォームシールド表面での反射の法則によって決定される。熱画像化システム600の検出器について、コールドストップ904の頂部だけを見ることが確実となるために、ベクトル和d+uの半径方向成分は、デュワーウィンドウ906の半径より小さくなければならない。すなわち、等式11である。
【数11】
等式11
これらのベクトルは、以下のように決定される。ここで、中心cおよび半径Rの球体の方程式は等式12によって記述される。
【数12】
等式12
ここで、cはウォームシールド表面を画定する球の中心であり、そして、xは光線との交点である。方向dで点pから始まる光線上の任意の点xは、等式13として書くことができる。
【数13】
等式13
tは、pとxとの間の距離である。k=p-cを代入して、等式14および等式15が導かれる。
【数14】
等式14
【数15】
等式15
そうして、点pと点sとの間の距離、および、従って、ベクトルdの長さは、等式16および等式17で表される。
【数16】
等式16
【数17】
等式17
単位ベクトルdは、等式18によって表される。
【数18】
等式18
そして、
図9の記法(convention)を使用して、等式19は以下のように表される。
【数19】
等式19
ベクトルuは、交差点におけるウォームシールド表面nに垂直な表面に関してdの反射の方向にある。従って、その方向は等式20で表される。
【数20】
等式20
ベクトルuは、次いで、等式21によって表される。
【数21】
等式21
【0042】
図10は、凸状ウォームシールドを収容するブラケットを示している。ブラケット1002は、凸状ウォームシールド1004を収容または保持するようにデザインされ得る。凸状ウォームシールド1004は、特徴を有し、そして、上述の凸状ウォームシールドと同様に機能し得る。ブラケット1002は、ブラケット1002が、熱画像化システム内のウィンドウまたは開口部の上方または近傍で凸状ウォームシールド1004を旋回(swivel)または他の方法であちこちに移動させることができるようなやり方で、熱画像化システムに取り付けられ得る。ブラケット1002は、さらに、レンズ1006を支持し得る。そして、従って、代替的に、ブラケット1002は、凸状ウォームシールド1004の開口から離れて凸状ウォームシールド1004を移動し、そして、代わりにレンズ1006を開口の上に配置し得る。このことは、熱画像化システムのユーザからの入力に基づいて選択的に実行され得る。従って、凸状ウォームシールド1004は、熱画像化システムの動作の最中において任意的に使用され得る。レンズ1006は、ガラス、プラスチック、または他の透明材料であってよい。レンズ1006は、光または熱エネルギを熱画像化システムの開口の中へ、または、離れてフォーカス(focus)するように構成され得る。
【0043】
図11は、本発明の例に従った、ウォームシールドの性能を示すグラフである。グラフ1102は、シーン温度が0°および27°での熱画像化システムに採用された凸状ウォームシールドの結果を示している。このグラフは、現在のウォームシールドの中間波バックグラウンド(mid wave background)のパーセンテージを示す。グラフ1104は、シーン温度0°および27°での熱画像化システムに採用された凸状ウォームシールドの結果を示している。このグラフは、現在のウォームシールドの長波バックグラウンド(long wave background)のパーセンテージを示す。グラフ1102および1104の結果は、同様な範囲の動作シーンおよびシステム温度について、従来の又は凹状ウォームシールドのものよりも低い自己放射バックグラウンドを示している。
【0044】
一つの例において、本開示は、デュワー筐体の中で発生する熱エネルギまたは光線を追跡(trace)するためにレイトレーシング(ray tracing)を使用することができる。レイトレーシングは、ウォームシールドをデザインするために有用であり得る。デザインは、ウォームシールドの開口部の形状を調整すること、および、ウォームシールドの凸状湾曲を調整することを含み、ウォームシールドをデザインするのに有用であり、また、デュワー筐体における開口に対してウォームシールドがどれだけ近接しているかを決定するのも同様に有用である。レイトレーシングは、「幾何学的構成因子(“Geometrical Configuration Factor”)」(GFC
object)と呼ばれるものを計算するのに役に立つ。GFC
objectを用いたレイトレーシングは、デュワー筐体の中の表面で発生し、そして、反射される熱エネルギの光線の挙動(behavior)を記述する。これは、検出器アレイから見て、システム内の任意のオブジェクトに対する立体角(Ω
object)に比例している。等式22を参照のこと。
【数22】
等式22
【0045】
ラディアンス定理(Radiance theorem)を使用して、システム内の各オブジェクトによる検出器における熱信号は、次の等式23を用いて計算され得る。
【数23】
等式23
ここで、TSE
W、phtons=熱自己放射(Thermal Self-Emission)(単位は、ワット数または光子/秒)である。
【0046】
図12は、本開示に係る一つの実施例に従った、熱画像化を促進するための方法1200のフローチャートを示している。1202において、本方法は、ウォームシールドをデュワー筐体の開口に近接して配置するステップを含み、ここで、デュワー筐体は、熱画像化システムのための検出器を収容している。本方法は、さらに、1204において、凸状湾曲を有する反射面を用いてウォームシールドを構成するステップを含み、デュワー筐体の開口に対して配置される場合に、凸状湾曲に入射するデュワー筐体の開口から発生する熱エネルギをデュワー筐体の開口から離れた方向に反射されるようにする。本方法は、さらに、1206において、反射面に形成された開口部を用いてウォームシールドを構成するステップを含み、検出器に向かう方向における外部熱エネルギの通過、および、熱画像化システムから離れる方向におけるデュワー筐体内から発生する熱エネルギの少なくとも一部の通過を促進する。本方法は、さらに、1208において、ブラケットに取り付けられた、ウォームシールドをデュワー筐体の開口から離れて旋回する(swiveling)ステップを含む。本方法は、なおも、さらに、1210において、ブラケットに取り付けられた、レンズをデュワー筐体の開口に近接するように旋回するステップを含む。本方法は、なおも、さらに、1212において、熱画像化システム内から発生する熱エネルギによって引き起こされる熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように、反射面の凸状湾曲を調整するステップを含む。本方法は、なおも、さらに、1214において、熱画像化システム内から発生する熱エネルギによって引き起こされる熱画像化システム内に表示されるアーチファクトを補償するように、開口部を調整するステップを含む。
【0047】
開示された本発明の例は、ここにおいて開示された特定の構造、プロセス工程、または材料に限定されるものではなく、当業者によって認識されるだろうように、それらの等価物まで拡張されることが理解されるべきである。また、ここにおいて使用される用語は、特定の例を説明する目的のためだけに使用されており、限定するように意図されたものではないことも理解されるべきである。
【0048】
この明細書の全体を通じて「一つの実施例(“one example”)」または「実施例(“an example”)」に対する言及は、本実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味している。従って、本明細書の全体を通じて様々な場所における「一つの実施例において(“in one example”)」または「実施例において(“in an example”)」というフレーズの出現は、必ずしも同一の実施例について言及するものではない。
【0049】
ここにおいて使用されるように、複数のアイテム、構造的エレメント、組成的エレメント、及び/又は、材料は、便宜上、共通のリストで表され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが別個のユニークなメンバーとして個別に特定されているかのように解釈されるべきである。従って、そうしたリストの個々のメンバーは、別段の指示がなければ、共通のグループにおける提示だけに基づいて、同一のリストに係るあらゆる他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。加えて、本発明の種々の実施例は、その様々なコンポーネントに対する代替物と一緒にここにおいて参照することができる。そうした実施例および代替は、相互に事実上の等価物であると解釈されるべきではなくが、本発明の別個で自律的な表現としてみなされるべきであることが理解される。
【0050】
さらに、説明された特徴、構造、または特性は、1つまたはそれ以上の実施例において、任意の適切な方法で組み合わされ得る。説明においては、本発明の実施例について完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状、等の例といった、多くの具体的な詳細が提供されている。当業者であれば、しかしながら、1つまたはそれ以上の具体的な詳細を用いることなく、または、他の方法、部品、材料、等を用いて、本発明が実施され得ることを認識するだろう。他のインスタンスにおいては、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、またはオペレーションは、詳細に示され又は説明されない。
【0051】
上述の実施例は、1つまたはそれ以上の特定のアプリケーションにおける本発明の原理を例示しているが、当業者にとっては、発明的能力を行使することなく、そして、本発明の原理および概念から逸脱することなく、実施の形態、用法、および詳細において多くの変更が成され得ることが明らかであろう。従って、以降に定められる請求項によるものを除いて、本発明が限定されるように意図されてはいない。