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特許7124080垂直集積マルチスペクトル撮像センサ、および垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】垂直集積マルチスペクトル撮像センサ、および垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20220816BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 31/0264 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01L31/02 A
G01J1/02 C
G01J1/02 B
H01L31/08 L
H01L27/146 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020528236
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2018059296
(87)【国際公開番号】W WO2019106516
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】15/827,785
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、チン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ジアンシ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219805(JP,A)
【文献】特開昭57-010983(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058651(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357504(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318401(US,A1)
【文献】国際公開第2015/098334(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H01L 27/14-27/148
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直集積マルチスペクトル撮像センサであって、
基板上に配置された第1の金属コンタクト層と、
前記第1の金属コンタクト層上に配置され、第1の検出器素子がその内部の孔に埋め込まれたSiO層と、
前記第1の検出器素子を覆う第1のグラフェン層と、
前記第1のグラフェン層の一方の側で前記SiO層上に配置された第2の金属コンタクト層であって、前記第2の金属コンタクト層の縁部が前記第1のグラフェン層の側面に接触する、前記第2の金属コンタクト層と、
前記SiO層上に配置されたAl層であって、該Al層において第2の検出器素子が、前記第1のグラフェン層の上の孔に埋め込まれている、前記Al層と、
前記第2の検出器素子上に配置された第2のグラフェン層と、
前記第2のグラフェン層に隣接して前記Al層上に配置された第3の金属コンタクト層であって、前記第3の金属コンタクト層の縁部が前記第2のグラフェン層の側面に接触している、前記第3の金属コンタクト層と、
を含み、
前記第1の検出器素子の材料が、前記第2の検出器素子の材料とは異なる電磁スペクトルの波長帯域に感度がある、
垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項2】
前記基板が、ガラス、シリコン・ウエハ、または可撓性材料から形成されている、請求
項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項3】
前記第1のグラフェン層が、前記第1の検出器素子の部を越えて、前記SiO層に部分的に重なるように延在する、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項4】
前記第1の金属コンタクト層が、前記基板上で長手方向に延在するストライプを形成する、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項5】
前記埋め込まれた第2の検出器素子の側面が、前記第1のグラフェン層の側面に連続して繋がる、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項6】
前記第2のグラフェン層が、前記2の検出器素子の部を越えて、前記Al層に部分的に重なるように延在する、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項7】
前記第2の金属コンタクト層が、前記第1の金属コンタクト層に対して垂直な幅方向に延在する、前記SiO層上のストライプを形成する、請求項4に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項8】
前記第3の金属コンタクト層が、前記第2の金属コンタクト層に対して垂直な長手方向に延在する、前記Al層上のストライプを形成する、請求項7に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項9】
前記第1の検出器素子および前記第2の検出器素子が、PbSe、PbS、またはCdSを含むグループからそれぞれ選択され、前記第1の検出器素子が前記第2の検出器素子とは異なる、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項10】
前記第1の金属コンタクト層、前記第2の金属コンタクト層、および前記第3の金属コンタクト層が、それぞれ導電性金属から形成されている、請求項1に記載の垂直集積マルチスペクトル撮像センサ。
【請求項11】
垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法であって、
基板上に第1の金属コンタクト層を堆積させ、前記第1の金属コンタクト層をパターニングするステップと、
前記基板および第1の金属コンタクト層の上にSiO層を堆積させ、前記SiO層をパターニングして、前記基板のほぼ中央に前記第1の金属コンタクト層を露出させる孔を形成するステップと、
前記孔に第1の検出器材料を堆積させるステップと、
グラフェン層を前記SiO層上に転写し、前記グラフェン層をパターニングして、前記第1の検出器材料を覆う第1のグラフェン層を形成するステップと、
第2の金属コンタクト層を前記SiO層上に堆積させ、パターニングするステップであって、前記第2の金属コンタクト層が前記第1のグラフェン層に隣接し、前記第1のグラフェン層と接触している、前記堆積させ、パターニングするステップと、
Al層を前記SiO層の上に堆積させるステップであって、Alが前記第1のグラフェン層上に蓄積することなく、前記第1のグラフェン層を取り囲む孔を形成する、前記堆積させるステップと、
第2の検出器材料を前記第1のグラフェン層上の前記孔に堆積させるステップと、
別のグラフェン層を前記Al層および前記第2の検出器材料上に転写し、前記グラフェン層をパターニングして、前記第2の検出器材料を覆う第2のグラフェン層を形成
するステップと、
第3の金属コンタクト層を前記Al層上に堆積させ、パターニングするステップであって、前記第3の金属コンタクト層が前記第2のグラフェン層に隣接して接触している、前記堆積させ、パターニングするステップと、
を含み、
前記第1の検出器材料が、前記第2の検出器材料とは異なる電磁スペクトルの波長帯域に感度がある、
垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法。
【請求項12】
前記第1の金属コンタクト層が、前記基板上で長手方向に延在するストライプを形成するようにパターニングされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の検出器材料および前記SiO層の上面が、化学機械研磨(CMP)プロセスによって平滑化される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の金属コンタクト層が、前記第1の金属コンタクト層に対して垂直な、前記SiO層上の幅方向に延在するストライプを形成するようにパターニングされる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の金属コンタクト層が、前記Al層上で長手方向、かつ前記第2の金属コンタクト層に対して垂直に延在するストライプを形成するようにパターニングされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Al層を原子層堆積(ALD)によって堆積させる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の検出器材料および前記第2の検出器材料が、それぞれPbSe、PbS、またはCdSを含むグループから選択され、前記第1の検出器材料が、前記第2の検出器材料とは異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の金属コンタクト層、前記第2の金属コンタクト層、および前記第3の金属コンタクト層が、それぞれ導電性金属から形成されている、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、マルチスペクトル撮像センサを対象とする。
【背景技術】
【0002】
マルチスペクトル撮像は、医療用撮像および地質調査などの多くの用途にとって重要である。マルチスペクトル画像は、電磁スペクトル全体にわたって複数の特定の波長領域内の画像データをキャプチャした画像である。図1は、マルチスペクトル画像を取得するために使用される典型的な機器を示す。ここで本図を参照すると、従来のマルチスペクトル検出器10は、可視スペクトル検出器11、赤外線(IR)開孔13を備えたIR検出器12、および紫外線(UV)検出器14を含む。マルチスペクトル検出器10はまた、可視およびUV開孔15、第1の調整可能なUVミラー16、第2の固定されたUVミラー18、およびUVチャネル19を含む。図からわかるように、各検出器には個別のレンズとフィルタが必要である。従来のマルチスペクトル検出器に関連付けられたいくつかの課題がある。これらには、高コストおよび製造上の課題、複数のチャネルの光学的アライメントの維持、制限された視野などが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の例示的な実施形態は、グラフェンが電極および拡散バリアとして使用される垂直集積マルチスペクトル撮像センサに関する。
【0004】
本開示の一実施形態によると、基板上に配置された第1の金属コンタクト層と、第1の検出器素子が内部の孔に埋め込まれた第1の金属コンタクト上のSiO層と、第1の検出器素子を覆う第1のグラフェン層と、第1のグラフェン層の一方の側でSiO層上に配置された第2の金属コンタクト層であって、第2の金属コンタクト層の縁部が第1のグラフェン層の側面に接触する、第2の金属コンタクト層と、SiO層上に配置されたAl 層であって、第2の検出器素子が、第1のグラフェン層の上の孔に埋め込まれている、Al 層と、第2の検出器素子上に配置された第2のグラフェン層と、第2のグラフェン層に隣接してAl 層上に配置された第3の金属コンタクト層であって、第3の金属コンタクト層の縁部が第2のグラフェン層の側面に接触している、第3の金属コンタクト層と、を含む垂直集積マルチスペクトル撮像センサが提供される。第1の検出器素子の材料は、第2の検出器素子の材料とは異なる電磁スペクトルの波長帯域に感度がある。
【0005】
本開示のさらなる実施形態によると、基板は、ガラス、シリコン・ウエハ、または可撓性材料から形成される。
【0006】
本開示のさらなる実施形態によると、第1のグラフェン層は、第1の検出器素子の縁部を越えて、SiO層に部分的に重なるように延在する。
【0007】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の金属コンタクト層は、基板上で長手方向に延在するストライプを形成する。
【0008】
本開示のさらなる実施形態によると、埋め込まれた第2の検出器素子の側面は、第1のグラフェン層の側面と同じ広がりを有する。
【0009】
本開示のさらなる実施形態によると、第2のグラフェン層は、第2の検出器素子の縁部を越えて、Al 層に部分的に重なるように延在する。
【0010】
本開示のさらなる実施形態によると、第2の金属コンタクト層は、第1の金属コンタクト層に対して垂直な幅方向に延在するSiO層上のストライプを形成する。
【0011】
本開示のさらなる実施形態によると、第3の金属コンタクト層は、第2の金属コンタクト層に対して垂直な長手方向に延在するAl 層上のストライプを形成する。
【0012】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の検出器素子および第2の検出器素子は、それぞれPbSe、PbS、またはCdSを含むグループから選択され、第1の検出器素子が第2の検出器素子とは異なる。
【0013】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の金属コンタクト層、第2の金属コンタクト層、および第3の金属コンタクト層は、それぞれ導電性金属から形成される。
【0014】
本開示の別の実施形態によると、基板上に第1の金属コンタクト層を堆積させ、第1の金属コンタクト層をパターニングすることと、基板および第1の金属コンタクト層の上にSiO層を堆積させ、SiO層をパターニングして、基板のほぼ中央に第1の金属コンタクト層を露出させる孔を形成することと、孔に第1の検出器材料を堆積させることと、グラフェン層をSiO層上に転写し、グラフェン層をパターニングして、第1の検出器材料を覆う第1のグラフェン層を形成することと、第2の金属層をSiO層上に堆積させ、パターニングすることであって、第2の金属層が第1のグラフェン層に隣接し、第1のグラフェン層と接触している、堆積させ、パターニングすることと、Al 層をSiO層の上に堆積させることであって、Al が第1のグラフェン層上に蓄積することなく、第1のグラフェン層を取り囲む孔を形成する、堆積させることと、第2の検出器材料を第1のグラフェン層上の孔に堆積させることと、別のグラフェン層をAl 層および第2の検出器材料上に転写し、グラフェン層をパターニングして、第2の検出器材料を覆う第2のグラフェン層を形成することと、第3の金属層をAl 層上に堆積させ、パターニングすることであって、第3の金属層が第2のグラフェン層に隣接して接触している、堆積させ、パターニングすることと、を含む、垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法が提供される。第1の検出器材料は、第2の検出器材料とは異なる電磁スペクトルの波長帯域に感度がある。
【0015】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の金属コンタクト層は、基板上で長手方向に延在するストライプを形成するようにパターニングされる。
【0016】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の検出器材料およびSiO層の上面は化学的機械研磨(CMP)プロセスによって平滑化される。
【0017】
本開示のさらなる実施形態によると、第2の金属層は、第1の金属コンタクト層に対して垂直な、SiO層上の幅方向に延在するストライプを形成するようにパターニングされる。
【0018】
本開示のさらなる実施形態によると、第3の金属コンタクト層は、Al 層上で長手方向、かつ第2の金属コンタクト層に対して垂直に延在するストライプを形成するようにパターニングされる。
【0019】
本開示のさらなる実施形態によると、Al 層を原子層堆積(ALD)によって堆積させる。
【0020】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の検出器材料および第2の検出器材料は、それぞれPbSe、PbS、またはCdSを含むグループから選択され、第1の検出器素子が第2の検出器素子とは異なる。
【0021】
本開示のさらなる実施形態によると、第1の金属コンタクト層、第2の金属コンタクト層、および第3の金属コンタクト層は、それぞれ導電性金属から形成される。
【0022】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来のマルチスペクトル検出器である。
図2】本開示の一実施形態による、選択的ALDによる拡散バリアとしてのグラフェンの使用を示す図である。
図3】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてのグラフェンを有する垂直集積マルチスペクトル撮像センサである。
図4】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図5】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図6】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図7】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図8】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図9】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
図10】本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを使用する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で説明される開示の例示的な実施形態は、一般に、垂直集積マルチスペクトル撮像センサを提供する。実施形態は、様々な修正形態および代替形態が可能であるが、それらの具体的な実施形態が、例として図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本開示を、開示された特定の形態に限定する意図はなく、逆に、本開示は、本開示の思想および範囲に含まれるすべての修正形態、等価形態、および代替形態を網羅していることを理解されたい。
【0025】
グラフェンは、選択的原子層堆積(ALD)による拡散バリアとして使用されている。グラフェンは、電子および正孔がその伝導帯内を自由に移動するため、透明で導電性が高いが、グラフェン層を構成する炭素原子は、原子および分子が通過するのを阻止するのに十分に稠密であるため、グラフェンは、拡散シールドとして機能することができる。したがって、グラフェンは、異なる波長帯域の光に感度がある検出器材料と組み合わされて、積層マルチスペクトル撮像センサを形成することができる。グラフェンは、透明なため、異なる波長帯域に感度がある検出器間に配置することができ、その導電性により、電流を金属コンタクトに流出させることができ、異なる検出器間の拡散バリアとして機能する。例示的で非限定的な検出器には、約0.27eVのバンドギャップを有し、3~約5μmの波長帯域の近赤外線および中赤外線に感度があるPbSe、約0.37eVのバンドギャップを有し、1~約2.5μmの波長帯域の近赤外線に感度があるPbS、ならびに約2.45eVのバンドギャップを有し、200~約600nmの波長帯域の可視光、UVA、UVB、およびより長波長のUVC放射線に感度があるCdSが含まれる。
【0026】
しかしながら、ボイドが容易に形成されるため、完全なグラフェン単分子層を形成することは困難である。図2を参照すると、上側の画像は10nmのAlALD後の銅亜鉛硫化スズ(CZTS)表面のグラフェンを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。Alは、グラフェンの孔20の内部の露出したCZTSを含めて、CZTSを均一にコーティングしている。グラフェン表面は、均一にコーティングされていないため、画像のコントラストが暗い。下側の画像は、グラフェン/CZTS表面の拡大画像であり、グラフェンが存在しないクラック内部の露出したCZTSが均一にコーティングされている。対照的に、グラフェンによって覆われた領域のAl核生成は、はるかに疎らにコーティングされている。
【0027】
しかしながら、Al を使用するALDを行うことによって、Al は、グラフェンのボイドを覆うように孔内で核生成されるが、グラフェンが化学的に不活性であり、Al と結合しないため、グラフェン自体には接着しない。Al とグラフェンの組み合わせは、連続拡散バリアを形成する。グラフェンのボイドは、電子および正孔が容易にボイドを回避することができるため、実質的にその導電性に影響しないことに留意されたい。
【0028】
本開示の実施形態によると、垂直集積マルチスペクトル撮像センサは、電極および拡散バリアとしてグラフェンを用いる。図3は、グラフェンを電極および拡散バリアとして使用し、異なる波長帯域に感度がある2つの埋め込み検出器を有する例示的な垂直集積マルチスペクトル撮像センサを示す。図3は、説明を明確にし、図面を簡略化するために2つの埋め込み検出器を示しており、2つの検出器を有するマルチスペクトル撮像センサに含まれる概念は、当業者によって、3つ以上の検出器を有するマルチスペクトル撮像センサに拡張することができる。PbSe検出器およびPbS検出器の描写は、例示的かつ非限定的であり、2つの検出器のどちらかを、CdS検出器などの別の検出器で置き換えることができる。
【0029】
ここで、図を参照すると、本発明の実施形態による垂直集積マルチスペクトル撮像センサは、基板30上の第1の金属コンタクト層31と、SiO層32の孔に、埋め込まれたPbSe検出器素子39を有する、第1の金属コンタクト層31上のSiO層32と、を含む。基板は、材料がALDに関連付けられた温度に耐えることができる限り、ガラスもしくはシリコン・ウエハ、または必要に応じて可撓性材料とすることができる。金属コンタクト層は、グラフェン層を外部コンタクトと相互接続して、グラフェン内で生成される電流を伝導する役割を果たし、Cu、Al、またはAgなどの任意の適切な導電性金属とすることができる。第1の金属コンタクト層31は、基板上で長手方向に延在するストライプを形成する。PbSe検出器素子39は、一部の実施形態では、PbSe検出器素子39の縁部を越えてSiO層32に部分的に重なるように延在する第1のグラフェン層37によって覆われている。SiO層32は、第1のグラフェン層37の上に孔を有するAl 層33によって覆われ、この孔内で、PbS検出器素子36が、PbSe検出器素子39の上の第1のグラフェン層37上に埋め込まれている。一部の実施形態では、埋め込まれたPbS検出器素子36は、その側面が第1のグラフェン層37の側面と同一の広がりを有するように延在する。第2の金属コンタクト層34は、第1のグラフェン層37の一方の側において、SiO層32とAl 層33との間に配置されている。第2の金属コンタクト層34の縁部は、第1のグラフェン層37の側部に接触する。第2の金属コンタクト層34は、第1の金属コンタクト層31とに対して垂直な幅方向に延在するストライプを形成する。第2のグラフェン層38は、PbS検出器素子36を覆い、一部の実施形態では、第2のグラフェン層38は、PbS検出器素子36の縁部を越えて、Al 層33に部分的に重なるように延在する。第3の金属コンタクト層35は、第2のグラフェン層38に隣接してAl 層33上に形成されている。第3の金属コンタクト層35の縁部は、第2のグラフェン層38の側部に接触する。第3の金属コンタクト層35は、第2の金属コンタクト層34に対して垂直な長手方向に延在するストライプを形成する。
【0030】
グラフェンは、グラフェンが透明であり、光を下方の層まで透過させることができるため、PbS検出器素子36の頂部、およびPbS検出器素子36とPbSe検出器素子39との間に使用される。光は、PbSe検出器素子39の下には透過しないため、PbSe検出器素子39の下にはグラフェン層は、存在しない。
【0031】
本開示の実施形態によると、図3のマルチスペクトル撮像センサでは、グラフェン層は、透明な電気コンタクトおよび拡散バリアの両方として機能する。図3に示すようなマルチスペクトル撮像センサは、アライメントの必要がない単一の光学系と、幅広い視野とを有する。
【0032】
図4図10は、本開示の一実施形態による、電極および拡散バリアとしてグラフェンを有する垂直集積マルチスペクトル撮像センサを製造する方法を示す。図4図10のそれぞれにおいて、上側の画像は、基板の平面図または上面図であり、下側の画像は、基板の中央部に沿った長手方向の基板の断面図である。図4を参照すると、プロセスは、第1の金属コンタクト層31を基板30上に堆積させ、コンタクト層31をパターニングすることによって開始する。第1の金属コンタクト層31は、任意の適切なプロセスによって堆積させることができ、基板上にストライプを形成するようにパターニングされる。図5を参照すると、SiO層32を堆積させ、パターニングして、基板のほぼ中央に第1の金属コンタクト層31を露出させる孔52を形成する。図6を参照すると、狭いバンドギャップを有するPbSe材料を孔52に堆積させ、堆積させたPbSe材料およびSiO層32の上面を化学的機械研磨(CMP)プロセスによって平滑化してPbSe検出器素子39を形成する。
【0033】
図7を参照すると、グラフェン層がSiO層32上に転写され、パターニングされて、主にPbSe検出器素子39を覆う第1のグラフェン層37が形成され、その後、第2の金属層34を堆積させ、パターニングする。実施形態によると、グラフェンを、銅膜上に別個に成長させ、知られている方法によって銅膜から除去し、SiO層32上に転写する。第2の金属層34は、第1のグラフェン層37の一方の側に隣接し、かつ第1の金属コンタクト層31に対して垂直な、SiO層32上の幅方向に延在するストライプを形成するようにパターニングされる。
【0034】
図8を参照すると、Al 層33を、ALDによってSiO層32の上に堆積させる。グラフェンは、化学的に不活性であるため、Al は、グラフェンに結合せず、Al がグラフェン上に蓄積することなく、凹みにあるグラフェンがAl 層33によって取り囲まれている孔82を形成する。しかしながら、第1のグラフェン層37のボイドは、Al で充填され、連続層を形成する。図9を参照すると、PbSeよりも広いバンドギャップの光センサを有する材料であるPbSを孔82に堆積させて、PbS検出器素子36を形成する。
【0035】
図10を参照すると、別のグラフェン層が、第1のグラフェン層37の形成に使用されたものと実質的に同様のプロセスで、Al 層33およびPbS検出器素子36上に転写され、パターニングされて、PbS検出器素子36を覆う第2のグラフェン層38が形成される。別の金属層を堆積させ、パターニングして、第2のグラフェン層38の一方の側に隣接し、かつ第2の金属コンタクト層34に対して垂直な、Al 層33上の長手方向に延在するストライプとして第3の金属コンタクト層35を形成する。第2のグラフェン層38は、頂部コンタクトであるため、ボイドを充填する必要はない。
【0036】
本開示の実施形態は、例示的な実施形態を参照して詳細に説明されたが、当業者には、添付された特許請求の範囲に記載されている本開示の思想および範囲から逸脱することなく、様々な修正および置換を行うことができることが理解されよう。
図1
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図7
図8
図9
図10