(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】複合単結晶薄膜
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20220816BHJP
G02B 6/132 20060101ALI20220816BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20220816BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G02B6/12 371
G02B6/132
G02F1/01 A
B32B18/00 B
(21)【出願番号】P 2020534967
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2018092190
(87)【国際公開番号】W WO2019241960
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520128510
【氏名又は名称】ジーナン ジンジョン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ ホウビン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヂェンユー
(72)【発明者】
【氏名】フー ウェン
(72)【発明者】
【氏名】フー フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヤンヤン
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105321806(CN,A)
【文献】特開2009-021573(JP,A)
【文献】特開2017-028247(JP,A)
【文献】特開2009-272619(JP,A)
【文献】特開2017-139720(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187231(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第1385906(CN,A)
【文献】国際公開第2014/192873(WO,A1)
【文献】特開平09-315811(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H01L 21/00 -21/02
H01L 21/04 -21/16
B23K 20/00 -20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に配置される第1の遷移層と、
第1の遷移層上に配置される第1の隔離層と、
第1の隔離層上に配置される第2の遷移層と、
第2の遷移層上に配置される第1の薄膜層と、
第1の薄膜層上に配置される第3の遷移層と、
第3の遷移層上に配置される第2の薄膜層とを含み、
第1の遷移層と、第2の遷移層と、第3の遷移層はHとArを含み、
第1の隔離層は二酸化ケイ素層又は窒化ケイ素層であり、第1の薄膜層はニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜であり、第2の薄膜層はシリコン単結晶薄膜であり、
第2の遷移層の厚さは0.5nm~10nmであり、第3の遷移層の厚さは0.5nm~15nmであ
り、
第1の遷移層と、第2の遷移層と、第3の遷移層におけるHの濃度は1×10
19
原子/cc~1×10
22
原子/ccであり、第1の遷移層と、第2の遷移層と、第3の遷移層におけるArの濃度は1×10
20
原子/cc~1×10
23
原子/ccである、複合単結晶薄膜。
【請求項2】
第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に配置される第2の隔離層をさらに含み、且つ
、第2の隔離層は二酸化ケイ素層又は窒化ケイ素層であり、
第1の隔離層及び第2の隔離層の厚さは0.005μm~4μmである、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項3】
第2の遷移層におけるHの濃度は第1の隔離層と第1の薄膜層におけるHの濃度よりそれぞれ高く、第3の遷移層におけるHの濃度は第1の薄膜層と第2の薄膜層におけるHの濃度よりそれぞれ高い、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項4】
第1の遷移層の厚さは0.5nm~15nmである、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項5】
第3の遷移層は第1の薄膜層に隣接する第1の下位遷移層と、第2の薄膜層に隣接する第2の下位遷移層とを含み、
第1の下位遷移層において、第1の薄膜層の元素の濃度は第2の薄膜層における元素の濃度より高く、且つ、第1の薄膜層の元素の濃度が第1の下位遷移層から第2の下位遷移層に向けて漸次低減し、
第2の下位遷移層において、第2の薄膜層の元素の濃度は第1の薄膜層の元素の濃度より高く、且つ、第2の薄膜層の元素の濃度が第2の下位遷移層から第1の下位遷移層に向けて漸次低減する、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項6】
第1の薄膜層と、第2の薄膜層はいずれもナノメートルレベルの厚さの単結晶薄膜であり、その厚さは10nm~2000nmである、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項7】
第3の遷移層は、
濃度がシリコン単結晶薄膜層からニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜層に向けて漸次低減するように第3の遷移層の全体に遍在するSiと、
濃度がニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜層からシリコン単結晶薄膜層に向けて漸次低減し、且つ、第3の遷移層の全体に遍在しないTa又はNbとを含む、請求項1に記載の複合単結晶薄膜。
【請求項8】
基板はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板又はタンタル酸リチウム基板であり、基板の厚さは0.1mm~1mmである、請求項1又は2に記載の複合単結晶薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合単結晶薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウム単結晶薄膜、タンタル酸リチウム単結晶薄膜は非線形の光学的特性、電気光学的特性、音響光学的特性に優れているため、光信号処理、情報記憶等の分野で幅広く利用されている。シリコン材料はその優れた電気的特性から、現在半導体業界で最も多く用いられる材料である。一方、シリコン材料は光学的性能が不足するため、光エレクトロニクス分野でその使用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術に存在する上記の技術的課題を解決することを目的とし、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜及びシリコン材料の両者の利点を組み合わせる複合単結晶薄膜を提供する。当該複合単結晶薄膜は、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性及びシリコン単結晶薄膜の電気的特性の両方を利用して、性能が優れる部品を得ることができる。当該複合単結晶薄膜は安定的で、効率的な大量製造を実現できるため、幅広い利用が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、複合単結晶薄膜を提供する。当該複合単結晶薄膜は、基板、基板上に配置される第1の遷移層、第1の遷移層上に配置される第1の隔離層、第1の隔離層上に配置される第2の遷移層、第2の遷移層上に配置される第1の薄膜層、第1の薄膜層上に配置される第3の遷移層、第3の遷移層上に配置される第2の薄膜層の7層の構造を含んでもよく、第1の遷移層、第2の遷移層、第3の遷移層はHとArを含んでもよい。
【0005】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜は第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に配置される第2の隔離層をさらに含んでもよく、且つ、第1の隔離層、第2の隔離層はいずれも二酸化ケイ素層又は窒化ケイ素層であってもよく、その厚さはいずれも0.005μm~4μmであってもよい。
【0006】
本発明の実施例において、第1の遷移層、第2の遷移層、第3の遷移層におけるHの濃度は1×1019原子/cc~1×1022原子/ccであってもよく、第1の遷移層、第2の遷移層、第3の遷移層におけるArの濃度は1×1020原子/cc~1×1023原子/ccであってもよい。
【0007】
本発明の実施例において、第2の遷移層におけるHの濃度は第1の隔離層、第1の薄膜層におけるHの濃度のそれぞれより高くてもよく、第3の遷移層におけるHの濃度は第1の薄膜層、第2の薄膜層におけるHの濃度のそれぞれより高くてもよい。
【0008】
本発明の実施例において、第1の遷移層の厚さは0.5nm~15nmであってもよく、第2の遷移層の厚さは0.5nm~10nmであってもよく、第3の遷移層の厚さは0.5nm~15nmであってもよい。
【0009】
本発明の実施例において、第3の遷移層は第1の薄膜層に隣接する第1の下位遷移層と、第2の薄膜層に隣接する第2の下位遷移層とを含んでもよい。第1の下位遷移層において、第1の薄膜層の元素の濃度は第2の薄膜層の元素の濃度より高くてもよく、且つ、第1の薄膜層の元素の濃度は第1の下位遷移層から第2の下位遷移層に向けて漸次低減してもよい。第2の下位遷移層において、第2の薄膜層の元素の濃度は第1の薄膜層の元素の濃度より高くてもよく、且つ、第2の薄膜層の元素の濃度は第2の下位遷移層から第1の下位遷移層に向けて漸次低減してもよい。
【0010】
本発明の実施例において、第1の薄膜層、第2の薄膜層はいずれもナノメートルレベルの厚さの単結晶薄膜であってもよく、その厚さは10nm~2000nmであってもよい。
【0011】
本発明の実施例において、第1の薄膜層はニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜であってもよく、第2の薄膜層はシリコン単結晶薄膜であってもよい。
【0012】
本発明の実施例において、第3の遷移層は、濃度がシリコン単結晶薄膜層からニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜層に向けて漸次低減するように第3の遷移層の全体に遍在するSiと、濃度がニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜層からシリコン単結晶薄膜層に向けて漸次低減し且つ第3の遷移層の全体に遍在するのではないTa又はNbとを含んでもよい。
【0013】
本発明の実施例において、基板はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板又はタンタル酸リチウム基板であってもよく、基板の厚さは0.1mm~1mmであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、図面を参照して実施例を説明する。本発明に係る上記の構成及びその他の内容は明瞭かつ理解しやすくなる。
【
図1】本発明の実施例の複合単結晶薄膜の構造を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施例の複合単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図9】
図2に示す領域A及び領域Bの二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施例をより具体的に説明する。図面に本発明の実施例を示している。ただし、本発明は、以下に記載の実施例に限定されず、他にも様々な形態で実施することができる。これらの実施例を示すことで本発明は完全に理解され、且つ当業者が本発明の実施例の発想を十分に把握することができる。次の詳細の説明において、例を挙げる方式で多くの具体的な詳細を示すことで、その対象内容を十分に理解させる。一方、当業者はこれらの詳細がなくても本発明を実施できることが理解できる。そのため、従来の方法のステップ、要素を説明する際は本発明に係る多くの事項が不明瞭になることを避けるため、その詳細ではなく全体的に説明する。図面で同じ符号が同一の要素を示すため、重複する説明は省略される。図面の部分で、記載が明瞭になるように、各層又は領域のサイズ、その相対的なサイズを実際より誇張して記載する場合がある。
【0016】
次に、図面を参照して本発明を十分に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例の複合単結晶薄膜の構造を概略的に示す図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施例の複合単結晶薄膜は、基板110と、基板110上に配置される第1の遷移層115と、第1の遷移層115上に配置される第1の隔離層120と、第1の隔離層120上に配置される第2の遷移層125と、第2の遷移層125上に配置される第1の薄膜層130と、第1の薄膜層130上に配置される第3の遷移層135と、第3の遷移層135上に配置される第2の薄膜層140とを含んでもよい。
【0019】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜は、直径が2インチ~12インチのウェハー(wafer)として製造することができる。
【0020】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜の基板110は主に支持物の役割を果たす。本発明の実施例において、基板110はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板又はタンタル酸リチウム基板であってもよいが、本発明はこれらに限定されず、その他の適切な材料で製造することができる。さらに、本発明の実施例の基板110の厚さは0.1mm~1mmであってもよい。好ましくは、基板110の厚さは0.1mm~0.2mm、0.3mm~0.5mm又は0.2mm~0.5mmである。
【0021】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜の第1の隔離層120は基板110と第1の薄膜層130を隔離させるように構成される。シリコン等からなる基板110の屈折率はニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜の屈折率より大きく、且つ、この2種の材料の屈折率はいずれも二酸化ケイ素又は窒化ケイ素の屈折率より大きいため、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素を用いて、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜と基板を隔離させるための第1の隔離層120を製造することができ、これによってニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜のライトフィールドが基板110に誤って結合することは避けられる。本発明の実施例において、第1の隔離層120は基板110及び第1の薄膜層130より屈折率が小さい材料(例えば、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素)で製造できるが、本発明はこれに限定されない。本発明の実施例において、第1の隔離層120の厚さは0.005μm~4μmであってもよく、好ましくは、100nm~2μmである。
【0022】
本発明の別の実施例において、複合単結晶薄膜は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140との間に配置される第2の隔離層をさらに含んでもよく(図示せず)、第2の隔離層は二酸化ケイ素層又は窒化ケイ素層であってもよく、且つ、第2の隔離層の厚さは0.005μm~4μmであってもよく、好ましくは、100nm~2μmであるが、本発明はこれらに限定されない。第2の隔離層は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140の光学的な隔離の役割を果たすだけでなく、第1の薄膜層130の元素と第2の薄膜層140の元素の相互拡散を防ぐことで、第1の薄膜層130及び第2の薄膜層140が不純物に汚染されることを避け、第1の薄膜層130及び第2の薄膜層140の品質を確保することにより、第1の薄膜層130及び第2の薄膜層140の特性が影響を受けないことを確保する。
【0023】
本発明の実施例において、第1の隔離層120及び第2の隔離層は例えば、堆積、酸化等の方法で基板110、第1の薄膜層130又は第2の薄膜層140にそれぞれ形成させることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0024】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜は材料が異なる第1の薄膜層130と第2の薄膜層140とを含み、第1の薄膜層130は光学特性に優れるニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜であってもよく、第2の薄膜層140は電気的特性に優れるシリコン単結晶薄膜であってもよい。第1の薄膜層130、第2の薄膜層140はいずれもナノメートルレベルの厚さを有してもよく、その厚さは10nm~2000nmである。好ましくは、第1の薄膜層130及び第2の薄膜層140の厚さは10~200nm、300nm~900nm又は1000nm~1500nmである。また、第2の薄膜層140の上面は研磨(polishing)面、又はマイクロメートルレベルもしくはサブマイクロメートルレベルの表面粗さを有する粗面である。
【0025】
本発明の実施例において、第1の隔離層120と第1の薄膜層130、第1の薄膜層130と第2の薄膜層140はプラズマ結合の方法で結合することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
本発明の実施例において、複合単結晶薄膜は、それぞれ独自の特性を有する3つの遷移層を含んでもよい。
【0027】
本発明の実施例において、
図1に示すように、第1の遷移層115は基板110と第1の隔離層120との間に配置されてもよく、その厚さは0.5nm~15nmであってもよい。
【0028】
本発明の実施例において、第1の遷移層115は基板110及び第1の隔離層120の固有の元素を含んでもよい。第1の遷移層115において、基板110の元素の濃度は基板110から第1の隔離層120に行く方向に漸次低減してもよく、第1の隔離層120の元素の濃度は第1の隔離層120から基板110に行く方向に漸次低減してもよい。
【0029】
本発明の実施例において、第2の遷移層125は第1の隔離層120と第1の薄膜層130との間に配置されてもよく、その厚さは0.5nm~10nmであってもよい。
【0030】
本発明の実施例において、第2の遷移層125は第1の隔離層120及び第1の薄膜層130の固有の元素を含んでもよい。第2の遷移層125において、第1の隔離層120の元素の濃度は第1の隔離層120から第1の薄膜層130に行く方向に漸次低減してもよく、第1の薄膜層130の元素の濃度は第1の薄膜層130から第1の隔離層120に行く方向に漸次低減してもよい。
【0031】
本発明の実施例において、第3の遷移層135は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140との間に配置されてもよく、その厚さは0.5nm~15nmであってもよい。
【0032】
さらに、本発明の実施例において、第3の遷移層135は第1の薄膜層130に隣接する第1の下位遷移層135aと、第2の薄膜層140に隣接する第2の下位遷移層135bとを含んでもよい。第1の下位遷移層135aの厚さは0~5nmであってもよく、第2の下位遷移層135bの厚さは0~10nmであってもよいが、本発明の実施例はこれに限定されない。例えば、第1の下位遷移層135a及び第2の下位遷移層135bの厚さは後続のプロセス温度(例えば、アニーリング温度)の変化に応じて変更してもよい。
【0033】
本発明の実施例において、第1の下位遷移層135aは主に第1の薄膜層130の固有の元素を含み、第1の下位遷移層135aにおいて、第1の薄膜層130の元素の濃度は第1の薄膜層130から第2の薄膜層140に行く方向に漸次低減してもよい。第2の下位遷移層135bは主に第2の薄膜層140の固有の元素を含み、第2の下位遷移層135bにおいて、第2の薄膜層140の元素の濃度は第2の薄膜層140から第1の薄膜層130に行く方向に漸次低減してもよい。
【0034】
さらに、本発明の実施例において、第1の薄膜層130がニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜であり、且つ、第2の薄膜層140がシリコン単結晶薄膜である場合は、第3の遷移層135はSi元素と、Ta元素又はNb元素とを含んでもよい。これにより、Si元素が第3の遷移層135の全体に遍在し、即ちSi元素は、濃度が第2の薄膜層140から第1の薄膜層130に行く方向に漸次低減するように第1の下位遷移層135a及び第2の下位遷移層135bの全体に遍在してもよい。Ta元素又はNb元素は第3の遷移層135の全体に遍在しなくてもよい。例えば、Ta元素又はNb元素は第1の薄膜層130に隣接する下位遷移層(第1の下位遷移層135a)のみに存在するか、少量のTa元素又はNb元素は第1の薄膜層130から第2の薄膜層140に行く方向に漸次低減するように、第2の薄膜層140に隣接する下位遷移層(第2の下位遷移層135b)の第1の薄膜層130に近い部分の厚さにおいて存在する。ただし、本発明の実施例はこれに限定されない。
【0035】
本発明の実施例において、第1の遷移層115、第2の遷移層125、第3の遷移層135はH元素とAr元素をさらに含む。第2の遷移層125と第3の遷移層135におけるAr元素は第1の隔離層120と第1の薄膜層130又は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140のプラズマ結合を行う時に使用されるプラズマに由来し、第1の遷移層115におけるAr元素は第2の遷移層125と第3の遷移層135におけるAr元素の拡散に由来する。第2の遷移層125及び第3の遷移層135が高い濃度のH元素を有するのは以下の原因が考えられる。プラズマを利用して第1の隔離層120、第1の薄膜層130又は第2の薄膜層140の表面を処理する時、プラズマがその表面に衝撃すると表面の状態を変え、前記表面に大量の活性官能基を生成させることで、表面が高い活性を有するからである。そのため、プラズマ処理後、空気に暴露されると、空気から大量の水分子を吸着するため、第1の隔離層120と第1の薄膜層130又は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140が結合すると、それらの接結合面に比較的高い濃度のH元素を有する。また、第1の遷移層115におけるH元素は第2の遷移層125と第3の遷移層135におけるH元素の拡散に由来する。これにより、第2の遷移層125及び第3の遷移層135における高い濃度のH元素は水素結合を形成して、結合を促進することで、第1の隔離層120と第1の薄膜層130の結合界面又は第1の薄膜層130と第2の薄膜層140の結合界面の結合力を増大させることができる。
【0036】
本発明の実施例において、第1の遷移層115において、Ar元素及びH元素の濃度はその最大濃度位置から基板110に行く方向と第1の隔離層120に行く方向にそれぞれ漸次低減し、その原因として以下のことが考えられる。材料表面の格子定数は一般に材料内部の格子定数よりわずか大きく、即ち材料表面の密度が材料内部の密度より小さい。異なる材料の基板110と第1の隔離層120の界面(即ち、第1の遷移層115)で、基板110及び第1の隔離層120の内部より密度が小さい。即ち、第1の遷移層115においてより多くの隙間があり、不純物原子を収容できる。そのため、遷移層内で基板110及び第1の隔離層120の内部よりH、Ar元素の濃度が高い。第2の遷移層125において、Ar元素及びH元素の濃度はその最大濃度位置から第1の隔離層120に行く方向と第1の薄膜層130に行く方向にそれぞれ漸次低減し、第3の遷移層135において、Ar元素及びH元素の濃度はその最大濃度位置から第1の薄膜層130に行く方向と第2の薄膜層140に行く方向にそれぞれ漸次低減する。第1の遷移層115、第2の遷移層125、第3の遷移層135において、H元素の濃度は1×1019原子/cc~1×1022原子/ccであってもよく、Ar元素の濃度は1×1020原子/cc~1×1023原子/ccである。好ましくは、Ar元素の濃度は1×1020原子/cc~1×1022原子/cc、1×1021原子/cc~1×1022原子/cc、1×1022原子/cc~1×1023原子/ccである。
【0037】
本発明の実施例の複合単結晶薄膜は第1の遷移層115と、第2の遷移層125と、第3の遷移層135とを有し、単結晶薄膜間の応力を分散することができる。応力の分散により単結晶薄膜の欠陥が減少し、単結晶薄膜の品質が向上するため、伝送損失を低減する効果がある。さらに、第1の遷移層115、第2の遷移層125、第3の遷移層135の表面が比較的平坦であり、平坦の表面により信号の伝送過程における散乱を軽減し、伝送損失を低減することができる。
【0038】
次に、例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの例は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0039】
複合単結晶薄膜の製造
実施例1:シリコン基板/SiO2層/ニオブ酸リチウム単結晶薄膜/シリコン単結晶薄膜複合単結晶薄膜
サイズが3インチで、厚さが0.4mmであり且つ滑面を有する単結晶シリコン基板ウェハーを使用し、シリコン基板を洗浄した後、熱酸化法を利用して単結晶シリコン基板ウェハーの滑面に厚さが2μmの二酸化ケイ素層を形成する。
【0040】
サイズが3インチのニオブ酸リチウムウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して、ヘリウムイオン(He+)をニオブ酸リチウムウェハーに注入し、ヘリウムイオンの注入エネルギーは200KeVとし、注入量は4×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するニオブ酸リチウムウェハーを形成する。
【0041】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたニオブ酸リチウムウェハーの薄膜層とシリコン基板の二酸化ケイ素層を結合することにより、結合体を形成する。次に、結合体を加熱装置に入れ、余剰層が結合体から分離してニオブ酸リチウム単結晶薄膜が形成されるまで350℃で保温する。次に、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を研磨(polishing)して400nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さのニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得る。
【0042】
サイズが3インチの単結晶シリコンウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して水素イオン(H+)をシリコンウェハーに注入し、水素イオンの注入エネルギーは40KeVとし、注入量は6×1016イオン/平方センチメートルとする。薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するシリコンウェハーを形成する。
【0043】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたシリコンウェハーの薄膜層と上記のように得たニオブ酸リチウム単結晶薄膜ウェハーを結合して、別の結合体を得る。次に、当該結合体を加熱装置に入れ、シリコン単結晶薄膜ウェハーの薄膜層が結合体から分離してシリコン単結晶薄膜を上層とする複合構造が形成されるまで400℃で保温し、次にこのように得た複合構造をオーブンに入れて500℃で保温することで、注入損傷を解消する。最後に、シリコン単結晶薄膜を研磨し、220nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さの薄膜を2層有する複合単結晶薄膜製品を得る。
【0044】
実施例2:シリコン基板/SiO2層/ニオブ酸リチウム単結晶薄膜/SiO2層/シリコン単結晶薄膜複合単結晶薄膜
サイズが3インチで、厚さが0.4mmであり且つ滑面を有する単結晶シリコンウェハーを基板として使用し、基板ウェハーを洗浄した後、熱酸化法を利用して基板ウェハーの滑面に厚さが2.5μmの二酸化ケイ素層を形成する。
【0045】
サイズが3インチのニオブ酸リチウムウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して、ヘリウムイオン(He2+)をニオブ酸リチウムウェハーに注入し、ヘリウムイオンの注入エネルギーは200KeVとし、注入量は4×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するニオブ酸リチウムウェハーを形成する。
【0046】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたニオブ酸リチウムウェハーの薄膜層とシリコン基板の二酸化ケイ素層を結合することにより、結合体を形成する。次に、結合体を加熱装置に入れ、余剰層が結合体から分離してニオブ酸リチウム単結晶薄膜が形成されるまで350℃で加熱して保温する。次に、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を研磨し、300nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さのニオブ酸リチウム単結晶薄膜を有する結合体を得る。
【0047】
サイズが3インチの単結晶シリコンウェハーを使用し、その表面に厚さが50nmのSiO2を被覆し、イオン注入の方法を利用して、SiO2に被覆されたシリコンウェハーに水素イオン(H+)を注入し、水素イオンの注入エネルギーは40KeVとし、注入量は6×1016イオン/平方センチメートルとし、これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するシリコンウェハーを形成する。
【0048】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたシリコンウェハーの薄膜層と上記のように得たニオブ酸リチウム単結晶薄膜を結合して、別の結合体を得る。次に、当該結合体を加熱装置に入れ、シリコンウェハーの余剰層が結合体から分離してシリコン単結晶薄膜を上層とする複合構造が形成されるまで400℃で加熱して保温し、次に、このように得た複合構造をオーブンに入れて600℃で保温することで、注入損傷を解消する。最後に、シリコン単結晶薄膜を研磨し、220nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さの薄膜を2層有する複合単結晶薄膜製品を得る。
【0049】
実施例3:シリコン基板/SiO2層/タンタル酸リチウム単結晶薄膜/シリコン単結晶薄膜複合単結晶薄膜
サイズが3インチで、厚さが0.4mmであり且つ滑面を有する単結晶シリコン基板ウェハーを使用し、基板ウェハーを洗浄した後、熱酸化の方法を利用して基板ウェハーの滑面に厚さが600nmの二酸化ケイ素層を酸化形成する。
【0050】
サイズが3インチのタンタル酸リチウム単結晶薄膜ウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して、ヘリウムイオン(He+)をタンタル酸リチウムウェハーに注入し、ヘリウムイオンの注入エネルギーは200KeVとし、注入量は4×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するタンタル酸リチウムウェハーを形成する。
【0051】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたタンタル酸リチウムウェハーの薄膜層とシリコン基板ウェハーの二酸化ケイ素層を結合して、結合体を形成する。次に、結合体を加熱装置に入れ、余剰層が結合体から分離してタンタル酸リチウム単結晶薄膜が形成されるまで350℃で保温する。次に、タンタル酸リチウム単結晶薄膜を研磨し、400nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さのタンタル酸リチウム単結晶薄膜を有する結合体を得る。
【0052】
サイズが3インチの単結晶シリコンウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して水素イオン(H+)をシリコンウェハーに注入し、水素イオンの注入エネルギーは80KeVとし、注入量は6×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するシリコンウェハーを形成する。
【0053】
プラズマ結合の方法を利用して、シリコンウェハーの薄膜層と上記のように得たタンタル酸リチウム単結晶薄膜を結合して、別の結合体を得る。次に、当該結合体を加熱装置に入れ、シリコンウェハーの余剰層が結合体から分離してシリコン単結晶薄膜を上層とする複合構造が形成されるまで400℃で保温し、次に、このように得た複合構造をオーブンに入れて500℃で保温することで、注入損傷を解消する。最後に、シリコン単結晶薄膜を研磨し、500nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さの薄膜を2層有する複合単結晶薄膜製品を得る。
【0054】
実施例4:タンタル酸リチウム基板/SiO2層/タンタル酸リチウム単結晶薄膜/シリコン単結晶薄膜複合単結晶薄膜
サイズが3インチで、厚さが0.4mmであり且つ滑面を有するタンタル酸リチウム基板ウェハーを使用し、基板ウェハーを洗浄した後、堆積法を用いて基板ウェハーの滑面に厚さが1.0μmの二酸化ケイ素層を堆積させる。次に、二酸化ケイ素層が堆積された基板ウェハーにアニーリング処理を行う。次に、二酸化ケイ素層を所定の厚さ600nmに研磨する。
【0055】
サイズが3インチのタンタル酸リチウムウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して、ヘリウムイオン(He2+)をタンタル酸リチウムウェハーに注入し、ヘリウムイオンの注入エネルギーは400KeVとし、注入量は4×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するタンタル酸リチウムウェハーを形成する。
【0056】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたタンタル酸リチウムウェハーの薄膜層と二酸化ケイ素層が堆積されたシリコン基板ウェハーの二酸化ケイ素層を結合して、結合体を形成する。次に、結合体を加熱装置に入れ、余剰層が結合体から分離してタンタル酸リチウム単結晶薄膜が形成されるまで350℃で保温する。次に、タンタル酸リチウム単結晶薄膜を研磨し、800nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さのタンタル酸リチウム単結晶薄膜を得る。
【0057】
サイズが3インチの単結晶シリコンウェハーを使用し、イオン注入の方法を利用して水素イオン(H+)をシリコンウェハーに注入し、水素イオンの注入エネルギーは80KeVとし、注入量は6×1016イオン/平方センチメートルとする。これによって薄膜層、分離層、余剰層の3層の構造を有するシリコンウェハーを形成する。
【0058】
プラズマ結合の方法を利用して、イオン注入されたシリコンウェハーの薄膜層と上記のように得たタンタル酸リチウム単結晶薄膜を結合して、別の結合体を得る。次に、当該結合体を加熱装置に入れ、シリコンウェハーの余剰層が結合体から分離してシリコン単結晶薄膜を上層とする複合構造が形成されるまで400℃で保温する。最後に、シリコン単結晶薄膜を研磨し、500nmに薄肉化させることにより、ナノメートルレベルの厚さの薄膜を2層有する複合単結晶薄膜製品を得る。最後に、当該複合単結晶薄膜製品をオーブンに入れて500℃で保温することで、注入損傷を解消する。
【0059】
図2は、本発明の実施例1の複合単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0060】
図2に示すように、本発明の実施例の複合単結晶薄膜の基板110はシリコン基板であり、第1の隔離層120は二酸化ケイ素層であり、第1の薄膜層130はニオブ酸リチウム単結晶薄膜であり、第2の薄膜層140はシリコン単結晶薄膜である。
図2から分かるように、本発明の実施例の複合単結晶薄膜は、基板110と第1の隔離層120との間に配置される第1の遷移層115と、第1の隔離層120と第1の薄膜層130との間に配置される第2の遷移層125と、第1の薄膜層130と第2の薄膜層140との間に配置される第3の遷移層135とを含む。本発明の実施例の複合単結晶薄膜で結合界面が明瞭であり、しかも境界線が平坦であるため、音波、光波の界面損失を大幅に低減し、部品の性能を向上させることができる。
【0061】
図3は
図2に示す領域Aの拡大図であり、
図4は
図2に示す領域Aの元素分布図である。
【0062】
図3に示すように、複合単結晶薄膜の第1の薄膜層130と第2の薄膜層140との間に位置する領域Aは、第1の薄膜層130、第1の下位遷移層135aと第2の下位遷移層135bとを含む第3の遷移層135、第2の薄膜層140の、界面が明瞭な4層を含む。第1の下位遷移層135aは第1の薄膜層130に隣接し、第2の下位遷移層135bは第2の薄膜層140に隣接し、且つ、第1の下位遷移層135a上に配置される。第1の下位遷移層135a及び第2の下位遷移層135bの厚さは複合単結晶薄膜のアニーリング温度に関係がある。
【0063】
図4に示すように、複合単結晶薄膜の第1の薄膜層130と第2の薄膜層140との間の界面領域Aにおいて、第1の薄膜層130がニオブ酸リチウム単結晶薄膜であり且つ第2の薄膜層140がシリコン単結晶薄膜である場合は、Si元素は第2の薄膜層140に濃度最大値を有し、且つ、Si元素の濃度が第1の薄膜層130から第2の薄膜層140に行く方向に漸次上昇し、且つ、Si元素が第3の遷移層135の全体に遍在する。Nb元素及びO元素は第1の薄膜層130に濃度最大値を有し、Nb元素及びO元素の濃度が第2の薄膜層140から第1の薄膜層130に行く方向に漸次上昇し、且つ、Nb元素は第3の遷移層135の全体に遍在しない。さらに、第3の遷移層135に少量のAr元素が存在する。
【0064】
図5と
図7はそれぞれ
図2に示す領域Bと領域Cの拡大図である。
図6と
図8はそれぞれ
図2に示す領域Bと領域Cの元素分布図である。
【0065】
図5及び
図7に示すように、第1の隔離層120と第1の薄膜層130との間、基板110と第1の隔離層120との間にいずれも厚さが非常に薄く、界面が明瞭で且つ平坦な遷移層を有し、即ち第1の隔離層120と第1の薄膜層130との間の第2の遷移層125、基板110と第1の隔離層120との間の第1の遷移層115を有する。
【0066】
図6に示すように、第1の薄膜層130がニオブ酸リチウム単結晶薄膜であり且つ第1の隔離層120が二酸化ケイ素層である場合は、第1の隔離層120と第1の薄膜層130との間の第2の遷移層125において、Si元素は第1の隔離層120に濃度最大値を有し、且つ、Si元素の濃度が第1の隔離層120から第1の薄膜層130に行く方向に漸次低減する。Nb元素は第1の薄膜層130に濃度最大値を有し、且つ、Nb元素の濃度が第1の薄膜層130から第1の隔離層120に行く方向に漸次低減する。さらに、第2の遷移層125に比較的高い濃度のO元素及び少量のAr元素が存在する。
【0067】
図8に示すように、第1の隔離層120が二酸化ケイ素層であり且つ基板110がシリコン基板である場合は、第1の隔離層120と基板110との間の第1の遷移層115において、O元素は第1の隔離層120に濃度最大値を有し、且つ、O元素の濃度が第1の隔離層120から基板110に行く方向に漸次低減する。Si元素は基板110に濃度最大値を有し、且つ、Si元素の濃度が基板110から第1の隔離層120に行く方向に漸次低減する。さらに、第1の遷移層115に少量のAr元素が存在する。
【0068】
図9は、
図2に示す領域A及び領域Bの二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
【0069】
図9に示すように、第2の遷移層125及び第3の遷移層135は高い濃度のH元素を含み、H元素の濃度は1×10
20原子/cc~1×10
21原子/ccであり、第2の遷移層125におけるHの濃度は第1の隔離層120、第1の薄膜層130におけるHの濃度のそれぞれより高くてもよく、第3の遷移層135におけるHの濃度は第1の薄膜層130、第2の薄膜層140におけるHの濃度のそれぞれより高くてもよい。高い濃度のH元素は結合界面の結合力を高めることができる。
【0070】
本発明は複合単結晶薄膜を提供する。当該複合単結晶薄膜はニオブ酸リチウム単結晶薄膜又はタンタル酸リチウム単結晶薄膜の優れた光学性能とシリコン材料の優れた電気的性能を組み合わせることで、複合単結晶薄膜の性能を向上させることができる。さらに、当該複合単結晶薄膜は表面が比較的平坦な遷移層を有するため単結晶薄膜間の応力を分散させ信号の伝送過程における散乱を軽減することができ、これによって単結晶薄膜の欠陥を減少し単結晶薄膜の品質を高め、伝送損失を低減する効果がある。
【0071】
本明細書で例示的な実施例を用いて本発明を具体的に説明しているが、当業者にとって自明なように、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される本発明の主旨と範囲から逸脱しなければ、実施形態と発明の詳細な事項に様々な変更をすることができる。上記の実施例は説明目的のものであり本発明を限定するためのものではない。よって、本発明の範囲は本発明の具体的な実施形態により限定されるのではなく、特許請求の範囲で限定される。当該範囲に該当する差異を含む内容も、そのすべてが本発明に含まれるように解釈される。