(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】内臓の動きを検出するためのレーダーシステムの小型のアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/58 20060101AFI20220816BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220816BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01S13/58
A61B5/11 110
A61B5/113
(21)【出願番号】P 2020551471
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2019034497
(87)【国際公開番号】W WO2020076371
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-10-08
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ガーレマーニ,アフマッドレザ
(72)【発明者】
【氏名】ハミル,ジェームス ジェイ.
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0218459(US,A1)
【文献】特表2013-538602(JP,A)
【文献】特表2013-538598(JP,A)
【文献】特表2009-528859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276849(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292559(US,A1)
【文献】特開2015-231515(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115220(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0150906(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008019862(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
A61B 5/055
6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用スキャナ内の患者の内臓の変位を検出するための小型のレーダーシステムであって、
前記患者の下方に配置されている少なくとも1つの送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナとを含み、前記受信アンテナが、前記内臓の非対称的な変位の検出を可能にするために、前記送信アンテナと患者参照位置の間で前記患者参照位置から予め定められた距離に配置されており、また、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを活性化させるレーダー活性化システムを含み、前記送信アンテナが前記送信アンテナと前記患者参照位置の間に位置する前記内臓の領域を照射し、前記患者の下方かつ前記送信アンテナと前記患者参照位置の間で前記患者参照位置から予め定められた距離に配置された前記受信アンテナが、前記患者による吸気及び呼気の判定を可能にするために、前記内臓の前記非対称的な変位を検出
し、
前記予め定められた距離は、複数の患者に関する前記患者参照位置と横隔膜の先端部との間の距離の測定に基づいて、統計的に決定され、
心信号が前記患者の呼気信号と同時に検知され、検知された前記心信号は、前記横隔膜の前記先端部に対する前記受信アンテナの配置を最適化するために使用される、
レーダーシステム。
【請求項2】
前記内臓が
前記横隔膜であり、また、前記非対称的な変位が前記横隔膜の先端部にて生じる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記患者参照位置が前記患者の外耳道である、
請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項4】
小型の低利得アンテナを提供するために、各アンテナのための基板が比較的高い誘電率を有している、
請求項1から
3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記患者の下に配置されたマット内に配置されている、
請求項1から
4の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
医用スキャナ内の患者の内臓の変位を検出するための小型のレーダーシステムであって、
前記患者を支えるベッド装置に配置されている少なくとも1つの送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナとを含み、前記受信アンテナが、非対称的な変位を受けている前記内臓の領域から反射される電磁エネルギーを検出できるように、前記送信アンテナと患者参照位置の間で前記患者参照位置から予め定められた距離に配置されており、また、
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを活性化させるレーダー活性化システムを含み、前記送信アンテナが前記送信アンテナと前記患者参照位置の間に位置する前記内臓の領域を照射し、前記患者の下方かつ前記送信アンテナと前記患者参照位置の間で前記患者参照位置から予め定められた距離に配置された前記受信アンテナが、前記患者による吸気及び呼気の判定を可能にするために、前記非対称的な変位を受けている前記内臓の前記領域から反射される前記電磁エネルギーを検出
し、
前記予め定められた距離は、複数の患者に関する前記患者参照位置と横隔膜の先端部との間の距離の測定に基づいて、統計的に決定され、
心信号が前記患者の呼気信号と同時に検知され、検知された前記心信号は、前記横隔膜の前記先端部に対する前記受信アンテナの配置を最適化するために使用される、
レーダーシステム。
【請求項7】
前記内臓が横隔膜であり、また、前記非対称的な変位が前記横隔膜の先端部にて生じる、
請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者参照位置が前記患者の外耳道である
、
請求項
6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
小型の低利得アンテナを提供するために、各アンテナのための基板が比較的高い誘電率を有している
、
請求項
6から
8の何れか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ベッド装置が、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを含むマット、を含んでいる
、
請求項
6から
9の何れか1項に記載のシステム。
【請求項11】
医用スキャナ内の患者の内臓の変位を検出するためのレーダーシステム内で受信アンテナを位置決めするための方法であって、
患者参照位置と、送信アンテナと前記患者参照位置の間に位置し非対称的に運動する前記内臓の領域との間の距離を測定し、その際、
前記内臓が横隔膜であり、前記非対称的な変位が前記横隔膜の先端部で生じ、前記距離は複数の測定された距離を提供するために複数の患者に関して測定されること、
算出された距離を決定するために、測定された複数の距離に対する統計的尺度を算出すること
、
患者ベッド内の受信アンテナを位置決めし、その際、前記受信アンテナが前記患者の下方かつ前記送信アンテナと前記患者参照位置の間に配置されており、前記患者参照位置から前記算出された距離だけ離されていること、
及び、
前記患者の呼吸信号と同時に心信号を検出し、その際、検出された前記心信号は前記横隔膜の前記先端部に関連して前記受信アンテナを最適に配置するために用いられること、
を含む、方法。
【請求項12】
前記患者参照位置が前記患者の外耳道である、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
更に、前記患者と前記患者ベッドとの間で前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを含んでいるマットを位置調整することを含む、
請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項14】
小型の低利得アンテナを提供するために、各アンテナのための基板が比較的高い誘電率を有している、
請求項
11から
13の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容が参照により組み込まれる2018年10月8日に出願された米国出願第16/154,002に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明の様態は、医用スキャナ内に位置する患者の内臓の変位を検出するための小型のレーダーシステムに関するものであり、より詳細には、医用スキャナ内の患者の内臓の変位を検出するための小型のレーダーシステムであって、少なくとも1つの送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナとを含み、受信アンテナが、内臓の非対称的な変位の検出を可能にするために、患者参照位置から予め定められた距離に配置されている、レーダーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポジトロン断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射断層撮影(SPECT)などの医用画像技術は、患者の身体の内部の複数の画像を獲得するために使用される。その種のイメージング技術を利用した診断スキャン中には、患者の呼吸運動が、望まれない画像アーチファクト、又は、患者の呼吸中に生じる内臓運動による2つのモダリティの誤調整、を引き起こす可能性がある。
【0004】
これらの欠点を克服するために、従来のイメージングシステムは、呼吸波形を得るために、呼吸に関連付けられたゲート技術を利用する。次に、画像データの運動補正を提供するために、波形は、呼吸を時間と相関させるために用いられる。通常この種のシステムは、トレーニングを受けたオペレーターによって患者に接して配置された装置及びセンサーを含んでいる。例えば、呼吸中の胸部の上昇を測定するために、ひずみゲージ又は光学式トラッカーを患者に取り付けてもよい。しかし、このようなシステムの動作と正確性は、システムのセットアップとオペレーターのトレーニングに依存している。例えば、いくつかのタイプのシステムに使用される圧力センサーは、使用前にトレーニングを受けたオペレーターによる調整を必要とする。更に、圧力センサーは、スキャン中に外れるかもしれず、また、精度を維持するために、オペレーターによる再位置決めを必要とするかもしれない。スキン位置の光学的検出を利用する別のタイプのシステムでは、ターゲットとセンサーとの間の見通し線が必要とされ、これは、ブランケットや患者の曲げた膝等によって隠される可能性がある。更に、システムはかなりのセットアップ時間を必要とし、ユーザフレンドリではない。
【0005】
代替的に、内臓の運動を検出するためにドップラーレーダーシステムが用いられてもよい。このようなシステムは、電磁スペクトルの極超短波(UHF)帯域幅内で動作し、患者の身体の比較的大きな体積を照射する電磁(EM)放射線を放射するパッチアンテナを含む。これは、人体内の様々な組織からのEM放射の望まれない複数の反射を生み出し、これらは呼吸の検出に対して関与しない。更に、EM放射は、イメージングシステムのCTガントリー表面、壁、又はその他の表面などの、患者の身体の外側に位置する表面から、反射する場合がある。関心のない臓器や身体の外部の表面からの反射は、反射レーダー信号内の望まれないノイズと、比較的低い信号対雑音比(SNR)をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
小型のレーダーシステムが、医用スキャナ内で患者の内臓の変位を検出するために開示される。当該システムは、患者を支えるベッド装置に配置された少なくとも1つの受信アンテナ、及び、少なくとも1つの送信アンテナ、を含んでいる。特に、受信アンテナは、非対称的な変位を受けている内臓の領域から反射された電磁エネルギーの検出を可能にために、患者参照位置から予め定められた距離に配置されている。当該システムは更に、送信アンテナ及び受信アンテナを作動させるレーダー活性化システムを含み、その際、送信アンテナは、内臓を含む患者の身体の体積を照射する。更に、受信アンテナは、患者による吸気及び呼気の測定を可能にするために、非対称的な変位を受けている内臓の領域からの反射される電磁エネルギーを検出する。
【0007】
当業者は、本発明のそれぞれの特徴を、任意の組合せ又は部分的組合せで、共に又は別々に適用してもよい。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、以下の詳細な説明において、添付の図面と併せてさらに説明される。
【0009】
理解を容易にするために、可能である場合、図面に共通する同一の要素を示すために、同一の参照番号が用いられている。使用して示してある。図面は寸法通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の態様に従う低利得パッチアンテナを示す。
【
図2】患者ベッド内部に位置する送信アンテナ及び受信アンテナを示しており、受信アンテナは患者の外耳道からの距離Dに位置している。
【
図3】
図3は、心信号部分及び心信号と呼吸信号が組み合わされた部分を含む反射されたレーダー信号を表す上部チャート、及び、それぞれがレーダー信号に対応するI信号及びQ信号を表す下部チャート、を含んでいる。
【
図4】本発明に従うレーダーシステムの簡略化されたブロック図を示す。
【
図5】本レーダーシステムを含むコンピュータ断層撮影(CT)システムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の教示を具体化する様々な実施形態がここで詳細に示され又説明されているが、当業者は、依然としてこれらの教示を具体化する多くの他の様々な実施形態を容易に考案することができる。開示の範囲は、構成の例示的な実施形態へのその適用に限定されるものではなく、また、構成要素の配置は明細書内で明らかにされている又は図面内で図解されている。開示は、他の実施形態を含み、様々な方法で実施又は実行されることを含む。また、ここで使用される語句及び用語は説明を目的とするものであり、制限とみなされるべきではないことを理解されたい。本明細書での「含んでいる」、「備えている」、又は「有している」、及びそれらの変型の使用には、それ以降に列挙されている物品、及び、同等の物や追加の物品を含むことを意味している。明記又は限定されていない限り、「取り付けられている」、「接続されている」、「支持されている」及び「連結されている」という用語やそれらの変型は、広義に使用されており、直接的及び間接的な取り付け、接続、支持及び連結を包含する。更に、「接続」及び「連結」は、物理的又は機械的な接続又は連結に限定されるものではない。
【0012】
Ahmadreza Ghahremani及びJames J. Hamillによる2018年5月7日出願の米国特許出願第15/972,445「UHF PHASED ARRAY RADAR FOR INTERNAL ORGAN DETECTION IN A MEDICALSCANNER」の開示、及び、米国特許公報第2015/0005673A1の開示は、それらのすべてに関して参照によって本願に組み込まれている。
【0013】
ポジトロン断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射断層撮影(SPECT)などの医用画像技術は、患者の身体の内部の複数の画像を獲得するために使用される。その種のイメージング技術を利用した診断スキャン中には、患者の呼吸運動が、望まれない画像アーチファクト、又は、患者の呼吸中に起こる内臓の動きによる2つのモダリティの誤調整、を引き起こす可能性がある。この欠点を克服するためには、画像データの動き補正を提供するために、患者の吸気及び呼気(呼吸)を呼吸信号での時間と相関させることが重要である。
【0014】
図1を参照すると、本発明の態様に従うパッチアンテナ10が示されている。アンテナ10は、患者の内臓の動きを検出するために使用されるドップラーレーダーシステムで使用するために構成されており、当該システムは、電磁スペクトルの極超短波(UHF)帯域幅(超高周波帯域幅)で動作する。アンテナ10は、送信アンテナ又は受信アンテナのいずれかとして使用することができ、伝送線14を有する活性層12を含む。一実施形態では、活性層12は、銅のような金属から製造することができる。活性層12は、誘電的特性を有する材料から製造された基板16上に配置されている。本発明の一態様に従い、基板16に対する誘電率は、小型の低利得アンテナを形成するためにアンテナ10のサイズを減少させまたアンテナ利得(antenna gain:アンテナ利得、アンテナゲイン)を減少させるように、十分に増加される。アンテナ利得を減らすと、患者の身体の、送信アンテナから放射される電磁(EМ)放射線によって照射を受ける体積は減少し、それによって、呼吸検出のために関心のない身体内の様々な臓器から受信アンテナによって受信されるEМ放射線の望まれない反射が減少する。アンテナ利得の減少は同様に、患者の身体の外側にある表面からのEМ放射線の望まれない反射を減少させる。その結果、反射されたレーダー信号における望まれないノイズが低減され、アンテナ10に対する信号対ノイズ比(SNR)が十分に改善される。一実施形態によると、基板16は約40の誘電率を有し、また、アンテナ10は、約2.0cm×4.2cmの全体サイズを有する単一の長方形パッチアンテナとして構成される。
【0015】
図2を参照すると、送信アンテナ18及び受信アンテナ20は、患者ベッド22内に統合されていてもよい。代替として、アンテナ18、20は、ベッド22の表面24上に配置されていてもよい。別の実施形態では、アンテナ18、20は、患者28とベッド22との間の表面24上に配置された柔軟なマット26内又はその表面上に配置されていてもよい(
図5参照)。代替として、柔軟なマット26は患者28の上部に配置されていてもよい。本発明の一態様では、アンテナ18、20は、患者28の縦軸32に実質的に平行なアンテナ軸30に沿って配置されており(すなわち、患者28の軸32は患者28の下半身と上半身の間の方向に伸びている)、患者の身体36内での横隔膜34の非対称な動きを検出するのに適している。代替として、アンテナ18、20は、縦軸32に対して実質的に横断方向の軸上に配置されていてもよい。別の実施形態では、アンテナ18、20は、互いに関してオフセットされている。さらに、送信アンテナ18及び受信アンテナ20のアレイが用いられていてもよい。例えば、送信アンテナ18は、アレイ内で受信アンテナ20とは別個にグループ化されていてもよい。代替として、送信アンテナ18及び受信アンテナ20は、アレイ内で対になって配置されていてもよい。前述したように、本発明のアンテナ18、20はサイズが小さくなっており、したがって、アンテナ18、20を互いに比較的近くに配置することが可能になる。
【0016】
送信アンテナ18は、横隔膜34が送信アンテナ18から放射されるEM放射線によって照射されるように、配置されている。一実施形態では、送信アンテナ18が、患者28のほぼ中央部25付近に、配置されていてもよい。横隔膜34に近接しているため、患者の心臓38もまた照射を受ける。横隔膜34及び心臓38は、構造的により高密度であり、近隣の臓器よりもより大きな誘電率を有する。従って、横隔膜34及び心臓38からのEM放射線の反射は、肺のような比較的低い誘電率を有する他の臓器からの反射よりも強い。このことは、横隔膜及び心臓の動きの検出を容易にする。
【0017】
横隔膜34の動き又は変位は、患者の呼吸を示している。さらに、対称的な運動下にある対象は、周期的なレーダー信号を発生する反射されたEM放射線を生じる。周期的信号の選択された部分が、患者28による吸気に対応するものであるか又は呼気に対応するものであるかを決定することは困難である。本発明の一態様に従えば、受信アンテナ20はベッド22上で、横隔膜34に対して、非対称的な運動下にある横隔膜34の一部から反射されるEM放射線の検出を可能にするように、配置されている。その後、患者による吸気及び呼気は、受信アンテナによって検出された反射されたEM放射線から容易に決定することができる。一実施形態に従い、非対称の運動は、横隔膜34の上部領域(すなわち、横隔膜34の先端部40)で生じ、その際横隔膜34は3次元空間において非対称に拡張及び伸縮する。従って、横隔膜の先端部40から反射されたEM放射線を検出することにより、患者の吸気と呼気を判定することが可能になる。非対称運動を受ける横隔膜34のその他の領域を使用してもよいことが理解される。
【0018】
横隔膜34の非対称な動きを検出するために適した受信アンテナ20(すなわち、低利得受信アンテナ20)のためのベッド22上での位置を決定するため、研究が行われた。本研究では、複数の成人患者について得られたトポグラム画像において、患者の耳44の外耳道42(すなわち、患者参照位置)と横隔膜先端部40との間の距離D、が測定された。研究の結果、外耳道42と横隔膜先端部40の間の平均距離は(成人患者の場合)約31.7cmであると判断された。本発明の一態様に従い、横隔膜34の非対称的な運動を検出するのに適したベッド22上での受信アンテナ20の位置は、外耳道42から約31.7cmである。受信アンテナ20を配置するために、その他の統計的評価を使用してもよいことが理解される。更に、外耳道42以外の又はそれに追加した患者の身体的特徴を、患者参照位置として使用することもできる。
【0019】
横隔膜先端部40に対する受信アンテナ20の配置を最適化するために、追加のアプローチが用いられてもよく、その場合患者の呼吸信号を測定している間に、心信号(cardiac signal:心信号、心拍信号、心臓信号)も検出される。心臓38及び横隔膜先端部40は、人体内で互いに比較的近い位置に配置されていることが知られている。従って、受信アンテナ20の配置は、検出された心信号に基づいて調整されてもよい。
【0020】
テスト結果
患者の体内の臓器から反射されたレーダー信号を検出するために、研究が行われた。試験セットアップの一部として、本発明の低利得アンテナ18、20は、前述のように、ドップラーレーダーシステムで使用するように構成された。受信アンテナ20は、ベッド上で、患者の外耳道42から約31.7cm離れて配置され、また従って、横隔膜34の非対称的な運動を検出するように配置された。更に、送信アンテナ18は直線偏波アンテナとして構成されており、また、受信アンテナ20は円偏波アンテナとして構成されているが、SN比を向上させるために両アンテナ18、20が円偏波アンテナとして構成されていてもよいことが理解される。試験中に検出された反射レーダー信号46の第1のチャート(グラフ)44が、
図3の上部に示されている。試験の一部の間、患者は、検出されるレーダー信号46に対する呼吸の影響を除くために又は十分に減少させるために、自身の呼吸を止める。試験のうち患者が自身の呼吸を止めた部分は、第1のチャート44の円で囲まれた第1の領域48に示されている。第1の領域48は、レーダー信号46の残りの部分(すなわち、第2の領域50及び第3の領域52)よりも小さな変位を示している。従って、第1の領域48は心信号を表していること、及び、第2の
領域50と第3の
領域52の両方の領域は心信号と検出された呼吸信号の両方の効果を含むこと、が推測できる。加えて、第1の領域48における信号の周波数は、既知の心信号周波数と実質的に類似しており、従って更に、第1の領域48が心信号を表すことを示している。受信アンテナ20は、非対称的な横隔膜の動きを検出するように配置されているので、第2の領域50及び第3の領域52の極大値54及び極小値56は、それぞれ、患者の吸気及び呼気を表している。
図3に示す呼吸信号に関する試験結果は、従来の呼吸に関連付けられたゲート技術を利用した第1の試験と、本願の発明者であるAhmadreza Ghahremani及びJames J. Hamillによる2018年5月7日出願の
米国特許出願第15/972,445「UHF PHASED ARRAY RADAR FOR INTERNAL ORGAN DETECTION IN A MEDICALSCANNER」に記載されているフェーズドアレイレーダーシステム(phased array radar system)を利用した第2の試験によって裏付けられた。また、
図3の下部も、それぞれレーダー信号46に対応するI信号及びQ信号の第2のチャート45及び第3のチャート55を示している。
【0021】
図4を参照すると、本発明に従うレーダーシステム58の簡略化されたブロック図が示されている。システム58は、発振器60と、電力増幅器(power amplifier:電力増幅器、パワーアンプ)62と、第1のI/Qミキサー64と、第2のI/Qミキサー66とを含む。電力増幅器62による増幅の後、信号は、送信アンテナ18から、患者28の横隔膜先端部40のような対象68に向かって放出される。対象68から反射された電波はその後、受信アンテナ20によって受信される。その結果得られる信号は、第1のI/Qミキサー64及び第2のI/Qミキサー66を用いて、送信された信号と混合される。2つの信号は同じ周波数を持つため、混合の結果は信号間の位相差になる。出力信号の大きさは、受信信号の大きさからミキサーの変換損失を引いたものである。システム58は、I(t)及びQ(t)として示される2つの出力チャネルを有し、それらの信号は、以下に対応する:
【数1】
【数2】
ここで、I(t)は基準信号であり、Q(t)は90度シフトした信号であり、V
i、V
q、φ
0は一定のオフセットを示しており、当該一定のオフセットは、アンテナクロストーク又は第1のI/Qミキサー64及び第2のI/Qミキサー66の非線形的な挙動のような寄生効果によって引き起こされるものである。Aは信号の振幅を示しており、また、φ(t)は送信された信号と受信された信号の間の位相シフトである。位相シフトφ(t)は、送信アンテナから対象68上の反射点へ向かいそして受信アンテナ20へ戻るまでの距離d(t)に比例する。受信ユニットは、第1のチャネル70及び第2のチャネル72を有しており、一方のチャネルが所謂ヌルポイント(null point)にある場合にも依然として動きを測定することが可能であるようにシステム58内で用いられる。これは、対象68とアンテナ18、20との間の平均距離が、π/2の偶数倍に近い位相シフトを生じさせる場合に起こり、その際、d(t)の小さな変化は、I(t)=V
i=一定に従う。この状況を克服するために、第2のチャネル72の第2のミキサー66は、π/2の位相シフトを含む入力信号を発振器60から受け取り、その結果、その出力は、数2で定められているように、正弦関数である。従って、一方のチャネルがヌルポイントにある場合、他方のチャネルは最適ポイントにある。
【0022】
本発明は、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、PET/CTシステム又は放射線治療システムのようないかなる種類の医用スキャニングシステム又は医用イメージングシステムと共に用いられてもよい。説明のために、本発明は、
図5に示すように、CTシステム74と共に説明される。CTシステム74は、X線源76及びX線検出器78を有する記録ユニットを含んでいる。記録ユニットは、断層画像の記録中に縦軸80の周りで回転し、また、X線源76は螺旋状に撮影する間、X線82を放出する。画像が記録されている間、患者28はベッド22に横たわる。ベッド22はテーブルベース84に、それが患者28を支持するベッド22を支えるように、接続されている。ベッド22は、CTシステム74のCTガントリー88の開口部86を通って、撮影方向に沿って患者28を移動させるように設計されている。前述したように、本発明に従うレーダーシステム58の送信アンテナ18及び受信アンテナ20は、ベッド22内に統合されていてもよい。代替的に、アンテナ18、20は、ベッド22の表面24上に配置されていてもよい。別の実施形態では、アンテナ18、20は、患者28とベッド22との間の表面24上に配置された柔軟なマット26内又はその表面に配置されていてもよい。代替的に、柔軟なマット26は患者28の上部に配置されていてもよい。
【0023】
テーブルベース84は、データを交換するためのコンピュータ92に接続された制御ユニット90を含んでいる。制御ユニット90は、システム58(
図4)及び送信アンテナ18及び受信アンテナ20を作動させることができる。ここに示される例では、医療診断ユニット又は治療ユニットは、コンピュータ92上で実行可能な保存されたコンピュータープログラムの形態の測定ユニット94により、CTシステム74の形態で設計されている。コンピュータ92は、出力ユニット96及び入力ユニット98に接続されている。出力ユニット96は、例えば、1つ(又は複数)のLCDスクリーン、プラズマスクリーン又はOLEDスクリーンである。出力ユニット96上の出力100は、例えば、CTシステム74の個々のユニット及び制御ユニット90を作動させるためのグラフィカルユーザインタフェースを含む。更に、記録されたデータの異なる表示を出力ユニット96に表すことができる。入力ユニット98は、例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン又は音声入力用のマイクである。
【0024】
本開示の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正が行われ得ることは、当業者にとって自明である。従って、添付の特許請求の範囲において本開示の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を網羅することが意図されている。
【符号の説明】
【0025】
18…送信アンテナ、20…受信アンテナ、22…ベッド、26…マット、28…患者、34…横隔膜、40…横隔膜先端部、D…距離