(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】衣料害虫忌避組成物、並びに、当該組成物を用いた衣料消臭方法及び衣料害虫忌避消臭方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20220816BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20220816BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220816BHJP
A01N 25/32 20060101ALI20220816BHJP
A01N 37/46 20060101ALI20220816BHJP
A01N 47/16 20060101ALI20220816BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20220816BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01M29/12
A01N25/02
A01N25/32
A01N37/46
A01N47/16 A
A01P17/00
D06M13/00
(21)【出願番号】P 2020556016
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042762
(87)【国際公開番号】W WO2020095808
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2018209142
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-95572(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168739(JP,U)
【文献】特許第5571265(JP,B2)
【文献】特開平11-209207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00
A01M 29/12
A01N 25/02
A01N 25/32
A01N 37/46
A01N 47/16
A01P 17/00
D06M 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物であって、
前記香料成分は、衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を有
する、
シス-3-ヘキセノール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、テトラヒドロゲラニオール、テルピネオール、フェニルエチルアルコール、ヘリオナール、リリアール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、シス-3-ヘキセニルサリチレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ラズベリーケトン、ガラクソリド、エチレンブラシレート、及びシクロペンタデカノリドからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記害虫忌避成分は、前記香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有する
、3-(N-ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一つである衣料害虫忌避組成物。
【請求項2】
前記香料成分の含有量が0.1~1.0w/v%である
請求項1に記載の衣料害虫忌避組成物。
【請求項3】
前記香料成分(a)と前記害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)が、重量比として、0.1~1.5である
請求項1又は2に記載の衣料害虫忌避組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の衣料害虫忌避組成物を用いた衣料消臭方法であって、
前記衣料害虫忌避組成物を衣料に噴霧処理する衣料消臭方法。
【請求項5】
衣料に対して害虫忌避処理と消臭処理とを同時に行う衣料害虫忌避消臭方法であって、
処理対象の衣料に害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、
前記衣料において十分な害虫忌避効果及び消臭効果が持続するように、前記衣料に対して前記衣料害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程と、
を包含
し、
前記香料成分は、衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を有する、シス-3-ヘキセノール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、テトラヒドロゲラニオール、テルピネオール、フェニルエチルアルコール、ヘリオナール、リリアール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、シス-3-ヘキセニルサリチレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ラズベリーケトン、ガラクソリド、エチレンブラシレート、及びシクロペンタデカノリドからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記害虫忌避成分は、前記香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有する、3-(N-ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一つである衣料害虫忌避消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物、及び当該組成物を用いた衣料消臭方法に関する。さらに、本発明は、衣料に対して害虫忌避処理と消臭処理とを同時に行う衣料害虫忌避消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料害虫から繊維製品を保護するため、様々な衣料害虫防除製品が開発され、実用化されている。例えば、常温揮散性を有するピレスロイド系防虫成分に代えて、香料成分を有効成分とする衣料害虫防除製品が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の衣料害虫防除製品は、酢酸エステル化合物、アリルエステル化合物等の香料成分を吸水性ポリマーに保持させたものであり、長期に亘って有効成分の揮散性を維持することで、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の収納空間で衣料害虫の幼虫を致死させ、優れた摂食阻害効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衣類は、着用中に汗臭、加齢臭、タバコ臭等の生活臭が付着することがある。そのため、衣類の管理では、衣料害虫の防除に加えて、衣類に付着する悪臭を消臭することが望まれる。また、外衣等は、連日使用することが多いため、前日に衣類に付着した生活臭が、翌日着用した際に不快感をもたらす虞があり、外出中に悪臭を持続的に消臭できることが望まれる。
【0006】
特許文献1の衣料害虫防除製品は、香料成分を有効成分としていることで消臭機能が期待されるが、衣料害虫に対する防虫機能を主眼として香料成分となる化合物が選択されており、衣類特有の悪臭に対する消臭機能については、検討の余地がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、防虫機能を果たすとともに衣類に付着する悪臭を持続的に消臭可能な衣料害虫忌避組成物、及び当該組成物を用いた衣料消臭方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、一回の処理で衣料に害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与可能な衣料害虫忌避消臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る衣料害虫忌避組成物の特徴構成は、
害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物であって、
前記香料成分は、衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を有し、
前記害虫忌避成分は、前記香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有することにある。
【0009】
本構成の衣料害虫忌避組成物は、本発明者らが、様々な衣料害虫忌避組成物を調製して種々試験を繰り返す中で、特定の害虫忌避成分が香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有することを新たに見出したことにより、完成するに至ったものである。本構成の衣料害虫忌避組成物によれば、香料成分が衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を有し、害虫忌避成分が香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有することにより、害虫忌避成分が衣料害虫に対する防虫機能を果たすととともに、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させて衣類に付着する悪臭を持続的に消臭することができる。そのため、本発明の衣料害虫忌避組成物を外出前に衣類に処理しておくことで、外出中に香料成分による消臭機能が持続し、衣類に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
【0010】
本発明に係る衣料害虫忌避組成物において、
前記害虫忌避成分は、3-(N-ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、イカリジン、及びN,N-ジエチルトルアミドからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記香料成分は、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6~18であり、分子量が98~270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物であることが好ましい。
【0011】
本構成の衣料害虫忌避組成物によれば、上記の特定の害虫忌避成分と香料成分とを組み合わせることによって、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。
【0012】
本発明に係る衣料害虫忌避組成物において、
前記香料成分は、シス-3-ヘキセノール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、リナロール 、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、テルピネオール、フェニルエチルアルコール、ヘリオナール、リリアール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、シス-3-ヘキセニルサリチレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ラズベリーケトン、ガラクソリド、エチレンブラシレート、及びシクロペンタデカノリドからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0013】
本構成の衣料害虫忌避組成物によれば、上記の香料成分を含有することにより、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が大きくなり、消臭機能の持続性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る衣料害虫忌避組成物において、
前記香料成分の含有量が0.1~1.0w/v%であることが好ましい。
【0015】
本構成の衣料害虫忌避組成物によれば、香料成分の含有量が適切な範囲にあるため、衣類に付着する悪臭を芳香によってマスクして、十分な消臭性を得ることができる。
【0016】
本発明に係る衣料害虫忌避組成物において、
前記香料成分(a)と前記害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)が、重量比として、0.1~1.5であることが好ましい。
【0017】
本構成の衣料害虫忌避組成物によれば、配合比が適切な範囲にあるため、害虫忌避成分による衣料害虫に対する防虫機能を十分に発揮しつつ、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果を十分に発揮することができ、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係る衣料消臭方法の特徴構成は、
前記の何れか一つに記載の衣料害虫忌避組成物を用いた衣料消臭方法であって、
前記衣料害虫忌避組成物を衣料に噴霧処理することにある。
【0019】
本構成の衣料消臭方法によれば、前記の何れか一つに記載の衣料害虫忌避組成物を衣料に噴霧処理することで、害虫忌避成分による防虫機能が得られるととともに、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続する。そのため、本発明の衣料消臭方法を外出前に実施することで、外出中に香料成分による消臭機能が持続し、衣類に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る衣料害虫忌避消臭方法の特徴構成は、
衣料に対して害虫忌避処理と消臭処理とを同時に行う衣料害虫忌避消臭方法であって、
処理対象の衣料に害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、
前記衣料において十分な害虫忌避効果及び消臭効果が持続するように、前記衣料に対して前記衣料害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成の衣料害虫忌避消臭方法によれば、処理対象の衣料に害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物を噴霧し、さらに、衣料において十分な害虫忌避効果及び消臭効果が持続するように、当該衣料に対して衣料害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更することで、一回の処理で衣料に害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与することができる。そして、本発明の衣料害虫忌避消臭方法によって処理された衣料は、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続するため、例えば、一日中外出するような場合であっても、不快な害虫が寄り付かず、かつ臭いも気にならずに長時間快適に活動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の衣料害虫忌避組成物、及び衣料消臭方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0023】
<衣料害虫忌避組成物>
本発明の衣料害虫忌避組成物は、衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を有する香料成分と、害虫忌避効果に加えて香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有する害虫忌避成分とを含有する。
【0024】
本発明の衣料害虫忌避組成物の主成分の一つである害虫忌避成分としては、3-(N-ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル(以下、「IR3535」と表記する)、イカリジン、及びN,N-ジエチルトルアミド(以下、「ディート」と表記する)が使用される。これらは、単独で使用可能であるが、二種以上の混合物の形態で使用しても構わない。IR3535、イカリジン、及びディートは、揮散性を有し、衣料害虫、特にイガ、又はコイガの成虫に対して高い忌避効果を有する。このように、IR3535、イカリジン、及びディートは、従来は害虫忌避剤として使用されていたが、本発明者らが、IR3535、イカリジン、及びディートを使用して様々な衣料害虫忌避組成物を調製する中で、IR3535、イカリジン、及びディートが、後述する特定の香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有することを新たに見出した。本発明の衣料害虫忌避組成物は、噴霧処理等により衣類へ付着させることで、使用中の衣類から害虫忌避成分を揮散させて衣料害虫の接近又は接触を防止し、着衣における衣料害虫の産卵を予防しつつ、使用中の衣類に付着した悪臭の消臭を長期に亘って持続させることができる。ここで「使用中」とは、衣類を収納空間から取り出してから、再び収納空間に収納するまでの状態を意味し、着用されている状態のみならず、着用前後に収納空間外で静置されている状態をも含む。着用中の衣類では、使用者の体温によって害虫忌避成分の揮散が促進されるため、衣料害虫の接近又は接触をより効果的に防止することができる。また、野外等では温度調節のために衣類を脱ぐような場面もあるが、IR3535、イカリジン、及びディートが揮散性を有することから、使用中に脱いで野外等で静置された衣類においても、衣料害虫の接近又は接触を十分に防止することができる。また、IR3535、及びイカリジンは、繊維製品に対してシミや変色等の影響を生じにくく、さらに、ほとんど無臭であり、人体に対する安全性が高い。そのため、本発明の衣料害虫忌避組成物は、衣類へのダメージや、害虫忌避成分の臭いを気にすることなく、着衣に使用することができる。衣料害虫忌避組成物中の害虫忌避成分の含有量は、0.4~10.0w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、衣料害虫忌避組成物を噴霧処理等により衣類に付着させることで、衣料害虫に対する忌避効果を発揮しつつ、後述する特定の香料成分との相乗効果を奏して、消臭機能の持続性を向上することができる。害虫忌避成分の含有量が0.4w/v%未満である場合、衣料害虫に対する忌避効果や、香料成分との相乗効果による消臭機能の持続性が不十分となる虞がある。害虫忌避成分の含有量が10.0w/v%を超える場合、実用上必要な忌避効果が得られる量を超えて害虫忌避成分を配合することになり、経済的に不利である。
【0025】
本発明の衣料害虫忌避組成物の主成分の一つである香料成分としては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6~18であり、分子量が98~270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物が使用される。このような化合物は、衣類に付着した悪臭(汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭)を芳香によってマスクする優れた消臭機能を有するとともに、本発明において害虫忌避成分として使用されるIR3535、イカリジン、及びディートとの相乗効果により、その消臭機能を長時間に亘って持続させることができる。このような化合物としては、下記式(1):
【0026】
【化1】
で示されるシス-3-ヘキセノール(以下、「化合物A」と称する。)、下記式(2):
【0027】
【化2】
で示されるジヒドロミルセノール(以下、「化合物B」と称する。)、下記式(3):
【0028】
【化3】
で示されるエチルリナロール(以下、「化合物C」と称する。)、下記式(4):
【0029】
【化4】
で示されるリナロール(以下、「化合物D」と称する。)、下記式(5):
【0030】
【化5】
で示されるゲラニオール(以下、「化合物E」と称する。)、下記式(6):
【0031】
【化6】
で示されるテトラヒドロゲラニオール(以下、「化合物F」と称する。)、下記式(7):
【0032】
【化7】
で示されるテルピネオール(以下、「化合物G」と称する。)、下記式(8):
【0033】
【化8】
で示されるフェニルエチルアルコール(以下、「化合物H」と称する。)、下記式(9):
【0034】
【化9】
で示されるヘリオナール(以下、「化合物I」と称する。)、下記式(10):
【0035】
【化10】
で示されるリリアール(以下、「化合物J」と称する。)、下記式(11):
【0036】
【化11】
で示される安息香酸ベンジル(以下、「化合物K」と称する。)、下記式(12):
【0037】
【化12】
で示されるサリチル酸ベンジル(以下、「化合物L」と称する。)、下記式(13):
【0038】
【化13】
で示されるシス-3-ヘキセニルサリチレート(以下、「化合物M」と称する。)、下記式(14):
【0039】
【化14】
で示されるジヒドロジャスモン酸メチル(以下、「化合物N」と称する。)、下記式(15):
【0040】
【化15】
で示されるリナリルアセテート(以下、「化合物O」と称する。)、下記式(16):
【0041】
【化16】
で示されるラズベリーケトン(以下、「化合物P」と称する。)、下記式(17):
【0042】
【化17】
で示されるガラクソリド(以下、「化合物Q」と称する。)、下記式(18):
【0043】
【化18】
で示されるエチレンブラシレート(以下、「化合物R」と称する。)、下記式(19):
【0044】
【化19】
で示されるシクロペンタデカノリド(以下、「化合物S」と称する。)等が挙げられる。
【0045】
上記の化合物A~Sは、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。香料成分の含有量は、0.1~1.0w/v%が好ましい。香料成分の含有量がこのような範囲であれば、衣類に付着する悪臭をマスクして、十分な消臭性を得ることができる。香料成分の含有量が0.1w/v%未満である場合、消臭性が不足する虞がある。香料成分の含有量が1.0w/v%を超える場合、香料成分の芳香が過剰となり、強い芳香を好まない消費者に不快感を与える虞があり、また、実用上必要な消臭性が得られる量を超えて香料成分を配合することになり、経済的にも不利である。
【0046】
本発明の衣料害虫忌避組成物において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.1~1.5に調整することが好ましい。配合比(a/b)がこのような範囲であれば、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が大きくなり、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続する。配合比(a/b)が0.1未満である場合、及び配合比(a/b)が1.5を超える場合、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果を十分に発揮することができない虞がある。
【0047】
本発明の衣料害虫忌避組成物は、上記成分に加え、害虫忌避成分の安定化剤、カビ類や菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、帯電防止剤、消泡剤等を適宜配合することもできる。例えば、害虫忌避成分としてIR3535を使用する場合、安定化剤としては、トリエタノールアミンを用いることができる。安定化剤としてトリエタノールアミンを含有することで、酸性条件下で分解し易いIR3535の安定性を向上させ、長期間に亘って衣料害虫忌避組成物を保存した場合にもIR3535の含有量が過度に減少することを防止することができる。衣料害虫忌避組成物中のトリエタノールアミンの含有量は、0.05~0.2w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、IR3535の安定性を十分に向上させることができるため、衣料害虫忌避組成物は、長期保存性に優れた使い勝手のよいものとなる。トリエタノールアミンの含有量が0.05w/v%未満である場合、及びトリエタノールアミンの含有量が0.2w/v%を超える場合、IR3535の安定性を十分に向上することができない虞がある。安定化剤として、トリエタノールアミンに加えてメントールを併用することが好ましい。衣料害虫忌避組成物中のメントールの含有量は、0.2~1.5w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、トリエタノールアミンとメントールとの相乗効果により、IR3535の安定性をより向上させることができる。メントールの含有量が0.2w/v%未満である場合、及びメントールの含有量が1.5w/v%を超える場合、トリエタノールアミンとの相乗効果を十分に発揮することができない虞がある。なお、メントールは、従来は香料として使用されていたが、本発明者らが、様々な衣料害虫忌避組成物を調製したところ、メントールの含有量が上記の範囲である場合、メントールは衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を示さなかった。また、消臭機能を示す程度にメントールの含有量を上記の範囲より大きくした場合にも、IR3535、イカリジン、及びディートによって消臭機能が持続することがなかった。このため、本発明の香料成分としては、メントールを含まない。防カビ剤、抗菌剤、及び殺菌剤としては、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンツイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール等が挙げられる。
【0048】
本発明の衣料害虫忌避組成物は、上掲の各成分を適切な重量比で配合し、さらに水、及びアルコール類を添加して各成分の濃度が適切となるように調整される。アルコール類としては、炭素数が2~3の低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好適である。
【0049】
<衣料害虫防除用スプレー製品>
本発明の衣料害虫忌避組成物の好ましい製品形態は、スプレー製品である。例えば、スプレー容器に、本発明の衣料害虫忌避組成物と、必要に応じて噴射剤とを封入することで、衣料害虫防除用スプレー製品が構成される。スプレー容器としては、トリガー式スプレーヤーを備えるものが好ましい。これにより、スプレーしたときに衣料害虫忌避組成物が拡散し、処理対象の衣類への衣料害虫忌避組成物の付着量が略均一となる。また、スプレー回数に応じて処理対象の衣類に正確な量の衣料害虫忌避組成物を付与することができる。
【0050】
<衣料消臭方法>
本発明の衣料消臭方法は、本発明の衣料害虫忌避組成物を衣料に噴霧処理するものであり、例えば、上述の衣料害虫防除用スプレー製品を用いて実施することができる。具体的には、使用者が衣料害虫防除用スプレー製品のトリガーを把持し、衣類や帽子に向けて衣料害虫忌避組成物を噴霧する。これにより、衣類等の表面に衣料害虫忌避組成物が付着する。このとき、衣類は着用した状態、及び未着用の状態の何れであってもよい。本発明の衣料害虫忌避組成物では、人体に対する安全性が高いIR3535、イカリジン、及びディートを害虫忌避成分として用いるため、着用した状態で衣類に噴霧処理を実施することが可能である。衣料害虫忌避組成物の噴霧処理を実施すると、衣類には優れた防虫機能、及び持続的な消臭機能が付与される。その結果、着用中の衣類への衣料害虫の産卵を効果的に予防しつつ、衣類に付着した悪臭を消臭することができる。
【0051】
<衣料害虫忌避消臭方法>
本発明の衣料害虫忌避消臭方法は、処理対象の衣料に害虫忌避成分と香料成分とを含有する衣料害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、衣料において十分な害虫忌避効果及び消臭効果が持続するように、当該衣料に対して衣料害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程とを実行するものである。本発明の衣料害虫忌避消臭方法は、基本的な工程(操作)は上述の衣料消臭方法と同様であるが、変更工程において、衣料全体に衣料害虫忌避組成物が付着するように、使用者は衣料害虫防除用スプレー製品を適切に動かしながら噴霧すればよい。例えば、衣料のうち特に臭いが気になる箇所(例えば、脇下、首回り、脚周辺部など)については、念入りに噴霧処理を行うことで、衣料に効果的な害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与することができる。このように、本発明の衣料害虫忌避消臭方法を実施すれば、一回の処理で衣料に害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与することができる。そして、本発明の衣料害虫忌避消臭方法によって処理された衣料は、後述する害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続するため、例えば、一日中外出するような場合であっても、不快な害虫が寄り付かず、かつ臭いも気にならずに長時間快適に活動することができる。
【0052】
本発明に係る衣料害虫忌避組成物は、害虫忌避成分に特定の香料成分を組み合わせることによって、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。消臭機能の持続期間は、害虫忌避成分と香料成分との組み合わせ、両成分の配合割合、衣料害虫忌避組成物の使用条件等により異なるが、おおよそ半日ないし一日程度、消臭機能を持続させることは十分に可能である。このため、この衣料害虫忌避組成物を用いて実行される本発明の衣料消臭方法に従って、外出前に噴霧処理を実施すれば、例えば、12時間程度の外出の間は香料成分による消臭機能が持続し、衣類に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
【実施例】
【0053】
本発明の衣料害虫忌避組成物について、消臭機能の持続性を確認するため、本発明の特徴構成を備えた衣料害虫忌避組成物(実施例1~54)を準備し、消臭機能確認試験を実施した。また、比較のため、本発明の特徴構成を備えていない衣料害虫忌避組成物(比較例1~56)を準備し、同様の消臭機能確認試験を実施した。なお、実施例1~54、及び比較例1~56では重量の単位として「g」が示されているが、任意の倍率でスケールアップが可能である。すなわち、単位「g」は、「重量部」と読み替えることができる。
【0054】
<実施例1~21>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方1により、衣料害虫忌避組成物(実施例1~21)を調製した。実施例1~19の衣料害虫忌避組成物においては、化合物A~Sを香料成分として使用した。実施例20の衣料害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、及びQを等量ずつ混合した調合香料(以下、「調合香料1」と称する。)を香料成分として使用した。実施例21の衣料害虫忌避組成物においては、化合物L、N、Q、β-ダマスコン、及びカシュメランを等量ずつ混合した調合香料(以下、「調合香料2」と称する。)を香料成分として使用した。
【0055】
処方1:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、IR3535を3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方1において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.14である。
【0056】
<実施例22~27>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方2により、衣料害虫忌避組成物(実施例22~27)を調製した。実施例22~27の衣料害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、Q、及び調合香料1を香料成分として使用した。
【0057】
処方2:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、IR3535を0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方2において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、1.00である。
【0058】
<実施例28~48>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方3により、衣料害虫忌避組成物(実施例28~48)を調製した。実施例28~48の衣料害虫忌避組成物においては、化合物A~S、調合香料1、及び調合香料2を香料成分として使用した。
【0059】
処方3:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イカリジンを3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方3において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.14である。
【0060】
<実施例49~54>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方4により、衣料害虫忌避組成物(実施例49~54)を調製した。実施例49~54の衣料害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、Q、及び調合香料1を香料成分として使用した。
【0061】
処方4:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イカリジンを0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方4において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、1.00である。
【0062】
<比較例1~21>
害虫忌避成分を配合しない下記の処方5により、衣料害虫忌避組成物(比較例1~21)を調製した。比較例1~21の衣料害虫忌避組成物においては、化合物A~S、調合香料1、及び調合香料2を香料成分として使用した。
【0063】
処方5:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。
【0064】
<比較例22>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方6により、衣料害虫忌避組成物(比較例22)を調製した。比較例22の衣料害虫忌避組成物においては、香料成分を配合していない。
【0065】
処方6:
IR3535を3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方6において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.00である。
【0066】
<比較例23>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方7により、衣料害虫忌避組成物(比較例23)を調製した。比較例23の衣料害虫忌避組成物においては、香料成分を配合していない。
【0067】
処方7:
イカリジンを3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方7において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.00である。
【0068】
<比較例24~34>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する処方1により、衣料害虫忌避組成物(比較例24~34)を調製した。比較例24~34の衣料害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物を香料成分として使用した。具体的には、比較例24の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(20):
【0069】
【化20】
で示されるクマリン(以下、「化合物C1」と称する。)を香料成分として使用した。
【0070】
比較例25の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(21):
【0071】
【化21】
で示されるβ-ヨノン(以下、「化合物C2」と称する。)を香料成分として使用した。
【0072】
比較例26の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(22):
【0073】
【化22】
で示されるβ-ダマスコン(以下、「化合物C3」と称する。)を香料成分として使用した。
【0074】
比較例27の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(23):
【0075】
【化23】
で示されるダマセノン(以下、「化合物C4」と称する。)を香料成分として使用した。
【0076】
比較例28の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(24):
【0077】
【化24】
で示されるシトラール(以下、「化合物C5」と称する。)を香料成分として使用した。
【0078】
比較例29の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(25):
【0079】
【化25】
で示されるシンナムアルデヒド(以下、「化合物C6」と称する。)を香料成分として使用した。
【0080】
比較例30の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(26):
【0081】
【化26】
で示されるカリクソール(以下、「化合物C7」と称する。)を香料成分として使用した。
【0082】
比較例31の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(27):
【0083】
【化27】
で示されるカシュメラン(以下、「化合物C8」と称する。)を香料成分として使用した。
【0084】
比較例32の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(28):
【0085】
【化28】
で示されるマルトール(以下、「化合物C9」と称する。)を香料成分として使用した。
【0086】
比較例33の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(29):
【0087】
【化29】
で示されるカルボン(以下、「化合物C10」と称する。)を香料成分として使用した。
【0088】
比較例34の衣料害虫忌避組成物においては、下記式(30):
【0089】
【化30】
で示されるファルネセン(以下、「化合物C11」と称する。)を香料成分として使用した。
【0090】
<比較例35~45>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する処方3により、衣料害虫忌避組成物(比較例35~45)を調製した。比較例35~45の衣料害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物C1~C11を香料成分として使用した。
【0091】
<比較例46~56>
害虫忌避成分を配合しない処方5により、衣料害虫忌避組成物(比較例46~56)を調製した。比較例46~56の衣料害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物C1~C11を香料成分として使用した。
【0092】
実施例1~54、及び比較例1~56の衣料害虫忌避組成物の処方、及び香料成分を表1、2に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
[消臭機能確認試験]
汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭に対する消臭機能確認試験を実施した。汗臭については、腰高シャーレ(外径75mm、高さ60mm)に試験綿布(5cmx5cm綿布(金巾3号))を置き、イソ吉草酸(ナカライテスク株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。ミドル脂臭については、腰高シャーレに試験綿布を置き、ジアセチル(ナカライテスク株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。加齢臭については、腰高シャーレに試験綿布を置き、2-ノネナール(東京化成工業株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。タバコ臭については、密閉小空間でタバコの煙を試験綿布に暴露処理し、その後、試験綿布を腰高シャーレに置いた。調理臭については、密閉小空間で牛脂を燃やしてその煙を試験綿布に暴露処理し、その後、試験綿布を腰高シャーレに置いた。
【0096】
悪臭を付加させたそれぞれの試験綿布に対し、実施例1~54、及び比較例1~56の試験溶液をスプレーバイアルにて0.03mL噴霧し、試験溶液噴霧直後、3時間後、及び12時間後に、腰高シャーレ内の臭気を評価した。臭気の評価は以下の5段階臭気強度表示法で5人のテスターにより評価し、平均点を求めた。平均点0以上2未満を○、2以上3未満を△、3以上4以下を×とした。
0:香りを感じない
1:かすかに感じる
2:弱く感じる
3:明らかに感じる
4:強く感じる
【0097】
汗臭に対する消臭機能確認試験の結果を表3、4に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
ミドル脂臭に対する消臭機能確認試験の結果を表5、6に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
加齢臭に対する消臭機能確認試験の結果を表7、8に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
タバコ臭に対する消臭機能確認試験の結果を表9、10に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
調理臭に対する消臭機能確認試験の結果を表11、12に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
消臭機能確認試験の結果、本発明の特徴構成を備えた衣料害虫忌避組成物は、害虫忌避成分としてIR3535を含有する実施例1~27、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する実施例28~54の何れであっても、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭に対して、試験溶液の噴霧処理から12時間後も優れた消臭性を示した。このことから、本発明の特徴構成を備えた衣料害虫忌避組成物を、外出前に衣類へ噴霧処理しておくことで、12時間程度の外出の間は香料成分による消臭機能が持続し、衣類に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができると考えられる。
【0113】
一方、害虫忌避成分を含有していない比較例1~21の衣料害虫忌避組成物は、害虫忌避成分としてIR3535を含有する実施例1~27、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する実施例28~54と、同一の香料成分を含有しているが、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭の何れに対しても、試験溶液の噴霧処理から3時間後までの消臭性を示すに留まり、試験溶液の噴霧処理から12時間後には十分な消臭性を示さなかった。
【0114】
比較例22の衣料害虫忌避組成物は、実施例1~27と同様に害虫忌避成分としてIR3535を含有しており、比較例23の衣料害虫忌避組成物は、実施例28~54と同様に害虫忌避成分としてイカリジンを含有しているが、比較例22及び23は何れも香料成分を含有していない。このような比較例22及び23の衣料害虫忌避組成物は、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭の何れに対しても消臭性を示さなかった。このことから、害虫忌避成分であるIR3535、及びイカリジンは単独では消臭性を有していないことが確認された。害虫忌避成分であるIR3535、及びイカリジンが単独では消臭性を有していないにもかかわらず、比較例1~21の衣料害虫忌避組成物と比較して、これらに害虫忌避成分を配合しただけの実施例1~54の衣料害虫忌避組成物において消臭機能が長時間持続したのは、害虫忌避成分が本発明において規定する特定の香料成分と何らかの相乗効果を奏するためと考えられる。
【0115】
また、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物を香料成分として使用した比較例24~56は、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭、タバコ臭、及び調理臭の何れに対しても、試験溶液の噴霧処理から3時間後までの消臭性を示すに留まり、試験溶液の噴霧処理から12時間後には十分な消臭性を示さなかった。害虫忌避成分としてIR3535を含有する場合(比較例24~34)、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する場合(比較例35~45)でも、消臭機能が長時間持続しなかったのは、本発明において規定する特定の香料成分を使用していないために、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が得られなかったためと考えられる。
【0116】
以上の結果から、本発明の特徴構成を備えた衣料害虫忌避組成物(実施例1~54)は、特定の害虫忌避成分と特定の香料成分との組み合わせにより、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が得られ、香料成分による消臭機能が長時間に亘って持続することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の衣料害虫忌避組成物、及び衣料消臭方法は、衣類に付着した悪臭を消臭するために使用されるものであり、繊維製品の消臭に利用可能である。さらに、本発明の衣料害虫忌避消臭方法は、繊維製品に対する害虫忌避及び消臭に利用可能である。