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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】タービン翼用翼形部
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20220816BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D9/02 102
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020561773
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061354
(87)【国際公開番号】W WO2019211427
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】18170731.6
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】アフマド,ファティ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】シューラー,マルコ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0218769(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0073369(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0010463(US,A1)
【文献】特開2006-112429(JP,A)
【文献】特表2015-525852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガス(S)が際を流れることが可能な前縁部を備えるタービン翼用の中空の翼形部(16)であって、前記前縁部から引圧側壁(17)及び押圧側壁(19)が前記翼形部(16)の後縁部(20)まで延び、前記翼形部(16)はそれに対して横方向に、翼形部高さが0%の基端部から翼形部高さが100%の先端部(23)まで延伸しており、
前記翼形部(16)の前縁部(18)に沿って配置された複数の冷却孔(22)からなる少なくとも2つの列(R1、)を備え、当該少なくとも2つの列(R1、)が前記前縁部(18)の延伸する方向に対して垂直方向で第1の間隔(A)で離されている、タービン翼用の中空の翼形部(16)において、
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R、R)が、少なくとも部分的に前記前縁部(18)に沿って、1つの波線上に配置されており
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R 、R )が部分的にのみ前記前縁部(18)に沿って1つの波線上に以下のように配置されている、即ち、前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R 、R )は、第1の領域内では、前記前縁部(18)の両側で基本的に平行に配置されており、第1の領域と直接境を接している第2の領域内では、押圧側にずらされて配置されており、前記第2の領域と直接境を接している第3の領域内では、前記翼形部高さが増すにつれて再び前記前縁部(18)に向かってずれが戻されて配置されていること
を特徴とするタービン翼用中空翼形部。
【請求項2】
前記第1の領域は前記翼形部高さの0%から約40%の間に配置されており、
前記第2の領域は前記翼形部高さの約40%から約75%の間に配置されており、
前記第3の領域は前記翼形部高さの約75%から100%の間に配置されている、
請求項に記載の翼形部。
【請求項3】
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R、R)が、前記翼形部高さ40%から前記押圧側に向かって、以下のように、ずらされている、即ち、押圧側の最大ずれの点が、前記翼形部高さの約75%に又はそれより高くに、配置されているように、ずらされている、
請求項1又は2に記載の翼形部。
【請求項4】
押圧側の最大ずれが翼弦長の2%から10%であり、当該翼弦長は、前記最大ずれが配置されている前記翼形部高さでの前記前縁部(18)及び前記後縁部(20)の間の軸方向の間隔に対応る、
請求項1から3の何れか1項に記載の翼形部。
【請求項5】
高温ガス(S)が際を流れることが可能な前縁部を備えるタービン翼用の中空の翼形部(16)であって、前記前縁部から引圧側壁(17)及び押圧側壁(19)が前記翼形部(16)の後縁部(20)まで延び、前記翼形部(16)はそれに対して横方向に、翼形部高さが0%の基端部から翼形部高さが100%の先端部(23)まで延伸しており、
前記翼形部(16)の前縁部(18)に沿って配置された複数の冷却孔(22)からなる少なくとも2つの列(R 1、 )を備え、当該少なくとも2つの列(R 1、 )が前記前縁部(18)の延伸する方向に対して垂直方向で第1の間隔(A)で離されている、タービン翼用の中空の翼形部(16)において、
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R 、R )が、少なくとも部分的に前記前縁部(18)に沿って、1つの波線上に配置されており、
前記波線(24)は、その曲率の符号の変化なしに以下のようにわずかに湾曲されている、即ち、それぞれの前記少なくとも2つの列(R 、R )の前記冷却孔(18)は、前記翼形部の前記基端部(21)でも前記先端部(23)でも、前記翼形部高さの半分の高さにある対応する前記列(R 、R )の前記冷却孔(18)よりも、更に引圧側に配置されていること
を特徴とするタービン翼用中空翼形部。
【請求項6】
前記少なくとも2つの列(R、R)に加えて押圧側で隣に、前記冷却孔(18)の更なる列(R)が設けられており、前記更なる列(R)の長さは前記翼形部高さの50%から60%の間にあり、前記更なる列(R)は前記翼形部(16)の両方の端部(21、23)の間で基本的に中央に配置されている、
請求項に記載の翼形部。
【請求項7】
高温ガス(S)が際を流れることが可能な前縁部を備えるタービン翼用の中空の翼形部(16)であって、前記前縁部から引圧側壁(17)及び押圧側壁(19)が前記翼形部(16)の後縁部(20)まで延び、前記翼形部(16)はそれに対して横方向に、翼形部高さが0%の基端部から翼形部高さが100%の先端部(23)まで延伸しており、
前記翼形部(16)の前縁部(18)に沿って配置された複数の冷却孔(22)からなる少なくとも2つの列(R 1、 )を備え、当該少なくとも2つの列(R 1、 )が前記前縁部(18)の延伸する方向に対して垂直方向で第1の間隔(A)で離されている、タービン翼用の中空の翼形部(16)において、
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R 、R )が、少なくとも部分的に前記前縁部(18)に沿って、1つの波線上に配置されており、
各翼形部高さに対して翼プロファイル(28)が特定可能であり、この翼プロファイル(28)は、前記前縁部(18)の領域において、前縁半径(R)を有し、前記冷却孔(22)の高さにおける翼プロファイルは、前記少なくとも2つの列(R 、R )の間に第1の間隔(A)を有し、その大きさは、関連する前記前縁半径の0.4倍から0.7倍の間の範囲にあり、
前記第1の間隔(A)は、前記翼形部高さの半分のところで最小であり、両方の端部に向かって増加すること
を特徴とするタービン翼用中空翼形部。
【請求項8】
各冷却孔(22)は、冷却材の貫流を調整する絞り断面を有し、一部の冷却孔(22)の前記絞り断面は異なる大きさである、
請求項1からの何れか1項に記載の翼形部。
【請求項9】
前記冷却孔(22)の前記絞り断面は、前記翼形部の高さの半分の領域において、この半分の翼形部から更に離れた領域における前記冷却孔(22)の前記絞り断面よりも大きい、
請求項に記載の翼形部。
【請求項10】
高温ガス(S)が際を流れることが可能な前縁部を備えるタービン翼用の中空の翼形部(16)であって、前記前縁部から引圧側壁(17)及び押圧側壁(19)が前記翼形部(16)の後縁部(20)まで延び、前記翼形部(16)はそれに対して横方向に、翼形部高さが0%の基端部から翼形部高さが100%の先端部(23)まで延伸しており、
前記翼形部(16)の前縁部(18)に沿って配置された複数の冷却孔(22)からなる少なくとも2つの列(R 1、 )を備え、当該少なくとも2つの列(R 1、 )が前記前縁部(18)の延伸する方向に対して垂直方向で第1の間隔(A)で離されている、タービン翼用の中空の翼形部(16)において、
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R 、R )が、少なくとも部分的に前記前縁部(18)に沿って、1つの波線上に配置されており、
各冷却孔は、冷却材の貫流を調整する絞り断面を有し、一部の冷却孔(22)の前記絞り断面は異なる大きさであり、
前記冷却孔(22)の前記絞り断面は、前記翼形部の高さの半分の領域において、この半分の翼形部から更に離れた領域における冷却孔(22)の絞り断面よりも大きいこと
を特徴とするタービン翼用中空翼形部。
【請求項11】
各翼形部高さに対して翼プロファイル(28)が特定可能であり、この翼プロファイル(28)は、前記前縁部(18)の領域において、前縁半径(R)を有し、前記冷却孔(22)の高さにおける翼プロファイルは、前記少なくとも2つの列(R、R)の間に前記第1の間隔(A)を有し、その大きさは、関連する前記前縁半径の0.4倍から0.7倍の間の範囲にある、
請求項1から6及び10の何れか1項に記載の翼形部。
【請求項12】
前記第1の間隔(A)は、前記翼形部高さの半分のところで最小であり、両方の端部に向かって増加する、
請求項11に記載の翼形部。
【請求項13】
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R、R)が、前記翼形部高さ0%から100%の間で前記前縁部(18)の延伸部全体に沿って、1つの波線上に配置されている、
請求項1から12の何れか1項に記載の翼形部。
【請求項14】
前記少なくとも2つの列(R1、)の間の前記第1の間隔(A)が、前記前縁部(18)に沿って変わる、
請求項1から13の何れか1項に記載の翼形部。
【請求項15】
前記冷却孔(22)の前記少なくとも2つの列(R、R)が、前記際を流れる高温ガス流のよどみ点線(24)の両側に配置されている、
請求項1から14の何れか1項に記載の翼形部。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1項に記載の翼形部(16)を備える、好ましくはタービンガイドベーンとして構成された、定置ガスタービン用のタービン翼(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン翼用の翼形部に関するものであり、当該翼形部は、高温ガスが際を流れることが可能な前縁部を有し、そこから引圧側壁と押圧側壁とが翼形部の後縁部に向かって延びており、この翼形部はその横方向に翼形部高さが0%の脚端部から翼形部高さが100%の先端部まで延びており、前縁部に沿って配置された少なくとも2つの列の冷却孔を有し、これらの冷却孔が互いに前縁部に対し垂直にとられる第1の間隔を有している。
【背景技術】
【0002】
このようなタービン翼は、例えば特許文献1から知られている。前縁部に配置された冷却孔は、それを備えたガスタービンの運転中に流入する高温ガス流に対抗するために、前縁部を覆って冷却保護フィルムを生成する働きをする。したがって、冷却孔は、フィルム冷却孔とも呼ばれ、これは英語ではその密な配置のため「Shower Head Film Cooling Holes(シャワーヘッド型フィルム冷却孔)」としても知られている。同時に翼形部は前縁部の際を流れる高温ガス流を二つの部分流に分け、そのうち一方の部分流は翼形部の引圧側に沿って流れ、他方の部分流は押圧側に沿って流れる。翼プロファイルの流れ分断部の位置は、理想上この個所には横流れが生じないので、よどみ点と呼ばれる。この理由から従来技術では、フィルム冷却孔が前縁部又は前もって決定されたよどみ線の両側に配置され、そこに発生する高温ガス流が部材壁に密着しないようにしている。
【0003】
しかしその欠点は、翼プロファイルのよどみ点又は翼形部のよどみ線が種々の影響因子に依存し得ることであり、そのため、タービン翼とその翼形部及びその前縁部冷却部を種々の運転条件にできるだけ最良に適合させる必要がある。
【0004】
そのため特許文献2は、よどみ線の偏倚に際して、動翼の押圧側に、翼形部の半径方向外側半分に追加的に半列のフィルム冷却孔を配置することを教示している。しかし、追加のフィルム冷却孔は冷却空気の消費量を増加し、それが搭載されたタービンの効率に負の影響を与える。
【0005】
特許文献3によれば、よどみ点線の偏倚が予め算出される場合に、いくつかの前縁フィルム冷却孔の、位置ではなく傾斜のみが、以下のように選択されることによって、即ち、これにより予期される局所的な高温ガス流が、対抗方向ではなく同じ方向に、冷却ガスを放出するように選択されることによって、適切な冷却が達成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2154333A2号公報
【文献】米国特許出願公開第2016/0010463A1号公報
【文献】欧州特許出願公開第3043026A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術に基づき、本発明の課題は、ガスタービンの種々の運転条件に対して、特に合理的な量の冷却材を使用するときに翼形部のできるだけ長い耐用年数と共に十分な冷却を達成するために、最適に設計されたタービン翼用の翼形部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は冒頭に述べた種類の翼形部において、少なくとも2つの列の冷却孔が、少なくとも部分的に前縁部に沿って1つの波線上に配置されていることにより解決される。
【0009】
本発明は、実際の高温ガスの流れ方向が、一方ではガスタービンの種々の作動様態に基づき、翼形部を設計するために考慮された流れ方向から偏倚し得るという知見に基づいている。この偏倚は、定格負荷に対して変更された負荷出力に基づいて発生し得る。他方では、特に動翼においては翼プロファイルのよどみ点が前縁部の領域で、動翼の上流に配置されたガイドベーンによって引き起こされる流れ作用によって、振動し得ることが判明した。翼プロファイルのよどみ点の振動は、局所的に高められた翼形部の表面温度を導き、これは本発明により効果的に対処することができる。
【0010】
上記の2つの作用に対処するために本発明は、前縁部の領域に少なくとも2つの列の冷却孔を設け、これらが少なくとも部分的に1つの湾曲波線上に配置されていること、を提案する。冷却孔は、当該翼プロファイルの振動するよどみ点に関係して、押圧側又は引圧側にずらされる。設計段階中に各翼プロファイルに対して、よどみ点が発生し得る領域が求められる。これらの領域はそれぞれ、2つの端点によって規定され、それらから中央のよどみ点を求めることができる。次に両方の冷却孔は、最良な冷却が達成されるように、位置決めされる。これにより冷却効果は局所的に最適化され得る。通常の3列以上の十全な冷却列の代わりに、2列のみの冷却列を使用することによって、更に、冷却に必要な冷却材の量も減らすことができる。冷却材の消費量の削減は、ガスタービンの運転中におけるその効率向上に役立つ。
【0011】
従属請求項には、任意に組み合わせることができるさらなる有利な措置が記載されている。これにより、さらなる利点を達成することができる。
【0012】
本発明の第1の有利な実施形態によれば、少なくとも2つの列の冷却孔は、翼形部高さの0%から100%の間の前縁部の全長に沿って、複数の谷及び山を有する1つの波線上に配置されている。したがって少なくとも2つの列の冷却孔は、別の翼形部高さにある冷却孔に比して、繰り返し局所的に押圧側へ向かって若干ずらされている。
【0013】
代替的な実施形態によれば、少なくとも2つの列の冷却孔は、部分的にのみ前縁部に沿って1つの波線上に以下のように配置されている、即ち、この少なくとも2列の冷却孔は、翼形部高さ0%から約40%の間に配置されている第1領域では前縁部の両側に基本的に平行に配置されており、直接これと境を接する翼形部高さ約40%から約75%及びより高く延びる第2領域では押圧側にずらされて配置されており、少なくとも2つの列の冷却孔は、この第2領域と直接境を接し翼形部高さ100%で終端する第3領域では、翼形部高さの増加に伴って前縁部に向かって戻されて配置されている。
【0014】
この実施形態は、翼プロフィルのよどみ点のずれが翼形部の半径方向内側の領域ではむしろ狭幅であり、これに対し約40%の翼形部高さからはずれが増加し、しかも押圧側でより多くなる、という知見に基づいている。したがって少なくとも2つの列の冷却孔は、40%から100%の領域では押圧側へずらされており、好ましくは約75%の翼形部高さで押圧側への最大ずれが配置されている。翼形部の翼弦長に関しては、押圧側への最大ずれの値は翼プロファイルの5%以下であり、最小値は好ましくは少なくとも2%である。
【0015】
この点に関し少なくとも2つの列の冷却孔は、翼形部高さが0%から40%の範囲ではむしろ直線状の形をとり、翼形部高さが40%から100%の間の部分に対しては、押圧側に向かって湾曲した列の輪郭となる。よどみ線のこのようなずれは、特に異なる運転点において、例えば低い部分負荷において、生じるので、特にフレキシブルに運転されるガスタービン用に設けられている翼は、このような構成を有する。
【0016】
前述の実施形態に加えて、前縁部に沿った冷却孔の少なくとも2つの列の間の第1の間隔が変化しており、その結果、第1の間隔がいくつかの翼形部の高さに対して異なる大きさである場合、特に有利である。このような処置により、前縁部の領域におけるタービン翼の局所的な冷却能力を個々の温度負荷に局所的に適応させることができる。
【0017】
それぞれの翼形部高さに対しては1つの横断面によって、1つの翼プロファイルを容易に認めることができ、当該翼プロファイルは周知のように湾曲された滴の形状を有している。従って、各翼プロファイルは、前縁部の領域内に前縁半径を有し、その際翼プロファイルは冷却孔の高さにおいて、少なくとも2つの列の間に第1の間隔を有し、その大きさは関連する前縁半径の0.4倍から0.7倍の範囲内にある。詳細な研究により、冷却の有効性は、異なる列の冷却孔間の間隔と前縁部の曲率、いわゆる前縁半径並びにキャンバー線の長さ、翼の数及び翼プロファイルのターニングに依存することが判明している。さらには、同一の翼形部高さにある異なる列の冷却孔間の第1の間隔が要求された間隔内にある場合、前縁部領域の格別に効率的な冷却が達成され得ることが確認されている。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、第1の間隔は、翼形部高さの半分で最小であり、両端部に向かって増加する。その増加の度合いは特にはなだらかである。
【0019】
異なる翼形部高さに対して前縁部の冷却を更に必要に応じて適応させるために、好ましくは、各冷却孔は冷却材の貫流を調整する絞り断面を有している、その際幾つかの冷却孔の絞り断面は異なる大きさとする。特に好ましくは、翼形部の高さの半分の領域の冷却孔の絞り断面は、翼形部の高さの半分からさらに離れた領域の冷却孔の絞り断面よりも大きい。
【0020】
この実施形態は、半分の翼形部高さとこれに直接境を接する領域では、半分の翼形部高さからさらに離れて存在している前縁部の領域よりも、いくらか高い冷却要求があるという知見に基づいている。
【0021】
少なくとも2つの列の冷却孔が際を流れる高温ガス流の中央のよどみ点線の両側に配置されている実施形態が特に好ましい。この個所では高温ガス流は、押圧側に流れる成分と引圧側に流れる成分とに分かれて、両側に向かって分流されるので、冷却孔の両側での配置に基づきその下側にある壁部が特に効率的に高温ガスの高温から保護される。
【0022】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくとも2つの列の冷却孔は、翼形部の基端部近く及び先端部近くにおいては、半分の翼形部高さにある相応する列の冷却孔よりもよりも、引圧側に配置されている。これにより波線は、その曲率の符号を変えることなくこれらの点の間を延びるので、それはわずかに湾曲されているだけである。詳細な研究によれば、この実施形態は特にガイドベーンに対して、より好ましい冷却形態を示すことが判明している。なぜならこの翼では、よどみ点のずれは翼形部の中心部よりもその端部で、さらに引圧側に向かってより多く発生するからである。その場合翼形部の端部付近の関連する冷却孔の最大ずれは、半分の翼形部高さでの、すなわち翼形部高さの50%での、同一の列の冷却孔の位置と比較して、吸入側に向かってわずか数mm、特に2mmである。
【0023】
実施形態によってはさらに、以下の場合が、前縁部の局所的な熱的な過負荷を回避するために、有用であり得る、即ち、前述の実施形態において、押圧側で少なくとも2つの列の隣に基本的に等間隔の冷却孔のもう一つのしかし短い列が設けられている場合が、有用であり得る、この別の列の長さは、翼形部高さの50%から60%の間であり、冷却孔のこの別の列は、翼形部の2つの端部の間で基本的に中央に配置されている。この別の列が翼形部高さの半分で2つの部分に分割されており、その短い部分がこの別の列の長さの1/3よりも短くない限りは、この別の列は、この出願においては、基本的に中央に配置されている。この別の冷却孔の列の長さは、翼形部の高さと同じ方向にとられる。
【0024】
好ましくは、翼形部は、タービン翼の一部であること、特には定置ガスタービンのタービンガイドベーンの一部であることが好ましい。
【0025】
以下では、図に示す実施形態例を用いて、本発明をより詳細に記載及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施例に係る本発明の翼形部を備えたタービン動翼を斜視図で示す。
図2】第2の実施例に係る本発明の翼形部を備えたタービン動翼を斜視図で示す。
図3】第1の実施例に係る翼形部の翼プロファイルを示す。
図4】第3の実施例に係る本発明の翼形部を備えたタービン静翼を斜視図で示す。
【0027】
各実施例及び図では、同一の部材又は同一の作用効果を有する部材は、それぞれ同一の符号を付されている。図示された特徴及びそれらの相互の寸法比は、基本的に実寸通りではなく、むしろ個々の部材は、図を見易くするため及び/又は理解を容易にするために、より大きな比率で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1では、タービン動翼10が斜視図で示されている。タービン翼10は下側にほぼもみの木状の翼脚12を備えており、これには端壁として高温ガスプラットフォーム14が接続している。高温ガスSに対向するその表面には、第1の実施例に従う本発明の翼形部16が配置されている。周知のように、翼形部16は前縁部18と後縁部20を備え、それらの間には引圧側壁17と押圧側壁19が延びている。これに対して横方向に翼形部16が、翼形部高さ0%の基端部21から翼形部高さ100%の先端部23まで延びている。前縁部18に沿って冷却孔22の2つの列R、Rが配置されている。2つの列のR、Rは、多数の波の谷と波の山を持つ1つの波線に沿って延びており、同時に中央のよどみ点線24の両側に配置されている。
【0029】
本発明の第2の実施例を図2に示す。冷却孔22の列R、Rを全体に波形に配置する代わりに、ここでは直線状の部分に膨らみのある部分が続いている。詳細には、冷却孔22の2つの列R、Rは、それらが前縁部18に平行にその両側に配置されているように、半径方向内側の第1の領域に配置されている。この第1の領域Bは、翼形部高さ0%から約40%の間で広がっている。そこに半径方向外側で接続して、第2の領域Bが設けられている。これは約75%の翼形部高さで終っている。この領域では、2つの列R、Rの冷却孔22は、それらが約75%の翼形部高さで前縁部18から離れる最大のずれに達するまで、高さが増すにつれて押圧側にずれている。それに続く第3の領域Bでは、2つの列R、Rの冷却孔22が前縁部18の方向に再び戻る。
【0030】
図示された2つの実施例により、冷却材の適度な使用で前縁部18の更に十分な冷却を達成しながら、タービン翼10の前縁部18を異なる流れ条件及び異なる動作モードに適合させることが可能である。特に、3つの列の代わりに冷却孔22の2つの列R、Rのみを用いることで、タービン翼10の製造費用を大幅に低減できる。冷却孔22の数が少ないことは同時に、亀裂発生のリスクが低減されたことを意味する。さらに冷却材例えば冷却風の量が減少され、これはタービン効率の向上に寄与する。
【0031】
両図において、冷却孔22は、単に概略的に円として示されており、それらの絞り断面は異なるサイズの円によって概略的に示されている。当然冷却孔22は、ディフューザ状の開口部を有するフィルム冷却孔であってもよい。それらのディフューザは異形化して構成されていてもよい。また、翼形部16の表面上で横に取られる冷却孔22の間の間隔Aは、異なる翼形部高さで、異なる大きさであってもよい。
【0032】
さらに図3は翼プロファイル28として、図1による第1実施例の翼形部16の横断面を示す。引圧側壁17と押圧側壁19の間には、中央に、仮想線が延びており、これは翼プロファイル中心線又はキャンバーラインとしても知られている。翼プロファイル中心線には符号30が付いている。翼プロファイル中心線30の最も前の点が前縁部18を規定する。翼プロファイル28の実際の流れ又は不正確な流れに応じて、よどみ点25は、前縁部18から離れて、押圧側19に向かって又は引圧側17に向かって、わずかにずらされていてもよい。任意の翼形部高さで検出可能な各翼プロファイル部の(中央の)よどみ点25がまとまってよどみ点線24を形成する。前縁半径はRで表されている。
【0033】
本発明の第3の実施例を図4に示す。図4はガイドベーンとして設計されたタービン翼を斜視図的に示し、翼脚12は、詳細には示していない翼担体に翼を固定するための2つのフック形状レールを備えている。図1に示した動翼とは対照的に、翼形部の基端部21にもまた同様に先端部23にも、流路を区切るためのプラットフォーム14が設けられている。それらの間には翼形部16がその高さに沿って延びている。詳細な研究が示すように、この種のガイドベーンでは翼形部16の端部21、23へのよどみ点線24は引圧側に向かって明らかにずらされている。これに従って、冷却孔18の少なくとも2つの列R、Rも同様に配置されており、翼形部高さの半分にある冷却孔から始まり、各列R1、内で、プラットフォーム14との間隔が小さくなるにつれて冷却孔がさらに引圧側に配置されている。よどみ点線24は、その曲率の符号を変化することなくわずかに湾曲している。さらに、基本的に均等に間隔を置いた冷却孔18の短い別の列が、2列のR、Rの押圧側に、設けられている。この別の列Rは、この実施例によれば、2つのプラットフォーム14又は2つの端部21、23の間の中央に配置されており、翼形部高さの55%の長さにわたってのみ延びている。したがってそれは2つの列R、Rよりも短い。必要に応じて、局所的に別の散発的な冷却孔が前縁部近くに設けられていてもよい。
【0034】
全体として本発明は、タービン翼10用の翼形部16であって、高温ガスSが際を流れる前縁部18を備え、そこから引圧側壁17及び押圧側壁19が翼形部16の後縁部20まで延び、翼形部16はそれに対して横方向に、翼形部高さ0%の基端部21から翼形部高さ100%の先端部23まで、延びており、前縁部に沿って配置された冷却孔22の2つの列R1、を有し、これらが前縁部18に対して垂直に取られる第1の間隔Aを有する翼形部16に関する。低減された冷却コストで異なる運転条件に対して更に確実な前縁部18の冷却に使用可能なタービン翼を提供するために、冷却孔22の少なくとも2つの列R、Rが、少なくとも部分的に前縁部18に沿って1つの波線上に配置されることが提案される。
【符号の説明】
【0035】
10 タービン翼
12 翼脚
14 プラットフォーム
16 翼形部
17 引圧側壁
18 前縁部
19 押圧側壁
20 後縁部
21 基端部
22 冷却孔
23 先端部
24 よどみ点線
25 よどみ点
30 翼プロファイル中心線
A 第1の間隔
~R 冷却孔の列
S 高温ガス

図1
図2
図3
図4