(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置用の引き込み可能なヒーター
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20220816BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20220816BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/20
(21)【出願番号】P 2020568789
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2019065466
(87)【国際公開番号】W WO2019238812
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-10
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン ランケル ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】ファンクレイネスト ルイ-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デスナーク シモン
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-516261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217064(US,A1)
【文献】特表2021-518131(JP,A)
【文献】特開2017-163974(JP,A)
【文献】特表2018-529322(JP,A)
【文献】特表2018-504134(JP,A)
【文献】特表2019-518423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置であって、
・ハウジングと、
・エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、
・発熱体と、を備え、
前記発熱体が、前記加熱チャンバーの中に配設されていて、かつ前記発熱体が、前記発熱体が前記エアロゾル発生基体を貫通する第一の位置に配設されるように構成されていて、かつ前記発熱体が、前記発熱体が前記加熱チャンバーから少なくとも部分的に引っ込められる第二の位置に配設されるように構成されていて、かつ前記発熱体が前記加熱チャンバーからの引き込み中に前記ハウジングに対して移動するように構成されて
おり、
前記装置が、前記発熱体に接続された引き込み機構をさらに備え、
前記装置が電力供給およびコントローラをさらに備え、前記コントローラが前記引き込み機構への前記電力の供給を制御するように構成されている、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記加熱チャンバーが前記加熱チャンバーの基部に開口を備え、かつ前記発熱体が前記開口を通して引っ込められるように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記引き込み機構が、スライダー機構、ねじ機構、カンチレバー機構、押し込み機構、引張機構、ばね機構、弾性機構、ローラー機構、ギア機構、または磁気的機構もしくは温度感知機構のうちの一つ以上を備える機械的機構として構成されている、請求項
1または請求項
2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記引き込み機構が、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミック、およびバイメタルのうちの一つ以上を含む、請求項
1または請求項
2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記引き込み機構が支持要素およびガイドを備え、前記発熱体が前記支持要素に接続されていて、かつ前記支持要素が前記ガイドに摺動可能に接続されている、請求項
1~
4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記引き込み機構が、前記発熱体を前記加熱チャンバーに向かって付勢するための付勢機構(好ましくは、ばね)を備える、請求項
1~
5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記装置が、前記引き込み機構に接続された複数の発熱体を備え、または前記装置が各々一つ以上の発熱体に接続されている複数の引き込み機構を備え、かつ好ましくは前記加熱チャンバーが前記加熱チャンバー
の基部に複数の開口を備え、かつ前記発熱体が前記開口を通して集合的に引っ込められるように構成されている、請求項
1~
6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記引き込み機構が、前記引き込み機構による前記加熱チャンバーからの前記発熱体の引き込み後に、前記発熱体を前記加熱チャンバーの中に押し込むように構成されている、請求項
1~5および請求項
7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記装置が、起動機構(好ましくは押しボタン)をさらに備え、かつ前記発熱体が、前記起動機構の起動に伴い前記加熱チャンバーから引っ込められる、請求項1~
8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記発熱体が、前記加熱チャンバー内で中央に整列されていて、かつ前記加熱チャンバー
の長軸方向の中心軸に沿って引き込み可能であるように構成されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記加熱チャンバーが前記加熱チャンバーの前記基部の中に開口を備え、かつ前記発熱体が前記開口を通して引っ込められるように構成されていて、かつ前記開口が、前記加熱チャンバーからの前記発熱体の引き込み中に前記発熱体から残留物を除去するように構成されたクリーニング要素を備える、請求項2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
発熱体をエアロゾル発生装置の加熱チャンバーから引っ込める方法であって、
i)ハウジングと、エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、発熱体とを備えるエアロゾル発生装置を提供する工程であって、前記発熱体が前記加熱チャンバーの中に配設されていて、かつ前記発熱体が、前記発熱体が前記エアロゾル発生基体を貫通する第一の位置に配設されるように構成されていて、かつ前記発熱体が前記加熱チャンバーから少なくとも部分的に引っ込められる第二の位置に配設されるように構成されていて、かつ前記発熱体が前記加熱チャンバーからの引き込み中に前記ハウジングに対して移動するように構成されている、工程と、
ii)前記発熱体を前記加熱チャンバーから引っ込める工程と、を含
み、
前記装置が、前記発熱体に接続された引き込み機構をさらに備え、
前記装置が電力供給およびコントローラをさらに備え、前記コントローラが前記引き込み機構への前記電力の供給を制御するように構成されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置に関する。たばこなどのエアロゾル発生基体を加熱するが燃焼しないエアロゾル発生装置が周知である。これらの装置は、ユーザーによる吸入のためのエアロゾルを作るために十分に高い温度までエアロゾル発生基体を加熱する。
【背景技術】
【0002】
これらのエアロゾル発生装置は典型的に加熱チャンバーを備え、発熱体が加熱チャンバー内に配設されている。エアロゾル発生基体を備えるエアロゾル発生物品を、加熱チャンバーの中に挿入することができ、また発熱体によって加熱することができる。エアロゾル発生物品が枯渇した後、エアロゾル発生物品は加熱チャンバーから取り外されて、未使用のエアロゾル発生物品が挿入される。エアロゾル発生物品は発熱体の外側に押し付けられ、そして結果として発熱体はエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体の中に貫通する。エアロゾル発生物品の取り外し中に、エアロゾル発生基体の望ましくない残留物は、加熱チャンバーの中に残り、発熱体にくっつく場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
結果として、加熱チャンバーの中および発熱体上の望ましくない残留物を低減するまたは無くすエアロゾル発生装置に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これを解決するために、およびさらなる目的のために、本発明は吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置を提案する。装置は、ハウジングと、エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、発熱体とを備える。発熱体は加熱チャンバーの中に配設されている。発熱体は、発熱体がエアロゾル発生基体を貫通する第一の位置に配設されるように構成されていて、また発熱体が加熱チャンバーから少なくとも部分的に引っ込められる第二の位置に配設されるように構成されている。発熱体は加熱チャンバーからの引き込み中にハウジングに対して移動するように構成されている。
【0005】
発熱体を引き込み可能なように構成することによって、エアロゾル発生基体を備えるエアロゾル発生物品が加熱チャンバーから取り外される前に、発熱体を加熱チャンバーから引っ込めることができる。これに関して、エアロゾル発生物品は、物品の取り外し中に加熱チャンバーの中に、また従来の装置の中の発熱体上に、エアロゾル発生基体の残留物を残す場合がある。
【0006】
具体的には、エアロゾル発生装置の発熱体は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体の中に貫通する加熱ピンまたは加熱ブレードとして構成されてもよい。結果として、エアロゾル発生物品は、加熱チャンバーの中へのエアロゾル発生物品の挿入中に、発熱体の外側に押し付けられ、また基体が枯渇した時に、加熱チャンバーから引き出される。発熱体からのエアロゾル発生物品の引き抜きは、エアロゾル発生基体から小さいかけらまたはその他の材料をばらけさせる場合がある。これらの残留物は望ましくない場合があり、またエアロゾル発生物品の取り外し後に加熱チャンバーの壁および発熱体に付着する場合がある。本発明は、ユーザーによってエアロゾル発生物品を簡単に取り外すことができるように、一方で同時に加熱チャンバーの中および発熱体上にエアロゾル発生基体の残留物が残ることを低減または防止することができるように、発熱体を加熱チャンバーから引っ込めることを可能にする。
【0007】
「引き込み可能」という用語は、発熱体が加熱チャンバーの中に配設されている第一の位置から、発熱体が本質的に加熱チャンバーの中にもはや配設されていない第二の位置に発熱体が移動するような、発熱体の移動を意味する。これに関して、発熱体は加熱チャンバーから完全に引っ込められてもよい。発熱体はまた、加熱チャンバーから部分的に引っ込められてもよい。これに関して、発熱体は、加熱チャンバーから少なくとも50%引っ込められる。これは、第一の位置において加熱チャンバーの中に位置付けられた発熱体の50%は、第二の位置において加熱チャンバーの中にもはや位置付けられていないことを意味する。発熱体の第二の位置において、発熱体の70%、80%、または少なくとも90%は加熱チャンバーから引っ込められていることが好ましい。
【0008】
エアロゾル発生装置はハウジングを備える。ハウジングは固体のハウジングであってもよい。ハウジングは外側ハウジングであってもよい。エアロゾル発生装置のすべての構成要素は、ハウジングの中に収容されてもよい。エアロゾル発生装置のすべての構成要素は、ハウジングによって包囲されてもよい。ハウジングは、エアロゾル発生装置のすべての構成要素を覆ってもよい。加熱チャンバーは、ハウジングの中に配設されていることが好ましい。ハウジングは、下記により詳細に説明する通り、電源およびコントローラなどのさらなる要素を備えてもよい。発熱体の引き込み中に、発熱体はハウジングに対して移動する。言い換えれば、発熱体の引き込み中に、ハウジングは静止状態に留まり、一方で発熱体は移動する。加熱チャンバーは静止状態に留まり、一方で発熱体は加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に移動することが好ましい。加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に、エアロゾル発生物品は静止したままであることが好ましい。発熱体は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中にエアロゾル発生装置のさらなる要素に対して移動することが好ましい。模範的に、発熱体は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に電源に対して移動する。発熱体は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中にコントローラに対して移動してもよい。電源およびコントローラのうちの一つ以上は固定であってもよく、一方で発熱体は加熱チャンバーから発熱体を引き付けるために移動可能なように構成されてもよい。発熱体を除くエアロゾル発生装置のすべての構成要素は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に静止したままであることが好ましい。
【0009】
加熱チャンバーは、従来の紙巻たばこに似ている円筒形状を有するエアロゾル発生物品を挿入するための中空の管状形状を有してもよい。物品を挿入するための加熱チャンバーの開口は円形状であってもよい。発熱体は、加熱チャンバーの中で中央に配設された加熱ブレードとして構成されてもよい。
【0010】
発熱体は、発熱体の引き込み後に加熱チャンバーの中に押し戻されてもよい。発熱体の引き込みは、エアロゾル発生物品の挿入の前、または枯渇した物品の取り外しの前に利用されてもよい。使用済みのエアロゾル発生物品から発熱体を引っ込めることは、発熱体上および加熱チャンバーの中のエアロゾル堆積物およびエアロゾル発生基体残留物を低減させる場合がある。これらの効果は、発熱体とエアロゾル発生物品の間の摩擦の低減、および発熱体の画定された引き込み移動に起因して達成される場合がある。発熱体を加熱チャンバーの中に押し込むことは、物品を加熱チャンバーの中に挿入した後に利用されてもよい。発熱体は押し込み中に、物品の中に包含されたエアロゾル発生基体の中に貫通してもよく、またその後エアロゾルを発生するために動作する。
【0011】
加熱チャンバーは、加熱チャンバーの基部に開口を備えてもよく、また発熱体は開口を通して引っ込められるように構成されてもよい。
【0012】
発熱体は、開口の中に摺動可能に配設されてもよい。通常の動作中に、発熱体は、加熱チャンバーの下の装置に取り付けられ、そして開口を通して加熱チャンバーの中に達してもよい。発熱体は、開口を通して、そして加熱チャンバーから離れて、さらにエアロゾル発生装置の中に発熱体を摺動することによって引っ込められてもよい。発熱体は、引き込み後に発熱体が加熱チャンバーの中にもはや配設されないように、発熱体の引き込み中に開口を通して最後まで摺動されてもよい。発熱体は、発熱体の先端のみが加熱チャンバーの中に留まるまで、開口を通して引っ込められてもよい。このようにして、エアロゾル発生基体が開口を通してエアロゾル発生装置に入ることが防止されてもよい。開口は狭いスリットとして構成されてもよい。狭いスリットは、発熱体が加熱ブレードとして構成されている時、発熱体の移動を可能にする場合があり、かつ発熱体の移動中に発熱体からエアロゾル発生基体の残留物をこすり落とす場合がある。
【0013】
装置は、発熱体に接続された引き込み機構をさらに備えてもよい。
【0014】
引き込み機構は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込みを容易にするように構成されてもよい。引き込み機構は、発熱体が引き込み機構によって移動することができるようなやり方で発熱体に接続されてもよい。引き込み機構はまた、発熱体を加熱チャンバーの中に押し戻すことを容易にする場合がある。
【0015】
装置は、電源およびコントローラをさらに備えてもよく、コントローラは引き込み機構への電力供給を制御するように構成されてもよい。
【0016】
コントローラはプロセッサを備えてもよい。コントローラは、電源および引き込み機構と接続されてもよい。電源は電池として構成されてもよい。コントローラは、引き込み機構を制御するための引き込みコントローラと、発熱体を別個に制御するための加熱コントローラとを備えてもよい。
【0017】
引き込み機構は、電気モーター(好ましくは線形電気モーター)、空気圧機構、水圧機構、電磁機構、圧電機構、超音波機構、または重力機構のうちの一つ以上を含む電気駆動機構として構成されてもよい。
【0018】
引き込み機構は、発熱体の直線状の動きを容易にすることが好ましい。発熱体の直線状の動きは、発熱体が加熱チャンバーの中の第一の位置から、本質的に加熱チャンバーの外であり、かつエアロゾル発生装置内の第二の位置に移動することができるような動きであることが好ましい。
【0019】
引き込み機構は、スライダー機構、ねじ機構、カンチレバー機構、押し込み機構、引張機構、ばね機構、弾性機構、ローラー機構、およびギア機構、または磁気的機構、または温度感知機構のうちの一つ以上を備える機械的機構として構成されてもよい。
【0020】
温度感知機構は、温度変化に起因して形状および/または寸法を変化させる形状記憶材料、バイメタル、または任意の他の材料によって実現されてもよい。こうした引き込み機構の構成において、発熱体の作動停止後のより低い温度は、引き込み機構が発熱体を加熱チャンバーから引っ込めることを生じさせるであろうことが好ましい。ヒーターの起動、および従って温度の上昇は、引き込み機構の加熱によって発熱体が加熱チャンバーの中に押し込まれることを生じさせる場合がある。
【0021】
発熱体は複数の加熱ゾーンを備えてもよい。加熱ゾーンは、異なる温度に加熱されるように構成されてもよい。発熱体によって加熱されるエアロゾル発生基体の異なる部分はそれ故に、加熱されてもよい。異なるゾーンは、別個に制御可能かつ動作可能であるように構成されてもよい。
【0022】
引き込み機構は、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミック、およびバイメタルのうちの一つ以上を備えてもよい。引き込み機構は、発熱体を加熱チャンバーから引っ込めるために、また発熱体を加熱チャンバーの中に押し込むために、その形状を変化させるように構成されてもよい。引き込み機構の形状の変化は、特定の温度範囲、特定の波長を有する光、電気の印加、磁界の印加、その他の物理的トリガ、または化学的トリガによって誘起されてもよい。
【0023】
引き込み機構は、発熱体が引っ込められていない第一の位置と、発熱体が完全に引っ込められている第二の位置との間で発熱体を位置付けるように構成されてもよい。それ故に、中間位置は引き込み機構によって実現されてもよい。これらの中間位置は、例えばエアロゾル発生物品中のエアロゾル発生基体の異なるセクションを加熱するように利用されてもよい。引き込み機構は、発熱体を固定された位置に、または連続的な中間位置に位置付けるように構成されてもよい。
【0024】
引き込み機構は支持要素およびガイドを備えてもよく、発熱体は支持要素に接続されてもよく、また支持要素はガイドに摺動可能に接続されてもよい。
【0025】
支持要素は、発熱体のための基部を形成するために構成されてもよい。それ故に、支持要素は、発熱体の引き込み中に発熱体をしっかりと保持するための機能を有してもよい。ガイドは、加熱チャンバーから離れる(引き込み)、および加熱チャンバーの中に戻る(発熱体の押し込みまたは延長)、発熱体の直線状の移動を可能にするために構成されてもよい。結果としてガイドは、加熱チャンバーの長軸方向軸に沿って、または加熱チャンバーの長軸方向軸に平行に配設されていることが好ましい。ガイドは、エアロゾル発生装置のハウジング内に配設されていることが好ましい。ガイドは固定されてもよく、一方で支持要素は移動可能なように構成されてもよい。ガイドと支持要素の間の接続は、ウォームギアなどの任意の周知の手段によって実現されてもよい。
【0026】
引き込み機構は、発熱体を加熱チャンバーに向かって付勢するための付勢機構(好ましくは、ばね)を備えてもよい。
【0027】
ばねなどの付勢機構は、加熱チャンバーに向かって発熱体を付勢する、発熱体に作用する力を容易にする場合がある。それ故に、引き込み機構が起動されていない時、付勢機構は発熱体が加熱チャンバー内にしっかりと位置付けられていることを容易にする場合がある。また、引き込み機構が加熱チャンバーから発熱体を引っ込めた後、付勢機構は、引き込み機構が作動停止した後に発熱体が加熱チャンバーの中に押し戻されることを実現してもよい。
【0028】
装置は、引き込み機構に接続された複数の発熱体を備えてもよい。装置は、各々が一つ以上の発熱体に接続されている複数の引き込み機構を備えてもよい。加熱チャンバーは加熱チャンバーの基部に複数の開口を備え、また発熱体は開口を通して集合的に引っ込められるように構成されてもよいことが好ましい。
【0029】
複数の発熱体が利用され、かつ単一の支持要素に接続されてもよい。これらの複数の発熱体は、エアロゾル発生物品中のエアロゾル発生基体をより均一に加熱するために利用されてもよい。複数の発熱体が共に単一の支持要素に接続されている時、すべての発熱体は共に加熱チャンバーから引っ込められてもよく、また加熱チャンバーの中に押し戻されてもよいことが好ましい。別の方法として、それぞれの支持要素およびそれぞれの発熱体を備えた複数の引き込み機構が提供されてもよい。次に、これらの別個の引き込み機構は、複数の発熱体を相互に別個に加熱チャンバーから引っ込めるために、または加熱チャンバーの中に押し込むために使用されてもよい。この実施形態は、異なる発熱体によってエアロゾル発生基体の異なるセクションを加熱するために利用されてもよい。このようにして異なる加熱スキームを実現してもよい。
【0030】
引き込み機構は、引き込み機構による加熱チャンバーからの発熱体の引き込み後に、発熱体を加熱チャンバーの中に押し込むように構成されてもよい。
【0031】
発熱体の押し込みは、ユーザーによる加熱チャンバーの中への未使用のエアロゾル発生物品の挿入後に利用されてもよい。よって、発熱体と挿入されたエアロゾル発生物品との間に摺動摩擦が生み出されないので、ユーザーはエアロゾル発生物品を加熱チャンバーの中に簡単に挿入することができる。エアロゾル発生物品の挿入後、発熱体は加熱チャンバーの中に押し込まれ、これによってエアロゾル発生物品を貫通する。発熱体は、発熱体が加熱される発熱体の起動後に、加熱チャンバーの中に押し込まれてもよい。加熱チャンバーの中への発熱体の押し込み中に、加熱チャンバー内にエアロゾル発生物品をしっかりと保持するためのクランプ手段が提供されてもよい。クランプ手段は、ニードルとして、またはブレーキシューと類似した要素として構成されてもよい。
【0032】
装置は、起動機構(好ましくは押しボタン)をさらに備えてもよく、発熱体は、起動機構の起動に伴い加熱チャンバーから引っ込められてもよい。
【0033】
起動機構は、ユーザーがエアロゾル発生装置を使用したいことをユーザーが示す機構であってもよい。それ故に、起動機構はボタンとして提供されていることが好ましい。しかしながら、起動機構はまた、通信インターフェースなどの異なる構成を有してもよい。通信インターフェースは、ユーザーが外部装置によって外部から起動機構を起動しうるように、スマートフォンまたはスマートウォッチなどの外部装置に接続可能であってもよい。
【0034】
ユーザーは、エアロゾル発生物品を加熱チャンバーの中に挿入する前に、起動機構を起動してもよい。発熱体は次に、加熱チャンバーの中への物品の挿入を容易にするために、加熱チャンバーから引っ込められてもよい。動作前に、ユーザーは、発熱体を加熱チャンバーの中に押し戻し、これによって物品を貫通するために起動機構を使用してもよい。装置の動作および物品の枯渇の後、ユーザーは、枯渇した物品の取り外しのために、起動機構を使用して発熱体を加熱チャンバーから引っ込めてもよい。
【0035】
発熱体は、加熱チャンバー内で中央に整列されてもよく、また加熱チャンバーの長軸方向の中心軸に沿って引き込み可能であるように構成されてもよい。
【0036】
加熱チャンバーの基部にある開口は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に発熱体から残留物を除去するように構成されたクリーニング要素を備えてもよい。
【0037】
クリーニング要素は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に発熱体の表面から望ましくない残留物を除去するように構成されていることが好ましい。クリーニング要素は、加熱チャンバーに固定されてもよい。クリーニング要素は取り外し可能なように構成されてもよい。クリーニング要素は、エアロゾル発生基体の望ましくない残留物が引き込み中に発熱体の表面からこすり落とされるように、発熱体の表面に対して同一平面上に置かれていることが好ましい。発熱体は、摩擦する、ブラッシングする、こする、拭く、または任意のその他の動作によって、発熱体の表面上の望ましくない残留物を除去するように構成されてもよい。発熱体は、加熱チャンバーの基部にて開口の隣に配設されてもよい。クリーニング要素はリング形状を有してもよい。クリーニング要素は、ブラシ、マイクロ繊維クローブ、および発泡体のうちの一つ以上を含んでもよい。クリーニング要素は、発熱体の外周を包囲してもよい。クリーニング要素は、発熱体に直接接触するように、かつ発熱体の外周を包囲するように構成されたビーズを備えてもよい。
【0038】
本発明はまた、発熱体をエアロゾル発生装置の加熱チャンバーから引っ込めるための方法に関する。方法は以下の工程を含む。
i)ハウジングと、エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、発熱体とを備えるエアロゾル発生装置を提供する工程であって、発熱体が加熱チャンバーの中に配設されていて、かつ発熱体が、発熱体がエアロゾル発生基体を貫通する第一の位置に配設されるように構成されていて、また発熱体が加熱チャンバーから少なくとも部分的に引っ込められる第二の位置に配設されるように構成されていて、発熱体が加熱チャンバーからの引き込み中にハウジングに対して移動するように構成されている、工程と、
ii)発熱体を加熱チャンバーから引っ込める工程。
【0039】
以下において添付図面を参照しながら、発明を、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、引っ込められた発熱体および押し込まれた発熱体を有する、本発明によるエアロゾル発生装置である。
【
図2】
図2は、引き込み機構および発熱体の異なる構成を有する、本発明によるエアロゾル発生装置である。
【
図3】
図3は、異なる起動機構を有する、本発明によるエアロゾル発生装置である。
【
図4】
図4は、クリーニング要素を有する、本発明によるエアロゾル発生装置である。
【
図5】
図5は、引き込み機構が形状記憶材料を含む、引き込み機構の構成である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明によるエアロゾル発生装置を示す。エアロゾル発生装置は、加熱チャンバー12を有するハウジング10を備える。加熱チャンバー12内には、発熱体14を配設することができる。
図1の左部、つまり
図1Aにおいて、発熱体14は加熱チャンバー12から引っ込められている。
図1の右部、つまり
図1Bにおいて、発熱体14は加熱チャンバー12内に位置付けられている。言い換えれば、発熱体14は
図1Bにおいて、加熱チャンバー12の中に押し込まれている。たばこなどのエアロゾル発生基体を含むエアロゾル発生物品16を、加熱チャンバー12の中に挿入することができる。発熱体14が加熱チャンバー12から引っ込められている時、エアロゾル発生物品16は発熱体14と接触しないか、または発熱体14の先端にわずかに接触するのみである。発熱体14が加熱チャンバー12の中に押し込まれている時、発熱体14はエアロゾル発生物品16の中に貫通する。
【0042】
エアロゾル発生装置はまた、引き込み機構18を備える。引き込み機構18は、発熱体14を加熱チャンバー12から引っ込めるために、また発熱体14を加熱チャンバー12の中に押し込むために構成されている。引き込み機構18は、コントローラ20によって制御されている。コントローラ20は、引き込み機構18を制御するための引き込みコントローラ22などの異なる要素を備えてもよい。コントローラ20はまた、発熱体14の動作を制御するための加熱コントローラ24も備えてもよい。加熱コントローラ24は、エアロゾル発生装置の動作中に発熱体14を起動するように、またエアロゾル発生装置が動作していない時に発熱体14を作動停止するように構成されてもよい。コントローラ20は電源26に接続されている。電源26は電池として構成されていることが好ましい。加熱コントローラ24は、電池から発熱体に向かう電気エネルギーの供給を制御する。引き込みコントローラ22および加熱コントローラ24は、別個に制御可能なように構成されている。それ故に発熱体14は、発熱体14の動作とは無関係に引っ込められてもよく、また押し込まれてもよい。
【0043】
引き込み機構18は、発熱体14が接続されている支持要素28を備える。支持要素28はガイド30に接続されていて、このガイド30は、発熱体14の引き込み中および押し込み中に支持要素28がガイド30に沿って摺動することができるように構成されている。ガイド30は発熱体14の長軸方向軸に沿って延び、これによって、引き込み中および押し込み中の発熱体14の移動はまた、加熱チャンバー12の長軸方向軸に沿っている、または平行である。ガイド30は、ウォーム駆動を実現するための鋸歯および支持要素28、かさ歯車を含むことが好ましい。
【0044】
図2は、引き込み機構18の異なる実施形態を示す。
図2Aおよび
図2Bにおいて、ばねとして構成された付勢要素32は、引き込み機構18の支持要素28を加熱チャンバー12に向かって付勢するために描写されている。このようにして、発熱体14は、引き込み機構18が動作していない時に、加熱チャンバー12の中に押し込まれている。また、加熱チャンバー14からの発熱体12の引き込み後、加熱チャンバー12の中への発熱体14の押し込みは簡略化されている。これに関して、付勢要素32は、引き込み機構18が作動停止した時に、発熱体14を加熱チャンバー12の中に押し戻してもよい。また、引き込み機構18は、付勢要素32とともに補助して、発熱体14を加熱チャンバー12の中に押し戻し、かつ潜在的にエアロゾル発生物品16の中に押し込んでもよい。付勢要素32は、支持要素28と加熱チャンバーの基部とに接続されている。
【0045】
図2Cは、二つの別個の発熱体14が提供されているが、引き込み機構18の単一の支持要素28に共に接続されている実施形態を示す。二つの発熱体14の引き込みおよび押し込みを容易にするために、加熱チャンバー12の基部に二つの開口が提供されていることが好ましい。
【0046】
図2Dにおいて、二つの発熱体14も提供されている。
図2Cと比較して、
図2Dの実施形態において、二つの発熱体14には別個の引き込み機構18が提供されている。この実施形態において、例えば挿入されたエアロゾル発生物品の異なる部分を加熱するために、発熱体14は相互に別個に加熱チャンバー12から引っ込められてもよく、また加熱チャンバー12の中に押し込まれてもよい。
【0047】
図2Eは、
図2Cおよび
図2Dに示す実施形態が組み合わされた実施形態を示す。これに関して、二つの別個の引き込み機構18が提供されていて、一つの引き込み機構18は一つの発熱体14を備え、そして一つの引き込み機構18は二つの発熱体14を備える。
【0048】
望む通りに、必要なだけ多くの引き込み機構18には、必要なだけ多くの発熱体14が提供されうることが望ましい。
【0049】
図3は、引き込み機構18の動作についての異なる実施形態を示す。
図3Aにおいて、引き込み機構18はユーザー34によって動作される。これに関して、支持要素28は、ユーザー34によって動作されることができるタブを備える。ユーザー34は、支持要素28をガイド30に沿って摺動させ、これによって発熱体14を移動することができる。よって、ユーザー34は、発熱体14を加熱チャンバー12から手動で引っ込めることができ、また発熱体14を加熱チャンバー12の中に押し込んで戻すことができる。タブは、ユーザーによってアクセス可能であるために、装置のハウジング10にあるスリットを通して突出してもよく、一方でガイド30および支持要素28の残りの部分はハウジング10内に配設されている。
【0050】
図3Bにおいて、引き込み機構18は、ボタンなどの起動機構36によって動作される。ボタンの動作に伴い、ユーザーは発熱体14を加熱チャンバー12から引っ込めることができ、または発熱体14を加熱チャンバー12の中に押し込んで戻す。
【0051】
図3Cは、起動機構36がスマートフォンまたはスマートフォン38などの外部装置とともに通信インターフェースによって実現される実施形態を示す。
【0052】
図4は、加熱チャンバー12からの引き込み中に、および加熱チャンバー12の中への押し込み中に、発熱体14をクリーニングするためのクリーニング要素40を示す。クリーニング要素30は、加熱チャンバー12の基部にて開口の周りに配設されている。クリーニング要素30は、発熱体14に対して同一平面上に置かれ、これによって、発熱体14の加熱チャンバー12からの、またエアロゾル発生装置の中への引き込み中に、エアロゾル発生基体またはエアロゾルの残留物は発熱体14から自動的に除去される。クリーニング要素によって、エアロゾル発生基体またはその他の残留物が、加熱チャンバー12の基部にある開口を通してエアロゾル発生装置に入ることも防止される。
図4Cで分かる通り、発熱体14は加熱チャンバー12から完全には引っ込められない。発熱体14の先端は加熱チャンバー12の中に留まっている。発熱体14は、加熱チャンバーの基部と整列するように引っ込められてもよい。
【0053】
図5は、引き込み機構18が形状記憶合金、形状記憶ポリマー、または形状記憶セラミックなどの形状記憶材料を含む引き込み機構18の異なる実施形態を示す。バイメタルも利用されてもよい。
図5Aは、引き込み機構18が形状記憶材料を含む実施形態を示す。この材料は、発熱体が異なる位置の間で移動することを可能にする。第一の位置において、発熱体は加熱チャンバーから部分的にまたは完全に引っ込められている。第二の位置において、発熱体は部分的にまたは完全に加熱チャンバーの中に挿入されていて、エアロゾル形成物品のエアロゾル形成基体の中に貫通する。第三の位置において、発熱体は加熱チャンバーの中に完全に押し込まれていて、エアロゾル発生物品中のエアロゾル形成基体のその他の部分を加熱する。
図5に示すすべての実施形態において、引き込み機構18は、引き込み機構18の加熱および冷却によって動作する。引き込み機構18は、加熱に伴い発熱体12を加熱チャンバー10の中に押し込み、また冷却に伴い発熱体12を加熱チャンバー10から引っ込めることが好ましい。引き込み機構18は、コントローラ20による電源26から引き込み機構18への電気エネルギーの供給によって加熱されることが好ましい。
【0054】
図5Bは、引き込み機構18が複数の湾曲した細片を備える実施形態を示す。細片が加熱される時、細片の曲率が変化し、これによって発熱体をエアロゾル形成基体に向かって押す。
図5Cは、引き込み機構18が、発熱体を移動させるためにカンチレバーを押す、または引くように構成された形状記憶要素を備える実施形態を示す。
図5Dは、引き込み機構18が形状記憶材料の巻き上げコイルを備える実施形態を示す。加熱された時、コイルは巻き出され、発熱体12を移動する。
図5Eは、引き込み機構18が形状記憶材料およびヒンジを備える実施形態を示す。ヒンジは、カンチレバー機構の位置を変化させ、これは発熱体を移動する。
図5Fは、引き込み機構18が、発熱体の位置を調整するために協働するコイルまたはばねなどの複数の形状記憶要素を備える実施形態を示す。
図5Gは、引き込み機構18が、収縮によって発熱体を加熱チャンバーの中に引っ張ることができる一つ以上の形状記憶ばねまたはコイルを備える実施形態を示す。コイルは、引き込み機構18の中心軸要素の周りに配設されている。
図5Hは、引き込み機構18が相反作用を実行するように構成された複数の形状記憶構成要素を備える実施形態を示す。一つの形状記憶要素または要素の一つの群は、発熱体を一つの位置から別の位置に移動させる。別の形状記憶要素または要素の別の群は、発熱体を元の位置に移動して戻す。