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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】蛋白尿の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/402 20060101AFI20220816BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K31/402
A61P13/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020569866
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066578
(87)【国際公開番号】W WO2019243625
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】18179319.1
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520486395
【氏名又は名称】シナクト ファーマ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン,トーマス エンゲルブレクト ノードキルド
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-539809(JP,A)
【文献】PLOS ONE,2014年,Vol.9, Issue 1, e87816,p.1-7
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2016年,Vol.6, No.1,p.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/402
A61P 13/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性ネフローゼ症候群(原発性糸球体腎症)の治療における使用のための
の互変異性体および立体異性体を含む式(Ia):
【化1】
の化合物であって、式中、
nが、1であり;
が、CF 、CCl 、F、Cl、NO またはCNであり、R 、R 、R 、R 、R およびR が、水素である、
化合物、あるいはその薬学的に許容されるを含む組成物。
【請求項2】
前記化合物が、MC1Rを介するメラニン形成を刺激しない、MC1RおよびMC3Rの偏向アゴニストである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記原発性ネフローゼ症候群が、膜性糸球体腎炎(MGN)(または膜性腎症(MN))である、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記原発性ネフローゼ症候群が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)である、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記原発性ネフローゼ症候群が、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)(メサンギウム毛細管性糸球体腎炎)であり、例えば1型MPGNおよび2型MPGNから選択されるMPGNである、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記原発性ネフローゼ症候群が、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)(半月体形成性GN)である、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記原発性ネフローゼ症候群が、微小変化群(MCD)である、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記化合物が、その互変異性体および立体異性体を含む、式(II)
【化2】
のもの;またはその薬学的に許容されるである、請求項1~のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記化合物が、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジンおよび(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項1~のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記その薬学的に許容されるが、無機酸または有機酸の薬学的に許容される塩である、請求項1~のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記有機酸が、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群より選択され、例えば前記有機酸が、酢酸、コハク酸、酒石酸またはプロピオン酸であり、例えば前記有機酸が、酢酸であり、および/または前記無機酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸および硝酸からなる群より選択される、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記化合物が、(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート(AP1189)である、請求項1~11のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、腎疾患の治療のために使用される1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分などの、1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分を、別個にまたは一緒に、含む、請求項1~12のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記化合物が、1日当たり1~1000mg、例えば1~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20~30mg、30~60mg、60~80mg、80~100mg、100~130mg、130~160mg、160~200mg、200~240mg、240~280mg、280~320mg、320~360mg、360~400mg、400~440mg、440~500mg、500~560mg、560~620mg、620~680mg、680~740mg、740~800mg、800~860mg、860~920mg、920~980mg、980~1000mgなど、例えば1日当たり500~1000mgの量で投与される、請求項1~13のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項15】
(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート(AP1189)を含む、微小変化群(MCD)などの原発性ネフローゼ症候群の治療における使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)、(Ia)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患、特にネフローゼ症候群などの蛋白尿腎疾患の治療法に使用するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糸球体障害の顕著な特徴である蛋白尿は、尿検査でよくみられる所見であり、それ自体が、糖尿病患者の末期腎疾患、心血管系由来の早死、および虚血性脳卒中の強力で独立した是正可能な危険因子である。最近の進歩にもかかわらず、難治性蛋白尿は依然として臨床現場の課題である。糸球体障害を改善し、蛋白尿の寛解を誘導するためにさらに効果的な様式を開発することが不可欠である。最近得られた証拠から、メラノコルチン系が蛋白尿の新規な治療標的として挙げられている。
【0003】
膜性腎症(MN)は、成人のネフローゼ症候群の最もよくみられる原因の1つである。その患者の3分の1が予後良好であり、自然寛解がみられる。とは言え、残りの約50%には病状の変化がみられず、50%がESRD(末期腎疾患)および透析へと進行する。ネフローゼ症候群は、蛋白尿、浮腫、低アルブミン血症、および高脂血症を特徴とする糸球体疾患である。MNの症例の大部分が特発性であり、同疾患の根底にある機序は、未だほとんどわかっていない。治療は古典的には非特異的であり、抗炎症作用のあるステロイドを、場合によっては細胞毒性薬と組み合わせて用いることが多い。これらの薬物は、複数の組織に影響を及ぼし、細胞毒性効果、骨粗鬆症、副腎機能不全、高血圧、消化性潰瘍、ならびにグルコース不耐性および感染のリスク増大を引き起こす。したがって、さらに効果的で特異的な治療選択肢が必要とされている。
【0004】
メラノコルチン系は、メラニン形成、ストレス応答、炎症、免疫調節、および副腎皮質ステロイド産生を含む、多種多様な生理機能の恒常性統御に不可欠な役割を果たす神経ペプチド作動性シグナル伝達経路と免疫内分泌シグナル伝達経路のセットである。それは、5種類のGタンパク質共役メラノコルチン受容体:メラノコルチン受容体1(MC1R)~MC5R;ペプチドリガンド:α、β、γ-メラニン細胞刺激ホルモン(α、β、γ-MSH)、下垂体前葉によって分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);および内在性アンタゴニストを含む、複数の構成要素からなる。メラノコルチン系の生物学的機能は、5種類のメラノコルチン受容体(MCR)によって媒介され、それらは組織内分布が異なり、異なるシグナルを伝達しかつ様々な器官系で様々な生物活性を発揮する。
【0005】
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、内在性ペプチドホルモンであるとともに、メラノコルチン受容体1~5(MC1~5R)すべてに対するアゴニストであり、MC1~5RのうちMC2Rは、ACTHを特異的に結合し;ステロイド生成は、副腎皮質でACTHによってのみ惹起され、MC2Rによって媒介される。アルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)は、小型の内在性ペプチドホルモンであり、ACTHと構造的に関連があり、MC2Rを除く全てのMCRを結合する。MC1Rは、皮膚でメラノサイトによって大量に発現され、メラニン形成の鍵となる制御点であり、毛髪の色を決定する。
【0006】
ACTHまたは非ステロイド産生メラノコルチンペプチドを用いることによるメラノコルチン療法は、実験的糸球体疾患の蛋白尿および糸球体障害を軽減し、膜性腎症(MN)、微小変化群(MCD)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、およびIgA腎症を含む、多様な糸球体症の患者、場合によってはステロイド抵抗性の患者においてネフローゼ症候群の寛解を誘導する。その根底にある機序は未だ捉えどころがないが、メラノコルチン1受容体(MC1R)の役割が関与するとされており、MC1Rは、ヒト腎臓の皮質および足細胞を含む特定の腎細胞型で大量かつ特異的に発現される(Lindskog et al.2010)。一方、最近の研究は、ドミナントネガティブMC1R変異を有する患者においてもACTH単独療法およびNDP-αMSH([Nle、D-Phe]-αMSH)の効果を認めており、このことは、MC1R-nullマウスでも、MC1R-nullマウスおよび野生型マウスに由来する初代足細胞においてin vitroでも確認されている。したがって、メラノコルチンシグナル伝達の抗蛋白尿作用は、ステロイド産生に依存せずMC1R不要であると思われ、メラノコルチンの作用は、少なくとも部分的には、あらゆる蛋白尿腎疾患に共通の病原経路を標的とするのではないかと思われる。足細胞は、糸球体の透過性および選択性を制御する糸球体ろ過バリアの極めて重要な構成要素であり、多様な糸球体疾患での重度の蛋白尿を説明する主な原因であると考えられる。メラノコルチン療法の有益な効果は、足細胞に対する直接的作用に起因する可能性が高い(Qiao et al.2016).
【0007】
このため、現時点では、いずれのメラノコルチンアゴニストおよび関連するいずれの標的が、腎疾患などの蛋白尿疾患の治療に有用な候補となるか予測することは不可能である。
【0008】
メラノコルチン受容体に対する活性を有するフェニルピロールアミノグアニジン誘導体が、国際公開第2007/141343号で開示されている。このような化合物の1つの例は、抗炎症性AP1189((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)であり、この化合物は、MC1Rを結合することが最初に示され(国際公開第2007/141343号)、のちに、標準的なcAMP生成(したがって、MC1R誘導性メラニン形成)を引き起こさないが代わりにERK1/2-リン酸化およびCa2+動員を含む代替経路を誘導すると思われる、受容体MC1RおよびMC3Rに対する偏向二重アゴニストとして同定された(Montero-Melendez et al.2015)。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、フェニルピロールアミノグアニジン誘導体AP1189((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)が、アルブミン排泄率およびFRAlb(アルブミン排泄比)の顕著な減少として測定されるように、溶媒と比較して、腎障害モデルである受身Haymann腎炎での蛋白尿を顕著に軽減し;また、ACTH(1-24)を用いた治療よりもGFR(糸球体ろ過量;クレアチニンクリアランス)が顕著に高くかつFRAlbが顕著に低いことを明らかにした。このことは、AP1189および関連化合物が蛋白尿腎疾患の改善された治療の候補であることを示唆している。
【0010】
鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(I)または(Ia):
【化1】
の化合物であって、式中、
nが、1、2、または3であり;
、R、R、R、およびRがそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されるC1~6-アルキル、任意選択で置換されるC3~6-シクロアルキル、任意選択で置換されるC2~6-アルケニル、任意選択で置換されるC4~6-アルカジエニル、任意選択で置換されるC2~6-アルキニル、ヒドロキシ、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシ、任意選択で置換されるC2~6-アルケニルオキシ、カルボキシ、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシカルボニル、任意選択で置換されるC1~6-アルキルカルボニル、ホルミル、C1~6-アルキルスルホニルアミノ、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるアリールオキシ、任意選択で置換されるアリールカルボニル、任意選択で置換されるアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシ、任意選択で置換されるヘテロアリールカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、任意選択で置換されるヘテロシクリル、任意選択で置換されるヘテロシクリルオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロシクリルオキシ、任意選択で置換されるヘテロシクリルカルボニル、任意選択で置換されるヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、アミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1~6-アルキルアミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、C1~6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1~6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ-C1~6-アルキル-カルボニルアミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1~6-アルカノイルオキシ、C1~6-アルキルスルホニル、C1~6-アルキルスルフィニル、C1~6-アルキルスルホニル-オキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノスルホニル、ニトロ、任意選択で置換されるC1~6-アルキルチオ、ならびにハロゲンからなる群より選択され、任意の窒素結合C1~6-アルキルが任意選択で、ヒドロキシ、C1~6-アルコキシ、C2~6-アルケニルオキシ、アミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ、カルボキシ、C1~6-アルキルカルボニルアミノ、ハロゲン、C1~6-アルキルチオ、C1~6-アルキル-スルホニル-アミノ、またはグアニジンで置換され;
およびRがそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されるC1~6-アルキル、任意選択で置換されるC2~6-アルケニル、任意選択で置換されるC4~6-アルカジエニル、任意選択で置換されるC2~6-アルキニル、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシカルボニル、任意選択で置換されるC1~6-アルキルカルボニル、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるアリールカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールカルボニル、アミノカルボニル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、ならびにモノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニルからなる群より選択されるか;または、RとRが一緒に5員もしくは6員含窒素環を形成してよい、
化合物、あるいはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物を提供することが本開示の一態様である。
【0011】
鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(II):
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物を提供することもまた本開示の一態様である。
【0012】
{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートからなる群より選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物を提供することもまた本開示の一態様である。
【0013】
一実施形態では、上記腎疾患は、蛋白尿を示す腎疾患である。
【0014】
一実施形態では、上記腎疾患は、糸球体の足細胞に影響を及ぼす疾患などの、糸球体疾患である。
【0015】
一実施形態では、上記腎疾患は、原発性ネフローゼ症候群または続発性ネフローゼ症候群などの、ネフローゼ症候群(糸球体腎症)である。
【0016】
定義
本文脈における「薬学的に許容される誘導体」という用語は、患者に有害でない塩を意味する、薬学的に許容される塩を含む。このような塩は、薬学的に許容される塩基または酸付加塩、ならびに薬学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、およびアルキル化アンモニウム塩を含む。薬学的に許容される誘導体は、活性化合物へと生物学的に代謝され得る化合物のエステルおよびプロドラッグ、または他の前駆体、あるいは化合物の結晶形をさらに含む。
【0017】
「酸付加塩」という用語は、患者に有害でない塩を意味する、「薬学的に許容される酸付加塩」を含むことが意図される。酸付加塩は、無機酸および有機酸の塩を含む。適切な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。適切な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。薬学的に許容される無機または有機酸付加塩のさらなる例としては、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharm.Sci.66,2,(1977)に列挙される薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される化合物の「治療有効量」という用語は、所与の疾患または障害およびその合併症の臨床症状を治癒させる、軽減する、予防する、そのリスクを低下させる、またはそれを部分的に阻止するために十分な量を指す。このことを達成するために十分な量は「治療有効量」と定義される。各目的に対する有効量は、疾患または損傷の重症度、ならびに対象の体重および全身状態によって決まる。適切な用量の決定は、日常的な実験を用いて、数値のマトリックスを構築し、マトリックス内の様々なポイントを試験することによって達成され得、いずれも訓練を受けた医師または獣医師の通常の技術の範囲内に収まるものであることが理解されよう。
【0019】
本明細書で使用される「治療」および「治療すること」という用語は、病態、疾患、または障害に対処する目的で患者を管理および治療することを指す。この用語は、患者が罹患している所与の病態の全範囲の治療を含むと意図される。治療される対象は好ましくは、哺乳動物、特にヒトである。動物、例えばマウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、およびブタ、の治療もしかし、本文脈の範囲内に含まれる。治療される対象は、様々な年齢であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】被験化合物1(AP1189;((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)で治療したラットは、対照ラット(溶媒)と比べ第28日および第42日で蛋白尿が有意に減少した。対照ラットは、いずれの時点でも変化のないアルブミン排泄を維持したのに対し、被験化合物1で治療したラットは、第28日にアルブミン排泄率の31±8%の減少、第482日にアルブミン排泄率の48±10%の減少を示す。詳細については実施例を参照されたい。
図2A】被験化合物1(AP1189;((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)で治療したラットは、陽性対照(ACTH1-24)で治療したラットよりも4週間の治療後のGFR(クレアチニンクリアランス)が有意に高かった: i)10mg/日での陽性対照:2.19±0.24mL/分 ii)20mg/kgでの被験化合物1:3.12±0.14mL/分(p=0.002) iii)40mg/kgでの被験化合物1:2.94±0.14mL/24分(p=0.01)。
図2B】被験化合物1(AP1189;((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)で治療したラットは、陽性対照(ACTH1-24)よりもアルブミン排泄比(FEAlb)が有意に減少した: i)10mg/日での陽性対照:0.59±0.02% ii)20mg/kgでの被験化合物:0.045±0.04%(p=0.007) iii)40mg/kgでの被験化合物1:0.35±0.05%(p=0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
クラスA Gタンパク質共役受容体(GPCR)の1つのファミリーであるメラノコルチン(MC)受容体(MC1R~MC5R)は、それらの広い分布、かつそれらが制御する多様な生理的過程のため、多数の病態の魅力的な治療標的である。MC1Rは、白血球上でのその発現により、UV光による皮膚の日焼けおよび他の免疫応答を制御する。MC2Rは副腎でのコルチゾール産生を制御し、一方でMC5Rは外分泌腺分泌に何らかの役割を果たしている。MC3RおよびMC4Rは、特異的な抗炎症性の役割に加えて、エネルギー恒常性に対して不可欠な機能を発揮し;MC3Rの活性化は、関節炎などの関節の炎症に対し特に保護作用を示し、MC4Rは、脳炎症において神経保護作用を示す。したがって、皮膚病態、心血管系病態、関節炎、肥満症、および悪液質を含む多数の病的状態を、MCR薬物により標的にできる。
【0022】
末梢のMC1RおよびMC3Rを薬理学的に活性化して抗炎症作用を誘導できる。内在性アゴニストのα-メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)は、他の保護的メディエーターと同様に、免疫細胞により放出されて炎症誘発性シグナルを相殺し、それにより過剰な組織損傷を防ぐ。炎症の概念について解明されていることに従えば、MC1RおよびMC3Rを標的とする治療薬は、身体自身の保護要員を模倣することによって作用し、かつ副作用のより軽い負担を特徴とすると考えられる。
【0023】
1950年代初め以来リウマチ性疾患に効果的であることが示されてきた、副腎皮質刺激ホルモンまたはアドレノコルチコトロピン(ACTH)の使用は、合成グルココルチコイドが利用可能になり減少した。しかし、免疫細胞上の末梢MC受容体の活性化に関与するACTHの代替的抗炎症機序が発見されたことにより、痛風またはRA(関節リウマチ)などの関節疾患の治療のためにステロイド産生作用のない新規なACTH様分子を開発することに再び注目が集まっている。しかし、市販のACTH製剤以外の新規なMC薬物の移動送達は、これまでに受容体の選択性が得られていないことにより、制約が課されている。
【0024】
Gタンパク質共役受容体創薬における革新的な方法があれば、この制約を克服できると考えられる。アロステリック調節は、アロステリック部位と呼ばれる、受容体タンパク質の異なる部位に結合することにより内在性リガンドの作用を増強する(正の調節)または低下させる(負の調節)ある分子の能力で構成される。アロステリック領域は5種類のMCRの間でそれほど保存されていないので、より高い程度の選択性が予想され、実際、MC4Rでのアロステリックモジュレーターが現在、肥満の治療に向けて開発中である。
【0025】
治療で大きな注目を集めている別の新しい概念は、偏向アゴニズムの概念である。受容体が2種類の特有のコンホメーション、活性なコンホメーションと不活性なコンホメーション、で存在し得るという古い見解は、活性なコンホメーションが複数存在し、各コンホメーションが異なるシグナルを生じ複数の機能的結果をもたし得るという概念に置き換わっている。受容体の活性化は、線形的で静的であるというよりはむしろ、様々な分子により多様な活性なコンホメーションが誘導され異なる作用をもたらす、極めて動的で多次元的な過程であることが明らかになりつつある。
【0026】
小分子であるAP1189((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)は、受容体MC1RおよびMC3Rでの偏向アゴニストであると特徴付けされており、それは標準的なcAMP生成を引き起こさないが、マウス初代マクロファージで起こるエフェロサイトーシス促進作用を担うシグナル伝達であるERK1/2リン酸化を引き起こす。AP1189は、マクロファージでのサイトカイン放出を減少させることが示された一方で、メラニン形成はメラノサイトでAP1189により誘導されなかった。in vivoでは、経口AP1189は、腹膜炎における抗炎症作用を引き起こし、実験的炎症性関節炎における消散期を加速し、関節破壊の肉眼的および組織学的パラメータを顕著に減少させた。AP1189はしたがって、抗炎症特性を有するとともにメラニン形成に対する作用のない、MC1RおよびMC3Rでの偏向二重アゴニストである。
【0027】
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)または非ステロイド産生メラノコルチンペプチドを用いることによるメラノコルチン療法は、実験的糸球体疾患での蛋白尿および糸球体障害を軽減し、多様な糸球体症の患者、さらにステロイド抵抗性の患者におけるネフローゼ症候群の寛解を誘導する。
【0028】
糸球体障害の顕著な特徴である蛋白尿は、尿検査でよくみられる所見であり、それ自体が、糖尿病患者の末期腎疾患、心血管系由来の早死、および虚血性脳卒中の強力で独立した是正可能な危険因子である。最近の進歩にもかかわらず、難治性蛋白尿は依然として臨床現場の課題である。
【0029】
鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(I)または(Ia):
【化3】
の化合物であって、式中、
nが、1、2、または3であり;
、R、R、R、およびRがそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されるC1~6-アルキル、任意選択で置換されるC3~6-シクロアルキル、任意選択で置換されるC2~6-アルケニル、任意選択で置換されるC4~6-アルカジエニル、任意選択で置換されるC2~6-アルキニル、ヒドロキシ、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシ、任意選択で置換されるC2~6-アルケニルオキシ、カルボキシ、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシカルボニル、任意選択で置換されるC1~6-アルキルカルボニル、ホルミル、C1~6-アルキルスルホニルアミノ、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるアリールオキシ、任意選択で置換されるアリールカルボニル、任意選択で置換されるアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシ、任意選択で置換されるヘテロアリールカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、任意選択で置換されるヘテロシクリル、任意選択で置換されるヘテロシクリルオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロシクリルオキシ、任意選択で置換されるヘテロシクリルカルボニル、任意選択で置換されるヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、アミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1~6-アルキルアミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、C1~6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1~6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ-C1~6-アルキル-カルボニルアミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1~6-アルカノイルオキシ、C1~6-アルキルスルホニル、C1~6-アルキルスルフィニル、C1~6-アルキルスルホニル-オキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノスルホニル、ニトロ、任意選択で置換されるC1~6-アルキルチオ、ならびにハロゲンからなる群より選択され、任意の窒素結合C1~6-アルキルが任意選択で、ヒドロキシ、C1~6-アルコキシ、C2~6-アルケニルオキシ、アミノ、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ、カルボキシ、C1~6-アルキルカルボニルアミノ、ハロゲン、C1~6-アルキルチオ、C1~6-アルキル-スルホニル-アミノ、またはグアニジンで置換され;
およびRがそれぞれ独立に、水素、任意選択で置換されるC1~6-アルキル、任意選択で置換されるC2~6-アルケニル、任意選択で置換されるC4~6-アルカジエニル、任意選択で置換されるC2~6-アルキニル、任意選択で置換されるC1~6-アルコキシカルボニル、任意選択で置換されるC1~6-アルキルカルボニル、任意選択で置換されるアリール、任意選択で置換されるアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるアリールカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリール、任意選択で置換されるヘテロアリールオキシカルボニル、任意選択で置換されるヘテロアリールカルボニル、アミノカルボニル、モノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニル、ならびにモノおよびジ(C1~6-アルキル)アミノ-C1~6-アルキル-アミノカルボニルからなる群より選択されるか;または、RとRが一緒に5員もしくは6員含窒素環を形成してよい、
化合物、あるいはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物を提供することが本開示の一態様である。
【0030】
鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(I)または(Ia):
【化4】

の化合物であって、式中、n、R、R、R、RおよびR、RおよびRがそれぞれ、上に定義した通りである化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む組成物の、腎疾患の治療のための薬物の製造のための、使用を提供することも本開示の一態様である。
【0031】
腎疾患を治療するための方法であって、鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(I)または(Ia):
【化5】

の化合物であって、式中、n、R、R、R、RおよびR、RおよびRがそれぞれ独立に、上に定義した通りある化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与する1つまたは複数の段階を含む、方法を提供することも本開示の一態様である。
【0032】
本開示はまた、鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む式(II):
【化6】

の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物も提供する。
【0033】
一実施形態では、上で定義した式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療での使用のための組成物が提供され、上記腎疾患は、蛋白尿を示す。
【0034】
蛋白尿は、尿中の過剰のタンパク質の存在である。健常者では、尿はタンパク質をほとんど含まず、過剰であることは病気を示唆する。蛋白尿を引き起こす主な機序は、腎臓(特に糸球体)の疾患または腎損傷、血清中のタンパク質量の増大(溢流性蛋白尿)、近位尿細管での低再吸収、特定の生物学的薬剤、および過剰の液体摂取である。
【0035】
蛋白尿は、1日で体表面積1.73m当たり3.5g超、または小児では1時間で体表面積1平方メートル当たり40mg超と定義され得る。
【0036】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、1日で体表面積1.73m当たり3.5g超、または小児では1時間で体表面積1平方メートル当たり40mg超と定義される蛋白尿を示す。
【0037】
「蛋白尿を示す腎疾患」は、蛋白尿が前記腎疾患に伴う症状または徴候であることを意味する。「蛋白尿を示す腎疾患」は、蛋白尿と関わる腎疾患、または蛋白尿を伴う腎疾患、または蛋白尿腎疾患と記載されることもある。
【0038】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、糸球体の足細胞に影響を及ぼす疾患などの、糸球体疾患である。
【0039】
糸球体疾患は、糸球体疾患または、他の基礎疾患または影響などの、任意の他の刺激により引き起こされる任意のタイプの糸球体障害を表すこともある。
【0040】
本文脈における疾患「により引き起こされる」という用語は、傷害が、基礎疾患などの疾患の原因または結果として、すなわち、病的状態の結果として生じる、または現れることを意味する。
【0041】
一実施形態では、一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、ネフローゼ症候群(糸球体腎症)である。
【0042】
ネフローゼ症候群は、蛋白尿、低血中アルブミンレベル、高血中脂質、および重度の腫脹を含む、腎損傷による一群の症状である。他の症状としては、体重増加、疲労感、および尿の泡立ちが挙げられる。合併症としては、血餅、感染症、および高血圧が挙げられる。原因は多数の腎疾患を含み、例えば糖尿病または狼瘡の合併症として起こることもある。根底にある機序は通常、腎臓の糸球体の損傷を含む。
【0043】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、原発性ネフローゼ症候群(原発性糸球体腎症)である。
【0044】
一実施形態では、上記原発性ネフローゼ症候群は、膜性糸球体腎炎(MGN)(または膜性腎症(MN))である。
【0045】
一実施形態では、上記原発性ネフローゼ症候群は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)である。
【0046】
一実施形態では、上記原発性ネフローゼ症候群は、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)(メサンギウム毛細管性糸球体腎炎)である。
【0047】
一実施形態では、上記膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は、1型MPGNおよび2型MPGNから選択される。
【0048】
一実施形態では、上記原発性ネフローゼ症候群は、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)(半月体形成性GN)である。
【0049】
一実施形態では、上記原発性ネフローゼ症候群は、微小変化群(MCD)である。
【0050】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、続発性ネフローゼ症候群(続発性糸球体腎症)である。
【0051】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎疾患により引き起こされる(または単にある疾患により引き起こされる)。本文脈における疾患「により引き起こされる」という用語は、ネフローゼ症候群が、基礎疾患などの疾患の原因または結果として、すなわち、病的状態の結果として生じる、または現れることを意味する。
【0052】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎となる自己免疫疾患により引き起こされる。
【0053】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎となる癌疾患により引き起こされる。
【0054】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎となる遺伝障害により引き起こされる。
【0055】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病性腎症、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、アミロイドーシス、多発性骨髄腫、血管炎、癌、および遺伝障害(先天性ネフローゼ症候群など)からなる群より選択される基礎疾患により引き起こされる。
【0056】
ループス腎炎は、SLEにより引き起こされる腎臓の炎症である。したがって、一実施形態では、続発性ネフローゼ症候群は、ループス腎炎により引き起こされる。
【0057】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、糖尿病性腎症により引き起こされる。
【0058】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、感染症により引き起こされる。
【0059】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、尿路感染症により引き起こされる。
【0060】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は、HIV、梅毒、肝炎A、B、およびCなどの肝炎、連鎖球菌感染後、尿路住血吸虫症、ならびにエボラからなる群より選択される感染症により引き起こされる。
【0061】
一実施形態では、上記続発性ネフローゼ症候群は薬剤誘発性であり、すなわち、薬剤誘発性ネフローゼ症候群である。
【0062】
一実施形態では、上記薬剤性ネフローゼ症候群は、抗生物質、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、放射線造影剤、抗癌剤、抗リウマチ剤、抗体ベースの治療剤、抗TNF-α治療剤、ペニシラミン、ニコチン、炭酸リチウム、金および他の重金属、ACE阻害剤、ならびにオピエート(ヘロインなど)からなる群より選択される薬物により引き起こされる。
【0063】
本文脈における薬物「により引き起こされる」という用語は、ネフローゼ症候群が、薬物の使用または投与の原因または結果として生じる、または現れることを意味する。
【0064】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、炎症性腎疾患である。
【0065】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記腎疾患は、糸球体腎炎(GN)である。
【0066】
一実施形態では、上記糸球体腎炎は、IgA腎症(ベルジェ病)、IgM腎症、感染後糸球体腎炎、および菲薄基底膜病からなる群より選択される。
【0067】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)または(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、n=1である。
【0068】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)または(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、R、R、およびRはそれぞれ独立に、-H、-CH、-CF、-CCl、-O-C1~6アルキル、-OH、-OCH、-NH-C1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)、-S-C1~6アルキル、-Bu、-CN、-SO-C1~6アルキル、-NH、-NO、-COH、-CO-C1~6アルキル、-C(=O)-C1~6アルキル、-CHO、モルホリン、ピロリジン、ピロール、またはハロゲンからなる群より選択される。
【0069】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)または(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、Rおよび/またはRはそれぞれ、電子求引基である。
【0070】
電子求引基は、通常共鳴または誘起効果により、隣接する原子から自身に向かって電子密度を引き付ける、電子吸引性の元素または官能基であると理解される。ある官能基が電子吸引性であるか電子供与性であるかは、当業者に公知の方程式であるハメット方程式を用いて決定できる。置換基定数σとしても知られるハメット置換基定数を、官能基が隣接する原子から自身に向かって電子密度を引き付ける能力の尺度として用いることができる。電子求引基は、置換基定数σが0超、例えば0.01~0.9など、例えば0.78である電子吸引性の元素または官能基である。これらの数値は当該技術分野で公知であり、J.Org.Chem.,23,420(1958)などの科学文献中の表に見られる。CF、CCl、F、Cl、CN、およびNOが電子求引基の例である。
【0071】
一実施形態では、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、CN、およびNOからなる群より選択される。
【0072】
一実施形態では、上記Rおよび/またはRはそれぞれ、水素である。
【0073】
一実施形態では、RおよびRはそれぞれ独立に、-H、C1~6アルキル、ハロゲン、-O(C1~6アルキル)、-NH(C1~6アルキル)、および-C(=O)C1~6アルキルからなる群より選択される。
【0074】
一実施形態では、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、およびプロピルからなる群より選択される。
【0075】
一実施形態では、上記RおよびRはそれぞれ、水素である。
【0076】
一実施形態では、上記Rは水素であり、Rはメチルまたはエチルである。一実施形態では、上記Rは水素であり、Rはメチルである。一実施形態では、上記Rは水素であり、Rはエチルである。一実施形態では、上記RおよびRはともにメチルである。一実施形態では、上記RおよびRはともにエチルである。
【0077】
一実施形態では、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、およびCNからなる群より選択される。
【0078】
一実施形態では、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1である。
【0079】
一実施形態では、上記Rは、4位に位置している。
【0080】
一実施形態では、上記Rは、F、Cl、およびBrからなる群より選択される。
【0081】
一実施形態では、上記化合物は、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、好ましくは(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはその薬学的に許容される塩である。
【0082】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、その薬学的に許容される誘導体は、無機酸または有機酸の薬学的に許容される塩である。
【0083】
一実施形態では、有機酸は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される。
【0084】
一実施形態では、上記有機酸は、酢酸、コハク酸、酒石酸、またはプロピオン酸である。
【0085】
一実施形態では、上記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、および硝酸からなる群より選択される。
【0086】
一実施形態では、上記薬学的に許容される酸は、酢酸である。
【0087】
一実施形態では、上記化合物は、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート、好ましくは(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートである。
【0088】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、およびプロピルからなる群より選択され、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択される。
【0089】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1である。
【0090】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1であり、上記腎疾患は蛋白尿を示す。
【0091】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、ネフローゼ症候群の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1である。一実施形態では、上記ネフローゼ症候群は、原発性ネフローゼ症候群および続発性ネフローゼ症候群からなる群より選択される。
【0092】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、原発性ネフローゼ症候群(原発性糸球体腎症)の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1であり、上記原発性ネフローゼ症候群は、膜性糸球体腎炎(MGN)(または膜性腎症(MN))、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、1型MPGNおよび2型MPGNからなる群より選択される膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)(メサンギウム毛細管性糸球体腎炎)、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)(半月体形成性GN)、ならびに微小変化群(MCD)からなる群より選択される。
【0093】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、続発性ネフローゼ症候群(続発性糸球体腎症)の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1であり、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎となる自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、糖尿病性腎症、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、アミロイドーシス、多発性骨髄腫、血管炎、癌、遺伝障害(先天性ネフローゼ症候群など)、感染症、および糖尿病性腎症からなる群より選択される疾患により引き起こされる。
【0094】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、薬剤性ネフローゼ症候群の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1である。一実施形態では、上記薬剤性ネフローゼ症候群は、抗生物質、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、放射線造影剤、抗癌剤、抗リウマチ剤、抗体ベースの治療剤、抗TNF-α治療剤、ペニシラミン、ニコチン、炭酸リチウム、金およびその他の重金属、ACE阻害剤、ならびにオピエート(特にヘロイン)からなる群より選択される薬物により引き起こされる。
【0095】
一実施形態では、式(Ia)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、式中、上記R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素であり、上記Rは、CF、CCl、F、Cl、NO、またはCNからなる群より選択され、n=1であり、上記腎疾患は、糸球体疾患、糸球体の足細胞に影響を及ぼす疾患、炎症性腎疾患、ならびに糸球体腎炎(GN)、例えばIgA腎症(ベルジェ病)、IgM腎症、感染後糸球体腎炎、および菲薄基底膜病からなる群より選択される糸球体腎炎などからなる群より選択される。
【0096】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供される。一実施形態では、上記腎疾患は、蛋白尿を示す。
【0097】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、ネフローゼ症候群の治療で使用するための組成物が提供される。一実施形態では、上記ネフローゼ症候群は、原発性ネフローゼ症候群および続発性ネフローゼ症候群からなる群より選択される。
【0098】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、原発性ネフローゼ症候群(原発性糸球体腎症)の治療で使用するための組成物が提供され、上記原発性ネフローゼ症候群は、膜性糸球体腎炎(MGN)(または膜性腎症(MN))、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、1型MPGNおよび2型MPGNからなる群より選択される膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)(メサンギウム毛細管性糸球体腎炎)、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)(半月体形成性GN)、ならびに微小変化群(MCD)からなる群より選択される。
【0099】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、続発性ネフローゼ症候群(続発性糸球体腎症)の治療で使用するための組成物が提供され、上記続発性ネフローゼ症候群は、基礎となる自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、糖尿病性腎症、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、アミロイドーシス、多発性骨髄腫、血管炎、癌、遺伝障害(先天性ネフローゼ症候群など)、感染症、および糖尿病性腎症からなる群より選択される疾患により引き起こされる。
【0100】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、糖尿病性腎症により引き起こされる続発性ネフローゼ症候群の治療で使用するための組成物が提供される。
【0101】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む、薬剤性ネフローゼ症候群の治療で使用するための組成物が提供される。一実施形態では、上記薬剤性ネフローゼ症候群は、抗生物質、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、放射線造影剤、抗癌剤、抗リウマチ剤、抗体ベースの治療剤、抗TNF-α治療剤、ペニシラミン、ニコチン、炭酸リチウム、金およびその他の重金属、ACE阻害剤、ならびにオピエート(特にヘロイン)からなる群より選択される薬物により引き起こされる。
【0102】
一実施形態では、式(II)の化合物、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート;(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン;および(E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタートから選択される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む組成物であって、糸球体疾患、糸球体の足細胞に影響を及ぼす疾患、炎症性腎疾患、ならびに糸球体腎炎(GN);例えばIgA腎症(ベルジェ病)、IgM腎症、感染後糸球体腎炎、および菲薄基底膜病からなる群より選択される糸球体腎炎などからなる群より選択される腎疾患の治療で使用するための組成物が提供される。
【0103】
いかなる理論にも束縛されることを望むわけではないが、本開示の化合物は、一実施形態では、MC1RおよびMC3Rを介してなど、MC1R介してなど、1つまたは複数のMC受容体のアゴニストの作用を介して、それらの有益な効果を発揮する。本開示の化合物は、一実施形態では、MC1RおよびMC3Rの偏向アゴニストとしての作用を介してそれらの有益な効果を発揮する。
【0104】
本開示の一実施形態では、鏡像異性体、ジアステレオマー体、およびラセミ体などの互変異性体および異性体を含む、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む、腎疾患の治療で使用するための組成物が提供され、上記化合物は、
i)1つまたは複数のMC受容体のアゴニストであり、
ii)MC1RおよびMC3Rのアゴニストであり、
iii)MC1Rのアゴニストであり、
iv)MC1Rおよび/またはMC3Rのアゴニストであるが、MC2RおよびMC4Rのアゴニストでなく、
v)MC1RおよびMC3Rの偏向アゴニストであり、
vi)主にERK1/2リン酸化を誘導し、かつcAMP生成をわずかに誘導する、MC1RおよびMC3Rの偏向アゴニストであり、
vii)MC1Rを介するメラニン形成を刺激しない、MC1RおよびMC3Rの偏向アゴニストであり、かつ/あるいは
viii)摂食量などのエネルギー恒常性に対して何ら効果のないMC1Rおよび/またはMC3Rのアゴニストである。
【0105】
一実施形態では、本開示の化合物は、摂食量を減少させない、例えば、MC3Rおよび/またはMC4Rを介して摂食量を減少させない。
【0106】
一実施形態では、本開示の化合物は、メラニン形成を誘導しない。
【0107】
併用療法
本開示の化合物または組成物は、他の治療効果のある化合物またはその薬学的に許容される誘導体として理解される1つまたは複数の追加の有効成分と組み合わされてよく、あるいはこれを含んでよい。
【0108】
一実施形態では、式(I)、(Ia)、もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む組成物は、1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分を別個に、または一緒に含む。
【0109】
一実施形態では、式(I)、(Ia)、もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む組成物は、腎疾患の治療に使用される1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分を別個に、または一緒に含む。
【0110】
一実施形態では、上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、腎疾患の治療に使用される成分を含む。
【0111】
一実施形態では、上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、上記腎疾患の根本原因の治療に使用される成分を含む。
【0112】
一実施形態では、上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、高血圧、高血中コレステロール、および感染症の治療のための;低塩食および水分制限のための成分などの、上記腎疾患の根本原因の治療に使用される成分を含む。
【0113】
一実施形態では、腎疾患の治療に使用される上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、およびアンジオテンシン受容体遮断剤(ARB)からなる群より選択される。
【0114】
一実施形態では、自己免疫疾患に続発する腎疾患および蛋白尿に使用される上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、ステロイドまたはステロイド節約剤とともにACE阻害剤の使用を加えて取り扱われる。
【0115】
別の実施形態では、上記1つまたは複数の追加の活性な薬剤成分は、腎疾患の根本原因の治療に使用される成分を含む。
【0116】
一実施形態では、追加の薬物の組み合わせは、本開示の化合物との組み合わせで使用される薬剤の必要量を減じる用量節約効果がある。
【0117】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物と、追加の有効成分とを含む組成物は、同時に、逐次的に、または別個に投与される。
【0118】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、追加の有効成分の前に投与する。別の実施形態では、本明細書で定義される式(I)の化合物を含む組成物を、追加の有効成分と同時に投与する。さらに別の実施形態では、本明細書で定義される式(I)の化合物を含む組成物を、追加の有効成分の後に投与する。
【0119】
投与経路
好ましい投与経路は、治療する対象の全身状態および年齢、治療する病態の性質、治療される組織の体内での位置、ならびに選択した有効成分によって決まることが理解されよう。
【0120】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、全身投与、局所投与、経腸投与、または非経口投与により投与する。このような投与に適した剤形は、従来技術によって調製され得る。
【0121】
全身投与
全身投与は、化合物を血流量中に導入して、最終的に所望の作用の部位を標的にできる。
【0122】
このような投与経路は、任意の適切な経路、例えば経腸経路、経口、経直腸、経鼻、経肺、バッカル、舌下、経皮、槽内、腹腔内、および非経口(皮下、筋肉内、髄腔内、静脈内、および真皮内を含む)経路などである。
【0123】
一実施形態では、明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、全身投与により投与する。
【0124】
経口投与
経口投与は通常、経路薬物送達のためであり、化合物を、腸粘膜を介して送達する。錠剤、カプセル剤などのシロップおよび固形経口剤形がよく用いられる。
【0125】
一実施形態では、明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、経口投与により投与する。
【0126】
非経口投与
非経口投与は、経口/経腸経路ではなく、それにより薬物が肝臓での初回通過分解を回避する、任意の投与経路である。したがって、非経口投与としては、任意の注射および注入、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与などのボーラス注射または持続注入が挙げられる。さらに、非経口投与としては、吸入および局所投与が挙げられる。
【0127】
したがって、化合物を局所的に投与して、生物学的に活性な物質が投与される動物の任意の粘膜、例えば鼻、膣、眼球、口腔、生殖管、肺、消化管、または直腸の粘膜、好ましくは鼻または口腔の粘膜を横断させてよく、したがって、非経口投与としては、バッカル、舌下、経鼻、経直腸、経膣、および腹腔内投与、ならびに吸入または導入による経肺および経気管支投与も挙げられる。また、化合物を局所的に投与して皮膚を横断させてもよい。
【0128】
皮下および筋肉内形態の非経口投与が一般に好ましい。
【0129】
局所治療
本明細書に開示される化合物を、一実施形態では、局所治療として使用する、すなわち、作用部位(1つまたは複数)に直接導入する。したがって、化合物を、皮膚または粘膜に直接塗布し得るか、または、化合物を、作用部位内に、例えば、患部組織内に、または患部組織に直接通じる終動脈に注射し得る。
【0130】
用量
本開示では、式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、治療を必要とする個体に薬学的に有効量な量で投与する。化合物の治療有効量は、所与の疾患または障害およびその合併症の臨床症状を治癒させる、予防する、そのリスクを低下させる、軽減する、またはそれを部分的に阻止するのに十分な量である。特定の治療目的に効果的な量は、障害の重症度および種類、ならびに対象の体重および全身状態によって決まる。化合物を、1日に1回または数回、例えば1~8回など、例えば1日に1~6回など、例えば1日に1~5回など、例えば1日に1~4回など、例えば1日に1~3回など、例えば1日に1~2回など、例えば1日に2~4回など、例えば1日に2~3回などで投与し得る。あるいは、化合物を、1日1回未満、例えば1日1回、例えば1日置きに1回など、例えば2日置きに1回、例えば3日置きに1回など、例えば4日置きに1回、例えば5日置きに1回など、例えば週1回投与し得る。
【0131】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)の化合物を含む組成物を、治療有効量で、例えば式(I)、(Ia)、または(II)の化合物1mg~1000mgの量などで投与する。
【0132】
したがって、一実施形態では、化合物を1日当たり1mg~1000mg、例えば1~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20mg、20~30mg、30~60mg、60~80mg、80~100mg、100~130mg、130~160mg、160~200mg、200~240mg、240~280mg、280~320mg、320~360mg、360~400mg、400~440mg、440~500mg、500~560mg、560~620mg、620~680mg、680~740mg、740~800mg、800~860mg、860~920mg、920~980mg、980~1000mgなど、例えば1日当たり500~1000mgの量で投与することになる。
【0133】
1日当たりは、1日1回(QD)、1日2回(BID)、および/または1日3回(TID)を含む、1日当たり1用量で、または複数の用量に分割して用量を投与することを意味する。
【0134】
別の実施形態では、化合物を0.01mg/kg体重~40mg/kg体重、例えば0.01mg/kg体重~0.05mg/kg体重、0.05~0.1mg/kg体重、0.1~0.5mg/kg体重、0.5mg~1mg/kg体重、1~2mg/kg体重、2~3mg/kg体重、3~5mg/kg体重、5~10mg/kg体重、10~15mg/kg体重、15~20mg/kg体重、20~30mg/kg体重など、例えば、30~40mg/kg体重の量で投与する。
【0135】
製剤化
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物は、薬学的に安全な組成物などの、医薬組成物である。本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物は、任意の適切な方法で、例えば、経口的に、舌下に、または非経口的に投与されてよく、それはこのような投与に適した任意の形態、例えば、液剤、懸濁剤、エアゾール剤、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、埋植物、または注射用分散液剤の形態で提供され得る。
【0136】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、懸濁剤として製剤化する。
【0137】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、経口投与剤形、例えば固形経口投与剤形または医薬物など、例えば錠剤もしくはカプセル剤、または液体経口剤形などとして製剤化する。固形医薬製剤を調製する方法は当該技術分野で周知である。
【0138】
別の実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、注射剤形として製剤化する。
【0139】
一実施形態では、本明細書で定義される式(I)、(Ia)、または(II)の化合物を含む組成物を、錠剤またはカプセル剤として適切に、固形医薬物の形態で製剤化する。
【0140】
(I)、(Ia)、または(II)の化合物を、その遊離塩基または塩として単独で、または薬学的に許容される担体または添加剤と組み合わせて、単一または複数の用量で投与し得る。医薬組成物を従来技術、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,19 Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1995に開示される技術などに従って、薬学的に許容される担体または希釈剤、ならびに任意の他の既知の補助剤および添加剤とともに製剤化し得る。
【0141】
参考文献
Lindskog et al.2010 “Melanocortin 1 Receptor Agonists Reduce Proteinuria”.J Am Soc Nephrol 21:1290-1298,2010.
Qiao et al.2016 “MC1R is dispensable for the proteinuria reducing and glomerular protective effect of melanocortin therapy”.Nature Scientific Reports 6:27589
Montero-Melendez et al.2015 “Biased Agonism as a Novel Strategy To Harness the Proresolving Properties of Melanocortin Receptors without Eliciting Melanogenic Effects”.J Immunol 2015;194:3381-3388.
【0142】
(実施例)
方法:
受身Heymann腎炎を、雄Sprague-Dawleyラットにイソフルラン麻酔下の低速注射により頸静脈内に、試験第0日(血清1ml)および試験第7日(血清0.25mL)に抗Fx1A血清(PTX-002S、Probetex社、サンアントニオ、テキサス州、米国)Probetex、ロット169-6H)の投与により導入した。この投与レジメンは既に、重大な蛋白尿を誘導することが示されている(Lindskog et al,J Am Soc Nephrol.2010;21:1290-1298)。対照化合物または被験化合物による薬理学的介入を、第14日に開始した。
【0143】
1つの実験(実験1)では、等張食塩水に溶解した被験化合物1を、用量10mg/kg(n=12)で腹腔内(ip)注射により1日1回投与し、等張食塩水の注射で治療したラットを対照とした(n=12)。
【0144】
別の実験(実験2)では、被験化合物1を、経口強制投与により1日1回投与した。被験化合物1を、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンの10%水懸濁液として投与した。2種類の用量:20mg/(kg・日)(n=8)および40mg/(kg・日)(n=8)、の被験化合物1を試験した。この実験では、文献のACTHがこの適用実験モデルの蛋白尿に治療効果を示すことが記載されていることから、被験化合物1の治療効果を、ACTH(1-24)の効果と比較した。陽性対照では、ラット(n=6)に4週間、Alzet浸透圧ミニポンプの使用による連続皮下注入により用量10μg/kg日で投与するACTH(1-24)(Bachem社カタログ番号H-1150)治療を実施した。この治療レジメンは既に、未治療対照と比較して蛋白尿の約50%の軽減を誘導することが示されている(Lindskog et al,J Am Soc Nephrol.2010;21:1290-1298)。
【0145】
実験1では24時間の尿採取を、腎炎誘導後第14日に、すなわち、薬理学的介入を開始した時点で、腎炎誘導後第28日および第42日での3回で実施した。尿採取のために、ラットを代謝ケージに入れた後、クレアチニンおよびアルブミンの血漿中濃度測定用に血液試料を採取した。同様にして、クレアチニンおよびアルブミンの尿中濃度を求め、24時間の尿産生体積も求めた。
【0146】
実験2では24時間の尿採取を、腎炎の誘導後第42日に、すなわち、被験化合物1またはACTH(1-24)による治療の28日後に実施した。実験1と同じように、ラットを代謝ケージに入れた後、クレアチニンおよびアルブミンの血漿中濃度測定用に血液試料を採取した。同様にして、クレアチニンおよびアルブミンの尿中濃度を求め、24時間の尿産生体積も求めた。
【0147】
血液試料を、ペントバルビタール(0.2-0.3mL/ラットip;Dolethal、Vetoquinol via Centravet、ラパリス、フランス)下で腹部静脈から採取した。採取した血液を、EDTAでコートしたチューブに移し、血漿収集のために遠心分離した(10分、1000g、4℃)。血漿試料を、クレアチニンおよびアルブミンの定量化まで-80℃で保管した。
【0148】
尿中および血漿中のアルブミンおよびクレアチニンを、ABX Pentra 400 Clinical Chemistry分析機(HORIBA社)を用いて定量化した。
【0149】
アルブミン排泄率を、以下:
24時間の尿産生量×尿中アルブミン濃度
のように求めた。
【0150】
糸球体ろ過量の推定値であるクレアチニンクリアランスを、以下:
(尿中クレアチニン濃度×24時間の尿産生量)/血漿中クレアチニン濃度
のように求めた。
【0151】
アルブミン排泄比を、以下:
((尿の尿濃度×24時間の尿産生量)/血漿中アルブミン濃度)/クレアチニンクリアランス×100
のように求めた。
【0152】
いずれのデータも平均±平均の標準誤差(SE)として表した。統計解析を、p<0.05を統計的に有意であるとする、標準的な対応のないt検定により実施した。
【0153】
結果:
被験化合物1=AP1189=((E)-N-trans-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート。
【0154】
ACTH(1-24)=副腎皮質刺激ホルモンフラグメント1-24、ヒト;テトラコサクチド。強力なACTH/MC2Rアゴニスト(EC50=5.5nM)。副腎からのグルココルチコイド放出を刺激する。配列:Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-Gly-Lys-Lys-Arg-Arg-Pro-Val-Lys-Val-Tyr-Pro。
【0155】
実験1:
対照ラットと比較して、被験化合物1で治療したラットは、第28日および第42日で蛋白尿が有意に軽減された。被験化合物1で治療したラットは、第28日でアルブミン排泄率の31±8%の低下がみられ、第42日でアルブミン排泄率の統計的に有意な48±10%の低下がみられた。対照ラットでは、アルブミン排泄率の変化は、全体を通してみられなかった(第28日で第14日の96±11%、第42日で第14日の102±14%)(図1を参照されたい)。
【0156】
アルブミン排泄比を評価したところ、同じような状況がみられ、第28日でFEAlbが48±5%低下し、第42日でFEAlbが45±11%低下していた(図不掲載)。
【0157】
実験2:
被験化合物1で治療したラットは、陽性対照(10mg/日のACTH1-24)で治療したラットよりも4週間の治療後に有意に高いGFR(クレアチニンクリアランス)を有し:陽性対照で治療したラットでのGFR:2.19±0.24mL/分に対し、20mg/kgでの被験化合物1:3.12±0.14mL/分(陽性対照に対してp=0.002)、40mg/kgでの被験化合物1:2.94±0.14mL/24分(陽性対照に対してp=0.01)であった(図2Aを参照されたい)。
【0158】
被験化合物1での治療は、アルブミン排泄比(FEAlb)を陽性対照(10mg/日のACTH1-24)と比較して有意に低下させ:陽性対照治療ラットでのFEAlb:0.59±0.02%に対し、20mg/kgでの被験化合物1:0.045±0.04%(陽性対照に対してp=0.007)、および40mg/kgでの被験化合物1:0.35±0.05%(陽性対照に対してp=0.001)であった(図2Bを参照されたい)。
図1
図2A
図2B