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特許7124136制御破壊を用いた複数のマイクロ流体チャネルアレイにおけるナノポアセンサの一体化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】制御破壊を用いた複数のマイクロ流体チャネルアレイにおけるナノポアセンサの一体化
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220816BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20220816BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220816BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
B81B1/00
B81B3/00
B01J19/00 321
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021001580
(22)【出願日】2021-01-07
(62)【分割の表示】P 2017532621の分割
【原出願日】2015-12-18
(65)【公開番号】P2021089286
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】62/094,669
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514283249
【氏名又は名称】ジ ユニバーシティ オブ オタワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】タバード-コッサ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ゴダン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】タヴィルダリ,ラディン
(72)【発明者】
【氏名】ビーミッシュ,エリック
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/144818(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/167955(WO,A1)
【文献】特表2015-525144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
C12M 1/00-3/10
B81B 1/00-7/04
B01J 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜に1つ以上のナノポアを作製するための装置であって、
共通に使用されるマイクロチャネルが露出面に形成された第1の基板であって、前記露出面に前記膜が配置されるとともに対向する平面を画定する、前記第1の基板と、
内側の面に1本以上のマイクロ流体チャネルが形成された第2の基板であって、前記1本以上のマイクロ流体チャネルが前記膜によって前記共通に使用されるマイクロチャネルから流体的に分離されるように前記内側の面が前記膜と向かい合うようにして前記膜の上に配置された前記第2の基板と、
前記膜の表裏に配置されて前記膜の両側に電位差を発生させるように動作する一組の電極と、を備え、
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接して通り、前記膜の領域全体に前記膜の前記平面に垂直な面を挟んで対称に電場を形成するように構成され、
前記一組の電極は、前記共通に使用されるマイクロチャネルに配置された第1の電極と、前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置された第2の電極とを含み、
前記マイクロ流体チャネルに、電解質溶液を通すことが可能であり、
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、前記膜の上を通る複数本のマイクロ流体チャネルとして形成され、前記複数本のマイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接する領域において互いに対称に配置されている、
装置。
【請求項2】
前記一組の電極のうちの第1の電極が前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルが前記電極よりも下流でループを形成し、前記ループの一部が前記膜の上を通っている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接する領域において実質的にまっすぐかつ互いに平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルを通る流体流の量を制御するように動作する制御バルブをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルを通る電流の量を制御するように動作する制御バルブをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御バルブは、空気圧源と流体的に連結され、前記空気圧源によって作動されるエラストマーポリマーとして形成される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の基板には、前記内側の面にマイクロ流体チャネルのアレイが形成され、前記マイクロ流体チャネルのアレイの各マイクロ流体チャネルは、前記膜の一部を通過し、少なくとも2つの制御バルブが内部に配置され、一方のバルブは前記膜よりも上流に配置され、他方のバルブは前記膜よりも下流に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記一組の電極における前記電極のうちの1つに電気的に接続され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルのうちの1本と前記共通に使用されるマイクロチャネルとの間を流れる電流を測定するように動作可能な電流センサと、
前記電流センサとインタフェースされたコントローラと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記膜を貫通するポアの形成を示す前記測定された電流の急な増加を検出し、前記測定された電流の前記急な増加の検出に応答して、前記膜の両側に発生させた電位差を消失させる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、寸法がミクロンのオーダーである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、寸法がナノメートルのオーダーである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
対向する平面を画定し、少なくとも1つの誘電体層で構成される膜に、1つ以上のナノポアを作製するための装置であって、
共通に使用されるマイクロチャネルが露出面に形成された第1の基板と、
前記第1の基板の前記露出面上に配置され、膜を保持するように構成された支持体と、
内側の面に1本以上のマイクロ流体チャネルが形成された第2の基板であって、前記1本以上のマイクロ流体チャネルが前記膜によって前記共通に使用されるマイクロチャネルから流体的に分離されるように、前記内側の面が前記支持体と向かい合うようにして前記支持体の上に配置された前記第2の基板と、
前記膜の表裏に配置された一対の電極と、を備え、
前記一対の電極は、前記膜の両側に電位差を発生させ、前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接して通り、前記膜の領域全体に前記膜の前記平面に垂直な面を挟んで対称に電場を形成するように構成され、
前記一対の電極は、前記共通に使用されるマイクロチャネルに配置された第1の電極と、前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置された第2の電極とを含み、
前記マイクロ流体チャネルに、電解質溶液を通すことが可能であり、
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、前記膜の上を通る複数本のマイクロ流体チャネルとして形成され、前記複数本のマイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接する領域において互いに対称に配置されている、
装置。
【請求項12】
前記一対の電極のうち前記一方が前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルが前記電極よりも下流でループを形成し、前記ループの一部が前記膜の上を通っている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、前記膜の上を通る複数本のマイクロ流体チャネルとして形成され、前記マイクロ流体チャネルは、前記膜に隣接する領域において実質的にまっすぐかつ互いに平行である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルを通る流体流の量を制御するように動作する制御バルブをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルに配置され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルを通る電流の量を制御するように動作する制御バルブをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記制御バルブは、空気圧源と流体的に連結され、前記空気圧源によって作動されるエラストマーポリマーとして形成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第2の基板には、前記内側の面にマイクロ流体チャネルのアレイが形成され、前記マイクロ流体チャネルのアレイの各マイクロ流体チャネルは、前記膜の一部を通過し、少なくとも2つの制御バルブが内部に配置され、一方のバルブは前記膜よりも上流に配置され、他方のバルブは前記膜よりも下流に配置されている、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記電極のうちの1つに電気的に接続され、前記1本以上のマイクロ流体チャネルのうちの1本と前記共通に使用されるマイクロチャネルとの間を流れる電流を測定するように動作可能な電流センサと、
前記電流センサとインタフェースされたコントローラと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記膜を貫通するポアの形成を示す前記測定された電流の急な増加を検出し、前記測定された電流の前記急な増加の検出に応答して、前記膜の両側に発生させた電位差を消失させる、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、寸法がミクロンのオーダーである、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記1本以上のマイクロ流体チャネルは、寸法がナノメートルのオーダーである、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2014年12月19日に出願された米国仮出願第62/094,669号の優先権の利益を主張する。上記出願の開示内容全体を、本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、固体膜における制御破壊(CBD)によるマイクロ流体チャネルにおけるナノポアセンサの作製に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノポアは現在、単一分子を電気的に検出できる十分に確立された非標識センサの類である。この技術は、イオン溶液に浸漬した薄い絶縁膜にあるナノスケールの開口の両側に電圧を印加することに頼っており、得られるイオン電流の変動を、ナノポアを通って電気泳動的に駆動されるDNAやタンパク質などの荷電した個々の生体分子の移動に付随させることができる。こうしたコンダクタンスの変化から、移動している分子の長さ、サイズ、電荷、形状に関する情報が得られる。DNAシーケンシング、タンパク質の検出とアンフォールディング、単一分子質量分析および力分光法をはじめとする多岐にわたる単一分子研究がゆえ、この技術が特に魅力的なものとなっている。
【0004】
ナノポアは、脂質二重層膜にタンパク質ポアを組み込むことによって形成されることもあれば、薄い固体膜に作製されることもある。生物学的ポアではノイズ特性を極めて低くすることができるが、支持体として従来利用されている脂質二重層膜が非常に脆いため、ポアの寿命と印加可能な電圧が制限され、よって、いくつかの用途が限定される。一方、固体ナノポアは、印加電圧、温度、pHなどのより広範囲の実験条件でより耐久性が高く、サイズもその場で調整可能である。一般論として、固体ナノポアを用いるほうが、丈夫なラボオンチップデバイスにアレイとして一体化しやすい。事実、最近の研究では、このようなナノポアをマイクロ流体ネットワークに埋め込む様々な一体化戦略が明らかになっている。これらの研究で用いられるナノポアは一般に、高エネルギーのイオンまたは電子ビームを使用して、極めて薄い(10nm~50nm)誘電膜(例えば、SiN)に構築される。しかしながら、FIBまたはTEMを用いてナノポアを作製すると、一体化の点で課題が生じる。エネルギー粒子ビームでの穿孔には直進的なアクセスが必要であることから、マイクロ流体デバイスにおける一体化前にナノポアを作製することが求められる。このためには、ナノポアの作製とデバイス組み立ての両方でアライメント要件が厳しくなり、結果として、特に電気ノイズを最小限に抑えるためにマイクロ流体チャネルの寸法を小さくする場合や単膜でのアレイ形成用で、機能的デバイスの歩留まりが制限されるという課題が生じる。より一般的には、これらの従来のナノファブリケーション技術は真空環境下でのナノポア作製に依存しており、必然的に、バイオセンシング実験用の水溶液に移行する際に、取り扱い上のリスクと濡れの問題を招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、高電場を利用して固体ナノポアを高信頼度で作製する別の方法が提案され、本明細書では、これを制御破壊(CBD)によるナノポア作製という。支持している完全な絶縁膜および一般的な生物センシングの実験条件(例えば、1M KCl中)では、絶縁膜に絶縁破壊イベントを誘発することで、直径1nmと小さいが1nm未満の精度で大きなサイズに調整可能な単一のナノポアが形成される。CBD法の単純さは、複雑なマイクロ流体アーキテクチャにおけるナノポアセンサの一体化と、将来性のあるラボオンチップデ
バイスに十分に役立つ。マイクロ流体デバイスに固有の先進的なサンプルハンドリング・処理能力を、その場でのナノポア作製と組み合わせることにより、一体化に伴う様々な問題の緩和と、センシングプラットフォームの応用範囲拡大が期待される。この作製技術に関するさらなる詳細については、発明の名称が「Fabrication of Nanopores using High Electric Fields」であり、内容全体が本明細書に援用される、米国特許出願公開第2015/0108808号から明らかである。
【0006】
このセクションは、必ずしも先行技術ではない本開示に関する背景情報を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このセクションは、開示の大ざっぱな概要を提供するものであり、その全範囲またはそのすべての特徴の包括的な開示ではない。
【0008】
膜に1つ以上のナノポアを作製するための装置が提示される。この装置は、共通に使用されるマイクロチャネルが露出面に形成された第1の基板と、第1の基板の露出面上に配置され、膜を保持するように構成された支持体と、内側の面に1本以上のマイクロ流体チャネルが形成された第2の基板であって、1本以上のマイクロ流体チャネルが膜によって共通に使用されるマイクロチャネルから流体的に分離されるように内側の面が支持体と向かい合うようにして支持体上に配置された第2の基板と、膜の両側に電位差を発生させる一組の電極と、を含む。一組の電極は、膜の一方の側に配置された基準電極と、膜の反対側に配置された2つ以上の追加の電極とを含み、2つ以上の追加の電極は、膜全体の電場が均一になるように膜に対して配置されている。いくつかの実施形態では、膜の両側の電位差が、0.1ボルト/ナノメートルより大きい値を有する電場を生じる。
【0009】
この装置は、電極のうちの1つに電気的に連結され、1本以上のマイクロ流体チャネルのうちの1つと共通に使用されるマイクロチャネルとの間を流れる電流を測定するように動作可能な電流センサと、電流センサとインタフェースされたコントローラと、をさらに含み、コントローラは、ポアの形成を示す測定された電流の急な増加を検出し、測定された電流の前記急な増加の検出に応答して、膜の両側に発生させた電位差を消失させる。
【0010】
一実施形態では、2つ以上の追加の電極は、膜の上流で1本以上のマイクロ流体チャネルに配置された第1の電極と、膜の下流で1本以上のマイクロ流体チャネルに配置された第2の電極と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の基板の内側の面に複数のマイクロ流体チャネルが形成されている。各々のマイクロチャネルは、関連した一組の電極を有する。このように、ナノポアのアレイ(マイクロ流体チャネルの数に対応)を膜に作製することができる。
【0012】
他の実施形態では、膜は、支持体を使用せずに第1の基板上に直接配置されていてもよい。このような実施形態では、一組の電極は、一方が膜の上流、他方が膜の下流であるように共通に使用されるマイクロチャネルに配置された2つの基準電極を含んでもよい。
【0013】
本開示のもうひとつの態様では、中間層が、支持体上に直接配置され、よって、支持体と第2の基板との間に配置されている。この場合、膜に1つ以上のナノポアを作製するための装置は、共通に使用されるマイクロチャネルが露出面に形成された第1の基板と、第1の基板の露出面上に配置され、膜を保持するように構成された支持体と、支持体上に配置され、少なくとも1つのビアが形成された中間層と、内側の面に1本以上のマイクロ流体チャネルが形成された第2の基板であって、1本以上のマイクロ流体チャネルが膜によって共通に使用されるマイクロチャネルから流体的に分離されるように内側の面が支持体
と向かい合うようにして中間層上に配置された第2の基板と、膜の表裏に配置された一対の電極と、を含む。一対の電極は、膜の両側に電位差を発生させる。中間層の1つ以上のビアは、1本以上のマイクロ流体チャネルを膜の露出面と流体的に連結し、ビアの中と周囲で均一な電場を発生させるように構成されている。いくつかの実施形態では、膜の両側の電位差が、0.1ボルト/ナノメートルより大きい値を有する電場を生じる。
【0014】
この装置は、電極のうちの1つに電気的に連結され、1本以上のマイクロ流体チャネルのうちの1つと共通に使用されるマイクロチャネルとの間を流れる電流を測定するように動作可能な電流センサと、電流センサとインタフェースされたコントローラと、をさらに含み、コントローラは、ポアの形成を示す測定された電流の急な増加を検出し、測定された電流の前記急な増加の検出に応答して、膜の両側に発生させた電位差を消失させる。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の基板の内側の面に複数のマイクロ流体チャネルが形成されている。各々のマイクロチャネルは、関連した一組の電極を有する。このように、ナノポアのアレイ(マイクロ流体チャネルの数に対応)を膜に作製することができる。
【0016】
他の実施形態では、膜は、支持体を使用せずに第1の基板上に直接配置されていてもよい。このような実施形態では、一組の電極は、一方が膜の上流、他方が膜の下流であるように共通に使用されるマイクロチャネルに配置された2つの基準電極を含んでもよい。
【0017】
本開示のさらに別の態様では、1本以上のマイクロ流体チャネルは、膜の領域全体に均一な電場を発生させるようにして膜に隣接して通っているため、必要な電極の数が低減される。一実施形態では、マイクロ流体チャネルがチャネルに配置された電極の下流でループを形成し、ループの一部が膜の上を通っている。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ以上の制御バルブがマイクロ流体チャネルに配置され、マイクロ流体チャネルを通る流れの量を制御するように動作する。制御バルブは、空気圧源に流体的に連結され、この空気圧源によって作動されるエラストマーポリマーによって実現されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の基板の内側の面に複数のマイクロ流体チャネルが形成されている。各々のマイクロチャネルは、関連した一組の電極を有する。このように、ナノポアのアレイ(マイクロ流体チャネルの数に対応)を膜に作製することができる。また、マイクロ流体チャネルのアレイの各マイクロ流体チャネルは、膜の一部を通り、少なくとも2つの制御バルブが内部に配置され、一方のバルブは膜の上流に配置され、他方のバルブは前記膜の下流に配置されている。このように、マイクロ流体チャネルのアレイに配置された制御バルブを通る流れを調節することによって、膜の両側の電位差の値が制御される。
【0020】
本明細書で提供される説明から、さらに利用可能な領域が明らかになるであろう。このサマリーにおける説明および具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものではない。
【0021】
本明細書で説明される図面は、選択された実施形態の例示のみを目的とし、可能なすべての実現形態ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0022】
図面の複数の図をとおして、対応する参照符合は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、膜の片側に電極が1つ挿入された、ナノポアを作製するための装置の概略図である。
図2図2Aおよび図2Bは、5本の独立したマイクロ流体チャネルを有する装置の例示的な実施形態の断面図であり、それぞれ膜の上に直接配置された5本のマイクロ流体チャネルを有する装置の上から撮影された反射光学像を示す。
図3図3Aから図3Cは、図2Aに示す装置の組立方法の一例を示す概略図である。
図4図4Aから図4Cは、膜の表面領域全体に均一な電場を発生させるのに使用できる、異なる電極配置を示す概略図である。
図5図5Aおよび図5Bは、マイクロビア層を有する装置の第2の例示的な実施形態の断面図であり、膜の上に直接配置されているが、マイクロビア層によって膜から隔離された5本のマイクロ流体チャネルを有する装置の上から撮影された反射光学像を示す。
図6図6Aおよび図6Bは、それぞれ、マイクロ流体ビアのある装置とない装置における電場の有限要素モデリングを示す画像である。図6Cおよび図6Dは、それぞれ、図6Aおよび図6Bに示されるナノポアを囲む電場の画像を拡大したものである。図6Eは、10Vの電圧を印加した場合(ナノポア作製の場合のように)、厚さ20nmのSiN膜の途中の面に沿って測定した電場の大きさを示すグラフである。図6Fは、マイクロビアのない装置の電場の大きさを示すグラフである。
図7図7Aおよび図7Bは、(a)10VでCBDによるナノポア形成の数秒前にSiN膜を通るリーク電流、(b)単一の5チャネルデバイス上に独立して作製された5つのナノポアに対するコンダクタンスに基づくモデルを用いてナノポア直径を推測するのに使用される電流-電圧(I-V)曲線を示すグラフである。
図8図8Aおよび図8Bは、マクロ的なセル(黒)、5チャネルデバイス(青色)、マイクロビアのある5チャネルデバイス(赤色)の(a)パワースペクトル密度(PSD)ノイズ比較、(b)電流トレースを示すグラフである。すべての測定は、電圧を印加せず、ナノポアを作製せずに行われ、250KHzでサンプリングし、pH7.5の1M KCl中、4極ベッセルフィルタによって100kHzでローパスフィルタリングした。
図9図9Aおよび図9Bは、(a)10.5nmのポアを用いた、印加電圧-200mVでのヒトα-トロンビン検出、(b)-200mV(黒四角)、-250mV(赤三角)、-300mV(青丸)で11.5nmのポアを通る10kb dsDNAの移動について、正規化した平均電流ブロック(0%はポアが完全に開いた状態、100%はポアが完全にブロック状態を示す)とトータルのイベント時間を示す散布図である。それぞれのデータポイントが、単一のイベントを表す。挿入図は、生体分子がナノポアと相互作用するときの一時的な電流ブロックを示す。明確にするために、挿入図ではデータに-1を乗算した。
図10図10Aおよび図10Bは、制御チャネルに圧力を印加していない場合と印加した場合の例示的なマイクロメカニカル空気バルブの断面図である。
図11図11は、5対の空気バルブを備え、1対の電極を使用する5×1アレイデバイスの概略上面図である。
図12図12は、2つの上側の電極を使用する5×1アレイデバイスの概略上面図である。
図13図13は、2対の空気バルブと2つの上側の電極を有する2×1アレイデバイスの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な実施形態を、添付の図面を参照してより完全に説明する。
【0025】
図1は、膜12に1つ以上のナノポアを作製するための装置10を示す。この装置は主に、上側の(第1の)基板14、下側の(第2の)基板15、上側の基板14と下側の基
板15との間に配置された支持体16からなる。支持体16は、対向する平面13を画定する誘電薄膜12を保持するように構成されている。例示目的で、上側の基板14には単一のマイクロ流体チャネル4が形成され、これより大きな共通に使用されるマイクロ流体チャネル5が、下側の基板15に形成されている。電圧源18に電気的に連結された1対の電極17を使用し、マイクロ流体チャネル4、5の各々に1つずつ電極をおいて、膜の両側に電位差を発生させる。以下でさらに説明するように、電極を異なる配置にして装置に上述したよりも多くのマイクロ流体チャネルを設けてもよい。
【0026】
装置10はさらに、一方の電極に電気的に連結された電流センサ(図示せず)と、電流センサおよび電圧源18とインタフェースされたコントローラ19とを含む。動作時、電流センサは、膜を通って流れる電流を測定する。そしてコントローラ19が測定された電流の急な増加を検出し、測定された電流の急な増加の検出に応答して、以下でさらに説明するように、膜を挟んで両側に発生させた電位差を消失させる。
【0027】
図2Aおよび図2Bは、装置10’の例示的な実施形態をさらに示す。この例示的な実施形態では、500×500μm2で厚さ20nmの露出したSiN膜(SiMPore
Inc. SN100-A20Q05)を有する市販のシリコンチップ(例えば、フレームサイズ3mm)が支持体16として機能し、これをアーキテクチャの異なる複数のマイクロ流体チャネルアレイ間に実装した。図2Aを参照すると、本明細書に提示された装置10’は、独立して扱うことが可能な5本のマイクロ流体チャネル21を膜12の片側に含む形状を利用し、膜12の反対側には、1本の共通に使用されるマイクロチャネル22で通じていた。具体的には、装置10’は、図2Bで最もよくわかる、膜12で幅15μmまで次第に細くなる幅200μmの太いチャネル(高さ50μm)である独立した5本のマイクロ流体チャネル21からなるアレイを含んでいた。独立した5本のチャネル21は各々、互いに25μmずつ離れている。この実施形態では、独立した5本のマイクロ流体チャネルを示したが、他の実施形態では、これよりも多いまたは少ない数のマイクロ流体チャネルを形成してもよいことは、容易に理解できよう。
【0028】
例示的な実施形態では、ソフトフォトリソグラフィで作成したマスターモールドからパターン形成したポリジメチルシロキサンPDMS(Dow Corningから入手したSylgard 184、7:1(w/w)比)を使用して、ソフトリソグラフィで各層を作製した。すべての構成において、一番下の層は、スライドガラスに接着した(酸素プラズマ接着、AutoGlow Research)幅250μm×高さ100μmの単一の流体チャネル22を含む約3mm厚のPDMS層からなっていた。ナノポアまで流体を通すことができるように、シリコンチップのエッチング側を上に載置した下側の共通に使用されるマイクロチャネル22に、2mmの穴を手で穿孔した。その後、PDMSの薄層(100±10μm)をチップ16の周りにスピンコートして、シリコンチップの厚さを補正し、複数のマイクロ流体チャネルを接着できる滑らかでシールされた表面を残した。スピンコーティングの後、このPDMS薄層を80℃のホットプレート上で20分間、硬化させた。
【0029】
図3A図3Cは、この作製プロセスをさらに示す。提示されたデバイスは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られたマイクロ流体デバイスにおいて、市販の窒化ケイ素(SiN)膜(SN100-A20Q05、SiMPore Inc.)を一体化するものである。PDMS層については、ソフトリソグラフィで作製し、シリコンウェハ上のSU8-2050フォトレジスト(Microchem Inc.)からなるマスターモールドから複製した。得られる特徴の最終的な所望の厚さ(高さ)に応じて、異なるスピン速度、焼成時間および温度、UV露光および現像時間を用いて、各マイクロ流体層(マイクロ流体ビア、独立したチャネル層および共通に使用されるチャネル層)を作製した。
【0030】
各マスターモールドの作製に続いて、まずウエハをアミノシランで処理してPDMSを除去しやすくした。次に、PDMS(全ての層で7:1(w/w)ベース:硬化剤)を各チャネル層用のマスターモールドに注ぎ、続いて真空チャンバ内で30分間脱気し、80℃で2時間焼成した。その後、硬化したPDMSを離型してマイクロチャネル構造を作製した。次に、個々のデバイスコンポーネントを切り出し、独立したチャネル(流体チューブの場合は外径0.75mm、電極の場合は外径1.25mm)に流体および電極導入のためのアクセス穴を穿孔した。共通に使用されるマイクロチャネルの中央に2.0mmの穴を手で穿孔して、チップの底に流体を通すことができるようにした。図3Aを参照して、酸素プラズマ(Glow Research AutoGlow)を用いて、穿孔した穴の上の共通チャネル層にシリコンチップ(エッチングされた側)を接着した。すべてのプラズマ接着工程を30Wで30秒間行った。
【0031】
シリコンチップの厚さを補正し、(マイクロ流体ビア層のある場合とない場合の)両方の構成で独立した(上側の)チャネルを接着するための平坦で平滑な表面を残すために、PDMSの薄層(約100±10μm)をチップの周りにスピンコートした(500rpmで5秒、続いて1000rpmで10秒)。この薄層をホットプレートに直接置いて80℃で20分間、硬化させた。
【0032】
マイクロ流体チャネルに流体を通すことができ、電気が通じるようにするために、電解質(またはイオン)溶液が流れるPEEKチューブとAg/AgCl電極を密着させる接着の前に、流体的に分離された上側のチャネルと下側の共通に使用されるチャネルの各々に穴を穿孔した。膜の中心から約5mmの位置に電極を配置することにより、ナノポアまで至るマイクロチャネルの抵抗が1M KCl電解質溶液中で約100kΩすなわち、直径10nmのナノポアを含むデバイスの全電気抵抗の約1%未満に制限される。最後に、共通に使用されるチャネルを清潔なスライドガラスに接着した。以上、特定の作製技術について言及したが、他のリソグラフィ技術も本開示の範囲に含まれることは理解できよう。
【0033】
マイクロ流体チャネルに電解質溶液を導入する直前に、組み立てたデバイスを70Wで5分間酸素プラズマ処理し、マイクロチャネルの親水性を高めた。次に、マイクロ流体チャネルをポリエチレンチューブでサンプルバイアルに接続し、高精度の圧力調整器を用いてバイアルを加圧してフローを開始した。1M KCl溶液(pH7.5)を流し、適度の印加電圧(例えば、0.2V~1V)下でマイクロ流体チャネル間のイオン電流を測定しようとすることで、ナノポアの作製前に、マイクロ流体チャネル間の効果的なシール(>10GΩ)を試験した。
【0034】
装置の機能性を向上させるために、装置の製造に使用するマイクロ流体材料からコンタミナントやモノマーを除去する必要がある。特に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)片についてはデバイスの組み立て前に溶媒で化学処理すべきであり、プラズマ処理を用いれば、マイクロ流体一体化の結果として膜の表面にあるコンタミナントを除去することができる。
【0035】
本開示の一態様によれば、マイクロ流体チャネルに電極を配置すると、絶縁膜の領域全体で均一な電場につながるはずである。図4A図4Dに見られるようなマイクロ流体アーキテクチャに応じて、様々な電極配置を使用できる。薄い絶縁膜に単一のマイクロチャネルを配置する場合、マイクロ流体チャネルの下流側のどこかで膜の片側に配置した1対の電極が、膜表面全体に不均一な電場を生じることになる。しかしながら、同一のマイクロ流体チャネルにおいて同じ電位にバイアスさせた2つの電極を膜の両側に配置すると(すなわち、一方の電極が膜の上流、他方の電極は膜の下流にある)、図4Aに最もよく見られるように、電場の均一性を高めることができる。この例では、一組の電極30を用い
て膜12の両側に電位差を発生させる。一組の電極30は、膜の下に位置する基準電極33と、膜の上に位置する2つ以上の追加の電極32とを含む。具体的には、2つの電極32は、上側の基板のマイクロ流体チャネルに配置されるのに対し、基準電極33は、下側の基板の共通に使用されるマイクロ流体チャネルに配置される。2つの追加の電極32は、膜全体の電場が均一になるように膜に対して配置される。例えば、追加の電極32のうち一方が膜の上流に配置され、追加の電極32のうち他方は膜の下流に配置されてもよい。2つの追加の電極の他の配置も、本開示によって企図される。
【0036】
図2Aを参照すると、支持体16の下面は、ビアが果たす役割と同様に電場を均一に形づくるのを助けるテーパ凹部13を含み、それによって単一の基準電極33を使用できるようになる。
【0037】
いくつかの実施形態では、膜12は、支持体16を使用することなく、下側の基板15の上に直接配置され、この基板によって支持されてもよい。これらの実施形態では、図4Cに見られるように、第2の基準電極33を膜の下側に配置することができる。特に、一方の基準電極33は膜の上流に配置され、他方の2つの基準電極33は膜の下流に配置されてもよい。このようにして、2つの基準電極33は、膜に近接した電極場を均一に形づくるように機能する。
【0038】
図4Bは、別の電極配置を示す。この配置では、膜表面全体で同様に均一な電場を達成するために、イオン溶液の入ったループ状のマイクロ流体チャネル36に単一の電極35が配置されている。マイクロ流体チャネル36は、電極35の下流にループを形成し、ループの一部分が膜の上を通っている。そのような装置のバルブが加圧され、下の流路を閉鎖する。ナノポア作製プロセスの間に、バルブの圧力が解除されることになる(マイクロ流体チャネルが開放される)。このように、ループ状のチャネルを通る電解質溶液の存在がゆえ、電場が均一に形づくられる。上記の構成は、(例えば、図11に見られるように)マイクロバルブ技術を使用するいくつかのマイクロ流体チャネルに合わせて規模を変えることができる。この別の構成では、図4Aとの関連で説明したように単一の基準電極33を膜の下に配置してもよいし、図4Bとの関連で説明したように、2つの基準電極を使用してもよいことが、理解される。
【0039】
同様に均一な電場を達成するために、マイクロ流体チャネルでマイクロ電極をパターン化することもできる。これらの表面パターニングされた電極は、同じ電位に保持され、上述のように配置されて、均一な電場を生じることができる。絶縁膜を中心とする円形の電極も、電場の均一性を保証することができる。パターン化された単一の微小電極については、絶縁膜の真上または個々のマイクロ流体チャネル各々の中でパターニングすることができる。このような表面でパターン化された電極は、ナノポアの大規模なアレイが形成される場合があるカスタム設計のチップで特に有益であろう。均一な電場を生じる電極配置の他の変形例も、本開示によって企図される。
【0040】
本開示の別の態様では、マイクロ流体システムにマイクロビアを加え、ビアの中とその周囲で電場を形成しやすくすることができる。図5Aおよび図5Bは、装置10’’の第2の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、装置は同じく、上側の基板14、下側の基板15、上側の基板と下側の基板との間に配置された支持体16で構成される。支持体16は、対向する平面13を画定する誘電薄膜12を保持するように同様に構成されている。この実施形態では、支持体16上に中間層19が形成され、上側の基板14と支持体16との間に配置されている。中間層19に1つ以上のビア51を形成し、ビアの中とその周りに均一な電場を生じるように構成することができる。
【0041】
この第2のマイクロ流体構成は、各マイクロチャネルでのCBDによるナノポア形成を
膜の中央に局在化させ、イオン溶液に曝露される膜の面積を最小化することによって高周波電気ノイズをさらに低減するように設計された。この第2の構成では、幅が15μmと一定で長さが40μmから120μmまで変化する矩形の開口がアレイ状に設けられた厚さ200μmのPDMS層を使用して、膜の中心を覆う十分に画定された領域にマイクロ流体チャネルを連結するマイクロ流体ビアを形成した。独立したチャネルを接着できる薄い(200μm)マイクロ流体ビア層を作製するために、脱気したPDMSをそのマスターモールドにスピンコートし(500rpmで5秒、続いて800rpmで10秒間)、ホットプレートに直接置いて80℃で30分間、硬化させた。SiN膜の上にマイクロ流体ビアと独立したチャネル層を正確に配置するために、すべてのアライメントステップを、OAI DUV/NUVマスクアライナー(モデル206)を用いて行った。次に、この層を初期設計と同様に独立した5本のPDMSマイクロ流体チャネルのアレイに接着した。上述の点を除いて、装置10’’の第2の実施形態を、図3A図3Cとの関連で説明した方法と同じ方法で作製した。
【0042】
マイクロ流体構成にマイクロビア層を追加することの効果を理解するために、(マイクロ流体ビアがある場合とない場合の)両方のデバイス形状における電場の有限要素モデルを調査した。デバイスの構成を2Dで作成し、COMSOL Multiphysics
Modeling SoftwareのElectric Currentsモジュールにおけるコンピュータ上の研究を使用して、電場をモデル化した。両方の形状を、最初に完全な膜(すなわち膜に水溶液の流通がない)で調べ、次いでナノポアあり(膜に20nmの流体導管がある状態)で調べた。
【0043】
図6Aは、独立したマイクロチャネルが膜上に直接配置されたデバイスの形状を示し、図6Bは、マイクロ流体ビアを含むデバイスを示す。どちらのデバイスも、膜の中心に20nmのポアを含む。図6Dのナノポアを囲む領域の拡大図から、マイクロ流体ビア構成におけるナノポアのすぐ近くの電場が、膜とポアで比較的均一であることがわかる。これは、電場の強度が、膜の両側のナノポアから均一に減衰するという事実によって際立つ。さらに、両電極がナノポアの左側まで3mmの位置に配置されているにもかかわらず、電場線が左から右に対称である。一方、図6Cは、同じ条件下で、マイクロ流体ビアのないデバイスでは電場線が完全に不均一であることを示している。電場線と電場強度はいずれも、膜の全体でも、独立した(上側の)マイクロチャネルで左から右でも異なっている。
【0044】
これらの構成での電場の形状をさらに研究すると、CBDを用いたナノポア作製が、非対称な電極配置によっても影響され得ることがわかる。図6Eは、マイクロ流体ビアのあるデバイスと、マイクロ流体ビアのないデバイスにおける完全な膜の水平断面を通る電場の大きさを示す。この例では、実際に使用されるナノポア作製条件をシミュレートするために、膜を横切る10Vの電圧を印加した。マイクロ流体ビアを含むデバイスは、露出した膜の長さ全体で均一な電場を示すが、独立した(上側の)マイクロチャネルが膜上に直接配置されたデバイスは、電極が配置される側に近いほど強い電場を示す。
【0045】
両方の例示的な実施形態では、膜の上で一体化された独立したマイクロ流体チャネルの各々で絶縁破壊イベントを誘発することで、個々のナノポアを作製した。簡単に説明すると、これはカスタムビルドの電子回路を用いて高電場を印加して行った。共通に使用される接地したマイクロチャネルとの10V~14Vの電圧を、独立したマイクロ流体チャネルの1つに印加し、数分または数秒でナノポアを作製した。膜の両側の電位差は、1ナノメートルあたり0.1ボルトより大きい値を有する電場を生じる。また、この電圧は、SiN膜を通るリーク電流を誘発した。これをリアルタイムで監視する(図7A参照)。単一ナノポアの形成は、あらかじめ定められた閾値を超えるリーク電流の突然の急な増加によって検出され、それによって印加電圧は0.1秒の応答時間でカットオフされる。閾値
電流および応答時間を変化させ、破壊イベントに続いて所望の結果として得られるナノポアサイズを達成することができるが、本明細書で説明するサイズは、典型的には直径2nm未満(タイトなカット条件)であった。次に、このプロセスを、上側の流体的に分離された各マイクロチャネルで繰り返し、単一の膜上であるが異なるマイクロ流体チャネルにおいて、独立して扱うことが可能なナノポアを形成する。ナノポアの作製後、Axopatch 200B(Molecular Devices)低雑音電流増幅器を用いて、電気的キャラクタリゼーションと単一分子センシングのセンシティブな測定を行った。
【0046】
特定の生体分子を検出するための所望の大きさのナノポアを得るために、各ナノポアを上述のように作製し、膜の両側に-5Vおよび+5Vのパルスを交互に印加することで形づくった高電場を用いて調整した。この処理を用いて電気ノイズ特性を最適化した上、マクロ的な流体リザーバを用いる過去の研究で報告された結果と同等の結果になる実験をさらに行うために、詰まったナノポアを回復させる。このコンディショニング技術に関するさらなる詳細は、発明の名称が「Method for Controlling the Size of Solid-State Nanopores」である米国特許出願公開第2015/0109008号に見いだすことができ、その内容全体を本明細書に援用する。
【0047】
CBDによって作製された各ナノポアの直径を推測するために、印加電圧を-200mVから+200mVまで掃引する際に各ナノポアを通過するイオン電流を監視することで、ナノポアのコンダクタンスGを溶液中で直接測定した。円筒形を想定し、アクセス抵抗30を考慮することによって、ナノポアの有効直径dを、そのコンダクタンスから以下の関係式で計算することができる。
【0048】
【0049】
式1において、σは電解質のバルク伝導度であり、Lは、SiN膜の公称厚さと等しいと仮定したナノポアの有効長である。図2(c)の電流-電圧(I-V)曲線は、単一の5チャネルデバイスにおいて、サイズが3nm~10nmである独立して形成された5つのナノポアについて、1M KCl(pH7.5)(σ=10.1±0.1Sm-1)におけるオーミック応答を示す。式1の表面電荷からの寄与を無視することによって生じる誤差は、ここで使用する高塩濃度の場合に、ナノポアの算出有効直径の精度に<0.5nmだけ影響を及ぼし、電解質伝導度と膜厚の値に起因する誤差は、ナノポア直径の不確実さに約0.3nmの影響を及ぼす。
【0050】
性能をさらに特徴づけるために、イオン電流のパワースペクトル密度プロット(PSD)を、2つのマイクロ流体アーキテクチャのそれぞれで作製したナノポアについて取得した(図8A参照)。低周波ノイズ(1kHz未満)は一般に1/fタイプであるが、高周波ノイズは電解質溶液に曝露される表面領域で生じるデバイスの誘電特性とキャパシタンスに左右される。したがって、溶液に曝露される表面を最小にすることにより、この高周波ノイズの低減につながり、高帯域幅での生体分子センシング時の信号対雑音比が大幅に改善される。これを図8Aに示す。ここでは、両方の5チャネルデバイス(マイクロビアのある場合とない場合)を、標準的なマクロ流体セルの流体リザーバの間に取り付けたナノポアチップと比較している。この高い周波数範囲では、(マイクロビアなしの)5チャネルマイクロ流体デバイスは、マクロ的なセルで得られたものに匹敵するノイズ特性を示す。この結果は、このレジームのノイズが、マクロ的リザーバで約3×105μm2、標準的な5チャネルデバイスのマイクロチャネルで約2×105μm2と算出された、膜の
露出領域の量に起因するという議論と一致する。しかしながら、5チャネルデバイスの最小のマイクロビア(40×15μm2)を使用して、膜の露出領域が350分の1の約6×102μm2まで小さくなると、高周波ノイズが大幅に低減される。このノイズ低減は、図8Bに示す電圧を印加しない各デバイスのベースラインのイオン電流トレースによってさらに際立つが、ここで、100kHz帯域幅でのピークツーピークノイズは、マイクロビアのある構成では2分の1に減少(帯域幅10kHzで5)し、RMSノイズは10kHzで7分の1、100kHzの帯域幅では2分の1に減少する。
【0051】
図9Aおよび図9Bを参照し、生体分子の移動を観察することによって、これらのデバイスの機能性を評価した。いずれの場合も、上述したように、まずはナノポアを作製し、所望の直径に拡大した。サンプルの導入後、圧力調整器をオフにすることによって、マイクロ流体チャネルにおける流れを最小限にした。図9Aは、250μM濃度の個々のヒトα-トロンビン(Haematological Technologies,Inc.)分子が、1M KCl(pH8.0)において(ビアなしで)マイクロ流体チャネルの10.5nmのナノポアを用いて検出されるときのコンダクタンスの遮断と期間の散布図を示す。ここでは、5本の独立した上側のマイクロ流体チャネルのうちの1本にタンパク質分子をロードし、接地した下側の共通に使用されるチャネルに対して-200mVでバイアスさせた。全体に、5,000を超える個々のイベントが観察された。図9Bは、マイクロビアを含むマイクロチャネルに局在化された、11.5nmの異なるナノポアを通るDNA移動イベントについての同様の散布図を示す。ここでは、2M KCl(pH10)中の10kbpのdsDNAの3pM溶液を上側のマイクロチャネルに加え、共通に使用されるチャネルに対して-200mV、-250mV、-300mVのバイアスを印加し、1,500を超える移動イベントを得た。タンパク質と単一レベルのdsDNAでの両方のイベントで得られたコンダクタンスブロックの大きさが、過去に報告された、標準的なマクロ流体セルを用いたモデルおよび実験と一致することは注目に値する。
【0052】
この手法を使用してナノポアを一体化する場合、マイクロ流体設計を慎重に考慮する必要がある。膜上に直接配置されたマイクロ流体チャネルにおいて一体化されたナノポア(マイクロビアなし)は、試験対象となったデバイスの30%(30個のうち9個)でタンパク質性の試料を捕捉して検出することができたが、核酸の移動を示すことができるデバイスの捕捉効率と実験収率は著しく減少した。ここで、実験収率を定義するのに使用される基準は、1000より多い生体分子移動イベントを検出できるデバイスである。膜に通じるマイクロ流体チャネルに電極を配置すると、上側のマイクロチャネルが単一の電極のみを含む場合には、ナノポア付近や膜で電場の不均一性を生じることに留意することが重要である。この非対称性がゆえ、PDMSマイクロチャネル層への接着時に、より応力を受け得る領域である膜の縁付近(シリコン支持チップの縁付近)に、ナノポアが作製される可能性がある。この領域では、ナノポアの近傍の膜の表面電荷特性がゆえ、あまり荷電していないポリペプチドを通過させつつ、高電荷の大きな核酸ポリマーの移動が静電的に妨害されることがある。しかしながら、マイクロビアを導入すると、ナノポアの作製が膜の中央または縁から離れた意図した領域に局在化され、pH10で試験した4つのデバイスのうち3つで、より対称的な電場となる。上述したように、膜の片側で上側の独立したチャネルに同じ電位でバイアスされた電極の対を組み込むことによって、電場のこの非対称性を減らすことも可能である。この構成では、pH8で試験した6つのデバイスのうち5つで、少なくとも1000個の生体分子移動イベントの検出に成功した。
【0053】
本開示のさらに別の態様において、マイクロバルブ技術は、マイクロ流体の大規模一体化を達成する上で役割を果たすことができる。機能的に信頼性の高いマイクロバルブの開発は、完全自動化マイクロ流体システムの小型化と商業化を成功させるための重要な一ステップでもある。マイクロバルブは、流体の流れを制御し、マイクロ流体ネットワーク全体に電気/イオン電流を流すのに使用される。マイクロ流体デバイスにおいてバルブを取
り入れるために、スクリューバルブ、空気圧バルブ、ソレノイドバルブなどの様々な手法を使用することができる。
【0054】
図11は、空気圧駆動のマイクロバルブ技術を使用する装置110の例示的な実施形態を示す。この装置は主に、上側の基板、下側の基板、上側の基板と下側の基板との間に配置された支持体からなり、上述した実施形態で説明したような中間ビア層を含むこともできる。この例示的な実施形態では、5本のマイクロ流体チャネル112が上側の基板に形成される。繰り返すが、他の実施形態では、これより多くのマイクロ流体チャネルを形成することも、少ない数のマイクロ流体チャネルを形成することもできる。
【0055】
マイクロ流体チャネル112は、膜の領域全体に均一な電場を発生させるように、膜に隣接して通される。例えば、各マイクロ流体チャネル112は、電極116の下流でループを形成し、そこでループの一部が膜の上を通る。膜の対向する2つの側から電場線をもたらす異なる閉ループ構成も、本開示の範囲内に入る。
【0056】
制御バルブ114もマイクロ流体チャネル112に配置され、チャネル内の開放されたバルブまたは閉じたバルブによって決まる導電経路を制御するように動作する。例示的な実施形態では、マイクロ流体チャネル112をエラストマーポリマーに埋めて、空気圧駆動のマイクロバルブを達成する。これらのバルブは一般に、ソフトリソグラフィ技術を使用することによって2層で作製される。図10Aおよび図10Bを参照すると、バルブは、図10Aの108に示すように、非常に薄い膜の層で分離された2層で構成されている。一方の層(フロー層)106には、流体を通すためのチャネルがある。分離用の薄膜は、図10Bに示すように、他方の層(制御層)107の制御チャネル(バルブ)が空気または水によって加圧されると、マイクロ流体チャネル側に歪む。これにより、流体(液体電解質)の流れが止まり、結果的にシール状態となる。フローチャネルが閉じる量は、バルブによって電気ネットワークに加わる電気インピーダンスに関連する。例えば、フローチャネルが完全に閉じると、インピーダンスは>10GΩ(正確な値は、電解質の導電率およびバルブの形状による)になることがあり、マイクロ流体ネットワークの当該領域が効果的に隔離される。
【0057】
図11に戻り、5本のマイクロ流体チャネル112には各々、少なくとも2つのバルブ114が配置され、膜の両側にバルブが1つずつ配置されている。さらに、各バルブ114は、空気圧源(図示せず)に流体的に連結され、この空気圧源によって作動される。各群のバルブがマイクロ流体チャネル112を閉じる程度を制御することで、バルブ114は、分圧器の可変抵抗器として作用できる。このようにして、バルブを使用して電位が選択されたマイクロ流体チャネルを通るようにして、膜の領域に沿って均一な電場を発生させることができる。
【0058】
空気圧駆動のマイクロバルブを含めることは、マイクロ流体での大規模な一体化を達成するための実用的な方法である。それは、数個の電極で、各マイクロチャネル群における膜の両側の電位差の値をオンチップで独立して制御するしっかりした方法である。マイクロバルブは、膜の様々な領域における電場の正確な制御を可能にする分圧器(マイクロチャネルで抵抗>10GΩのシールを提供する)として機能する。この制御は、膜の両側で流体チャネルのどこかに配置された単一の電極対を用いて、作製、サイズ制御、センシング用の任意の数のナノポアを扱う能力を付与し、電位をリダイレクトして単一の一対の電極を使用して特定のマイクロチャネル(生体分子検出のための重要な特徴)で膜の長さに沿って均一な電場を発生させるのに使用でき、共通に使用されるマイクロチャネルを含むデバイス(複数のナノポアを用いた単一サンプルの直列および並列プロービングに必要な特徴)でのアレイ作製とセンシングに必要であり、様々な溶媒、イオン強度、pHまたは検体を含む溶液の迅速な交換を可能にして作製およびセンシングを容易にし、オンチップ
作製と生体分子センシング用の可変の流体抵抗および電気抵抗器を含むという点で、デバイスのスケーラビリティと機能性のために必要である。また、バルブおよびチャネルの断面の疎水性を保持することは、作製とセンシング時に膜全体の電場の大きさと均一性を制御するのに使用される高抵抗シールを得るために重要であることにも留意されたい。これは、組み立て前にデバイスの各層を化学処理することで達成され、バルブ断面を親水性のままにするコンタミナントを除去するために膜をプラズマ処理する必要がなくなる。
【0059】
これらの抵抗バルブの制御を利用して、少ない数の電極でマイクロ流体ネットワークにおける異なる位置を特定の電位条件にすることができる。この実施形態では、一対の電極を使用することができる。電極116は、膜の両側のマイクロ流体チャネルに配置される(上側の電極のみ図11に示すが、下側電極も同様に膜の下に位置する)。上述した違いを除いて、装置110は、図2Aとの関連で説明した装置と同様である。
【0060】
図12および図13は、空気圧駆動のマイクロバルブ技術を使用する装置の他の例示的な実施形態を示す。図12において、装置120は、装置110と同様であるが、経路指定バルブ121および第2の上側の電極116をさらに含む。動作時、経路指定バルブ121は閉じたままであり、イオン溶液は、図に示すように膜の左右両側から、膜12に向かってチャネルを流れる。経路指定バルブ121は、実際には2つのマイクロ流体サブシステムを作り出す。チャネルが2つのマイクロ流体サブシステムの各々において5本の別個のマイクロ流体チャネルに分割される上流側に、1つの電極が配置される。
【0061】
図13は、類似の装置130を示すが、2つのマイクロ流体チャネル112のみを有する。同様に、2つの上側の電極が膜の両側に配置され、2つのマイクロ流体チャネルが膜の一部を通過する。2つの制御バルブ114が各マイクロ流体チャネル112に配置され、一方は膜の上流に、他方は膜の下流に配置される。上述した違いを除いて、これら2つの装置120、130は、図11との関連で説明した装置と同様である。
【0062】
実施形態の前述の説明は、例示および説明のために提供されたものである。網羅的であること、または開示を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は通常その特定の実施形態に限定されないが、該当する場合には、具体的に図示または説明がなくても入れ替えることが可能であり、選択された実施形態で使用できる。同じことが多くの点で変更可能である。そのような変形例は本開示からの逸脱とみなすべきではなく、そのような改変のすべては、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0063】
本明細書で使用する用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示す場合の除き、複数も含むことが意図されている。「comprise」、「comprising」、「including」、「having」という表現は包括的であり、表記の特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または構成要素の存在を含んで特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらの群の追加や存在を排除するものではない。本明細書に記載された方法ステップ、プロセス、動作は、性能の順序として具体的に特定されない限り、必ずしも説明または図示された特定の順序で性能を必要とすると解釈されるべきではない。追加または代わりのステップを用いてもよい旨を、理解されたい。
【0064】
ある要素または層が別の要素または層の「上に」、「係合され」、「接続され」または「連結され」といわれる場合、他の要素もしくは層または介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素または層の「上に直接的に」、「直接的に係合
され」、「直接的に接続され」または「直接的に連結され」といわれる場合、介在する要素または層は存在しない。要素間の関係を記述するために使用される他の単語は、同様のやり方で解釈されるべきである(例えば、「間」と「直接」、「隣接」と「直接隣接」など)。本明細書で使用する場合、「および/または」という語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0065】
第1、第2、第3などの用語は、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを記述するために使用されるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションは、これらの用語に限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層またはセクションを他の領域、層またはセクションと区別するだけのために使用されることもある。「第1」、「第2」および他の数値的な表現は、文脈によって明白に示されない限り、順序または順番を意味しない。したがって、以下に説明する第1の要素、構成要素、領域、層またはセクションは、例示的な実施形態の教示内容から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層またはセクションと呼ぶことができる。
【0066】
「inner」、「outer」、「beneath」、「below」、「lower」、「above」、「upper」などの空間に関連する用語は、図に示されているように、ある要素または機能と他の要素または機能への関係を説明しやすくするためのものである。空間的に相対的な語は、図示の向きに加えて、使用または操作時のデバイスの異なる向きを包含することを意図してもよい。例えば、図中のデバイスをひっくり返すと、他の要素または機能の「below(下)」または「beneath(下)」に記載された要素は、他の要素または機能の「above(上)」に配置される。従って、「below」という用語例は、上と下の両方向を含むことができる。このデバイスは、それ以外の方向に向ける(90度回転させるか、他の方向に回転させる)ことができ、したがって、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13