(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】新規乳酸菌およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220816BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220816BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220816BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220816BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220816BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220816BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220816BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220816BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220816BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220816BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220816BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220816BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220816BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220816BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220816BHJP
A61K 31/732 20060101ALI20220816BHJP
A61K 31/722 20060101ALI20220816BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L33/135 ZNA
A61P37/08
A61P11/02
A61P17/00
A61P11/06
A61P27/02
A61P27/16
A61P17/04
A61P37/02
A61P29/00
A61P1/04
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K35/747
A61K31/732
A61K31/722
A61K31/715
(21)【出願番号】P 2021020363
(22)【出願日】2021-02-12
(62)【分割の表示】P 2019541313の分割
【原出願日】2018-01-31
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0013632
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM11962P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM11961P
(73)【特許権者】
【識別番号】512139102
【氏名又は名称】ユニバーシティ-インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】512318752
【氏名又は名称】ナヴィファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ミュンジョ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0075971(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1750468(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00~7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962P。
【請求項2】
前記ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pは、配列番号2の16S rDNA塩基配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962P。
【請求項3】
前記ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pは、炭素源としてL-アラビノース、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、ソルビトール、N-アセチル-グルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン(esculin)、サリシン、セロビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、ゲンチオビオース、D-ツラノースおよびグルコネートを用いることを特徴とする、請求項1に記載のラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962P。
【請求項4】
ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pを含む、アレルギー疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pは、ラクトバチルス・プランタルムIM76の生菌体、ラクトバチルス・プランタルムIM76の死菌体、ラクトバチルス・プランタルムIM76の培養物
またはラクトバチルス・プランタルムIM76の破砕
物であることを特徴とする、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記アレルギー疾患は、鼻炎、アトピー、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性中耳炎、じんましんおよびアナフィラキシーショックを含む群より選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、キトサン(chitosan)、イヌリン(inulin)および柑橘ペクチン(citrus pectin)を含む群より選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項4から6に記載の薬学組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pを含む、アレルギー疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項9】
前記ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pは、ラクトバチルス・プランタルムIM76の生菌体、ラクトバチルス・プランタルムIM76の死菌体、ラクトバチルス・プランタルムIM76の培養物
またはラクトバチルス・プランタルムIM76の破砕
物であることを特徴とする、請求項8に記載の食品組成物。
【請求項10】
前記アレルギー疾患は、鼻炎、アトピー、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性中耳炎、じんましんおよびアナフィラキシーショックを含む群より選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項8に記載の食品組成物。
【請求項11】
前記薬学組成物は、キトサン(chitosan)、イヌリン(inulin)および柑橘ペクチン(citrus pectin)を含む群より選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項8から10に記載の食品組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pを含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項13】
前記炎症疾患は大腸炎である、請求項12に記載の免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項14】
アレルギー疾患の予防または治療のための薬剤を生産するためのラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pの使用。
【請求項15】
アレルギー疾患の予防または治療に用いるためのラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規乳酸菌に関し、より詳しくは、免疫調節効能、炎症反応抑制効能などのような様々な生理活性によりアレルギー反応を抑制できる新規乳酸菌および新規乳酸菌の様々な食品・医薬的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
過敏反応とは、ヒトの生体において、非病原体に対して免疫寛容でない過度な免疫反応を引き起こして人体に害を与える反応をいう。過敏反応は、効果メカニズムに応じて大きく四つの類型に分類される。I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)は、主に肥満細胞(mast cell)のFc受容体に結合されたIgに特異的な抗原が結合して発生し、抗原に暴露された後に直ちに反応が起こるので即時型過敏反応とも言われる。I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)は一般に呼吸を通して吸入された微粒子抗原により誘発され、前記微粒子抗原としては植物花粉などがある。I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)により現れる疾患または症状としては、急性じんましん、アトピー皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などが挙げられる。II型過敏反応(Type 2 hypersensitivity reaction)は、ヒト細胞の表面成分に共有結合して免疫系が異種物質として認知する変形された構造を作る小さい分子によって起こる。II型過敏反応(Type 2 hypersensitivity reaction)において、B細胞は新しいエピトープ(Epitope)に対してIgGを生成し、IgGは変形された細胞に結合して補体活性と捕食作用を通じて細胞の破壊を招く。III型過敏反応(Type 3 hypersensitivity reaction)は、水溶性タンパク質抗原とそれに対して作られたIgGとの結合により形成された水溶性免疫複合体によって起こる。III型過敏反応(Type 3 hypersensitivity reaction)において、免疫複合体の一部は、小さい血管壁または肺の肺胞に付着して補体を活性化させ、組織を損傷させる炎症反応を引き起こして組織の生理学的機能を低下させる。IV型過敏反応(Type 4 hypersensitivity reaction)は、抗原特異的な効果T細胞の産物によって起こり、抗原に暴露されてから1~3日ぶりに現れるので遅延型過敏反応とも言われる。
【0003】
I型過敏(アレルギー)反応(Type 1 hypersensitivity reaction)は、IgEにより媒介される即時型反応である。IgE抗体は主に呼吸器と消化器の粘膜に存在する形質細胞により生成され、このように生成されたIgE抗体は肥満細胞(mast cell)と好塩基球の表面受容体に対する親和力が非常に高いため、大半はこれらの細胞と結合するようになる。肥満細胞(mast cell)と好塩基球の表面受容体の大半がIgE抗体と結合された状態を感作状態と言い、感作状態でアレルゲンに暴露されると、アレルゲンがIgE抗体と結合して受容体間に反応が起こり、肥満細胞(mast cell)内の顆粒が細胞膜と融合してヒスタミン、システイニルロイコトリエン、プロスタグランジンおよびトロンボキサンのような化学伝達物質を分泌する。これらの化学伝達物質は、血管透過性を増加させ、血管を拡張させ、平滑筋を収縮させ、分泌腺機能を亢進させてアレルギー早期反応を引き起こす。
【0004】
前記I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)により発生する疾患のうち一つであるアレルギー性鼻炎は、アレルギー誘発物質への暴露(allergen exposure)後にIgE媒介性炎症(IgE-mediated inflammation)を誘導して鼻、目、耳そして咽喉などに症候を引き起こす症候性疾患(symptomatic disorder)である。このようなアレルギー性鼻炎は、Allergic Rhinitis and Its Impact on Asthma Working Groupにより症候の持続期間に基づいて間欠的(intermittent AR)あるいは持続的(persistent AR)に分け、これは、さらに軽症(mild)、中等症(moderate)、重症(severe)に細分化(subdivision)される。有病率は、概して成人では10~30%、小児では40%の程度として、各国ごとに報告者に応じて若干の差はある。アレルギー性鼻炎に対する危険因子は、室内と室外の誘発物質(indoor and outdoor allergens)と、6歳前に血清IgEが100IU/ml以上の場合である。アレルギー性鼻炎は、合併症として副鼻腔炎(sinusitis)、中耳炎(otitis media)、結膜炎(conjunctivitis)をもたらしうるし、慢性に進行すると、喘息と副鼻腔炎を悪化させて睡眠妨害、集中力障害、社会生活不適応をもたらしうる。前記I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)により発生する疾患のうち一つである喘息は、呼吸困難、咳、喘鳴などの症状が反復的、発作的に現れる疾患であって、遺伝的要因と環境的要因が合わさって生じられる代表的なアレルギー疾患である。すなわち、親から受け継いだアレルギー体質と周りの喘息誘発因子が相互作用を引き起こして免疫体系に混乱が生じて喘息が発生し、大半は慢性的で且つ再発性のものである。
【0005】
I型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)により発生するアレルギー疾患を治療するために様々な治療法が研究されている。例えば、抗アレルギー剤、ヒスタミン受容体拮抗剤(抗ヒスタミン剤)、ステロイド剤などが治療のために用いられている。しかし、ヒスタミン受容体にヒスタミンと拮抗的に結合することにより末梢神経からのシグナル伝達を阻害する抗ヒスタミン剤、化学伝達物質産生細胞の活性を弱化させて症状の軽減を試みる抗アレルギー剤、免疫応答性を弱化させて炎症を軽減させるステロイド剤はいずれも相当な副作用を有していることが知られているだけでなく、大半は確実な治療効果を示さない。
【0006】
一方、乳酸菌は、Metchnikoffにより始めて腐敗菌(putrefactive organisms)の成長を防ぐために腸内容物を酸性化させることにより治療効果を得ようと試みて得られた産物であり、代表的な乳酸菌と見なされるラクトバチルス属(genus)は今まで165種(species)以上が発見された。アレルギー性疾患の治療に用いられたことのある生菌形態のプロバイオティクス乳酸菌としては、例えば、日本でヒマラヤスギ花粉(cedar pollen)によるアレルギー性症状に対するラクトバチルス・アシドフィルスL-92菌株(Lactobacillus acidophilus L-92)が報告されたことがある。
【0007】
ヒトの消化管には人体に有益な数え切れない乳酸菌が生息しており、ヒトの消化管から分離した乳酸菌を医薬品または機能性食品に適用しようとする研究が行われている。特に、アレルギー疾患治療剤は、長期間服用する必要があるため、容易に摂取可能であり、且つ、安全性が高いという特性が求められており、乳酸菌は、前記疾患の治療と共に前記治療のための要求条件に非常に好適な候補群である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術的な背景下で導き出されたものであり、本発明の目的は、免疫調節効能、炎症反応抑制効能を有する新規乳酸菌を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、新規乳酸菌の様々な食品・医薬的用途を提供することにある。
【0010】
具体的には、本発明の目的は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)またはラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)の新規乳酸菌を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物を含む、アレルギー疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物を含む、アレルギー疾患の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物を含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物を個体に投与することを含む、アレルギー疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、アレルギー疾患の予防または治療のためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物の用途を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、アレルギー疾患の予防または治療のための薬剤を生産するためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物の用途を提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の目的は、アレルギー疾患の予防または治療に用いるためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を果たすための一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2017.01.20、受託番号:KCCM11961P)を提供する。
【0019】
本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムIM55は、ヒトの糞便から分離および同定されたビフィドバクテリウム・ロンガムの新規な乳酸菌であることを特徴とする。
【0020】
本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムIM55の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号1の通りである。よって、本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961Pは、配列番号1の16S rDNA塩基配列を含むことができる。
【0021】
前記配列番号1の16S rDNA塩基配列の分析結果、公知のビフィドバクテリウム・ロンガム菌株と99%の相同性を示しており、ビフィドバクテリウム・ロンガムと最も高い分子系統学的類縁関係を示した。よって、前記乳酸菌をビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)に同定し、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55と命名し、韓国微生物保存センターに2017年1月20日付で寄託をした(受託番号KCCM11961P)。
【0022】
本発明において、前記ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55は、炭素源としてD-グルコース、D-マンニトール、D-ラクトース、D-スクロース、D-マルトース、サリシン(salicin)、D-キシロース、L-アラビノース、エスクリンフェリックシトラート(Esculin ferric citrate)、D-ラフィノースおよびD-ソルビトールを用いることができる。
【0023】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2017.01.20、受託番号:KCCM11962P)を提供する。
【0024】
本発明のラクトバチルス・プランタルムIM76は、伝統的な醗酵食品であるキムチから分離および同定されたラクトバチルス・プランタルムの新規な乳酸菌であることを特徴とする。
【0025】
本発明のラクトバチルス・プランタルムIM76の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号2の通りである。よって、本発明のラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pは、配列番号2の16S rDNA塩基配列を含むことができる。
【0026】
前記配列番号2の16S rDNA塩基配列の分析結果、公知のラクトバチルス・プランタルム菌株と99%の相同性を示し、ラクトバチルス・プランタルムと最も高い分子系統学的類縁関係を示した。よって、前記乳酸菌をラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に同定し、ラクトバチルス・プランタルムIM76に命名し、韓国微生物保存センターに2017年1月20日付で寄託をした(受託番号KCCM11962P)。
【0027】
本発明において、前記ラクトバチルス・プランタルムIM76は、炭素源としてL-アラビノース、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、ソルビトール、N-アセチル-グルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン(esculin)、サリシン(salicin)、セロビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース(melibiose)、スクロース、トレハロース、ラフィノース(raffinose)、ゲンチオビオース、D-ツラノースおよびグルコネート(gluconate)を用いることができる。
【0028】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む、アレルギー疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0029】
本発明において、用語「アレルギー疾患」とは、人体の特定物質に対する過敏症、すなわち、外部から流入された物質に対する免疫系の過度な反応を引き起こして誘発される疾患、疾病または異常状態を意味する。前記外部から流入された物質は、アレルギー疾患の原因となる抗原のアレルゲンであってもよい。前記アレルギーは外部から流入された物質によりヒスタミンのような炎症媒介物質が遊離して疾病が誘発される過敏反応を意味し、前記過敏反応はI型過敏反応、II型過敏反応、III型過敏反応またはIV型過敏反応であってもよい。本発明において、前記アレルギー疾患は、IgEにより媒介されるI型過敏反応により発生する疾患であってもよく、具体的には、鼻炎、アトピー、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性中耳炎、じんましんおよびアナフィラキシーショックからなる群より選択されてもよい。より具体的には、本発明において、前記アレルギー疾患は、鼻炎、アトピーまたは喘息であってもよい。
【0030】
本発明に係る組成物は、上記のようなアレルギー疾患に対する調節、予防、改善および治療効果に加え、アレルギー疾患により変化した腸内微生物を正常化させることによってアレルギー疾患およびそれによる合併症の調節、予防、改善および治療に優れた効果を示す。
【0031】
本発明の「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)」は、前記で説明した通りである。
【0032】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれるビフィドバクテリウム・ロンガムIM55は、その生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物であってもよいが、アレルギー疾患の予防または治療効果を達成できるビフィドバクテリウム・ロンガムIM55の形態であれば特に制限されずに用いることができる。
【0033】
本発明の「ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)」は、前記で説明した通りである。
【0034】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれるラクトバチルス・プランタルムIM76は、その生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物であってもよいが、アレルギー疾患の予防または治療効果を達成できるラクトバチルス・プランタルムIM76の形態であれば特に制限されずに用いることができる。
【0035】
本発明において、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の混合物は、アレルギー疾患の予防または治療効果を達成できる範囲で混合され、前記混合比は10:1~1:10であってもよいが、これに制限されず、具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55:ラクトバチルス・プランタルムIM76が10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であってもよい。その混合物は、これらの乳酸菌間の混合による相乗効果を通じて、アレルギー疾患に顕著な予防または治療効果を示す。
【0036】
本発明において、用語「生菌体」とは本発明の新規な乳酸菌そのものを意味し、「死菌体」とは加熱、加圧または薬物処理などにより殺菌処理された乳酸菌を意味し、「破砕物」とは乳酸菌を酵素処理、均質化または超音波処理などにより破壊された乳酸菌を意味する。また、本発明において、用語「抽出物」とは、乳酸菌を公知の抽出溶媒で抽出して得た産物を意味する。
【0037】
本発明において、用語「培養物」とは乳酸菌を公知の培地に培養させて得た産物を意味し、前記産物は新規な乳酸菌を含むことができる。前記培地は、公知の液体培地または固体培地から選択され、例えば、MRS液体培地、GAM液体培地、MRS寒天培地、GAM寒天培地、BL寒天培地であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0038】
本発明において、用語「予防」とは、本発明の薬学組成物の投与によりアレルギー疾患の症状を抑制するかまたは進行を遅延させる全ての行為を意味する。
【0039】
本発明において、用語「治療」とは、本発明の薬学組成物の投与によりアレルギー疾患の症状を好転または有益に変更させる全ての行為を意味する。
【0040】
本発明の薬学組成物の有効成分である新規な乳酸菌などの含量は、組成物の具体的な形態、使用目的または様相に応じて様々な範囲で調整することができる。本発明に係る薬学組成物において、有効成分の含量は大きく制限されず、例えば、組成物の総重量を基準に0.01~99重量%、具体的には0.1~75重量%、より具体的には0.5~50重量%であってもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、免疫調節効果、炎症反応の抑制効果、アレルギー疾患(例えば、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎など)の予防または治療効果を有する公知の有効成分を1種以上さらに含んでもよい。
【0042】
具体的には、本発明の薬学組成物は、キトサン(chitosan)、イヌリン(inulin)および柑橘ペクチン(citrus pectin)を含む群より選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0043】
前記キトサン、イヌリン、柑橘ペクチンまたはこれらの2以上の混合物は、本発明の薬学組成物に含まれて、新規乳酸菌がアレルギー疾患の予防および治療効果を達成するのにプレバイオティクス(prebiotics)として作用することができる。
【0044】
また、本発明に係る薬学組成物は、有効成分である新規な乳酸菌の他に、薬学的に許容可能な担体のような添加剤をさらに含んでもよい。本発明の薬学組成物に含まれる担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油などを含むが、これらに制限されるものではない。
【0045】
本発明の薬学組成物は、通常の方法により経口投与のための剤形または非経口投与のための剤形に製剤化することができ、製剤化する場合には、通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。
【0046】
本発明の薬学組成物が経口投与のための固形製剤に製剤化された場合には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含み、このような固形製剤は有効成分に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)、ラクトース(Lactose)またはゼラチンなどを含んでもよい。また、単なる賦形剤の他にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤などを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0047】
本発明の薬学組成物が経口投与のための液状製剤に製剤化された場合には懸濁剤、内用液剤、乳剤およびシロップ剤などを含み、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0048】
本発明の薬学組成物が非経口投与のための製剤に製剤化された場合には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤を含んでもよい。非水性溶剤、懸濁溶剤としてはプロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどを含むことができるが、これらに制限されるものではない。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられてもよい。
【0049】
本発明の薬学組成物は、目的とする方法に応じてヒトを含む哺乳類に経口投与または非経口投与することができ、非経口投与方式としては皮膚外用、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸腔内注射の注入方式などが挙げられる。本発明の薬学組成物の投与量は、薬学的に有効な量であれば大きく制限されず、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食習慣、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度に応じてその範囲が様々である。本発明の薬学組成物の通常的な1日投与量は大きく制限されないが、具体的には、有効成分を基準とする時、0.1~3000mg/kgであり、より具体的には0.5~2000mg/kgであり、1日に1回または数回に分けて投与されてもよい。
【0050】
前記「薬学的に有効な量」とは医学的治療に適用可能な合理的な恩恵または危険比率として疾患を治療するのに十分な量を意味し、これは、個体の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られた要素に応じて決定されてもよい。
【0051】
前記「投与」とは、任意の適切な方法により個体に所定の本発明の薬学組成物を提供することを意味する。この時、個体は動物を言い、典型的に本発明の新規な乳酸菌を用いた治療により有益な効果を示せる哺乳動物であってもよい。このような個体の好ましい例として、ヒトのような霊長類が含まれてもよい。また、このような個体には、アレルギー疾患の症状を持っているかまたはこのような症状を持つ危険のある個体は全て含まれてもよい。
【0052】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む、アレルギー疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0053】
本発明において、用語「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55」、「ラクトバチルス・プランタルムIM76」および「アレルギー疾患」などは、前記で説明した通りである。
【0054】
本発明の食品組成物は、健康機能食品として用いられることができる。前記「健康機能食品」とは健康機能食品に関する法律に従った、人体に有用な機能性を有した原料や成分を用いて製造および加工した食品を意味し、「機能性」とは人体の構造および機能に対して栄養素を調節するかまたは生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取するものを意味する。
【0055】
本発明の食品組成物は通常の食品添加物を含むことができ、前記「食品添加物」として適合するか否かは、特に規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則および一般試験法などに従って該当品目に関する規格および基準によって判定する。
【0056】
前記「食品添加物公典」に掲載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、桂皮酸などの化学的合成物、柿色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類などが挙げられる。
【0057】
本発明の食品組成物は、組成物の総重量に対して、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物を0.01~99重量%、具体的には0.1~75重量%、より具体的には0.5~50重量%を含むことができる。
【0058】
また、本発明の食品組成物は、アレルギー疾患の予防および/または改善を目的に、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態に製造および加工することができる。
【0059】
例えば、前記錠剤形態の食品組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物と賦形剤、結合剤、崩壊剤および他の添加剤との混合物を通常の方法により顆粒化した後に滑沢剤などを入れて圧縮成形するか、または前記混合物を直接圧縮成形することができる。また、前記錠剤形態の健康機能食品は、必要に応じて矯味剤などを含んでもよく、必要に応じて適当なコーティング基剤によりコーティングをしてもよい。
【0060】
カプセル形態の食品組成物のうち硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物、および賦形剤などの添加剤との混合物またはその粒状物またはコーティングした粒状物を充填して製造することができ、軟質カプセル剤は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物、および賦形剤などの添加剤との混合物をゼラチンなどと共にカプセル基剤に充填して製造することができる。前記軟質カプセル剤は、必要に応じて、グリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有することができる。
【0061】
丸剤形態の食品組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物と賦形剤、結合剤、崩壊剤などの混合物を適切な方法により成形して調製することができ、必要に応じて白糖や他の適切なコーティング基剤によりコーティングをしてもよく、またはデンプン、タルクまたは適切な物質で丸衣を施してもよい。
【0062】
顆粒形態の食品組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物と賦形剤、結合剤、崩壊剤などの混合物を適切な方法により粒状に製造することができ、必要に応じて着香剤、矯味剤などを含有することができる。顆粒形態の健康機能食品は、12号(1680μm)、14号(1410μm)および45号(350μm)のふるいを用いて、次の粒子径試験をする時、12号ふるいを全量通過し、14号ふるいに残るものが全体量の5.0%以下であり、また、45号ふるいを通過するものは全体量の15.0%以下であってもよい。
【0063】
前記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、着香剤などに関する用語の定義は、当業界の公知の文献に記載されたものであって、その機能などが同一ないし類似したものを含む(大韓薬典解説編、ムンソン社、韓国薬学大学協議会、第5改訂版、p33~48、1989)。
前記食品の種類に特に制限はない。本発明の抽出物を添加できる食品の例としては飲料、ガム、ビタミン複合剤、ドリンク剤などが挙げられ、通常の意味での食品組成物、特に健康機能食品を全て含む。
【0064】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0065】
本発明において、「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55」、「ラクトバチルス・プランタルムIM76」をはじめとして、薬学組成物と関連した用語は、前記で説明した通りである。
【0066】
本発明において、用語「免疫疾患」とは特定の免疫反応が起こる場合に問題となる疾患を意味し、これらに制限されるものではないが、好ましくは、自己免疫疾患、移植拒否、移植片対宿主病であってもよく、自己免疫疾患はクローン病、ペラグラ、リウマチ性関節炎、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿、ループス、慢性疲労症候群、線維筋痛、甲状腺機能低下症と亢進症、硬化症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性硬化症、喘息または潰瘍性大腸炎などであってもよい。
【0067】
本発明において、用語「炎症疾患」とは、炎症を主な病変とする疾病を総称する意味である。本発明の炎症疾患は、関節炎、痛風、肝炎、肥満、角膜炎、胃炎、腸炎、腎臓炎、大腸炎、糖尿、結核、気管支炎、胸膜炎、腹膜炎、脊椎炎、膵臓炎、炎症痛、尿道炎、膀胱炎、膣炎、動脈硬化症、敗血症、火傷、皮膚炎、歯周炎および歯肉炎を含む群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。具体的には、前記炎症疾患は大腸炎であってもよい。
【0068】
本発明に係る組成物は、上記のような炎症疾患に対する調節、予防、改善および治療効果に加え、炎症疾患により変化した腸内微生物を正常化させることによって炎症疾患およびそれによる合併症の調節、予防、改善および治療に優れた効果を示す。
【0069】
前記目的を果たすための他の一つの様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0070】
本発明において、「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55」、「ラクトバチルス・プランタルムIM76」をはじめとして、食品組成物と関連した用語は、前記で説明した通りである。
【0071】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を個体に投与することを含む、アレルギー疾患の予防または治療方法を提供する。
【0072】
本発明において、「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)」、「ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)」、「投与」、「個体」および「アレルギー疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0073】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、アレルギー疾患の予防または治療のためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物の用途を提供する。
【0074】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、アレルギー疾患の予防または治療のための薬剤を生産するためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物の用途を提供する。
【0075】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、アレルギー疾患の予防または治療に用いるためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む組成物を提供する。
【0076】
前記目的を果たすための他の一様態として、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を個体に投与することを含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療方法を提供する。
【0077】
本発明において、「ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)」、「ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)」、「投与」、「個体」、「免疫疾患」および「炎症疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0078】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療のためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物の用途を提供する。
【0079】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療のための薬剤を生産するためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物の用途を提供する。
【0080】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療に用いるためのビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)KCCM11961P、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)KCCM11962Pまたはその混合物を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0081】
本発明に係るビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)またはラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)は、人体に毒性がなく安全であり、免疫調節の効能、炎症反応抑制の効能のような優れた生理活性を有し、腸内微生物の正常化効果を有する。よって、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55(Bifidobacterium longum IM55)、ラクトバチルス・プランタルムIM76(Lactobacillus plantarum IM76)またはその混合物は、アレルギー疾患だけでなく、免疫疾患および炎症疾患の予防、改善または治療のための素材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】マクロファージにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の処理時にIL-10濃度が増加するのを確認したグラフである(NOR、正常対照群;LPS、炎症反応誘導群;I55、炎症反応誘導+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
5CFU/ml投与群;およびI76、炎症反応誘導+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
5CFU/ml投与群、以下、
図2~4も同様)。
【
図2】マクロファージにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の処理時にIL-12濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図3】樹状細胞にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の処理時にIL-10濃度が増加するのを確認したグラフである。
【
図4】樹状細胞にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の処理時にTNF-α濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図5】T細胞のTh2細胞への分化誘導時にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76を処理した結果、GATA3の発現レベルが抑制されるのを確認したグラフである(NOR、正常対照群;ThI、Th2細胞分化誘導物質投与群;I55、Th2細胞分化誘導+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
5CFU/ml投与群;およびI76、Th2細胞分化誘導+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
5CFU/ml投与群、以下、
図6も同様)。
【
図6】T細胞のTh2細胞への分化誘導時にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76を処理した結果、IL-5の発現レベルが抑制されるのを確認したグラフである。
【
図7】T細胞のTreg細胞への分化誘導時にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76を処理した結果、FOXp3の発現レベルが増加するのを確認したグラフである(NOR、正常対照群;TrI、Treg細胞分化誘導物質投与群;I55、Treg細胞分化誘導+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
5CFU/ml投与群;およびI76、Treg細胞分化誘導+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
5CFU/ml投与群、以下、
図8も同様)。
【
図8】T細胞のTreg細胞への分化誘導時にビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76を処理した結果、IL-10の発現レベルが増加するのを確認したグラフである。
【
図9】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に血清のIL-5濃度が減少するのを確認したグラフである(Nor、正常対照群(PBSのみを経口投与);ConまたはAR、疾患誘発群;Dx、疾患誘発+デキサメタゾン(dexamethasone)1mg/kg b.w.腹腔投与群;I55、疾患誘発+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
9CFU/マウス経口投与群;およびI76、疾患誘発+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
9CFU/マウス経口投与群、以下、
図10~
図17も同様)。
【
図10】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に血清のIgE濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図11】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に血清のIL-4濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図12】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)のIL-5濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図13】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)のIL-4濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図14】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)においてTh2細胞分布率が減少するのを確認したグラフである。
【
図15】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)において好酸球細胞分布率が減少するのを確認したグラフである。
【
図16】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)のIL-10濃度が増加するのを確認したグラフである。
【
図17】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)においてTreg細胞分布率が増加するのを確認したグラフである。
【
図18】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に鼻炎症状点数(くしゃみおよび鼻掻き)が減少するのを確認したグラフである。 (NOR、正常対照群(PBSのみを経口投与);AR、疾患誘発群;DX、疾患誘発+デキサメタゾン(dexamethasone)1mg/kg b.w.腹腔投与群;I55、疾患誘発+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
9CFU/マウス経口投与群;およびI76、疾患誘発+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
9CFU/マウス経口投与群、以下、
図19~
図26も同様)。
【
図19】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に鼻腔のIL-4濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図20】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に鼻腔のIL-5濃度が減少するのを確認したグラフである。
【
図21】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に鼻腔の破壊および鼻腔上皮細胞の膨張が減少するのを確認した図である。
【
図22】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に肺組織のGATA3の発現レベルが減少するのを確認したグラフである。
【
図23】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に肺組織のIL-10の発現レベルが増加するのを確認したグラフである。
【
図24】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に肺組織のFOXp3の発現レベルが増加するのを確認したグラフである。
【
図25】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に肺組織のIL-5の発現レベルが減少するのを確認したグラフである。
【
図26】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55またはラクトバチルス・プランタルムIM76の投与時に肺組織の炎症および浮腫の誘発程度が減少するのを確認した図である。
【
図27】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の混合物(1:1、1:3、1:9)の投与時に鼻炎症状点数(くしゃみおよび鼻掻き)および鼻腔のIL-5濃度が減少するのを確認したグラフである(Nor、正常対照群(PBSのみを経口投与);AR、疾患誘発群;DX、疾患誘発+デキサメタゾン(dexamethasone)1mg/kg b.w.腹腔投与群;1:1、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55:ラクトバチルス・プランタルムIM76=1:1混合比(総1×10
9CFU/マウス)経口投与群;1:3、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55:ラクトバチルス・プランタルムIM76=1:3混合比(総1×10
9CFU/マウス)経口投与群;および1:9、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55:ラクトバチルス・プランタルムIM76=1:9混合比(総1×10
9CFU/マウス)経口投与群、以下、
図28も同様)。
【
図28】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の混合物(1:1、1:3、1:9)の投与時に血清のIL-5の発現レベルが減少するのを確認したグラフである。
【
図29】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物の投与時に大腸のIL-4およびIL-5濃度が減少し、IL-10濃度が増加するのを確認したグラフである(Nor、正常対照群(PBSのみを経口投与);AR、疾患誘発群;DX、疾患誘発+デキサメタゾン(dexamethasone)1mg/kg b.w.腹腔投与群;I55、疾患誘発+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55 1×10
9CFU/マウス経口投与群;I76、疾患誘発+ラクトバチルス・プランタルムIM76 1×10
9CFU/マウス経口投与群;およびPM、疾患誘発+ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76を各々5×10
8CFU/マウス経口投与群、以下、
図30も同様)。
【
図30】アレルギー性鼻炎および喘息が誘発された動物モデルにビフィドバクテリウム・ロンガムIM55、ラクトバチルス・プランタルムIM76またはその混合物の投与時に腸内微生物の構成が変化するのを確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下では本発明を実施例を通じてより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明の技術的特徴を明確に例示するためのものであって、本発明の保護範囲を限定するためのものではない。
【実施例1】
【0084】
乳酸菌の分離および同定
【0085】
(1)乳酸菌の分離
【0086】
韓国ソウルに居住する20代の健康な人または全羅南道のクレに居住する60代の健康な人の糞便または自家製の白菜キムチをGAM液体培地(GAM broth;Nissui Pharmaceutical、Japan)に入れて懸濁した。その後、上清を取ってMRS寒天培地(MRS agar medium;Difco、USA)またはGAM寒天培地(GAM agar medium;Nissui Pharmaceutical、Japan)に移植した。37℃で約48時間嫌気的に培養した後、コロニー(colony)を形成したラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)菌株、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)菌株を分離した。
【0087】
(2)分離した乳酸菌の同定
【0088】
ヒトの糞便または白菜キムチから分離した菌株のグラム染色、生理学的特性および16S rDNA配列などにより菌株の種を確定し、菌株名を付与した。下記の表1および表2に分離した乳酸菌の管理番号および菌株名を示す。ヒトの糞便から分離した乳酸菌はビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)15種(表1の管理番号51~65)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)10種(表1の管理番号66~75)およびラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)10種(表2の管理番号90~99)であり、白菜キムチから分離した乳酸菌はラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)14種(表2の管理番号76~89)であった。
【0089】
【0090】
【0091】
表1に記載された菌株のうちビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55はグラム陽性桿菌であって、カタラーゼ(catalase)活性は示さず、胞子(spore)を有しないことが確認された。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55の16S rDNAは、配列番号1の塩基配列を有することが分かった。ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55の16S rDNA塩基配列をBLAST検索により比較した結果、同一な16S rDNA塩基配列を有するビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株は検索されず、公知のビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示した。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55の生理学的特性のうち炭素源利用性をAPI Kit(モデル名:API 20 strep;製造会社:BioMerieux’s、USA)による糖発酵試験により分析し、その結果を下記の表3に示す。下記の表3において、「+」は炭素源利用性が陽性の場合を示し、「-」は炭素源利用性が陰性の場合を示す。
【0092】
【0093】
表2に記載された菌株のうちラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76は、グラム陽性桿菌であることが確認された。また、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76の16S rDNAは、配列番号2の塩基配列を有することが分かった。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76の16S rDNA塩基配列をBLAST検索により比較した結果、同一の16S rDNA塩基配列を有するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株は検索されず、公知のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示した。また、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76の生理学的特性のうち炭素源利用性をAPI Kit(モデル名:API 50 CHL;製造会社:BioMerieux’s、USA)による糖発酵試験により分析し、その結果を下記の表4に示す。下記の表4において、「+」は炭素源利用性が陽性の場合を示し、「-」は炭素源利用性が陰性の場合を示す。
【0094】
【実施例2】
【0095】
乳酸菌の炎症反応抑制効能の試験
【0096】
(1)乳酸菌のマクロファージ炎症反応抑制効能の試験
【0097】
6週齢のC57BL/6J雄マウス(20~23g)をラウンバイオ(株)から購入した。マウスの腹腔に滅菌された4% thioglycolate 2mlを投与し、96時間の経過後にマウスを麻酔した。マウスの腹腔にRPMI 1640培地8mlを投与し、5~10分間の経過後に腹腔内のRPMI培地(マクロファージを含む)をさらに抜き取った後、1000rpmの条件で10分間遠心分離した後、RPMI 1640培地で2回洗浄した。24-ウェルプレートにマクロファージを各ウェル当たり0.5×106個播種し、24時間培養した後にプレートに付着していない細胞を除去した。マクロファージ培養液に試験物質である乳酸菌と炎症反応誘導物質であるLPS(lipopolysaccharide)を90分間または24時間処理した後に上清および細胞を得た。この時、乳酸菌の処理濃度は1×104CFU/mlであった。また、乳酸菌の効能を比較するために試験物質として様々なプレバイオティクスを用いた。
【0098】
前記得られた上清からTNF-αの発現量をELISA kitで測定した。また、前記得られた細胞からp65(NF-κB)、p-p65(phosphor-NF-κB)およびβ-actinの発現量を免疫ブロット法(immunoblotting)方法により測定した。具体的には、上清50μgを取ってSDS 10%(w/v)polyacrylamide gelにおいて1.5時間電気泳動をした。電気泳動したサンプルをニトロセルロース紙に100V、400mAの条件で70分間トランスファー(transfer)した。サンプルがトランスファーされたニトロセロロス紙を5% skim milkで30分間ブロッキングした後、5分ずつ3回にかけてPBS-Tweenで洗浄し、1次抗体(Santa Cruz Biotechnology、米国)を1:100の比率で追加して一晩反応させた。その後、10分ずつ3回にかけて洗浄し、2次抗体(Santa Cruz Biotechnology、米国)を1:1000の比率で追加して80分間反応させた。その後、15分ずつ3回にかけて洗浄し、蛍光発色させた後に現像し、発色バンドの強度(Intensity)を測定した。乳酸菌のマクロファージ炎症反応抑制効能の試験結果を下記の表5~表7に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表5~表7の試験結果、乳酸菌の種類ごとにマクロファージの炎症反応抑制効能が互いに異なるのを確認した。具体的には、ビフィドバクテリウム属乳酸菌とラクトバチルス属乳酸菌の場合、種は勿論、同一の種であっても菌株に応じて炎症反応抑制効能が異なるのを確認した。この中で、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の場合は、NF-kB活性化抑制率とTNF-αの発現抑制率が同時に両方とも高いのを確認した。
【0103】
また、プレバイオティクスとしてキトサン(chitosan)、イヌリン(inulin)およびシトラスペクチン(citrus pectin)が他のプレバイオティクスに比べてNF-kB活性化抑制率およびTNF-αの発現抑制率に優れるのを確認した。
【0104】
(2)乳酸菌の樹状細胞炎症反応抑制効能の試験
【0105】
C57BL/6マウス(male、20~23g)の骨髄から10% FBS、1% antibiotics、1% glutamax、0.1% mercaptoethanolを含有したRPMI 1640を用いて免疫細胞を分離し、RBC lysis bufferを処理した後に洗浄した。前記細胞を24ウェル-プレートの各ウェルに分株し、GM-CSFおよびIL-4を1:1000の比率で処理し培養した。培養5日目に新しい培地に交換し、8日目に回収して樹状細胞として用いた。その後、24-ウェルプレートに樹状細胞を各ウェル当たり0.5×106個接種し、試験物質である乳酸菌と炎症反応誘導物質であるLPS(lipopolysaccharide)を90分間または24時間処理した後に上清および細胞を得た。この時、乳酸菌の処理濃度は1×104CFU/mlであった。また、乳酸菌の効能を比較するために試験物質として様々なプレバイオティクスを用いた。
【0106】
前記得られた上清からIL-10およびIL-12の発現量をELISA kitで測定した。また、試験物質を90分間処理した後に得た細胞からp65(NF-κB)、p-p65(phosphor-NF-κB)およびβ-actinの発現量を前記実施例2.(1)と同様に免疫ブロット法(immunoblotting)方法により測定した。乳酸菌の樹状細胞炎症反応抑制効能の試験結果を下記の表8~表10に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
表8~表10の試験結果、乳酸菌の種類ごとに樹状細胞の炎症反応抑制効能が互いに異なるのを確認した。具体的には、ビフィドバクテリウム属乳酸菌とラクトバチルス属乳酸菌の場合、種は勿論、同一の種であっても菌株に応じて炎症反応抑制効能が異なるのを確認した。特に、一部の菌株はIL-12の発現が増加し、大半の菌株はIL-10の発現が減少するという結果を示したりもした。この中で、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の場合は、NF-kB活性化抑制率およびIL-12の発現抑制率が最も高いと同時にIL-10の発現増加率が最も高いのを確認した。
【0111】
また、プレバイオティクスとしてキトサン(chitosan)、イヌリン(inulin)および柑橘ペクチン(citrus pectin)が他のプレバイオティクスに比べてNF-kB活性化抑制率、IL-12の発現抑制率およびIL-10の発現増加率に優れるのを確認した。
【0112】
前記実施例2により、様々な乳酸菌の中でもビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76の炎症反応抑制効果が最も優れていた。また、様々なプレバイオティクスの中でもキトサン、イヌリンおよび柑橘ペクチンの炎症反応抑制効果が優れるのを確認した。
【実施例3】
【0113】
乳酸菌の免疫調節効能の評価
【0114】
(1)細胞分化率
【0115】
アレルギー疾患、具体的にはI型過敏反応(Type 1 hypersensitivity reaction)により発生する疾患を調節、予防、改善または治療するためには、アレルゲンに対する免疫反応時、IgE抗体の生成を減少させ、IL-10を放出するTreg細胞(regulatory T cell)の生成を増加させることが重要である。アレルギー反応は、肥満細胞や好塩基球などが作り出す媒介物質だけでなく、これらの細胞から分泌されるサイトカインの作用によりさらに複雑になり、アレルギー反応で現れる一部の症状は、これらのサイトカインの作用に起因すると知られている。肥満細胞においてはTNF-α、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13などのサイトカインが作られるが、これらのサイトカインは好中球と好酸球を集める役割をする。また、肥満細胞から分泌されたIL-4、IL-13はB細胞を活性化してIgE抗体を作るようにし、IL-5は好酸球を集めて活性化させる役割をする。IL-4、IL-5のようなサイトカインは、Th2細胞から多く分泌されるため、一般にTh2サイトカインに分類され、肥満細胞とTh2細胞から分泌されるこれらのサイトカインは、各々の受容体と結合して細胞間の相互作用を誘導し、アレルギー反応を増幅させる作用をする。また、代表的な炎症誘発性(proinflammatory)サイトカインであるTNF-αがアレルギー状態で全身的に多量産生されると、アレルギーショック症状が起こりうる。
【0116】
したがって、糞便または白菜キムチから分離した乳酸菌の免疫調節効能を評価するために、前記サイトカインを分泌する細胞への分化抑制率およびTreg細胞への分化増加率を測定して脾臓細胞の免疫反応に乳酸菌が及ぼす影響を測定した。
【0117】
具体的には、C56BL/6Jマウスの脾臓を分離し粉砕した後、10% FCS含有RPMI 1640培地に懸濁し、CD4 T cell isolation kit(MiltenyiBiotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を用いてCD4 T細胞を分離した。分離したCD4 T細胞を12-ウェルプレートに各ウェル当たり5×105個で播種した。その後、各ウェルにT細胞のTh1細胞への分化を誘導するためにanti-CD3、anti-CD28、IL-2およびIL-12を、T細胞のTh2細胞への分化を誘導するためにanti-CD3、anti-CD28、IL-2およびIL-4を、T細胞のTh17細胞への分化を誘導するためにanti-CD3、anti-CD28、IL-6およびTGF-βを、T細胞のTreg細胞への分化を誘導するためにanti-CD3およびanti-CD28を入れ、細胞を培養しつつ、試験物質である乳酸菌をウェル当たり1×105CFUの量で入れて4日間培養した。また、乳酸菌の効能を比較するために試験物質として様々なプレバイオティクスを用いた。
【0118】
その後、脾臓から分離したT細胞のTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞への分化能を測定した。具体的には、培養液の細胞をanti-FOXp3またはanti-IL-17A抗体で染色し、FACS(Fluorescence-activated cell sorting)装置(C6 Flow Cytometer○R System、San Jose、CA、USA)を用いてTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞の分布を分析し、その結果を下記の表11~表13に示す。下記の表11~表13において、乳酸菌は、種名を省略し、本発明の発明者が付与した菌株名を用いた。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
表11~表13の実験結果、乳酸菌の種類ごとにT細胞の分化率が互いに異なるのを確認した。具体的には、ビフィドバクテリウム属乳酸菌の場合は、乳酸菌の種類ごとにTh1、Th2およびTh17細胞分化抑制率およびTreg細胞分化増加率が互いに異なり、一部の乳酸菌の場合は、Th2細胞抑制率およびTreg細胞増加率が他の乳酸菌とは逆になる結果を示した。この中で、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55の場合は、Th1、Th2およびTh17細胞分化抑制率が最も高いと同時に、Treg細胞分化増加率が最も高いのを確認した。また、ラクトバチルス属乳酸菌もビフィドバクテリウム属乳酸菌と類似するように、乳酸菌の種類に応じて細胞分化抑制率および増加率が互いに異なっていた。この中で、ラクトバチルス・プランタルムIM76がTh1、Th2およびTh17細胞分化抑制率およびTreg細胞分化増加率が最も高いことを確認した。
【0123】
(2)サイトカイン発現率
【0124】
また、脾臓T細胞から分化したTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞の転写因子およびサイトカイン発現率を測定した。具体的には、qRT-PCRを用いてTh1細胞分化誘導培養液からT-bet、IFN-γおよびIL-12を、Th2細胞分化誘導培養液からGATA3およびIL-5を、Th17細胞分化誘導培養液からRORγtおよびIL-17を、Treg細胞分化誘導培養液からFOXp3およびIL-10の発現量を分析した。下記の表14は、qRT-PCRの実行時に用いたプライマーの塩基配列を増幅目的物と対応させて示したものである。脾臓T細胞から分化したTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞の転写因子およびサイトカイン発現率の測定結果を下記の表15および表16に示す。下記の表15および表16において、乳酸菌は、種名を省略し、本発明の発明者が付与した菌株名を用いた。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表15および表16の測定結果、乳酸菌の種類ごとにサイトカイン発現変化率が互いに異なるのを確認した。具体的には、ビフィドバクテリウム属乳酸菌の場合、一部の乳酸菌においては、GATA3およびIL-5の発現抑制率が他の乳酸菌とは逆になる結果を示したりもした。この中で、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55の場合は、T-bet、IFN-γ、GATA3、IL-5、RORγtおよびIL-17の発現抑制率が最も高いと同時に、FOXp3およびIL-10の発現増加率が最も高いのを確認した。また、ラクトバチルス属乳酸菌もビフィドバクテリウム属乳酸菌と類似するように、一部の乳酸菌においてサイトカイン発現変化率が互いに異なる結果を示したりもした。この中で、ラクトバチルス・プランタルムIM76の場合は、T-bet、IFN-γ、GATA3、IL-5、RORγtおよびIL-17の発現抑制率が最も高いと同時に、FOXp3およびIL-10の発現増加率が最も高いのを確認した。
【実施例4】
【0129】
IM55またはIM76の炎症反応抑制効能の試験
【0130】
前記実施例1で分離した乳酸菌のうち、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55とラクトバチルス・プランタルムIM76の炎症反応抑制効能の試験を実施した。
【0131】
(1)IM55またはIM76のマクロファージ炎症反応抑制効能の試験
【0132】
7週齢のBALB/c雌マウス(20~22g)をラウンバイオ(株)から購入して実験前に7日間順化させた。マウスの腹腔に4% thioglycolate 2mlを投与し、96時間の経過後にマウスを犠牲死させた。10mlのRPMI 1640で腹腔液(Peritoneal cavity fluids)を収集し、300×gの条件で10分間遠心分離した後、RPMI 1640で洗浄した。12-ウェルマイクロプレートに細胞を各ウェル当たり0.5×10
6個播種し、1% antibiotic-antimycoticおよび10% FBSを含有するRPMI 1640培地で37℃で20時間培養し、3回洗浄した。付着された細胞をマクロファージとして用いた。サイトカイン発現からIM55またはIM76の効果を測定するために、1×10
6細胞/ウェルのマクロファージに1×10
5CFU/mlの乳酸菌と炎症反応誘導物質であるLPSを20時間処理した。各サイトカインの発現量は、前記実施例2.(1)と同様に、ELISA kitで測定した。測定結果、IM55またはIM76の投与時、IL-10の発現が増加し、IL-12の発現が抑制されるのを確認した(
図1および
図2)。
【0133】
(2)IM55またはIM76の樹状細胞炎症反応抑制効能の試験
【0134】
7週齢のBALB/c雌マウス(20~22g)から公知の方法(Immunopharmacol.Immunotoxicol.、2016、38、447~454)により、RPMI 1640でマウス骨髄細胞を収集した。2×106個の収集された細胞を12-ウェルプレートに接種し、20ng/ml rGM-CSF、10% FBS、1% antibiotic-antimycoticおよび150μg/mlのゲンタマイシン(gentamycin)が含まれたRPMI 1640培地で培養した。
【0135】
サイトカイン発現からIM55またはIM76の効果を測定するために、培養3日目および6日目に前記細胞をコンディショニングされた培地に取替えして顆粒球を除去し、培養8日目に1×10
5CFU/mlの乳酸菌と100ng/mlのLPSを処理した。各サイトカインの発現量は、前記実施例2.(2)と同様に、ELISA kitで測定した。測定結果、IM55またはIM76の投与時、IL-10の発現が増加し、TNF-aの発現が抑制されるのを確認した(
図3および
図4)。
【0136】
前記実施例4の結果により、新規な乳酸菌であるビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76は、優れた炎症反応抑制効能を示しており、炎症疾患の予防、改善および治療に優れた効果を示すことが分かった。
【実施例5】
【0137】
IM55またはIM76の免疫調節効能の評価
【0138】
前記実施例1で分離した乳酸菌のうちビフィドバクテリウム・ロンガムIM55とラクトバチルス・プランタルムIM76の免疫調節効能を評価するために、前記実施例3と同様の方法によりT細胞の分化率を分析した。
【0139】
具体的には、7週齢のBALB/c雌マウス(20~22g)から無菌的に脾臓を分離して適切に粉砕し、tris-buffered ammonium chlorideで処理した。10%のFCS含有RPMI 1640培地に懸濁し、Pan T細胞分離キットII(Pan T Cell Isolation Kit II)を用いて細胞懸濁液からT細胞を分離した。分離したT細胞(1×105細胞/ウェル)のTh2細胞への分化を誘導するためにanti-CD28(1μg/ml)、anti-CD3(1μg/ml)、rIL-4(10μg/ml)およびrIL-2(10μg/ml)を、T細胞(1×105細胞/ウェル)のTreg細胞への分化を誘導するためにanti-CD28(1μg/ml)およびanti-CD3(1μg/ml)を入れ、細胞を培養しつつ、IM55またはIM76をウェル当たり1×105CFU/mlの量で入れて4日間培養した。これらの細胞からRNAを分離し、IL-10、GATA3、FOXp3およびIL-5の発現レベルをqRT-PCRを実行して分析を行った。qRT-PCRは前記実施例3と同様に実行し、表14と同様のプライマーを用いた。
【0140】
分析結果、IM55またはIM76の処理時、GATA3およびIL-5の発現量が減少してTh2細胞への分化が抑制され(
図5および
図6)、FOXp3およびIL-10の発現量が増加してTreg細胞への分化が促進されるのを確認した(
図7および
図8)。
【0141】
前記実施例5の結果により、新規な乳酸菌であるビフィドバクテリウム・ロンガムIM55およびラクトバチルス・プランタルムIM76は、優れた免疫調節効能を示しており、免疫疾患の予防、改善および治療に優れた効果を示すことが分かった。
【実施例6】
【0142】
乳酸菌の鼻炎および喘息の改善効能の評価(1)
【0143】
気管支肺胞洗浄(Bronchoalveolar lavage、BAL)は、気管支内視鏡と共に行われるものであって、気道および肺胞を覆っている上皮粘液層から細胞および他の水溶性成分を収集するために広く用いられてきた。気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)は、血流内の様々なタンパク質だけでなく、上皮細胞および炎症性細胞を含む様々な細胞種類から分泌されたタンパク質を含む。気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)は、一般に気管支喘息、気管支炎または肺疾患の診断または病理状態を分析するのに用いられる。よって、鼻炎および喘息の改善効果を確認するために、気管支肺胞洗浄液をはじめとする血清および肺組織から抗鼻炎および抗喘息効能と関連した指標を分析した。
【0144】
(1)実験方法
【0145】
7週齢のBALB/C雌マウス(21~23g)を湿度50%、温度25℃、照明は12時間つけた後に12時間消すことを繰り返す、調節された環境条件で1週間順化させた。その後、実験0日目および14日目にマウス1匹当たりにアレルギーを誘発するオボアルブミン(ovalbumin、OVA)20μgとaluminum hydroxide(Alum)2mgをphosphate buffered saline(PBS:pH7.4)0.2mlに懸濁した後、それを腹腔に注射した。その後、実験26日目、27日目および28日目にマウス1匹当たりにオボアルブミン(ovalbumin、OVA)100μgを蒸留水10μlに溶かした後、それを鼻腔に塗抹投与してアレルギー性鼻炎および喘息を誘発した。一方、実験26日目から30日目までの総5日間、毎日1回ずつ試験薬物である乳酸菌を経口投与した。また、乳酸菌の代わりに陽性対照薬物として用いたデキサメタゾン(dexamethasone)を1mg/kg b.w.の容量で腹腔投与した。また、正常群に該当するマウスには、アレルギー性鼻炎および喘息を誘発せず、オボアルブミンおよび試験薬物の代わりにphosphate buffered saline(PBS:pH7.4)のみを経口投与した。また、対照群に該当するマウスには、アレルギー性鼻炎および喘息を誘発し、試験薬物としてphosphate buffered saline(PBS:pH7.4)のみを経口投与した。実験終了後、マウスを麻酔し、血液、肺組織および気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)を採取した。遠心分離により採取した血液から血清を分離し、それを分析試料として用いた。
【0146】
様々な分析方法を用いて血清、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)および肺組織から抗鼻炎効能および抗喘息効能と関連した指標を分析した。各分析方法およびそれを通じて分析した指標は次の通りである。
*enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA):IL-10、IL-5、IL-6、IL-4、IgEなど
*FACS(Fluorescence-activated cell sorting):T細胞(Th1:CD4+/IFN-γ+;Th2:CD4+/IL-4+;Treg:CD4+/FOXp3+;Th17:CD4+/IL-17+)分布、好酸球(CD11b+、Siglec-F+)分布
【0147】
(2)実験結果
【0148】
実験結果、IM55またはIM76を投与した群の血清において、鼻炎および喘息関連の指標であるIL-5、IgEおよびIL-4の発現が顕著に抑制されるのを確認した(表17および
図9~11)。また、気管支肺胞洗浄液においても鼻炎および喘息関連の指標であるIL-5およびIL-4の量が顕著に減少し、Th2細胞および好酸球の比率が顕著に減少したのを確認した(表18および
図12~15)。さらに、気管支肺胞洗浄液において、鼻炎および喘息の予防および治療効果と関連したIL-10の発現が増加し、Treg細胞の比率が増加したのを確認した(表18、
図16および
図17)。
【0149】
【0150】
【実施例7】
【0151】
乳酸菌の鼻炎および喘息の改善効能の評価(2)
【0152】
(1)実験方法
【0153】
公知の方法(Oh et al.、Immunopharmacol.Immunotoxicol.、2013、35、678-686)を参考にして、オボアルブミンにより誘導されたアレルギー鼻炎モデルを製造した。具体的には、マウスを無作為に6個のグループ(グループ当たりn=8)に分けた。5個の群に対しては、実験1日目および14日目に硫酸カリウムアルミニウム(aluminium potassim sulfate)溶液に希釈したオボアルブミン(20μg)を腹腔内注射した。実験26日目、27日目および28日目に前記マウス1匹当たりにオボアルブミン100μgを蒸留水10μlに溶かした後、それを鼻腔に塗抹投与してアレルギー性鼻炎および喘息を誘発した。一方、実験26日目から30日目までの総5日間、毎日1回ずつ試験物質(IM55[1×109CFU/マウス]、IM76[1×109CFU/マウス]、デキサメタゾン(dexamethasone)[1mg/kg]または食塩水)を投与した。正常群に該当するマウスには、アレルギー性鼻炎および喘息を誘発せず、食塩水のみを投与した。実験31日目に、マウスの両鼻腔内にオボアルブミン(10μl/鼻孔、食塩水に溶解10mg/ml)を投与して刺激させた後、10分間くしゃみおよび鼻掻きの回数(鼻炎症状点数)を計数した。
【0154】
組織検査のために肺と鼻腔組織を分離し、4%中性緩衝ホルマリン(neutral buffered formalin)に固定し冷凍させた。低温維持装置を用いて前記冷凍された組織を10-μm断面に切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)と過ヨウ素酸シッフ反応(periodic acid Schiff reaction、PAS)で染色した。
【0155】
また、前記実施例3などの様々な分析方法を用いて鼻腔、血清、気管支肺胞洗浄液および肺組織から抗鼻炎効能および抗喘息効能と関連した指標を分析した。具体的には、鼻腔および血清の指標はELISA kitで測定し、気管支肺胞洗浄液および肺組織の鼻炎および喘息関連の指標は表14のプライマーを用いてqRT-PCRで測定した。
【0156】
(2)実験結果
【0157】
マウスにオボアルブミンの処理時、鼻炎症状点数(くしゃみおよび鼻掻きの回数)と鼻腔内のIL-4およびIL-5の発現を含むアレルギー鼻炎症状が有意に増加した。しかし、IM55またはIM76の処理時、オボアルブミンによるアレルギー鼻炎症状と鼻腔内のIL-4およびIL-5数値が有意に減少した(
図18~
図20)。また、IM55またはIM76を処理した場合、オボアルブミンによる鼻腔の破壊が改善され、鼻腔上皮細胞の膨張が緩和された(
図21)。
【0158】
さらに、組織学的な検査の結果、鼻炎誘導動物モデルは、肺炎症および浮腫を誘発し、IL-5およびGATA3の発現が増加し、IL-10およびFOXp3の発現が減少した。しかし、IM55またはIM76を処理した場合、オボアルブミンによる肺組織の破壊および上皮細胞の拡張が抑制され、GATA3とIL-5の発現が抑制され、FOXp3およびIL-10の発現が増加した(
図22~26)。
【実施例8】
【0159】
混合乳酸菌の鼻炎および喘息の改善効能の評価(3)
【0160】
IM55またはIM76の単独の効果だけでなく、IM55およびIM76の混合物の鼻炎および喘息の改善効能を評価した。具体的には、鼻炎症状点数、気管支肺胞洗浄液の好酸球細胞分布率(%)および血液内サイトカインの発現量を前記実施例3などと同様の方法により分析した。
【0161】
その結果、IM55:IM76を1:1、1:3および1:9で混合した混合物投与群において、くしゃみおよび鼻掻きの回数を確認した炎症症状点数が減少し、鼻腔内IL-5の発現量が減少したのを確認した(
図27)。また、血清において、IL-5の発現量が減少したのを確認した(
図28)。
【0162】
前記実施例6~8の鼻炎誘導モデルの実験により、ビフィドバクテリウム・ロンガムIM55とラクトバチルス・プランタルムIM76の混合物が喘息および鼻炎の予防、改善および治療に効果を示すことが分かった。
【実施例9】
【0163】
腸内微生物の正常化および大腸炎の改善効果
【0164】
腸内微生物は、最近アレルギー疾患の発生および悪化に影響を及ぼすと報告されたことがある、アレルギー疾患の発生に重要な要素に該当する。よって、新規な乳酸菌の投与に応じた大腸内の微生物の変化を確認するために、前記実施例7のアレルギー鼻炎モデルを対象に大腸のサイトカイン発現および腸内微生物の変化を分析した。
【0165】
具体的には、Takara thermal cyclerおよびSYBRプレミックスを用いて前記動物モデルの大腸組織から2μgのRNAを分離した。前記RNAを用いてqPCRを実行し、qPCRに用いられたプライマーは表14の通りである。
【0166】
分析結果、オボアルブミンの処理時、大腸において、IL-4およびIL-5の発現が増加し、IL-10の発現が減少した。しかし、IM55、IM76またはその混合物の処理時には、IL-4およびIL-5の発現が減少し、IL-10の発現が増加するのを確認した(
図29)。
【0167】
また、前記動物モデルから大腸を分離した後、Takara thermal cyclerおよびSYBERプレミックスを用いて前記動物モデルの大腸液から100ngの総DNAを分離した。前記DNAを用いてqPCRを実行し、qPCRに用いられたプライマーは下記の表19の通りである。
【0168】
【0169】
分析の結果、オボアルブミンの処理時、フィルミクテス(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)およびTM7の個体群が増加し、バクテロイデテス(Bacteroidetes)とアクチノバクテリア(Actinobacteria)の個体群が減少して、Firmicutes/Bacteroides(F/B)およびProteobacteria/Bacteroidetes(P/B)の比率が増加した。しかし、IM55、IM76またはその混合物の処理時、オボアルブミンにより増加したプロテオバクテリアの集団を有意に抑制し、鼻炎発生により減少したバクテロイデテス(Bacteroidetes)およびアクチノバクテリア(Actinobacteria)の集団が回復するのを確認した(
図30)。
【0170】
これにより、IM55、IM76およびその混合物は、変化した腸内微生物を正常化させるだけでなく、大腸炎の調節、予防、改善および治療効果を示すことが分かった。
【実施例10】
【0171】
乳酸菌などを含む薬学組成物の製造
【0172】
下記の薬学組成物の製造において、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55培養物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55菌株そのもの、その破砕物またはその抽出物に代替可能である。また、下記の薬学組成物の製造において、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55培養物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76菌株そのもの、その培養物、その破砕物またはその抽出物に代替可能である。また、下記の薬学組成物は、キトサンをさらに含むことができる。
【0173】
<10-1>散剤の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 20mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
前記成分を混合し、気密布に充填して散剤を製造した。
【0174】
<10-2>錠剤の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 10mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0175】
<10-3>カプセル剤の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 10mg
結晶性セルロース 3mg
乳糖 15mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
前記成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0176】
<10-4>丸剤の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 10mg
乳糖 150mg
グリセリン 100mg
キシリトール 50mg
前記成分を混合した後、通常の方法により1丸剤当たりに4gになるように製造した。
【0177】
<10-5>顆粒の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 15mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
デンプン 600mg
前記成分を混合した後、30%エタノール100mgを添加して摂氏60℃で乾燥して顆粒を形成した後に布に充填した。
【0178】
<10-6>注射剤の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物 10mg
メタ重亜硫酸ナトリウム 3.0mg
メチルパラベン 0.8mg
プロピルパラベン 0.1mg
注射用滅菌蒸留水 適量
前記成分を混合した後、この中で2mlをアンプルに充填し滅菌して注射剤を製造した。
【実施例11】
【0179】
乳酸菌などを含む健康機能食品の製造
【0180】
下記の健康機能食品の製造において、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55培養物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55菌株そのもの、その破砕物またはその抽出物に代替可能である。また、下記の健康機能食品の製造において、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55培養物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76菌株そのもの、その培養物、その破砕物またはその抽出物に代替可能である。また、下記の健康機能食品は、キトサンをさらに含むことができる。
【0181】
<11-1>小麦粉食品の製造
小麦粉100重量部にBifidobacterium longum IM55培養物0.5重量部を小麦粉に添加し、該混合物を用いてパン、ケーキ、クッキー、クラッカーおよび麺類を製造した。
【0182】
<11-2>乳製品(dairy products)の製造
牛乳100重量部にBifidobacterium longum IM55培養物0.5重量部を牛乳に添加し、該牛乳を用いてバターおよびアイスクリームのような様々な乳製品を製造した。
【0183】
<11-3>食事代替シェイク用の穀物粉の製造
玄米、麦、もち米、鳩麦を公知の方法によりアルファ化して乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
黒豆、黒ゴマ、エゴマも公知の方法により蒸して乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
前記で製造した穀物類、種実類およびBifidobacterium longum IM55培養物を次の比率で配合して製造した。
穀物類(玄米30重量部、鳩麦17重量部、麦20重量部)、
種実類(エゴマ7重量部、黒豆8重量部、黒ゴマ7重量部)、
Bifidobacterium longum IM55培養物(1重量部)、
霊芝(0.5重量部)、
地黄(0.5重量部)
【0184】
<11-4>健康ドリンクの製造
異性化糖(0.5g)、オリゴ糖(4g)、砂糖(2g)、食塩(0.5g)、水(77g)のような副材料とBifidobacterium longum IM55培養物1gを均質に配合して瞬間殺菌をした後、それをガラス瓶、ペットボトルなどの小さい包装容器に包装して製造した。
【0185】
<11-5>野菜ジュースの製造
Bifidobacterium longum IM55培養物2gをトマトまたはニンジンのジュース1,000mlに加えて野菜ジュースを製造した。
【0186】
<11-6>果汁の製造
Bifidobacterium longum IM55培養物1gをリンゴまたはブドウのジュース1,000mlに加えて果汁を製造した。
【0187】
6.乳酸菌の受託情報
【0188】
本発明の発明者らは、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)IM55を2017年1月20日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(アドレス:大韓民国、ソウル特別市、西大門区、ホンジェネ2ガギル45ユリムビル)に特許寄託し、KCCM11961Pの受託番号が与えられた。また、本発明の発明者らは、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)IM76を2017年1月20日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(アドレス:大韓民国、ソウル特別市、西大門区、ホンジェネ2ガギル45ユリムビル)に特許寄託し、KCCM11962Pの受託番号が与えられた。前記乳酸菌の寄託は、特許手続き上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganism for the Purposes of Patent Procedure)を遵守して行われた。
【0189】
以上のように本発明について前記実施例を通じて説明したが、本発明が必ずしもこれらに限定されるものではなく、本発明の範疇と思想を逸脱しない範囲内で様々な変形実施が可能であるのは勿論である。よって、本発明の保護範囲は、本発明に添付された特許請求の範囲に属する全ての実施の形態を含むものとして解釈しなければならない。
【受託番号】
【0190】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11961P
受託日:2017年01月20日
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11962P
受託日:2017年01月20日
【配列表】