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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】味方識別装置及び味方識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/78 20060101AFI20220816BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01S13/78
G01S13/91 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021037588
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000221155
【氏名又は名称】東芝電波プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】四角 忠司
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-364494(JP,A)
【文献】特開昭64-068682(JP,A)
【文献】特開2007-218621(JP,A)
【文献】特開平05-297130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0068878(US,A1)
【文献】米国特許第05218365(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ビームを形成する和信号及び差信号を出力する送信部と、
前記送信部から出力された前記和信号のレベルを変換する第1レベル変換器と、
前記第1レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記送信部から出力され、前記第1レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを合成して合成信号を出力する合成器と、
送信ビーム方向を制御する第1位相制御部と、
前記合成器により合成された合成信号に基づいて、前記第1位相制御部により制御される方向に前記送信ビームを形成する送信用二次レーダアンテナとを有する送信機と、
受信ビーム方向を制御する第2位相制御部と、
前記第2位相制御部により制御される方向に受信ビームを形成し、前記形成された受信ビームで受信され、前記送信用二次レーダアンテナから送信された送信ビームに応答して識別対象からの応答信号を受信する受信用二次レーダアンテナと、
前記受信用二次レーダアンテナにより受信された応答信号を和信号及び差信号に分配する分配器と、
前記分配器により分配された応答信号の和信号及び差信号のうち、前記和信号のレベルを変換する第2レベル変換器と、
前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを受信する受信部とを有する受信機と、 前記第1位相制御部に前記送信用二次レーダアンテナの送信ビーム方向を制御するためのビーム方向を指示し、前記第2位相制御部に前記受信用二次レーダアンテナの受信ビーム方向を制御するためのビーム方向を指示し、前記受信部によって受信された前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とに基づいて、前記識別対象を識別する制御処理部とを具備し、
前記第1レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記送信用二次レーダアンテナの送信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、それに加えて、又はその代わりに、前記第2レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記受信用二次レーダアンテナの受信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、
前記和信号及び差信号は、それぞれアンテナの和ビーム及び差ビームの信号である、味方識別装置。
【請求項2】
前記第1レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記送信用二次レーダアンテナの送信ビームのビーム幅が有効ビーム幅となるように変換される、請求項1記載の味方識別装置。
【請求項3】
前記第2レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記受信用二次レーダアンテナの受信ビームのビーム幅が有効ビーム幅となるように変換される、請求項1記載の味方識別装置。
【請求項4】
前記第1レベル変換器は、前記和信号のレベルを下げる制御を行なう、請求項1記載の味方識別装置。
【請求項5】
送信部、第1レベル変換器、合成器、送信用二次レーダアンテナ及び第1位相制御部を有する送信機と、受信用二次レーダアンテナ、分配器、第2レベル変換器、受信部及び第2位相制御部を有する受信機と、制御処理部とを有する味方識別装置における味方識別方法において、
前記送信部により、送信ビームを形成する和信号及び差信号を出力し、
前記第1レベル変換器により、前記送信部から出力された前記和信号のレベルを変換し、
前記合成器により、前記第1レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記送信部から出力され、前記第1レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを合成して合成信号を出力し、
前記送信用二次レーダアンテナにより、前記合成器により合成された合成信号に基づいて、前記第1位相制御部により制御される方向に前記送信ビームを形成し、
前記第2位相制御部により制御される方向に受信ビームを形成し、前記形成された受信ビームで受信され、前記送信用二次レーダアンテナから送信された送信ビームに応答して前記受信用二次レーダアンテナにより受信された識別対象からの応答信号を受信し、
前記分配器により、前記受信用二次レーダアンテナにより受信された応答信号を和信号及び差信号に分配し、
前記第2レベル変換器により、前記分配器により分配された応答信号の和信号及び差信号のうち、前記和信号のレベルを変換し、
前記受信部により、前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを受信し、
前記制御処理部により、前記受信部によって受信された前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とに基づいて、前記識別対象を識別
前記第1レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記送信用二次レーダアンテナの送信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、それに加えて、又はその代わりに、前記第2レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記受信用二次レーダアンテナの受信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、
前記和信号及び差信号は、それぞれアンテナの和ビーム及び差ビームの信号である、
味方識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次監視レーダを使用した味方識別装置及び味方識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用の二次監視レーダ装置は、質問信号(1030MHz)を航空機上のトランスポンダ(応答装置)に送信し、このトランスポンダにより解読された質問信号に対応する応答信号(1090MHz)を受信することによって航空機の識別を行なうものである。
【0003】
このように二次監視レーダ装置の仕組みは、航空機の識別を行なうものであるから、目標が味方か否かを判別する味方識別装置として使用されている。味方識別装置では、アンテナのメインローブ方向にある航空機からの応答か、サイドローブ方向にある航空機からの応答かを判断するために、ISLS(インタロゲーション・サイドローブ・サプレッション)機能及びRSLS(レシーバ・サイドローブ・サプレッション)機能が使用されている。
【0004】
これらいずれの機能も、アンテナの和ビーム及び差ビームでの送受信レベルの差を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-218622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二次レーダを使用する味方識別装置では、電子走査アンテナを使用して方位方向に電子走査を行なう場合、ビーム幅が広がる特性があるため、和ビームと差ビームとの差が一定値以上になる範囲で定義される有効ビーム幅が、電子走査に伴ない広がってしまう。また、ビームの左右対称性も崩れるため、有効ビーム幅の中心方向もずれてしまう。
【0007】
このため、方位方向走査では、応答信号が得られたとする判断する角度範囲が広がり不要に幅広い応答信号のビデオ表示をしたり、有効ビーム幅の中心方向がずれる結果、応答信号の測角方向を誤り、一次レーダの目標ビデオ方向と異なる方向に応答結果を表示してしまう。従って、味方識別の判断を誤る可能性がある。
【0008】
また、電子走査アンテナを使用して方位方向に電子走査を行なう場合、自動処理で一次レーダの目標と、二次レーダの応答信号の目標との相関をとる場合、一次レーダの目標と二次レーダの目標との相関をとることができなくなる場合がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、方位方向走査を行なう場合、目標識別の精度を向上することができる味方識別装置及び味方識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、
送信ビームを形成する和信号及び差信号を出力する送信部と、
前記送信部から出力された前記和信号のレベルを変換する第1レベル変換器と、前記第1レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記送信部から出力され、前記第1レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを合成して合成信号を出力する合成器と、送信ビーム方向を制御する第1位相制御部と、前記合成器により合成された合成信号に基づいて、前記第1位相制御部により制御される方向に前記送信ビームを形成する送信用二次レーダアンテナとを有する送信機と、
受信ビーム方向を制御する第2位相制御部と、前記第2位相制御部により制御される方向に受信ビームを形成し、前記形成された受信ビームで受信され、前記送信用二次レーダアンテナから送信された送信ビームに応答して識別対象からの応答信号を受信する受信用二次レーダアンテナと、前記受信用二次レーダアンテナにより受信された応答信号を和信号及び差信号に分配する分配器と、前記分配器により分配された応答信号の和信号及び差信号のうち、前記和信号のレベルを変換する第2レベル変換器と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とを受信する受信部とを有する受信機と、
前記第1位相制御部に前記送信用二次レーダアンテナの送信ビーム方向を制御するためのビーム方向を指示し、前記第2位相制御部に前記受信用二次レーダアンテナの受信ビーム方向を制御するためのビーム方向を指示し、前記受信部によって受信された前記第2レベル変換器によりレベルの変換された前記和信号と、前記第2レベル変換器によりレベルの変換がされていない前記差信号とに基づいて、前記識別対象を識別する制御処理部とを具備し、
前記第1レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記送信用二次レーダアンテナの送信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、それに加えて、又はその代わりに、前記第2レベル変換器による前記和信号のレベルの変換は、前記受信用二次レーダアンテナの受信ビームのビーム指向方向のずれが改善されるように変換され、
前記和信号及び差信号は、それぞれアンテナの和ビーム及び差ビームの信号である、味方識別装置、である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る味方識別装置1の送信機10の機能ブロック図である。
図2】実施形態に係る味方識別装置1の送信機10の動作について説明するためのフローチャートである。
図3】実施形態に係る味方識別装置1の受信機20の動作について説明するためのフローチャートである。
図4】ISLSを説明するための図である。
図5】RSLSを説明するための図である。
図6】有効ビーム幅Aと和ビームS及び差ビームDのレベルとの関係を示す図である。
図7】理想的な電子ビームの有効ビーム幅A及びパターンを示す図である。
図8】電子走査方向によりビーム幅及びビーム指向方向のずれを説明するための図である。
図9】有効ビーム幅Aの目標Tの応答信号の範囲を示す図である。
図10】有効ビーム幅Bの場合の目標Tの応答信号の範囲を示す図である。
図11】ビーム走査角が小さくビーム形状の崩れが少ない場合で、検出方向と目標方向が一致している場合の状態を示す図である。
図12】ビーム走査角が大きくビーム形状の崩れが大きい場合で、検出方向と目標方向がずれている場合の状態を示す図である。
図13】0°方向にビームを指向した場合に表示されるレーダ画面の一例を示す図である。
図14】x°方向にビームを指向した場合に表示されるレーダ画面の一例を示す図である。
図15】x°方向にビームを指向し、自動で目標表示Tと目標表示Tとの相関をとる処理を行なった場合、互いの相関がとれなくなるレーダ画面の一例を示す図である。
図16】目標表示Tf1と目標表示TS2との相関がとられてしまう場合を示す図である。
図17】実施形態の味方識別装置1のレベル変換器12、24により和信号のレベルを下げて有効ビーム幅Aを一定にした場合を説明するための図である。
図18】アンテナの走査方向に応じて和信号のレベルを設定する場合の一例を示す図である。
図19】実施形態の味方識別装置1のレベル変換器12、24により和信号のレベルを下げて、ビーム指向方向(有効ビーム幅の中心方向)のずれを改善する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることが出来る。
【0013】
各機能ブロックは、ハードウェア、コンピュータソフトウェア、のいずれか又は両者の組み合わせとして実現することが出来る。このため、各ブロックは、これらのいずれでもあることが明確となるように、概してそれらの機能の観点から以下に説明される。このような機能が、ハードウェアとして実行されるか、又はソフトウェアとして実行されるかは、具体的な実施態様又はシステム全体に課される設計制約に依存する。当業者は、具体的な実施態様ごとに、種々の方法でこれらの機能を実現しうるが、そのような実現を決定することは、本発明の範疇に含まれるものである。
【0014】
図1は、実施形態に係る味方識別装置1の送信機10の機能ブロック図である。
【0015】
同図に示すように、本実施形態の味方識別装置1は、送信機10、受信機20及びこれら送信機10及び受信機20の送受信ビームの制御、受信信号である応答信号に対して識別対象の味方識別処理などを行なう制御処理部31を具備する。
【0016】
送信機10は、送信部11、レベル変換器(第1レベル変換器)12、合成器13、位相制御部14及び送信用二次レーダアンテナ15を有する。
【0017】
送信部11は、制御処理部31からの送信ビームの開始などの指示に基づいて、送信ビームを形成する和信号及び差信号を出力する。
【0018】
レベル変換器12は、制御処理部31から出力されるビーム方向に基づいて、送信部11から出力される送信ビームを形成する和信号のレベルを下げるように変換する。この変換は、ビーム方向に応じて和信号のレベルを下げても良い。本レベル設定は送信用二次レーダアンテナ15のアンテナ特性(アンテナパターンの特性)に応じて行う。
【0019】
なお、レベル変換器12は、送信部11から出力される和信号側ではなく、差信号側に設けられても良い。この場合、レベル変換器12は、送信部11から出力される送信ビームを形成する差信号のレベルを上げるように変換する。この変換は、全てのビーム方向について差信号のレベルを上げても良いし、ビーム方向に応じて差信号のレベルを上げても良い。
【0020】
合成器13は、レベル変換器12にてレベルが下げられた和信号と、送信部11から出力された差信号とを合成して合成信号を出力する。
【0021】
位相制御部14は、制御処理部31から出力される送信用二次レーダアンテナ15のビーム方向に基づいて、送信用二次レーダアンテナ15の位相制御を行なう位相制御信号を出力し、送信用二次レーダアンテナ15のビーム方向を制御する。
【0022】
送信用二次レーダアンテナ15は、合成器13から出力される合成信号及び位相制御部14から出力される位相制御信号に基づいて、送信ビームを形成して出力する。
【0023】
受信機20は、受信用二次レーダアンテナ21、分配器22、位相制御部23、レベル変換器24及び受信部25を有する。
【0024】
受信用二次レーダアンテナ21は、位相制御部23により制御される方向に受信ビームを形成し、形成された受信ビームで受信され、送信用二次レーダアンテナ15から送信された送信ビームに応答して、受信された識別対象(例えば、飛行機)からの応答信号を受信する。なお、送信用二次レーダアンテナ15及び受信用二次レーダアンテナ21は、ここでは便宜上2つに分けて示しているが、1つのアンテナであっても良い。
【0025】
分配器22は、受信用二次レーダアンテナ21により受信された識別対象からの応答信号を和信号及び差信号に分配して出力する。
【0026】
位相制御部23は、制御処理部31から出力される受信用二次レーダアンテナ21のビーム方向に基づいて、受信用二次レーダアンテナ21の位相制御を行なう位相制御信号を出力し、受信用二次レーダアンテナ21のビーム方向を制御する。
【0027】
レベル変換器24は、制御処理部31から出力される受信ビームを形成する和信号のレベルを下げるように変換する。この変換は、ビーム方向に応じて和信号のレベルを下げても良い。本レベル設定は受信用二次レーダアンテナ21のアンテナ特性(アンテナパターンの特性)に応じて行う。
【0028】
なお、レベル変換器24は、分配器22から出力される和信号側ではなく、分配器22から出力される受信ビームを形成する差信号側に設けられても良い。この場合、レベル変換器24は、分配器22から出力される受信ビームを形成する差信号のレベルを上げるように変換する。この変換は、全てのビーム方向について差信号のレベルを上げても良いし、ビーム方向に応じて差信号のレベルを上げても良い。
【0029】
受信部25は、レベル変換器24から出力されたレベル変換された和信号と、分配器22から出力された差信号とを受信して、制御処理部31に出力する。
【0030】
制御処理部31は、送信部11に対しての送信ビームの開始指示、レベル変換器12及び位相制御部14に対する送信ビーム方向の指示、レベル変換器24に対する受信ビーム方向及び位相制御部23の指示、受信部25から出力されたレベル変換された和信号及び分配器22から出力された差信号に基づいて、識別対象が味方であるかを識別する処理、表示部に識別対象を表示する処理などを行なう。
【0031】
次に、実施形態に係る味方識別装置1の送信機10の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
送信部11は、制御処理部31から送信指示があると、送信ビームを形成する和信号及び差信号を出力する(S11)。レベル変換器12は、制御処理部31から出力されるビーム方向に基づいて、送信部11から出力される和信号のレベルを下げる(S12)。
【0033】
合成器13は、レベル変換器12から出力されたレベル変換された和信号と、送信部11から出力された差信号とを合成して合成信号を出力する(S13)。また、位相制御部14は、制御処理部31からの送信用二次レーダアンテナ15のビーム方向を制御する位相制御信号を出力する(S14)。
【0034】
そして、送信用二次レーダアンテナ15が、合成器13から出力される合成信号及び位相制御部14から出力される位相制御信号に基づいて、送信ビームを形成して出力する(S15)。
【0035】
次に、実施形態に係る味方識別装置1の受信機20の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
受信用二次レーダアンテナ21は、送信用二次レーダアンテナ15から送信された送信ビームに応答して、受信用二次レーダアンテナ21により受信された識別対象からの応答信号を受信する(S21)。分配器22は、受信用二次レーダアンテナ21により受信された識別対象からの応答信号を和信号及び差信号に分配して出力する(S22)。
【0037】
レベル変換器24は、制御処理部31から出力されるビーム方向に基づいて、分配器22から出力される受信ビームを形成する和信号のレベルを下げるように変換する(S23)。
【0038】
その後、受信部25は、レベル変換器24から出力されたレベル変換された和信号と、分配器22から出力された差信号とを受信して、制御処理部31に出力する(S24)。制御処理部31は、受信部25から出力されたレベル変換された和信号及び分配器22から出力された差信号に基づいて、識別対象が味方であるかを識別する処理を行なう(S25)。
【0039】
図4は、ISLSを説明するための図である。
【0040】
同図に示すように、和ビームSと差ビームDとで形成される送信ビームの和ビームS方向から出力される質問信号は、質問信号の信号レベルが高いことから、識別対象である目標Tのトランスポンダで受信されることが可能である。
【0041】
一方、送信ビームの差ビームDから出力される質問信号は、質問信号の信号レベルが低いことから、識別対象である目標Tは、前記の受信信号のレベルとの組合せを判定し、メインローブからの質問と判断し応答する。
【0042】
図5は、RSLSを説明するための図である。
【0043】
同図に示すように、和ビームSと差ビームDとで形成される受信ビームの和ビームS方向から受信される識別対象である目標Tのトランスポンダからの応答信号は、和ビームSの応答信号の受信信号レベルが差ビームDの応答信号の受信レベルより高いことから、受信用二次レーダアンテナ21にてメインローブ方向からの受信であると判定し識別処理を行う。
【0044】
一方、受信ビームの和ビームSのサイドローブ方向から受信される目標Tのトランスポンダからの応答信号は、和ビームSの応答信号の受信信号レベルが差ビームDの応答信号の受信レベルより低いことから、受信用二次レーダアンテナ21にて応答信号は検出されない。
【0045】
次に、上述の電子走査によるビーム幅及びビームパターンの変更について説明する。
【0046】
図6は、有効ビーム幅Aと和ビームS及び差ビームDのレベルとの関係を示す図である。
【0047】
同図において、有効ビーム幅Aは、
A = Σ/Δ >N [dB]
で定義される。
【0048】
ここで、Σは和ビームレベル、Δは差ビームレベルである。
【0049】
送信及び受信ビームを方位方向に走査した場合、図7に示すように、理想的には送信及び受信ビームの有効ビーム幅A及びパターンは変化しないのが理想である。
【0050】
しかしながら、実際には、電子走査アンテナの特性により、ビームを方位方向に電子走査すると、図8に示すように、ビーム幅が広がり、また、ビームパターンが左右非対称になってしまう。
【0051】
同図では、0°方向の和ビームS、差ビームDが、x°方向では和ビームS、差ビームDとなり、Aは、0°方向の有効ビーム幅、Aはx°方向の有効ビーム幅を示している。すなわち、ビーム幅が広がると有効ビーム幅が広がる(A<A)。
【0052】
また、0°方向の和ビームS、差ビームDが左右対称であり、有効ビーム幅の中心方向Cがビーム指示方向と一致しており、x°方向の和ビームS、差ビームDが左右非対称であり、有効ビーム幅の中心Cがビーム指向方向Cと一致していない場合を示している。すなわち、ビームパターンが左右非対称になると、有効ビーム幅の中心方向もずれる(C≒C)。
【0053】
図9は、有効ビーム幅Aの目標Tの応答信号の範囲RAを示す図であり、図10は、有効ビーム幅Bの目標Tの応答信号の範囲RAを示す図である。同図に示すように、有効ビーム幅が広がると(有効ビーム幅A→B)、目標Tの検出開始から検出終了までの範囲が広がり、応答信号の範囲(ビデオ表示等)が広がってしまう。
【0054】
図11は、ビーム走査角が小さくビーム形状の崩れが少ない場合で、ビーム指示方向DIと有効ビーム幅の中心方向DRとが一致している場合の状態を示す図であり、図12は、ビーム走査角が大きくビーム形状の崩れが大きい場合で、ビーム指示方向DIと有効ビーム幅の中心方向DRとがずれている場合の状態を示す図である。
【0055】
図12に示すように、ビーム指示方向DIと有効ビーム幅の中心方向とがずれている場合には、目標Tからの応答信号の測角方向を誤り、実際の目標方向(一次レーダの目標方向)と異なる方向に応答結果がでてしまう。
【0056】
図13は、0°方向にビームを指向した場合に表示されるレーダ画面の一例を示す図である。0°方向にビームを指向した場合、有効ビーム幅及びアンテナパターンは理想的であるので、一次レーダによる目標表示Tの位置と二次レーダによる目標表示Tの位置とは一致する(目標表示Tの位置の上に、目標表示Tが表示される)。
【0057】
図14は、x°方向にビームを指向した場合に表示されるレーダ画面の一例を示す図である。x°方向にビームを指向した場合、上述のように、有効ビーム幅及びアンテナパターンが変化するので、一次レーダによる目標表示Tの位置と二次レーダによる目標表示Tの位置とが一致しない(目標表示Tの位置の上に、目標表示Tが表示されない)。ここで、Tは、二次レーダによる目標Tの期待される目標表示の位置である。
【0058】
この場合、例えば、自動で目標表示Tと目標表示Tとの相関をとる処理を行なった場合、図15に示すように、互いの相関がとれなくなる場合がある。また、自動で目標表示Tと目標表示Tとの相関をとる処理を行なった場合、異なる目標表示と相関がとれてしまう場合がある。図16は、異なる目標表示と相関がとれてしまう場合を示す図である。図16においては、本来、目標表示Tf1と目標表示TS1との相関がとられるべきであるのに対して、目標表示Tf1と目標表示TS2との相関がとられてしまう場合を示している。
【0059】
図17は、実施形態の味方識別装置1のレベル変換器12、24により和信号のレベルを下げて有効ビーム幅Aを一定にした場合を説明するための図である。
【0060】
上述のように、x°方向にビームを指向した場合、有効ビーム幅が広がるが、和信号のレベルを下げることにより(和信号S→S)、0°方向にビームを指向した場合の有効ビーム幅A(和信号S)を維持することができる。
【0061】
図18は、アンテナの走査方向に応じて和信号のレベルを設定する場合の一例を示す図である。図18においては、和信号のレベルをアンテナの正面方向から遠ざかるにつれて、下がるように設定した場合を示している。
【0062】
図19は、実施形態の味方識別装置1のレベル変換器12、24により和信号のレベルを下げて、ビーム指向方向(有効ビーム幅の中心方向)のずれを改善する場合を示す図である。
【0063】
図19に示すように、例えば、x°方向にビーム指向方向を走査した場合、ビーム指向方向が、ビームパターンが左右対称の場合に比して、ビーム指向方向(有効ビーム幅の中心方向)がずれる(ビーム指向方向C→C)。和信号Sのレベルを下げると(和信号S→S)と、ビーム指向方向が改善される(ビーム指向方向C→C)。
【0064】
[変形例]
なお、上述の実施形態では、送信機10及び受信機20の和信号及び差信号のレベルを変換する場合について説明したが、送信機10の和信号及び差信号のレベルを変換することができない場合、受信機20のみで、応答信号の和信号及び差信号のレベルを変換しても良い。
【0065】
従って、実施形態に係る味方識別装置1によれば、目標Tの識別の精度を向上することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…味方識別装置、10…送信機、11…送信部、12…レベル変換器(第1レベル変換器)、13…合成器、14…位相制御部、15…送信用二次レーダアンテナ、20…受信機、21…受信用二次レーダアンテナ、22…分配器、23…位相制御部、24…レベル変換器、25…受信部。
【要約】      (修正有)
【課題】方位方向走査を行なう場合、目標識別の精度を向上することができる味方識別装置及び味方識別方法を提供する。
【解決手段】実施形態の味方識別装置1は、受信用二次レーダアンテナ21により受信された応答信号を和信号及び差信号に分配する分配器22と、分配器により分配された応答信号の和信号及び差信号のうち、和信号のレベルを変換するレベル変換器24と、レベル変換器24によりレベルの変換された和信号と、レベル変換器24によりレベルの変換がされていない差信号とを受信する受信部25と、受信部25によって受信されたレベル変換器によりレベルの変換された和信号と、レベル変換器によりレベルの変換がされていない差信号とに基づいて、識別対象を識別する制御処理部31とを有する受信機20を具備する。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図18
図19