(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】液体回収システム、液体供給システム、及び圧力調整方法
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20220816BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B01J4/00 103
C02F1/00 D
(21)【出願番号】P 2021100415
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 克美
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162569(JP,A)
【文献】特開2012-050971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00ー 7/02
C02F 1/00
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
C02F 9/00- 9/14
E03B 1/00- 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を使用するユースポイントよりも鉛直方向下方側に設けられ、前記液体を貯留するタンクと、
前記ユースポイントと前記タンクとを接続し、前記ユースポイントから前記液体を前記タンクへ戻す配管と、
前記配管の第1位置に設けられ、前記第1位置よりも上流側の第1圧力を調整する第1圧力調整部と、
前記配管の前記第1位置よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置に設けられ、前記第1位置よりも下流側且つ前記第2位置よりも上流側の第2圧力を調整する第2圧力調整部と、
を備えた、液体回収システム。
【請求項2】
前記第1位置は、前記配管の鉛直方向における中央部よりも上側に設定され、
前記第2位置は、前記中央部よりも下側に設定されている、
請求項1に記載の液体回収システム。
【請求項3】
前記第2位置は、鉛直方向において、前記タンクの水位と同じ高さ、または、前記タンクの水位よりも低い高さに設定されている、
請求項1または請求項2に記載の液体回収システム。
【請求項4】
前記第2位置は、下流側の圧力が常時正圧となる高さに設定されている、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の液体回収システム。
【請求項5】
前記第1圧力調整部は、前記第1圧力が所定の上流圧となるように前記第1圧力を調整する、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の液体回収システム。
【請求項6】
前記第2圧力調整部は、前記第2圧力が所定の中間圧となるように前記第2圧力を調整する、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の液体回収システム。
【請求項7】
前記第2圧力調整部は、前記第2圧力と大気圧との差が所定値となるように前記第2圧力を調整する、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の液体回収システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液体回収システムと、
前記タンクに貯留された前記液体を処理する処理部と、
前記処理部で処理された前記液体を前記ユースポイントへ供給するユース供給路と、
を備えた、液体供給システム。
【請求項9】
原水を一次処理する一次処理部と、
前記一次処理部で一次処理された一次処理液を前記タンクへ供給する一次供給路と、
を備えた、請求項8に記載の液体供給システム。
【請求項10】
液体を使用するユースポイントと前記ユースポイントよりも鉛直方向下方側に設けられて前記液体を貯留するタンクとを接続し、前記液体を前記ユースポイントから前記タンクへ戻す配管の圧力を調整する圧力調整方法であって、
前記配管の第1位置における第1圧力を所定の上流圧に調整すると共に、前記配管の前記第1位置よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置における第2圧力を所定の中間圧に調整する、
圧力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収システム、液体供給システム、及び圧力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造システムにおいて、製造された超純水をユースポイントに供給すると共に、使用場所(以下ユースポイントという)で使用されなかった超純水を純水タンクに還流させる技術が提案されている。特許文献1では、超純水を純水タンクに還流させると共に、ユースポイントから純水をタンクへ返送させる戻り配管に圧力調整手段を設けている。そして、戻り配管における流量と戻り圧力に基づいて、圧力調節弁等の圧力調整手段を制御し、ユースポイントにおける圧力が所望の圧力から外れることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、各種製造工場のユーティリティーである純水もしくは、超純水製造装置等は、工場の下層階に設置される場合が多い。一方、超純水等を使用する製造設備等は工場の上層階に設置されることが多い。したがって、製造された純水、もしくは超純水等は、ポンプで圧力をかけて、上層部にあるユースポイントへ供給される。特に、近年、半導体製造や液晶製造工場の場合は、工場自体の規模が大型化されてきているため、工場自体が高層化されることも多く、その場合には、純水製造装置等とユースポイントとの高低差はさらに大きくなる。 また、ユースポイントには種々の生産設備が設置されており、その設備に最適な圧力で超純水を供給する必要がある。同様に、使用場所(ユースポイント)で使用されなかった、純水、もしくは超純水等は、超純水製造装置等へ還流されるが、その際の高低差も大きくなる。
【0005】
上記のように、ユースポイントが超純水製造装置内の純水タンクよりも高い位置にあって、ユースポイントとタンク位置との高低差が大きい場合には、配管の上流側と下流側の圧力差が大きくなり、圧力調整が難しい場合がある。また、ユースポイントの直後に設置される圧力調整弁等とタンクを接続する配管に負圧が生じ、配管が変形したり、フランジ部分等の配管の継ぎ目から配管内に大気が入り込んだりすることが分かってきた。また、機能水の場合には、負圧によって、気泡が発生し、機能水としての性能が低下したり、気泡によるポンプの不具合や動作不良を引き起こしたりする恐れがある。超純水製造装置のように、長期間通水を継続する必要のある装置の場合、通水の継続によって、上記問題を引き起こす可能性が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、簡易にユースポイントの圧力を調整すると共に、タンクへ流入する液体への大気の混入を抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の液体回収システムは、液体を使用するユースポイントよりも鉛直方向下方側に設けられ、前記液体を貯留するタンクと、前記ユースポイントと前記タンクとを接続し、前記ユースポイントから前記液体を前記タンクへ戻す配管と、前記配管の第1位置に設けられ、前記第1位置よりも上流側の第1圧力を調整する第1圧力調整部と、前記配管の前記第1位置よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置に設けられ、前記第1位置よりも下流側且つ前記第2位置よりも上流側の第2圧力を調整する第2圧力調整部と、を備えている。
【0008】
第1の態様の液体回収システムでは、タンクがユースポイントよりも鉛直方向下方側に設けられており、ユースポイントから液体をタンクへ戻す配管に第1圧力調整部と第2圧力調整部が設けられている。第1圧力調整部は、配管の第1位置に設けられ、第1位置よりも上流側の第1圧力を調整する。第2圧力調整部は、配管の第1位置よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置に設けられ、第1位置よりも下流側且つ第2位置よりも上流側の第2圧力を調整する。
【0009】
このように、第1圧力調整部と第2圧力調整部を設けることにより、圧力調整部が1つの場合と比較して、配管の高低差による圧力差を段階的に制御することができる。すなわち、第1位置をユースポイントの圧力調整を行いやすい位置に設定して、所定の圧力が要求される第1位置よりも上流側のユースポイントの圧力を、簡易に調整することができる。
【0010】
また、第1位置よりも低い位置に第2位置を設定することにより、第2圧力調整部から下流側の配管のタンクまでの高低差を小さくでき、高低差に起因する圧力差で配管内に負圧が作用することに起因する配管の変形や、配管内への大気の流入を抑制することができる。
【0011】
第2の態様の液体回収システムは、前記第1位置は、前記配管の鉛直方向における中央部よりも上側に設定され、前記第2位置は、前記中央部よりも下側に設定されている。
【0012】
第2の態様の液体回収システムによれば、第1圧力調整部をユースポイントに近い位置に設けることにより、ユースポイントの圧力を適切な圧力に調整しやすくなると共に、第2圧力調整部をタンクに近い位置に設けることにより、第2位置からタンクまでの配管内の高低差を小さくでき、高低差に起因する配管内の圧力差が低減され、配管に負圧が作用することに起因する配管の変形や、配管内への異物の流入を抑制することができる。
【0013】
なお、前記第2位置と前記タンクの水位との高低差は、4m以内であることが好ましい。
【0014】
第3の態様の液体回収システムは、前記第2位置は、鉛直方向において、前記タンクの水位と同じ高さ、または、前記タンクの水位よりも低い高さに設定されている。
【0015】
第3の態様の液体回収システムによれば、第2位置よりも下流側の配管の圧力が、タンクの水面における圧力以上となるので、配管に負圧が作用することに起因する配管の変形や、配管内への異物の流入を抑制することができる。
【0016】
第4の態様の液体回収システムは、前記第2位置は、下流側の圧力が常時正圧となる高さに設定されている。
【0017】
第4の態様の液体回収システムによれば、第2位置よりも下流側の配管が内の圧力が負圧となることが抑制され、配管に負圧が作用することに起因する配管の変形や、配管内への異物の流入を抑制することができる。
【0018】
第5の態様の液体回収システムは、前記第1圧力調整部は、前記第1圧力が所定の上流圧となるように前記第1圧力を調整する。
【0019】
第5の態様の液体回収システムによれば、第1圧力を所定の上流圧に維持することができる。
【0020】
第6の態様の液体回収システムは、前記第2圧力調整部は、前記第2圧力が所定の中間圧となるように前記第2圧力を調整する。
【0021】
第6の態様の液体回収システムによれば、第2圧力を所定の中間圧に維持することができる。
【0022】
第7の態様の液体回収システムは、前記第2圧力調整部は、前記第2圧力と大気圧との差が所定値となるように前記第2圧力を調整する。
【0023】
第7の態様の液体回収システムによれば、第2圧力と大気圧との差を所定値に維持することができる。
【0024】
第8の態様の液体供給システムは、請求項1~7のいずれか1項に記載の液体回収システムと、前記タンクに貯留された前記液体を処理する処理部と、前記処理部で処理された前記液体を前記ユースポイントへ供給するユース供給路と、を備えている。
【0025】
第8の態様の液体供給システムによれば、ユースポイントから回収した液体を、処理部を経てユースポイントへ再供給し、循環させることができる。
【0026】
第9の態様の液体供給システムは、原水を一次処理する一次処理部と、前記一次処理部で一次処理された一次処理液を前記タンクへ供給する一次供給路と、を備えている。
【0027】
第9の態様の液体供給システムによれば、一次処理部で一次処理された原水と、ユースポイントから戻された液体とを、タンクから処理部を経てユースポイントへ供給することができる。
【0028】
第10の態様の圧力調整方法は、液体を使用するユースポイントと前記ユースポイントよりも鉛直方向下方側に設けられて前記液体を貯留するタンクとを接続し、前記液体を前記ユースポイントから前記タンクへ戻す配管の圧力を調整する圧力調整方法であって、前記配管の第1位置における第1圧力を所定の上流圧に調整すると共に、前記配管の前記第1位置よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置における第2圧力を所定の中間圧に調整する。
【0029】
第10の態様の圧力調整方法では、このように、第1位置と第2位置で圧力を調整することにより、圧力調整を1箇所で行う場合と比較して、配管の高低差による圧力差を段階的に制御することができる。すなわち、第1位置をユースポイントの圧力調整を行いやすい位置に設定して、所定の圧力が要求される第1位置よりも上流側のユースポイントの圧力を、簡易に調整することができる。また、第1位置よりも低い位置に第2位置を設定することにより、第2位置から下流側の配管のタンクまでの高低差を小さくでき、高低差に起因する圧力差で配管内に負圧が作用することに起因する配管の変形や、配管内への異物の流入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本願では、簡易にユースポイントの圧力を調整すると共に、タンクへ流入する液体への大気の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態の超純水供給システムを示す構成図である。
【
図2】第1実施形態の純水タンク付近の構成図である。
【
図3】第1実施形態の圧力調整部関連の制御系に係るブロック図である。
【
図4】第1実施形態の超純水供給システムの変形例(A)及び(B)を示す構成図である。
【
図5】第2実施形態の超純水供給システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明に係る液体回収システム、液体供給システム、および圧力調整方法の第1実施形態について説明する。本実施形態では、液体として超純水を供給、回収する例として説明する。
【0033】
本実施形態の超純水供給システム10は、前処理装置12、一次純水装置14、純水タンク16、二次純水装置20、ユースポイント30を有している。さらに、二次純水装置20は、熱交換器21、紫外線照射装置23、膜脱気装置25、非再生型イオン交換装置(ポリッシャー)27、限外濾過膜(UF)28を有している。
【0034】
前処理装置12には、原水が供給される。前処理装置12は、供給された原水に対し、凝集沈澱手段や、砂濾過手段、膜濾過手段などを用いて原水を除濁し、懸濁物質及び有機物の一部が除去された前処理水を得る。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。
【0035】
一次純水装置14では、前処理装置12で処理して得られた前処理水に対し、さらに清浄化処理を行って、前処理水から不純物を除去し、一次純水を得る。具体的には、不純物イオンの除去を行う脱塩装置、無機イオン、有機物、微粒子等の除去を行う逆浸透膜装置、溶存酸素等の溶存ガスの除去を行う真空脱気装置又は膜脱気装置、残存するイオン等を除去する再生型混床式脱塩装置や電気再生式脱塩装置、等の各種装置を有する。
【0036】
一次純水装置14で得られた一次純水は、純水タンク16へ送水される。純水タンク16は、一次純水装置14で得られた一次純水を一時的に貯留する容器である。純水タンク16としては、容器からの成分溶出や錆の発生等がなく、一次純水を安定して貯留できるものであれば、その材質や形状等は特に限定されない。例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、ポリエチレン、SUS304、SUS316、及びそれらをテフロン(登録商標)ライニングしたもの等の材質が好ましく使われる。また、純水タンク16の上部は、炭酸ガス、酸素等の不純物ガスの吸収を防ぐため、純窒素でパージされていることが好ましい。
【0037】
純水タンク16は、後述するように、製造された超純水のうちユースポイント30で未使用の超純水を循環回収する際、上記の一次純水と混合して貯留する。純水タンク16に貯留された一次純水とユースポイントから戻された超純水との混合水についても、以下「一次純水」と称する。純水タンク16に貯留された一次純水の地上Gからの水位をH0とする。純水タンク16は、第1送出配管18を介して二次純水装置20と接続されている。第1送出配管18には、第1ポンプP1が設けられており、第1ポンプP1により純水タンク16から二次純水装置20へ一次純水が送出される。
【0038】
前処理装置12、一次純水装置14、及び純水タンク16は、超純水供給システム10の設置場所における比較的低い位置に配置されており、例えば、工場建物の1階や地下階等に配置されている。
【0039】
二次純水装置20は、純水タンク16よりも鉛直方向の高い位置に配置されている。二次純水装置20は、純水タンク16と同じ位置に設置される場合もある。二次純水装置20の熱交換器21では、一次純水に対する熱交換(加熱又は冷却)により、一次純水の熱交換による温度調整を行う。熱交換器21としては、例えば、プレート型の熱交換器を挙げることができるが、具体的構造は特に限定されない。
【0040】
熱交換器21で温度調整された一次純水は、紫外線照射装置23へ送水される。紫外線照射装置23では、一次純水に対して紫外線を照射することにより、一次純水中の有機物の分解や生菌の死滅処理(殺菌)等を行う。紫外線照射装置23としては、例えば、185nm付近の波長や254nm付近の波長を照射可能な紫外線ランプを備えたものであれば、一次純水中の有機物の分解や殺菌を確実に行うことが可能である。用いる紫外線ランプとしては特に限定されないが、低圧水銀ランプが、取り扱いの容易さの点で好ましい。また、紫外線照射装置としては流通型または浸漬型が挙げられるが、流通型が処理効率の点から好ましい。
【0041】
膜脱気装置25は、水分を透過させず気体は透過させる気体分離膜を用いて、一次純水中の気体、特に溶存酸素を除去する装置である。膜脱気装置25で処理された一次純水は、溶存酸素の濃度が低い状態となる。
【0042】
膜脱気装置25によって溶存酸素濃度を低下された一次純水は、非再生型イオン交換装置27へ送水される。
【0043】
非再生型イオン交換装置27は、紫外線照射装置23で生じた有機酸などの不純物イオンを除去する装置である。たとえば、円筒形の密閉容器に、非再生型イオン交換樹脂が充填された構造である。
【0044】
非再生型イオン交換装置27によって不純物イオンを除去された一次純水は、限外濾過膜(UF)28へ送水される。
【0045】
限外濾過膜(UF)28は、微粒子を除去して超純水を製造する装置であり、二次純水装置20の末端に配置されている。
【0046】
なお、上記二次純水装置20においては、例えば、PtやPd金属を担持した触媒樹脂や亜硫酸基、亜硫酸水素基、亜硝酸基等を担持した還元性樹脂の供えられた酸化剤除去装置、を設置することもできる。
【0047】
二次純水装置20は、第2送出配管29を介して、使用場所(ユースポイント)30と接続されている。二次純水装置20によって得られた超純水は、第2送出配管29を経てユースポイント30へ送出される。
【0048】
ユースポイント30では、供給された超純水が使用される。ユースポイント30は、二次純水装置20と略同一高さ、または、二次純水装置20よりも鉛直方向の高い位置に設置されている。供給された超純水のうち、使用されなかった超純水は、後述する戻し配管32を経て、純水タンク16へ循環回収され、一次純水と一緒に純水タンク16内に貯留される。
【0049】
純水タンク16とユースポイント30とは戻し配管32で接続されている。戻し配管32の第1位置H1には、第1圧力調整弁40が設けられている。第1位置H1は、戻し配管32の高低差の中間位置よりも鉛直方向の高い位置に設けられており、二次純水装置20の設置高さ以上、ユースポイント30の設置高さ以下の位置に設定されることが好ましい。
【0050】
なお、戻し配管32は、比較的長い流路を形成するために、複数の配管をフランジ等の接続部材で接続、もしくは、溶接、溶着、接着することで構成されている。
【0051】
配管の素材としては、特に限定はないが、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、SUS304、SUS316等のステンレス等を用いることが可能であるが、液体が超純水の場合には、PVDFを用いることが好ましい。
【0052】
なお、ユースポイント30の最高位置と純水タンク16の水面H0との高低差が5m以上あると、圧力調整弁が1個の場合、戻し配管32への大気の混入や、戻し配管32の変形の可能性があるが、高低差が10m以上、さらに、30m以上となると、この可能性が大きくなる。
【0053】
戻し配管32のユースポイント30よりも下流側且つ第1圧力調整弁40よりも上流側には、第1圧力検出器41が設けられている。第1圧力検出器41は、ユースポイント30の出口の圧力を測定する。第1圧力検出器41で測定される戻し配管32内圧力を第1圧力PR1とし、その測定値信号を第1圧力信号PRS1とする。第1圧力信号PRS1は、後述する圧力制御部50へ送出される。
【0054】
戻し配管32の第2位置H2には、第2圧力調整弁42が設けられている。第2位置H2は、鉛直方向において、純水タンク16の水位H0以下の高さに配置されている。
図2に示すように、純水タンク16の水位は地上Gからの高さがHmin~Hmaxの間で変動する。本実施形態では、第2位置H2を水位Hminよりも低い位置に配置する。
【0055】
戻し配管32の第1位置H1よりも下流側且つ第2圧力調整弁42よりも上流側には、第2圧力検出器43が設けられている。第2圧力検出器43は、戻し配管32内の圧力を測定する。第2圧力検出器43で測定される戻し配管32内圧力を第2圧力PR2とし、その測定値信号を第2圧力信号PRS2とする。第2圧力信号PRS2は、後述する圧力制御部50へ送出される。また、第2圧力調整弁42よりも下流側の戻し配管32内の圧力を第3圧力PR3とする。
【0056】
超純水供給システム10は、
図3に示される圧力制御部50を備えている。圧力制御部50は、CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、I/O50E、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス50Fを備えている。ストレージ50Dには、上流圧PRA、及び中間圧PRBが記憶されている。上流圧PRAは、ユースポイント30の圧力を所望の圧力に維持するために求められる第1圧力PR1の値が設定される。中間圧PRBは、戻り配管32の第1圧力調整弁40よりも下流側が負圧にならない程度に、上流圧PRA以下で設定される。
【0057】
I/O50Eには、第1圧力検出器41、第1圧力調整弁40、第2圧力検出器43、第2圧力調整弁42が接続されている。圧力制御部50には、第1圧力検出器41、第2圧力検出器43から、第1圧力信号PRS1、第2圧力信号PRS2が入力される。圧力制御部50は、入力された、第1圧力信号PRS1、第2圧力信号PRS2に基づいて、第1圧力調整弁40、第2圧力調整弁42を制御する。
【0058】
次に、本実施形態の超純水供給システム10における、戻り配管32の圧力調整について説明する。
【0059】
圧力制御部50は、入力された第1圧力信号PRS1に基づいて、第1圧力PR1が上流圧PRAになるように、第1圧力調整弁40の開度を調整するための信号を第1圧力調整弁40へ出力する。すなわち、第1圧力PR1が上流圧PRAになるように、第1圧力調整弁40の開度をフィードバック制御する。
【0060】
また、圧力制御部50は、入力された第2圧力信号PRS2に基づいて、第2圧力PR2が中間圧PRBになるように、第2圧力調整弁42の開度を調整するための信号を第2圧力調整弁42へ出力する。すなわち、第2圧力PR2が中間圧PRBになるように、第2圧力調整弁42の開度をフィードバック制御する。
【0061】
このように、第1圧力調整弁40で第1圧力PR1が上流圧PRAになるように、第2圧力調整弁42で第2圧力PR2が中間圧PRBになるように、戻り配管32の圧力を調整することにより、配管の高低差による圧力差を段階的に制御することができる。すなわち、圧力調整弁が1個の場合と比較して、第1圧力PR1と第2圧力PR2の圧力差、第2圧力PR2と第3圧力PR3の圧力差を小さくすることができる。したがって、第2位置H2よりも下流側の戻り配管32内に負圧が作用することに起因する戻り配管32の変形や、接続部分からの戻り配管32内への異物の流入を抑制することができる。
【0062】
また、第2位置H2が純水タンク16の水位以下の低い高さに設定されているので、第3圧力PR3は水位H0の圧力と同等となる。したがって、第2位置H2よりも下流側の戻り配管32内に負圧が作用することに起因する戻り配管32の変形や、接続部分からの戻り配管32内への大気の流入を抑制することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、第2位置H2を純水タンク16の水位H0以下の低い高さに設定したが、第2位置H2は、必ずしも水位H0以下である必要はなく、第2位置H2を、第3圧力PR3が常時正圧となる位置に設けてもよい。また、
図4(A)に示すように、第2位置H2を、戻し配管32の高低差の中間位置Mよりも鉛直方向の下側(低い位置)に設けてもよいし、
図4(B)に示すように、純水タンク16の水位H0との高低差DHが、4m以内とされた位置に設けてもよい。これらの場合でも、第2位置H2よりも下流側の戻り配管32の高低差に起因する配管内の圧力差が低減され、戻り配管32に負圧が作用することに起因する配管の変形や、戻り配管32内への大気の流入を抑制することができる。なお、第2位置H2を純水タンク16の水位H0以下の低い高さに設定すると、第3圧力PR3は、純水タンク16内の圧力と同等となる為、より好ましい。
【0064】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する、本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図5に示すように、本実施形態では、第2圧力調整弁42に代えて、機械式圧力調整弁46を用いている。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0066】
機械式圧力調整弁46は、第2圧力PR2と大気圧との差圧が所定の差圧値PRCとなるように調整する。機械式圧力調整弁46としては、ばね式等の自力式圧力調整弁や、電気式、空気式等の他力式圧力調整弁を用いることができる。
【0067】
このように、機械式圧力調整弁46を用いて第2圧力PR2と大気圧との差圧が所定の差圧値PRCとなるように調整することにより、第1実施形態と同様に、戻り配管32の高低差による圧力差を段階的に制御することができる。すなわち、圧力調整弁が1個の場合と比較して、第1圧力PR1と第2圧力PR2の圧力差、第2圧力PR2と第3圧力PR3の圧力差を小さくすることができる。したがって、所定の圧力が要求されるユースポイント30の圧力を、簡易に調整することができる。
【0068】
なお、本実施形態でも、第2位置H2を純水タンク16の水位以下の低い高さに設定してもよいし、第3圧力PR3が常時正圧となる位置に設けてもよい。また、第2位置H2を、戻し配管32の高低差の中間位置Mよりも鉛直方向の下側(低い位置)に設けてもよいし、純水タンク16の水位H0との高低差DHが、9m以内とされた位置に設けてもよい。これらの場合でも、第2位置H2よりも下流側の戻り配管32の高低差に起因する配管内の圧力差が低減され、戻り配管32に負圧が作用することに起因する配管の変形や、戻り配管32内への異物の流入を抑制することができる。
【0069】
また、前述した第1、第2実施形態では、超純水を回収、供給する例について説明したが、本発明は、他の液体を回収、供給するシステムに用いても良い。例えば、水素やオゾン、炭酸のような特定の物質を溶解させた機能水や、原水等に脱気処理を施した脱気水、純水や超純水を加熱して製造する加熱純水や加熱超純水、通常の純水、製薬・医薬品製造における精製水や注射用水に用いることもできる。
【0070】
なお、液体が例えば、40℃以上の高温になると、例えばフランジ等接続部のパッキンが柔らかくなるので、問題が発生しやすくなるため、本発明を用いることが、有効な対策となる。
【0071】
また、半導体や液晶工場における純水・超純水の製造の場合、流量が大きい(例えば、50m3/h以上、100m3/h以上)ので、フランジ等接続部の面積が大きく、本願で問題とした課題が起きやすいため、本発明を用いることが、有効な対策となる。
【0072】
[実施例]
本実施形態の超純水供給システム10の効果を確認するために、以下の条件で実施例1~3と比較例で戻り配管32内の超純水における溶存酸素濃度(DO)を測定した。比較例では、第2圧力調整弁42を設けていない。
【0073】
・戻り配管32高低差40m(ユースポイント30~純水タンク16の水位H0)
・第1圧力調整弁40とユースポイント30との高低差なし
・第2圧力調整弁42と水位H0との高低差なし(実施例1)、高低差3m(実施例2)、高低差5m(実施例3)
・第1圧力調整弁40において、上流圧PRAを0.2942MPaに設定して第1圧力PR1を調整
・第2圧力調整弁42において、上流圧PRAを0.2942MPaに設定して第1圧力PR1を調整
・流量100m3/h
・水温25℃
・測定器:MOCA-3600、オービスフェア社製
【0074】
【表1】
比較例は、実施例1~3と比較して、純水タンク16の手前における溶存酸素濃度が高く、10000倍近くの数値が確認された。これは、第1圧力調整弁40から下流側において圧力差が大きくなり、戻し配管32がひずみ、フランジ部分等の接続部分に微小の隙間が生じ、当該隙間から外気が混入して、超純水内に空気が混入するためと考えられる。
【0075】
また、比較例は、実施例1~3と比較して、第1圧力調整弁40の上流側においても溶存酸素濃度が高い。これは、純水タンク16内の一次純水の溶存酸素濃度が高いので、二次純水装置20の膜脱気装置25での酸素除去にもかかわらず、僅かに酸素が残るためであると考えられる。
【0076】
以上より、実施例1~3において、比較例よりも溶存酸素量を低く維持できることを確認することができた。
【符号の説明】
【0077】
10 超純水供給システム(液体供給システム、液体回収システム)
14 一次純水装置(一次処理部)
16 純水タンク(タンク)
20 二次純水装置(処理部)
30 ユースポイント
29 第2送出配管(ユース供給路)
32 戻し配管(配管)
40 第1圧力調整弁(第1圧力調整部)
42 第2圧力調整弁(第2圧力調整部)
46 機械式圧力調整弁(第2圧力調整部)
H1 第1位置
H2 第2位置
PRA 上流圧
PRB 中間圧
【要約】
【課題】簡易にユースポイントの圧力を調整すると共に、タンクへ流入する液体への大気の混入を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】超純水供給システム10は、ユースポイント30よりも鉛直方向下方側に設けられた純水タンク16と、ユースポイント30から超純水を純水タンク16へ戻す戻し配管32と、戻し配管32の第1位置H1に設けられ、第1位置H1よりも上流側の第1圧力を調整する第1圧力調整弁40と、戻し配管32の第1位置H1よりも下流側且つ鉛直方向下側の第2位置H2に設けられ、第1位置H1よりも下流側且つ第2位置H2よりも上流側の第2圧力を調整する第2圧力調整弁42と、を備えている。
【選択図】
図1