(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20220816BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B3/00 K
B66B3/00 U
(21)【出願番号】P 2021109840
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 道臣
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特許第6321124(JP,B1)
【文献】特開2017-95213(JP,A)
【文献】特開2019-110437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムであって、
乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、
任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動すると共に、乗場呼びの登録に必要な情報を含む無線信号を発信する第1の無線信号装置と、
上記乗りかご内に設置され、かご呼びの登録に必要な情報を含む無線信号を発信する第2の無線信号装置とを備え、
上記携帯端末は、
上記アプリケーションソフトの起動により、上記乗場で上記第1の無線信号装置に無線接続して上記乗場呼びの登録処理を行い、上記乗りかご内で上記第2の無線信号装置に無線接続して上記かご呼びの登録処理を行う制御手段を具備し、
上記制御手段は、
第1の周期で無線信号をスキャンする第1のスキャンモードと、上記第1の周期よりも短く設定された第2の周期で無線信号をスキャンする第2のスキャンモードとを有し、
上記アプリケーションソフトに備えられている上記乗場呼びと上記かご呼びの登録モードに基づいて、上記第1のスキャンモードまたは上記第2のスキャンモードを設定することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記乗場呼びの登録モードのとき、上記第1のスキャンモードを設定し、上記第1の無線信号装置から発信される無線信号を上記第1の周期でスキャンし、
上記かご呼びの登録モードのときに、上記第2のスキャンモードを設定し、上記第2の無線信号装置から発信される無線信号を上記第2の周期でスキャンすることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記第1の無線信号装置は、
上記乗りかごが上記乗場呼びの登録階に近づいたときに到着予報信号を発信し、
上記制御手段は、
上記乗場呼びの登録後、上記到着予報信号に基づいて上記かご呼びの登録モードに切り替えると共に、上記第2のスキャンモードを設定することを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項4】
上記第1の無線信号装置の有効範囲より手前に設置された第3の無線信号装置を備え、
上記制御手段は、
上記乗場呼びの登録モードが設定されている場合に、上記第3の無線信号装置から発信される無線信号に基づいて、上記第2のスキャンモードを設定することを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項5】
上記第1の無線信号装置の有効範囲より手前に設置された第3の無線信号装置を備え、
上記制御手段は、
上記乗場呼びの登録モードが設定されている場合に、上記第3の無線信号装置と上記第1の無線信号装置の両方の無線信号に基づいて、上記第2のスキャンモードを設定することを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階の乗場には、乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者が乗場呼びボタンを操作すると、乗りかごが乗場呼びの登録階に応答する。利用者が乗りかごに乗り込み、かご操作盤の行先階ボタンを操作すると、行先階が登録され、乗りかごがその行先階に移動する。
【0003】
ここで、近年、利用者が持つ携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムが考えられている。これは、携帯端末に予め呼び登録のためのアプリケーションソフトをインストールしておき、利用者が任意の階の乗場に来たときに、「ビーコン」と呼ばれる無線信号装置から発信される無線電波を用いて当該アプリケーションソフトを起動して、乗りかごを呼び、その乗りかごに利用者の行先階を登録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6321124号公報
【文献】特開2018-111606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したエレベータシステムでは、利用者の携帯端末がビーコンの無線信号を受信することで、ハンズフリーによる呼び登録を実現している。しかしながら、呼び登録の応答性を重視するために、無線信号を探す動作(スキャン)を短周期で行った場合、携帯端末のバッテリ電力の消費が大きくなる。一方、バッテリ電力の消費を抑えるために、スキャンの周期を長くした場合に、呼び登録の応答性が低下し、利用者がすぐにエレベータ(乗りかご)に乗れないことがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ビーコンの信号を適切なタイミングでスキャンすることで、バッテリ電力の消費を抑えながら、呼び登録の応答性を確保できるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動すると共に、乗場呼びの登録に必要な情報を含む無線信号を発信する第1の無線信号装置と、上記乗りかご内に設置され、かご呼びの登録に必要な情報を含む無線信号を発信する第2の無線信号装置とを備える。
【0008】
上記携帯端末は、上記アプリケーションソフトの起動により、上記乗場で上記第1の無線信号装置に無線接続して上記乗場呼びの登録処理を行い、上記乗りかご内で上記第2の無線信号装置に無線接続して上記かご呼びの登録処理を行う制御手段を具備する。上記制御手段は、第1の周期で無線信号をスキャンする第1のスキャンモードと、上記第1の周期よりも短く設定された第2の周期で無線信号をスキャンする第2のスキャンモードとを有し、上記アプリケーションソフトに備えられている上記乗場呼びと上記かご呼びの登録モードに基づいて、上記第1のスキャンモードまたは上記第2のスキャンモードを設定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は上記エレベータシステムに備えられたエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は上記エレベータシステムに備えられた無線信号装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は上記エレベータシステムで用いられる携帯端末の外観構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は上記携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は上記携帯端末に設けられた物件乗車テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7はビーコンを用いた一般的な呼び登録を説明するための図である。
【
図8】
図8はスキャンモードを説明するための図である。
【
図9】
図9は第1の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。
【
図10】
図10は第1の実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。
【
図11】
図11は第1の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は第2の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。
【
図13】
図13は第2の実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。
【
図14】
図14は第2の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は第3の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。
【
図16】
図16は第3の実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。
【
図17】
図17は第3の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は第4の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。
【
図19】
図19は第4の実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。
【
図20】
図20は第4の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
例えばオフィスビルなどの建物にエレベータ11が設置されている。エレベータ11は、乗りかご12とエレベータ制御装置13を備える。乗りかご12は、昇降路内に立設された一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、乗場呼びまたはかご呼びに応答して各階を移動する。
【0012】
「乗場呼び」とは、各階の乗場で登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、かご室内で登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。後述するように、本システムでは、利用者の携帯端末25を利用して乗場呼びとかご呼びを登録可能であり、乗場やかご室内でのボタン操作(乗場ボタン23や行先階ボタン17の操作)は不要となる。なお、「かご呼びの登録」のことを「行先階の登録」とも言う。
【0013】
乗りかご12の出入口にはかごドア14が開閉自在に取り付けられており、そのかごドア14の近傍にはかご操作盤15が設けられている。かご操作盤15には、乗りかご12の現在位置や運転方向などを表示するための表示器16の他、建物の各階に対応した行先階ボタン17、戸開ボタン18a、戸閉ボタン18bなどを含む各種操作ボタンが配設されている。
【0014】
エレベータ制御装置13は、「制御盤」とも呼ばれ、建物内の最上部に設けられた図示せぬ機械室あるいは昇降路内の上部に設置され、乗りかご12の運転制御を含むエレベータ全体の制御を行う。
【0015】
一方、各階の乗場20において、乗りかご12の到着口に乗場ドア21が開閉自在に取り付けられており、その乗場ドア21の近傍には乗場操作盤22が設けられている。乗場ドア21は、乗りかご12が到着したときに、かごドア14と共に開閉動作する。駆動源(ドアモータ)はかごドア14側にあり、乗場ドア21は、かごドア14に係合して開閉動作する。乗場操作盤22には、乗りかご12を乗場20に応答させるための乗場ボタン23が設けられている。乗場ボタン23は、利用者の行先方向を指定するための上方向ボタンと下方向ボタンからなる(最下階では上方向ボタンのみ、最上階では下方向ボタンのみで構成される)。
【0016】
ここで、本実施形態において、乗場20の任意の箇所に例えばBluetooth(登録商標)等からなる無線信号装置27が設置されている。無線信号装置27は、「乗場ビーコン(beacon)」として用いられ、所定周波数帯の無線信号を発信する。無線信号装置27の設置箇所は、例えば乗場ドア21付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。
【0017】
無線信号装置27は、基準階を含む各階の乗場20に設置されている。無線信号装置27は、エレベータ制御装置13と乗場操作盤22に有線あるいは無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、乗場呼びの登録に必要な情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。上記乗場呼びの登録に必要な情報には、「物件情報」,「現在階」などが含まれる。
【0018】
また、乗りかご12内に無線信号装置28が設置されている。無線信号装置28は、「かご内ビーコン(beacon)」として用いられ、かご呼び登録に必要な情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。無線信号装置28の設置箇所は、例えばかごドア14付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。無線信号装置28は、エレベータ制御装置13とかご操作盤15に有線または無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、かご呼びの登録に必要な情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。上記かご呼びの登録に必要な情報には、「物件情報」,「現在階」,「行先方向」などが含まれる。
【0019】
利用者が所持する携帯端末25は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。この携帯端末25には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。この呼び登録用のアプリケーションソフト26は、エレベータ11の関連企業によって開発されたものであり、携帯端末25のOS(Operating System)に依存するWebサイトから自由にダウンロードできる。
【0020】
このアプリケーションソフト26を用いて、複数の物件毎に利用者の乗車情報を設定しておくことができる。ここで言う「物件」とは、本システムを有するエレベータが設置された建物のことである。後述するように、利用者の乗車情報には、物件毎にグループ名,乗車階,行先階の情報が含まれる(
図6参照)。
【0021】
携帯端末25が乗場20で無線信号装置27から発信される無線信号を受信すると、アプリケーションソフト26が起動される。これにより、携帯端末25は、乗場20に設置された無線信号装置27を介して乗場呼びの登録処理を行う。乗場呼びの登録が完了すると、携帯端末25は、乗りかご12内に設置された無線信号装置28を介してかご呼びの登録処理を行う。
【0022】
図2はエレベータ制御装置13の構成を示すブロック図である。
エレベータ制御装置13は、制御部31と記憶部32と通信部33とを備える。制御部31は、プログラムの起動によりエレベータ11の運転に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは運転制御部31a、かご位置検出部31b、戸開閉制御部31cを有する。
【0023】
運転制御部31aは、乗りかご12の運転制御を行う。詳しくは、運転制御部31aは、乗場20で登録された乗場呼びに基づいて乗りかご12を利用者の乗車階に応答させた後、利用者の行先階に向けて乗りかご12を運転する。かご位置検出部31bは、乗りかご12の現在位置を検出する。検出方法としては、例えば巻上機の回転に同期して出力されるパルスエンコーダのパルス信号をカウントした値から乗りかご12の現在位置を算出するなどの方法がある。
【0024】
戸開閉制御部31cは、乗りかご12が乗場20に到着したときのかごドア14の開閉動作を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31cは、図示せぬ着床検出装置によって乗りかご12が乗場20に着床したことを検出すると、かごドア14を戸開方向に移動させて全開する。そして、所定時間経過後に、戸開閉制御部31cは、かごドア14を戸閉方向に移動させて全閉する。なお、かごドア14の移動と共に乗場ドア21も同じ方向に移動する。
【0025】
記憶部32は、利用者の携帯端末25から送られてきた乗場呼びとかご呼びの情報を記憶する。制御部31は、記憶部32に記憶された情報に基づいて乗りかご12の運転制御を行う。通信部33は、携帯端末25やエレベータ制御装置13との間の通信処理を行う。
【0026】
図3は無線信号装置27,28の構成を示すブロック図である。
無線信号装置27と無線信号装置28は、基本的に同じ構成であり制御部34と通信部35とを備える。制御部34は、呼び登録に関わる無線信号の処理を行う。通信部35は、予め設定された周波数帯の無線信号の送信/受信処理を行う。
【0027】
図4は携帯端末25の外観構成の一例を示す図である。
乗客の携帯端末25は、例えば携帯電話機やスマートフォンなどであり、通信機能を備えた小型の端末装置からなる。携帯端末25には、上述した呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。図中の26aはアプリケーションソフト26がインストールされていることを示すアイコンである。上述したように、乗場20に設置された無線信号装置(乗場ビーコン)27から所定周波数帯の無線信号を携帯端末25が受信すると、このアプリケーションソフト26が起動される。
【0028】
図5は携帯端末25の機能構成を示すブロック図である。
利用者が持つ携帯端末25には、入力部41、表示部42、制御部43、音声入出力部44、記憶部45、GPS(Global Positioning System)モジュール46、通信部47、バッテリ48などが備えられている。
【0029】
入力部41は、各種キーやボタンなどからなり、データの入力や指示を行う。表示部42は、例えばLCDからなり、データの表示を行う。なお、入力部41として、例えば透明のタッチパネルを用い、表示部42の画面上でデータ入力・指示を行う構成でも良い。
【0030】
制御部43は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により各種機能を実行する。制御部43は、呼び登録用のアプリケーションソフト26の起動により、乗場呼びとかご呼びの登録処理を行う。また、後述するように、制御部43は、ビーコンスキャン機能として、省エネ重視モード(第1のスキャンモード)と、応答性重視モード(第2のスキャンモード)とを有する。省エネ重視モードは、第1の周期Taで無線信号をスキャンするモードである。応答性重視モードは、第1の周期Taよりも短く設定された第2の周期Tbで無線信号をスキャンするモードである。制御部43は、アプリケーションソフト26の呼び登録モードに基づいて、省エネ重視モードまたは応答性重視モードを設定する。
【0031】
音声入出力部44は、音声を入力するためのマイクと、音声を出力するためのスピーカで構成される。記憶部45は、ROMやRAM等のメモリデバイスからなり、アプリケーションソフト26を含む各種プログラムが記憶されている。また、この記憶部45には、物件乗車テーブルT1が設けられている。
【0032】
図6に示すように、物件乗車テーブルT1には、予めアプリケーションソフト26を使用して、物件毎に任意に設定された利用者の乗車情報が記憶されている。乗車情報には、利用者の乗車階と行先階の情報を含む。図中の物件a,b,cは、例えば住居マンション、本社ビル、支店ビルなどであり、利用者が日常的に利用しているエレベータが設置された物件である。さらに、上記乗車情報に、例えばバンクなどのグループ名を含めても良い。例えば高層ビルでは、複数の乗りかごを低層バンクと高層バンクに分けて運転することがある。利用者は、自分の行先階に応じて低層バンクの乗りかご、または、高層バンクの乗りかごに乗車する。図中のAバンク,Bバンクは、例えば低層バンクと高層バンクのことである。
【0033】
GPSモジュール46は、現在位置を検出するために用いられる。通信部47は、外部との間で無線通信を行うための汎用のインタフェフェースであり、公衆回線網を利用した長距離無線通信及びBluetooth(登録商標)、Wi-Fi等の近接無線通信を可能とする。バッテリ48は、例えばリチウムイオン電池であり、所定の容量を有し、各部の動作に必要な電力を供給する。
【0034】
以下では、乗場20に設置された無線信号装置27のことを「乗場ビーコン27」、乗りかご12内に設置された無線信号装置28のことを「かご内ビーコン28」と称する。また、「乗場呼びの登録」のことを「行先方向の登録」、「かご呼びの登録」のことを「行先階の登録」と言うこともある。
【0035】
図7はビーコンを用いた一般的な呼び登録を説明するための図、
図8はスキャンモードを説明するための図である。
【0036】
図7に示すように、いま、利用者Aが携帯端末25を持って、任意の階の乗場20に来たとする。携帯端末25には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がダウンロードされている。乗場20には乗場ビーコン27が設置されており、乗りかご12にはかご内ビーコン28が設置されている。乗場呼びの登録は、乗場20にて携帯端末25が乗場ビーコン27に無線接続することで行われる。かご呼びの登録は、乗りかご12内にて携帯端末25が乗場ビーコン27に無線接続することで行われる。
【0037】
乗場ビーコン27、かご内ビーコン28としてBluetooth(登録商標)が用いられている場合、無線電波の有効範囲は約10m程度である。乗りかご12内に設置されたかご内ビーコン28の有効範囲は、通常、かご内全体をカバーできる。したがって、利用者Aが乗りかご12内のどこに乗車していても、かご内ビーコン28の信号を受信できる。一方、乗場20に設置された乗場ビーコン27の場合には、利用者Aが乗場ビーコン27の設置場所に近づかないと、乗場ビーコン27の信号を受信できない。
【0038】
「スキャン」とは、無線信号を周期的に受信する動作を言う。スキャンは、アプリ(アプリケーションソフト26)が携帯端末25の通信機能を利用して、スキャンプログラムを実行することで実現される。このため、スキャン動作中は電力を消費する。携帯端末25の場合にはバッテリ48の電力が消費されるため、利用者Aにとっては不都合である。
【0039】
ここで、スキャン周期(信号をスキャンする時間間隔)を調整すれば、バッテリ48の消費を抑えることは可能であるが、呼び登録の応答性が悪くなる。つまり、
図8に示すように、スキャン周期を短くして、スキャンを頻繁に行えば、呼び登録の応答性は良くなるが、バッテリ48の電力消費が大きくなる(スキャンタイミング-A)。一方、スキャン周期を長くすると、応答性能は悪くなるが、バッテリ48の電力消費を抑えることができる(スキャンタイミング-B)。
図8の例では、有効範囲に入って、2秒経過後に応答可能となる。
【0040】
スキャンタイミング-Aを省エネ重視モード、スキャンタイミング-Bを応答性重視モードと呼ぶ。一般的には、省エネ重視モードが用いられる。これは、利用者Aが乗場20にいるとき、乗場ビーコン27への接続に少し時間を要しても、一度接続できれば、乗場呼びを乗場操作盤22に自動登録して、乗りかご12を乗場20に呼ぶことができるためである。しかしながら、乗りかご12内では乗場20に比べて応答性が求められる。これは、例えば多数の利用者が乗車している場合に、かご内ビーコン28への接続に手間取ると、利用者Aの行先階を登録する前に乗りかご12が他の利用者の行先階に向けて出発してしまう可能性があるためである。
【0041】
このように、エレベータでは、乗場20と乗りかご12内で個別に無線接続する必要があり、それぞれの場所で求められる応答性が異なる。このため、バッテリ消費と呼び登録の応答性のバランスを考慮する必要がある。
【0042】
図9は第1の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図、
図10は同実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。アプリケーションソフト26は、呼び登録モードとして、「乗場呼び登録モード」と「かご呼び登録モード」を有する。初期状態では「乗場呼び登録モード」に設定されており、乗場呼びの登録後に「乗場呼び登録モード」から「かご呼び登録モード」に切り替えられる。
【0043】
ここで、
図9および
図10に示すように、本システムでは、「乗場呼び登録モード」が設定されている場合、省エネ重視モードで乗場ビーコン27の信号をスキャンする。乗場呼びが登録されると、「乗場呼び登録モード」から「かご呼び登録モード」に切り替えられる。「かご呼び登録モード」では、応答性重視モードに設定して、かご内ビーコン28の信号をスキャンする。
【0044】
図10の例では、省エネ重視モードのスキャンは3秒間隔である。応答性重視モードのスキャンは1秒間隔である。したがって、利用者Aが乗場ビーコン27の有効範囲に入ったときに、省エネ重視モードによって、3秒間隔のスキャンが行われている。乗場呼びの登録後、応答性重視モードに切り替わる。これにより、利用者Aがかご内ビーコン28の有効範囲に入ったときには、応答性重視モードによって1秒間隔のスキャンが行われる。なお、「かご呼び登録モード」によってかご呼びの登録(行先階の登録)が完了すると、「乗場呼び登録モード」に戻り、省エネ重視モードでバックグラウンド状態(待機状態)になる。
【0045】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図11は第1の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。
いま、利用者が携帯端末25を持って、予め物件毎に設定された乗車階に来たとする。携帯端末25には予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。初期状態では、「乗場呼び登録モード」に設定されている(ステップS11)。
【0046】
「乗場呼び登録モード」のとき、携帯端末25に備えられている制御部43は、省エネ重視モードで乗場ビーコン27の信号をスキャンする(ステップS12)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発生される無線信号を第1の周期Taでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第1の周期Taは、例えば3秒間隔である。
【0047】
乗場ビーコン27の信号が受信されると(ステップS13のYes)、制御部43は、乗場ビーコン27を通じて乗場呼びの登録処理を実行する(ステップS14)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発信される物件情報に基づいて、
図6の物件乗車テーブルT1から現在の物件に対応した利用者の乗車情報(グループ,乗車階,行先階)を読み出す。制御部43は、利用者の乗車情報を乗場ビーコン27または図示せぬアクセスポイントを介してエレベータ制御装置13に送る。これにより、エレベータ制御装置13によって、利用者の行先方向(上方向または下方向)が乗場操作盤22に乗場呼びとして登録される。
【0048】
乗場呼びの登録が完了すると、「乗場呼び登録モード」から「かご呼び登録モード」に切り替えられる(ステップS15)。「かご呼び登録モード」のとき、制御部43は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号をスキャンする(ステップS16)。詳しくは、制御部43は、かご内ビーコン28から発生される信号を第2の周期Tbでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第2の周期Tbは、例えば1秒間隔である(Ta>Tb)。
【0049】
かご内ビーコン28の信号が受信されると(ステップS17のYes)、制御部43は、かご内ビーコン28を通じてかご呼びの登録処理を実行する(ステップS18)。詳しくは、かご内ビーコン28から乗りかご12の現在階,行先方向などを含む運転情報が発信されている。行先階登録モードにおいて、携帯端末25は、アプリ設定された利用者の乗車情報とかご内ビーコン28から発信される乗りかご12の運転情報とを比較する。アプリ設定された利用者の乗車情報は、
図6に示したように、物件毎に物件乗車テーブルT1に記憶されている。両者の情報が一致すれば、携帯端末25は、かご内ビーコン28または図示せぬアクセスポイントを介して、利用者の行先階をエレベータ制御装置13に送る。これにより、乗りかご12のかご操作盤15に利用者の行先階がかご呼びとして登録される。
【0050】
このように第1の実施形態によれば、「乗場呼び登録モード」のときに省エネ重視モードで乗場ビーコンの無線信号をスキャンし、「かご呼び登録モード」のときに応答性重視モードでかご内ビーコンの無線信号をスキャンする。これにより、利用者が乗場にいて、乗場呼びを登録するまでは、省エネ重視モードによってバッテリの電力消費を抑えることができる。一方、乗場呼びの登録後は、応答性重視モードによってかご呼びの応答性が改善される。したがって、利用者が乗りかごに乗車した際に、乗りかごが戸閉して出発する前に利用者の行先階を確実に登録することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、乗場呼びの登録後、利用者が乗りかご内に乗車していることを想定して、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替えていた。しかし、実際には、乗場呼びが登録されても、すぐに乗りかごが乗場に到着するわけではない。例えば、乗りかごが乗場呼びの登録階から離れた場所に位置している場合や、途中階に他の呼びが登録されていれば、乗りかごの到着まで時間がかかる。したがって、乗場呼びの登録直後に応答性重視モードに切り替えてしまうと、その間の電力消費が無駄になる。第2の実施形態では、このような点に鑑みて、乗場呼びの登録後、乗りかごが乗場呼びの登録階に近づいたときに、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替える構成とする。
【0052】
図12は第2の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図、
図13は同実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。上記第1の実施形態と同様に、「乗場呼び登録モード」のビーコンスキャンは省エネ重視モード、「かご呼び登録モード」のビーコンスキャンは応答性重視モードで行う。
【0053】
図12および
図13に示すように、呼び登録用のアプリケーションソフト26は、かご呼びの登録に関して、「かご呼び待機モード」と「かご呼び登録モード」を有する。乗場呼びが登録されると、「乗場呼び登録モード」から「かご呼び待機モード」に切り替えられる。「かご呼び待機モード」は、乗りかご12の運転状態に応じて、かご呼びの登録を待機しておくためのモードであり、乗りかご12が乗場呼びの登録階に近づくまでの間、継続される。
【0054】
乗りかご12が乗場呼びの登録階に近づいたときに、「かご呼び待機モード」が解除され、「かご呼び登録モード」に切り替えられる。「乗りかご12が乗場呼びの登録階に近づいたとき」とは、具体的にはエレベータ制御装置13からの指示により、乗場ビーコン27から到着予報信号が発信されたときである。エレベータ制御装置13では、乗りかご12の現在位置を検出し、乗場呼びの登録階に近づいたときに、図示せぬランタンを点灯すると共に、乗場ビーコン27から到着予報信号を発信する。このとき、携帯端末25のビーコンスキャン機能は省エネ重視モードである。したがって、この到着予報信号をトリガにして、「かご呼び登録モード」への切り替えを行うと共に、応答性重視モードを設定する。これにより、乗りかご12が到着するまでの間、省エネ重視モードを維持して、無駄な電力消費を抑えることができる。なお、「かご呼び登録モード」によってかご呼びの登録(行先階の登録)が完了すると、「乗場呼び登録モード」に戻り、省エネ重視モードでバックグラウンド状態(待機状態)になる。
【0055】
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
図14は第2の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。なお、
図14において、
図10のフローチャートと同じ部分には同一ステップを付し、ここでは異なる処理部分について説明する。
【0056】
初期状態では、「乗場呼び登録モード」に設定されており、携帯端末25に備えられた制御部43は、省エネ重視モードで乗場ビーコン27の信号を受信したときに、乗場呼びの登録処理を実行する(ステップS11~S14)。
【0057】
ここで、第2の実施形態では、乗場呼びの登録が完了すると、「乗場呼び登録モード」から「かご呼び待機モード」に切り替えられる(ステップS21)。上述したように、「かご呼び待機モード」は、乗りかご12の運転状態に応じて、かご呼びの登録を待機しておくためのモードであり、乗りかご12が乗場呼びの登録階に近づくまでの間、継続される。乗りかご12が乗場呼びの登録階に近づくと、図示せぬランタンの点灯と共に、乗場ビーコン27から到着予報信号が発信される。制御部43は、省エネ重視モードで到着予報信号を受信すると(ステップS22のYes)、「かご呼び待機モード」から「かご呼び登録モード」に切り替え(ステップS16)、これに伴い、応答性重視モードを設定する(ステップS17)。
【0058】
以後は上記第1の実施形態と同様であり、制御部43は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号を受信したときに、かご呼びの登録処理を実行する(ステップS17~S18)。
【0059】
このように第2の実施形態によれば、乗場呼びの登録後、乗りかごが乗場呼びの登録階に近づいたときに、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替えられる。これにより、乗りかごが到着するまでの間のバッテリ電力の消費を抑えることができ、乗りかごの到着後に、応答性重視モードによってかご内ビーコンに無線接続して、速やかにかご呼びを登録することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、乗場ビーコンの手前に別の乗場ビーコンを追加ビーコンとして設置し、この追加ビーコンの信号をトリガにして、省エネ重視モードから応答性重視モードへの切り替えを行う構成としたものである。つまり、利用者が乗りかごに向かっている状況を追加ビーコンの信号受信によって検出し、早めに応答性重視モードに切り替えて乗場呼びを登録するようにしたものである。
【0061】
図15は第3の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図、
図16は同実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。上記第1の実施形態と異なる点は、乗場ビーコン27の手前に別の乗場ビーコンが追加ビーコン60として設置されていることである。
【0062】
図15に示すように、乗場ビーコン27の有効範囲をE1としたとき、追加ビーコン60は、利用者Aが有効範囲E1に入る手前(乗りかご12から離間する方向)に設けられる。追加ビーコン60は、受信機能を持たず、単に信号を発信するだけの一般的なビーコンである。そのため、電池式であっても良い。追加ビーコン60の有効範囲をE2とする。アプリケーションソフト26は、呼び登録モードとして、「乗場呼び登録モード」と「かご呼び登録モード」を有する。初期状態では「乗場呼び登録モード」であり、携帯端末25のビーコンスキャン機能は省エネ重視モードに設定されている。
【0063】
図16に示すように、利用者Aが追加ビーコン60の有効範囲E2に入り、携帯端末25が追加ビーコン60の信号を受信したときに、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替えられる。このとき、「乗場呼び登録モード」である。したがって、利用者Aが乗場ビーコン27の有効範囲E1に入ると、携帯端末25は、応答性重視モードで乗場ビーコン27の信号を受信して乗場呼びの登録を行う。なお、乗場呼びの登録は、乗場ビーコン27の信号のみを受信したときに行うものとする。
【0064】
また、乗場呼びの登録が完了すると、「かご呼び登録モード」に切り替えられる。「かご呼び登録モード」のときも応答性重視モードが維持されている。したがって、利用者Aが乗りかご12内に乗車すると、携帯端末25は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号を受信してかご呼びの登録を行う。「かご呼び登録モード」によってかご呼びの登録(行先階の登録)が完了すると、「乗場呼び登録モード」に戻り、省エネ重視モードでバックグラウンド状態(待機状態)になる。
【0065】
次に、第3の実施形態の動作について説明する。
図17は第3の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。なお、
図17において、
図10のフローチャートと同じ部分には同一ステップを付し、ここでは異なる処理部分について説明する。
【0066】
初期状態では、「乗場呼び登録モード」に設定されている(ステップS11)。乗場ビーコン27の手前に追加ビーコン60が設置されている。「乗場呼び登録モード」のときに、携帯端末25に備えられている制御部43は、省エネ重視モードで追加ビーコン60の信号をスキャンする(ステップS31)。詳しくは、制御部43は、追加ビーコン60から発生される無線信号を第1の周期Taでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第1の周期Taは、例えば3秒間隔である。
【0067】
追加ビーコン60の信号が受信されると(ステップS32のYes)、制御部43は、利用者が乗りかご12に向かっているものと判断し、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替えて、乗場ビーコン27の信号をスキャンする(ステップS33)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発生される無線信号を第2の周期Tbでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第2の周期Tbは、例えば1秒間隔である。
【0068】
ここで、応答性重視モードで乗場ビーコン27の信号のみが受信された場合に(ステップS13のYes)、制御部43は、乗場ビーコン27を通じて乗場呼びの登録を行う(ステップS14)。以後は上記第1の実施形態と同様であり、乗場呼びの登録後、「かご呼び登録モード」に切り替えられる。このとき、既に応答性重視モードに設定されているので、制御部43は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号を受信して、かご呼びの登録処理を行う(ステップS15~S18)。
【0069】
このように第3の実施形態によれば、乗場ビーコンの手前に設置された追加ビーコンの信号をトリガにして、省エネ重視モードから応答性重視モードへの切り替えが行われる。したがって、利用者が乗りかごに向かっている場合に、応答性重視モードによって乗場ビーコンに無線接続して、速やかに乗場呼びを登録することができる。この場合、携帯端末が追加ビーコンの信号を受信するまでは、省エネ重視モードに設定されているので、利用者が乗場から離れた場所にいる場合にバッテリ電力の消費を抑えることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態では、上記第3の実施形態と同様に、乗場ビーコンの手前に別の乗場ビーコンを追加ビーコンとして設置した構成において、携帯端末が追加ビーコンの信号を受信後に、乗場ビーコンの信号を受信したときのタイミングで、省エネ重視モードから応答性重視モードへの切り替えを行う構成としたものである。
【0071】
図18は第4の実施形態におけるビーコンを用いた呼び登録を説明するための図、
図19は同実施形態におけるスキャンモードと呼び登録との関係を示す図である。上記第3の実施形態と同様に、乗場ビーコン27の手前に別の乗場ビーコンが追加ビーコン60として設置されている。
【0072】
図18に示すように、追加ビーコン60は、利用者Aが有効範囲E1に入る手前(乗りかご12から離間する方向)に設けられる。追加ビーコン60は、受信機能を持たず、単に信号を発信するだけの一般的なビーコンであって、有効範囲E2を有する。上記第3の実施形態では、利用者Aが追加ビーコン60の有効範囲E2に入り、携帯端末25が追加ビーコン60の信号を受信したときに、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替えていた。しかし、追加ビーコン60の設置場所は乗りかご12から離れているため、追加ビーコン60の信号を受信した時点では、必ずしも利用者Aが乗りかご12に乗車するとは限らない。例えば、利用者Aが追加ビーコン60の設置場所から乗りかご12に向かわずに引き返す場合が考えられる。
【0073】
そこで、第4の実施形態では、携帯端末25が追加ビーコン60の信号を受信後、本来の乗場ビーコン27の信号を受信したとき、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替える。これにより、
図19に示すように、利用者Aが追加ビーコン60の有効範囲E2と乗場ビーコン27の有効範囲E1が重なるエリアにいて、乗りかご12に確実に向かっている場合に応答性重視モードに切り替えて、乗場呼びの登録を行うことができる。なお、乗場呼びの登録は、乗場ビーコン27の信号のみを受信したときに行うものとする。
【0074】
また、乗場呼びの登録が完了すると、「かご呼び登録モード」に切り替えられる。「かご呼び登録モード」のときも応答性重視モードが維持されている。したがって、利用者Aが乗りかご12内に乗車すると、携帯端末25は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号を受信してかご呼びの登録を行う。「かご呼び登録モード」によってかご呼びの登録(行先階の登録)が完了すると、「乗場呼び登録モード」に戻り、省エネ重視モードでバックグラウンド状態(待機状態)になる。
【0075】
次に、第4の実施形態の動作について説明する。
図20は第4の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。なお、
図20において、
図10のフローチャートと同じ部分には同一ステップを付し、ここでは異なる処理部分について説明する。
【0076】
初期状態では、「乗場呼び登録モード」に設定されている(ステップS11)。乗場ビーコン27の手前に追加ビーコン60が設置されている。ここで、第4の実施形態では、「乗場呼び登録モード」のときに、携帯端末25に備えられている制御部43は、省エネ重視モードで追加ビーコン60の信号をスキャンする(ステップS41)。詳しくは、制御部43は、追加ビーコン60から発生される無線信号を第1の周期Taでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第1の周期Taは、例えば3秒間隔である。
【0077】
追加ビーコン60の信号が受信されると(ステップS42のYes)、制御部43は、省エネ重視モードで乗場ビーコン27の信号をスキャンする(ステップS43)。乗場ビーコン27の信号が受信された場合、つまり、追加ビーコン60に続いて、乗場ビーコン27の信号が受信された場合には(ステップS44のYes)、制御部43は、利用者が追加ビーコン60の設置場所から乗りかご12に確実に向かっているものと判断し、省エネ重視モードから応答性重視モードに切り替える(ステップS45)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発生される無線信号を第2の周期Tbでスキャンするように通信部47のスキャン動作を制御する。第2の周期Tbは、例えば1秒間隔である。
【0078】
ここで、応答性重視モードで乗場ビーコン27の信号のみが受信された場合に、制御部43は、乗場ビーコン27を通じて乗場呼びの登録を行う(ステップS14)。以後は上記第1の実施形態と同様であり、乗場呼びの登録後、「かご呼び登録モード」に切り替えられる。このとき、既に応答性重視モードに設定されているので、制御部43は、応答性重視モードでかご内ビーコン28の信号を受信して、かご呼びの登録処理を行う(ステップS15~S18)。
【0079】
このように第4の実施形態によれば、乗場ビーコンの手前に設置された追加ビーコンの信号に続いて、乗場ビーコンの信号も受信できたときに、省エネ重視モードから応答性重視モードへの切り替えが行われる。したがって、利用者が追加ビーコンの設置場所から乗りかごに確実に向かっている場合に、応答性重視モードによって乗場ビーコンに無線接続して、速やかに乗場呼びを登録することができる。この場合、携帯端末が追加ビーコンと乗場ビーコンの両方の信号を受信するまでは、省エネ重視モードに設定されているので、利用者が乗場から離れた場所にいる場合にバッテリ電力の消費を抑えることができる。
【0080】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、ビーコンの信号を適切なタイミングでスキャンすることで、バッテリ電力の消費を抑えながら、呼び登録の応答性を確保できるエレベータシステムを提供することができる。
【0081】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
11…エレベータ、12…乗りかご、13…エレベータ制御装置、14…かごドア、15…かご操作盤、16…表示器、17…行先階ボタン、18a…戸開ボタン、18b…戸閉ボタン、20…乗場、21…乗場ドア、22…乗場操作盤、23…乗場ボタン、25…携帯端末、26…呼び登録用のアプリケーションソフト、26a…アイコン、27…無線信号装置(乗場ビーコン)、28…無線信号装置(かご内ビーコン)、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、34…制御部、35…通信部、41…入力部、42…表示部、43…制御部、44…音声入出力部、45…記憶部、46…GPSモジュール、47…通信部、48…バッテリ、60…追加ビーコン。
【要約】
【課題】ビーコンの信号を適切なタイミングでスキャンすることで、バッテリ電力の消費を抑えながら、呼び登録の応答性を確保する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、任意の階の乗場に設置された第1の無線信号装置と、上記乗りかご内に設置された第2の無線信号装置とを備える。携帯端末は、第1の周期で無線信号をスキャンする第1のスキャンモードと、上記第1の周期よりも短く設定された第2の周期で無線信号をスキャンする第2のスキャンモードとを有し、上記アプリケーションソフトに備えられている上記乗場呼びと上記かご呼びの登録モードに基づいて、上記第1のスキャンモードまたは上記第2のスキャンモードを設定する。
【選択図】
図1