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特許7124183会話システム、会話補助器及び会話補助方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】会話システム、会話補助器及び会話補助方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/02 20060101AFI20220816BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20220816BHJP
   H04M 1/60 20060101ALI20220816BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20220816BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H04R3/02
G10K11/178 100
H04M1/60 C
H04R1/34 320
H04R3/00 310
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021114980
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000141761
【氏名又は名称】株式会社宮川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一三
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】高長 晶
(72)【発明者】
【氏名】阿部 賀一
(72)【発明者】
【氏名】秋津 吉晶
(72)【発明者】
【氏名】吉野 泰章
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊弘
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/061878(WO,A1)
【文献】特開2001-237975(JP,A)
【文献】特開2021-067918(JP,A)
【文献】特開2018-142813(JP,A)
【文献】特開2014-228680(JP,A)
【文献】特開平09-037378(JP,A)
【文献】特開平10-224882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00-15/02
G10K 11/00-13/00
H04M 1/00
1/24- 1/82
9/00- 9/10
99/00
H04R 1/00- 1/08
1/12- 1/14
1/20- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに会話補助器が設けられ、会話スペースごとに設けられた複数の会話補助器を通信可能に接続した会話システムであって、
前記会話補助器は、
放物面反射器の凹部に設けられ、前記話者が発話する音声を集音するマイクと、
前記マイクで集音された音声信号を他の会話補助器に送信制御する送信制御手段と、
他の会話補助器から受信した音声信号を出力するスピーカと、
前記スピーカにより出力される音声の正相波形と逆相の音を出力する逆相スピーカと
を備えたことを特徴とする会話システム。
【請求項2】
前記会話補助器は、
前記他の会話補助器から受信した音声信号の音圧レベルが所定値以上のときに前記スピーカへの音声出力を停止するハウリング防止手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の会話システム。
【請求項3】
前記会話補助器は、
他の会話補助器との間で近距離無線通信を行う無線通信手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の会話システム。
【請求項4】
3台以上の会話補助器のうちの1台は親機であり、3台以上の会話補助器のうちの親機以外は子機であり、
前記親機は、
親機の音声信号及び各子機から受信した音声信号のうち、音声信号の送信先以外の会話補助器の音声信号を合成する合成手段をさらに備え、
前記無線通信手段は、
前記合成手段により合成した音声信号を前記音声信号の送信先に無線送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の会話システム。
【請求項5】
前記会話補助器は、
他の会話補助器との間を有線接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の会話システム。
【請求項6】
3台以上の会話補助器とそれぞれ有線接続された信号合成器をさらに備え、
前記信号合成器は、
各会話補助器から受信した音声信号のうち、音声信号の送信先以外の会話補助器の音声信号を合成する合成手段と、
前記合成手段により合成した音声信号を前記音声信号の送信先に送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の会話システム。
【請求項7】
透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに設けられ、他の会話補助器と通信可能に接続される会話補助器であって、
放物面反射器の凹部に設けられ、前記話者が発話する音声を集音するマイクと、
前記マイクで集音された音声信号を他の会話補助器に送信制御する送信制御手段と、
他の会話補助器から受信した音声信号を出力するスピーカと、
前記スピーカにより出力される音声の正相波形と逆相の音を出力する逆相スピーカと
を備えたことを特徴とする会話補助器。
【請求項8】
透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに会話補助器が設けられ、会話スペースごとに設けられた複数の会話補助器を通信可能に接続した会話システムにおける会話補助方法であって、
第1の会話補助器が、放物面反射器の凹部に設けられたマイクにより、前記話者が発話する音声を集音する集音工程と、
前記第1の会話補助器が、前記マイクで集音された音声信号を第2の会話補助器に送信制御する送信制御工程と、
前記第2の会話補助器が、前記第1の会話補助器から受信した音声信号をスピーカから出力する音声出力工程と、
前記第2の会話補助器が、前記スピーカから出力される音声の正相波形と逆相の音を逆相スピーカから出力する逆相音出力工程と
を含むことを特徴とする会話補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定した音声会話を行うことができる会話システム、会話補助器及び会話補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顧客と担当者が対面で会話を行う場合に、アクリル板やガラス板等の仕切り板を介して会話を行うことが多い。特に、最近の新型コロナウイルスの増加に伴って、飲食店、営業店など様々な場所に透明な仕切り板を設け、対面で会話を行う際に一方の発話時の飛沫が相手に届かぬようにしている。
【0003】
ところが、かかる透明の仕切り板を設けた場合には、この仕切り板によって一方が発した音声が他方に届きにくくなる。このため、かかる仕切り板を設けた場合に、音声を対面する相手に伝達する従来技術が知られている。例えば、特許文献1には、外部と室内とを仕切る板体と、入力された音声信号を振動に変換するものであって、仕切り板体に接触させた振動発生器による振動を仕切り板体に伝達し、板体の振動により板体の両面双方向に音声を発生させる技術が開示されている。
【0004】
また、アクリル板越しでも会話をスムースにするために、マイクとスピーカを一体化した装置を仕切り板の対面する位置に配設して有線接続し、一方の装置上の一斉ボタンを押下操作されたならば、該装置のマイクから入力した音声を相手のスピーカから出力する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-252896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のものは、仕切り板に接触させた振動発生器によって仕切り板を振動させて音声を伝えるものであるため、仕切り板の種別によっては音声がうまく伝わらない可能性がある。また、携帯性に難があるとともに、ハウリングが生ずる可能性もある。
【0007】
また、装置を仕切り板の対面する位置に配設して有線接続する場合には、仕切り板の下部に設けられた資料を受け渡しするための隙間からの音声がマイクに入力されて増幅し、ハウリングを起こすという問題がある。さらに、上記従来技術のものは、1対1の利用者が対面で会話を行うためのものであり、複数の仕切り板を介して複数人が会話を行う場合に対応することができない。
【0008】
これらのことから、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行うことができる会話補助器及び会話システムをいかに実現するかが重要な課題となっている。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行うことができる会話システム、会話補助器及び会話補助方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに会話補助器が設けられ、会話スペースごとに設けられた複数の会話補助器を通信可能に接続した会話システムであって、前記会話補助器は、放物面反射器の凹部に設けられ、前記話者が発話する音声を集音するマイクと、前記マイクで集音された音声信号を他の会話補助器に送信制御する送信制御手段と、他の会話補助器から受信した音声信号を出力するスピーカと、前記スピーカにより出力される音声の正相波形と逆相の音を出力する逆相スピーカとを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記会話補助器は、前記他の会話補助器から受信した音声信号の音圧レベルが所定値以上のときに前記スピーカへの音声出力を停止するハウリング防止手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記会話補助器は、他の会話補助器との間で近距離無線通信を行う無線通信手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、3台以上の会話補助器のうちの1台は親機であり、3台以上の会話補助器のうちの親機以外は子機であり、前記親機は、親機の音声信号及び各子機から受信した音声信号のうち、音声信号の送信先以外の会話補助器の音声信号を合成する合成手段をさらに備え、前記無線通信手段は、前記合成手段により合成した音声信号を前記音声信号の送信先に無線送信することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記会話補助器は、他の会話補助器との間を有線接続されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、3台以上の会話補助器とそれぞれ有線接続された信号合成器をさらに備え、前記信号合成器は、各会話補助器から受信した音声信号のうち、音声信号の送信先以外の会話補助器の音声信号を合成する合成手段と、前記合成手段により合成した音声信号を前記音声信号の送信先に送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに設けられ、他の会話補助器と通信可能に接続される会話補助器であって、放物面反射器の凹部に設けられ、前記話者が発話する音声を集音するマイクと、前記マイクで集音された音声信号を他の会話補助器に送信制御する送信制御手段と、他の会話補助器から受信した音声信号を出力するスピーカと、前記スピーカにより出力される音声の正相波形と逆相の音を出力する逆相スピーカとを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに会話補助器が設けられ、会話スペースごとに設けられた複数の会話補助器を通信可能に接続した会話システムにおける会話補助方法であって、第1の会話補助器が、放物面反射器の凹部に設けられたマイクにより、前記話者が発話する音声を集音する集音工程と、前記第1の会話補助器が、前記マイクで集音された音声信号を第2の会話補助器に送信制御する送信制御工程と、前記第2の会話補助器が、前記第1の会話補助器から受信した音声信号をスピーカから出力する音声出力工程と、前記第2の会話補助器が、前記スピーカから出力される音声の正相波形と逆相の音を逆相スピーカから出力する逆相音出力工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係る会話補助器の概要を説明するための説明図である。
図2図2は、図1に示した会話補助器(親機)の外観構成を示す図である。
図3図3は、図1に示した会話補助器(親機)の内部構成を示す図である。
図4図4は、図1に示した会話補助器(子機)の内部構成を示す図である。
図5図5は、図3に示した信号制御回路の動作を示す図である。
図6図6は、図2に示したスピーカ部及び逆相スピーカからの音の出力を説明するための説明図である。
図7図7は、実施形態1に係る会話補助器の運用パターンを示す図(その1)である。
図8図8は、実施形態1に係る会話補助器の運用パターンを示す図(その2)である。
図9図9は、実施形態1に係る複数同時会話の処理手順を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態2に係る会話補助器の概要を説明するための説明図である。
図11図11は、実施形態2に係る会話補助器(子機)の構成を示す図である。
図12図12は、図10に示した信号合成器の構成を示す図である。
図13図13は、実施形態2に係る信号合成器の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態1]
以下に、本実施形態1に係る会話システム及び会話補助器について詳細に説明する。まず、本実施形態1に係る会話補助器の概要について説明する。図1は、本実施形態1に係る会話補助器の概要を説明するための説明図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態1に係る会話補助器には、会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200の2種類の形態がある。ここでは、子機の会話補助器200a及び200bが存在する場合を示している。会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200に入力された音声信号は、他の会話補助器で音声として出力される。
【0022】
例えば、会話補助器(親機)100に入力された音声信号は、他の会話補助器、すなわち、会話補助器(子機)200a及び会話補助器(子機)200bから音声として出力される。
【0023】
また、複数者が同時に発話した場合には、自器以外に入力された音声信号が会話補助器(親機)100で合成され、この合成信号が自器において音声として出力される。
【0024】
このように、本実施形態1に係る会話補助器によれば、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができる。なお、ハウリングの防止に伴う安定な音声会話の提供についての説明は後述する。
【0025】
<会話補助器(親機)100の外観構成>
次に、図1に示した会話補助器(親機)100の外観構成について説明する。なお、会話補助器(子機)200の外観構成は、会話補助器(親機)100と同様の構成となるため、会話補助器(親機)100の構成を示すこととする。
【0026】
図2は、図1に示した会話補助器(親機)100の外観構成を示す図である。図2に示すように、会話補助器(親機)100は、本体部110及びスピーカ部120で構成される。
【0027】
本体部110には、パラボラマイク111、音量調節ツマミ116及びステータスLED117が設けられている。パラボラマイク111は、自器周辺の音声をパラボラ状の形状で収音し、中央のマイクにおいて音声信号に変換する。
【0028】
音量調節ツマミ116は、自器から出力する音声の音量を調節するためのツマミである。ステータスLED117は、自器でハウリングが発生してスピーカ部120への出力を停止した場合に点灯し、スピーカ部120が「切」の状態であることを表示する。
【0029】
また、本体部110の上部には、例えば2cmの厚みの低反発ウレタン層が設けられている。逆相スピーカ122から出力される音の振動を本体部110に伝えないようにするためである。
【0030】
スピーカ部120には、上部にスピーカ121が、底部に逆相スピーカ122が設けられている。スピーカ121は、自器以外の会話補助器に入力された音声信号を音声として出力する。逆相スピーカ122は、スピーカ121が出力した音声の波形の位相(正相)と逆になる位相の波形の音を出力する。また、スピーカ部120の底部には、ゴムシートと、所定の隙間形成部材が設けられている。この隙間形成部材が形成する隙間から逆相スピーカ122からの出力音が出力される。なお、本体部110とスピーカ部120の間は、いわゆる「Oリング」を介して結合される。
【0031】
<会話補助器(親機)100の内部構成>
次に、図1に示した会話補助器(親機)100の内部構成について説明する。図3は、図1に示した会話補助器(親機)100の内部構成を示す図である。図3に示すように、会話補助器(親機)100は、本体部110及びスピーカ部120で構成される。
【0032】
本体部110は、パラボラマイク111、信号処理回路112、信号制御回路113、信号変換部114a~114e、通信部115a~115d及び信号合成回路131を有する。ここでは、図2ですでに説明した部位の詳細な説明を省略する。
【0033】
信号処理回路112は、パラボラマイク111から入力された音声信号を信号変換部114aにてデジタル変換したデータ、及び、信号合成回路131で音声合成されたデータの処理を行い、ノイズやハウリングを防止する回路である。信号処理回路112は、ハイパスフィルタ、エコーキャンセル、ノイズリダクション、イコライザー等を含む。
【0034】
信号制御回路113は、所定の時間、音声信号の受け渡しを停止することにより、ハウリングの発生を抑制する回路である。信号制御回路113は、信号変換部114からACレベルメータ133へ入力された音声信号の音圧が所定の閾値以上であった場合に、所定の時間、スピーカ部120への音声信号の受け渡しを停止する。
【0035】
信号変換部114a~114eは、音声信号のアナログ信号をデジタル信号に変換するとともに、デジタル信号をアナログ信号に変換する。通信部115a~115cは、Bluetooth(登録商標)等の無線回線を介してデータ通信を行なうためのインタフェース部であり、通信部115aと通信部115bの間、通信部115cと会話補助器(子機)200a、200bに備わる通信部との間で無線通信する。
【0036】
信号合成回路131は、音声信号の合成を行う回路である。信号変換部114b、114cがそれぞれ通信部115b、115cから音声信号を受け取り、アナログ信号に変換し、信号合成回路131に受け渡す。信号合成回路131は、信号変換部114b、114cからアナログ変換された音声信号を受け取ったならば、受け取った複数(例えば、N個)の音声信号から1つを選択し、この音声信号以外の全て(N-1個)の音声信号を合成し、選択した音声信号の送信元の信号変換部114b又は信号変換部114cへ受け渡す。
【0037】
信号合成回路131は、このように選択した複数(N個)の音声信号のそれぞれに対して、選択していない残り(N-1個)の音声信号の全てを合成した合成信号を生成する。図3においては、会話補助器(子機)が2台の場合(N=3)を図示している。信号変換部114cと通信部115cは、対応する会話補助器(子機)毎に設ける。信号変換部114bは、信号合成回路131から受け渡された合成信号を通信部115b、115a及び信号処理回路112を介して、信号変換部114eへ受け渡す。また、信号変換部114cは、信号合成回路131から受け渡された合成信号を、通信部115cを介して会話補助器(子機)の通信部へ受け渡す。
【0038】
<会話補助器(子機)200の構成>
次に、図1に示した会話補助器(子機)200の構成について説明する。図4は、図1に示した会話補助器(子機)200の構成を示す図である。図4に示すように、会話補助器(子機)200は、本体部210及びスピーカ部120で構成される。なお、図3に示した会話補助器(親機)100と同様の機能部についての説明は省略する。
【0039】
本体部210は、パラボラマイク111、信号処理回路112、信号制御回路113、信号変換部220及び通信部115を有する。信号変換部220a、220bは、音声信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するとともに、デジタル信号からアナログ信号に変換する処理部である。
【0040】
信号変換部220aは、パラボラマイク111から音声信号のアナログ信号を受け取ったならば、音声信号のアナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理回路112に受け渡す。また、信号変換部220bは、通信部115から合成信号のデジタル信号を受け取ったならば、合成信号のデジタル信号をアナログ信号に変換し、信号制御回路113を介してスピーカ121に受け渡す。
【0041】
<信号制御回路113の動作>
次に、図3に示した信号制御回路113の動作について説明する。図5は、図3に示した信号制御回路113の動作を示す図であり、信号制御回路113は、他の会話補助器から受信した音声信号の音圧レベルにより、スピーカ部120への音声出力を制御する。図5に示すように、信号制御回路113は、音声信号が入力されたならば、ACレベルメータ133により入力音声の音圧レベルを測定する。
【0042】
信号制御回路113は、ACレベルメータ133が測定した音圧レベルが閾値未満であるならば、信号変換部114eから入力された音声信号をスピーカ部120に受け渡して出力する。また、音圧レベルが閾値以上であるならば、信号変換部114eから入力された音声信号をスピーカ部120へ受け渡すことなく、ステータスLED117を点灯制御することによって、スピーカ部120が「切」の状態であることを表示する。これにより、ステータスLED117の点灯を覚知した利用者がハウリング発生に気づき、自ら音量調節ツマミ116を操作し、音量を低く調節することが可能となる。この結果、ハウリングが発生している状況を早く解消することができる。
【0043】
このように、信号制御回路113は、所定の時間、音声信号の受け渡しを停止することにより、ハウリングの発生を抑制する。
【0044】
<逆相スピーカ122の動作>
次に、図2に示したスピーカ121及び逆相スピーカ122からの音の出力について説明する。図6は、図2に示したスピーカ121及び逆相スピーカ122からの音の出力を説明するための説明図である。図6に示すように、スピーカ121は、音声「A」を信号化した音声信号を受け取ったならば、この音声信号に基づいてコーン紙等からなる振動板を振動させ、音声を発生させる。この音声は、スピーカ部120の外側に音声「A」として出力される。
【0045】
スピーカ121は、スピーカ部120の外側に音声「A」を出力する一方、スピーカ部120の内側に向けて、音声「A」の逆相となる音声「B」を出力する。これは、スピーカ121の振動板の振動が、スピーカ部120の外側及び内側では、空気に逆の振動を与えるためである。
【0046】
スピーカ部120の内側の音声「B」による空気の振動は、逆相スピーカ122の振動板を振動させ、この振動により逆相スピーカ122がスピーカ部120の外側に音声「B」を出力する。
【0047】
このように、逆相スピーカ122は、スピーカ121が出力する音声「A」と逆相の音声「B」を出力する。この音声「B」は、前述した隙間形成部材が形成する隙間から装置外部に出力される。なお、音声「B」による振動の本体部110への伝達は、本体部110の上部に設けられた低反発ウレタン層の存在により制限される。したがって、逆相スピーカ122から出力される音声「B」は、パラボラマイク111が設置された方向に音声「B」を出力され、パラボラマイク111に入力される音声「A」が音声「B」によって減衰される。その結果、ハウリングの発生を抑制することができる。
【0048】
<実施形態1に係る会話補助器の運用パターン>
次に、本実施形態1に係る会話補助器の運用パターンについて説明する。図7及び図8は、本実施形態1に係る会話補助器の運用パターンを示す図である。会話補助器の運用パターンには、1対1で運用するパターンと1対多で運用するパターンとがある。
【0049】
図7に示すように、1対1で運用するパターンでは、会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200のそれぞれ1台を使用する。会話補助器(親機)100に入力された音声信号は、会話補助器(子機)200において音声として出力され、会話補助器(子機)200に入力された音声信号は、会話補助器(親機)100において音声として出力される。この場合、会話補助器(親機)100の信号合成回路131による音声信号の合成は行われない。
【0050】
図8に示すように、1対多で運用するパターンでは、1台の会話補助器(親機)100及び複数台の会話補助器(子機)200を使用する。例えば、3人の会議参加者X、Y及びZが、それぞれに会話補助器(子機)200a、会話補助器(子機)200b及び会話補助器(親機)100を用いて会話を行う場合、会話補助器(子機)200aから音声信号X1が、会話補助器(子機)200bから音声信号Y1がそれぞれ会話補助器(親機)100に送信される(S1)。
【0051】
会話補助器(親機)100は、受信した音声信号X1及び音声信号Y1、並びに、会話補助器(親機)100に入力された音声の音声信号Z1を用いて、音声信号の合成を行う(S2)。
【0052】
音声信号X1及び音声信号Y1を用いて合成された合成信号(X1、Y1)は、会話補助器(親機)100により合成音声として出力される。同様に合成された合成信号(Y1、Z1)及び合成信号(X1、Z1)は、それぞれ会話補助器(子機)200a及び会話補助器(子機)200bに送信され(S3)、合成音声として出力される。
【0053】
<実施形態1に係る複数同時会話の処理手順>
次に、本実施形態1に係る複数同時会話の処理手順について説明する。図9は、本実施形態1に係る複数同時会話の処理手順を示すフローチャートである。まず、会話補助器(子機)200aは、パラボラマイク111から音声が入力されたならば(ステップS101)、音声を音声信号に変換し、この音声信号に信号処理を行う(ステップS102)。
【0054】
会話補助器(子機)200aは、信号処理を行った音声信号を、通信部115c、信号変換部114cを介して、会話補助器(親機)100内の信号合成回路131へ送信する(ステップS103)。
【0055】
会話補助器(親機)100は、パラボラマイク111から音声が入力されたならば(ステップS104)、音声を音声信号に変換し、この音声信号に信号処理を行い(ステップS105)、会話補助器(親機)100内の信号合成回路131の通信部115bへ向けて送信する(ステップS106)。
【0056】
会話補助器(親機)100内の信号合成回路131は、会話補助器(親機)100の信号処理回路112から通信部115a、115b及び信号変換部114bを介して音声信号を受信したならば(ステップS107)、音声信号の合成を行う(ステップS108)。ここでは、ステップS107において、複数の会話補助器(子機)200から音声信号を受信したものとし、ステップS108においては、複数の会話補助器(子機)200の音声信号及び会話補助器(親機)100の音声信号を用いて音声信号の合成を行う。
【0057】
会話補助器(親機)100内の信号合成回路131は、会話補助器(子機)200a以外の音声信号を用いた合成信号を信号変換部114c及び通信部115cを介して会話補助器(子機)200aに送信する(ステップS109)。会話補助器(子機)200aは、会話補助器(親機)100内の信号合成回路131から合成信号を受信したならば(ステップS110)、信号処理回路112および信号変換部220bが合成信号の信号処理を行う(ステップS111)。
【0058】
合成信号の音圧レベルが閾値以上であるならば(ステップS112:Yes)、所定の時間、音声出力を遮断し(ステップS113)、音圧レベルの測定に戻る(ステップS112)。音圧レベルが閾値未満であるならば(ステップS112:No)、この合成信号をスピーカ121から音声として出力し(ステップS114)、この音声と逆相の音声を逆相スピーカ122から出力する(ステップS115)。
【0059】
会話補助器(親機)100は、全ての会話補助器(子機)200の音声信号を用いた合成信号を信号変換部114b、通信部115b、115aを介して受信したならば(ステップS116)、信号処理回路112及び信号変換部114eが合成信号の信号処理を行う(ステップS117)。合成信号の音圧レベルが閾値以上であるならば(ステップS118:Yes)、所定の時間、音声出力を遮断し(ステップS119)、音圧レベルの測定に戻る(ステップS118)。音圧レベルが閾値未満であるならば(ステップS118:No)、この合成信号をスピーカ121から音声として出力し(ステップS120)、この音声と逆相の音声を逆相スピーカ122から出力し(ステップS121)、処理を終了する。
【0060】
上述してきたように、本実施形態1は、透明な仕切り板により仕切られた話者の会話スペースごとに会話補助器100、200a、200bがそれぞれ設けられ、会話補助器100、会話補助器200a及び会話補助器200bを通信可能に接続した会話システムであって、会話補助器100は、放物面反射器の凹部に設けられ、話者が発話する音声を集音するパラボラマイク111と、パラボラマイク111で集音された音声信号を他の会話補助器200a,200bに送信制御するとともに、会話補助器200a及び会話補助器200bは、会話補助器100から受信した音声信号を出力するスピーカ121と、スピーカ121により出力される音声の正相波形と逆相の音を出力する逆相スピーカ122とを備えるよう構成したので、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行うことができる。
【0061】
なお、上記の実施形態1では、会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200を用いて会話を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、会話補助器(親機)100及びインターネット等の部外回線を介して接続されたスマートフォンやPC等、又は、Bluetooth(登録商標)等の無線回線を介して接続されたヘッドフォン等を用いて会話を行うよう構成することもできる。
【0062】
[実施形態2]
ところで、上記の実施形態1では、会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200の間を、無線通信を介して接続する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。音声信号の合成を行う信号合成回路及び会話補助器(子機)の間を、有線通信を用いて接続するよう構成することもできる。本実施形態2では、信号合成回路及び会話補助器(子機)の間を、有線通信を用いて接続する構成について説明する。
【0063】
<実施形態2に係る会話補助器の概要>
まず、本実施形態2に係る会話システム及び会話補助器の概要について説明する。図10は、本実施形態2に係る会話補助器の概要を説明するための説明図である。図10に示すように、会話補助器(子機)200及び信号合成器300は有線通信により接続される。
【0064】
会話補助器(子機)200は、音声信号を信号合成器300に送信するとともに、信号合成器300から受信した合成信号を出力する。信号合成器300は、会話補助器(子機)200から受信した音声信号を合成して、会話補助器(子機)200に送信する。
【0065】
例えば、3人の会議参加者X、Y及びZが、それぞれに会話補助器(子機)200a、200b及び200cを用いて会話を行う場合、それぞれの会話補助器(子機)200に入力された音声信号を音声信号X2、Y2及びZ2とする。
【0066】
それぞれの会話補助器(子機)200から音声信号X2、Y2及びZ2は信号合成器300に送信され、信号合成器300は、受信した音声信号X2、Y2及びZ2を用いて、合成信号(Y2、Z2)、(X2、Z2)及び(X2、Y2)を合成し、それぞれを会話補助器(子機)200a、200b及び200cに送信する。
【0067】
会話補助器(子機)200aは受信した合成信号(Y2、Z2)を、会話補助器(子機)200bは受信した合成信号(X2、Z2)を、会話補助器(子機)200cは受信した合成信号(X2、Y2)をそれぞれ出力する。
【0068】
図11は、図10に示した会話補助器(子機)200の構成を示す図である。図11に示すように、会話補助器(子機)200は、パラボラマイク111、通信部115、信号制御回路113、アンプ回路132、ACレベルメータ133を備える。
【0069】
<信号合成器300の構成>
次に、図10に示した信号合成器300の構成について説明する。図12は、図10に示した信号合成器300の構成を示す図である。図12に示すように、信号合成器300は、通信部301及び信号合成回路302を有する。
【0070】
通信部301は、会話補助器(子機)200との間で、有線回線を介してアナログ音声通信を行なうためのインタフェース部である。
【0071】
信号合成回路302は、音声信号の合成を行う回路である。信号合成回路302は、複数の会話補助器(子機)200から受け取った複数(例えば、N個)の音声信号から1個を選択し、この音声信号以外の全て(N-1個)の音声信号を合成し、選択した音声信号の送信元の通信部301に向け合成した音声信号を送る。信号合成回路302は、N個全ての音声信号に対して合成信号を生成する。
【0072】
<実施形態2に係る信号合成器300の処理手順>
次に、本実施形態2に係る信号合成器300の処理手順について説明する。図13は、本実施形態2に係る信号合成器300の処理手順を示すフローチャートである。
【0073】
まず、信号合成回路302は、通信部301から音声信号X2、Y2及びZ2を受け取ったならば(ステップS201)、音声信号を(Y2、Z2)、(X2、Z2)及び(X2、Y2)の組み合わせに区分して合成する(ステップS202)。
【0074】
信号合成回路302は、合成信号(Y2、Z2)の送信先を会話補助器(子機)200aとして通信部301aに受け渡し(ステップS203)、合成信号(X2、Z2)の送信先を会話補助器(子機)200bとして通信部301bに受け渡し(ステップS204)、合成信号(X2、Y2)の送信先を会話補助器(子機)200cとして通信部301cに受け渡し(ステップS205)、処理を終了する。
【0075】
このように、本実施形態2に係る会話システムは、会話補助器200a~200cとそれぞれ有線接続された信号合成器300をさらに備え、信号合成器300は、会話補助器200aに音声を送信する場合には、自装置以外の会話補助器200b,200cの音声信号を合成し、合成した音声信号を会話補助器200aに送信するよう構成したので、3名以上であっても、円滑な会話を行うことができる。
【0076】
なお、上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る会話システム、会話補助器及び会話補助方法は、仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行う場合に適している。
【符号の説明】
【0078】
100 会話補助器(親機)
110 本体部
111 パラボラマイク
112 信号処理回路
113 信号制御回路
114 信号変換部
115 通信部
116 音量調節ツマミ
117 ステータスLED
120 スピーカ部
121 スピーカ
122 逆相スピーカ
130 制御部
131 信号合成回路
132 アンプ回路
133 ACレベルメータ
200 会話補助器(子機)
210 本体部
220 信号変換部
300 信号合成器
301 通信部
302 信号合成回路
【要約】
【課題】仕切り板を設けた既存の会話スペースに簡易に導入することができ、ハウリングを防止しつつ安定な音声会話を行うことを課題とする。
【解決手段】会話補助器(親機)100及び会話補助器(子機)200に入力された音声信号は、他の会話補助器で音声として出力される。例えば、会話補助器(親機)100に入力された音声信号は、他の会話補助器、すなわち、会話補助器(子機)200a及び会話補助器(子機)200bから音声として出力される。また、複数者が同時に会話した場合には、自器以外に入力された音声信号が会話補助器(親機)100で合成され、この合成信号が自器において音声として出力される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13