IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

特許7124210活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置
<>
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図1
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図2
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図3
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図4
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図5
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図6
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図7
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図8
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図9
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図10
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図11
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図12
  • 特許-活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20220816BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20220816BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/036
G02B6/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021512079
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014337
(87)【国際公開番号】W WO2020203900
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2019065619
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019174773
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】北原 倫太郎
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-008114(JP,A)
【文献】特開2003-069116(JP,A)
【文献】特開2000-252558(JP,A)
【文献】特開平03-048225(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142010(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/075364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/067
G02B 6/036
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを備える活性元素添加光ファイバであって、
前記コアの半径をdとし、前記コアの径方向における中心軸からの距離をrとする場合において、前記コアは、0≦r≦0.65dの第1領域と、当該第1領域を囲み0.65d<r≦dの第2領域とを含み、
前記第1領域には、励起光により励起される活性元素が少なくとも一部に添加され、
前記第2領域には、前記活性元素が非添加とされ、
下記式(1)で示される形状指数κが0.99以上1未満である
ことを特徴とする活性元素添加光ファイバ。
但し、E(r)は、前記活性元素添加光ファイバを伝搬する光の電界分布であり、Ei(r)は前記コアの屈折率分布を平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。
【請求項2】
前記活性元素は、前記第1領域における前記中心軸から径方向の所定の領域まで添加され、
前記所定の領域の半径をraとする場合に、0≦r≦0.1raの領域における前記活性元素の濃度の平均値は、0.1ra<r<0.9raの領域における前記活性元素の濃度の平均値より高く、
前記所定の領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に少なくとも1カ所存在する
ことを特徴とする請求項1に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項3】
0.9ra+0.1d<r≦0.9dの領域の屈折率分布の標準偏差が0.01以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項4】
前記コアを隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアのうち0.62d以下の領域には前記クラッドに対する比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、
前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項5】
前記極大値が0.45d以上0.62d以下の領域に存在する
ことを特徴とする請求項4に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項6】
前記コアを隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアのうち0.1d以上0.83d以下の領域には前記クラッドに対する比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、
前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項7】
前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値は、0.10%以上であり、
前記コアのうち0.45d以上の領域には前記比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、
前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項8】
前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値は、0%よりも大きく0.18%以下であり、
前記コアのうち0.55d以下の領域には前記比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、
前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項9】
前記第1領域全体に亘って前記活性元素が添加される
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項10】
LP02モードの光の理論カットオフ波長が1760nmよりも短い
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項11】
前記コアを囲むクラッドの直径が430μm以下である
ことを特徴とする請求項10に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項12】
前記活性元素はイッテルビウムである
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項13】
前記コアの直径に対して前記イッテルビウムが添加される領域の直径の比率が、0.55以上0.65以下である
ことを特徴とする請求項12に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバと、
前記活性元素を励起する光を出射する光源と、
を備える
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバと、
前記活性元素添加光ファイバの一方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合するコアを有する第1光ファイバと、
前記活性元素添加光ファイバの他方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合するコアを有する第2光ファイバと、
を備え、
前記第1光ファイバの前記コアは、励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1ミラーを有し、
前記第2光ファイバの前記コアは、前記第1ミラーが反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーを有し、
前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバのそれぞれにおける下記式(2)で示される形状指数κ'が0.99以上1未満である
ことを特徴とする共振器。
但し、r'は前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの中心軸を0とする場合の径方向における距離を示し、E'(r')は、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを伝搬するそれぞれの光の電界分布であり、E'i(r')は前記第1光ファイバの前記コアの屈折率分布及び前記第2光ファイバの前記コアの屈折率分布をそれぞれ平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバをそれぞれ伝搬する光の電界分布である。
【請求項16】
請求項15に記載の共振器と、
前記活性元素を励起する光を出射する光源と、
を備える
ことを特徴とするファイバレーザ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高く、小さなビームスポットとなる光が得られることから、レーザ加工分野、医療分野等の様々な分野において用いられている。この様なファイバレーザ装置では、出射する光の高出力化がなされている。しかし、光ファイバ内における光のパワー密度が高くなると、誘導ラマン散乱に起因する光の波長変換が生じ易くなり、意図しない波長の光が出射する場合がある。この場合、被加工体等で反射する光が再びファイバレーザ装置に戻って増幅されることにより、設計上増幅されるべき波長の光の増幅が不安定となり、出力が不安定となる場合がある。
【0003】
光ファイバにおける誘導ラマン散乱を抑制する手段として、コアを伝搬する光の実効断面積を大きくすることが挙げられる。この実効断面積を大きくする方法の一つとして、コアの直径を大きくすることが挙げられる。従って、光ファイバにおける誘導ラマン散乱を抑制するために、例えば、光をフューモードで伝搬可能なコアを有する光ファイバが用いられる。
【0004】
ファイバレーザ装置では、集光性の観点等から出射する光のビーム品質が優れていることが好ましく、そのため上記のように光をフューモードで伝搬可能なコアを有する光ファイバを用いることにより光の実効断面積を大きくする場合であっても、基本モード以外のモードの光が励振されることを抑えたいという要請がある。なお、ビーム品質は、例えば、M(エムスクエア)等で示される。そこで、下記特許文献1に記載の活性元素添加光ファイバのように、光をフューモードで伝搬可能なコアを有する活性元素添加光ファイバを用いつつ、高次モードの光の増幅を抑制することが行われている。
【0005】
【文献】特許第5124701号公報
【発明の概要】
【0006】
しかし、よりビーム品質の劣化を抑制して光を増幅し得る活性元素添加光ファイバが求められている。そこで、本発明は、ビーム品質の劣化を抑制して光を増幅し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、コアを備える活性元素添加光ファイバであって、前記コアの半径をdとし、前記コアの径方向における中心軸からの距離をrとする場合において、前記コアは、0≦r≦0.65dの第1領域と、当該第1領域を囲み0.65d<r≦dの第2領域とを含み、前記第1領域には、励起光により励起される活性元素が少なくとも一部に添加され、前記第2領域には、前記活性元素が非添加とされ、下記式(1)で示される形状指数κが0.99以上1未満であることを特徴とする。
但し、E(r)は、前記活性元素添加光ファイバを伝搬する光の電界分布であり、Ei(r)は前記コアの屈折率分布を平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。
【0008】
本発明者は、上記式(1)で示される形状指数κが0.99以上1未満であり、上記第1領域の少なくとも一部に活性元素が添加され、第2領域に活性元素が添加されない活性元素添加光ファイバによれば、LP01モードの光が増幅され、LP11モード以上の高次モードの光のパワーが抑制された光を出射し得ることを見出した。活性元素添加光ファイバは、一般的に他の光ファイバから光が入射されて当該光が増幅される。上記のように形状指数κが0.99以上1未満であることで、活性元素添加光ファイバのコアに光が入射する際にLP02モード以上の軸対称モードの光が励振されにくいと考えられる。また、第1領域の少なくとも一部に活性元素が添加されることで、LP01モードの光が増幅され、第2領域に活性元素が添加されないことで、LP11モード以上の高次モードの光が励振される場合であっても、当該LP11モード以上の高次モードの光が増幅されることが抑制されると考えられる。従って、本発明の活性元素添加光ファイバによれば、ビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得る。
【0009】
また、前記活性元素は、前記第1領域における前記中心軸から径方向の所定の領域まで添加され、前記所定の領域の半径をraとする場合に、0≦r≦0.1raの領域における前記活性元素の濃度の平均値は、0.1ra<r<0.9raの領域における前記活性元素の濃度の平均値より高く、前記所定の領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に少なくとも1カ所存在することが好ましい。
【0010】
上記のように0≦r≦0.1raの領域における活性元素の濃度の平均値が0.1ra<r<0.9raの領域における前記活性元素の濃度の平均値より高いことで、コアの中心における強度の高い基本モードを優先的に増幅し得る。さらに、所定の領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に少なくとも1カ所存在することで、コアを伝搬する光の実効断面積が小さくなりすぎることを抑制し非線形光学現象の発生を抑制し得る。
【0011】
この場合、0.9ra+0.1d<r≦0.9dの領域の屈折率分布の標準偏差が0.01以下であることが好ましい。
【0012】
このようにコアの外周部における屈折率のばらつきが小さいことで、上記のように所定の領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に存在する場合であっても、上記式(1)を容易に満たし得る。
【0013】
また、この活性元素添加光ファイバは、前記コアを隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアのうち0.62d以下の領域には前記クラッドに対する比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以下であってもよい。
【0014】
なお、光ファイバが、コアを隙間なく囲む内側クラッドと、当該内側クラッドを隙間なく囲む外側クラッドとを備える場合、内側クラッドは単にクラッドと呼ばれることがある。
【0015】
また、極大値は複数存在しても良い。ここで、極大値が複数存在する場合における「極大値以下」とは、複数の極大値のうち最も大きな比屈折率差の値を示す極大値以下を意味する。
【0016】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように構成することで、上記形状指数κを0.99以上にすることができる。
【0017】
この場合、前記極大値が0.45d以上0.62d以下の領域に存在してもよい。
【0018】
このような構成にすることで、ステップインデックスの光ファイバに比べて、実効屈折率を大きくし得る。
【0019】
あるいは、この活性元素添加光ファイバは、前記コアを隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアのうち0.1d以上0.83d以下の領域には前記クラッドに対する比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以上であってもよい。
【0020】
また、この場合にも、極大値は複数存在しても良い。ここで、極大値が複数存在する場合における「極大値以上」とは、複数の極大値のうち最も大きな比屈折率差の値を示す極大値以上を意味する。
【0021】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように構成する場合でも、上記形状指数κを0.99以上にすることができる。
【0022】
また、この活性元素添加光ファイバは、前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値は、0.10%以上であり、前記コアのうち0.45d以上の領域には前記比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以下であってもよい。
【0023】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように構成することで、上記実効断面積を大きくすることができる。
【0024】
あるいは、この活性元素添加光ファイバは、前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値は、0%よりも大きく0.18%以下であり、前記コアのうち0.55d以下の領域には前記比屈折率差の極大値が少なくとも1つ存在し、前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記比屈折率差の平均値は前記極大値以上であってもよい。
【0025】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように構成することで、上記実効断面積を大きくすることができる。
【0026】
また、前記第1領域全体に亘って前記活性元素が添加されることが好ましい。
【0027】
このように活性元素が添加されることで、LP01モードの光をより高い増幅率で増幅することができる。
【0028】
また、LP02モードの光の理論カットオフ波長が1760nmよりも短いことが好ましい。
【0029】
LP02モードの光の理論カットオフ波長を上記のようにすることで、例えば、活性元素添加光ファイバを直径120mmで曲げて使用する場合にLP01モードの光を伝搬させつつもLP02モードの光を漏洩させることができる。従って、このように使用することで、出射する光にLP02モード以上の高次モードの光が含まれることを抑制することができる。
【0030】
また、この場合、前記コアを囲むクラッドの直径が430μm以下であることが好ましい。
【0031】
このような石英ガラスから成るクラッドがこのような直径とされることで、例えば、活性元素添加光ファイバを直径120mmで曲げて使用する場合であっても、破断確率が上がることを抑制でき、長期的に高い信頼性を期待することができる。
【0032】
前記活性元素はイッテルビウムであることとしても良い。
【0033】
この場合、前記コアの直径に対して前記イッテルビウムが添加される領域の直径の比率が、0.55以上0.65以下であることが好ましい。
【0034】
また、上記課題を解決するため、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかの活性元素添加光ファイバと、前記活性元素を励起する光を出射する光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0035】
上記のようにこの活性元素添加光ファイバではビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得るため、このファイバレーザ装置によれば、ビーム品質の劣化が抑制された光が出射し得る。
【0036】
また、上記課題を解決するため、本発明の共振器は、上記のいずれかの活性元素添加光ファイバと、前記活性元素添加光ファイバの一方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合するコアを有する第1光ファイバと、前記活性元素添加光ファイバの他方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合するコアを有する第2光ファイバと、を更に備え、前記第1光ファイバの前記コアは、励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1ミラーを有し、前記第2光ファイバの前記コアは、前記第1ミラーが反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーを有し、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバのそれぞれにおける下記式(2)で示される形状指数κ'が0.99以上1未満であることを特徴とするものである。
但し、r'は前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバの中心軸を0とする場合の径方向における距離を示し、E'(r')は、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを伝搬するそれぞれの光の電界分布であり、E'i(r')は前記第1光ファイバの前記コアの屈折率分布及び前記第2光ファイバの前記コアの屈折率分布をそれぞれ平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバをそれぞれ伝搬する光の電界分布である。
【0037】
また、上記課題を解決するため、本発明のファイバレーザ装置は、上記共振器と、前記活性元素を励起する光を出射する光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0038】
上記共振器、及び、この共振器を備えるファイバレーザ装置によれば、第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'が0.99以上1未満であることで、活性元素添加光ファイバと第1光ファイバ、及び、活性元素添加光ファイバと第2光ファイバの間を行き来する光において、LP02モード以上の軸対称モードの光が励振されることが抑制される。従って、ビーム品質の劣化が抑制された光が出射し得る。
【0039】
以上のように、本発明によれば、ビーム品質の劣化を抑制して光を増幅し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
図2】活性元素添加光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
図3】活性元素添加光ファイバのコアに添加される活性元素の濃度分布を示す図である。
図4】活性元素添加光ファイバのコアの屈折率分布の様子を示す図である。
図5】第1光ファイバのコアの屈折率分布を示す図である。
図6】ファイバレーザ装置の変形例を示す図である。
図7】クラッドの直径と破断確率との関係を示す図である。
図8】実施例7の活性元素添加光ファイバのコアの屈折率分布の様子を示す図である。
図9】実施例7の活性元素添加光ファイバのコアに添加される活性元素の濃度分布を示す図である。
図10】コアにおける比屈折率差の極大値の位置と形状指数との関係の一例を示す図である。
図11】コアにおける比屈折率差の極大値の位置と形状指数との関係の他の例を示す図である。
図12】本発明の活性元素添加光ファイバの実効断面積とステップ型光ファイバの実効断面積との差と、本発明の活性元素添加光ファイバのコアにおける比屈折率差の極大値の位置との関係の一例を示す図である。
図13】本発明の活性元素添加光ファイバの実効断面積とステップ型光ファイバの実効断面積との差と、本発明の活性元素添加光ファイバのコアにおける比屈折率差の極大値の位置との関係の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る光ファイバ及びレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0042】
図1は、本実施形態に係るレーザ装置を示す図である。図1に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置1は、共振器型のファイバレーザ装置とされ、活性元素添加光ファイバ10と、励起光源20と、第1光ファイバ30と、第1光ファイバ30に設けられる第1FBG35と、第2光ファイバ40と、第2光ファイバ40に設けられる第2FBG45と、光コンバイナ50と、第3光ファイバ60と、を主な構成として備える。
【0043】
<活性元素添加光ファイバの構成>
図2は、図1に示す活性元素添加光ファイバ10の断面の構造を示す断面図である。図2に示すように活性元素添加光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲む内側クラッド12と、内側クラッド12の外周面を被覆する外側クラッド13と、外側クラッド13を被覆する被覆層14とを主な構成として備える。つまり、活性元素添加光ファイバ10は、いわゆるダブルクラッド光ファイバである。内側クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低く、外側クラッド13の屈折率は内側クラッド12の屈折率よりも低くされている。
【0044】
コア11は、第1領域11aと第2領域11bとを有する。第1領域11aは、中心軸Cからコア11の半径の65%までの領域とされる。以下、コア11の半径をdとし、コアの径方向における中心軸Cからの距離をrとして説明する。この場合において、第1領域11aは、0≦r≦0.65dの領域とされる。また、第2領域11bは、第1領域11aを囲み、第1領域11aの外周面からコア11の外周面までの領域とされる。つまり、第2領域11bは、第1領域を囲み0.65d<r≦dの領域とされる。
【0045】
このようなコア11には、励起光源20から出射される励起光で励起される活性元素が一部に添加されている。図3は、活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加される活性元素の濃度分布を示す図である。図3に示すように、第1領域11aは、上記活性元素が少なくとも一部に添加される石英ガラスから成り、第2領域11bは、上記活性元素が非添加の石英ガラスから成る。本実施形態では、第1領域11aの全体に亘って活性元素が添加される。従って、活性元素が径方向の所定の領域に添加されているとすると、本実施形態では、第1領域11aが当該所定の領域となる。以下、所定の領域の半径をraとして説明する。本実施形態では、ra=0.65dとなる。
【0046】
なお、活性元素が添加されている領域とは、活性元素が0.5wt%以上添加されている領域をさし、活性元素添加光ファイバの製造時における活性元素の拡散等により、活性元素が0.5wt%より低い濃度で検出される領域は、活性元素が添加されている領域と言えず、活性元素が非添加の領域である。
【0047】
本実施形態では、第1領域11aの中心近傍における活性元素の濃度が、その周りの活性元素が添加される領域での当該活性元素の平均濃度よりも高くされる。この中心近傍とは、例えば、活性元素が添加される領域の10%の半径の領域とされ、図3の場合、0≦r≦0.1raの領域における活性元素の濃度の平均値は、0.1ra<r<0.9raの領域における前記活性元素の濃度の平均値より高くされる。
【0048】
本実施形態では、第1領域11aに添加される活性元素がイッテルビウム(Yb)とされ、第1領域11aには、フォトダークニングに対する耐性を高めるためにアルミニウム及びリンが更に添加されている。図4は、活性元素添加光ファイバ10のコア11の屈折率分布の様子を示す図である。このような添加物およびその濃度分布により、第1領域11aは図4に示す比屈折率分布とされる。また、第2領域11bには、例えば屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等のドーパントが添加されている。
【0049】
なお、屈折率を調整するために、フッ素(F)やホウ素(B)等のドーパントが少なくとも一部に添加されても良い。また、本実施形態と異なるが、第1領域11aに添加される活性元素はイッテルビウム以外の活性元素であっても良い。このような活性元素としては、希土類元素として、イッテルビウムの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられ、さらに活性元素として、希土類元素の他にビスマス(Bi)等を挙げることができる。
【0050】
図4に示すように、コア11は、中心軸Cから内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となるまでの領域であり、内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となる部分の内側とされる。図4には、比屈折率差が0.05%である位置、すなわちコア11の外周面が破線で示されている。なお、このようにコア11の領域が定義される理由は、比屈折率差が0.05%未満の領域の形状が多少変わっても、活性元素添加光ファイバ10の光学特性に与える影響が殆どないためである。
【0051】
本実施形態では、第2領域11bでは、内周側から外周近傍までの領域において、概ね一定の比屈折率差とされ、外周近傍の領域において内側クラッド12に向けて比屈折率差が低下している。このため、本実施形態では、0.9ra+0.1d<r≦0.9dの領域の屈折率分布の標準偏差が0.01以下とされる。
【0052】
また、第1領域11aでは、比屈折率差が第2領域11bの内周側の比屈折率差よりも低い部分と高い部分とがある。本実施形態の活性元素添加光ファイバ10の第1領域11aでは、比屈折率差が第2領域11bの内周側の比屈折率差よりも低い部分及び比屈折率差が第2領域11bの内周側の比屈折率差よりも高い部分が、径方向にそれぞれ少なくとも2カ所存在する。また、中心軸Cと第1領域11aの外周面との中間点から第1領域11aの外周面との間に、第1領域における比屈折率差の平均値よりも高い比屈折率差の領域が少なくとも1カ所存在する。つまり、所定の領域である第1領域11aにおける屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に存在することになる。図4に示すように、本実施形態では、この0.5ra<r<raの領域は、屈折率の極大値Nmax、すなわち、比屈折率差の極大値Nmaxが1つ存在する屈折率分布を有している。より具体的には、極大値Nmaxとは、第1領域11aにおける屈折率の平均値γよりも高い屈折率を有する領域の径方向における長さγwが、活性元素添加光ファイバ10を伝搬する光の波長の1/10以上ある領域における屈折率の極大値をいう。なお、このような極大値Nmaxの数は1つに限定されない。
【0053】
また、第1領域11aの外周近傍の領域では、第1領域11aの外周から内周側に向かって比屈折率差が低下する。
【0054】
このような比屈折率差の分布を有する活性元素添加光ファイバ10の形状指数κは、0.99以上1未満とされる。形状指数κは、ステップインデックス型の屈折率分布からどの程度異なる屈折率分布であるかを示す指数であり、下記式(3)で定義される。
【0055】
但し、E(r)は、距離rにおける活性元素添加光ファイバ10を伝搬する光の電界値であり、つまり活性元素添加光ファイバ10を伝搬する光の電界分布である。Ei(r)は、コア11の屈折率分布を平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。
【0056】
式(3)より、形状指数κが1である場合、当該形状指数κが示す光ファイバはステップインデックス型の屈折率分布である。そして、形状指数κが1から小さくなる程、当該形状指数κが示す光ファイバはステップインデックス型の屈折率分布と異なる屈折率分布を有することになる。光ファイバの製造上、形状指数κを1にすることは困難であるが、本実施形態のように形状指数κが0.99以上1未満の光ファイバは容易に製造することができる。
【0057】
上記形状指数κは、コア11に添加される上記のドーパントの濃度を径方向で調節することで変化される。従って、本実施形態の場合、イッテルビウムの濃度が径方向で調節されても良く、ホウ素が添加される場合、ホウ素の濃度が径方向で調節されても良い。また、アルミニウムとリンとの濃度差は屈折率に影響を与えるため、当該濃度差が径方向で調節されてもよい良い。また、リンの濃度分布が径方向で調節されても良い。
【0058】
また、内側クラッド12は、概ね一定の屈折率であり、例えば、何らドーパントが添加されない石英や、屈折率を調整するためのフッ素や他のドーパントが添加された石英から成る。また、外側クラッド13は、樹脂または石英ガラスから成り、樹脂としては例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂が挙げられ、石英としては例えば内側クラッド12よりもさらに屈折率が低くなるようにフッ素等のドーパントが添加された石英が挙げられる。また、被覆層14を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂が挙げられ、外側クラッド13が樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる樹脂とされる。
【0059】
この活性元素添加光ファイバ10は、フューモードファイバであり、コア11を少なくとも波長1070nmの光が伝搬する場合に、当該光は、基本モードであるLP01モードの光の他に少なくともLP02モードの光が伝搬することができる。従って、活性元素添加光ファイバ10がシングルモードファイバである場合と比べて、光の実効断面積を大きくすることができる。なお、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10は、波長1030nmから1090nmのいずれかの波長の光が伝搬する場合であっても、基本モードであるLP01モードの光の他に少なくともLP02モードの光が伝搬することができる。
【0060】
<活性元素添加光ファイバ以外の構成>
第1光ファイバ30は、コアの構成が活性元素添加光ファイバ10のコア11の構成と異なるダブルクラッド光ファイバとされる。第1光ファイバ30は、活性元素添加光ファイバ10の一方に端部に接続される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11と第1光ファイバ30のコアとが光学的に結合され、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第1光ファイバ30の内側クラッドとが光学的に結合される。
【0061】
第1光ファイバ30のコアは、活性元素が添加されていない点において、活性元素添加光ファイバ10のコア11と主に異なる。第1光ファイバ30は、フューモードファイバとされ、活性元素添加光ファイバ10のコア11が伝搬する光と同様の光を伝搬する。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬する各LPモードの光は、そのまま第1光ファイバ30のコアを伝搬することができる。なお、第1光ファイバ30のコアの定義は活性元素添加光ファイバ10のコア11の定義と同様とされる。
【0062】
図5は、第1光ファイバ30のコアの屈折率分布を示す図である。第1光ファイバ30のコアは、中心軸C'から外周近傍までの領域において、活性元素添加光ファイバ10と比べて比屈折率差の変化が小さく、外周近傍の領域において内側クラッドに向けて比屈折率差が低下している。このような屈折率分布を有するため、第1光ファイバ30の形状指数κ'は、0.99以上1未満とされる。形状指数κ'は、下記式(4)で定義される。
【0063】
但し、r'は第1光ファイバ30の中心軸C'を0とする場合の径方向における距離を示す。E'(r')は、距離r'における第1光ファイバ30を伝搬する光の電界値であり、つまり第1光ファイバ30を伝搬する光の電界分布である。E'i(r')は第1光ファイバ30のコアの屈折率分布を平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。この形状指数κ'は、コア11に添加されるドーパントの濃度を径方向で調節することで変化される。
【0064】
第1光ファイバ30は図5で示す屈折率分布を有し、第1光ファイバ30には活性元素が非添加であるため、第1光ファイバ30は、例えば、活性元素添加光ファイバ10のコア11における第2領域11bと同様の材料から構成される。また、本実施形態における第1光ファイバ30のコア以外の構成は、活性元素添加光ファイバ10のコア11以外の構成と同様とされる。
【0065】
また、上記のように第1光ファイバ30には第1FBG35が設けられている。こうして、第1FBG35は活性元素添加光ファイバ10の一方側に配置され、活性元素添加光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第1FBG35は、コアにおける第1FBG35以外の部分よりも屈折率が高い高屈折率部と、コアにおける第1FBG35以外の部分と同様の屈折率である低屈折率部とが、コアの長手方向に沿って周期的に繰り返されている。この高屈折率部の繰り返しパターンは、例えば高屈折率部となる部位に紫外線が照射されて形成される。この様にして形成される第1FBG35は、活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加されている活性元素が励起状態とされたときに放出する光のうち所定波長を含む光を反射する第1ミラーとして構成されている。例えば、本実施形態のように活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加される活性元素がイッテルビウムである場合、上記所定波長は、例えば、波長1070nmとされる。また、第1FBG35の反射率は、後述の第2FBG45の反射率よりも高く、上記所定波長を含む光を例えば99%以上で反射する。
【0066】
第2光ファイバ40は、外側クラッドを有さない点において、第1光ファイバ30と異なり、第2光ファイバ40の他の構成は第1光ファイバ30の外側クラッド以外の構成と同様とされる。従って、第2光ファイバ40は、コアをクラッドが囲み、当該クラッドが被覆層で被覆される構成である。第2光ファイバ40は、活性元素添加光ファイバ10の他方に端部に接続される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11と第2光ファイバ40のコアとが光学的に結合され、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第2光ファイバ40のクラッドとが光学的に結合される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬するフューモードの光は、フューモードのまま第2光ファイバ40のコアを伝搬する。なお、図1に示すファイバレーザ装置1の構成の場合、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第2光ファイバ40のクラッドとが光学的に結合されなくても良い。
【0067】
第2光ファイバ40のコアの比屈折率分布は、図5に示す第1光ファイバ30のコアの比屈折率分布と概ね同じとされる。このため、第2光ファイバ40のコアの形状指数κ'は、0.99以上1未満とされ、上記式(4)で示される。ただし、上記式(4)が第2光ファイバ40の形状指数κ'を示す場合、r'は第2光ファイバ40の中心軸C'を0とする場合の径方向における距離を示し、E'(r')は、第2光ファイバ40を伝搬する光の電界分布であり、E'i(r')は第2光ファイバ40のコアの屈折率分布を平均化する場合のステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。
【0068】
また、第2光ファイバ40のコアには、上記のように第2FBG45が設けられている。こうして、第2FBG45は活性元素添加光ファイバ10の他方側に配置され、活性元素添加光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第2FBG45は、第1FBG35と同様に高屈折率部と低屈折率部とが周期的に繰り返されて形成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する所定波長を含む光を第1FBG35よりも低い反射率で反射する第2ミラーとして構成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する光が入射する場合に、この光を例えば10%程度の反射率で反射する。こうして、第1FBG35と活性元素添加光ファイバ10と第2FBG45とで、共振器が形成されている。また、本実施形態では第2光ファイバ40の活性元素添加光ファイバ10側と反対側の他端には特に何も接続されていないが、第2光ファイバ40のコアよりも大径のガラスロッド等が接続されても良い。
【0069】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。本実施形態では、レーザダイオード21は、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり中心波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は光ファイバ25に接続されており、レーザダイオード21から出射する励起光は光ファイバ25を例えばマルチモード光として伝搬する。
【0070】
それぞれの光ファイバ25は、光コンバイナ50において、第1光ファイバ30の一端に接続されている。具体的には、それぞれの光ファイバ25のコアが第1光ファイバ30の内側クラッドと光学的に結合するように、それぞれの光ファイバ25のコアと第1光ファイバ30の内側クラッドとが接続されている。従って、それぞれのレーザダイオード21が出射する励起光は、光ファイバ25を介して第1光ファイバ30の内側クラッドに入射して、第1光ファイバ30の内側クラッドから活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12に入射する。
【0071】
第3光ファイバ60は、コア及びクラッドを有する光ファイバとされる。第3光ファイバ60のコアは、光コンバイナ50において第1光ファイバ30のコアに接続されている。従って、第1光ファイバ30のコアを光コンバイナ50に向かって伝搬する光は、第3光ファイバ60のコアに入射する。また、第3光ファイバ60の第1光ファイバ30と接続される側と反対側には、光を熱に変換する終端部65が設けられている。
【0072】
次に、ファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0073】
まず、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射される。この励起光は光ファイバ25から、第1光ファイバ30の内側クラッドを介して、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12に入射して、当該内側クラッド12を主に伝搬する。内側クラッド12を伝搬する励起光は、コア11を通過する際にコア11に添加されている活性元素を励起する。励起状態とされた活性元素は、所定波長を含む波長帯域の自然放出光を放出する。この自然放出光を起点として、第1FBG35及び第2FBG45で共通して反射される所定波長を含む光が、第1FBG35と第2FBG45との間を共振する。共振する光が活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬するときに、励起状態の活性元素が誘導放出を起こして、共振する光が増幅される。共振する光のうち、一部の光は第2FBG45を透過して、第2光ファイバ40から出射する。そして、第1FBG35と活性元素添加光ファイバ10と第2FBG45とを含む共振器内における利得と損失が等しくなったところでレーザ発振状態となり、第2光ファイバ40から一定のパワーの光が出射する。
【0074】
なお、活性元素添加光ファイバ10側から第1光ファイバ30に伝搬し第1FBG35を透過する光の大部分は、終端部65で熱に変換されて消滅する。
【0075】
ところで、上記のように活性元素添加光ファイバ10、第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40はそれぞれLP02モードの光を伝搬可能なフューモードファイバとされる。従って、第1光ファイバ30と活性元素添加光ファイバ10との接続点又は接続点近傍、及び、第2光ファイバ40と活性元素添加光ファイバ10との接続点又は接続点近傍において、LP01モードの光に加えて、LP02モード以上の軸対称モードの光が励振され得る。しかし、第2光ファイバ40から出射する光は、LP11モード以上の高次モードの光の増幅が抑制された光とされ得る。従って、本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、ビーム品質の劣化が抑制された光が出射され得る。
【0076】
この理由の一つとして、本実施形態では、活性元素添加光ファイバ10の上記式(3)で示される形状指数κが0.99以上1未満とされ、第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40の上記式(4)で示される形状指数κ'が0.99以上1未満とされることが挙げられる。この構成により、第1光ファイバ30と活性元素添加光ファイバ10との接続点又は接続点近傍、及び、第2光ファイバ40と活性元素添加光ファイバ10との接続点又は接続点近傍において、LP02モード以上の軸対称モードの光の励振が抑制されていると考えられる。また、活性元素添加光ファイバ10を光が伝搬する際にもLP02モード以上の軸対称モードの光の励振が抑制され、主にLP01モードの光が励振されていると考えられる。また、上記理由の他の一つとして、第2領域11bに活性元素が添加されないことが挙げられる。この構成により、活性元素添加光ファイバ10においてLP11モード以上の高次モードの光の増幅がLP01モードの光の増幅と比べて抑制されると考えられる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、コア11は0≦r≦0.65dの第1領域11aと、第1領域11aを囲み0.65d<r≦dの第2領域11bとを含む。第1領域11aには、励起光により励起される活性元素が少なくとも一部に添加され、第2領域11bには、活性元素が非添加とされ、上記式(3)で示される形状指数κが0.99以上1未満である。
【0078】
このように形状指数κが0.99以上1未満であることで、活性元素添加光ファイバ10のコア11に光が入射する際及び当該コアを光が伝搬する際にLP02モード以上の軸対称モードの光が励振されにくいと考えられる。また、第1領域11aの少なくとも一部に活性元素が添加されることで、LP01モードの光が増幅され、第2領域11bに活性元素が添加されないことで、LP11モード以上の高次モードの光が励振される場合であっても、当該LP11モード以上の高次モードの光が増幅されることが抑制されると考えられる。従って、本発明の活性元素添加光ファイバ10によれば、ビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得る。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、0≦r≦0.1raの領域における活性元素の濃度の平均値が0.1ra<r<0.9raの領域における前記活性元素の濃度の平均値より高い。このため、コア11の中心における強度の高い基本モードを優先的に増幅し得る。さらに、活性元素が添加される所定の領域である第1領域11aにおける屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に存在する。このため、コア11を伝搬する光の実効断面積が小さくなりすぎることを抑制し非線形光学現象の発生を抑制し得る。
【0080】
さらに本実施形態では、0.9ra+0.1d<r≦0.9dの領域の屈折率分布の標準偏差が0.01以下である。このようにコアの外周部における屈折率のばらつきが小さいことで、上記のように所定の領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率の領域が0.5ra<r<raの領域に存在する場合であっても、上記式(3)を容易に満たし得る。従って、ビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得る活性元素添加光ファイバ10を容易に実現し得る。
【0081】
また、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、第1領域11a全体に亘って活性元素が添加される。このため、第1領域11aの一部のみに活性元素が添加される場合と比べて、LP01モードの光をより高い増幅率で増幅することができる。
【0082】
以上、本発明について実施形態を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されて解釈されるものではなく、本発明の目的を達成する範囲において適宜構成を変更することができる。
【0083】
例えば、上記実施形態の活性元素添加光ファイバ10のLP02モードの光の理論カットオフ波長は1760nmよりも短いことが好ましい。LP02モードの光の理論カットオフ波長をこのようにすることで、例えば、活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げて活性元素添加光ファイバ10に1070nmの光を伝搬させる場合に、この直径120mmに曲げられた活性元素添加光ファイバ10の部位において、LP02モードのカットオフ波長を1070nmより短くすることができ、LP01モードの光を伝搬させつつもLP02モードの光を漏洩させることができる。図6は、ファイバレーザ装置1の変形例を示す図である。具体的には、このように活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げた部位を有するファイバレーザ装置を示す図である。なお、図6の説明において、上記実施形態で説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。図6のファイバレーザ装置1では、活性元素添加光ファイバ10のLP02モードの光の理論カットオフ波長は1760nmよりも短く、活性元素添加光ファイバ10が直径120mmで曲げられた屈曲部15を有する点で上記実施形態のファイバレーザ装置と異なる。この屈曲部15を波長1760nmの光が伝搬することでLP02モードの光を漏洩させることができる。従って、活性元素添加光ファイバ10が屈曲部15を有することで、LP01モードの光を伝搬させつつも、LP02モード以上の高次モードの光の伝搬を抑制することができる。
【0084】
ところで、活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げると、活性元素添加光ファイバ10が破断する懸念がある。そこで、この場合には活性元素添加光ファイバ10の石英ガラスから成るクラッドの直径が所定の大きさ以内にされることが好ましい。この石英ガラスから成るクラッドは、外側クラッド13が樹脂から成る場合には、内側クラッド12であり、外側クラッド13が石英ガラスから成る場合には、内側クラッド12及び外側クラッド13である。図7は、クラッドの直径と破断確率との関係を示す図である。この破断確率は、石英ガラスから成るクラッドを有する光ファイバを直径120mmで1周巻き、光ファイバの長さが1%伸びる荷重を印加する場合において、8万時間後における光ファイバの破断確率である。図7より、クラッドの直径が430μm以下であれば、8万時間後における光ファイバの破断確率を10-6以下に抑えることができる。従って、外側クラッド13が樹脂から成る場合には、内側クラッド12の直径が430μm以下とされることが好ましく、外側クラッド13が石英ガラスから成る場合には、外側クラッド13の直径が430μm以下とされることが好ましい。
【0085】
また、上記実施形態では、中心軸から半径の65%までの第1領域11a全体に亘って活性元素が添加された。しかし、本発明は、第1領域11aの一部に活性元素が添加されてもよい。例えば、第1領域11aにおける中心軸から半径の55%までの領域に活性元素が添加されてもよい。この場合、所定の領域の半径raは0.55dである。従って、所定の領域は0≦r≦0.55dの領域となる。また、所定の領域の半径raが、例えば、0.55d≦ra≦.065dの領域のいずれかとされてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ファイバレーザ装置として、共振器型のファイバレーザ装置を例に説明したが、本発明の活性元素添加光ファイバ10が用いられるファイバレーザ装置は、例えば、活性元素添加光ファイバ10に励起光及び種光が入射するMO-PA(Master Oscillator - Power Amplifier)型であっても良い。なお、この場合であっても、活性元素添加光ファイバ10が接続される光ファイバの上記式(4)で示される形状指数κ'が0.99以上1未満とされることが好ましい。ただし、この場合の式(4)では、rは活性元素添加光ファイバ10が接続される当該光ファイバの中心軸C'を0とする場合の径方向における距離を示し、E'(r)は、活性元素添加光ファイバ10が接続される当該光ファイバを伝搬する光の電界分布であり、E'i(r)は活性元素添加光ファイバ10が接続される当該光ファイバのコアの屈折率分布を平均化したステップインデックス型の光ファイバを伝搬する光の電界分布である。
【0087】
また、上記実施形態では、中心軸Cから内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となるまでの領域をコア11としたが、コアとする領域は、光ファイバの中心軸から内側クラッドに対して比屈折率差が0%よりも大きい領域であれば、比屈折率差が0.05%となるまでの領域でなくてもよい。
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
図2に示す活性元素添加光ファイバを準備した。この活性元素添加光ファイバの比屈折率分布は、図4に示す通りであり、この活性元素添加光ファイバの形状指数κは、0.990であった。また、この活性元素添加光ファイバのコアに添加されるイッテルビウムの濃度分布は図3の通りであり、イッテルビウムが添加される領域の添加径比率は、0.65であった。この添加径比率は、コアの直径に対して、イッテルビウムが添加される領域の直径の比率である。上記実施形態で説明したように、第1領域は、中心軸からコアの半径の65%までの領域であるため、この活性元素添加光ファイバは、第1領域全体に亘ってイッテルビウムが添加され、第2領域にはイッテルビウムが非添加である。なお、この活性元素添加光ファイバは、LP02モードの理論カットオフ波長が1760nmよりも短い光ファイバであった。
【0090】
次に、この活性元素添加光ファイバを用いて、図1に示すファイバレーザ装置を作製した。それぞれのファイバレーザ装置に用いた第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'は、0.998であった。また、それぞれのファイバレーザ装置の光の発振波長、すなわち第1FBG及び第2FBGが反射する所定波長は1070nmとした。
【0091】
(実施例2~10)
形状指数κ、及び、イッテルビウムが添加される領域の添加径比率が表1に示す値であることを除き、実施例1と同様の活性元素添加光ファイバを準備した。なお、実施例7の活性元素添加光ファイバの比屈折率分布は、図8に示す通りであり、この活性元素添加光ファイバのコアに添加されるイッテルビウムの濃度分布は図9の通りであった。なお、図9において、第2領域や内側クラッドにもイッテルビウムが僅かに添加されているように見えるが、これは測定装置のノイズであり、実際には第2領域にイッテルビウムは添加されていない。つまり本明細書でノイズレベルの活性元素の検出は無視できる。このようなノイズレベルとしては、例えば、活性元素の平均濃度の1%程度とされる。なお、これらの活性元素添加光ファイバは、LP02モードの理論カットオフ波長が1760nmよりも短い光ファイバであった。
【0092】
次に、実施例2~7のそれぞれの活性元素添加光ファイバを用いて、図1に示すファイバレーザ装置を作製した。それぞれのファイバレーザ装置に用いた第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'は、下記表1に示す通りであった。また、実施例8~10のそれぞれの活性元素添加光ファイバを用いて、図6に示すファイバレーザ装置を作製した。それぞれのファイバレーザ装置に用いた第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'は、下記表1に示す通りであった。また、それぞれのファイバレーザ装置の光の発振波長、すなわち第1FBG及び第2FBGが反射する所定波長は1070nmとした。
【0093】
表1に示すように、実施例1~7における活性元素添加光ファイバの添加径比率は0.55以上0.65以下であり、実施例1~7における活性元素添加光ファイバの形状指数κは0.990以上0.998以下であった。また、実施例1~7における第1光ファイバ及び第2光ファイバのそれぞれの形状指数κ'は、0.998以上0.999以下であった。
【0094】
(比較例1~8)
形状指数κ、及び、イッテルビウムが添加される領域の添加径比率が表1に示す値であることを除き、実施例1と同様の活性元素添加光ファイバを準備した。なお、比較例7の活性元素添加光ファイバは比較例1の活性元素添加光ファイバと同じものであり、比較例8の活性元素添加光ファイバは比較例5の活性元素添加光ファイバと同じものである。また、これらの活性元素添加光ファイバは、LP02モードの理論カットオフ波長が1760nmよりも短い光ファイバであった。
【0095】
次に、比較例1~6のそれぞれの活性元素添加光ファイバを用いて、図1に示すファイバレーザ装置を作製した。それぞれのファイバレーザ装置に用いた第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'は、下記表1に示す通りであった。また、比較例7,8のそれぞれの活性元素添加光ファイバを用いて、図6に示すファイバレーザ装置を作製した。それぞれのファイバレーザ装置に用いた第1光ファイバ及び第2光ファイバの形状指数κ'は、下記表1に示す通りであった。
【0096】
(ビーム品質の測定)
次に実施例1~10及び比較例1~8を用いたそれぞれのファイバレーザ装置から光を出射してMで示されるビーム品質を測定した。その結果を表1に示す。
【0097】
表1により明らかなように、実施例1~7の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質は比較例1~6の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質と比べて優れる結果となった。すなわち、少なくとも添加径比率が0.55以上0.65以下の場合に、活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質が優れる結果となった。この原因は、比較例1~3では、活性元素添加光ファイバにおけるイッテルビウムが添加される領域の添加径比率が0.65を超えているため、励振されたLP11モード以上の高次モードの光が活性元素添加光ファイバで増幅され、強度の高いLP11モード以上の高次モードの光が出射したためと考えられる。また、比較例4~6では、活性元素添加光ファイバの形状指数κが0.99より小さいため、第1光ファイバと活性元素添加光ファイバとの接続点又は接続点近傍、及び、第2光ファイバと活性元素添加光ファイバとの接続点又は接続点近傍において、LP01モードの光に加えて、LP02モード以上の軸対称モードの光が高い強度で励振され、この光が出射したためと考えられる。
【0098】
また、実施例8~10の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質は比較例7,8の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質と比べて優れる結果となった。この原因は、比較例7では、活性元素添加光ファイバにおけるイッテルビウムが添加される領域の添加径比率が0.65を超えているため、励振されたLP11モード以上の高次モードの光が活性元素添加光ファイバで増幅され、強度の高いLP11モード以上の高次モードの光が出射したためと考えられる。また、比較例8では、活性元素添加光ファイバの形状指数κが0.99より小さいため、第1光ファイバと活性元素添加光ファイバとの接続点又は接続点近傍、及び、第2光ファイバと活性元素添加光ファイバとの接続点又は接続点近傍において、LP01モードの光に加えて、LP02モード以上の軸対称モードの光が高い強度で励振され、この光が出射したためと考えられる。
【0099】
実施例8~10の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質は実施例1~7の活性元素添加光ファイバを用いたファイバレーザ装置のビーム品質と比べて優れる結果となった。この原因は図6に示すファイバレーザ装置における屈曲部15において、LP02モード以上の光が除去されたためと考えられる。
【0100】
次に、活性元素添加光ファイバの上記極大値Nmaxの位置と形状指数κとの関係について調べた。具体的には、コアの平均比屈折率差が0.10%以上0.18%以下であり、かつ、コアの中心軸からの距離rが0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以下である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバを準備し、極大値Nmaxの位置と形状指数κとの関係について調べた。その結果を図10に示す。また、コアの平均比屈折率差が0.10%以上0.18%以下であり、かつ、コアの中心軸からの距離rが0.055d以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以上である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバを準備し、極大値Nmaxの位置と形状指数κとの関係について調べた。その結果を図11に示す。
【0101】
図10に示すように、距離rが0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以下である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバの形状指数κは、比屈折率差の平均値が0.10%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上d以下の場合において関数「0.7819r-1.1832r+0.2533r+0.1919r-0.0840r+0.0072r+1.000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.14%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上d以下の場合において関数「0.3812r-0.0426r-0.8848r+0.6834r-0.1751r+0.0129r+1.0000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.18%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上0.6d以下の場合において関数「-10.021r+14.282r-10.655r+7.369r-1.998r+1.196」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.18%の場合であって極大値Nmaxの位置が0.6より大きくd以下の場合において関数「0.2613r-0.3267r+0.0816r+0.9729」に基づいて低下することが分かった。また、距離rが0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以下である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバでは、0.62d以下の領域に極大値Nmaxが少なくとも1つ存在すれば、形状指数κの値が0.990以上になることが分かった。
【0102】
なお、距離rが0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以下である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバでは、0.45d以上0.62d以下の領域に極大値Nmaxが存在すれば、ステップインデックス型の光ファイバに比べて実効屈折率を大きくし得る。
【0103】
また、図11に示すように、距離rが0.055d以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以上である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバの形状指数κは、比屈折率差の平均値が0.10%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上d以下の場合において関数「0.670r-1.651r+1.366r-0.454r+0.054r-0.004r+1.000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.14%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上d以下の場合において関数「0.6274r-1.4742r+1.146r-0.3507r+0.0374r-0.0033r+1.000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.18%の場合であって極大値Nmaxの位置が0以上0.3d以下の場合において関数「0.017r-0.010r-0.001r+1.000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.18%の場合であって極大値Nmaxの位置が0.3dより大きく0.6d以下の場合において関数「0.897r-1.919r+1.417r-0.434r+0.052r-0.004r+1.000」に基づいて低下することが分かった。また、比屈折率差の平均値が0.18%の場合であって極大値Nmaxの位置が0.6より大きくd以下の場合において関数「0.0713r-0.1281r+0.0689r+0.9707」に基づいて低下することが分かった。また、距離rが0.055d以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以上である屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバでは、0.1d以上0.83d以下の領域に極大値Nmaxが少なくとも1つ存在すれば、形状指数κの値が0.990以上になることが分かった。
【0104】
次に、上記極大値Nmaxが存在する屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバの当該コアを伝搬する光の実効断面積と、コアのクラッドに対する比屈折率差が一定であるステップ型の屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバのコアを伝搬する光の実効断面積との関係について調べた。
【0105】
まず、極大値を有する活性元素添加光ファイバを複数準備した。これら極大値を有する活性元素添加光ファイバは、上述の実施形態のように1つの極大値Nmaxを有し、これら極大値Nmaxの値は、極大値を有する活性元素添加光ファイバごとに異なる。また、極大値を有する活性元素添加光ファイバと同数のステップ型の活性元素添加光ファイバを準備した。具体的には、ステップ型の活性元素添加光ファイバのうち1つの活性元素添加光ファイバの比屈折率差と、極大値を有する複数の活性元素添加光ファイバのうち1つの活性元素添加光ファイバの比屈折率差の平均値とが同じである、ステップ型の活性元素添加光ファイバと極大値を有する活性元素添加光ファイバの組を複数組準備した。つまり、共通の平均値を有する光ファイバ組を複数組準備した。なお、複数の光ファイバ組のそれぞれにおける共通の平均値は、光ファイバ組ごとに相違する。
【0106】
次に、上記ペアを構成するステップ型の活性元素添加光ファイバ及び極大値を有する活性元素添加光ファイバのそれぞれの実効断面積を算出し、これら実効断面積の差を求める検証を行った。具体的には、コアの中心軸からの距離rが0.055d以上0.1d以下の領域における上記平均値が極大値Nmax以上になるように形成された極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いて実効断面積の差を求める検証1と、上記距離rが0以上0.1d以下の領域における上記平均値が極大値Nmax以下になるように形成された極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いて実効断面積の差を求める検証2とを行った。
【0107】
検証1の結果を図12に、検証2の結果を図13にそれぞれ示す。なお、図12及び図13は、極大値を有する活性元素添加光ファイバのコアの比屈折率差の平均値Δがそれぞれ0.10%、0.14%、及び0.18%である場合における極大値Nmaxの位置と実効断面積の差との関係を示している。なお、上述のように、極大値を有する活性元素添加光ファイバのコアの比屈折率差の平均値Δは、当該極大値を有する活性元素添加光ファイバとともに上記光ファイバ組を構成するステップ型光ファイバのコアの比屈折率差に等しい。
【0108】
図12に示すように、0.055d以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以上である極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いた検証1によれば、コアの比屈折率差の平均値が0%よりも大きく0.18%以下である場合、極大値Nmaxの位置が0.55d以下であることによって、上記光ファイバ組を構成する同じ比屈折率差を持つステップ型の活性元素添加光ファイバの場合に比べて、実効断面積が大きくなることが分かった。つまり、このような極大値を有する活性元素添加光ファイバによれば、実効断面積が大きくなるため、誘導ラマン散乱が一層抑制され得る。
【0109】
また、図13に示すように、0以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が極大値Nmax以下である極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いた検証2によれば、コアの比屈折率差の平均値が0.10%以上である場合、極大値Nmaxの位置が0.45d以上であることによって、上記光ファイバ組を構成する同じ比屈折率差を持つステップ型光ファイバの場合に比べて、実効断面積が大きくなることが分かった。つまり、このような極大値を有する活性元素添加光ファイバによれば、実効断面積が大きくなるため、誘導ラマン散乱が一層抑制され得る。なお、上記検証2において、実効断面積が大きくなる効果を奏する比屈折率差の平均値の上限は、極大値Nmaxの位置が0.45d以上であれば特に限定されないが、例えば、比屈折率差の平均値の上限を0.18%に設定してもよい。
【0110】
以上の結果より、本発明の活性元素添加光ファイバ及びファイバレーザ装置によれば、LP11モード以上の高次モードの光の強度を抑えることでビーム品質の劣化を抑制して光を増幅し得ることが確認された。
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、ビーム品質の劣化を抑制して光を増幅し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置が提供され、加工用のレーザ装置等においての利用が期待される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13