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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】車両前端構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20220816BHJP
   B62D 19/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B62D21/02 A
B62D19/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021520607
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019022325
(87)【国際公開番号】W WO2020081110
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】16/161,913
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511257078
【氏名又は名称】ニッサン ノース アメリカ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】児玉 尚也
(72)【発明者】
【氏名】印南 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 正泰
(72)【発明者】
【氏名】ライマン、 ジェイソン
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/162880(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060181(US,A1)
【文献】国際公開第2017/199386(WO,A1)
【文献】特開2001-088736(JP,A)
【文献】特開2001-260936(JP,A)
【文献】特開2010-247622(JP,A)
【文献】特開2014-144658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
B62D 21/00
B62D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側部部材と、
前記前方側部部材の下側に配置されかつ前記前方側部部材に取り付けられるエンジンクレードルであって、前方角部を有し、かつエンジンが取り付けられたエンジンクレードルと、
前記エンジンクレードルの前記前方角部の近傍から横方向外側に延びる受力面、及び前記受力面の後方に位置する力誘導部を有する受力構造と
を備え、
前記受力構造は、垂直に配向された第1の機械的ファスナによって前記エンジンクレードルに取り付けられ、前記第1の機械的ファスナは、前記受力面に衝撃力が加えられる衝突事象の間に、前記受力構造が前記第1の機械的ファスナの周りを回動し、前記受力面の外側部分が最初に前記エンジンクレードルに対して後方に移動し、前記力誘導部が最初に横方向に内側に移動して前記エンジンに接触して、前記衝撃力の一部をそこに与えるように設計及び構築され
前記エンジンクレードルは、前記前方角部から上方に延びる取り付け構造を有し、前記エンジンクレードルを車体構造に取り付けるように構成され、前記エンジンクレードルの前記取り付け構造は、前記受力面と前記力誘導部との間に配置され、
前記第1の機械的ファスナは、前記衝突事象の間、前記受力面が前記取り付け構造の周りをさらに回動するように、前記取り付け構造の後方表面に隣接して配置される、車両前端構造。
【請求項2】
前記第1の機械的ファスナは、前記取り付け構造の後方に配置される、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項3】
前記受力構造は、全体としてU字形を有しており、前記取り付け構造は、前記受力面と前記力誘導部との間に画定された間隙を通って上方に延びる、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項4】
前記受力構造は、全体としてU字形を有しており、前記取り付け構造は、前記受力面と前記力誘導部との間に画定された間隙を通って上方に延びる、請求項1に記載の車両前端構造。
【請求項5】
前記受力構造の前記受力面はU字形の第1の側部を画定し、前記力誘導部の内側面は前記U字形の第2の側部を画定する、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項6】
前記第1の機械的ファスナは、前記受力面と前記力誘導部との略中間に配置される、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項7】
前記受力面は、内側角部及び外側角部を有し、前記内側角部は前記エンジンクレードルの前記前方角部に位置し、前記外側角部は外側に位置しかつ前記エンジンクレードルの外側からは離されている、請求項1に記載の車両前端構造。
【請求項8】
前記エンジンクレードルは、前記エンジンクレードルの前記前方角部から反対側の前方角部まで横方向に延びる前方部材と、前記エンジンクレードルの前記前方角部から後方に延びる第1の横方向側部部材とを含み、
前記力誘導部は、前方角部と後方角部とを有する内側面を有し、前記前方角部は前記クレードルの前記前方部材の後方に前記前方部材に隣接して位置し、前記内側面の前記後方角部は前記第1の横方向側部部材の内側に沿ってそこから後方に延びる、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項9】
前記第1の機械的ファスナは、前記受力面の中央領域と前記力誘導部の前記内側面の中央領域との間の位置で前記受力構造の一部を垂直に貫通して延びる、請求項に記載の車両前端構造。
【請求項10】
前方側部部材と、
前記前方側部部材の下側に配置されかつ前記前方側部部材に取り付けられるエンジンクレードルであって、前方角部を有し、かつエンジンが取り付けられたエンジンクレードルと、
前記エンジンクレードルの前記前方角部の近傍から横方向外側に延びる受力面、及び前記受力面の後方に位置する力誘導部を有する受力構造と
を備え、
前記受力構造は、垂直に配向された第1の機械的ファスナによって前記エンジンクレードルに取り付けられ、前記第1の機械的ファスナは、前記受力面に衝撃力が加えられる衝突事象の間に、前記受力構造が前記第1の機械的ファスナの周りを回動し、前記受力面の外側部分が最初に前記エンジンクレードルに対して後方に移動し、前記力誘導部が最初に横方向に内側に移動して前記エンジンに接触して、前記衝撃力の一部をそこに与えるように設計及び構築され、
前記受力構造は、第2の機械的ファスナ及び第3の機械的ファスナを介して、前記エンジンクレードルにさらに接続され、前記第2及び第3の機械的ファスナは、前記第2及び第3の機械的ファスナが前記衝突事象の間に前記受力構造を剪断、変形又は解放するように、前記第1の機械的ファスナの剪断強度よりも小さい剪断強度を有する、両前端構造。
【請求項11】
前記エンジンクレードルは、前記エンジンクレードルの前記前方角部から反対側の前方角部まで横方向に延びる前方部材と、前記エンジンクレードルの前記前方角部から後方に延びる第1の横方向側部部材とを含み、
前記第2の機械的ファスナは、前記エンジンクレードルの前記前方角部に近接して前記エンジンクレードルの前記前方部材に前記受力構造を取り付け、前記第3の機械的ファスナは、前記第1の機械的ファスナの後方において前記第1の横方向側部部材に前記受力構造を取り付ける、請求項10に記載の車両前端構造。
【請求項12】
前記エンジンクレードルは、相互接続された前方部材、第1の横方向側部部材、第2の横方向側部部材、及び後方部材を含み、前記前方部材と前記第1の横方向側部部材とが前記前方角部を画定し、前記前方部材と前記第2の横方向側部部材とが第2の前方角部を画定し、前記第2の前方角部に第2の受力構造が取り付けられる、請求項1又は10に記載の車両前端構造。
【請求項13】
前記受力構造は、互いに溶接された少なくとも下部プレート、中間プレート、及び上部プレートを含み、それらの中央領域は互いに間隔を置いて配置され、対応する中央領域は、それらを通って延びる対応する同軸に整列した開口を有し、
前記受力構造は、少なくとも前記下部プレート及び前記上部プレートに溶接された厚い金属カラーを含み、前記カラーの中央開口が前記下部プレート、前記中間プレート及び前記上部プレートにおける前記同軸に整列した開口のそれぞれと整列するようにされており、前記第1の機械的ファスナは、前記カラーの前記中央開口を貫通して延び、前記エンジンクレードルと螺合される、請求項1又は10に記載の車両前端構造。
【請求項14】
前記カラーも前記中間プレートに溶接される、請求項13に記載の車両前端構造。
【請求項15】
前記カラーは、前記エンジンクレードルの上面に近接する前記下部プレートから前記受力構造の前記上部プレートの前記上面より上の点まで上方に延びる、請求項13に記載の車両前端構造。
【請求項16】
前記エンジンクレードルは、前記エンジンクレードルの上部壁に溶接されたねじ付きナットを含み、前記第1の機械的ファスナは、前記カラーを貫通して延びて、前記受力構造の取り付け中に前記ナット内に螺入され、それによって、前記受力構造の前記下部プレートが前記エンジンクレードルの上面に対して圧縮されるように前記カラーを下方に押し下げる、請求項13に記載の車両前端構造。
【請求項17】
前記カラー及び前記受力構造は、前記衝突事象の間、前記カラー及び前記第1の機械的ファスナによって画定される垂直軸の周りを共に回動するように構成される、請求項13に記載の車両前端構造。
【請求項18】
前方側部部材と、
前記前方側部部材の下側に配置されかつ前記前方側部部材に取り付けられるエンジンクレードルであって、前方角部を有し、かつエンジンが取り付けられたエンジンクレードルと、
前記エンジンクレードルの前記前方角部の近傍から横方向外側に延びる受力面、及び前記受力面の後方に位置する力誘導部を有する受力構造と
を備え、
前記受力構造は、垂直に配向された第1の機械的ファスナによって前記エンジンクレードルに取り付けられ、前記第1の機械的ファスナは、前記受力面に衝撃力が加えられる衝突事象の間に、前記受力構造が前記第1の機械的ファスナの周りを回動し、前記受力面の外側部分が最初に前記エンジンクレードルに対して後方に移動し、前記力誘導部が最初に横方向に内側に移動して前記エンジンに接触して、前記衝撃力の一部をそこに与えるように設計及び構築され、
前記受力構造は、互いに溶接された少なくとも下部プレート、中間プレート、及び上部プレートを含み、それらの中央領域は互いに間隔を置いて配置され、対応する中央領域は、それらを通って延びる対応する同軸に整列した開口を有し、
前記受力構造は、少なくとも前記下部プレート及び前記上部プレートに溶接された厚い金属カラーを含み、前記カラーの中央開口が前記下部プレート、前記中間プレート及び前記上部プレートにおける前記同軸に整列した開口のそれぞれと整列するようにされており、前記第1の機械的ファスナは、前記カラーの前記中央開口を貫通して延び、前記エンジンクレードルと螺合され、
前記カラーは外径を有しており、前記カラーの前記中央開口の内径が前記カラーの前記外径の50%から60%の間の値である、両前端構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、車両の車両前端構造に関する。より詳細には、本発明は、偏心した衝撃力を受け、前進速度の少なくとも一部を車両を横方向に移動させる横方向速度に向け直すように構成された受力構造を含む車両前端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造は、衝突時に衝撃力を吸収及び/又は向け直す構造的特徴を含むように定期的に再設計されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の1つの目的は、エンジンクレードルに取り付けられ、衝突事象に応答してその受力面で回動するように構成された受力構造を提供することである。
【0004】
公知の技術の状態に鑑みて、本開示の1つの態様は、エンジンクレードル及び受力構造を有する車両前端構造を提供する。エンジンクレードルは、前方角部を有し、エンジンがエンジンクレードルに取り付けられている。受力構造は、エンジンクレードルの前方角部の近傍から横方向外側に延びる受力面を有する。受力構造の力誘導部は、受力面の後方に位置する。受力構造は、垂直に配向された第1の機械的ファスナによってエンジンクレードルに取り付けられており、第1の機械的ファスナは、受力面に衝撃力が加えられる衝突事象の間に、受力構造が第1の機械的ファスナを中心として回動し、受力面の外側部分が最初にエンジンクレードルに対して後方に移動し、力誘導部が最初に横方向内側に移動してエンジンに接触して、そこに衝撃力の一部を与えるように設計及び構築される。
【0005】
次に、本開示の一部を構成する添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】例示的な実施形態による、受力構造を含む車両の側面図である。
【0007】
図2】例示的な実施形態による、ボンネット、ベンター及びバンパー構造を除去した車両の斜視図であり、エンジンクレードル及び受力構造を示す。
【0008】
図3】例示的な実施形態による、エンジンクレードル及び受力構造の斜視図である。
【0009】
図4】例示的な実施形態による、エンジンクレードル及び受力構造の上面図である。
【0010】
図5】例示的な実施形態による、受力構造を形成するために後で一緒に溶接される様々なプレートを示す受力構造の分解斜視図である。
【0011】
図6】例示的な実施形態による、車両から取り外された状態で示される受力構造の斜視図である。
【0012】
図7】例示的な実施形態による、車両から取り外された状態で示される受力構造の上面図である。
【0013】
図8】例示的な実施形態による、車両から取り外された状態で示される受力構造の底面図である。
【0014】
図9】例示的な実施形態による、車両から取り外された状態で示される受力構造の正面図である。
【0015】
図10】例示的な実施形態による、車両から取り外された状態で示される受力構造の背面図である。
【0016】
図11】例示的な実施形態による、エンジンクレードルに取り付けられた受力構造の上面図である。
【0017】
図12】例示的な実施形態による、図11の線12-12に沿った、受力構造及びエンジンクレードルの断面図である。
【0018】
図13】例示的な実施形態による、図11の線13-13に沿った、受力構造およびエンジンクレードルの断面図である。
【0019】
図14】例示的な実施形態による、図11の線14-14に沿った、受力構造およびエンジンクレードルの断面図である。
【0020】
図15】例示的な実施形態による、第1、第2及び第3のファスナによってそこに取り付けられた受力構造を示す、エンジンクレードルの前方角部の斜視図である。
【0021】
図16】例示的な実施形態による、衝突事象の直前に第1、第2及び第3のファスナによってそこに取り付けられた受力構造を示すエンジンクレードルの前方角部の上面図である。
【0022】
図17】例示的な実施形態による、衝突事象の間に第2及び第3のファスナが剪断され、第1のファスナの周りを回動した後の受力構造を示す、衝突事象の間のエンジンクレードル及び受力構造の前方角部の別の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して、選択された実施形態について説明する。本開示から当業者には明らかなように、以下の実施形態の説明は、例示のためにのみ提供され、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義される本発明を限定することを意図していない。
【0024】
最初に図1を参照すると、第1の実施形態による受力構造12を含む車両10が示されている。受力構造12は、衝撃力を用いて車両10の前進運動を車両10の横方向運動に向け直すことによって衝撃力を向け直す力向け直し構造とも呼ばれる。
【0025】
図1に示すように、車両10は、バンパー組立体16を有する前端構造14と、側部フェンダ18と、前端構造14を構成する構造要素を少なくとも部分的に覆いかつ多くを隠すエンジンフード20とを含む。図2は、車両10の前端構造14及び受力構造12の一部を示すように、バンパー組立体16、側部フェンダ18、及びエンジンフード20を取り外した車両10の図である。
【0026】
図2に示されるように、前端構造14は、種々の構成要素を含むが、特に、車体構造24及びエンジンクレードル26の要素を含む。
【0027】
図2には片側のみが示されているが、車体構造24の各側は、ダッシュ壁28を構成するパネル、前方部材30及びフードレッジ38を少なくとも含む。しかしながら、車体構造24の2つの側(運転席側と助手席側)は、典型的には同一であるが、互いに鏡像であるので、簡略化のために一方の側のみの説明を提供する。換言すれば、車体構造24の片側の説明は、車体構造24の両側に等しく適用される。
【0028】
次に、前端構造14のエンジンクレードル26を特に図2-4を参照して説明する。エンジンクレードル26は、前方エンジンクレードル部材40と、運転席側エンジンクレードル部材42と、助手席側エンジンクレードル部材44と、後方エンジンクレードル部材46とを備える。前方エンジンクレードル部材40と運転席側エンジンクレードル部材42とは、それらの間の交差部が第1の前方角部50を画定するように、互いに固定的に取り付けられている。前方エンジンクレードル部材40と助手席側エンジンクレードル部材44とは、それらの間の交差部が第2の前方角部52を画定するように、互いに固定的に取り付けられている。また、運転席側エンジンクレードル部材42と後方エンジンクレードル部材46とは互いに固定的に取り付けられている。運転席側エンジンクレードル部材42と後方エンジンクレードル部材46との交差部の後方に、エンジンクレードルの第1の後方角部54が画定されている。助手席側エンジンクレードル部材44と後方エンジンクレードル部材46とは互いに固定的に取り付けられている。助手席側エンジンクレードル部材44と後方エンジンクレードル部材46との交差部の後方に、エンジンクレードル26の第2の後方角部56が画定されている。
【0029】
エンジンクレードル26は、4つの車体取り付け構造60、62、64、66において、車体構造24の下側に取り付けられる。より詳細には、取り付け構造60は、第1の前方角部50に位置し、取り付け構造62は、第2の前方角部52に位置し、取り付け構造64は、第1の後方角部54に位置し、取り付け構造66は、第2の後方角部56に位置する。取り付け構造60、62、64、66は、従来のやり方で車体構造24の下側に接続される。すなわち、取り付け構造60、64は、車両10の運転席側の前方側部部材30の下側に取り付けられており、取り付け構造62、66も、同様に、車両10の助手席側(図示せず)の前方側部部材の下側に取り付けられている。
【0030】
車体構造24へのエンジンクレードル取り付けは構造的に強力であるが、取り付け構造60、62、64、及び66は、(以下で説明される)エンジン組立体70からの振動を吸収するための弾性ブッシュを含んでもよく、或いは、エンジンクレードル26を車体構造24に取り外し可能に取り付けることができるように、大型ファスナ等の剛性取り付け構造を含んでもよい。
【0031】
前方取り付け構造60及び62は、エンジンクレードル26のそれぞれの第1及び第2の前方角部50及び52から上方に延びる剛性の円筒形状部分を含む。以下にさらに説明するように、受力構造12(エンジンクレードル26の各側に1つ)は、少なくとも部分的に、前方取り付け構造60及び62の円筒形構造の周囲に延びる。
【0032】
また、エンジンクレードル26は、3つのエンジン取り付け構造72、74及び76を含む。エンジン取り付け構造72は、運転席側エンジンクレードル部材42の上面に沿って、第1の前方角部50よりも後方に配置されている。エンジン取り付け構造74は、前方エンジンクレードル部材40の上面に沿って配置されている。エンジン取り付け構造76は、後方エンジンクレードル部材46の上面に沿って配置されている。
【0033】
エンジン取り付け構造72、74及び76の各々は、エンジン組立体70に直接取り付けるモータ取り付け部(図示せず)を含む。
【0034】
エンジン組立体70は、エンジン、トランスミッション及びトランスアクスルを含んでもよい。エンジンは、内燃エンジン、電気モータ、又はハイブリッドシステム(電気モータと内燃エンジン)とし得る。トランスミッションは、無段変速トランスミッション(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、マニュアルトランスミッション又はオートマチックトランスミッションとし得る。エンジン組立体70は、単純かつ簡潔にするために、一般的に仮想の箱として描かれている。しかしながら、個々のエンジン及びトランスミッションは、それぞれ固有のサイズ及び形状を有することを理解されたい。したがって、本発明は、図面においてエンジン組立体70に与えられる一般的な形状に限定されない。
【0035】
また、エンジンクレードル26は、図15に示すように、ステアリング及びサスペンション構成要素を支持することもできる。これらのステアリング及びサスペンション構成要素は、基本的に、エンジンクレードル26の後方エンジンクレードル部材46によって支持される。これらの従来のステアリング及びサスペンション構成要素の説明は、簡潔にするために省略する。
【0036】
次に、受力構造12を特に図5図11を参照して説明する。
【0037】
2つの受力構造12があり、1つはエンジンクレードル26の第1及び第2の前方角部50及び52の各々に取り付けられている。図示された実施形態では、図3及び図4に示されているように、受力構造12は、互いに対称な鏡像であることを除いて同一である。したがって、一方の受力構造12の説明は、他方の受力構造12にも同様に適用される。しかしながら、本明細書の図面及び説明から、受力構造12は、代替的に異なるものであってもよいことが理解されるべきである。例えば、追加の空間を必要とするエンジン又はトランスミッション構成要素がある場合、受力構造12のうちの1つ又は複数の部分を、追加のエンジン室空間を必要とするそのような構成要素を収容するように修正又は縮小し得る。
【0038】
図5の分解図に示すように、受力構造12は、複数の構造要素を含み、これらは、互いに溶接されると、図6図11に示す構造を画定する。詳細には、受力構造12は、上部プレート80、中間プレート82、下部プレート84、メインプレート86、内側プレート88、第1のU字形プレート90、第2のU字形プレート92、及びスリーブ又はカラー94を含む。
【0039】
上部プレート80は、以下にさらに説明するように、組み立てられた受力構造12に対して中央に位置する開口100を含む。上部プレート80は、さらに、第1のエッジ102、第2のエッジ104、第3のエッジ106及び第4のエッジ108を有する。
【0040】
中間プレート82は、以下にさらに説明するように、組み立てられた受力構造12に対して中央に位置する開口110を含む。さらに、中間プレート82は、第1のエッジ112、第2のエッジ114、第3のエッジ116及び第4のエッジ118を有する。
【0041】
図7に示すように、下部プレート84は、開口121aを有する本体部121と、上方延出部122と、下方延出部124と、上方に延びる表面126と、後方エッジ128と、上側エッジ130と、開口131aを有する取り付けフランジ131と、離脱(break-away)取り付けストリップ132とを含む。
【0042】
メインプレート86は、受力面134と、上側水平フランジ136と、ラップアラウンドフランジ138とを含む。
【0043】
内側プレート88は、力誘導部140と支持部142とを有する。
【0044】
カラー94は、厚肉円筒形状を有する剛性金属スリーブである。カラー94は、カラー94の外径の約半分又はそれより僅かに大きい内径を有する内側開口を有する。例えば、カラー94の外径は、25mmから60mmの間とし得る。内径は、13mmから35mmの間とし得る。例示的な実施形態では、カラー94の外径は、例えば、30mmであり、内径は約17.5mmである。例示的な実施形態では、カラー94の環状壁は、厚さが約6.25mmである。さらに、カラー94に取り付けられたメインファスナFは、約15.0mm±1mmの直径を有し得る。
【0045】
受力構造12は、少なくとも以下の溶接関係で溶接される。詳細には、カラー94は、開口121aと軸方向に整列して、下部プレート94の上面に溶接される。図13に示すように、カラー94は、中間プレート82の開口110を貫通して延び、開口110の周囲の領域において中間プレート82に溶接される。カラー94は、さらに、上部プレート80の開口100を貫通して上方に延び、開口100の周囲の領域において上部プレート80に溶接される。図13にも示されているように、メインファスナFは、カラー94、上部プレート80、中間プレート82及び下部プレート84のそれぞれを貫通し、さらに、運転席側エンジンクレードル部材42の上部の開口も貫通して延びている。硬化した鋼製ねじ付きナットNが運転席側エンジンクレードル部材42に溶接される。
【0046】
図6に示すように、上部プレート80の第1のエッジ102は、中間プレート82の第1のエッジ112に溶接される。中間プレート82の第1のエッジ112は、下部プレート84の上方延出部122に溶接されている(図示せず)。内側プレート88は、少なくとも上側プレート80の第4のエッジ108及び下部プレート84の後方エッジ128に溶接され(図示せず)、選択的に、中間プレート82の第4のエッジ118に溶接し得る。メインプレート86は、下部プレート84の下方延出部124、中間プレート82の第2のエッジ114、及び上方プレート80の第2のエッジ102に溶接されている(図示せず)。図7図8及び図16図17に示すように、第1のU字型プレート90及び第2のU字型プレート92は、互いに、及び、上部プレート80及び下部プレート84のそれぞれの表面及び/又はエッジに溶接される。図6図11に示す受力構造12を達成するために、様々なプレートの間に(言及されていない)複数の溶接部が好ましいことも、図面及び本明細書の記載から理解されるべきである。第1のU字形プレート90及び第2のU字形プレート92は、図11図12図16及び図17に示すように、エンジンクレードル26に取り付けられたときに取り付け構造60を受け入れる開口を画定する。
【0047】
受力構造12は、メインファスナF、第2のファスナF及び第3のファスナFを介してエンジンクレードル26に取り付けられている。図11及び図13に示しかつ上述したように、メインファスナFは、受力構造12を完全に貫通して延びるカラー94を貫通して延び、運転席側エンジンクレードル部材42に溶接されたナットNに取り付けられる。図11図12及び図14に示すように、第2のファスナFは、離脱取り付けストリップ132の開口に挿入され、第1のナットNから後方において運転席側エンジンクレードル部材42に溶接されたナットNに挿入される。図11及び12に示すように、第3のファスナFは、前方エンジンクレードル部材40の開口内に挿入され、前方エンジンクレードル部材40に溶接されたナットN内に挿入される。
【0048】
後述するように、ファスナF及びカラー94は、第2のファスナF、離脱取り付けストリップ132及び第3のファスナFよりも大きな強度を有する。詳細には、図16及び図17に示されるように、衝突事象の間、第2のファスナF、離脱取り付けストリップ132、及び第3のファスナFは全て、メインファスナF及びエンジンクレードル26の取り付け構造60の周りを回動するように衝撃力が受力構造12に作用するように、剪断するか又は離脱ように構成されかつ寸法付けられている。
【0049】
図面、特に図15図17に示すように、受力構造は、エンジンクレードル26の前方角部50の近傍から横方向外側に延びる受力面134を有する。力誘導部140は、受力面134の後方に配置される。受力構造12は、図17に示されるように、衝撃力Fが受力面134に加えられる衝突事象の間に、受力構造12が第1の機械的ファスナFの周りを回動し、最初に受力面134の外側部分がエンジンクレードル26に対して後方に移動し、力誘導部140が最初に横方向内側に移動してエンジン70に接触して、衝撃力の一部をそこに与えるように設計及び構築された、垂直に配向された第1の機械的ファスナF(メインファスナ)によってエンジンクレードル26に取り付けられる。
【0050】
図7図8図11図16及び図17に示すように、受力構造12は、全体としてU字形を有し、取り付け構造60は、受力面134と力誘導部140との間に画定された間隙を通って上方に延びる。
【0051】
図16に示すように、受力構造12の受力面134はU字形の第1の側部を画定し、力誘導部140の内側面はU字形の第2の側部を画定する。メインファスナFは、受力面134と力誘導部140との略中間に位置する。
【0052】
なお、受力構造12が完全に組み立てられた状態では、開口100、110及び121aは同軸上に整列される。さらに、カラー94が受力構造12の位置に溶接された状態で、カラー94の中央開口が開口100、110及び121aと同軸に整列される。さらに、カラー94は、受力構造12の上面よりも上方に延びている。衝突事象の間、カラー94及び受力構造12は、カラー94及びメインファスナFによって画定される垂直軸の周りを一緒に回動するように構成される。
【0053】
(受力構造12以外の)種々の車体要素及び構成要素は、当技術分野で周知の従来の構成要素である。このような車体要素及び構成要素は当技術分野で周知であるため、これらの構造については、本明細書には詳細に説明又は図示しない。むしろ、構成要素は、本発明を実施するために使用し得る任意のタイプの構造及び/又はプログラミングであり得ることが、本開示から当業者には明らかであろう。
【0054】
(用語の一般的な解釈)
本発明の範囲を理解する上で、本明細書で使用される用語「含む」及びその派生語は、記載された特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を除外しない、非限定的な用語であることが意図される。「含む」、「有する」及びそれらの派生語等の同様の意味を有する単語にも、前述のことが適用される。また、単数で使用される場合、用語「部」、「セクション」、「部分」、「部材」又は「要素」は、単一の部分又は複数の部分の二重の意味を有し得る。また、上述の実施形態を説明するために本明細書で使用される以下の方向用語「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」、「下側」及び「横手方向」、並びに他の同様の方向を表す用語は、車両前端構造を備えた車両のこれらの方向を指す。したがって、本発明を説明するために使用されるこれらの用語は、車両前端構造を備えた車両に関して解釈されるべきである。
【0055】
本明細書において「構成される」という用語は、所望の機能を実行するように構築された構造を含む構成要素、部分又は部品を説明するために使用される。
【0056】
本明細書で使用される「実質的に」、「約」及び「略」等の程度の用語は、最終結果が大きく変化しないように、変更された用語の合理的な量の逸脱を意味する。
【0057】
本発明を説明するために選択された実施形態のみが選ばれたが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が本明細書においてなされ得ることは、本開示から当業者には明らかであろう。例えば、様々な構成要素のサイズ、形状、位置又は方向は、必要に応じて及び/又は所望に応じて変更し得る。互いに直接的に接続又は接触して示される構成要素は、それらの間に配置された中間構造を有し得る。1つの要素の機能は2つでも実行可能であり、その逆も可能である。1つの実施形態の構造及び機能は、別の実施形態で採用し得る。全ての利点が特定の実施形態において同時に存在する必要はない。先行技術に特有の全ての特徴は、単独で又は他の特徴と組み合わせて、そのような特徴によって具現化される構造的及び/又は機能的概念を含めて、出願人によるさらなる発明の別個の説明とみなされるべきである。したがって、本発明による実施形態の前述の説明は、例示のためだけに提供され、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義される本発明を限定することを意図していない。
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