(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20220816BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2022520567
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2021042107
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀範
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大介
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/017262(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0291515(US,A1)
【文献】特開2013-099193(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205713(WO,A1)
【文献】特開2007-312591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のシャフトと、
前記シャフトが挿入される内孔を有する円環状の電磁鋼板を前記シャフトの中心軸方向に複数枚積層して構成され、それぞれ円筒状の外周面まで貫通した第1磁石孔及び第2磁石孔を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心において磁極を構成し、前記第1磁石孔に挿入された第1永久磁石及び前記第2磁石孔に挿入された第2永久磁石と、を備え、
前記シャフトの中心軸と前記磁極の周方向の中心とを通る軸をd軸とし、前記第1永久磁石の前記d軸に最も近い第1角と前記第2永久磁石の前記d軸に最も近い第2角とを通る直線を第1直線とし、前記第1角と前記中心軸とを通る直線を第2直線とし、前記第2角と前記中心軸とを通る直線を第3直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第1点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第2点とし、前記第1点と前記第2点とを通る直線を第4直線としたとき、前記第1直線、前記第2直線、前記第3直線、及び、前記第4直線で囲まれた領域内に前記回転子鉄心の実肉部であるブリッジが存在し、
前記第1直線及び前記第4直線から等距離の直線を第5直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第3点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第4点とし、前記第5直線上で前記第3点及び前記第4点から等距離の点を中間点とし、前記中間点と前記中心軸とを通る直線をブリッジ中心線とし、前記第4直線上の前記第1点と前記第2点と結ぶ線分をブリッジ内周側端とし、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第1磁石孔の内壁で囲まれた第1領域に存在する穴及び切欠をKmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSkmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとし、前記中心軸から重心Kgmまでの距離をrmとし、前記ブリッジ中心線と前記第4直線との交点から重心Kgmまでの距離をrbmとし、前記中心軸と重心Kgmとを通る直線を第6直線とし、前記第6直線と前記ブリッジ中心線とのなす角をθkmとし、前記交点と前記重心Kgmとを通る直線を第7直線とし、前記第7直線と前記ブリッジ中心線とのなす角度をθbkmとし(但し、前記のmはいずれも自然数である)、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第2磁石孔の内壁で囲まれた第2領域に存在する穴及び切欠をJnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSjnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとし、前記中心軸から重心Jgnまでの距離をRnとし、前記交点から重心Jgnまでの距離をRbnとし、前記中心軸と重心Jgnとを通る直線を第8直線とし、前記第8直線と前記ブリッジ中心線とのなす角をθjnとし、前記交点と前記重心Jgnとを通る直線を第9直線とし、前記第9直線と前記ブリッジ中心線とのなす角度をθbjnとしたとき(但し、前記のnはいずれも自然数である)、前記第1領域及び前記第2領域が前記d軸に関して非対称であり、前記回転子鉄心が次の式を満たす構造を有している、回転電機の回転子。
【数1】
【請求項2】
円柱状のシャフトと、
前記シャフトが挿入される内孔を有する円環状の電磁鋼板を前記シャフトの中心軸方向に複数枚積層して構成され、それぞれ円筒状の外周面まで貫通した第1磁石孔及び第2磁石孔と、周方向において前記第1磁石孔と前記第2磁石孔との間に位置する空孔と、を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心において磁極を構成し、前記第1磁石孔に挿入された第1永久磁石及び前記第2磁石孔に挿入された第2永久磁石と、を備え、
前記シャフトの中心軸と前記磁極の周方向の中心とを通る軸をd軸とし、前記第1永久磁石の前記d軸に最も近い第1角と前記第2永久磁石の前記d軸に最も近い第2角とを通る直線を第1直線とし、前記第1角と前記中心軸とを通る直線を第2直線とし、前記第2角と前記中心軸とを通る直線を第3直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第1点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第2点とし、前記第1点と前記第2点とを通る直線を第4直線としたとき、前記第1直線、前記第2直線、前記第3直線、及び、前記第4直線で囲まれた領域内に前記回転子鉄心の実肉部である第1ブリッジ及び第2ブリッジが存在し、
前記第1直線及び前記第4直線から等距離の直線を第5直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第3点とし、前記空孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記d軸との間で前記第5直線上の点を第4点とし、前記空孔の内壁上の点のうち前記d軸と前記第3直線との間で前記第5直線上の点を第5点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第6点とし、前記第5直線上で前記第3点及び前記第4点から等距離の点を第1中間点とし、前記第5直線上で前記第5点及び前記第6点から等距離の点を第2中間点とし、前記第1中間点と前記中心軸とを通る直線を第1ブリッジ中心線とし、前記第2中間点と前記中心軸とを通る直線を第2ブリッジ中心線とし、前記第4直線上の前記第1点と前記第2点と結ぶ線分をブリッジ内周側端とし、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記第1ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第1磁石孔の内壁で囲まれた第1領域に存在する穴及び切欠をKmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSkmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとし、前記中心軸から重心Kgmまでの距離をrmとし、前記第1ブリッジ中心線と前記第4直線との第1交点から重心Kgmまでの距離をrbmとし、前記中心軸と重心Kgmとを通る直線を第6直線とし、前記第6直線と前記第1ブリッジ中心線とのなす角をθkmとし、前記第1交点と前記重心Kgmとを通る直線を第7直線とし、前記第7直線と前記第1ブリッジ中心線とのなす角度をθbkmとし(但し、前記のmはいずれも自然数である)、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記第2ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第2磁石孔の内壁で囲まれた第2領域に存在する穴及び切欠をJnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSjnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとし、前記中心軸から重心Jgnまでの距離をRnとし、前記第2ブリッジ中心線と前記第4直線との第2交点から重心Jgnまでの距離をRbnとし、前記中心軸と重心Jgnとを通る直線を第8直線とし、前記第8直線と前記第2ブリッジ中心線とのなす角をθjnとし、前記第2交点と前記重心Jgnとを通る直線を第9直線とし、前記第9直線と前記第2ブリッジ中心線とのなす角度をθbjnとしたとき(但し、前記のnはいずれも自然数である)、前記第1領域及び前記第2領域が前記d軸に関して非対称であり、前記回転子鉄心が次の式を満たす構造を有している、回転電機の回転子。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の回転電機としては、永久磁石を用いた永久磁石型回転電機が広く用いられている。このような回転電機では、固定子によって発生される回転磁界によって回転子が回転するように構成されている。一例では、回転子鉄心の内周側と外周側とをセンターブリッジで接続し、回転子鉄心の磁石孔が回転子と固定子の間のエアギャップに連通する回転電機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、漏れ磁束を抑制するとともに遠心力に対する応力を低減することが可能な回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、
円柱状のシャフトと、前記シャフトが挿入される内孔を有する円環状の電磁鋼板を前記シャフトの中心軸方向に複数枚積層して構成され、それぞれ円筒状の外周面まで貫通した第1磁石孔及び第2磁石孔を有する回転子鉄心と、前記回転子鉄心において磁極を構成し、前記第1磁石孔に挿入された第1永久磁石及び前記第2磁石孔に挿入された第2永久磁石と、を備え、前記シャフトの中心軸と前記磁極の周方向の中心とを通る軸をd軸とし、前記第1永久磁石の前記d軸に最も近い第1角と前記第2永久磁石の前記d軸に最も近い第2角とを通る直線を第1直線とし、前記第1角と前記中心軸とを通る直線を第2直線とし、前記第2角と前記中心軸とを通る直線を第3直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第1点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第2点とし、前記第1点と前記第2点とを通る直線を第4直線としたとき、前記第1直線、前記第2直線、前記第3直線、及び、前記第4直線で囲まれた領域内に前記回転子鉄心の実肉部であるブリッジが存在し、前記第1直線及び前記第4直線から等距離の直線を第5直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第3点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第4点とし、前記第5直線上で前記第3点及び前記第4点から等距離の点を中間点とし、前記中間点と前記中心軸とを通る直線をブリッジ中心線とし、前記第4直線上の前記第1点と前記第2点と結ぶ線分をブリッジ内周側端とし、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第1磁石孔の内壁で囲まれた第1領域に存在する穴及び切欠をKmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSkmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとし、前記中心軸から重心Kgmまでの距離をrmとし、前記ブリッジ中心線と前記第4直線との交点から重心Kgmまでの距離をrbmとし、前記中心軸と重心Kgmとを通る直線を第6直線とし、前記第6直線と前記ブリッジ中心線とのなす角をθkmとし、前記交点と前記重心Kgmとを通る直線を第7直線とし、前記第7直線と前記ブリッジ中心線とのなす角度をθbkmとし(但し、前記のmはいずれも自然数である)、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第2磁石孔の内壁で囲まれた第2領域に存在する穴及び切欠をJnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSjnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとし、前記中心軸から重心Jgnまでの距離をRnとし、前記交点から重心Jgnまでの距離をRbnとし、前記中心軸と重心Jgnとを通る直線を第8直線とし、前記第8直線と前記ブリッジ中心線とのなす角をθjnとし、前記交点と前記重心Jgnとを通る直線を第9直線とし、前記第9直線と前記ブリッジ中心線とのなす角度をθbjnとしたとき(但し、前記のnはいずれも自然数である)、前記第1領域及び前記第2領域が前記d軸に関して非対称であり、前記回転子鉄心が次の式を満たす構造を有している、回転電機の回転子。
【数1】
【0006】
一実施形態によれば、
円柱状のシャフトと、前記シャフトが挿入される内孔を有する円環状の電磁鋼板を前記シャフトの中心軸方向に複数枚積層して構成され、それぞれ円筒状の外周面まで貫通した第1磁石孔及び第2磁石孔と、周方向において前記第1磁石孔と前記第2磁石孔との間に位置する空孔と、を有する回転子鉄心と、前記回転子鉄心において磁極を構成し、前記第1磁石孔に挿入された第1永久磁石及び前記第2磁石孔に挿入された第2永久磁石と、を備え、前記シャフトの中心軸と前記磁極の周方向の中心とを通る軸をd軸とし、前記第1永久磁石の前記d軸に最も近い第1角と前記第2永久磁石の前記d軸に最も近い第2角とを通る直線を第1直線とし、前記第1角と前記中心軸とを通る直線を第2直線とし、前記第2角と前記中心軸とを通る直線を第3直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第1点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記第3直線との間で最も内周側の点を第2点とし、前記第1点と前記第2点とを通る直線を第4直線としたとき、前記第1直線、前記第2直線、前記第3直線、及び、前記第4直線で囲まれた領域内に前記回転子鉄心の実肉部である第1ブリッジ及び第2ブリッジが存在し、前記第1直線及び前記第4直線から等距離の直線を第5直線とし、前記第1磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第3点とし、前記空孔の内壁上の点のうち前記第2直線と前記d軸との間で前記第5直線上の点を第4点とし、前記空孔の内壁上の点のうち前記d軸と前記第3直線との間で前記第5直線上の点を第5点とし、前記第2磁石孔の内壁上の点のうち前記第5直線上の点を第6点とし、前記第5直線上で前記第3点及び前記第4点から等距離の点を第1中間点とし、前記第5直線上で前記第5点及び前記第6点から等距離の点を第2中間点とし、前記第1中間点と前記中心軸とを通る直線を第1ブリッジ中心線とし、前記第2中間点と前記中心軸とを通る直線を第2ブリッジ中心線とし、前記第4直線上の前記第1点と前記第2点と結ぶ線分をブリッジ内周側端とし、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記第1ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第1磁石孔の内壁で囲まれた第1領域に存在する穴及び切欠をKmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSkmとし、前記穴Kmの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Kmの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとし、前記中心軸から重心Kgmまでの距離をrmとし、前記第1ブリッジ中心線と前記第4直線との第1交点から重心Kgmまでの距離をrbmとし、前記中心軸と重心Kgmとを通る直線を第6直線とし、前記第6直線と前記第1ブリッジ中心線とのなす角をθkmとし、前記第1交点と前記重心Kgmとを通る直線を第7直線とし、前記第7直線と前記第1ブリッジ中心線とのなす角度をθbkmとし(但し、前記のmはいずれも自然数である)、前記回転子鉄心のうちの前記ブリッジ内周側端、前記第2ブリッジ中心線、前記回転子鉄心の外接円、及び、前記第2磁石孔の内壁で囲まれた第2領域に存在する穴及び切欠をJnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域の面積及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域の面積をSjnとし、前記穴Jnの稜線で囲まれた領域及び前記切欠Jnの稜線と前記回転子鉄心の外接円とで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとし、前記中心軸から重心Jgnまでの距離をRnとし、前記第2ブリッジ中心線と前記第4直線との第2交点から重心Jgnまでの距離をRbnとし、前記中心軸と重心Jgnとを通る直線を第8直線とし、前記第8直線と前記第2ブリッジ中心線とのなす角をθjnとし、前記第2交点と前記重心Jgnとを通る直線を第9直線とし、前記第9直線と前記第2ブリッジ中心線とのなす角度をθbjnとしたとき(但し、前記のnはいずれも自然数である)、前記第1領域及び前記第2領域が前記d軸に関して非対称であり、前記回転子鉄心が次の式を満たす構造を有している、回転電機の回転子。
【数2】
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、
図1に示した回転電機1のうち回転子3のA-B線に沿った横断面図である。
【
図3】
図3は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した1磁極分の回転子3を拡大して示す横断面図である。
【
図5】
図5は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した1磁極分の回転子3を拡大して示す横断面図である。
【
図7】
図7は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した1磁極分の回転子3を拡大して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、回転電機1の断面図である。
本実施形態の回転電機1は、埋め込み永久磁石型(IPM:Interior Permanent Magnet)回転電機として構成され、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)において、駆動モータあるいは発電機に適用される。回転電機1は、略円筒状の固定子2と、永久磁石が埋設された略円筒状の回転子3と、固定子2及び回転子3を収容するハウジング10と、ハウジング10に固定されるカバー11と、を備えている。
【0010】
固定子2は、円筒形状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21に装着された巻線22と、を備えている。固定子鉄心21は、磁性材、例えば、円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。ハウジング10は、円筒状の内周面10Aを有している。固定子鉄心21は、内周面10Aに固定されている。なお、固定子2の構造は、特に制限されるものではなく、一般的な構造を広く採用することができる。
【0011】
回転子3は、固定子2の内側に位置し、固定子2との間に僅かな隙間(エアギャップ)をおいて配置されている。回転子3は、円柱状のシャフト31と、略円筒状の回転子鉄心32と、
図1に図示されていない永久磁石と、を備えている。シャフト31及び回転子鉄心32は、中心軸(回転中心)Rcを中心として回転可能に構成されている。
【0012】
シャフト31には、ベアリング41及び42が取り付けられている。ベアリング41及び42は、ハウジング10及びカバー11によって固定されている。シャフト31は、ベアリング41及び42を介して、中心軸Rcの周りで回転自在にハウジング10及びカバー11に支持されている。なお、図示した例は、シャフト31を支持する軸受構造の一例を簡略的に示すものであり、詳細な構造についての説明は省略する。
【0013】
回転子鉄心32は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、シャフト31の中心軸Rcの方向に積層した積層体として構成されている。回転子鉄心32の外周面32Sは、円筒状であり、僅かな隙間をおいて、固定子2の内周面2Sに対向している。回転子鉄心32は、その中心部に内孔32Hを有している。内孔32Hは、回転子鉄心32を軸方向に貫通している。シャフト31は、内孔32Hに挿入されている。一例では、回転子鉄心32は、シャフト31に焼き嵌めすることによってシャフト31に固定されている。
【0014】
なお、本明細書において、軸方向とは、
図1に示したシャフト31あるいは中心軸Rcが延びる方向に相当する。また、後述する径方向とは、中心軸Rcと直交する横断面において、中心軸Rcと回転子鉄心32の外周面32Sとを結ぶ直線が延びる方向に相当し、周方向とは、横断面において、回転子3の円周に沿った方向に相当する。
【0015】
図2は、
図1に示した回転電機1のうち回転子3のA-B線に沿った横断面図である。
本実施形態において、回転子3は、複数の磁極、例えば、8磁極を有している。回転子鉄心32において、周方向に隣り合う磁極間の境界と中心軸Rcとを通り回転子鉄心32の径方向に延びる軸をq軸と称し、q軸に対して周方向に電気的に90°離間した軸、つまり、1磁極の周方向の中心と中心軸Rcと通る軸をd軸と称する。ここでは、固定子によって形成される鎖交磁束の流れ易い方向をq軸と称する。d軸及びq軸は、回転子鉄心32の周方向に交互に、かつ、所定の位相で設けられている。回転子鉄心32の1磁極分とは、周方向に隣り合う2本のq軸間の領域(1/8周の周角度領域)をいう。
【0016】
回転子3は、シャフト31と、回転子鉄心32と、複数の永久磁石Mと、を備えている。回転子鉄心32には、1磁極ごとに、複数の永久磁石Mが挿入され、例えば、2つの永久磁石Mが挿入されている。各磁極において、2つの永久磁石Mは、d軸を挟んで配置されている。
【0017】
永久磁石Mは、例えば、横断面が矩形状の細長い平板状に形成され、回転子鉄心32の軸方向長さとほぼ等しい長さを有している。つまり、各永久磁石Mは、回転子鉄心32のほぼ全長に亘って埋め込まれている。なお、永久磁石Mは、軸方向に複数に分割された磁石を組み合わせて構成されてもよい。各永久磁石Mは、横断面において、一対の長辺及び一対の短辺と、4つの角と、を有している。なお、永久磁石Mの横断面の形状は、矩形状(長方形)に限らず、平行四辺形であってもよい。各永久磁石Mは、長辺に垂直な方向に磁化されている。d軸を挟んで周方向の両側に位置する2つの永久磁石M、すなわち、1磁極を構成する2つの永久磁石Mは、磁化方向が同一となるように配置されている。また、q軸を挟んで周方向の両側に位置する2つの永久磁石Mは、磁化方向が逆向きとなるように配置されている。
【0018】
回転子鉄心32は、複数の磁石孔Hを有している。複数の磁石孔Hは、それぞれ回転子鉄心32を軸方向に貫通している。永久磁石Mは、磁石孔Hに挿入されている。このような磁石孔Hは、磁石保持孔、磁石挿入孔などと称される場合がある。1磁極に着目すると、磁石孔Hは、d軸を挟んで周方向の両側にそれぞれ形成されている。これらの2つの磁石孔Hは、横断面において、中心軸Rcから回転子鉄心32の外周面32Sに向かうにしたがって、周方向の間隔が徐々に広がるよう配置されている。また、複数の磁石孔Hは、それぞれ円筒状の外周面32Sまで貫通している。これにより、磁束漏れが抑制される。
【0019】
図3は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
図3に示す例において、d軸を挟んで左側に位置する磁石孔を第1磁石孔H1とし、第1磁石孔H1に挿入された永久磁石を第1永久磁石M1とし、d軸を挟んで右側に位置する磁石孔を第2磁石孔H2とし、第2磁石孔H2に挿入された永久磁石を第2永久磁石M2として示している。第1永久磁石M1及び第2永久磁石M2は、長方形状の横断面を有している。
【0020】
回転子鉄心32は、第1永久磁石M1の長辺方向両端において第1永久磁石M1の一方の長辺と対向する縁B1から突出した一対の保持突起C1及びC2と、第1永久磁石M1の他方の長辺と対向する縁B2から突出した保持突起C3と、を有している。保持突起C3は、保持突起C2と対向している。第1永久磁石M1は、これらの保持突起C1乃至C3によって保持されている。また、回転子鉄心32は、第2永久磁石M2を保持するための保持突起C1乃至C3も有している。
【0021】
回転子鉄心32は、第1磁石孔H1と第2磁石孔H2との間にブリッジBRを有している。ブリッジBRは、以下に規定する領域内に存在している。すなわち、第1永久磁石M1の4つの角のうち、d軸に最も近い角を第1角A1とする。第2永久磁石M2の4つの角のうち、d軸に最も近い角を第2角A2とする。第1角A1と第2角A2とを通る直線を第1直線L1とする。第1角A1と中心軸Rcとを通る直線を第2直線L2とする。第2角A2と中心軸Rcとを通る直線を第3直線L3とする。第1磁石孔H1の内壁上の点のうち、第2直線L2と第3直線L3との間で最も径方向の内周側の点を第1点P1とする。第2磁石孔H2の内壁上の点のうち、第2直線L2と第3直線L3との間で最も径方向の内周側の点を第2点P2とする。第1点P1と第2点P2とを通る直線を第4直線L4とする。図示した1本のブリッジBRは、第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、及び、第4直線L4で囲まれた領域内に存在する回転子鉄心32の実肉部である。ブリッジBRは、径方向に延出している。
【0022】
ここで、ブリッジ中心線BCについて、
図3を参照しながら説明する。
本明細書において、ブリッジ中心線BCは、以下の通り定義する。すなわち、第1直線L1及び第4直線L4から等距離の直線を第5直線L5としたとき、ブリッジBRは、第5直線L5と交差する。第1磁石孔H1の内壁上の点のうち、第5直線L5上の点を第3点P3とする。第2磁石孔H2の内壁上の点のうち、第5直線L5上の点を第4点P4とする。第5直線L5上で第3点P3及び第4点P4から等距離の点を中間点Eとする。このとき、ブリッジ中心線BCは、中間点E及び中心軸Rcを通る線として定義する。この定義のブリッジ中心線BCは、d軸に一致している。ブリッジ中心線BCと第4直線L4とが交差する点を交点Fとする。
【0023】
第4直線L4上の第1点P1と第2点P2とを結ぶ線分をブリッジ内周側端Gとしたとき、回転子鉄心32のブリッジ内周側端Gよりも径方向の外周側を鉄心片Iとする。鉄心片Iは、第1領域I1及び第2領域I2を有している。第1領域I1は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、ブリッジ中心線BCと、回転子鉄心32の外接円Nと、第1磁石孔H1の内壁とで囲まれた領域(図中のブリッジ中心線BCよりも左側の領域)である。第2領域I2は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、ブリッジ中心線BCと、回転子鉄心32の外接円Nと、第2磁石孔H2の内壁とで囲まれた領域(図中のブリッジ中心線BCよりも右側の領域)である。第1領域I1及び第2領域I2は、d軸に関して非対称の形状を有している。
【0024】
第1領域I1に存在する穴及び切欠をKmとする。図示した例では、切欠Kmが第1領域I1に存在しないが、切欠Kmが第1領域I1に存在していてもよい。穴Kmの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSkmとする。穴Kmの稜線で囲まれる領域及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとする。但し、上記のmはいずれも自然数である。
【0025】
第2領域I2に存在する穴及び切欠をJnとする。穴Jnの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSjnとする。穴Jnの稜線で囲まれる領域及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとする。但し、上記のnはいずれも自然数である。
【0026】
図4に示すように、中心軸Rcから重心Kgmまでの距離をrmとする。ブリッジ中心線BCと第4直線L4との交点Fから重心Kgmまでの距離をrbmとする。中心軸Rcと重心Kgmとを通る直線を第6直線L6とする。第6直線L6とブリッジ中心線BCとのなす角をθkmとする。交点Fと重心Kgmとを通る直線を第7直線L7とする。第7直線L7とブリッジ中心線BCとのなす角度をθbkmとする。
【0027】
中心軸Rcから重心Jgnまでの距離をRnとする。交点Fから重心Jgnまでの距離をRbnとする。中心軸Rcと重心Jgnとを通る直線を第8直線L8とする。第8直線L8とブリッジ中心線BCとのなす角をθjnとする。交点Fと重心Jgnとを通る直線を第9直線L9とする。第9直線L9とブリッジ中心線BCとのなす角度をθbjnとする。なお、
図4では、第1領域I1の1つの重心Kgmを通る第6直線L6及び第7直線L7を図示しているが、複数の重心Kgmが存在する場合には複数の第6直線L6及び第7直線L7が存在する。また、
図4では、第2領域I2の1つの重心Jgnを通る第8直線L8及び第9直線L9を図示しているが、複数の重心Jgnが存在する場合には複数の第8直線L8及び第9直線L9が存在する。
【0028】
このとき、回転子鉄心32は、以下の式(1)を満たす構造を有している。
【数3】
【0029】
回転子3が一方向に回転する際の騒音低減、回転子鉄心32の重量低減、磁路の制御等の観点から、鉄心片Iの第1領域I1及び第2領域I2は、d軸に関して非対称の形状を有している。つまり、面積Skmが面積Sjnとは異なっていたり、距離rmが距離Rnとは異なっていたり、距離rbmが距離Rbnとは異なっていたり、なす角度θbkmとなす角θkmとの差分(θbkm-θkm)がなす角度θbjnとなす角度θjnとの差分(θbjn-θjn)とは異なっていたりする。
【0030】
このような場合であっても、回転子鉄心32が上記の式を満たす構造を有することにより、第1領域I1の重量分布と第2領域I2の重量分布とを揃えることができ、回転子3が回転した時に第1領域I1に生ずる遠心力と第2領域I2に生ずる遠心力との差に起因してブリッジBRに作用する曲げ応力を低減することができる。
【0031】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。以下の各構成例においては、回転子鉄心32の一部を拡大した横断面図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する他の構成例において、前述した構成例と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、前述した構成例とは異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0032】
図5は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
図5に示す構成例では、回転子鉄心32は、周方向において第1磁石孔H1と第2磁石孔H2との間に位置する空孔321を有している。空孔321は、回転子鉄心32を軸方向に貫通している。
【0033】
回転子鉄心32は、第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、及び、第4直線L4で囲まれた領域内に存在する実肉部である第1ブリッジBR1及び第2ブリッジBR2を有している。第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、及び、第4直線L4の定義については、
図3を参照して説明した通りである。第1ブリッジBR1は、d軸と第2直線L2との間で径方向に延出している。第2ブリッジBR2は、d軸と第3直線L3との間で径方向に延出している。
【0034】
第1ブリッジBR1の第1ブリッジ中心線BC1の定義について、以下に説明する。すなわち、第1直線L1及び第4直線L4から等距離の直線を第5直線L5としたとき、第1ブリッジBR1は、第5直線L5と交差する。第1磁石孔H1の内壁上の点のうち、第5直線L5上の点を第3点P3とする。空孔321の内壁上の点のうち、第2直線L2とd軸との間の第5直線L5上の点を第4点P4とする。第5直線L5上で第3点P3及び第4点P4から等距離の点を第1中間点E1とする。このとき、第1ブリッジ中心線BC1は、第1中間点E1及び中心軸Rcを通る線として定義する。第1ブリッジ中心線BC1と第4直線L4とが交差する点を第1交点F1とする。
【0035】
第2ブリッジBR2の第2ブリッジ中心線BC2の定義について、以下に説明する。すなわち、第2ブリッジBR2は、第5直線L5と交差する。空孔321の内壁上の点のうち、d軸と第3直線L3との間の第5直線L5上の点を第5点P5とする。第2磁石孔H2の内壁上の点のうち、第5直線L5上の点を第6点P6とする。第5直線L5上で第5点P5及び第6点P6から等距離の点を第2中間点E2とする。このとき、第2ブリッジ中心線BC2は、第2中間点E2及び中心軸Rcを通る線として定義する。第2ブリッジ中心線BC2と第4直線L4とが交差する点を第2交点F2とする。d軸は、第1ブリッジ中心線BC1と第2ブリッジ中心線BC2との間に位置している。
【0036】
第4直線L4上の第1点P1と第2点P2とを結ぶ線分をブリッジ内周側端Gとしたとき、鉄心片Iの第1領域I1は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、第1ブリッジ中心線BC1と、回転子鉄心32の外接円Nと、第1磁石孔H1の内壁とで囲まれた領域(図中の第1ブリッジ中心線BC1よりも左側の領域)である。鉄心片Iの第2領域I2は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、第2ブリッジ中心線BC2と、回転子鉄心32の外接円Nと、第2磁石孔H2の内壁とで囲まれた領域(図中の第2ブリッジ中心線BC2よりも右側の領域)である。第1領域I1及び第2領域I2は、d軸に関して非対称の形状を有している。
【0037】
第1領域I1に存在する穴及び切欠をKmとする。図示した例では、穴Kmが第1領域I1に存在しないが、穴Kmが第1領域I1に存在していてもよい。穴Kmの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSkmとする。穴Kmの稜線で囲まれる領域及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとする。但し、上記のmはいずれも自然数である。
【0038】
第2領域I2に存在する穴及び切欠をJnとする。図示した例では、穴Jnが第2領域I2に存在しないが、穴Jnが第2領域I2に存在していてもよい。穴Jnの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSjnとする。穴Jnの稜線で囲まれる領域及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとする。但し、上記のnはいずれも自然数である。
【0039】
図6に示すように、中心軸Rcから重心Kgmまでの距離をrmとする。第1ブリッジ中心線BC1と第4直線L4との第1交点F1から重心Kgmまでの距離をrbmとする。中心軸Rcと重心Kgmとを通る直線を第6直線L6とする。第6直線L6と第1ブリッジ中心線BC1とのなす角をθkmとする。第1交点F1と重心Kgmとを通る直線を第7直線L7とする。第7直線L7と第1ブリッジ中心線BC1とのなす角度をθbkmとする。
【0040】
中心軸Rcから重心Jgnまでの距離をRnとする。第2ブリッジ中心線BC2と第4直線L4との第2交点F2から重心Jgnまでの距離をRbnとする。中心軸Rcと重心Jgnとを通る直線を第8直線L8とする。第8直線L8と第2ブリッジ中心線BC2とのなす角をθjnとする。第2交点F2と重心Jgnとを通る直線を第9直線L9とする。第9直線L9と第2ブリッジ中心線BC2とのなす角度をθbjnとする。なお、
図6では、第1領域I1の1つの重心Kgmを通る第6直線L6及び第7直線L7を図示しているが、複数の重心Kgmが存在する場合には複数の第6直線L6及び第7直線L7が存在する。また、
図6では、第2領域I2の1つの重心Jgnを通る第8直線L8及び第9直線L9を図示しているが、複数の重心Jgnが存在する場合には複数の第8直線L8及び第9直線L9が存在する。
【0041】
このとき、回転子鉄心32は、上記の式(1)を満たす構造を有している。
【0042】
このため、
図5及び
図6に示す構成例においても、第1領域I1の重量分布と第2領域I2の重量分布とを揃えることができ、回転子3が回転した時に第1領域I1に生ずる遠心力と第2領域I2に生ずる遠心力との差に起因して第1ブリッジBR1及び第2ブリッジBR2に作用する曲げ応力を低減することができる。
【0043】
図7は、回転子3のうちの1磁極分の回転子鉄心32を拡大して示す横断面図である。
図7に示す構成例では、回転子鉄心32は、第1永久磁石M1の長辺方向両端において第1永久磁石M1の一方の長辺と対向する縁B1から突出した一対の保持突起C1及びC2と、第1永久磁石M1の他方の長辺と対向する縁B2から突出した一対の保持突起C3及びC4と、を有している。保持突起C3は保持突起C2と対向し、保持突起C4は保持突起C1と対向している。第1永久磁石M1は、これらの保持突起C1乃至C4によって保持されている。また、回転子鉄心32は、第2永久磁石M2を保持するための保持突起C1乃至C4も有している。
【0044】
回転子鉄心32は、第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、及び、第4直線L4で囲まれた領域内に存在する実肉部であるブリッジBRを有している。第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、及び、第4直線L4の定義については、
図3を参照して説明した通りである。ブリッジ中心線BCは、
図3を参照して説明した通り、中間点E及び中心軸Rcを通る線として定義する。ブリッジ中心線BCは、d軸に一致している。
【0045】
第4直線L4上の第1点P1と第2点P2とを結ぶ線分をブリッジ内周側端Gとしたとき、鉄心片Iの第1領域I1は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、ブリッジ中心線BCと、回転子鉄心32の外接円Nと、第1磁石孔H1の内壁とで囲まれた領域(図中のブリッジ中心線BCよりも左側の領域)である。鉄心片Iの第2領域I2は、回転子鉄心32のうちのブリッジ内周側端Gと、ブリッジ中心線BCと、回転子鉄心32の外接円Nと、第2磁石孔H2の内壁とで囲まれた領域(図中のブリッジ中心線BCよりも右側の領域)である。第1領域I1及び第2領域I2は、d軸に関して非対称の形状を有している。
【0046】
第1領域I1に存在する穴及び切欠をKmとする。穴Kmの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSkmとする。穴Kmの稜線で囲まれる領域及び切欠Kmの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をKgmとする。但し、上記のmはいずれも自然数である。
【0047】
第2領域I2に存在する穴及び切欠をJnとする。図示した例では、切欠Jnが第2領域I2に存在しないが、切欠Jnが第2領域I2に存在していてもよい。穴Jnの稜線で囲まれる領域の面積及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域の面積をSjnとする。穴Jnの稜線で囲まれる領域及び切欠Jnの稜線と回転子鉄心32の外接円Nとで囲まれた領域に実肉が存在する場合の重心をJgnとする。但し、上記のnはいずれも自然数である。
【0048】
図8に示すように、中心軸Rcから重心Kgmまでの距離をrmとする。交点Fから重心Kgmまでの距離をrbmとする。中心軸Rcと重心Kgmとを通る直線を第6直線L6とする。第6直線L6とブリッジ中心線BCとのなす角をθkmとする。交点Fと重心Kgmとを通る直線を第7直線L7とする。第7直線L7とブリッジ中心線BCとのなす角度をθbkmとする。
【0049】
中心軸Rcから重心Jgnまでの距離をRnとする。交点Fから重心Jgnまでの距離をRbnとする。中心軸Rcと重心Jgnとを通る直線を第8直線L8とする。第8直線L8とブリッジ中心線BCとのなす角をθjnとする。交点Fと重心Jgnとを通る直線を第9直線L9とする。第9直線L9とブリッジ中心線BCとのなす角度をθbjnとする。なお、
図8では、第1領域I1の1つの重心Kgmを通る第6直線L6及び第7直線L7を図示しているが、複数の重心Kgmが存在する場合には複数の第6直線L6及び第7直線L7が存在する。また、
図8では、第2領域I2の1つの重心Jgnを通る第8直線L8及び第9直線L9を図示しているが、複数の重心Jgnが存在する場合には複数の第8直線L8及び第9直線L9が存在する。
【0050】
このとき、回転子鉄心32は、上記の式(1)を満たす構造を有している。
【0051】
このため、
図7及び
図8に示す構成例においても、第1領域I1の重量分布と第2領域I2の重量分布とを揃えることができ、回転子3が回転した時に第1領域I1に生ずる遠心力と第2領域I2に生ずる遠心力との差に起因してブリッジBRに作用する曲げ応力を低減することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、漏れ磁束を抑制するとともに遠心力に対する応力を低減することが可能な回転電機の回転子を提供することができる。
【0053】
なお、この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、回転子3の磁極数、寸法、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。回転子3の各磁極における永久磁石Mの設置数は、2つに限らず、必要に応じて、増加可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…回転電機 2…固定子 3…回転子 Rc…中心軸 31…シャフト 32…回転子鉄心 32S…外周面 H1…第1磁石孔 H2…第2磁石孔 321…空孔 BR…ブリッジ M1…第1永久磁石 M2…第2永久磁石
【要約】
本実施形態の目的は、漏れ磁束を抑制するとともに遠心力に対する応力を低減することが可能な回転電機の回転子を提供することにある。
本実施形態の回転子は、ブリッジ内周側端、ブリッジ中心線、回転子鉄心の外接円、及び、第1磁石孔の内壁で囲まれた第1領域とブリッジ内周側端、ブリッジ中心線、回転子鉄心の外接円、及び、第2磁石孔の内壁で囲まれた第2領域とがd軸に関して非対称であり、回転子鉄心が次の式を満たす構造を有している、回転電機の回転子。
【数1】