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特許7124248エピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】エピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20220816BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220816BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K31/55 ZMD
A61K9/06
A61K9/107
A61K47/06
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/44
A61P27/14
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022531600
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047886
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2020215231
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021146903
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158414
【弁理士】
【氏名又は名称】秦野 正和
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 悠
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 幸史
(72)【発明者】
【氏名】江崎 善彦
(72)【発明者】
【氏名】阪中 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 豊実
(72)【発明者】
【氏名】刀祢 祐子
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-053907(JP,A)
【文献】特表2007-530481(JP,A)
【文献】特表2006-522053(JP,A)
【文献】特表2009-500397(JP,A)
【文献】特表2010-502564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として0.05~1%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、アレルギー性結膜炎を治療するための塗布投与用医薬組成物であって、眼瞼皮膚への投与に用いられる、医薬組成物
【請求項2】
患者に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
20℃において150Pa・s以下の粘度を有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
クリーム剤である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
油中水型エマルションである、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
0.05%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
エピナスチン又はその塩が、エピナスチンである、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
炭化水素、ロウ、油脂、脂肪族カルボン酸又はその塩、脂肪酸エステル及び高級アルコールからなる群より選択される1以上の油成分を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
界面活性化剤を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
界面活性化剤がグリセリン脂肪酸エステルである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
界面活性化剤が3.0~6.0のHLBを有する、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
パラベン類を含有しない、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
有効成分として0.05~0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、塗布投与用医薬組成物であって、眼瞼皮膚に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする油中水型エマルションのクリーム剤である、医薬組成物。
【請求項17】
有効成分として0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、塗布投与用医薬組成物であって、眼瞼皮膚に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする油中水型エマルションのクリーム剤である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エピナスチン又はその塩を含む医薬品としては、例えば、アレルギー性結膜炎治療剤である、エピナスチン塩酸塩を有効成分とするアレジオン(登録商標)LX点眼液0.1%が上市されており、かかる点眼液は通常1回1滴、1日2回点眼の用法・用量で使用されている(非特許文献1)。点眼液では、服薬アドヒアランスの観点から、点眼回数を少なくすることが望ましいとされているが、点眼回数を減らすと眼組織中の有効濃度を維持できずに薬効を低減させる可能性があり、薬効を発揮するためには眼組織中の有効濃度を維持する必要がある。眼組織中の有効濃度を維持する方法としては、有効成分の配合濃度を増大させる方法があるが、有効成分の配合濃度を増大させると副作用の発生のリスクが高まる可能性がある。実際に、非特許文献1では、エピナスチン塩酸塩の配合濃度を高くするほどに眼刺激性を生じることが示唆されており、点眼液では安全に投与できる有効成分の配合可能な濃度には上限があると考えられている。
【0003】
そこで、近年、眼組織中の有効濃度を維持する試みとして、点眼以外の投与方法を選択することが検討されている。例えば、特許文献1では、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤(具体的には貼付剤)について記載されている。また、エピナスチン又はその塩についても、点眼液以外の製剤として眼科用経皮吸収型製剤が報告されている(特許文献2)。特許文献2では、0.05%(w/v)の塩酸エピナスチンを含む点眼剤に比べて、10%(w/w)の高濃度の塩酸エピナスチンを含む貼付剤適用群が長時間にわたって抗アレルギー効果を示すことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2004/064817
【文献】WO2007/007851
【非特許文献】
【0005】
【文献】アレジオン(登録商標)LX点眼液0.1%医薬品インタビューフォーム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮吸収型の製剤は、貼付剤、塗布剤、エアゾール剤等に大別されるが、その中でも貼付剤は有効成分を含む基剤を皮膚表面に長時間粘着させて用いるために、皮膚表面の患部又は皮膚表面を通じて局所患部へ有効成分を持続的に送達することに適している。その一方で、貼付剤は長時間皮膚に接触させるために皮膚炎(かぶれ)等を起こす場合があり、特に皮膚が薄く刺激に敏感な眼瞼皮膚であれば、その懸念はより高まる可能性がある。また、特許文献1において、塗布剤の一種である眼軟膏は、点眼液に比べて薬効の持続性が良好であるものの、有効成分の投与量を正確に調整することが難しいこと、そして、施用時に視力低下を引き起こすことが記載されており、眼疾患の治療においては副作用の発生のリスクが高い製剤であることが示されている。さらに、塗布剤の一種である軟膏剤は、油脂性基剤のみで構成されるために、べたつきがあり、水洗除去が困難で皮膚上で伸ばしにくく、使用感の点において十分ではなく、塗布剤の一種であるクリーム剤は、軟膏剤に比べると滑らかで、水洗除去が容易で皮膚上で伸ばしやすく、使用感には優れるが、親水性物質を含むことから防腐剤や界面活性化剤等、様々な添加剤を含むために皮膚刺激性が懸念される。
【0007】
以上を鑑みると、経皮吸収型の製剤、例えば塗布投与用製剤を開発する上で、副作用の観点から有効成分の配合濃度を低減し、かつ服薬アドヒアランスの観点からも投与回数をより少なくすることが望まれる。しかしながら、これまでに皮膚刺激性が低く、低濃度かつ1日1回の投与で効果を奏する塗布投与用アレルギー性結膜炎治療剤は知られていないし、医薬品としても上市されていない。
【0008】
したがって、低濃度かつ1日1回の投与で効果を奏する塗布投与用アレルギー性結膜炎治療剤、特に有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する新たな医薬組成物を提供することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する、新たな医薬組成物について鋭意研究を行う過程において、低濃度のエピナスチン又はその塩を含む医薬組成物を眼瞼皮膚に投与した場合に、眼瞼皮膚組織に滞留した有効成分が眼組織に徐々に移行することによって、眼組織中の有効成分の濃度が長時間にわたって維持され、さらに、アレルギー性結膜炎治療剤としての治療効果を奏することを見出した。加えて、低濃度のエピナスチン又はその塩を含む医薬組成物は皮膚刺激性が低く、皮膚が薄く刺激に敏感な眼瞼皮膚への投与であっても安全性面への懸念が最小化でき、また、製剤粘度を調整することによって使用感に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
具体的に、本発明は以下を提供する。
(1)有効成分として0.05~1%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物。
(2)眼瞼皮膚への投与に用いられる、(1)に記載の医薬組成物。
(3)患者に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)アレルギー性結膜炎を治療するための、(1)~(3)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(5)20℃において150Pa・s以下の粘度を有する、(1)~(4)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(6)軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(7)クリーム剤である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(8)油中水型エマルションである、(1)~(7)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(9)0.05%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩である、(1)~(8)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(10)0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩である、(1)~(8)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(11)エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、(1)~(10)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(12)エピナスチン又はその塩が、エピナスチンである、(1)~(10)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(13)炭化水素、ロウ、油脂、脂肪族カルボン酸又はその塩、脂肪酸エステル及び高級アルコールからなる群より選択される1以上の油成分を含有する、(1)~(12)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(14)界面活性化剤を含有する、(1)~(12)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(15)界面活性化剤がグリセリン脂肪酸エステルである、(14)に記載の医薬組成物。
(16)界面活性化剤が3.0~6.0のHLBを有する、(14)又は(15)に記載の医薬組成物。
(17)パラベン類を含有しない、(1)~(16)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(18)有効成分として0.05~0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、塗布投与用医薬組成物であって、眼瞼皮膚に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする油中水型エマルションのクリーム剤である、医薬組成物。
(19)有効成分として0.5%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、塗布投与用医薬組成物であって、眼瞼皮膚に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする油中水型エマルションのクリーム剤である、医薬組成物。
(20)有効成分として0.05~1%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する医薬組成物を眼瞼皮膚に投与することによって、治療有効量のエピナスチンを眼組織に移行させる方法。
(21)有効成分として0.05~1%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する医薬組成物を眼瞼皮膚に投与することによって、治療有効量のエピナスチンを眼瞼皮膚から眼組織に徐放させる方法。
(22)患者に1日1回投与されるように用いられることを特徴とする、(20)又は(21)に記載の方法。
(23)眼組織が結膜である、(20)~(22)のいずれか1つに記載の方法。
【0011】
さらに、本発明は以下を提供する。
(24)治療が必要な患者に、治療有効量の(1)~(19)のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、アレルギー性結膜炎の治療方法。
(25)アレルギー性結膜炎を治療するための医薬を製造するための、(1)~(19)のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【0012】
なお、前記(1)から(25)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低濃度かつ投与回数を減らしても十分な治療効果を有する、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物を提供することができる。
【0014】
本発明は、エピナスチンを低濃度で使用することができるため、医薬品として十分な安全性を担保することができる。また、本発明は、皮膚刺激性が低いことから、刺激に敏感な組織(例えば、眼瞼皮膚)に投与しても安全性面への懸念が最小化できる。
【0015】
本発明は、医薬組成物の粘度を調整する、例えば、20℃における粘度を150Pa・s以下にすることによって、医薬組成物の使用感を良くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明において、「エピナスチン」とは、化学名(±)-3-Amino-9,13b-dihydro-1H-dibenz[c,f]imidazo[1,5-a]azepineで表される化合物であり、また下記式:
【化1】
で表される化合物である。
【0018】
本発明の医薬組成物において、含有されるエピナスチンはラセミ体であってもよく、光学異性体であってもよい。
【0019】
本発明の医薬組成物において、含有されるエピナスチンは塩であってもよく、医薬として許容される塩であれば特に制限はない。塩としては例えば、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。
【0020】
無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。
【0021】
有機酸との塩としては、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等との塩が挙げられる。
【0022】
エピナスチンの塩としては、一塩酸塩(エピナスチン塩酸塩)が特に好ましい。
【0023】
本発明の医薬組成物において、含有されるエピナスチン又はその塩は、水和物又は溶媒和物の形態をとってもよい。
【0024】
本発明の医薬組成物を調製する場合には、該医薬組成物中のエピナスチンの形態はエピナスチンの塩であってもよいが、経皮吸収性をより効率的に高めるためには、遊離形のエピナスチンであることがより好ましい。本発明の医薬組成物の製造工程において、遊離形のエピナスチンを使用して医薬組成物を調製してもよいが、エピナスチンの塩(例えば、エピナスチン塩酸塩)と適量の塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を使用して工程中に脱塩を行い、該医薬組成物中に遊離形のエピナスチンを生じさせてもよい。
【0025】
本発明の医薬組成物において、エピナスチン又はその塩は、医薬として所望する治療効果を奏するのに十分な量であればよいが、含有量が低すぎると所望の薬効を得ることが難しい。また含有量が高すぎると、例えば皮膚へ投与した場合、投与部位の皮膚組織中に多量の成分が滞留することにより予期せぬ副作用の発生のリスクが高まる上に、副作用が発生した場合に皮膚組織中に滞留する成分を除去することは容易ではない。エピナスチン又はその塩の含有量については、その下限は、例えば0.01%(w/w)であり、0.03%(w/w)が好ましく、0.05%(w/w)がより好ましい。その上限は、例えば3%(w/w)であり、2%(w/w)が好ましく、1%(w/w)又は1%(w/w)未満がより好ましい。また、本発明の医薬組成物において、エピナスチン又はその塩の含有量は、0.03~2%(w/w)が好ましく、0.05~1%(w/w)又は0.05~1%(w/w)未満がより好ましく、0.05~0.5%(w/w)がさらに好ましく、0.1~0.5%(w/w)が特に好ましい。さらに、エピナスチン又はその塩の含有量は、具体的には、0.05%(w/w)、0.1%(w/w)、0.2%(w/w)、0.25%(w/w)、0.3%(w/w)、0.4%(w/w)、0.5%(w/w)、0.6%(w/w)、0.7%(w/w)、0.75%(w/w)、0.8%(w/w)、0.9%(w/w)、又は1%(w/w)が好ましく、0.5%(w/w)が特に好ましい。
【0026】
なお、本発明において、「%(w/w)」は、本発明の医薬組成物100g中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する。本発明においてエピナスチンの塩が含有される場合、その値はエピナスチンの塩の含有量である。また、本発明においてエピナスチン又はその塩が、水和物又は溶媒和物の形態をとって配合される場合、その値はエピナスチン又はその塩の、水和物又は溶媒和物の含有量である。以下、特に断りがない限り同様とする。
【0027】
本発明の医薬組成物は、塗布による経皮投与(塗布投与)で用いることが好ましいが、塗布投与以外の経皮投与等の非経口(例えば、局所)投与で用いてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物は、外用剤として調製することができ、また経皮投与用外用剤としても調製することができる。本発明の医薬組成物は、塗布投与用外用剤として調製することが好ましい。さらに、本発明の医薬組成物は、眼科用外用剤が好ましく、眼科用経皮吸収型製剤がより好ましく、眼科用塗布投与用製剤がさらに好ましい。
【0029】
本発明の医薬組成物の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、外用液剤(ローション剤、リニメント剤)、外用固形剤(外用散剤)等が挙げられる。本発明の医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び外用液剤が好ましく、軟膏剤、クリーム剤及びゲル剤がより好ましく、クリーム剤が特に好ましい。
【0030】
これらは当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。
【0031】
本発明の医薬組成物は、眼の近傍に投与することが好ましい。「眼の近傍」とは上眼瞼、下眼瞼等の眼瞼及びその近傍、若しくは眼窩の周囲であり、眼瞼皮膚及びその近傍の皮膚、若しくは眼窩周囲の皮膚も含まれる。眼の近傍への投与には、例えば、上眼瞼、下眼瞼又はその両方の眼瞼皮膚及びその近傍への塗布、若しくは眼窩周囲の皮膚への塗布が含まれる。なお、眼瞼縁は眼の近傍に含まれてもよいが、まばたきによって眼瞼縁に投与された医薬組成物の一部が敏感な眼表面に触れることによって眼刺激性を生じやすくなる可能性が高まることから、眼瞼縁には投与しないことがより好ましく、また眼内に投与しないこともさらに好ましい。
【0032】
本発明の医薬組成物を眼の近傍に投与する場合、眼瞼皮膚は組織が非常に薄くて柔らかく、また眼瞼皮膚を強く押圧すると直下にある眼球の痛みや視野に影響を及ぼす懸念がある。従って、本発明の医薬組成物を投与する場合には、強く押圧しながら眼瞼皮膚上に延ばして塗布するのではなく、滑らかに伸びることによって容易に均一に眼瞼皮膚上に塗布できることが好ましい。また、薬液が例えば水のような液体である場合には、押圧することなく眼瞼皮膚に容易に塗布できる一方で、薬液が垂れることによって眼や口に入ってしまい、刺激や不快を感じる懸念がある。従って、本発明の医薬組成物は眼瞼皮膚に投与しても垂れない程度に粘度を有することが好ましい。
【0033】
本発明の医薬組成物において、20℃における粘度は、例えば300Pa・s(パスカル・秒)以下であり、200Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以下であることがさらに好ましく、80Pa・s以下であることが特に好ましい。また、例えば0.001Pa・s以上であり、0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.1Pa・s以上であることがより好ましく、1Pa・s以上であることがさらに好ましく、10Pa・s以上であることが特に好ましい。また、例えば0.001~300Pa・sであり、0.01~200Pa・sであることが好ましく、0.1~150Pa・sであることがより好ましく、1~100Pa・sであることがさらに好ましく、10~80Pa・sであることが特に好ましい。また、例えば5~150Pa・s、5~100Pa・s、10~150Pa・s、10~100Pa・sであることもより好ましい。
なお本発明の医薬組成物の粘度は、例えば、第十七改正日本薬局方の一般試験法に記載の粘度測定法によって、測定することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて医薬品の添加剤を用いることができ、例えば、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤、粘稠化剤、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、界面活性化剤、清涼化剤、油成分等を加えることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、適量を配合することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物にpH調節剤を配合する場合のpH調節剤は、医薬品の添加剤として使用可能なpH調節剤を適宜配合することができる。pH調節剤としては、例えば、酸又は塩基がある。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、それらの塩等が挙げられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、これらは、水和物又は溶媒和物であってもよい。なお、塩基であれば、エピナスチンの塩を脱塩してエピナスチンの遊離体を生成させることを目的として添加されてもよい。
【0036】
本発明の医薬組成物のpHは、医薬品として許容される範囲内にあればよく、例えば4.0~8.5又は4.0~8.0の範囲内であり、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.5がより好ましい。特に好ましいpHは、6.7~7.3である。例えば、そのpHは、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2又は7.3であってもよい。
【0037】
本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤は、医薬品の添加剤として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸又はその塩、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモール、有機酸又はその塩等が挙げられ、これらの水和物又は溶媒和物であってもよい。
【0038】
リン酸又はその塩としては、例えば、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。
【0039】
有機酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、ε-アミノカプロン酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アミノ酸類等が挙げられ、その塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0040】
本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.01~5%(w/w)であり、0.05~3%(w/w)が好ましく、0.1~2%(w/w)がより好ましく、0.1~1%(w/w)がさらに好ましいが、緩衝剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また、本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合には、緩衝剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0041】
本発明の医薬組成物に配合されるリン酸又はその塩及び有機酸又はその塩は、pH調節剤及び緩衝剤としての作用を有することがある。
【0042】
本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。等張化剤としては、例えば、イオン性等張化剤、非イオン性等張化剤等が挙げられる。好ましくはイオン性等張化剤である。
【0043】
イオン性等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、これらの水和物又は溶媒和物であってもよい。
【0044】
非イオン性等張化剤としては、例えば、グリセリン(濃グリセリン)、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトース、スクロース、キシリトール等が挙げられ、これらの水和物又は溶媒和物であってもよい。
【0045】
本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.01~5%(w/w)であり、0.05~3%(w/w)が好ましく、0.1~2%(w/w)がより好ましく、0.1~1%(w/w)がさらに好ましいが、等張化剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また、本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合には、等張化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0046】
本発明の医薬組成物に粘稠化剤を配合する場合の粘稠化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な粘稠化剤を適宜配合することができる。粘稠化剤としては、例えば、セルロース系高分子、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ムコ多糖類又は多価アルコールが挙げられ、さらにそれらの塩、それらの水和物又は溶媒和物であってもよい。セルロース系高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等が挙げられる。カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、カーボポール等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ムコ多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。好ましくはセルロース系高分子である。
【0047】
本発明の医薬組成物に粘稠化剤を配合する場合の粘稠化剤の含有量は、粘稠化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.01~20%(w/w)であり、0.1~10%(w/w)が好ましく、1~10%(w/w)がより好ましいが、粘稠化剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また、本発明の医薬組成物の剤形がゲル剤であれば、例えば20%(w/w)以上含まれていてもよい。また、本発明の医薬組成物に粘稠化剤を配合する場合には、粘稠化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0048】
本発明の医薬組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。安定化剤としては、例えば、エデト酸又はその塩、シクロデキストリン等が挙げられ、さらにそれらの水和物又は溶媒和物であってもよい。好ましくはエデト酸又はその塩である。
【0049】
エデト酸又はその塩としては、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム(エデト酸ナトリウム)、エデト酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
本発明の水性医薬組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.01~5%(w/w)であり、0.01~3%(w/w)が好ましく、0.01~1%(w/w)がより好ましいが、安定化剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また本発明の医薬組成物に安定化剤を配合する場合には、安定化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0051】
本発明の医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、システイン、N-アセチルシステイン、メチオニン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられ、さらにそれらの水和物又は溶媒和物であってもよい。また、含有される抗酸化剤がキラル中心を有する場合、それらは、ラセミ体であっても光学異性体であってもよい。好ましくはジブチルヒドロキシトルエン、2-メルカプトベンズイミダゾールである。
【0052】
本発明の水性医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤の含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.01~2%(w/w)であり、0.01~1%(w/w)が好ましく、0.01~0.5%(w/w)がより好ましいが、抗酸化剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また本発明の医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合には、抗酸化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0053】
本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤は、医薬品の添加剤として使用可能な防腐剤を適宜配合することができ、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、パラベン、亜塩素酸ナトリウム、フェノキシエタノール、チモール、ソルビン酸又はクロロブタノール等が挙げられる。
パラベンとしては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0054】
本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤の含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.001~1%(w/w)であるが、防腐剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また、本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合には、防腐剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0055】
本発明の医薬組成物が、防腐剤を含有しなくても医薬品に求められる保存効力を発揮し得る場合には、防腐剤を配合しないことが好ましく、例えば、パラベンを配合しないことが好ましい。医薬品に求められる保存効力は、例えば、第十七改正日本薬局方において製剤区分別に判定基準が定められており、各製剤はその判定基準を満たせば、保存効力を有するものと認められる。また、エピナスチン又はその塩は配合される濃度によっては保存効力を発揮することから、本発明の医薬組成物はその製剤の種類に応じてパラベンを配合しなくても所望の保存効力を発揮し得る。所望の保存効力とは、例えば、第十七改正日本薬局方に記載される保存効力試験法に適合することを指す。また、防腐剤を含有しないことにより、本発明の医薬組成物を皮膚に塗布した場合の刺激性が低減され得る。
【0056】
本発明の医薬組成物に界面活性化剤を配合する場合の界面活性化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な界面活性化剤を適宜配合することができる。界面活性化剤としては、例えば、カチオン性界面活性化剤、アニオン性界面活性化剤、非イオン性界面活性化剤等が挙げられる。
【0057】
カチオン性界面活性化剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアミンポリオキシエチレン付加物、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、脂肪酸ポリアミン縮合物、アルキルイミダゾリン、1-アシルアミノエチル-2-アルキルイミダゾリン、1-ヒドロキシルエチル-2-アルキルイミダゾリン等が挙げられる。
【0058】
アニオン性界面活性化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、レシチン等のリン脂質等が挙げられる。
【0059】
非イオン性界面活性化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸ポリオキシル55、ミリスチン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸ソルビタン、ラウリル酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ベヘン酸ソルビタン、トリベヘン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65等が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100等が挙げられる。
ポリオキシルヒマシ油としては、例えば、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンアラキルエーテル等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、モノカプリル酸ポリグリセリル、ジカプリル酸ポリグリセリル、トリカプリル酸ポリグリセリル、モノカプリン酸グリセリル、ジカプリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、モノカプリン酸ポリグリセリル、ジカプリン酸ポリグリセリル、トリカプリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、ジラウリン酸ポリグリセリル、トリラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、モノミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、モノパルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、トリパルミチン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、モノベヘン酸ポリグリセリル、ジベヘン酸ポリグリセリル、トリベヘン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、モノリノール酸グリセリル、ジリノール酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、モノリノール酸ポリグリセリル、ジリノール酸ポリグリセリル、トリリノール酸ポリグリセリル、モノリノレン酸グリセリル、ジリノレン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、モノリノレン酸ポリグリセリル、ジリノレン酸ポリグリセリル、トリリノレン酸ポリグリセリル、モノリシノ―ル酸グリセリル、ジリシノ―ル酸グリセリル、トリリシノ―ル酸グリセリル、モノリシノ―ル酸ポリグリセリル、ジリシノ―ル酸ポリグリセリル、トリリシノ―ル酸ポリグリセリル、縮合リシノール酸ポリグリセリル(ポリリシノール酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリルまたはポリリシノレイン酸ポリグリセリルともいう)、モノアラキドン酸グリセリル、ジアラキドン酸グリセリル、トリアラキドン酸グリセリル、モノアラキドン酸ポリグリセリル、ジアラキドン酸ポリグリセリル、トリアラキドン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。
より好ましくは非イオン性界面活性剤であり、さらに好ましくはグリセリン脂肪酸エステルである。例えば、縮合リシノール酸ポリグリセリルである。
【0060】
本発明の医薬組成物に界面活性化剤を配合する場合の界面活性化剤の含有量は、界面活性化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.1~20%(w/w)であり、0.5~10%(w/w)が好ましく、1~5%(w/w)がより好ましいが、界面活性化剤以外の作用も有する場合にはこの限りではない。また、本発明の医薬組成物に界面活性化剤を配合する場合には、界面活性化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよく、また、2種以上の界面活性化剤の混合物として用いてもよい。
界面活性化剤は、それらの分子の親水性部分と親油性部分とのバランスによって特性付けられ、親水性・親油性バランス(HLB)数を有する。HLBは親水性の増加に伴って増加し、同じ成分名であっても製造会社によってHLBは異なることがある。
本発明の医薬組成物に界面活性化剤を配合する場合の界面活性化剤のHLBは、塗布投与用の製剤として調製できれば特に制限はなく、例えば1~20であり、1.0~10.0が好ましく、2.0~8.0がより好ましく、3.0~6.0がさらに好ましい。またHLB1.0~10.0の非イオン性界面活性化剤が好ましく、2.0~8.0の非イオン性界面活性化剤がより好ましく、3.0~6.0の非イオン性界面活性化剤がさらに好ましい。またHLB1.0~10.0のグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、2.0~8.0のグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、3.0~6.0のグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましい。HLB3.0~6.0のグリセリン脂肪酸エステルとは、例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル(ステアリン酸ポリグリセリル-2)、モノステアリン酸テトラグリセリル(ステアリン酸ポリグリセリル-4)、モノイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル(イソステアリン酸ポリグリセリル-2)、ペンタステアリン酸デカグリセリル(ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10)、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10)、ミリスチン酸グリセリル、リシノール酸ポリグリセリル、縮合リシノール酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル(オレイン酸ポリグリセリル-2)、モノオレイン酸テトラグリセリル(オレイン酸ポリグリセリル-4)、ペンタオレイン酸デカグリセリル(ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10)等が挙げられる。
【0061】
本発明の医薬組成物に清涼化剤を配合する場合の清涼化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な清涼化剤を適宜配合することができる。清涼化剤としては、例えば、テルペノイド、テルペノイドを含有する精油等が挙げられる。
【0062】
テルペノイドとしては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル等が挙げられ、d体、l体及びdl体のいずれであってもよい。
【0063】
テルペノイドを含有する精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、ハッカ油等が挙げられる。
【0064】
本発明の医薬組成物に清涼化剤を配合する場合の清涼化剤の含有量は、清涼化剤の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.001~1%(w/w)である。また、本発明の医薬組成物に清涼化剤を配合する場合には、清涼化剤を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0065】
本発明の医薬組成物に油成分を配合する場合の油成分の含有量は、医薬品の添加剤として使用可能な油成分を適宜配合することができる。油成分としては、例えば、炭化水素、ロウ、油脂、脂肪族カルボン酸又はその塩、脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、高級アルコール等が挙げられる。
【0066】
炭化水素としては、例えば、ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィン(軽質流動パラフィン、重質流動パラフィン)、固形パラフィン(パラフィン)、スクアレン、スクワラン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、これらの混合物でもよく、例えば、パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物等が挙げられる。
【0067】
ロウとしては、例えば、ミツロウ、サラシミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0068】
油脂としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油等が挙げられる。
【0069】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の短鎖脂肪酸類、カプリル酸、カプリン酸等の中鎖脂肪酸類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノ―ル酸(リシノレイン酸)、アラキドン酸等の長鎖脂肪酸類、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられ、分枝の脂肪族カルボン酸も含まれる。脂肪族カルボン酸の塩としては、例えば、これらのナトリウム塩等が挙げられる。
【0070】
本発明において、脂肪酸エステルとは、脂肪族カルボン酸のカルボキシル基とアルコールがエステル結合した化合物を指す。脂肪族カルボン酸のカルボキシル基とエステル結合してもよいアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、イソペンタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ジポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコールの多量体(重合体)等が挙げられる。例えば、ラウリン酸ポリエチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチル、パルミチン酸グリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸イソプロピル、リノール酸プロピレングリコール、リノレン酸エチル、リシノ―ル酸(リシノレイン酸)エチレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル等が挙げられる。脂肪族エステルが2以上のエステル結合を有する場合、そのエステル結合を構成するアルコールは同一でも異なっていてもよい。
【0071】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0072】
本発明の医薬組成物に配合される油成分が界面活性化剤としての作用を有する場合には、油成分を界面活性化剤と読み替えてもよい。
【0073】
本発明の医薬組成物に配合される油成分が溶解剤(可溶化剤)としての作用を有する場合には、油成分を溶解剤として読み替えてもよい。
【0074】
本発明の医薬組成物に油成分を配合する場合の油成分の含有量は、油成分の種類などにより適宜調整することができ、例えば0.1~50%(w/w)であり、1~40%(w/w)が好ましく、10~30%(w/w)がより好ましいが、本発明の医薬組成物の剤形が軟膏剤であれば、例えば50%(w/w)以上含まれていてもよい。また、本発明の医薬組成物に油成分を配合する場合には、油成分を1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0075】
本発明の医薬組成物は、溶媒及び/又は分散媒をさらに含んでいてもよい。溶媒及び/又は分散媒を含む本発明の医薬組成物は、構成成分が全て溶解又は一部懸濁していてもよく、またエマルション又は半固体状の形態であってもよい。溶媒及び/又は分散媒は、限定されるものではないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン(グリセロール)、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、液体ポリエチレングリコール、マクロゴール等)等が挙げられる。
【0076】
本発明の医薬組成物に溶媒及び/又は分散媒を配合する場合の溶媒及び/又は分散媒の含有量は、それらの種類などにより適宜調整することができるが、例えば医薬組成物の総重量に対して、10%(w/w)以上が好ましく、30%(w/w)以上がより好ましい。また、本発明の医薬組成物に溶媒及び/又は分散媒を配合する場合には、溶媒及び/又は分散媒は、1種又は2種以上一緒に用いてもよい。
【0077】
本発明の医薬組成物をエマルションとして使用する場合は、本発明の医薬組成物は、水中油型エマルション(水相を連続相として、水相と分散した油性液滴から構成されるエマルション)であっても油中水型エマルション(油相を連続相として、油と分散した水性液滴から構成されるエマルション)であってもよい。本発明の医薬組成物は、好ましくは油中水型エマルションである。
【0078】
油性液滴又は水性液滴の平均サイズは、例えば、20~3000nmであり、好ましくは50~2000nmであり、より好ましくは100~1000nmであり、さらに好ましくは200~800nmである。
【0079】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において汎用される通常の方法に従って製造することができる。例えば、有効成分の他に、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、界面活性化剤、油成分等の添加剤及び水等の溶媒及び/又は分散媒を混合して製造することができる。また必要に応じて、当該技術分野において汎用される通常の滅菌方法に従って無菌製剤として製造することができる。滅菌方法としては、製造工程中に使用可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌、乾熱滅菌、電子線(EB)滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、過酸化水素ガス滅菌である。
【0080】
本発明の医薬組成物は、特に断りのない限り、エピナスチン又はその塩以外の医薬活性成分を含んでいてもよい。他の医薬活性成分として、例えば、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ビタミン剤、血管収縮剤、散瞳剤、縮瞳剤、眼圧降下剤、ドライアイ治療剤、局所麻酔剤等が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は、エピナスチン又はその塩を唯一の有効成分として含んでいてもよい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、特にアレルギー性結膜炎の治療剤として有用である。本発明において、「アレルギー性結膜炎の治療」とは、アレルギー性結膜炎及びその症状のあらゆる治療(例えば、改善、軽減、進行の抑制など)及びその予防が含まれる。
【0082】
本発明において、「眼組織」とは、例えば、結膜、角膜、涙液、房水、前房等が挙げられる。特にアレルギー性結膜炎の治療のためには、エピナスチン又はその塩は結膜中に移行することが好ましい。
【0083】
本発明において、「患者」とは、ヒトのみに限らずその他の動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ等も意味する。患者は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。本発明において、「治療有効量」とは、未治療対象と比べて、疾患及びその症状の治療効果をもたらす量、又は疾患及びその症状の進行の遅延をもたらす量などを指す。
【0084】
本発明の医薬組成物は、1日1回投与で用いることが好ましいが、所望の薬効を奏するのに十分であれば用法用量は特に制限されない。
【0085】
本発明の医薬組成物を軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤として使用する場合、その投与量は所望の薬効を奏するのに十分であれば特に制限はなく、また含有する有効成分の含有量や患者によっても異なる。例えばクリーム剤では、例えば成人の場合、1回当たり適量、具体的には約1mg~約5g、好ましくは約5mg~約1g、より好ましくは約10mg~約500mg、特に好ましくは約20mg~約100mgを皮膚に塗布して投与することができる。例えば、その投与量は30mgである。投与の一例として、本発明の医薬組成物を眼科用塗布投与用製剤として使用する場合、患者自らが医薬組成物を適量、例えば約20~約40mgを指に取り、片眼の上眼瞼皮膚と下眼瞼皮膚に約半分ずつとなるように分配してそれぞれ塗布し、もう片眼についても同様に塗布する。なお、実際の使用においては、医薬組成物を秤量することなく、1眼1回当たりの前記投与量を目安として、患者自らが医薬組成物を目分量で取り出して使用してもよい。また本発明の医薬組成物が収容される容器のサイズや形状にもよるが、投与量の目安として、成人の人差し指の先から第1関節まで薬剤を載せた量を1FTU(1フィンガー・チップ・ユニット)として、例えば0.5FTUまたは1FTUを取り出して使用してもよい。
【0086】
皮膚に塗布した場合の適用時間は、0.5~24時間が好ましく、2~12時間がより好ましく、4~8時間がさらに好ましい。適用時間を経過した後は、皮膚上の医薬組成物を除去したとしても皮膚組織中に十分量の有効成分が滞留しており、これが徐放されることによって薬効の持続が期待できる。用法の一例として、本発明の医薬組成物を就寝前に眼瞼皮膚に投与し、起床後に除去することによって、日中に投与せずともアレルギー性結膜炎を治療及び予防する効果の持続が期待できる。
【0087】
本発明の医薬組成物を軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤として使用する場合、収容される容器には特に制限はなく、チューブ、ボトル、缶等のいずれに収容されていてもよい。容器の材質に特に制限はなく、ポリエチレン(PE)製、ポリプロピレン(PP)製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製、ポリプロピレン-ポリエチレンコポリマー製、ポリ塩化ビニル製、アクリル製、ポリスチレン製、ポリ環状オレフィンコポリマー製等の樹脂製容器、アルミニウム等の金属製容器、樹脂、紙、アルミ泊等の複数の材料を貼り合わせて加工されたラミネート容器であってもよい。また、樹脂製容器の材質が、例えばポリエチレンであれば、ポリエチレンはその密度によって分類され、低密度ポリエチレン(LDPE)製、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)製、中密度ポリエチレン(MDPE)製、高密度ポリエチレン(HDPE)製等の容器を用いることができる。
【0088】
本発明の医薬組成物は、ハードコンタクトレンズ装用時においても、ソフトコンタクトレンズ装用時においても使用することができる。
【0089】
以下に、製剤例及び実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0090】
以下の実施例において、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレンアラキルエーテル・ステアリルアルコール混合物、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびポリソルベート80は下記のものを使用したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
・縮合リシノレイン酸ポリグリセリル:NIKKOL Hexaglyn PR-15
・ポリオキシエチレンアラキルエーテル・ステアリルアルコール混合物:NIKKOL WAX230
・モノステアリン酸グリセロール:富士フイルムワコーケミカル社製モノステアリン酸グリセロール
・モノオレイン酸ポリグリセリル:NIKKOL DGMO-CV
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール:NIKKOL MYS-2V
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:NIKKOL HCO-60
・ポリソルベート80:NIKKOL TO-10MV
【0091】
製剤例
以下に本発明の代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100g中の含量である。また、「%(w/w)」は、製剤100g中の各成分の含量(g)を意味する。
【0092】
[製剤例1]
エピナスチン 1.0g
スクワラン 5.0g
軽質流動パラフィン 5.0g
セレシン 3.0g
白色ワセリン 10.0g
サラシミツロウ 1.0g
グリセリン脂肪酸エステル 5.0g
ジブチルヒドロキシトルエン 0.1g
エデト酸ナトリウム水和物 0.5g
濃グリセリン 15.0g
精製水 適量
【0093】
[製剤例2]
エピナスチン塩酸塩 0.75g
セチルアルコール 0.5g
白色ワセリン 8.0g
ミリスチン酸イソプロピル 4.0g
ポリソルベート80 0.5g
ジブチルヒドロキシトルエン 0.2g
2-メルカプトベンズイミダゾール 0.05g
プロピレングリコール 5.0g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0094】
[製剤例3]
エピナスチン塩酸塩 0.5g
セチルアルコール 2.0g
スクワラン 10.0g
グリセリン脂肪酸エステル 4.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5g
2-メルカプトベンズイミダゾール 0.3g
オクチルドデカノール 5.0g
エデト酸ナトリウム水和物 0.5g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0095】
さらに、製剤例4~19を表1および表2に示す。
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例
1.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(1)
アレルギー性結膜炎に対する抗アレルギー作用を評価するため、モルモットを用いてアレルギー性結膜炎モデルを作製し、本発明の医薬組成物の治療効果を検討した。
(1)被験製剤の調製
汎用的な方法を用いて、有効成分であるエピナスチン塩酸塩と、白色ワセリン、軽質流動パラフィン、スクワラン、パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルの油成分と、エデト酸ナトリウム水和物、2-メルカプトベンズイミダゾール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、濃グリセリン及び精製水を混合して、油中水型エマルションの形態の被験製剤1~3を調製した。被験製剤1~3の有効成分であるエピナスチン塩酸塩の量は、それぞれ0.005%(w/w)、0.05%(w/w)、0.5%(w/w)となるように調整し、水酸化ナトリウムの添加量はエピナスチン塩酸塩の量に合わせて適宜調整し、残りの添加剤については各製剤において同量ずつ添加した。また、エピナスチン塩酸塩及び水酸化ナトリウムを添加することを除き、被験製剤1~3と同様の方法を用いて、エピナスチン塩酸塩及び水酸化ナトリウムを含まない油中水型エマルションの形態の被験製剤4を調製した。また、日本で上市されている「アレジオン(登録商標)LX点眼液0.1%」を被験製剤5として用いた。
【0098】
(2)結膜炎モデルの作製及び評価試験方法
モルモット(雄性、Hartley系)を無作為にエマルションの被験製剤投与群(被験製剤1~4の投与群)及び点眼液の被験製剤投与群(被験製剤5の投与群)に分類した(各群:複数匹)。エマルションの被験製剤投与群(被験製剤1~4の投与群)では、モルモットにケタラール及びセラクタールの混合麻酔液を筋肉内投与して全身麻酔を施し、右眼瞼周囲の体毛をバリカン及び電動カミソリで剃毛した。各被験製剤投与群におけるモルモットの右眼にヒスタミン溶液を点眼して結膜炎を惹起させて、アレルギー性結膜炎モデルを作製した。
エマルションの被験製剤投与群(被験製剤1~4の投与群)では、モルモットに全身麻酔を施した後、ヒスタミン溶液点眼の24時間前に被験製剤を右眼の上下眼瞼に15μLずつ塗布し、エリザベスカラーを装着した。一方で、点眼液の被験製剤投与群(被験製剤5の投与群)では、ヒスタミン溶液点眼の8時間前にモルモットの右眼に被験製剤を10μL点眼した。ヒスタミン溶液点眼前に、各被験製剤投与群のモルモットにイソフルラン吸入麻酔下でエバンスブルー溶液を耳静脈内投与した。
ヒスタミン溶液点眼後に、各被験製剤投与群のモルモットをイソフルラン吸入麻酔下で安楽殺し、右眼球及び眼瞼組織を摘出した。各摘出組織の重量を測定後に、摘出組織を色素抽出液(硫酸ナトリウム含有アセトン溶液)に浸漬して色素を抽出した。
摘出組織を浸漬した色素抽出液を遠心分離して、上清をサンプルとし、分光光度計を用いて620nmの吸光度を測定した。汎用される手法で各被験製剤投与群における結膜組織重量当たりの色素漏出量(μg/g)の平均値及び標準誤差を求めた。
【0099】
(3)試験結果及び考察
試験結果を表3に示す。
【表3】
【0100】
有効成分であるエピナスチン又はその塩を含有しない被験製剤4に対して、眼瞼皮膚に塗布した被験製剤1~3は、いずれも色素漏出量が低下しており、被験製剤1~3がアレルギー結膜炎の治療効果を有することが示された。
また、被験製剤5における点眼投与後8時間の時点と、被験製剤2及び3における塗布投与後24時間の時点とで、同程度以上の治療効果を示した。すなわち、被験製剤2及び3の治療効果は、被験製剤5に比べて長時間持続することが示された。
従って、実際に、アレルギー性結膜炎治療剤として使用されている被験製剤5の点眼回数が1日2回であることを鑑みると、本発明の医薬組成物は、1日1回の塗布投与で十分にアレルギー性結膜炎治療剤としての効果を奏することが示唆された。
【0101】
2.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(2)
前記「1.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(1)」と同様に、本発明の医薬組成物の治療効果を検討した。
(1)被験製剤の調製
汎用的な方法を用いて、下表4の濃度になるように、有効成分であるエピナスチン塩酸塩と、各添加剤成分及び精製水を混合して被験製剤6~13を調製した。なお、被験製剤6、7、10及び11は油中水型エマルションの形態であり、また被験製剤8、9、12及び13は水中油型エマルションの形態である。
【表4】
【0102】
(2)結膜炎モデルの作製及び評価試験方法
前記「1.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(1)」と同様の方法にしたがって、アレルギー性結膜炎モデルを作製し(各被験製剤:複数匹)、被験製剤6~13についての結膜組織重量当たりの色素漏出量(μg/g)の平均値及び標準誤差を求めた。
【0103】
(3)試験結果及び考察
試験結果を表5に示す。
【表5】
【0104】
前記の被験製剤4(有効成分であるエピナスチン又はその塩を含有しない製剤)についての色素漏出量(μg/g)と比較すると、眼瞼皮膚に塗布した被験製剤6~13は、添加物の成分は異なるものの、いずれも色素漏出量が低下することが示された。従って、本発明の医薬組成物は、1日1回の塗布投与で十分にアレルギー性結膜炎治療剤としての効果を奏することが示唆された。
【0105】
3.皮膚刺激性評価試験
ウサギを用いて、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含む組成物を眼瞼皮膚に投与した際の皮膚刺激性の有無を検討した。
(1)被験製剤の調製
被験製剤として、被験製剤3及び被験製剤4と、前記「1.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(1)」と同様の方法で調製した油中水型エマルションの形態の被験製剤14を用いた。被験製剤3及び4は、前記「1.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(1)」と同様の方法で再度調製し、被験製剤14は、エピナスチン塩酸塩の量を1%(w/w)となるように調整し、水酸化ナトリウムの添加量はエピナスチン塩酸塩の量に合わせて適宜調整し、残りの添加剤については被験製剤3及び被験製剤4と同量ずつ添加して、調製した。
【0106】
(2)評価試験方法
適宜馴化を行ったウサギ(雄性、Kbl:JW)に、ケタラール及びセラクタールの混合麻酔液を筋肉内投与して全身麻酔を施した後、バリカン、電気シェーバーあるいは眉剃りシェーバーを用いて、ウサギの瞼の縁より約5mm離れた上眼瞼の部位の毛刈りを行った。さらに、睫毛や投与部位に触れる可能性のある毛を取り除いた。これらのウサギにエリザベスカラーを装着し、無処置群、被験製剤3、4及び14の各投与群に割り当てた。各投与群において、マイクロマンを用いて、各被験製剤30μLを上眼瞼上に塗布した。定期的にウサギの状態を観察すると共に、投与後約3、6、及び24時間においてDraize法による皮膚反応判定基準に従って被験物質塗布部位の皮膚反応を判定した。
【0107】
なお、Draize法による皮膚反応の判定基準は、下記の症状に基づいてスコア付けしたものである。
<紅斑痂皮形成(紅斑スコア)>
0:紅斑なし
1:ごく軽度の紅斑(やっと認められる程度)
2:明らかな紅斑
3:中等度から強い紅斑
4:深紅色の強い紅斑に軽い痂皮形成(障害は深部)
<浮腫形成(浮腫スコア)>
0:浮腫なし
1:ごく軽度の浮腫(やっと認められる程度)
2:明らかな浮腫(周囲と明らかに区分可能)
3:中等度浮腫(1mm程盛り上がっている)
4:強い浮腫(1mm以上盛り上がり、周囲にも広がる)
【0108】
(3)試験結果及び考察
無処置群(n=2)及び被験製剤4の投与群(n=4)については、各時点(投与後3、6及び24時間)の紅斑スコア及び浮腫スコアは0であり、皮膚刺激性を示す明確な所見は認められなかった。そのため、本試験で用いられた油中水型エマルションの形態の製剤の基剤については安全性への懸念が極めて低いことが示された。
被験製剤3の投与群(n=5)においては、各時点(投与後3、6及び24時間)の浮腫スコアは0であり、投与後3及び6時間の紅斑スコアは0であったが、投与後24時間において1眼瞼に紅斑スコア1が認められた。被験製剤14の投与群(n=5)においては、各時点(投与後3、6及び24時間)の浮腫スコアは0であったが、投与後3、6、及び24時間において5眼瞼すべてに紅斑スコア1が認められた。
【0109】
従って、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含む組成物を眼瞼皮膚に投与した場合、エピナスチン又はその塩の濃度が高いほど皮膚刺激性を示す傾向があること、安全性の観点からエピナスチン又はその塩の濃度は1%(w/w)未満が好ましいこと、そして、エピナスチン又はその塩の濃度は0.5%(w/w)が特に好ましいことが示された。なお、被験製剤3及び14で認められた皮膚刺激性はいずれも軽度であることから、両製剤ともに臨床上、安全性への懸念は低いと考えられる。
【0110】
4.ヒトにおける薬効評価試験
ヒトにおけるアレルギー性結膜炎に対する抗アレルギー作用を評価するため、臨床試験を実施し、本発明の医薬組成物の治療効果を検討した。
(1)被験製剤の調製
汎用的な方法を用いて、有効成分であるエピナスチン塩酸塩と、白色ワセリン、軽質流動パラフィン、スクワラン、パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルの油成分と、エデト酸ナトリウム水和物、2-メルカプトベンズイミダゾール、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、濃グリセリン及び精製水を混合して、クリーム製剤1及び2を調製した。クリーム製剤1及び2の有効成分であるエピナスチン塩酸塩の量は、それぞれ0.05%(w/w)及び0.5%(w/w)となるように調整し、水酸化ナトリウムの添加量はエピナスチン塩酸塩の量に合わせて適宜調整し、残りの添加剤については各製剤において同量ずつ添加した。また、エピナスチン塩酸塩及び水酸化ナトリウムを添加することを除き、クリーム製剤1及び2と同様の方法を用いて、エピナスチン塩酸塩及び水酸化ナトリウムを含まないプラセボ用のクリーム製剤3を調製した。
【0111】
(2)試験方法
スギ花粉抗原誘発によりアレルギー反応が認められる健康成人志願者(各コホート8人)を対象として、予め被験者ごとの至適抗原濃度を決定した後、クリーム製剤(コホート1:クリーム製剤1、コホート2:クリーム製剤2)又はプラセボ用のクリーム製剤3を左右に無作為に割付けた。二重盲検法下で片眼瞼(上下眼瞼)にクリーム製剤1又は2を、他眼瞼(上下眼瞼)にプラセボ用のクリーム製剤3を塗布し、塗布後25時間(1日1回投与する場合の投与間隔に相当)に抗原誘発を行った。
【0112】
(3)抗原誘発によるアレルギー症状の評価方法
眼そう痒感及び結膜充血(眼球結膜充血及び眼瞼結膜充血)について、症状の重度に基づいた判定基準を用いてスコアをつけることにより評価した。なお、眼そう痒感のスコアは0~4の5段階、結膜充血のスコアは0~6(眼球結膜充血0~3と眼瞼結膜充血0~3の合計スコア)の7段階である。
【0113】
(4)試験結果及び考察
抗原誘発後の3時点(3分、5分及び10分後)の平均の眼そう痒感スコア、及び抗原誘発後の3時点(5分、10分及び20分後)の平均の結膜充血スコアを表6に示す。なお、表中の平均値、標準偏差については汎用的な統計処理により算出されるものである。
【表6】
【0114】
表6に示されるように、クリーム製剤1及び2は、いずれも1日1回相当の投与において眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアにクリーム製剤3(プラセボ)との差が認められ、特に、0.5%(w/w)エピナスチン塩酸塩を含有するクリーム製剤2は、両スコアともに顕著に大きな差を示した。
従って、本発明の医薬組成物は、ヒトにおいてアレルギー性結膜炎治療剤としての効果を有することが示された。また、本試験においていずれの被験製剤も眼瞼塗布した際に副作用の発現は認められず、医薬品として十分忍容できるものであった。
【0115】
アレルギー性結膜炎は、花粉などのアレルゲンによって、結膜、すなわち、眼瞼(まぶた)の裏側と白目の部分を覆っている粘膜に炎症を起こす病気である。そして、現在のアレルギー性結膜炎の治療は点眼薬を眼の表面に直接投与することが基本である。一方、眼瞼皮膚は、顔の皮膚から連続して眼球を上下から覆い保持する器官であるが、上記の試験結果に示されるように、低濃度のエピナスチン又はその塩を含むクリーム剤を1日1回眼瞼皮膚に投与した場合であっても、アレルギー性結膜炎の治療剤として治療効果を奏したこと、加えて、皮膚が薄く刺激に敏感な眼瞼皮膚への投与であっても安全性面への懸念が最小化できたことは驚くべき結果である。
【0116】
5.製剤特性評価試験
本発明の医薬組成物を眼科用塗布投与用製剤として用いる場合の製剤の使用感に着目し、本発明の医薬組成物の製剤特性の評価を実施した。
(1)被験製剤の調製
被験製剤として、前記「2.アレルギー性結膜炎モデルを用いた薬効評価試験(2)」の被験製剤6~13を用いた。さらに、汎用的な方法を用いて、下表7~9の濃度になるように、有効成分であるエピナスチン塩酸塩と、各添加剤成分及び精製水を混合して、油中水型エマルションの形態の被験製剤15~20及び水中油型エマルションの形態の被験製剤21~29を調製した。
【表7】
【0117】
【表8】
【0118】
【表9】
【0119】
(2)評価試験方法
眼瞼皮膚は組織が非常に薄くて柔らかく、また眼瞼皮膚を強く押圧すると直下にある眼球の痛みや視野に影響を及ぼす懸念があるため、本発明の医薬組成物を眼瞼皮膚へ投与する場合を想定して、被験者4名を対象に、各被験製剤を人工皮膚に塗布した際の使用感を評価した。またさらに、各被験製剤の粘度を測定した。
被験者は、軟膏ツボに入れられた各被験製剤を人差し指で適量(米粒大を目安)取り出し、人工皮膚に2cm×2cm程度の範囲で左右に伸ばして塗布操作を実施した。塗布時の使用感については、押圧の強さと製剤の伸びやすさをそれぞれ下記の3段階でそれぞれスコア付けをし、スコアを合計した値を各被験製剤における評価点とした。評価点は、最大16点(被験者1人当たり最大4点×4名)である。なお、被験製剤27~29については最大8点(被験者1人当たり最大4点×被験者2名での評価)とした。
<押圧の強さ>
2点:押圧をせずに塗布ができる
1点:やや押圧をすることで塗布ができる
0点:強く押圧をすることで塗布ができる/強く押圧しても塗布ができない
<製剤の伸びやすさ>
2点:容易に均一に塗布ができる
1点:均一に塗布ができる
0点:均一に塗布ができない
【0120】
試験に使用する人工皮膚は、眼瞼皮膚の柔軟性に最も近いと感じる基材として、市販のSpacerail L988を用いた。
各被験製剤の粘度については、第十七改正日本薬局方の一般試験法に記載の粘度測定法に準じ、円錐-平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)を用いて、温度20℃±0.1℃として測定した。
【0121】
(3)試験結果及び考察
試験結果を表10(粘度の順に並び替え)に示す。
【表10】
【0122】
表10に示されるように、被験製剤の粘度が低いと人工皮膚に塗布した際の使用感が良く、反対に被験製剤の粘度が高くなると人工皮膚に塗布した際の使用感が悪くなる傾向があることが示唆された。眼瞼皮膚は他の部位の皮膚と比較して非常に薄くて柔らかいために塗布しづらく、また眼瞼皮膚組織の直下に眼球があるため、強い押圧を加えながら塗布することができない。従って、本発明の医薬組成物を眼科用塗布投与用製剤として用いる場合においては、眼球には刺激を与えず、かつ眼瞼皮膚に容易に均一に塗布できる製剤特性として、製剤粘度が低いことが好ましく、例えば150Pa・s以下の粘度を有する製剤であることがより好ましいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、低濃度かつ投与回数を減らしても十分な治療効果を有し、安全性面への懸念が最小化され、かつ、使用感に優れた、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する塗布投与用医薬組成物を提供する。
【要約】
本発明は、低濃度の投与量であっても眼組織中の有効成分の濃度を長時間にわたって維持できる、有効成分として0.05~1%(w/w)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、塗布投与用医薬組成物を提供する。