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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】抗PD‐L1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220817BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220817BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K35/12
A61K35/15 Z
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019553005
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2019080458
(87)【国際公開番号】W WO2019185029
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2019-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/081079
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519441109
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ ユーエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヨンチアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ゼンイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ビンシ
(72)【発明者】
【氏名】ザン、ジンウ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】上條 肇
【審判官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/215590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 16/00 - 16/46
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体または抗体断片であって、
前記抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、
(a)配列識別番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、
(b)配列識別番号116のアミノ酸配列を含むVH CDR2、
(c)配列識別番号117のアミノ酸配列を含むVH CDR3、
(d)配列識別番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、
(e)配列識別番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、
(f)配列識別番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含み、
配列識別番号149のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列識別番号150のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、抗体または抗体断片。
【請求項2】
抗体または抗体断片であって、
前記抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、
(a)配列識別番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、
(b)配列識別番号116のアミノ酸配列を含むVH CDR2、
(c)配列識別番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3、
(d)配列識別番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、
(e)配列識別番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、
(f)配列識別番号140のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含み、
配列識別番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列識別番号160のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、抗体または抗体断片。
【請求項3】
抗体または抗体断片であって、
前記抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、
(a)配列識別番号1のアミノ酸配列を含むVH CDR1、
(b)配列識別番号116のアミノ酸配列を含むVH CDR2、
(c)配列識別番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3、
(d)配列識別番号4のアミノ酸配列を含むVL CDR1、
(e)配列識別番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、
(f)配列識別番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含み、
配列識別番号141のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列識別番号142のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、抗体または抗体断片。
【請求項4】
重鎖定常領域、軽鎖定常領域、Fc領域、または、それらの組み合わせを更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項5】
前記抗体または抗体断片は、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項6】
二重特異性抗体であって、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体断片と、免疫細胞上の分子への特異性を有する第2の抗原結合性断片とを含む抗体。
【請求項7】
二重特異性抗体であって、前記分子は、PD‐1、CTLA‐4、LAG‐3、CD28、CD122、4‐1BB、TIM3、OX‐40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVM、BTLA、KIRおよびCD47から成る群から選択される、請求項に記載の抗体。
【請求項8】
二重特異性抗体であって、前記抗体断片、および、前記第2の抗原結合性断片は、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体から各々独立に選択される、請求項に記載の抗体。
【請求項9】
二重特異性抗体であって、Fc断片を更に含む、請求項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片、および、薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項11】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片のポリペプチド鎖の1つをコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片をコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む単離細胞。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片を含む癌または感染の治療のための組成物。
【請求項14】
前記癌は固形腫瘍である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記癌は、膀胱癌、肝臓癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、白血病、リンパ腫、膵臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、尿道癌、頭頸部癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、悪性黒色腫、前立腺癌、および、甲状腺癌から成る群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記治療は、患者に第2の癌治療剤を投与する段階を更に備える、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または、寄生虫感染である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片を含む治療を必要とする患者の癌または感染を治療するための組成物であって、前記治療は、
(a)前記抗体または抗体断片を用いて、in vitroで細胞を処理する段階と、
(b)処理された前記細胞を前記患者に投与する段階と
を含む組成物。
【請求項19】
段階(a)の前に、前記細胞を個人から単離する段階を更に備える、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記細胞は前記患者から単離される、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記細胞は、前記患者とは異なるドナー個人から単離される、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞はT細胞である、請求項18から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記T細胞は、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、または、それらの組み合わせである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
試料におけるPD‐L1の発現を検出する方法であって、
前記抗体または抗体断片が前記PD‐L1に結合する条件下で、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体または抗体断片に前記試料を接触させる段階と、
前記試料におけるPD‐L1の発現を示す前記結合を検出する段階と
を備える方法。
【請求項25】
前記試料は、腫瘍細胞、腫瘍組織、感染組織または血液試料を含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
分化抗原群274(CD274)またはB7ホモログ1(B7‐H1)とも知られているプログラム細胞死リガンド1(PD‐L1)は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、および、肝臓炎などの他の病状など、特定の事象中に免疫系の抑制において主な役割を果たすと考えられている40kDaの1型細胞膜貫通タンパク質である。PD‐L1がPD‐1またはB7.1に結合すると、リンパ節におけるCD8+T細胞の増殖を低減する阻害シグナルが伝達される。加えて、PD‐1は、Bcl‐2遺伝子の下向き調節によって更に媒介されるアポトーシスを通して、リンパ節における外来抗原特異的T細胞の蓄積を制御することもできる。
【0002】
PD‐L1の上向き調節は、癌が宿主の免疫系を回避することを可能にし得ることが示されている。腎細胞癌の患者からの腫瘍標本の解析から、PD‐L1の高い腫瘍発現は、腫瘍の進行性の増加、および、死亡リスクの増加に関連することが分かった。癌免疫療法として多くのPD‐L1阻害剤が開発中であり、それらは臨床試験において良い結果を示している。
【0003】
PD‐L1の阻害は、癌の治療に加えて、感染症を治療する可能性を示している。細胞内感染のマウスモデルにおいて、リステリア・モノサイトゲネスは、T細胞、NK細胞、マクロファージにおけるPD‐L1タンパク質発現を誘導した。PD‐L1のブロック(例えば、ブロック抗体の使用)の結果、感染したマウスの死亡率が増加した。ブロックにより、マクロファージによる一酸化窒素およびTNFαの生成が減少し、NK細胞によるグランザイムBの生成が減少し、Lモノサイトゲネス抗原特異的CD8 T細胞の増殖が減少した(ただし、CD4 T細胞の増殖は減少しなかった)。この証拠は、PD‐L1が細胞内感染において正の共刺激分子として機能することを示す。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ヒトPD‐L1タンパク質への高い結合親和性を有する抗PD‐L1抗体を提供し、PD‐L1とその受容体PD‐1との間の相互作用を効果的にブロックできる。例において、これらの抗PD‐L1抗体がT細胞免疫反応を促進し、腫瘍増殖を阻害することが実証されたことも重要である。PD‐L1タンパク質の細胞外部分の免疫グロブリンVドメインに結合する既知の抗PD‐L1抗体との違いとして、これらの抗体は、免疫グロブリンCドメイン、特に、アミノ酸残基Y134、K162およびN183に結合する。これらの抗PD‐L1抗体は、様々な種類の癌および感染症の治療などの、治療の目的に有用であり、診断および予後の目的に使用できる。
【0005】
本開示の一実施形態は、抗PD‐L1抗体または抗体断片を提供し、抗体または抗体断片は、ヒトのプログラム細胞死リガンド1(PD‐L1)タンパク質の免疫グロブリンC(IgC)ドメインに特異的に結合できる。いくつかの実施形態において、IgCドメインは、アミノ酸残基133~225から成る。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質のアミノ酸残基Y134、K162またはN183のうち少なくとも1つに結合できる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質のアミノ酸残基Y134、K162およびN183のうち少なくとも1つに結合できる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質の免疫グロブリンV(IgV)ドメインに結合せず、IgVドメインは、アミノ酸残基19‐127から成る。
【0006】
本開示の一実施形態は、抗PD‐L1抗体または抗体断片を提供し、抗体または抗体断片は、ヒトのプログラム細胞死リガンド1(PD‐L1)タンパク質への特異性を有し、配列識別番号1のVH CDR1、配列識別番号2のVH CDR2、配列識別番号3のVH CDR3、配列識別番号4のVL CDR1、配列識別番号5のVL CDR2、および、配列識別番号6のVL CDR3を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、重鎖定常領域、軽鎖定常領域、Fc領域、または、それらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態において、軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、IgG、IgM、IgA、IgEまたはIgDのアイソタイプである。いくつかの実施形態において、アイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。抗体または抗体断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、完全ヒト抗体であるが、これらに限定されない。一態様において、抗体または抗体断片はヒト化抗体である。
【0007】
変異誘発を通して、本開示は更に、VH CDR3(例えば、例13‐17における抗体A1、A2、C3、C4、C6、B1およびB6を参照)およびVL CDR3(例えば、例13‐17における抗体B3、C4およびA3を参照)における変異ホットスポット残基を同定した。したがって、本開示はまた、これらのホットスポットに1または複数の変異を組み込む抗体を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号117、または、配列識別番号117と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号117のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3であって、第2アミノ酸残基がLeuであるVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号6、または、配列識別番号6と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号6のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗体または抗体断片が提供される。
【0009】
一実施形態において、VH CDR1は、配列識別番号1のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2は、配列識別番号116のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3は、配列識別番号117のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1は、配列識別番号4のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2は、配列識別番号5のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3は、配列識別番号6のアミノ酸配列を含む。
【0010】
一実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号149のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および、配列識別番号150のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0011】
また、一実施形態において、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号3、または、配列識別番号3と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号3のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号140、または、配列識別番号140と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号140のバリアントのアミノ酸配列を含み、少なくとも、(i)前記VL CDR3のアミノ酸残基4はSer、(ii)前記VL CDR3のアミノ酸残基5はAsp、または、(iii)前記VL CDR3のアミノ酸残基6はAlaである、VL CDR3を含む抗体または抗体断片が提供される。
【0012】
一実施形態において、VH CDR1は、配列識別番号1のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2は、配列識別番号116のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3は、配列識別番号3のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1は、配列識別番号4のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2は、配列識別番号5のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3は、配列識別番号140のアミノ酸配列を含む。
【0013】
一実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および、配列識別番号160のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0014】
一実施形態では、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号3、または、配列識別番号3と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号3のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号6、または、配列識別番号6と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号6のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗体または抗体断片が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、VH CDR1は、配列識別番号1のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2は、配列識別番号116のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3は、配列識別番号3のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1は、配列識別番号4のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2は、配列識別番号5のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3は、配列識別番号6のアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号141のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および、配列識別番号142のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0017】
また、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または抗体断片と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物が提供される。更に、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または抗体断片をコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む単離細胞を提供する。
【0018】
治療方法および使用も提供される。一実施形態において、本開示の抗体または抗体断片の有効量を、それらを必要とする患者に投与する段階を備える、患者の癌または感染を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、癌は、膀胱癌、肝臓癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、白血病、リンパ腫、膵臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、尿道癌、頭頸部癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、悪性黒色腫、前立腺癌、および、甲状腺癌から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、癌は、膀胱癌、肝臓癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、乳癌、尿道癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、扁平上皮細胞癌、メルケル細胞癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌および小細胞肺癌から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は更に、第2の癌治療剤を患者に投与する段階を備える。いくつかの実施形態において、感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または、寄生虫感染である。
【0019】
別の実施形態において、治療が必要な患者の癌または感染を治療する方法が提供され、当該方法は、(a)本開示の抗体または抗体断片を用いて、in vitroで細胞を処理する段階と、(b)処理された細胞を患者に投与する段階とを備える。いくつかの実施形態において、方法は更に、段階(a)の前に、個人から細胞を単離する段階を備える。いくつかの実施形態において、細胞は患者から単離される。いくつかの実施形態において、細胞は、患者とは異なるドナー個人から単離される。いくつかの実施形態において、細胞はT細胞であり、その非限定的な例には、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、または、それらの組み合わせが含まれる。
【0020】
診断方法および使用も提供される。一実施形態において、抗体または抗体断片がPD‐L1に結合する条件下で、抗体または抗体断片に試料を接触させる段階と、試料におけるPD‐L1の発現を示す結合を検出する段階とを備える、試料におけるPD‐L1の発現を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、試料は、腫瘍細胞、腫瘍組織、感染組織または血液試料を含む。
【0021】
本開示の抗体および断片は、二重特異性抗体を調製するために使用できる。一実施形態において、本開示の断片と、免疫細胞上の分子への特異性を有する第2抗原結合性断片とを含む、二重特異性抗体を提供する。いくつかの実施形態において、分子は、PD‐1、CTLA‐4、LAG‐3、CD28、CD122、4‐1BB、TIM3、OX‐40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVMまたはBTLA、CD47およびCD73から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、断片、および、第2の断片は、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体から各々独立に選択される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、Fc断片を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】HL1210‐3が高い親和性でヒトPD‐L1に結合できることを示す。
【0023】
図2】HL1210‐3がヒトPD‐L1のヒトPD1への結合を効率的に阻害できることを示す。
【0024】
図3】HL1210‐3抗体が、哺乳類細胞上で発現するPD‐L1に対するPD‐1の結合を高い効率で阻害できることを示す。
【0025】
図4】試験対象の抗PD‐L1抗体が、ヒトT細胞応答を促進できることを示す。
【0026】
図5】組換えPD‐L1に対するHL1210‐3の結合速度を示す。
【0027】
図6】すべての試験対象のヒト化抗体が、ヒトPD‐L1に対して、キメラ抗体と同等の結合効力を有することを示す。
【0028】
図7】すべての試験対象のヒト化抗体が、哺乳類細胞上で発現するPD‐L1に対して、キメラ抗体と同等に高い効率で結合できることを示す。
【0029】
図8】ヒト化抗体Hu1210‐41が低い親和性でアカゲザルPD‐L1に結合でき、ラットおよびマウスPD‐L1に結合できないことを示す。
【0030】
図9】Hu1210‐41抗体が、B7‐DC、B7‐1、B7‐2、B7‐H2、PD‐1、CD28、CTLA4、ICOSおよびBTLAではなく、B7‐H1(PD‐L1)のみに特異的に結合できることを示す。
【0031】
図10】Hu1210‐41が、ヒトPD1およびB7‐1に対するヒトPD‐L1の結合を効率的に阻害できることを示す。
【0032】
図11】Hu1210‐41が、ヒトPD1およびB7‐1に対するヒトPD‐L1の結合を効率的に阻害できることを示す。
【0033】
図12】Hu1210‐8、Hu1210‐9、Hu1210‐16、Hu1210‐17、Hu1210‐21およびHu1210‐36ヒト化抗体が、混合リンパ球反応におけるIFNγおよびIL‐2の生成を用量依存的に促進できることを示す。
【0034】
図13】Hu1210‐40、Hu1210‐41およびHu1210‐17ヒト化抗体が、CMVリコールアッセイにおけるIFNγの生成を用量依存的に促進できることを示す。
【0035】
図14】HCC827‐NSG異種移植モデルにおいて、Hu1210‐31が5mg/kgで、腫瘍増殖を30%阻害できることを示す。
【0036】
図15】Hu1210‐41抗体が、HCC827‐NSG異種移植モデルにおいて、腫瘍増殖を用量依存的に阻害でき、一方、腫瘍重量はまた、Hu1210‐41抗体によって用量依存的に抑制されることを示す。
【0037】
図16】発現の関数として、各PD‐L1変異型について、平均結合値をプロットする(対照:抗PD‐L1 mAb反応性)。
【0038】
図17】抗PD‐L1Hu1210‐41抗体への結合に関与する残基である、Y134、K162およびN183の位置を(球体で)示す。
【0039】
図18】哺乳類細胞で発現するPD‐L1への結合効率という観点で、S60R変異体を親抗体Hu1210‐41と比較する。
【0040】
図19】得られた抗体についての(ヒトPD‐L1への)結合アッセイの結果を示す。
【0041】
図20】抗体B6は、親抗体およびTecentriq(登録商標)(アテゾリズマブ)と比較して、哺乳類細胞で発現するPD‐L1に対して、より高い効率で結合することを示す。
【0042】
図21】B6がより高い効力を示すジャーカット細胞におけるIL2産生に対する抗体の効果を示す。
【0043】
図22】混合リンパ球環境におけるIFNγ産生を促進する、抗体のin vitro活性を示す。
【0044】
図23】腫瘍増殖を阻害する、抗体のin vivo活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[定義]
「1」または「一」という語句のエンティティは、1または複数のエンティティを指すことに留意されたい。例えば、「1つの抗体」は、1または複数の抗体を表すものと理解されるべきである。したがって、本明細書においては、「1」(または「一」)、「1または複数」、「少なくとも1つ」という語句は、交換可能に使用できる。
【0046】
本明細書において使用される「ポリペプチド」という語句は、単一の「ポリペプチド」、および、複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直線状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という語句は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖または複数の鎖を指し、産物の特定の長さを指すものではない。したがって、2つ以上のアミノ酸の鎖または複数の鎖を指すために使用される、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または、任意の他の語句は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という語句は、これらの語句のいずれかの代わりに、または、それらと交換可能に使用され得る。「ポリペプチド」という語句はまた、これらに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、または、非天然に発生するアミノ酸による改変を含む、ポリペプチドの発現後改変の産物を指すことを意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的ソースに由来し得るか、または、組換え技術によって生成され得るが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の方式で生成され得る。
【0047】
本明細書において、細胞、DNAまたはRNAなどの核酸に関連して「単離」という語句が使用される場合、高分子の天然のソースに存在する、他のDNAまたはRNAからそれぞれ分離された分子を指す。「単離」という語句は、本明細書において使用される場合、組換えDNA技法によって生成されたときに細胞物質、ウイルス物質もしくは培地を、または、化学的に合成されたときは前駆的化学物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドを指すこともある。更に、「単離された核酸」は、断片として天然に発生しない、天然の状態で見られないであろう核酸断片を含めることを意味している。「単離」という語句は、本明細書において、他の細胞タンパク質または組織から単離された細胞またはポリペプチドを指すためにも使用される。単離されたポリペプチドとは、精製されたポリペプチド、および、組換えのポリペプチドの両方を包含することを意味している。
【0048】
本明細書において使用される、「組換え」という語句は、ポリペプチド、または、ポリヌクレオチドに関する場合、天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形態を意図し、それらの非限定的な例は、通常は共に発生しないであろうポリヌクレオチドまたはポリペプチドを組み合わせることによって作成できる。
【0049】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドの間、または、2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的で揃えられ得る各配列における位置を比較することによって決定できる。比較される配列内のある位置が、同一の塩基またはアミノ酸によって占められるとき、分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有される、一致する位置または相同的な位置の数の関数である。「関連のない」、または、「非相同的」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性(好ましくは25%未満の同一性)を共有する。
【0050】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)が別の配列と特定の割合(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の配列同一性を有することは、揃えられたとき、2つの配列の比較において、その割合の塩基(またはアミノ酸)が同一であることを意味する。このアライメントおよび百分率相同性または配列同一性は、例えば、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyにおいて説明されているものなど、本技術分野において知られているソフトウェアプログラムを使用して決定できる。好ましくは、デフォルトパラメータがアライメントのために使用される。1つのアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。特に、プログラムは、以下のデフォルトパラメータを使用するBLASTNおよびBLASTPである。Genetic code = standard; filter = none; strand = both; cutoff = 60; expect = 10; Matrix = BLOSUM62; Descriptions = 50 sequences; sort by = HIGH SCORE; Databases = non‐redundant, GenBank + EMBL + DDBJ + PDB + GenBank CDS translations + SwissProtein + SPupdate + PIR。生物学的に同等のポリヌクレオチドとは、上で示された指定の百分率相同性を有し、かつ、同一または同様の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0051】
「同等の核酸またはポリヌクレオチド」という語句は、核酸のヌクレオチド配列またはその相補的配列とある程度の相同性、または、配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸のホモログとは、ある程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸、または、その相補的配列を含むことを意図している。一態様において、核酸のホモログは、核酸またはその相補的配列にハイブリダイズすることが可能である。同様に、「同等のポリペプチド」は、基準ポリペプチドのアミノ酸配列とある程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。いくつかの態様において、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%である。いくつかの態様において、同等のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、基準のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較したとき、1、2、3、4または5個の追加、欠失、置換および組み合わせを有する。いくつかの態様において、同等の配列は、基準配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば塩橋)を保持する。
【0052】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「厳密性」の条件下で実行できる。一般に、低厳密性ハイブリダイゼーション反応は、約10倍のSSC溶液、または、同等のイオン強度/温度の溶液において、約40℃で実行される。中程度の厳密性のハイブリダイゼーションは、典型的には、約6倍のSSCにおいて、約50℃で実行される。高厳密性ハイブリダイゼーション反応は、一般的に、約1倍のSSCにおいて、約60℃で実行される。ハイブリダイゼーション反応は、当業者によく知られている「生理的条件」下で実行することもできる。生理的条件の非限定的な例は、細胞において通常見られる温度、イオン、強度、pH、および、Mg2+濃度である。
【0053】
ポリヌクレオチドは、4個のヌクレオチド塩基、すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の特定配列(ポリヌクレオチドがRNAであるとき、チミンの代わりにウラシル(U))から構成される。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という語句は、ポリヌクレオチド分子の文字表現である。この文字表現は、中央処理装置を有するコンピュータ内のデータベースに入力でき、機能ゲノミクスおよび相同性検索などのバイオインフォマティクスの用途に使用できる。「ポリモーフィズム」という語句は、1つより多くの形態の遺伝子またはその部分が共存することを指す。遺伝子のうち、少なくとも2つの異なる形態、すなわち、2つの異なるヌクレオチド配列がある部分は、「遺伝子の多型領域」と呼ばれる。多型領域は単一のヌクレオチドであってよく、異なる対立遺伝子において同一性は異なる。
【0054】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という語句は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはその類似体のいずれかである、任意の長さの高分子形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を実行し得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である。遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えポリヌクレオチド、分岐型ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造への修飾は、もしある場合、ポリヌクレオチドの構築の前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドは重合後、標識部分への連結などにより、更に修飾され得る。また、この語句は、二本鎖および一本鎖の分子両方を指す。別段の記載がある場合、または、必要である場合を除き、本開示の任意の実施形態のポリヌクレオチドは、二本鎖形と、二本鎖形を形成することが知られている、または、予想される、2つの相補的な一本鎖形の各々とを含む。
【0055】
ポリヌクレオチドに適用される「コード」という語句は、ポリヌクレオチドが天然型の状態において、または、当業者によく知られている方法によって操作されるとき、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片のためのmRNAを生成できる場合、ポリペプチドを「コード」するといわれるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、そのような核酸の相補鎖であり、コード配列をそれから推測できる。
【0056】
本明細書において使用される「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識してそれに結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体および任意の抗原結合性断片、または、それらの一本鎖であってよい。したがって、「抗体」という語句は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含む任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのような例には、これらに限定されないが、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、または、それらの任意の部分、または、結合タンパク質の少なくとも1つ一部が含まれる。
【0057】
本明細書において使用される、「抗体断片」または「抗原結合性断片」という語句は、F(ab')、F(ab)、Fab'、Fab、Fv、scFv、および同様のものなどの抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体断片は、完全な抗体によって認識される抗原と同一のものに結合する。「抗体断片」という語句は、アプタマー、スピゲルマー、2特異性抗体を含む。「抗体断片」という語句は、特異的抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように機能する、合成タンパク質、または、遺伝子組み換えタンパク質も含む。
【0058】
「一本鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(V)および軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。いくつかの態様において、この領域は10~約25アミノ酸の短いリンカペプチドに結合する。リンカは、柔軟性のためのグリシン、および、溶解性のためのセリンまたはスレオニンが豊富であり得、VのN末端、または、VのC末端のいずれかに接続され得る(逆も成立する)。このタンパク質は、定常領域が除去されていてリンカが導入されているが、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。本技術分野において、ScFv分子が知られており、例えば、米国特許第5,892,019号において説明されている。
【0059】
抗体という語句は、生化学的に区別できる様々な幅広いクラスのポリペプチドを包含する。当業者であれば、重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、または、イプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、また、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1‐γ4)に分類されることを理解するであろう。この鎖の性質によって、抗体の「クラス」がそれぞれIgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEとして決定される。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgGなどは、特徴がはっきりしており、機能的な特化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の改変版は、当業者が本開示を参照して容易に認識でき、従って、本開示の範囲内にある。すべての免疫グロブリンのクラスが本開示の範囲内にあることは明確であり、以下の説明は一般的に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関連する。IgGに関連して、標準の免疫グロブリン分子は、分子量約23,000ドルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000‐70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。4本の鎖は、典型的には、「Y」の形状でジスルフィド結合によって連結され、軽鎖は「Y」の開いた部分から開始する重鎖と対を形成し、可変領域全体にわたって連続している。
【0060】
本開示の抗体、抗原結合ポリペプチド、それらの変異型または誘導体には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、多特異性、ヒト型、ヒト化、霊長類化もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')、Fd、Fvs、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリによって生成される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示されるLIGHT抗体への抗Id抗体を含む)が含まれる。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、IgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、または、免疫グロブリン分子のサブクラスであり得る。
【0061】
軽鎖はカッパまたはラムダ(Κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダのいずれかの軽鎖に結合し得る。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合し、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または、遺伝子操作した宿主細胞のいずれかによって生成されるとき、2つの重鎖の「テール」部分は、共有結合性ジスルフィド連結または非共有結合性連結によって互いに結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形状の分岐端におけるN末端から、各鎖の底部におけるC末端まで続いている。
【0062】
軽鎖および重鎖は両方、構造および機能的に相同の複数の領域に分割される。「定常」および「可変」という語句は、機能について使用される。これに関連して、軽鎖(VK)および重鎖(VH)部分両方の可変ドメインは、抗原認識および特異性を決定することを理解されたい。逆に、軽鎖(CK)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、相補的結合および同様のものなどの重要な生物学的特性を付与する。慣習的に、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠ざかるにつれて増加する。可変領域におけるN末端部分およびC末端部分は定常領域であり、CH3およびCKドメインはそれぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
【0063】
上で示されるように、可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することを可能にする。つまり、抗体のVKドメインおよびVHドメイン、または、相補性決定領域(CDR)のサブセットは結合して、3次元の抗原結合部位を画定する可変領域を形成する。この4要素抗体構造は、Yの各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVK鎖の各々における3個のCDR(すなわち、CDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、CDR‐L1、CDR‐L2およびCDR‐L3)によって画定される。いくつかの場合において、例えば、ラクダ科に由来する、または、ラクダ科免疫グロブリンをベースにして操作された特定の免疫グロブリン分子において、完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖が無く重鎖のみから成ることがあり得る。例えば、Hamers‐Casterman et al., Nature 363:446‐448 (1993)を参照されたい。
【0064】
天然に発生する抗体において、各抗原結合ドメインに存在する6個の「相補性決定領域」またはCDRは、アミノ酸の短い不連続配列であり、これらは、抗体が水性環境において3次元構成をとるときに、抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置される。抗原結合ドメインにおける残りのアミノ酸は、「フレームワーク」領域と呼ばれ、より小さい分子間の可変性を示す。フレームワーク領域は主に、βシートの形態を取り、CDRは、βシート構造を接続する、および、いくつかの場合には、βシート構造の一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によってCDRを正しい向きに位置決めするため足場を形成するように機能する。位置決めされたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的表面は、同族エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ構成するアミノ酸は、正確に定義されているので("Sequences of Proteins of Immunological Interest," Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983)、および、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901‐917 (1987)を参照)、当業者によって、任意の重鎖または軽鎖可変領域について、容易に識別されることができる。
【0065】
当分野において使用および/または受け入れられている語句に2つ以上の定義がある場合、本明細書において使用される語句の定義は、別段の明示的な記載が無い限り、そのような意味をすべて含むことが意図されている。具体的な例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域において見られる不連続抗原結合部位を説明するために、「相補性決定領域」(「CDR」)という語句を使用することである。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)、および、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901‐917 (1987)によって記載され、これらは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。KabatおよびChothiaによるCDRの定義は、互いに比較したときに、重複するアミノ酸残基のサブセットを含む。上記にかかわらず、抗体またはその変異型のCDRを指すために、いずれかの定義を適用することは、本明細書において定義および使用される語句の範囲内にあることが意図される。上で挙げられた参考文献の各々によって定義されるCDRを含む適切なアミノ酸残基を下の表において比較として説明する。特定のCDRを包含する厳密な残基番号は、CDRの配列およびサイズに応じて変動する。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮することで、どの残基が特定のCDRを構成するかを定型的に決定できる。
【表1】
【0066】
また、Kabat et alは、任意の抗体に適用される可変ドメイン配列について、ナンバリングシステムを定義した。当業者であれば、配列自体以外のいかなる実験データにも頼ることなく、この「Kabatナンバリング」のシステムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書において使用される、「Kabatナンバリング」は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって説明されるナンバリングシステムを指す。
【0067】
上の表に加えて、Kabatナンバリングシステムは、CDR領域を以下のように説明する。CDR‐H1は、約31番目のアミノ酸(すなわち、最初のシステイン残基の後の約9残基)から開始し、約5~7のアミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終了する。CDR‐H2は、CDR‐H1の末端の後の第15の残基から開始し、約16~19アミノ酸を含み、次のアルギニンまたはリシン残基で終了する。CDR‐H3は、CDR‐H2の末端の後の約33番目のアミノ酸残基から開始し、3~25アミノ酸を含み、配列W‐G‐X‐Gにおいて終了し、Xは任意のアミノ酸であり、CDR‐L1は、約24番目の残基(すなわち、システイン残基の後)から開始し、約10~17残基を含み、次のトリプトファン残基で終了する。CDR‐L2は、CDR‐L1の末端の後の約16番目の残基から開始し、約7残基を含む。CDR‐L3は、CDR‐L2の末端の後の約33番目の残基(すなわち、システイン残基の後)から開始し、約7~11残基を含み、FまたはW‐G‐X‐Gの配列で終了し、Xは任意のアミノ酸である。
【0068】
本明細書において開示される抗体は、鳥類および哺乳類を含む任意の動物起源であり得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、または、ニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域は、(例えばサメからの)コンドリクトイド(condricthoid)が起源であり得る。
【0069】
本明細書において使用される「重鎖定常領域」という語句は、免疫グロブリン重鎖由来のアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上、中央、および/または、下のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、もしくは、変異型、または、それらの断片のうち少なくとも1つを含む。例えば、本開示において使用するための抗原結合ポリペプチドは、(a)CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、(b)CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、(c)ヒンジドメインの少なくとも一部およびCH2ドメイン、(d)CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、(e)CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、および、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖、または、(f)CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、および、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を備え得る。別の実施形態において、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。更に、本開示に使用される抗体には、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)が無いことがあり得る。上で説明したように、当業者であれば、天然に発生する免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように重鎖定常領域が改変され得ることを理解するであろう。
【0070】
本明細書において開示される抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG分子由来のCH1ドメイン、および、IgG分子由来のヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖定常領域は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0071】
本明細書において使用される、「軽鎖定常領域」という語句は、抗体軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインのうち少なくとも1つを含む。
【0072】
「軽鎖‐重鎖ペア」は、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインとの間のジスルフィド結合を通して二量体を形成できる軽鎖および重鎖の組を指す。
【0073】
上述のように、様々な免疫グロブリンのクラスの定常領域のサブユニット構造および3次元構成はよく知られている。本明細書において使用される「VHドメイン」という語句は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という語句は、免疫グロブリン重鎖の第1(最アミノ末端)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域へのアミノ末端である。
【0074】
本明細書において使用される「CH2ドメイン」という語句は、例えば、従来のナンバリング方式を使用すると、抗体の約244番目の残基から360番目の残基まで延在する重鎖分子の部分を含む(Kabatナンバリングシステムでは残基244~360、EUナンバリングシステムでは残基231~340、Kabat et al.,U.S. Dept. of Health and Human Services,"Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)を参照)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対になっていないという点で独自である。むしろ、2つのN結合型分岐炭水化物鎖は、完全な天然型のIgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入される。また、CH3ドメインがCH2ドメインからIgG分子のC末端へ延在し、約108残基を含むことが十分に立証されている。
【0075】
本明細書において使用される「ヒンジ領域」という語句は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結させる重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、約25の残基を含み柔軟であり、したがって、2つのN末端抗原結合領域が独立に移動することを可能にする。ヒンジ領域は、3つの区別されるドメイン、すなわち、上、中央、下ヒンジドメインに細分化され得る(Roux et al., J. Immunol 161:4083 (1998))。
【0076】
本明細書において使用される「ジスルフィド結合」という語句は、2つの硫黄原子の間に形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基との間にジスルフィド結合または架橋を形成できるチオール基を含む。天然に発生する大部分のIgG分子において、CH1およびCK領域はジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用したときの239および242(EUナンバリングシステムの場合、位置226または229)に対応する位置における2つのジスルフィド結合によって連結される。
【0077】
本明細書において使用される「キメラ抗体」という語句は、免疫反応性領域または部位が第1の種から取得され、または、それに由来し、かつ、定常領域(本開示によれば、完全なもの、部分的なもの、または、改変されたものであり得る)が第2の種から取得される、任意の抗体を意味するものとする。特定の実施形態おいて、標的結合領域または部位は、非ヒトのソースに由来し(例えば、マウスまたは霊長類)、定常領域はヒト型である。
【0078】
本明細書において使用される「ヒト化率」は、ヒト化ドメインと生殖細胞系ドメインとの間のフレームワークアミノ酸の数の差(すなわち、非CDRの差)を決定し、その数を総アミノ酸数から減算し、それを総アミノ酸数で除算し、100で乗算することによって算出される。
【0079】
「特異的に結合」または「特異性を有する」は、一般的に、抗体が抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、ランダムな関連のないエピトープに結合する場合より容易に、抗体が抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合」すると言われる。「特異性」という語句は、本明細書において、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対的な親和性を認めるために使用される。例えば、抗体「A」は、任意のエピトープについて、抗体「B」より高い特異性を有すると見なされ得る、または、抗体「A」は、関連するエピトープ「D」について有する特異性より高い特異性でエピトープに結合すると言われ得る。
【0080】
本明細書において使用される「治療」または「治療する」という語句は、治療処置および予防または防止手段の両方を指し、目的は、癌の進行などの、望ましくない生理的変化または障害を防止または鈍化する(緩和する)。有利な、または、望ましい臨床結果には、これらに限定されないが、検出可能かどうかを問わず、症状の軽減、疾患の程度の減弱、病状の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延または鈍化、病状の改善または緩和、寛解(完全または部分的を問わず)が含まれる。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延ばすことも意味し得る。治療を必要とする者には、既に病態または障害を有する者、および、病態または障害を有する傾向がある者、または、病態または障害を予防されるべき者が含まれる。
【0081】
「対象」または「個人」または「動物」または「患者」または「哺乳類」は、任意の対象、特に、診断、予後または治療が望ましい哺乳類対象を意味する。哺乳類対象には、ヒト、家畜動物、農業用の動物、または、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛など、動物園、スポーツ、もしくは、ペット用の動物などが含まれる。
【0082】
本明細書において使用される、「治療を必要とする患者に」または「治療を必要とする対象」などの語句は、例えば、検出、診断手順、および/または、治療に使用される、本開示の抗体または組成物の投与から恩恵を受けるであろう、哺乳類対象などの対象を含む。
【0083】
[抗PD‐L1抗体]
本開示は、ヒトPD‐L1タンパク質への高い親和性を有する抗PD‐L1抗体を提供する。試験対象の抗体は、強力な結合および阻害活性を示したので、治療および診断の用途に有用である。
【0084】
PD‐L1タンパク質は、40kDaの1型細胞膜貫通タンパク質である。細胞外部分は、N末端免疫グロブリンV(IgV)ドメイン(アミノ酸19‐127)およびC末端免疫グロブリンC(IgC)ドメイン(アミノ酸133‐225)を含む。PD‐1およびPD‐L1は、抗体のIgVドメインおよびT細胞受容体のように、そのIgVドメインの保存された前方および側方を通して相互作用する。当然ながら、現在の抗PD‐L1抗体はすべて、PD‐1とPD‐L1との間の結合を妨害できるIgVドメインに結合する。したがって、PD‐L1タンパク質のIgCドメインに結合する、本明細書に開示される多くのものなどの抗体が依然として効果的に、おそらくはそれ以上にPD‐L1を阻害でき、更に一層改善された治療効果をもたらすという本開示の発見は、驚くべき予想外のことである。
【0085】
したがって、本開示の一実施形態は、抗PD‐L1抗体または抗体断片を提供し、抗体または抗体断片は、ヒトのプログラム細胞死リガンド1(PD‐L1)タンパク質の免疫グロブリンC(IgC)ドメインに特異的に結合できる。いくつかの実施形態において、IgCドメインは、アミノ酸残基133‐225から成る。
【0086】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質のアミノ酸残基Y134、K162またはN183のうち少なくとも1つに結合できる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質のアミノ酸残基Y134、K162またはN183のうち少なくとも2つに結合できる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質のアミノ酸残基Y134、K162およびN183のうち少なくとも1つに結合できる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、PD‐L1タンパク質の免疫グロブリンV(IgV)ドメインに結合せず、IgVドメインは、アミノ酸残基19‐127から成る。
【0087】
本開示の一実施形態によれば、配列識別番号1‐6において定義されるCDR領域を有する重鎖および軽鎖可変ドメインを含む抗体が提供される。
[表1 CDR領域の配列]
【表2】
【0088】
実験例において示されるように、これらのCDR領域を含む抗体は、マウス、ヒト化、または、キメラのいずれも、強力なPD‐L1結合および阻害活性を有する。更なるコンピュータモデル化は、抗体の特性を保持または改善するように、CDRにおける特定の残基を改変できることを示した。そのような残基は、「ホットスポット」と呼ばれ、表1において下線で示される。いくつかの実施形態において、本開示の抗PD‐L1抗体は、表1に列挙されるように、1、2、または、3個の更なる改変を有するVHおよびVL CDRを含む。そのような改変は、アミノ酸の追加、欠失、または、置換であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、改変は、CDRの各々の1つだけのホットスポット位置での置換である。いくつかの実施形態において、改変は、1、2、または、3つのそのようなホットスポット位置での置換である。一実施形態において、改変は、ホットスポット位置のうち1つでの置換である。いくつかの実施形態において、そのような置換は保存的置換である。
【0090】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換のことである。本技術分野において定義された類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐型側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、免疫グロブリンポリペプチドにおける非本質的なアミノ酸残基は、好ましくは、同一の側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に置き換えられる。別の実施形態において、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる、構造的に同様の鎖に置き換えることができる。
【0091】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例を以下の表に提供する。ここでは、0またはそれより高い類似性スコアは、2つのアミノ酸の間の保存的置換を示す。
[表2:アミノ酸類似性マトリクス]
【表3】
[表3.保存的アミノ酸置換]
【表4】
【0092】
好適な置換を有するCDRの具体的な例が、例11の配列識別番号61‐111に提供される。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号1または61‐67のいずれか1つのVH CDR1を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号2または68‐77のいずれか1つのVH CDR2を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号1または78‐90のいずれか1つのVH CDR3を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号4または91‐92のいずれか1つのVL CDR1を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号5または93‐105のいずれか1つのVL CDR2を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、配列識別番号6または106‐110のいずれか1つのVL CDR3を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、上記の置換のうち1つだけ、2つだけ、または、3つだけを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1または配列識別番号61‐67のいずれか1つのVH CDR1と、配列識別番号2のVH CDR2と、配列識別番号3のVH CDR3と、配列識別番号4のVL CDR1と、配列識別番号5のVL CDR2と、配列識別番号6のVL CDR3とを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1のVH CDR1と、配列識別番号2または配列識別番号68‐77のいずれか1つのVH CDR2と、配列識別番号3のVH CDR3と、配列識別番号4のVL CDR1と、配列識別番号5のVL CDR2と、配列識別番号6のVL CDR3とを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1のVH CDR1と、配列識別番号2のVH CDR2と、配列識別番号3または配列識別番号78‐90のいずれか1つのVH CDR3と、配列識別番号4のVL CDR1と、配列識別番号5のVL CDR2と、配列識別番号6のVL CDR3とを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1のVH CDR1と、配列識別番号2のVH CDR2と、配列識別番号3のVH CDR3と、配列識別番号4または配列識別番号91‐92のいずれか1つのVL CDR1と、配列識別番号5のVL CDR2と、配列識別番号6のVL CDR3とを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1のVH CDR1と、配列識別番号2のVH CDR2と、配列識別番号3のVH CDR3と、配列識別番号4のVL CDR1と、配列識別番号5または配列識別番号93‐105のいずれか1つのVL CDR2と、配列識別番号6のVL CDR3とを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、配列識別番号1のVH CDR1と、配列識別番号2のVH CDR2と、配列識別番号3のVH CDR3と、配列識別番号4のVL CDR1と、配列識別番号5のVL CDR2と、配列識別番号6または配列識別番号106‐111のいずれか1つのVL CDR3とを含む。
【0099】
VHの非限定的な例は配列識別番号7‐26および113に提供され、そのうち、配列識別番号113がマウスVHであり、配列識別番号7‐26がヒト化VHである。更に、ヒト化VHのうち、配列識別番号9‐15、17‐21および23‐26は、1または複数の、マウスバージョンへの復帰突然変異を含む。同様に、VL(VK)の非限定的な例は、配列識別番号27‐33において提供される。配列識別番号28および30は、例に示されるように、当初得られた、CDR移植されたヒト化配列である。配列識別番号29および31‐33は、復帰突然変異を有するヒト化VLである。
【0100】
復帰突然変異は、抗PD‐L1抗体の特定の特徴を保持するために有用であることが示される。従って、いくつかの実施形態において、本開示の抗PD‐L1抗体、特に、ヒト型またはヒト化抗体は、復帰突然変異のうち1または複数を含む。いくつかの実施形態において、VH復帰突然変異(すなわち、指定された位置にアミノ酸を含む)は、Kabatナンバリングによる、(a)位置44のSer、(b)位置49のAla、(c)位置53のAla、(d)位置91のIle、(e)位置1のGlu、(f)位置37のVal、(g)位置40のThr、(h)位置53のVal、(i)位置54のGlu、(j)位置77のAsn、(k)位置94のArg、および、(l)位置108のThr、および、それらの組み合わせから選択される1または複数を含む。いくつかの実施形態において、復帰突然変異は、Kabatナンバリングによる、(a)位置44のSer、(b)位置49のAla、(c)位置53のAla、および/または、(d)位置91のIle、ならびに、それらの組み合わせから選択される。
【0101】
いくつかの実施形態において、VL復帰突然変異は、Kabatナンバリングによる、(a)位置22のSer、(b)位置42のGln、(c)位置43のSer、(d)位置60のAsp、および、(e)位置63のThr、ならびに、それらの組み合わせから選択される1または複数である。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示の抗PD‐L1抗体は、配列識別番号7‐26のVH、配列識別番号27‐33のVL、または、それぞれの生物学的同等物を含む。VHまたはVLの生物学的同等物は、全体で80%、85%、90%、95%、98%、または、99%の配列同一性を有する、指定されたアミノ酸を含む配列である。配列識別番号20の生物学的同等物は、例えば、配列識別番号20と全体的に80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するが、CDR(配列識別番号1‐6またはそれらの変異型)を保持し、任意で、復帰突然変異のうち1または複数、または、すべてを保持するVHであり得る。一実施形態において、VHは配列識別番号20のアミノ酸配列を有し、VLは配列識別番号28のアミノ酸配列を有する。
【0103】
[更に改善されたPD‐L1抗体]
変異率が制御されたランダム変異誘発を通して、例13‐17では、特に、重鎖(例えば、B6、C3、C6およびA1)および軽鎖(例えば、A3)可変領域の両方のCDR3におけるホットスポット残基の数を同定できた(表14および15を参照されたい)。変異誘発は、Hu1210‐41に由来するテンプレート抗体に対して実行された(表14の脚注において示されるように、テンプレート抗体WTは、重鎖CDR2においてS60R(Kabatナンバリング)置換を有する)。また、キメラ抗体と比較して、Hu1210‐41は、VH CDR2において、G53A置換(配列識別番号20を参照)を含む。試験された変異体抗体のうち、抗体B6は、ヒトPD‐L1に対する大きく改善された結合親和性および生物学的活性を示した。
【0104】
したがって、一実施形態において、以下の(S60R変異体からの)CDR、および、それらのバリアントを含む抗体および抗原結合性断片が提供される。
【表5】
【0105】
したがって、一実施形態において、以下の(B6からの)CDR、および、それらのバリアントを含む抗体および抗原結合性断片が提供される。
【表6】
【0106】
一実施形態において、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号3、または、配列識別番号3と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号3のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3であって、第2アミノ酸残基がLeuであるVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号6、または、配列識別番号6と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号6のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗体または抗体断片が提供される。
【0107】
一実施形態において、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号117、または、配列識別番号117と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号117のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3であって、第2アミノ酸残基がLeuであるVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号6、または、配列識別番号6と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号6のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗体または抗体断片が提供される。
【0108】
配列識別番号61‐67など、配列識別番号1のバリアントの例は、アミノ酸残基1、2および5の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。
【表7】
【0109】
配列識別番号116のバリアントの例は、配列識別番号118‐127、2および68‐77など、1または複数のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、バリアントは配列識別番号118‐127である。
【表8】
【0110】
いくつかの実施形態において、VH CDR3バリアントの第3アミノ酸残基はProである。いくつかの実施形態において、VH CDR3バリアントの第4アミノ酸残基はTrpである。
【0111】
配列識別番号78‐90など、配列識別番号3のバリアントの例は、アミノ酸残基1‐6において、1または複数のアミノ酸置換を有する。
【表9】
【0112】
配列識別番号128‐139など、配列識別番号117のバリアントの例は、アミノ酸残基1、5および6において、1または複数のアミノ酸置換を有する。
【表10】
【0113】
いくつかの実施形態において、配列識別番号91‐92など、配列識別番号4のバリアントは、アミノ酸残基3において、1つのアミノ酸置換を有する。
【表11】
【0114】
いくつかの実施形態において、配列識別番号93‐105など、配列識別番号5のバリアントは、アミノ酸残基1‐6の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。
【表12】
【0115】
配列識別番号106‐111など、配列識別番号6のバリアントの例は、アミノ酸残基1および2の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。別の例のバリアントは配列識別番号140である。
【表13】
【0116】
VL CDR3における3つの残基で置換を有する変異体A3も、ヒトPD‐L1に対する優れた結合親和性を示す。したがって、一実施形態において、以下のCDRおよびそれらのバリアントを含む抗体および抗原結合性断片が提供される。
【表14】
【0117】
したがって、一実施形態において、抗体または抗体断片であって、抗体または抗体断片は、ヒトPD‐L1タンパク質への特異性を有し、(a)配列識別番号1、または、配列識別番号1と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号1のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR1、(b)配列識別番号116、または、配列識別番号116と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号116のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR2、(c)配列識別番号3、または、配列識別番号3と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有する配列識別番号3のバリアントのアミノ酸配列を含むVH CDR3、(d)配列識別番号4、または、配列識別番号4と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号4のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR1、(e)配列識別番号5、または、配列識別番号5と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号5のバリアントのアミノ酸配列を含むVL CDR2、および、(f)配列識別番号140、または、配列識別番号140と比較して、1、2もしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を含む配列識別番号140のバリアントのアミノ酸配列を含み、少なくとも、(i)前記VL CDR3のアミノ酸残基4はSer、(ii)前記VL CDR3のアミノ酸残基5はAsp、または、(iii)前記VL CDR3のアミノ酸残基6はAlaである、VL CDR3を含む抗体または抗体断片が提供される。
【0118】
配列識別番号61‐67など、配列識別番号1のバリアントの例は、アミノ酸残基1、2および5の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。
【0119】
配列識別番号116のバリアントの例は、配列識別番号118‐127、2および68‐77など、1または複数のアミノ酸置換を有する。
【0120】
配列識別番号117および128‐139など、配列識別番号3のバリアントの例は、1または複数のアミノ酸置換を有する。
【表15】
【0121】
配列識別番号91‐92など、配列識別番号4のバリアントの例は、アミノ酸残基3において、1つのアミノ酸置換を有する。
【0122】
配列識別番号93‐105など、配列識別番号5のバリアントの例は、アミノ酸残基1‐6の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。
【0123】
いくつかの実施形態において、VL CDR3バリアントのアミノ酸残基4はSerである。いくつかの実施形態において、VL CDR3バリアントのアミノ酸残基5はAspである。いくつかの実施形態において、VL CDR3バリアントのアミノ酸残基6はAlaである。配列識別番号161‐166など、配列識別番号140のバリアントの例は、アミノ酸残基1および2の1つにおいて、1つのアミノ酸置換を有する。
【表16】
【0124】
変異誘発試験から得られた抗体、または、それらの抗原結合性断片の例は、表15において提供される重鎖および軽鎖可変領域を有する。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号141を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号142を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号143を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号144を含む。一実施形態において重鎖可変領域は配列識別番号145を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号146を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号147を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号148を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号149を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号150を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号151を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号152を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号153を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号154を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号155を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号156を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号157を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号158を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は配列識別番号159を含み、軽鎖可変領域は配列識別番号160を含む。
【0125】
また、当業者であれば、本明細書に開示される抗体は、それらの由来となる、天然に発生する結合ポリペプチドと比較して、アミノ酸配列が変動するように改変され得ることを理解するであろう。例えば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は同様であり得て、例えば、開始配列に対して、特定のパーセントの同一性を有し、例えば、開始配列に対して、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であり得る。
【0126】
特定の実施形態において、抗体は、通常は抗体に関連しない、アミノ酸配列、または、1または複数の部分を含む。例示的な改変は、以下でより詳細に説明される。例えば、本開示の抗体は、柔軟なリンカ配列を含み得る、または、官能基(例えば、PEG、薬剤、毒物、または、標識)を追加するように改変され得る。
【0127】
本開示の抗体、変異型、または、それらの誘導体は、改変された誘導体、すなわち、エピトープへの抗体の結合が共有結合によって防止されないように任意の種類の分子を抗体に共有結合させることによって改変された誘導体を含む。例えば、これらに限定されないが、抗体は例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変できる。多数の化学改変のいずれも、これらに限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、既知の技法によって実行され得る。加えて、抗体は、1または複数の非従来型アミノ酸を含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節剤、医薬品、またはPEGと結合され得る。
【0129】
抗体は、放射性標識などの検出可能な標識を含み得る治療剤、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤、光活性診断剤、薬物または毒物であり得る細胞傷害性剤、超音波造影剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、および、本技術分野において既知である他のそのような物質に結合または融合され得る。
【0130】
抗体は、化学発光化合物と結合させることによって、検出可能に標識できる。その後、化学発光標識された抗原結合ポリペプチドの存在は、化学反応の過程において生じる発光の存在を検出することによって判定される。特に有用な化学発光標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルがある。
【0131】
また、抗体は、152Euまたはランタニド系列の他のものなどの蛍光放射金属を使用して検出可能に標識できる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を使用して、抗体に取り付けることができる。様々な部分を抗体に結合させる技法は既知である。例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243‐56 (Alan R. Liss, Inc. (1985)のArnon et al, "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy"、Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al., (eds.), Marcel Dekker, Inc., pp. 623‐ 53 (1987)のHellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery"、 Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475‐506 (1985)のThorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review"、 Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), Academic Press pp. 303‐16 (1985)の"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy"、および、Immunol. Rev. (52:119‐58 (1982))のThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody‐Toxin Conjugates"を参照されたい。
【0132】
[二官能分子]
PD‐L1は免疫チェックポイント分子であり、腫瘍抗原でもある。腫瘍抗原標的分子として、PD‐L1に特異的な抗体または抗原結合性断片を、免疫細胞に特異的な第2の抗原結合性断片と組み合わせることで、二重特異性抗体を生成することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球およびマスト細胞から成る群から選択される。標的にできる免疫細胞上の分子には、例えば、CD3、CD16、CD19、CD28およびCD64が含まれる。他の例には、PD‐1、CTLA‐4、LAG‐3(CD223としても知られている)、CD28、CD122、4‐1BB(CD137としても知られている)、TIM3、OX‐40もしくはOX40L、CD40もしくはCD40L、LIGHT、ICOS/ICOSL、GITR/GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVMまたはBTLA(CD272としても知られている)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、および、CD47が含まれる。二重特異性の具体的な例には、これらに限定されないが、PD‐L1/PD‐1、PD‐L1/LAG3、PD‐L1/TIGIT、および、PD‐L1/CD47が含まれる。
【0134】
免疫チェックポイント阻害剤として、PD‐L1に特異的な抗体または抗原結合性断片を、腫瘍抗原に特異的な第2の抗原結合性断片と組み合わせることで、二重特異性抗体を生成できる。「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞において生成される抗原性物質であり、すなわち、宿主における免疫反応を引き起こす。腫瘍抗原は、腫瘍細胞の同定において有用であり、癌治療に用いられる潜在的候補である。体内の通常のタンパク質は、抗原性ではない。しかしながら、特定のタンパク質は、腫瘍形成中に生成または過剰発現され、したがって、身体には「外来」のものに見える。これには、免疫系からよく隔離された通常のタンパク質、通常は非常に小さい量だけ生成されるタンパク質、通常は成長の特定の段階のみにおいて生成されるタンパク質、または、突然変異に起因して構造が改変されたタンパク質を含み得る。
【0135】
本技術分野において、大量の腫瘍抗原が知られており、スクリーニングによって新しい腫瘍抗原を容易に同定できる。腫瘍抗原の非限定的な例には、EGFR、Her2、EpCAM、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CD73、CEA、gpA33、ムチン、TAG‐72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリン、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAPおよびテネイシンが含まれる。
【0136】
いくつかの態様において、一価の単官能は、対応する非腫瘍細胞と比較して腫瘍細胞上で過剰発現するタンパク質に対する特異性を有する。ここで使用される「対応する非腫瘍細胞」は、腫瘍細胞の起源と同一の細胞の種類のものである非腫瘍細胞を指す。そのようなタンパク質は、必ずしも腫瘍抗原と異ならないことに留意されたい。非限定的な例には、(a)大部分の結腸、直腸、胸部、肺、膵臓、消化管の癌腫において過剰発現する癌胎児性抗原(CEA)、(b)胸部、卵巣、結腸、肺、前立腺および子宮頸部の癌において頻繁に過剰発現するヘレグリン受容体(HER‐2、neuまたはc‐erbB‐2)、(c)胸部、頭頸部、非小細胞肺、および、前立腺など、様々な固形腫瘍において多く発現する上皮増殖因子受容体(EGFR)、(d)アシアロ糖タンパク質受容体、(e)トランスフェリン受容体、(f)肝細胞で発現するセルピン酵素複合体受容体、(g)膵管腺癌細胞で過剰発現する線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、(h)抗血管新生遺伝子療法のための血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、(i)粘液非産生性卵巣癌腫の90%において選択的に過剰発現する葉酸受容体、(j)細胞表面グリコカリックス、(k)炭水化物受容体、(l)呼吸器上皮細胞への遺伝子輸送に有用で、嚢胞性線維症などの肺疾患の治療に対して魅力的な高分子免疫グロブリン受容体が含まれる。これに関して、二重特異性の非限定的な例には、PD‐L1/EGFR、PD‐L1/Her2、PD‐L1/CD33、PD‐L1/CD133、PD‐L1/CEA、および、PD‐L1/VEGFが含まれる。
【0137】
異なる形態の二重特異性抗体も提供される。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1断片および第2断片の各々は、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体から独立に選択される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は更に、Fc断片を含む。
【0138】
抗体または抗原結合性断片だけを含むわけではない二機能性分子も提供される。腫瘍抗原標的分子として、ここで説明されるものなどの、PD‐L1に特異的な抗体または抗原結合性断片を、任意でペプチドリンカを通して、免疫サイトカインまたはリガンドと組み合わせることができる。連結される免疫サイトカインまたはリガンドには、これらに限定されないが、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐10、IL‐12、IL‐13、IL‐15、GM‐CSF、TNF‐α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4‐1BBL、LIGHTおよびGITRLが含まれる。そのような二官能分子は、免疫チェックポイントブロッキング効果を、腫瘍部位局所的免疫調節と組み合わせることができる。
【0139】
[抗体をコードするポリヌクレオチドおよび抗体の調製方法]
また、本開示は、本開示の抗体、変異型、または、誘導体をコードする、単離ポリヌクレオチドまたは核酸分子(例えば、配列識別番号34‐60、112および114)を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同一のポリヌクレオチド分子上で、または、別個のポリヌクレオチド分子上で、抗原結合ポリペプチド、その変異型または誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の全体をコードし得る。加えて、本開示のポリヌクレオチドは、同一のポリヌクレオチド分子上で、または、別個のポリヌクレオチド分子上で、抗原結合ポリペプチド、その変異型または誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の一部をコードし得る。
【0140】
抗体を作成する方法は、本技術分野において既知であり、本明細書において説明されている。特定の実施形態において、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域および定常領域の両方は、完全にヒト型である。完全ヒト抗体は、本技術分野において説明される技法を使用して、本明細書において説明されるように作成できる。例えば、特異的抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原投与に応答してそのような抗体を生成するが内因性の遺伝子座を欠損するように改変されたトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製できる。そのような抗体を作成するために使用できる例示的技法は、参照により全体が組み込まれる米国特許第6,150,584号、第6,458,592号、第6,420,140号に説明されている。
【0141】
特定の実施形態において、調製された抗体は、例えばヒトなど、治療されるべき動物において、有害な免疫反応を誘発しない。一実施形態において、本開示の抗原結合ポリペプチド、その変異型または誘導体は、本分野において認識されている技法を使用することによって、免疫原性を低減するように改変される。例えば、抗体はヒト化、霊長類化、脱免疫化でき、または、キメラ抗体を作成できる。これらの種類の抗体は、親抗体の抗原結合特性を保持する、または、実質的に保持するが、ヒトにおいては免疫原性がより小さい、典型的にはマウスまたは霊長類抗体などの非ヒト抗体に由来する。これは、(a)非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域に移植してキメラ抗体を生成すること、(b)非ヒト相補性決定領域(CDR)の1または複数の少なくとも一部を、重大なフレームワーク残基を保持する、または保持しない、ヒトフレームワークおよび定常領域に移植すること、または、(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによって、ヒト様領域でそれらを「クローキング(cloaking)」することを含む、様々な方法によって達成され得る。そのような方法は、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 57:6851‐6855 (1984); Morrison et al., Adv. Immunol. 44:65‐92 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534‐1536 (1988); Padlan, Molec. Immun. 25:489‐498 (1991); Padlan, Molec. Immun. 31:169‐217 (1994)ならびに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号および第6,190,370号において開示され、それらはすべて、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
脱免疫は、抗体の免疫原性を低減するために使用することもできる。本明細書において使用される「脱免疫」という語句は、T細胞エピトープを改変するように抗体を変更することを含む(例えば、国際特許出願公報第WO/9852976 A1およびWO/0034317 A2を参照)。例えば、開始抗体の可変重鎖および可変軽鎖の配列が解析され、相補性決定領域(CDR)に関連するエピトープおよび配列内の他の重要な残基の位置を示す、各V領域のヒトT細胞エピトープ「マップ」が作成される。最終的な抗体の活性を変更するリスクが低い、代替的なアミノ酸置換を同定するべく、T細胞エピトープマップの個々のT細胞エピトープが解析される。アミノ酸置換の組み合わせを含む様々な代替的な可変重鎖および可変軽鎖の配列が設計され、これらの配列は後に、様々な結合ポリペプチドに組み込まれる。典型的には、12から24の間の変異型抗体が生成され、結合および/または機能について試験される。完全な重鎖および軽鎖遺伝子は、改変された可変領域を含み、ヒト定常領域は、発現ベクターにクローニングされ、その後、全抗体を生成するための細胞株にプラスミドが導入される。次に、抗体は、適切な生化学および生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異型が同定される。
【0143】
本開示の抗原結合ポリペプチドの結合特異性は、免疫沈降、放射免疫測定(RIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などのin vitroアッセイによって決定できる。
【0144】
代替的に、一本鎖ユニットの産生について記載される技法(米国特許第4,694,778号;Bird, Science 242:423‐442 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 55:5879‐ 5883 (1988);およびWard et al., Nature 334:544‐554 (1989))が、本開示の一本鎖ユニットを産生するべく適用され得る。一本鎖ユニットは、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖断片を連結することによって形成され、一本鎖融合ペプチドが結果として得られる。大腸菌における機能性Fv断片を組み立てるための技法が使用され得る(Skerra et al., Science 242: 1038‐1041 (1988))。
【0145】
一本鎖Fv(scFv)および抗体を産生するために使用できる技法の例には、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Huston et al., Methods in Enzymology 203:46‐88 (1991); Shu et al., Proc. Natl. Sci. USA 90:1995‐1999 (1993);およびSkerra et al., Science 240:1038‐1040 (1988)において記載されるものが含まれる。ヒトにおける抗体のin vivo使用、および、in vitro検出アッセイを含む、いくつかの使用について、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、ヒト抗体を使用することが好ましいことがあり得る。キメラ抗体とは、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体など、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を生成する方法は本技術分野において知られている。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Morrison, Science 229:1202 (1985); Oi et al., BioTechniques 4:214 (1986); Gillies et al., J. Immunol. Methods 125:191‐202 (1989);米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第4,816397号を参照されたい。
【0146】
ヒト化抗体とは、非ヒト種およびフレームワーク領域ならびにヒト免疫グロブリン分子の1または複数の相補性決定領域(CDR)を有し、所望される抗原に結合する、非ヒト種抗体に由来する抗体分子である。ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基はしばしば、抗原結合を変更する、好ましくは改善するために、対応するCDRドナー抗体の残基に置換される。これらのフレームワーク置換は、本技術分野において既知の方法により同定され、例えば、CDRとフレームワーク残基との相互作用をモデル化することにより、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定する方法、および、配列比較により、特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定する方法が使用される。(例えば、参照によって全体が本明細書に組み込まれるQueen et al.、米国特許第5,585,089号; Riechmann et al., Nature 332:323 (1988)を参照されたい。)抗体は、例えば、CDR移植(EP 239,400; PCT publication WO 91/09967、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号;および第5,585,089号)、ベニアリングまたはリサーフェイシング(EP 592,106; EP 519,596、Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489‐498 (1991)、Studnicka et al., Protein Engineering 7(6):805‐814 (1994)、Roguska. et al., Proc. Natl. Sci. USA 91:969‐973 (1994))、チェインシャフリング(全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,565,332号)を含む、本技術分野において知られている様々な技法を使用してヒト化できる。
【0147】
完全ヒト抗体は、ヒトの患者の治療処置に特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリを使用するファージディスプレイ法を含む、本技術分野において知られている様々な方法によって作成できる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号、ならびに、PCT公報WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735およびWO 91/10741も参照されたい。これらは各々、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0148】
また、機能的内因性免疫グロブリンを発現できないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用してヒト抗体を生成できる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、マウス胚性幹細胞内に、無作為に、または、相同組換えによって導入され得る。代替的に、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、多様性領域がマウス胚性幹細胞内に導入され得る。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と別個に、または同時に、非機能性を付与され得る。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体の生成を防止する。改変された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞に微量注入することにより、キメラマウスを作る。次に、キメラマウスを繁殖させることにより、ヒト抗体を発現するホモ接合型の子孫を作る。例えば、所望の標的ポリペプチドの全部または一部など、選択された抗原を用いて、通常の方式でトランスジェニックマウスを免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して、免疫化されたトランスジェニックマウスから取得できる。トランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞の分化中に再編成し、その後、クラススイッチおよび体細胞突然変異が起きる。したがって、そのような技法を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、Lonberg and Huszar Int. Rev. Immunol. 73:65‐93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術、ならびに、そのような抗体を生成するためのプロトコルの詳細な説明については、例えば、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、PCT公報WO 98/24893、WO 96/34096、WO 96/33735、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号および第5,939,598号を参照されたい。加えて、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)GenPharm(カリフォルニア州サンノゼ)などの企業は、上で説明されたものと同様の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体の提供に従事できる。
【0149】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技法を使用して生成することもできる。この手法において、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体は、同一のエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導するために使用される。(Jespers et al., Bio/Technology 72:899‐903 (1988)。また、全体として参照によって組み込まれる米国特許第5,565,332号を参照されたい。
【0150】
別の実施形態において、所望されるモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離およびシーケンシングされ得る。単離およびサブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として機能する。DNAは一旦単離されると、発現ベクター内に配置され得て、これが次に、本来は免疫グロブリンを生成しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、骨髄腫細胞など、原核性または真核性の宿主細胞内にトランスフェクトされる。より具体的には、単離されたDNA(本明細書に記載されるように合成され得る)は、本明細書において参照により組み込まれる、1995年1月25日に出願されたNewman et al.の米国特許第5,658,570号に記載されるような抗体を製造するべく、定常領域および可変領域の配列をクローニングするために使用され得る。基本的に、これは、選択された細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、Igに特異的なプライマーを使用するPCRによる増幅を伴う。この目的のための好適なプライマーはまた、米国特許第5,658,570号に記載される。以下でより詳細に説明されるように、所望の抗体を発現する形質転換された細胞は、免疫グロブリンの臨床および商業用のサプライを提供するために比較的大量に増殖され得る。
【0151】
加えて、定型的な組換えDNA技法を使用することにより、本開示の抗原結合ポリペプチドのCDRのうちの1または複数は、非ヒト抗体をヒト化するべく、フレームワーク領域内、例えば、ヒトフレームワーク領域内に挿入され得る。フレームワーク領域は、天然に発生する、または、コンセンサスフレームワーク領域であり得て、好ましくは、ヒトフレームワーク領域(ヒトフレームワーク領域の一覧は、例えば、Chothia et al., J. Mol. Biol. 278:457‐479 (1998)を参照されたい)であり得る。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせによって生成されるポリヌクレオチドは、例えばLIGHTなど、所望されるポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、フレームワーク領域内において、1または複数のアミノ酸置換が成され得て、好ましくは、アミノ酸置換は抗原に対する抗体の結合を改善する。加えて、そのような方法は、1または複数の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成するべく、鎖内ジスルフィド結合に関与する1または複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を行うために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は本開示に包含され、本技術分野の範囲内にある。
【0152】
加えて、適切な生物学的活性のヒト抗体分子の遺伝子と共に、適切な抗原特異性を有する、マウス抗体分子の遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」を生成するために開発された技法を使用できる(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA:851‐855 (1984)、Neuberger et al., Nature 372:604‐608 (1984)、Takeda et al., Nature 314:452‐454 (1985))。本明細書において使用されるキメラ抗体とは、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するものなど、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。
【0153】
組換え抗体を生成するための更に別の非常に効率的な手段がNewman, Biotechnology 10: 1455‐1460 (1992)において開示される。具体的には、この技法の結果、サルの可変ドメインおよびヒト定常配列を含む霊長類化抗体が生じる。この参考文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。更に、この技法は、本明細書に参照により各々が組み込まれる、同一出願人による米国特許第5,658,570号、第5,693,780号および第5,756,096号にも記載される。
【0154】
代替的に、当業者によく知られている技法を使用して、抗体生成細胞株が選択および培養され得る。そのような技法は、様々な実験室マニュアルおよび一次公報において説明されている。これに関して、後述する開示における使用に好適な技法が、Current Protocols in Immunology, Coligan et al., Eds., Green Publishing Associates and Wiley‐Interscience, John Wiley and Sons, New York (1991)において説明され、これは、参照によって付録を含む全体が本明細書に組み込まれる。
【0155】
加えて、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列に、これらに限定されないが、アミノ酸置換を引き起こす特定部位突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発を含む突然変異を導入するために、当業者に知られている標準的な技法を使用できる。好ましくは、変異型(誘導体を含む)は、基準となる可変重鎖領域、CDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、可変軽鎖領域、CDR‐L1、CDR‐L2、または、CDR‐L3に対して、50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または、2未満のアミノ酸置換をコードする。代替的に、突然変異は、飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)など、コード配列の全部または一部に沿って、無作為に導入でき、結果として生じる変異型は生物学的活性についてスクリーニングされ、活性を保持する変異型を同定できる。
【0156】
[癌治療]
本明細書において説明されるように、本開示の抗体、変異型または誘導体は、特定の治療および診断方法において使用され得る。
【0157】
本開示は更に、本明細書において説明される障害または病状の1または複数を治療するために、動物、哺乳類およびヒトなどの患者に開示の抗体を投与することを伴う抗体ベースの治療法に関連する。本開示の治療用化合物には、これらに限定されないが、本開示の抗体(本明細書において説明される変異型、および、変異型の誘導体を含む)、および、本開示の抗体(本明細書において説明される変異型、および、変異型の誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドが含まれる。
【0158】
本開示の抗体は、癌を治療または阻害するために使用することもできる。PD‐L1は腫瘍細胞において過剰発現させることができる。腫瘍由来のPD‐L1は、免疫細胞上のPD‐1に結合でき、それによって、抗腫瘍T細胞免疫を制限する。小型分子阻害剤、または、マウス腫瘍モデルにおけるPD‐L1を標的にしたモノクローナル抗体を用いた結果は、PD‐L1を標的にした治療法は、腫瘍増殖の効果的制御に対する重要な代替的かつ現実的手法であることを示す。実験例において示されるように、抗PD‐L1抗体は、癌患者の生存率の改善をもたらすことができる適応型免疫反応の機構を活性化する。
【0159】
従って、いくつかの実施形態において、治療を必要とする患者の癌を治療するための方法を提供する。一実施形態において、当該方法は、本開示の抗体の有効量を患者に投与することを伴う。いくつかの実施形態において、患者における癌細胞(例えば、間質細胞)のうち少なくとも1つは、PD‐L1を発現する、過剰発現する、または、それを発現するように誘導される。PD‐L1発現の誘導は、例えば、腫瘍ワクチンの投与または放射線治療によって行うことができる。
【0160】
PD‐L1タンパク質を発現する腫瘍には、膀胱癌、非小細胞肺癌、腎癌、乳癌、尿道癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、扁平上皮細胞癌、メルケル細胞癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、小細胞肺癌が含まれる。従って、本開示の抗体は、任意の1または複数のそのような癌を処理するために使用できる。
【0161】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法などの細胞療法も本開示において提供される。好適な細胞を使用でき、それは、本開示の抗PD‐L1抗体に接触させられる(または、代替的に、本開示の抗PD‐L1抗体を発現するように操作される)。そのような接触または操作の後に、治療を必要とする癌患者に細胞を導入することができる。癌患者は、本明細書に開示されるような任意の種類の癌を有し得る。細胞(例えばT細胞)は、例えば、これらに限定されないが、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、または、それらの組み合わせであり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、細胞は癌患者自身から単離されたものである。いくつかの実施形態において、細胞は、ドナーによって、または、細胞バンクから提供される。細胞を癌患者から単離するとき、望ましくない免疫反応を最小限に抑えることができる。
【0163】
本開示の抗体もしくは変異型、または、それらの誘導体を用いて治療、予防、診断、および/または、予後され得る、細胞生存の増加に関連する追加の疾病または病態には、これらに限定されないが、白血病(急性白血病、(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病を含む)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病))を含む)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、および、固形腫瘍(これらに限定されないが、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮種、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、悪性黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫などの肉腫および癌腫などを含む)などの悪性腫瘍および関連する疾患の進行および/または転移が含まれる。
【0164】
[併用療法]
更なる実施形態において、本開示の組成物は、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗菌剤もしくは抗生物質製剤、または、抗真菌剤と組み合わせて投与される。本技術分野において知られている、これらの製剤のいずれかは、本開示の組成物において投与され得る。
【0165】
別の実施形態において、本開示の組成物は、化学療法剤と組み合わせて投与される。本開示の組成物と共に投与され得る化学療法剤には、これらに限定されないが、抗生物質誘導体(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル、5‐FU、メトトレキサート、フロクスウリジン、インターフェロンアルファ‐2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、6‐チオグアニン)、細胞傷害性剤(例えば、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホスファミドエストラムスチン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シスプラチン、ビンクリスチン硫酸塩)、ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲストロール、メチルテストステロン、二リン酸ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、テストラクトン)、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、チオテパ)、ステロイドおよび組み合わせ(例えば、リン酸ベタメタゾンナトリウム)、その他(例えば、ダカルバジン、アスパラギナーゼ、ミトタン、ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、エトポシド)などが含まれる。
【0166】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物と共に投与され得るサイトカインには、これらに限定されないが、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐10、IL‐12、IL‐13、IL‐15、抗CD40、CD40L、および、TNF‐αが含まれる。
【0167】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、例えば、放射線療法など、他の治療または予防方式と組み合わせて投与される。
【0168】
本開示の抗PD‐L1抗体のうち1または複数を第2抗癌(化学療法)剤と共に使用することを含む併用療法も提供される。化学療法剤は、作用機序によって、例えば、ピリミジン類似体フロクスウリジン、カペシタビン、シタラビンなどの代謝拮抗剤/抗癌剤;プリン類似体、葉酸アンタゴニスト、および、関連する阻害剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン)などの天然産物、および、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)などの微小管を含む抗増殖/抗有糸分裂剤;アクチノマイシン、アムサクリン、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イフォスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、エトポシド、トリエチレンチオホスホラミドなどのDNA損傷剤;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンなどの抗生物質;全身的にL‐アスパラギンを代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力が無い細胞を取り除く、L‐アスパラギナーゼなどの酵素;抗血小板剤;ナイトロジェンマスタードシクロホスファミドおよび類似体(メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルニトロソウレア(カルムスチン)および類似体、ストレプトゾシン、トリアゼン(ダカルバジン)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質;白金配位錯体(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、および、アロマターゼ阻害剤(レトロゾールおよびアナストロゾール);ヘパリン、合成ヘパリン塩、および、トロンビンの他の阻害剤などの抗凝固薬;組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレルなどの線維素溶解剤;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレフェルジン);免疫抑制剤タクロリムス、シロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸;化合物(TNP‐470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子阻害剤および線維芽細胞増殖因子阻害剤);アンギオテンシン受容体ブロッカー、一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;トラスツズマブおよびリツキシマブなどの抗体;トレチノインなどの細胞周期阻害剤および分化誘導因子;阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;機能障害誘導因子;コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、ボルデテラ・ペルツシスのアデニル酸シクラーゼ毒素、ジフテリア毒素、カスパーゼ活性化因子;クロマチンの群に分類され得る。
【0169】
更に、化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、ウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチロールメラミンを含むエミレルミンならびにメミラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC‐1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;ズオカルマイシン(合成類似体であるKW‐2189およびCBI‐TMIを含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγa2およびカリケアマイシンΦ1)、ジネマイシンAを含むジネマイシン、クロドロナートなどのビスホスホナート、エスペラマイシン、ネオカルジノスタチンクロモホアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモホア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6‐ジアゾ‐5‐オキソ‐L‐ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ‐ドキソルビシン、シアノモルホリノ‐ドキソルビシン、2‐ピロリノ‐ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5‐フルオロウラシル(5‐FU)などの代謝拮抗剤;デモプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;トリコテセン(特にT‐2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、アングイジン);パクリタキセル(タキソール(登録商標))およびドセタキセル(タキソテール(登録商標))などのタキソイド;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ヘストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デホファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルフォルムチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン、エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロイコボリン;ロニダミン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;フルオロピリミジン;フォリン酸;ポドフィリン酸;2‐エチルヒドラジド;プロカルバジン;ポリサッカリド‐K(PSK);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''‐トリクオロトリエミルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara ‐ C」);シクロホスファミド;チオペタ;クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6‐チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP‐16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT‐11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DFMO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;FOLFIRI(フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン);および、上記の任意の薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体などが含まれる。
【0170】
また、「化学療法剤」の定義には、抗エストロゲン剤、および、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、酵素アロマターゼの阻害剤、抗アンドロゲン剤、ならびに、腫瘍に対するホルモン作用を調節もしくは阻害するように機能する、上記の任意の薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体などの抗ホルモン剤が含まれる。
【0171】
抗エストロゲン剤およびSERMの例には、例えば、タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標)を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4‐ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェン(フェアストン(登録商標))が含まれる。
【0172】
酵素アロマターゼの阻害剤は、副腎におけるエストロゲン生成を調節する。例には、4(5)‐イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGACE(登録商標))、エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、アナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が含まれる。
【0173】
抗アンドロゲン剤の例には、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンが含まれる。
【0174】
また、化学療法剤の例には、これらに限定されないが、レチノイド酸およびその誘導体、2‐メトキシエストラジオール、アンギオスタチン(登録商標)、エンドスタチン(登録商標)、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ‐1の組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ‐2の組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤‐1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤‐2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル(nab‐パクリタキセル)、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの殻から調製)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp‐pg)、スタウロスポリン、プロリン類似体(L‐アゼチジン‐2‐カルボン酸(LACA))を含む基質代謝のモジュレーター、シスヒドロキシプロリン、d,L‐3,4‐デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α'‐ジピリジル、β‐アミノプロピオニトリルフマル酸塩、4‐プロピル‐5‐(4‐ピリジニル)‐2(3h)‐オキサゾロン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン血清、ニワトリのメタロプロテイナーゼ‐3阻害剤(ChIMP‐3)、キモスタチン、β‐シクロデキストリンテトラデカ硫酸塩、エポネマイシン、フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d‐ペニシラミン、β‐1‐アンチコラゲナーゼ血清、α‐2‐抗プラスミン、ビスアントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n‐2‐カルボキシフェニル‐4‐クロロアントラニル酸二ナトリウムまたは(「CCA」)、サリドマイド、抗血管新生ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール、BB‐94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤を含む抗血管新生剤が含まれる。他の抗血管新生剤には、抗体、好ましくは、これらの血管新生増殖因子に対するモノクローナル抗体(β‐FGF、α‐FGF、FGF‐5、VEGFアイソフォーム、VEGF‐C、HGF/SF、Ang‐1/Ang‐2)が含まれる。
【0175】
また、化学療法剤の例には、これらに限定されないが、β‐アミノプロピオニトリル(BAPN)などの化合物、ならびに、参照によって本明細書に組み込まれる、コラーゲンの異常堆積に関連する疾病および病態の治療におけるリシルオキシダーゼの阻害剤およびその使用に関連する、米国特許第4,965,288号(Palfreyman,et al.)、および、様々な病理的線維性状態の治療のためにLOXを阻害する化合物に関連する、米国特許第4,997,854号(Kagan et al.)に開示される化合物を含む抗線維化剤が含まれる。更に、例示的な阻害剤が、参照によって本明細書に組み込まれる、2‐イソブチル‐3‐フルオロ‐、クロロ‐、または、ブロモ‐アリルアミンなどの化合物に関連する米国特許第4,943,593号(Palfreyman et al)、2‐(1‐ナフチルオキシメチル)‐3‐フルオロアリルアミンに関連する米国特許第5,021,456号(Palfreyman et al.)、第5,059,714号(Palfreyman et al.),第5,120,764号(Mccarthy et al.)、第5,182,297号(Palfreyman et al.)、第5,252,608号(Palfreyman et al.)、米国特許公開公報2004/0248871(Farjanel et al.)号に記載されている。
【0176】
また、例示的な抗線維化剤には、リシルオキシダーゼの活性部位のカルボニル基と反応する第一級アミン、より具体的には、カルボニルとの結合後に、共鳴によって安定化される産物を生成するもの、すなわち、エミレンマミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、および、それらの誘導体;セミカルバジドおよび尿素誘導体;BAPNまたは2‐ニトロエチルアミンなどのアミノニトリル;2‐ブロモ‐エチルアミン、2‐クロロエチルアミン、2‐トリフルオロエチルアミン、3‐ブロモプロピルアミン、p‐ハロベンジルアミンなどの不飽和または飽和ハロアミン;セレノホモシステインラクトンなどの第一級アミンなどが含まれる。
【0177】
他の抗線維化剤は、細胞を貫通する、または、貫通しない銅キレート剤である。例示的な化合物には、リシルオキシダーゼによるリシル残基およびヒドロキシリシル残基の酸化的脱アミノ化で生じるアルデヒド誘導体をブロックする間接的阻害剤を含む。例には、チオールアミン、特に、d‐ペニシラミン、および、2‐アミノ‐5‐メルカプト‐5‐メチルヘキサン酸、D‐2‐アミノ‐3‐メチル‐3‐((2‐アセトアミドエチル)ジチオ)酪酸、p‐2‐アミノ‐3‐メチル‐3‐((2‐アミノエチル)ジチオ)酪酸、ナトリウム‐4‐((p‐1‐ジメチル‐2‐アミノ‐2‐カルボキシエチル)ジチオ)硫化ブタン、2‐アセトアミドエチル‐2‐アセトアミドエタンチオールスルファネート、ナトリウム‐4‐メルカプトブタンスルフィナート三水和物など、その類似体が含まれる。
【0178】
また、化学療法剤の例には、これらに限定されないが、患者の治療に好適な治療用抗体を含む、免疫療法剤も含まれる。治療用抗体の一部の例には、シムツズマブ、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクトモマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブレントキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクツムマブ、クリバツズマブ、コナツムマブ、ダラツマブ、ドロジツマブ、ドリゴツマブ、デュシギツマブ、デツモマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エクロメキシマブ、エロツズマブ、エンシツキシマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファレツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、イマツズマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツマブ、ラベツズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツママブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナルナツマブ、ナプツモマブ、ネチツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブ、オカラツズマブ、オフアツムマブ、オララツマブ、オナツズマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、パニツムマブ、パサツズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、ソリトマブ、タカツズマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、チガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、CC49、3F8が含まれる。辺縁帯リンパ腫、WM、CLL、および、小リンパ球性リンパ腫を含む緩慢性B細胞癌を治療するためにリツキシマブを使用できる。リツキシマブおよび化学療法剤の組み合わせは、特に効果的である。
【0179】
例示的な治療用抗体は更に、インジウム‐111、イットリウム‐90、または、ヨウ素‐131などの放射性同位体粒子で標識され得る、または、それと組み合わされ得る。
【0180】
一実施形態において、追加の治療剤は、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤である。ナイトロジェンマスタードアルキル化剤の非限定的な例には、クロラムブシルが含まれる。
【0181】
一実施形態において、本明細書において説明される化合物および組成物は、1または複数の追加の治療剤と共に使用され得る、または、それらと組み合わされ得る。1または複数の治療剤には、これらに限定されないが、Ablの阻害剤、活性化CDCキナーゼ(ACK)、アデノシンA2B受容体(A2B)、アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK)、オーロアキナーゼ、ブルトンのチロシンキナーゼ(BTK)、BRD4などのBET‐ブロモドメイン(BRD)、c‐Kit、c‐Met、CDK活性化キナーゼ(CAK)、カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、カゼインキナーゼ(CK)、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)、Flt‐3、FYN、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)、HCK、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、IKKβεなどのIKK、IDH1などのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、ヤーヌスキナーゼ(JAK)、KDR、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、リシルオキシダーゼタンパク質、リシルオキシダーゼ様タンパク質(LOXL)、LYN、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)、MEK、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、NEK9、NPM‐ALK、p38キナーゼ、血小板由来増殖因子(PDGF)、ホスホリラーゼキナーゼ(PK)、ポロ様キナーゼ(PLK)、ホスファチジルイノシトール3‐キナーゼ(PI3K)、タンパク質キナーゼA、Bおよび/またはCなどのタンパク質キナーゼ(PK)、PYK、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、セリン/スレオニンキナーゼTPL2、セリン/スレオニンキナーゼSTK、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、SRC、TBK1などのセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(TBK)、TIE、チロシンキナーゼ(TK)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、YES、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0182】
ASK阻害剤にはASK1阻害剤が含まれる。ASK1阻害剤の例には、これらに限定されないが、WO 2011/008709 (Gilead Sciences)およびWO 2013/112741 (Gilead Sciences)において説明されるものが含まれる。
【0183】
BTK阻害剤の例には、これに限定されないが、イブルチニブ、HM71224、ONO‐4059およびCC‐292が含まれる。
【0184】
DDR阻害剤には、DDR1および/またはDDR2の阻害剤が含まれる。DDR阻害剤の例には、これらに限定されないが、WO 2014/047624 (Gilead Sciences)、US 2009/0142345 (Takeda Pharmaceutical)、US 2011/0287011 (Oncomed Pharmaceuticals)、WO 2013/027802 (Chugai Pharmaceutical)およびWO 2013/034933 (Imperial Innovations)において開示されるものが含まれる。
【0185】
HDAC阻害剤の例には、これに限定されないが、プラシノスタットおよびパノビノスタットが含まれる。
【0186】
JAK阻害剤は、JAK1、JAK2、および/または、JAK3を阻害する。JAK阻害剤の例には、これらに限定されないが、フィルゴチニブ、ルキソリチニブ、フェドラチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、レスタウルチニブ、パクリチニブ、XL019、AZD1480、INCB039110、LY2784544、BMS911543およびNS018が含まれる。
【0187】
LOXL阻害剤には、LOXL1、LOXL2、LOXL3、LOXL4、および/または、LOXL5の阻害剤が含まれる。LOXL阻害剤の例には、これに限定されないが、WO 2009/017833 (Arresto Biosciences)において説明される抗体が含まれる。
【0188】
LOXL2阻害剤の例には、これらに限定されないが、WO 2009/017833 (Arresto Biosciences), WO 2009/035791 (Arresto Biosciences)およびWO 2011/097513 (Gilead Biologics)において説明される抗体が含まれる。
【0189】
MMP阻害剤には、MMP1~10の阻害剤が含まれる。MMP9阻害剤の例には、これらに限定されないが、マリマスタット(BB‐2516)、シペマスタット(Ro 32‐3555)、および、WO 2012/027721 (Gilead Biologics)において説明されるものが含まれる。
【0190】
PI3K阻害剤には、PI3Kγ、PI3Kδ、PI3Kβ、PI3Kα、および/または、pan‐PI3Kの阻害剤が含まれる。PI3K阻害剤の例には、これらに限定されないが、ウォルトマンニン、BKM120、CH5132799、XL756およびGDC‐0980が含まれる。
【0191】
PI3Kγ阻害剤の例には、これらに限定されないが、ZSTK474、AS252424、LY294002およびTG100115が含まれる。
【0192】
PI3Kδ阻害剤の例には、これらに限定されないが、PI3K II、TGR‐1202、AMG‐319、GSK2269557、X‐339、X‐414、RP5090、KAR4141、XL499、OXY111A、IPI‐145、IPI‐443、および、WO 2005/113556 (ICOS)、WO 2013/052699 (Gilead Calistoga)、WO 2013/116562 (Gilead Calistoga)、WO 2014/100765 (Gilead Calistoga)、WO 2014/100767 (Gilead Calistoga)、WO 2014/201409 (Gilead Sciences)に記載される化合物が含まれる。
【0193】
PI3Kβ阻害剤の例には、これらに限定されないが、GSK2636771、BAY 10824391およびTGX221が含まれる。
【0194】
PI3Kα阻害剤の例には、これらに限定されないが、ブパルリシブ、BAY 80‐6946、BYL719、PX‐866、RG7604、MLN1117、WX‐037、AEZA‐129およびPA799が含まれる。
【0195】
pan‐PI3K阻害剤の例には、これらに限定されなが、LY294002、BEZ235、XL147(SAR245408)およびGDC‐0941が含まれる。
【0196】
SYK阻害剤の例には、これらに限定されないが、タマチニブ(R406)、フォスタマチニブ(R788)、PRT062607、BAY‐61‐3606、NVP‐QAB 205 AA、R112、R343、および、米国特許第8,450,321号(Gilead Connecticut)に記載のものが含まれる。
【0197】
TKIは、上皮増殖因子受容体(EGFR)と、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体とを標的とし得る。EGFRを標的とするTKIの例には、これらに限定されないが、ゲフィチニブおよびエルロチニブが含まれる。スニチニブは、FGF、PDGFおよびVEGFの受容体を標的とするTKIの非限定的な例である。
【0198】
本開示の抗PD‐L1抗体は、いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤と共に使用できる。免疫チェックポイントは、シグナルを大きくする(共刺激分子)、または、シグナルを小さくする(共抑制分子)、免疫系における分子である。多くの癌は、共抑制分子に対してはアゴニスト、または、共刺激分子に対してはアンタゴニストを通して、T細胞シグナルを阻害することによって、免疫系から自身を保護している。免疫チェックポイントのアゴニストまたはアンタゴニストは、細胞によるそのような保護機序を停止させることに役立つことができる。免疫チェックポイントのアゴニストまたはアンタゴニストは、PD‐1、CTLA‐4、LAG‐3 (CD223としても知られている)、CD28、CD122、4‐1BB (CD137としても知られている)、TIM3、OX‐40/OX40L、CD40/CD40L、LIGHT、ICOS/ICOSL、GITR/GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVMまたはBTLA (CD272としても知られている)などのチェックポイント分子のうちのいずれかの1または複数を標的とし得る。
【0199】
プログラムT細胞死1(PD‐1)は、T細胞の表面に見られる膜貫通タンパク質であり、プログラムT細胞死リガンド1(PD‐L1)または腫瘍細胞に結合したとき、T細胞活性の抑制、または、T細胞媒介細胞毒性の減少をもたらす。したがって、PD‐1およびPD‐L1は、免疫ダウンレギュレータ、または、免疫チェックポイントの「オフスイッチ」である。PD‐1阻害剤の例には、これらに限定されないが、ニボルマブ、(Opdivo)(BMS‐936558)、ペムブロリズマブ(Keytruda)、ピジリズマブ、AMP‐224、MEDI0680 (AMP‐514)、PDR001、MPDL3280A、MEDI4736、BMS‐936559およびMSB0010718Cが含まれる。
【0200】
CTLA‐4は、免疫系をダウンレギュレートするタンパク質受容体である。CTLA‐4阻害剤の非限定的な例には、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))(BMS‐734016、MDX‐010、MDX‐101としても知られる)、および、トレメリムマブ(以前はチシリムマブ、CP‐675,206)が含まれる。
【0201】
リンパ球活性遺伝子3(LAG‐3)は、制御性T細胞への作用によって、および、CD8+T細胞に対する直接作用によって、免疫反応を抑制するように機能する、細胞表面上の免疫チェックポイント受容体である。LAG‐3阻害剤には、これらに限定されないが、LAG525およびBMS‐986016が含まれる。
【0202】
CD28は、ほぼすべてのヒトCD4+T細胞、および、すべてのCD8 T細胞のうち約半分で恒常的に発現される。CD28はT細胞の増殖を促す。CD28阻害剤の非限定的な例には、TGN1412が含まれる。
【0203】
CD122は、CD8+エフェクターT細胞の増殖を増加させる。非限定的な例には、NKTR‐214が含まれる。
【0204】
4‐1BB(CD137としても知られている)は、T細胞の増殖に関与する。また、CD137媒介シグナリングは、T細胞、特に、CD8+T細胞を、活性化誘導細胞死から保護することが知られている。PF‐05082566、ウレルマブ(BMS‐663513)およびリポカリンは、CD137阻害剤の例である。
【0205】
上記の併用療法のいずれかについて、抗PD‐L1抗体を、その他の抗癌剤と同時に、または、別個に投与することができる。別個に投与するとき、抗PD‐L1抗体を、その他の抗癌剤の前または後に投与することができる。
【0206】
[感染の治療]
実験例において示されるように、本開示の抗体は、感染の治療に有用となり得る免疫反応を活性化できる。
【0207】
感染とは、病原体による、生物の身体組織への侵入、それらの増殖、ならびに、これらの病原体およびそれらが生成する毒素に対する、宿主組織の反応である。感染は、ウイルス、ウイロイド、プリオン、細菌、寄生性回虫や蟯虫などの線虫、マダニ、ダニ、ノミ、シラミなどの節足動物、白癬などの真菌、サナダムシや他の蠕虫などの他の大寄生虫、などの感染性病原体によって引き起こされ得る。一態様において、感染性病原体は、グラム陰性菌などの細菌である。一態様において、感染性病原体は、DNAウイルス、RNAウイルス、および、逆転写ウイルスなどのウイルスである。ウイルスの非限定的な例には、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、HIV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスが含まれる。
【0208】
本開示の抗体はまた、微生物および免疫細胞を標的にして微生物の除去をもたらすことにより、微生物によって引き起こされる感染症を治療すること、または、微生物を殺菌することに使用できる。一態様において、微生物には、RNAウイルスおよびDNAウイルスを含むウイルス、グラム陽性細菌、グラム陰性菌、原生動物または真菌が含まれる。感染症および関連する微生物の非限定的な例は、以下の表4に提供されている。
[表4 感染症および関連する微生物感染源]
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【0209】
特定の患者に対する具体的な投与量および治療計画は、特定の抗体、使用される変異型または誘導体、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、食生活、投与時刻、排泄率、併用薬剤、治療対象である特定の疾病の重症度を含む様々な要素に依存するであろう。医療従事者による、そのような要素の判断は、当分野における一般的な能力の範囲内である。また、その量は、治療される個々の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および、所望の効果に依存するであろう。使用される量は、本技術分野において既知の薬学的および薬物動態学な原理によって決定できる。
【0210】
抗体または変異型の投与方法には、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および、経口の経路が含まれる。抗原結合ポリペプチドまたは組成物は、任意の好都合の経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜内壁(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を通した吸収によって投与され得て、他の生物学的活性剤と共に投与され得る。したがって、開示の抗原結合ポリペプチドを含む医薬組成物は、経口、経直腸、非経口、嚢内、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏、注入薬または経皮パッチとして)、口腔内に、または、口腔もしくは鼻腔スプレーとして投与され得る。
【0211】
本明細書において使用される「非経口」という語句は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、関節内の注射および注入を含む投与方式を指す。
【0212】
投与は全身投与であっても、または、局所的投与であってもよい。加えて、脳室内および髄腔内注射を含む好適な経路によって中枢神経系に本開示の抗体を導入することが望ましいことがあり得る。脳室内注射は、例えば、オマヤリザーバーなどのリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易になり得る。また、例えば吸入器または噴霧器、および、エアロゾル剤の製剤の使用によって、肺投与を利用できる。
【0213】
本開示の抗体ポリペプチドまたは組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましいことがあり得る。これは、例えば、これらに限定されないが、手術中の局所注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯と組み合わせる)、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、または、インプラントによって達成され得て、上記インプラントは、シアラスティック(sialastic)膜などの膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または、ゲル状物質である。好ましくは、抗体を含む、本開示のタンパク質を投与するとき、タンパク質が吸収されない材料を使用するように注意する必要がある。
【0214】
別の実施形態において、抗体または組成物は、小胞、特に、リポソームにおいて輸送できる(Langer, 1990, Science 249:1527‐1533; Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez‐Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353‐365 (1989); Lopez‐Berestein, ibid., pp. 317‐327; see generally ibid.を参照されたい)。
【0215】
更に別の実施形態において、抗原結合ポリペプチドまたは組成物は、制御された放出システムにおいて輸送できる。一実施形態において、ポンプが使用され得る(Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照されたい)。別の実施形態では、高分子材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, J., 1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたい。また、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71:105を参照されたい)。更に別の実施形態において、制御された放出システムは、治療対象、すなわち、脳の付近に配置でき、したがって、全身用量投与の場合の数分の1のみが必要になる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115‐138 (1984)を参照されたい)。他の制御された放出システムは、Langer (1990, Science 249:1527‐1533)のレビューにおいて説明されている。
【0216】
本開示の組成物が、核酸、または、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、特定の実施形態において、核酸は、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構築して、それが細胞内になるように投与することによって(例えば、レトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号を参照))、または、直接注射によって、または、微粒子ボンバードメントの使用によって(例えば、遺伝子銃、Biolistic、Dupont)、または、脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、または、核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに結合させて投与することなどによって(例えば、Joliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864‐1868を参照されたい)、コードされたタンパク質の発現を促進するように核酸をin vivoで投与できる。代替的に、核酸は、細胞内に導入され得て、相同組換えによって、発現するように宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0217】
炎症性、免疫性もしくは悪性の疾患、障害または病状の、治療、抑制および予防に効果的となるであろう、本開示の抗体の量は、標準的な臨床的技法によって決定できる。加えて、最適な投与量範囲を同定することに役立てるべく、in vitroアッセイが任意で利用され得る。製剤において利用される厳密な用量は、投与経路、ならびに、疾病、障害または病態の重症度に依存し、医療従事者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験システムから得られる用量反応曲線から推定され得る。
【0218】
一般的な提案として、患者に投与される、本開示の抗原結合ポリペプチドの投与量は、典型的には、患者の体重に対して0.1mg/kgから100mg/kgの間、患者の体重に対して0.1mg/kgから20mg/kgの間、または、患者の体重に対して1mg/kgから10mg/kgの間である。一般的に、ヒト抗体は、他の種に由来する抗体と比べて、ヒトの身体内における半減期が長い。これは、外来ポリペプチドに対する免疫反応に起因する。したがって、ヒト抗体の投与量を少なくすること、および、投与の頻度を少なくすることが、しばしば可能である。更に、例えば脂質化などの改変によって、抗体の(例えば脳への)吸収および組織透過性を向上させることによって、本開示の抗体の投与の投与量および頻度が減少し得る。
【0219】
本開示の抗体、変異型または誘導体の投与を含む、感染性または悪性の疾患、病態または障害を治療するための方法は、典型的には、in vitroで試験され、次に、ヒトに使用される前に、所望される治療または予防活性について、許容される動物モデルにおいてin vivoで試験される。トランスジェニック動物を含む好適な動物モデルは当業者にとって既知である。例えば、本明細書において説明される、抗原結合ポリペプチドの治療有用性を示すin vitroアッセイは、細胞株または患者の組織試料に対する、抗原結合ポリペプチドの作用を含む。細胞株および/または組織試料に対する抗原結合ポリペプチドの作用は、本明細書の別の箇所に開示されているアッセイなど、当業者に知られている技法を利用して決定できる。本開示によれば、特定の抗原結合ポリペプチドの投与が適応されるかどうかを決定するために使用できるin vitroアッセイは、in vitro細胞培養アッセイを含み、このアッセイでは、患者の組織試料を培地において増殖させ、化合物に曝し、または、そうでない場合、化合物を投与し、組織試料に対する当該化合物の作用を観察する。
【0220】
例えば、リポソーム内におけるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429‐4432を参照)、レトロウイルスもしくは他のベクターの一部としての核酸の構築など、様々な輸送システムが知られており、これらは、本開示の抗体、または、本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドを投与するために使用できる。
【0221】
[診断方法]
PD‐L1の過剰発現は、特定の腫瘍試料において観察され、PD‐L1過剰発現細胞を有する患者は、本開示の抗PD‐L1抗体を用いる治療に反応する可能性がある。従って、本開示の抗体は、診断および予後の目的のために使用することもできる。
【0222】
好ましくは細胞を含む試料は、癌患者であり得る、または、診断を所望する患者であり得る患者から取得できる。細胞は、腫瘍組織もしくは腫瘍塊の細胞、血液試料、尿試料、または、患者からの任意の試料であり得る。試料の任意の前処理の後に、試料に潜在的に存在するPD‐L1タンパク質と抗体が相互作用することを可能にする条件下で、本開示の抗体と共に試料をインキュベートできる。抗PD‐L1抗体を利用する、ELISAなどの方法を使用して、試料中のPD‐L1タンパク質の存在を検出できる。
【0223】
試料中のPD‐L1タンパク質の存在(任意で、量または濃度)は、当該抗体を用いる治療に患者が適しているという指標として、または、患者が癌治療に反応した(または、反応しなかった)という指標として、癌の診断に使用できる。予後の方法については、治療の進捗を示すために、癌治療の開始後に、特定の段階において検出を1回、2回、または、それ以上実行できる。
【0224】
[組成]
また、本開示は医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体、および、許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は更に、第2抗癌剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を含む。
【0225】
特定の実施形態において、「薬学的に許容可能な」という語句は、動物、より具体的には、ヒトへの使用について、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されている、または、米国薬局方協会もしくは他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。更に、「薬学的に許容可能な担体」とは、一般的に、非毒性の固体、半固体、または、液体の増量剤、希釈剤、封入材、または、任意の種類の製剤補助物である。
【0226】
「担体」という語句は、治療薬の投与に用いる、希釈剤、補助剤、賦形剤、または、ビヒクルを指す。当該医薬担体は、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油、および、同様のものなど、石油、動物、植物、または、合成に由来するものを含む、水および油などの無菌液体であってよい。医薬組成物が静脈内投与されるとき、水は好ましい担体である。また、生理食塩水、ならびに、デキストロースおよびグリセロールの水溶液を、液体担体として、特に注射液に利用できる。好適な医薬品の賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。また、組成物は、所望される場合、わずかな量の湿潤剤もしくは乳化剤、または、酢酸塩などのpH緩衝剤、クエン酸、または、リン酸塩を含み得る。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化物質、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧調整剤も想定される。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、タブレット、錠剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態を取り得る。組成物は、トリグリセライドなど、従来の結合剤および担体と共に、座薬として製剤化され得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、マグネシウム、ステアリン酸塩、サッカリンナトリウム、セルロース、マグネシウム炭酸塩などの標準的な担体を含み得る。好適な医薬品担体の例は、参照によって本明細書に組み込まれる、E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物には、患者に対する適切な投与のための形態を提供するように、好適な量の担体と組み合わされた、好ましくは精製された形態の、治療有効量の抗原結合ポリペプチドが含まれるであろう。製剤は、投与の方式に好適なものであるべきである。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチックからできている、アンプル、使い捨てシリンジ、または、多回投与バイアルの中に封入され得る。
【0227】
一実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合された医薬組成物として、定型的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌水性等張緩衝液の溶液である。必要である場合、組成物はまた、可溶化剤と、注射の部位における疼痛を緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔剤とを含み得る。一般的に、成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたは小袋などの密封容器における、凍結乾燥粉末または無水濃縮物などの単位投与量形態で、別個に供給されるか、または、共に混合されるかのいずれかである。組成物が注入によって投与される場合、組成物は、医薬品グレードの無菌水または生理食塩水を含む注入ボトルを用いて分注できる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0228】
本開示の化合物は、中性または塩の形態として製剤化できる。薬学的に許容可能な塩には、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩などに由来するものなどの陰イオンと共に形成されるものと、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2‐エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなど、陽イオンと共に形成されるものとが含まれる。
【0229】
[実施例]
[例1:ヒトPD‐L1に対するヒトモノクローナル抗体の生成]
抗ヒトPD‐L1マウスモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して生成される。
【0230】
抗原:ヒトPDL1‐Fcタンパク質およびヒトPD‐L1高発現CHOK1細胞株(PDL1‐CHOK1細胞株)。
【0231】
免疫化:ヒトPD‐L1に対するマウスモノクローナル抗体を生成するために、まず、1.5×10 PDL1‐CHOK1細胞を用いて、6~8週齢雌BALB/cマウスを免疫化した。最初の免疫化の14日後および33日後にそれぞれ、1.5×10 PDL1‐CHOK1細胞を用いて、免疫化マウスを再免疫化した。PD‐L1タンパク質に結合する抗体を生成するマウスを選択するために、免疫化マウスからの血清をELISAによって試験した。簡単に説明すると、1μg/mlのヒトPD‐L1タンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、室温(RT)で一晩放置した後に、ウェルあたり100μlの5%BSAでブロックした。免疫化マウスからの血漿の希釈物を各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させた抗マウスIgG抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ABTS基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 405nmで解析した。免疫化の54日後に、50μgヒトPDL1‐Fcタンパク質を用いて、抗PDL1 IgGの十分な抗体価を有するマウスを追加免疫した。その結果として得られるマウスを融合物のために使用した。ELISAによって、抗PD‐L1IgGについて、ハイブリドーマの上清を試験した。
【0232】
更なる解析のために、ハイブリドーマクローンHL1210‐3、HL1207‐3、HL1207‐9およびHL1120‐3を選択した。HL1210‐3可変領域のアミノ酸およびポリヌクレオチド配列は、下の表5に提供されている。
[表5 HL1210‐3可変領域配列]
【表23】
【0233】
[例2:ヒトPD‐L1に対するHL1210‐3マウスモノクローナル抗体の結合活性]
ハイブリドーマクローンHL1210‐3の結合活性を評価するために、このクローンから精製されたmAbに対してELISA試験を行った。簡単に説明すると、0.1μg/mlのヒトPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、ウェルあたり100μlの5%BSAを用いてブロックした。0.2μg/mlから開始するHL1210‐3抗体の3倍希釈を各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗マウスIgG抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450~630nmで解析した。図1に示されるように、HL1210‐3は、高い活性(EC50=5.539ng/ml)で、ヒトPD‐L1と結合できる。
【0234】
[例3:HL1210‐3マウスmAbによる、受容体PD‐1に対するヒトPD‐L1結合のブロック]
[組換えヒトPD‐L1の使用による受容体ブロッキングアッセイ]
組換えヒトPD‐L1の受容体PD‐1への結合に対する、HL1210‐3マウスmAbのブロッキング効果を評価するために、ELISAベースの受容体ブロッキングアッセイを利用した。簡単に説明すると、1μg/mlのヒトPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、ウェルあたり100μlの5%BSAを用いてブロックした。50μlのビオチン標識ヒトPD‐1‐Fcタンパク質、および、50μlで2μg/mlから開始するHL1210‐3抗体の3倍希釈物を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ストレプトアビジン‐HRPを用いて37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450~630nmで解析した。図2に示されるように、HL1210‐3は、ヒトPD1に対するヒトPD‐L1の結合をIC50=0.7835nMで効率的に阻害できる。
【0235】
[哺乳類細胞発現ヒトPD‐L1を使用することによる受容体ブロッキングアッセイ]
哺乳類細胞上で発現するヒトPD‐L1の受容体PD‐1への結合に対する、HL1210‐3マウスmAbのブロッキング効果を評価するために、FACSベース受容体ブロッキングアッセイを使用した。簡潔に説明すると、まず、20μg/mlから開始する3倍段階希釈HL1210‐3マウスmAbを用いて、PDL1‐CHOK1細胞を室温で1時間インキュベートした。FACSバッファ(PBS+2% FBS)による洗浄後、ビオチン標識huPD‐1を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジン‐PEを各ウェルに加え、FACSバッファを用いて、0.5時間の2回後洗浄を行った。PEの平均蛍光強度(MFI)をFACSAriaIIIによって評価した。図3に示されるように、HL1210‐3抗体は、哺乳類細胞上で発現するPD‐L1に対するPD‐1の結合を高い効率で阻害できる(IC50は2.56nM、92.6%の最高阻害率)。
阻害率(%)=(1‐試験抗体のMFI/対照担体のMFI)×100%
【0236】
[例4:HL1210‐3マウスmAbによって促進されるヒトT細胞免疫反応]
HL1210‐3マウスmAbの作用を評価するために、混合リンパ球反応の環境において、ヒトT細胞の応答を調べた。ヒトDCを、GM‐CSFおよびIL‐4の存在下で、CD14+単球から7日間にわたって分化させた。次に、別のドナーから単離されたCD4+T細胞を、DCおよび抗PD‐L1ブロッキング抗体の希釈系列を用いて共培養した。接種後5日目に、IFNγ生成について、培養上清のアッセイを行った。その結果、HL1210‐3抗体は、用量依存的に、IFNγの生成を促進できることが示された。このことは、抗PD‐L1抗体がヒトT細胞応答を促進できることを示唆している(図4)。
【0237】
[例5:HL1210‐3マウスmAbの結合親和性]
捕捉方法を使用して、BIACORETM(登録商標)を用いて、組換えPD‐L1タンパク質(ヒトPD‐L1‐his taq)に対するHL1210‐3抗体結合を試験した。CM5チップ上にコーティングされた抗マウスFc抗体を使用して、HL1210‐3マウスmAbを捕集された。捕集された抗体に対して、ヒトPD‐L1‐his taqタンパク質の希釈系列を25μg/mlの流速で3分間注入した。抗原を900秒間にわたって解離させた。すべての実験は、Biacore T200(登録商標)上で実行した。データ分析は、Biacore T200(登録商標)評価ソフトウェアを使用して実行した。結果を図5および下の表6に示す。
[表6 組換えヒトPD‐L1に対するHL1210‐3の結合速度]
【表24】
【0238】
[例6:HL1210‐3マウスmAbのヒト化]
mAb HL1210‐3可変領域遺伝子を利用してヒト化mAbを作成した。このプロセスの第1段階において、MAb HL1210‐3のVHおよびVKのアミノ酸配列をヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体の一致率が最高のヒト生殖細胞系Ig遺伝子配列を発見した。軽鎖については、最も近いヒトのマッチは、O18/Jk2およびKV1‐39*01/KJ2*04遺伝子である。重鎖については、最も近いヒトのマッチは、VH3‐21遺伝子である。一致率が高いことから、VH3‐11、VH3‐23、VH3‐7*01およびVH3‐48遺伝子も選択された。
【0239】
次に、HL1210‐3軽鎖のCDR1(配列識別番号4)、2(配列識別番号5)および3(配列識別番号6)が、O18/Jk2およびKV1‐39*01/KJ2*04遺伝子のフレームワーク配列に移植され、かつ、HL1210‐3 VHのCDR1(配列識別番号1)、2(配列識別番号2)および3(配列識別番号3)配列がVH3‐21、VH3‐11、VH3‐23、VH3‐48またはVH3‐7*01遺伝子のフレームワーク配列に移植されるように、ヒト化可変ドメイン配列を設計した。次に、マウスのアミノ酸をヒトのアミノ酸に置き換えることによって結合および/またはCDRの形態に影響を生じさせ得る何らかのフレームワーク位置があるかどうかを決定するために、3次元モデルを生成した。軽鎖の場合、フレームワーク中の22S、43S、60D、63Tおよび42Q(Kabatナンバリング、表7を参照)を同定した。重鎖の場合、フレームワークにおける1E、37V、40T、44S、49A、77N、91I、94Rおよび108Tが復帰突然変異に関与した。
[表7 ヒト化設計]
【表25】
【表26】
【0240】
一部のヒト化抗体のアミノ酸およびヌクレオチド配列を下の表8に列挙する。
[表8 ヒト化抗体配列(太字はCDRを示す)]
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【0241】
ヒト化VHおよびVK遺伝子を合成的に生成し、次に、ヒトγ1およびヒトκ定常ドメインを含むベクターにそれぞれをクローニングした。ヒトVHおよびヒトVKの組み合わせにより、40のヒト化抗体を形成した(表9を参照)。
[表9 VHおよびVL領域を有するヒト化抗体]
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【0242】
[例7:ヒト化PD‐L1抗体の抗原結合特性]
[組換えヒトPD‐L1の結合特性]
抗原結合活性を評価するために、ヒト化抗体に対してELISA試験を行った。簡単に説明すると、0.1μg/mlのヒトPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、ウェルあたり100μlの5%BSAを用いてブロックした。10μg/mlから開始するヒト化抗体の5倍希釈物を各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗マウスIgG抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450~630nmで解析した。図6に示されるように、すべてのヒト化抗体は、キメラ抗体に接触するヒトPD‐L1に対する同等の結合効力を示す。
【0243】
[哺乳動物細胞で発現させたヒトPD‐L1の結合特性]
抗原結合特性を評価するために、哺乳動物細胞で発現させたPD‐L1との結合について、FACSによってヒト化抗体を解析した。簡単に説明すると、まず、2μg/mlから開始するヒト化抗体の5倍段階希釈物を用いて、PDL1‐CHOK1細胞を室温で1時間インキュベートした。FACSバッファ(PBS+2%FBS)による洗浄後、Alexa488‐抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。FACSAriaIIIによって、Alexa488のMFIを評価した。図7に示されるように、すべてのヒト化抗体は、哺乳類細胞で発現されるPD‐L1に対して、キメラ抗体と同等に高い効率で結合できる。
【0244】
ヒト化抗体の結合速度を調査するために、この例では、Octet Red 96を使用することによって親和性順位付けを実行した。表10に示されるように、Hu1210‐3、Hu1210‐8、Hu1210‐9、hu1210‐14、Hu1210‐17、hu1210‐1およびHu1210‐22は、キメラ抗体と同等のより高い親和性を示す。
[表10 ヒト化抗体の親和性順位付け]
【表36】
【0245】
[Biacore(登録商標)によるヒト化抗体の全体的な反応速度的親和性]
捕捉方法を使用して、BIACORETM(登録商標)を用いて、組換えPD‐L1タンパク質(ヒトPD‐L1‐his taq)に対するヒト化抗体結合を試験した。CM5チップ上にコーティングされた抗マウスFc抗体を使用して、HL1210‐3マウスmAbを捕集された。捕集された抗体に対して、ヒトPD‐L1‐his taqタンパク質の希釈系列を25μg/mlの流速で3分間注入した。抗原を900秒間にわたって解離させた。すべての実験は、Biacore T200(登録商標)上で実行した。データ分析は、Biacore T200(登録商標)評価ソフトウェアを使用して実行し、下の表11に示されている。
[表11 Biacoreによる親和性]
【表37】
【0246】
[種間活性]
huPD‐L1、マウスPD‐L1、ラットPD‐L1、アカゲザルPD‐L1に対するヒト化抗体の結合を評価するために、抗体に対してELISA試験を実行した。簡単に説明すると、1μg/mlのヒト、マウス、ラットおよびアカゲザルPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、100μl/ウェルの5% BSAを用いてブロックした。1μg/mlから開始するヒト化抗体の3倍希釈を各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗マウスIgG抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450~630nmで解析した。Hu1210‐41抗体は、低い親和性でアカゲザルPD‐L1に結合でき、ラットおよびマウスPD‐L1には結合できない(図8)。
【表38】
【0247】
[ファミリーメンバー特異性]
ヒトB7ファミリーおよび他の免疫チェックポイントに対する、ヒト化抗PD‐L1抗体の結合を評価するために、ELISAによって、B7‐H1(PD‐L1)、B7‐DC、B7‐1、B7‐2、B7‐H2、PD‐1、CD28、CTLA4、ICOSおよびBTLAへの結合について抗体を評価した。図9に示されるように、Hu1210‐41抗体は、B7‐H1(PD‐L1)のみに特異的に結合できる。
【0248】
[例8:ヒト化抗体によってブロックされる、PD‐1に対するヒトPD‐L1の活性]
[細胞ベースの受容体ブロッキングアッセイ]
哺乳類細胞上で発現するヒトPD‐L1の受容体PD‐1への結合に対する、ヒト化抗体のブロッキング効果を評価するために、FACSベース受容体ブロッキングアッセイを利用した。簡潔に説明すると、まず、20μg/mlから開始する3倍段階希釈HL1210‐3マウスmAbを用いて、PDL1‐CHOK1細胞を室温で1時間インキュベートした。FACSバッファ(PBS+2% FBS)による洗浄後、ビオチン標識huPD‐1を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジン‐PEを各ウェルに加え、FACSバッファを用いて、0.5時間の後洗浄を2回行った。PEの平均蛍光強度(MFI)をFACSAriaIIIによって評価した。
阻害率(%)=(1‐試験抗体のMFI/対照担体のMFI)×100%
【0249】
下の表12に示されるように、Hu1210‐3、Hu1210‐9、Hu1210‐8、Hu1210‐14、Hu1210‐17、Hu1210‐19およびHu1210‐22抗体は、PD‐1に対するPD‐L1の結合のブロックについて、キメラ抗体と同等の有効性を示す。
[表12 PD‐1受容体ブロッキングアッセイ]
【表39】
【0250】
[組換えヒトPD‐L1の使用による受容体ブロッキングアッセイ]
ヒトPD‐L1について、2つの受容体、すなわち、PD‐1およびB7‐1がある。これら2つのタンパク質に対するヒト化PD‐L1抗体のブロック特性を調査するために、ここでは、タンパク質ベースの受容体ブロッキングアッセイを利用した。簡単に説明すると、1μg/mlのヒトPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、ウェルあたり200μlの5%BSAを用いてブロックし、37℃で2時間放置した。50μlのビオチン標識ヒトPD‐1‐FcまたはB7‐1vタンパク質、および、100nM、50μlから開始するPD‐L1抗体の5倍希釈物を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ストレプトアビジン‐HRPを用いて37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450nmで解析した。図10および11に示されるように、Hu1210‐41は、ヒトPD1およびB7‐1に対するヒトPD‐L1n結合を効率的に阻害できる。
【0251】
[例9:ヒト化抗体によって促進されるヒトT細胞免疫反応]
[混合リンパ球反応アッセイ]
ヒト化抗体のin vitro機能を評価するために混合リンパ球反応の環境において、ヒトT細胞の応答を調べた。ヒトDCを、GM‐CSFおよびIL‐4の存在下で、CD14+単球から7日間にわたって分化させた。次に、別のドナーから単離されたCD4+T細胞を、DCおよび抗PD‐L1ブロッキング抗体の希釈系列を用いて共培養した。接種後5日目に、IL‐2およびIFNγ生成について、培養上清のアッセイを行った。この結果は、Hu1210‐8、Hu1210‐9、Hu1210‐16およびHu1210‐17抗体が用量依存的に、IL‐2およびIFNγの生成を促進できることを示し、抗PD‐L1抗体がヒトT細胞応答を促進できることを示唆する。
【0252】
[CMVリコールアッセイ]
ヒト化抗体のin vitro機能を評価するために、ヒトT細胞の応答をCMVリコールアッセイにおいて調べた。段階希釈されたヒト化抗体の存在下で、1μg/mlのCMV抗原を用いて、ヒトPBMCを刺激した。図12および13に示されるように、Hu1210‐40、Hu1210‐41およびHu1210‐17は、用量依存的に、IFNγの生成を促進できる。
【0253】
[例10:抗PD‐L1 mAbによる腫瘍増殖阻害]
ヒト肺腺癌細胞株HCC827に由来する細胞は、NOD scid gamma(NSG)マウスに移植される。NSGマウスは、NOD scid gammaが欠損した、かつ、もっとも免疫不全のマウスであるため、ヒト腫瘍細胞およびPBMC移植のレシピエントとして理想的である。移植後10日目に、腫瘍を有するマウスの中にヒトPBMCを移植する。移植後約20日目に、腫瘍体積が100~150mmに到達すると、1日おきに5mg/kgのPD‐L1抗体がマウスに投与される。腫瘍体積は、抗体投与と併せて、1日おきにモニタリングされる。図14に示されるように、Hu1210‐31は、5mg/kgで、腫瘍増殖を30%阻害できる。Hu1210‐41抗体は、用量依存的に腫瘍増殖を阻害でき、一方、腫瘍重量も、Hu1210‐41抗体によって用量依存的に抑制される(図15)。
【0254】
[例11 ヒト化抗体の更なる変形および最適化のコンピュータシミュレーション]
CDR領域またはフレームワーク領域における特定のアミノ酸残基を変更することにより、抗体の活性および/または安定性が更に改善される得る、または、保持され得ることが考えられた。計算ツール(VectorNTI、www.ebi.ac.uk/tools/msa/clustalo/で入手可能)を用いて、構造、配座、機能の特性に関連して、変異型を試験した。可能性を示したもの(CDR領域内)を下の表に列挙する。
[表13 ヒト化抗体への組み入れに好適なVHおよびVL CDRおよび変異型]
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
下線:ホットスポット変異残基およびその置換
【0255】
[例12:PD‐L1エピトープの同定]
本試験は、本開示の抗体に対するPD‐L1の結合に関与するアミノ酸残基を同定するために実行された。
【0256】
PD‐L1のアラニン走査ライブラリが構築された。簡単に説明すると、PD‐L1の217の変異型クローンが、Integral Molecularのプロテインエンジニアリングのプラットフォーム上で生成された。PD‐L1突然変異ライブラリにおける各変異型に対するHu1210‐41 Fabの結合を、高スループットフローサイトメトリーによって、2連で決定した。各生データ点において、バックグラウンド蛍光を減算し、PD‐L1野生型(WT)の反応性に正規化した。各PD‐L1変異型について、発現の関数として、平均結合値をプロットした(対照:抗PD‐L1 mAb反応性)。暫定的に重要なクローン(十字付きの円)を同定するために、対照のmAbに結合するWTが70%以上、かつ、Hu1210‐41 Fabへの反応性を有するWTが30%未満であるという閾値(破線)を適用した(図16)。PDL1のY134、K162およびN183が、Hu1210‐41結合に必要な残基として同定された。Hu1210‐41 Fabに対するN183Aクローンの低い反応性は、それがHu1210‐41結合について、エネルギー的に大きく寄与し、Y134およびK162の寄与は小さいことを示唆している。
【0257】
図17に示されるように、重要な残基(球体)が3次元のPD‐L1構造上で同定された(PDB ID# 5JDR, Zhang et al., 2017)。したがって、これらの残基、Y134、K162およびN183は、本開示の様々な実施形態の抗体への結合を担うPD‐L1のエピトープを構成している。
【0258】
興味深いことに、Y134、K162およびN183がすべて、PD‐L1タンパク質のIgCドメイン中に配置されていることに留意されたい。PD‐1およびPD‐L1両方の細胞外部分は、IgVドメインおよびIgCドメインを有する。PD‐L1は、IgVドメイン間の結合を通してPD‐1に結合することが一般に知られている。ながら、そのような従来の抗体と異なり、Hu1210‐41は、IgCドメインに結合する。これは、PD‐1/PD‐L1結合の阻害において有効ではないと予想されていた。くべきことに、Hu1210‐41のこの異なるエピトープは、Hu1210‐41の優れた活性に寄与している可能性が高い。
【0259】
[例13.抗PDL1抗体の抗体設計]
例13‐17では、変異誘発を使用して、Hu1210‐41に基づいて更に改善された抗体を同定することを試みた。
【0260】
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)とヌクレアーゼ非活性のclustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質9(dCas9)との融合タンパク質を、293個のT細胞における機能的バリアントの高スループットスクリーニングに使用した。簡潔に説明すると、抗体の6個のCDRを認識するシングルガイド(sg)RNAは、dCas9‐AID融合タンパク質を抗体の6個のCDRへ誘導して、CDR領域における変異を誘導することができる。変異抗体は、293個の細胞の細胞表面において提示された。その結果生じた細胞は、非変異の対照物より良い結合力を示し、サブシーケンス配列決定のためにFACSで選別された。CDRH2におけるS60からRの変異が、抗体に対する良い効果を有する可能性があるものとして同定された。
【0261】
S60R(CDRH2)変異体の抗原結合特性を評価するために、哺乳動物細胞で発現させたPD‐L1との結合について、FACSによって抗体を解析した。簡単に説明すると、まず、2μg/mlから開始するヒト化抗体の5倍連続希釈物を用いて、PD‐L1 Raji細胞を室温で1時間インキュベートした。FACSバッファ(PBS+2%FBS)による洗浄後、Alexa488‐抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。FACSAriaIIIによって、Alexa488のMFIを評価した。図18に示されるように、S60R変異体は、哺乳類細胞で発現するPD‐L1に高い効率で結合し、これは、親抗体Hu1210‐41より強力である。次に、S60R変異体は、下の更なる変異解析のために親抗体として使用され、「WT」と呼ばれた。
【0262】
以下の方策のいずれかを使用して、抗PD‐L1モノクローナル抗体の抗体設計のために、4つのサブライブラリを構築した。方策1において、非常にランダムな変異によって、重鎖可変ドメインVH CDR3またはVL‐CDR3の変異誘発が実行された。方策2において、変異率を制御してCDRウォーキングを行うことによって、(VH‐CDR3、VL‐CDR3、および、VL‐CDR1)または(VH‐CDR1、VH‐CDR2、および、VL‐CDR2)から成る、2つのCDR組み合わせライブラリが生成された。
【0263】
バイオパニング:厳しい洗浄条件の前に、インキュベート/結合時間を短縮することによって、ファージパニング方法が適合された。簡潔に説明すると、1mlのMPBSを用いて、100μlの磁気ストレプトアビジンビード(Invitrogen(登録商標)、米国)を室温で1時間ブロックした。別の試験管において、不要なバインダを除去するべく、100μlの磁気ストレプトアビジンビードと共に、ライブラリファージを1mlのMPBSにおいてプレインキュベートした(各回5×10^11~12)。磁気粒子集中装置を使用して、ファージおよびビードを分離した。ビオチン化PD‐L1タンパク質をファージに加え、室温で2時間インキュベートし、オーバーヘッドシェイカーを使用して穏やかに混合した。磁気粒子集中装置において、溶液からのファージを有するビードを分離し、上清を廃棄した。PBSTで10倍、PBS(pH7.4)で10倍となるように、新鮮な洗浄緩衝液でビードを洗浄した。0.8ml、0.25%のトリプシンのPBS(シグマ、米国)溶液を加え、37℃で20分間インキュベートしてファージを溶出させた。得られたファージを滴定し、次の回のパニングのために回収し、回を増すごとに抗原濃度を減少させた。
【0264】
[ELISAスクリーニングおよびオン/オフ率順位付け]
所望のパニング出力から、クローンを選んで誘導した。一次スクリーニングのためにファージELISAを実行した。配列決定によって陽性クローンを解析した。独自のホットスポットが発見された。表14は、同定された変異を示す。下に示すように、CDRH3におけるFGK残基は、改善された抗体を生成するホットスポット残基である。
[表14.CDRにおける変異]
【表46】
*WTは、親和性を改善するための、重鎖におけるS60R(Kabatナンバリング)置換によるHu1210‐41と異なる。
【0265】
これらの抗体の可変領域のアミノ酸配列を下の表15に示す。
[表15.抗体配列]
【表47】
【表48】
【0266】
[例14.PD‐L1抗体の抗原結合特性]
表14および15に示されるように、合計9個の独自のクローンが明らかにされ、全長IgGに変換された。
【0267】
[組換えヒトPD‐L1の結合特性]
抗原結合活性を評価するために、抗体に対してELISA試験を行った。簡単に説明すると、2μg/mlのヒトPD‐L1‐Fcタンパク質のPBS溶液をウェルあたり100μl加えてマイクロタイタープレートをコーティングし、4℃で一晩放置した後に、ウェルあたり100μlの5%BSAを用いてブロックした。10μg/mlから開始するヒト化抗体の4倍希釈物を各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。PBS/Tweenを用いてプレートを洗浄し、次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗マウスIgG抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を用いてプレートを現像し、分光光度計によってOD 450~630nmで解析した。図19に示されるように、ヒト化抗体はすべて、ヒトPD‐L1に対する優れた結合効力を示し、B6およびC3は、親クローンWTより良く振る舞う。
【0268】
[哺乳動物細胞で発現させたヒトPD‐L1の結合特性]
抗原結合特性を評価するために、哺乳動物細胞で発現させたPD‐L1との結合について、FACSによって抗体を解析した。簡単に説明すると、まず、2μg/mlから開始するヒト化抗体の5倍段階希釈物を用いて、PDL1‐Raji細胞を室温で1時間インキュベートした。FACSバッファ(PBS+2%FBS)による洗浄後、Alexa488‐抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。FACSAriaIIIによって、Alexa488のMFIを評価した。図20に示されるように、B6は、哺乳類細胞上で発現するPD‐L1に高い効率で結合し、これは、親抗体WTより強力であった。
【0269】
[Biacoreによるヒト化抗体の親和性順位付け]
ヒト化抗体の結合速度を調査するために、この例では、Biacore(登録商標)を使用して、親和性順位付けを実行した。表16に示されるように、B6、C3、C6、A1およびA3は、親抗体WTより良い親和性を示した。
[表16.親和性順位付け]
【表49】
例15.抗PDL1抗体細胞ベースの機能
【0270】
T細胞応答を刺激する抗PDL1抗体の能力を試験するために、hPD‐1を発現するジャーカット細胞を使用した。簡潔に説明すると、ジャーカットは、TCR刺激に応じてIL2を産生できるヒトT細胞白血病細胞株である。このアッセイにおいて、レンチウイルスによってヒトPD‐1遺伝子をトランスフェクトされたジャーカット細胞をレスポンダ細胞として使用した。Raji‐PDL1細胞を抗原提示細胞(APC)として使用した。TCRシグナルを刺激するためにブドウ球菌エンテロトキシン(SE)が使用される。このシステムにおいて、異所的に発現されるhuPDL1は、ジャーカット細胞によるSE刺激IL‐2産生を抑制でき、一方、抗PDL1抗体は、IL‐2産生を後退させることができる。つまり、SE刺激の存在下で、PD‐1発現ジャーカットT細胞(1×10)と共にAPC(2.5×10)を共培養した。培養の初めに抗PDL1抗体(100nMから開始し、1:4で連続希釈したものを8点)を加えた。48時間後、ELISAによるIL2産生について、培養上清を評価した。図21に示されるように、B6モノクローナル抗体は、親抗体WTより強力であった。
【0271】
[例16.混合リンパ球反応]
PDL1抗体のin vitro機能を評価するために混合リンパ球反応の環境において、ヒトT細胞の応答を調べた。簡潔に説明すると、ヒトDCを、GM‐CSFおよびIL‐4の存在下で、CD14+単球から7日間にわたって分化させた。次に、別のドナーから単離されたCD4+T細胞を、DCおよび抗PD‐L1ブロッキング抗体の希釈系列を用いて共培養した。接種後5日目に、IFNγ産生について、培養上清のアッセイを行った。結果(図22)は、B6抗体が、IFNγ産生を促進することについて、親抗体WTより強力であることを示した。
【0272】
[例17.MC38同系モデルにおけるPDL1抗体のin vivo有効性]
腫瘍増殖に対するPDL1の効果を評価するために、PDL1ヒト化MC38同系腫瘍モデルを適用した。このモデルにおいて、ヒトPDL1遺伝子が、マウスMC38細胞において発現され、一方、マウスPDL1遺伝子の細胞外ドメインは、ヒトPDL1遺伝子で置き換えられた。これに関して、腫瘍増殖に対するヒトPDL1抗体の有効性を、このPDL1遺伝子ヒト化MC38同系腫瘍モデルにおいて評価することができた。huPDL1 MC38細胞をPDL1ヒト化マウスに皮下接種した。腫瘍が100~150mの体積に到達したとき、親抗体WTおよびB6抗体を、3mg/kgで週2回、腹腔内投与し、合計で6回投与した。結果(図23)は、B6抗体が、19~26日目において、親抗体WTより強力であることを示した。
【0273】
本開示は、開示の個々の態様の1つの例示であることが意図される、記載された特定の実施形態によって範囲が限定されることを意図するものではなく、機能的に同等の任意の組成物または方法は、本開示の範囲内にある。本開示の思想または範囲から逸脱することなく、様々な改変および変形を開示の方法および組成物に成すことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に該当する限り、本開示の改変および変形を包含することを意図している。
【0274】
本明細書において言及されるすべての公報および特許出願は、個々の公報または特許出願が各々、参照によって、具体的かつ別個に組み込まれることが示される場合と同一の程度で、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0275】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
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