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特許7124263採放熱管およびそれを用いた地中熱ヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】採放熱管およびそれを用いた地中熱ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F25B 30/06 20060101AFI20220817BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20220817BHJP
   F28D 7/06 20060101ALI20220817BHJP
   F24T 10/15 20180101ALI20220817BHJP
【FI】
F25B30/06 T
F28D21/00 Z
F28D7/06
F24T10/15
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018013384
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019132470
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(72)【発明者】
【氏名】武田 哲明
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07578140(US,B1)
【文献】特開2009-092350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0129408(US,A1)
【文献】特開2017-067419(JP,A)
【文献】特開平10-300266(JP,A)
【文献】特開2012-083021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0206103(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0272137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 30/06
F28D 7/06
F24T 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中内に埋設するケーシング管内に納められる直接膨張方式地中熱ヒートポンプ用の採放熱管であって、
前記採放熱管は、本管と前記本管の一部を覆う断熱材とを具備し、
前記本管は、
液状の冷媒が流入あるいは流出する第1流出入口を有し前記第1の流出入口から端部までの第1の管と、
気体状の冷媒が流入あるいは流出する第2流出入口を有し前記第2の流出入口から前記端部までの第2の管とを備え、
前記第1の管と前記第2の管は前記端部において互いに連通するように接続され、
前記第1、第2の流出入口は前記ケーシング管の地表面側に備えられ、
前記端部は、前記ケーシング管が埋設された場合に前記採放熱管において最深に位置し、
前記第1の管は前記断熱材に覆われており、少なくとも前記端部まで前記断熱材が前記第1の管を覆い、
前記第2の管は分岐管部を介して接続され互いに並行して配置された複数の管を有し、且つ、前記複数の管のそれぞれの径は、前記第1の管の径よりも小さい採放熱管。
【請求項2】
前記端部から、前記第2の管が前記地表面に対し垂直方向に形成された部分まで、前記第2の管が前記断熱材でさらに覆われた請求項1に記載の採放熱管。
【請求項3】
前記第2の管が、前記端部から100mm以上高い位置まで前記断熱材でさらに覆われた請求項1または2のいずれかに記載の採放熱管。
【請求項4】
前記端部から前記分岐管部まで第2の管が前記断熱材で覆われた請求項1に記載の採放熱管。
【請求項5】
前記複数の管は1を除く奇数本である請求項1に記載の採放熱管。
【請求項6】
前記複数の管は3本である請求項1に記載の採放熱管。
【請求項7】
前記第1の流出入口から液状の前記冷媒を流した際に前記断熱材に覆われていない箇所から前記冷媒の蒸発が開始される請求項1乃至のいずれか一つに記載の採放熱管。
【請求項8】
前記第2の流出入口から気体状の前記冷媒を流した際に前記断熱材に覆われている箇所に到達するまでに前記冷媒が凝縮して液状の前記冷媒になり、前記第の管の前記断熱材に覆われた採放熱管を流れる際に再び前記冷媒が蒸発しない請求項1乃至7のいずれか一つに記載の採放熱管。
【請求項9】
前記断熱材は水圧で変形しない部材であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載の採放熱管。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一つに記載の採放熱管を備えた地中熱ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採放熱管およびそれを用いた地中熱ヒートポンプに関し、特に直接膨張方式地中熱ヒートポンプに用いられる採放熱管及びそれを用いた地中熱ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
地中熱ヒートポンプには間接方式と直接膨張方式がある。間接方式は、ヒートポンプの室外機内に代替フロン等の冷媒と水または不凍液(ブラインと呼ぶ)との熱交換器を設け、冷媒の熱をブラインに与えることにより、このブラインを地中に設けたボアホール内に設けた樹脂または金属製のパイプに導入して、このブラインを介して間接的に地中との間で採放熱を行うものである。(特許文献1、2)
【0003】
一方、直接膨張方式は、銅製円管で構成した採放熱管を、間接方式と比べ浅い(深さ30m程度)地中に埋設して地中熱交換器とし、ヒートポンプの冷媒を直接地中熱交換器に導入して、地中との間で採放熱を行う方法である。このため冷媒としては代替フロン系冷媒が用いられている。
【0004】
直接膨張方式は、地中熱交換器に直接冷媒を導入することから、地中熱交換器は暖房運転時に蒸発器、冷房運転時には凝縮器となるため、地中熱交換器内で冷媒の相変化を伴う流れとなる。
【0005】
地中熱ヒートポンプにおいては、その採放熱の効率を上げるため、種々の施策が取られている。例えば、特許文献1、2などに示されるように採放熱管などに断熱材を用いて不必要な熱交換が発生することを防ぐ手だてが示されている。
【0006】
また、直接膨張方式の地中熱ヒートポンプの採放熱管においては、冷媒の相変化を生じせしめていることに起因する対処が必要である。このため、例えば非特許文献1にように、U次形状の採放熱管の一部に断熱材を巻いた構成の採放熱管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-005981号公報
【文献】特開2014-084857号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】村松範彦他、日本機械学会2016年度年次大会、直膨方式地中熱ヒートポンプの交換性能-地中熱交換器の性能―、2016/9/11~14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
冷媒の相変化を生じせしめている直接膨張方式の地中熱ヒートポンプの採放熱管において、より採放熱効果を上げる施策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の採放熱管は、地中内に埋設するケーシング管内に納められる直接膨張方式地中熱ヒートポンプ用の採放熱管であって、該採放熱管は、本管と該本管の一部を覆う断熱材とを具備し、該本管は、冷媒が流入あるいは流出する第1、第2の流出入口と、第1の流出入口から端部までの第1の管と、第2の流出入口から端部までの第2の管とを備え、第1の管と第2の管は端部において互いに連通するように接続され、第1、第2の流出入口はケーシング管の地表面側に備えられ、端部はケーシング管が埋設された場合に採放熱管において最深に位置し、第1の管は断熱材に覆われており、少なくとも端部まで断熱材が第1の管を覆うように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の地中熱ヒートポンプは該採放熱管を備えている。
【発明の効果】
【0012】
直接膨張方式の地中熱ヒートポンプの採放熱管の効率を上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の採放熱管の第1の例を示す図である。
図2】本発明の採放熱管を用いた地中熱ヒートポンプの一例を示す図である。
図3】本発明の採放熱管の第2の例を示す図である。
図4】本発明の採放熱管の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
(構成)
本発明の採放熱管の第1の例を図1に、本発明の採放熱管11を用いた地中熱ヒートポンプの一例を図2にそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、採放熱管11は、本管4とその一部を覆う断熱材5とを有している。本管4は、冷媒の流出入口1、2を備えたU字形状の管であり、冷媒が流れる管の本体である。流出入口1、2は地中熱ヒートポンプの動作モードにより、冷媒の流入口あるいは流出口となる。また、本管4は、第1の流出入口1から端部3までの第1の管41と、第2の流出入口2から端部3までの第2の管42とを備え、第1の管41と第2の管42は端部3において互いに連通するように接続される。また、第1の管41は断熱材(保温材)5に覆われており、少なくとも断熱材5を端部3まで覆うように構成している。ここで端部3は、図2に示したように本管4を地中に設置したときに最深の位置にあたる部分である。したがって端部(あるいは端点)3は本管4の最深部あるいは最下部となる。
【0016】
図1の例では、第1の管41は、第1の流出入口1から端部3に向かって直線状に延びる直線部41aと、管41が曲げられU字形状の底部を成す曲線部41bとを有している。直線部41aと曲線部41bは、管41が曲がり始めるポイントBで管が互いに連通するように構成される。同様に第2の管42は、第2の流出入口2から端部3に向かって直線状に延びる直線部42aと、管42が曲げられU字形状の底部を成す曲線部42bとを有している。直線部42aと曲線部42bは、管42が曲がり始めるポイントCで管が互いに連通するように構成される。なお、ポイントBとポイントCは、採放熱管11を用いた地中熱ヒートポンプを地中に設置したときに水平面と平行になるように構成してもよい。
【0017】
なお、本管4は、例えば銅管を用いることができる。またその径は例えば3/8インチ程度のものが利用できる。
【0018】
図1に示す例では、断熱材5は第1の管41の直線部41aを覆う断熱材51と、第1の管41の曲線部41bを覆う断熱材52とから構成されている。なお、断熱材5は、第1の流収入口1を含むまで覆ってもよい。あるいは、本管4がケーシング管6内の充填された水7の水面部分まで覆うようにしてもよい。よい好ましくは第1の流出入口から冷暖房機までの配管全てを断熱材5で覆うようにすればよい。また、性能がでれば図2示すように若干水7につかる部分までであってもよい。
【0019】
本例における地中熱ヒートポンプは、地面に形成されたボアホール9にケーシング管6を納め、そのケーシング管6に水7を充填するとともに上述した採放熱管11をケーシング管6内に設置する。ここで、ケーシング管6とボアホール9との間は硅砂8を充填するとよい。
【0020】
冷媒は、例えば、R410AやR32などの代替フロン等を利用することができる。
【0021】
本例では、地中内に埋設するケーシング管6内に納められる直接膨張方式地中熱ヒートポンプ用の採放熱管11であって、採放熱管11は本管4とその一部を覆う断熱材5とを具備し、本管4は、冷媒が流入あるいは流出する第1、第2の流出入口(1,2)と、第1の流出入口1から端部3までの第1の管41と、第2の流出入口2から端部3までの第2の管42とを備え、第1の管41と第2の管42は端部3において互いに連通するように接続され、第1、第2の流出入口はケーシング管の地表面側に備えられ、端部3は、ケーシング管が埋設された場合に採放熱管において最深に位置し、第1の管41は断熱材(保温材)5に覆われており、少なくとも端部3まで断熱材5が第1の管41を覆うように、採放熱管11を構成する。
【0022】
(動作)
暖房運転においては、採放熱管11の本管4の流出入口1(第1の流出入口)から液状の冷媒を流入させる。ここで、本管4の第1の管41は端部(最下部)3までを断熱材5で覆っている。このため、液状の冷媒が地上から本管4の第1の管41を流れる際に地中から熱をもらって蒸発(気化)しない。
【0023】
つまり、本管4内での冷媒の流れが下向き流れから上向き流れに反転する部分まで(少なくとも端部3を含む部分まで)断熱材(保温材)5で覆うことにより地中熱を遮断している。この結果、本管4内の液状冷媒が流下する間に蒸発による気泡を発生させず、液状冷媒が上向き流れに反転するまで気泡の発生を排除する。換言すると断熱材5の無い第2の管42が蒸発器として動作し、断熱材5で覆われた第1の管41は気泡排除装置とみなすことができる。端部3を通過した冷媒は本管4の第2の管42を上向きに流れ、ここで地中から熱をもらって蒸発(気化)する。蒸発(気化)した暖かい冷媒は、本管4の流出入口2(第2の流出入口)から流出され、暖房に利用される。
【0024】
一方、冷房運転においては、採放熱管11の本管4の流出入口2(第2の流出入口)から気体状の冷媒を流入させる。ここで、本管4の第1の管41は端部(最下部)3までを断熱材5で覆っている。このため、気体状の冷媒が地上から本管4の第2の管42を流下する間に地中に放熱して凝縮し液状冷媒となったのち、端部(最下部)3で反転して、本管4の第1の管41を経て地上まで上昇する間に液状冷媒が地中から熱をもらって再び蒸発(気化)しないように動作する。換言すると断熱材5の無い第2の管42が凝縮器として動作し、断熱材5で覆われた第1の管41は気泡排除装置とみなすことができる。端部3を通過した冷媒は本管4の第1の管41を上向きに流れ、ここで再度蒸発(気化)することなく本管4の流出入口1から液状に冷却された冷媒として取り出され、冷房に利用される。
【0025】
(実施例2)
図3に、本発明の第2の例を示す。図3は、図1の採放熱管11を採放熱管11'に置き換えた例である。具体的には図3は、端部3を超えて採放熱管11’の本管4の第2の管42の曲線部42bまで断熱材5で覆った場合を示す図であり、その他は図1に示す例と同じである。断熱材5は、第1の管41の直線部41aを覆う断熱材51と、第1の管41の曲線部41bおよび第2の管42の曲線部42bとを覆う断熱材52’とから構成されており、断熱材52’が端部3を完全に含むように構成されている。そしてこのように構成することにより、冷媒の流れる方向が完全に切り替わる部分まで覆うようにしたものである。言い換えると、端部3から、第2の管42が地表面に対し垂直方向に形成された部分まで、第2の管42が断熱材5でさらに覆われるようにしている。この結果、冷暖房時に第1の管41での気泡発生や発生した気泡の逆流をより完全に防ぎより効率を上げることが可能となる。この例では、第2の管42において断熱材5が無い部分が蒸発器(暖房運転時)あるいは凝縮器(冷房運転時)として機能する。
【0026】
なお、ポイントBとポイントCは、採放熱管11’を用いた地中熱ヒートポンプを地中に設置したときに水平面と平行になるように構成してある場合は、端部3を超えてポイントCまで断熱材5で覆うとよい。さらに好ましくは、採放熱管11’の本管4の第2の管42は、端部3から100mm以上高い位置までの断熱材52’で覆われるようにするとよい。
【0027】
(実施例3)
図4に、本発明の第3の例を示す。図4は、図1の採放熱管11を採放熱管11''に置き換えた例である。具体的には図4は、図1における採放熱管11の本管4の第2の管42を複数本の並行した管を備える第2の管42’に置き換えたものである。あるいは第2の管42が、分岐管部(分岐部)10を介して接続され互いに並行して配置された複数の管を備えるように構成している。図4において断熱材は、図1の例と同じように第1の管41を端部3まで覆うようにしている。これに代えて、図3の例のように端部3を超えて採放熱管4の第2の管42の曲線部42bまで断熱材5で覆うようにしてもよい。あるいはさらに複数本の並行した管への分岐管部10まで覆うようにしてもよい。
【0028】
このような構成を取ることにより、第2の管42の一部分であって冷房運転時には凝縮器となる断熱材5を巻いていない部分において、伝熱面積を増大させることができより効率化が図られる。さらには、複数本の管それぞれの直径を、第1の管よりも小さくした銅製円管を複数本用いて凝縮部を構成すると効果的である。なお、後述する理由により並行した管の本数は奇数本で構成される(1を除く)のが好ましく、さらにその本数が3であるものがより好ましい。
【0029】
(実験・考察)
暖房運転時は、採放熱管が蒸発器となるため、液相冷媒が採放熱管の流入口から採放熱管の管内を流下する部分において地中から採熱して蒸発すると、流下する液相冷媒中に採放熱管表面から蒸発気泡が生じうる。このためを流下する冷媒中に蒸発による気泡生成のため浮力が発生し、冷媒流の流動抵抗が増大して、圧縮機の負荷が増大するため、その結果として消費電力が増大する。一方、冷房運転時には気相冷媒が採放熱管を流下する際に地中に放熱して凝縮し、液相の冷媒が熱交換器の最下部で反転して上昇するが、この時、ケーシング管内の水や気相冷媒が流下する部分にあたる採放熱管から凝縮時の放熱分の一部が、液状化した冷媒が上昇する部分にあたる採放熱管に伝わり、再び熱をもらって冷媒が蒸発すると地中熱交換器からの全放熱量が減少し、これにより成績係数が減少し性能が低下する。
【0030】
これらによる性能低下を防ぐため、市販の空気熱ヒートポンプの室外機と室内機の接続銅管の断熱に使用されている微小な空気層を持つ断熱材を用いて、図1の管41aにあたる部分を覆ったところ、暖房運転時に冷媒が流下する部分にあたる採放熱管での液相冷媒の蒸発や、冷房運転時に冷媒が上昇する部分にあたる採放熱管での液相冷媒の再蒸発を抑えることができ性能は向上した。
【0031】
しかしながら、地下10mより深いところでは水を充填したケーシング管内の水圧により断熱材が潰されていることを目視により確認した。このことから、断熱性能は低下していることが考えられ、ある程度性能は向上したものの、最適設計とするためには、以下の施工が必須であるとの知見を得た。
【0032】
まず、U字型採放熱管において凝縮器や蒸発器として機能させる部分では、冷媒の凝縮や蒸発は極力防ぐ必要がある。特に暖房、あるいは給湯運転時に液冷媒がU字型採放熱管において冷媒が流下する部分では採放熱管壁からの受熱により蒸発気泡が液冷媒の流下中で生じると圧縮機の負荷が増大し、消費電力の増大とともに成績係数が大きく低下する可能性がある。このため、実施例1のように、採放熱管11は、少なくとも端部3まで断熱材5で覆う必要がある。好ましくは、実施例2のように採放熱管11’の本管4の第2の管42の曲線部42aまでも断熱材52’で覆うようにするとよい。さらに実施例2において、採放熱管4の第2の管42は、端部3から100mm以上高い位置までの区間を断熱するとより好ましい。
【0033】
また、液冷媒として円管直径をDとした場合のレイノルズ数から流れは乱流であることを確認する必要があり、この時本管4の端部3から複数管への分岐管部までの直管部距離として約20D以上は必要である。
【0034】
これにより、確実に液冷媒の流下中に蒸発した気相冷媒の混入を確実に防ぐことができるため、結果として圧縮機の消費電力の増大を大きく抑えることができ、大きく成績係数が低下することを防ぐことができ省エネ性能を維持することが可能となる。
【0035】
冷房運転時には採放熱管(11、11’、11’’)の一部を凝縮器として機能させる。気相冷媒が採放熱管(11、11’、11’’)を流下する際に地中に放熱して凝縮するため、冷媒量を増やさずに凝縮器にあたる採放熱管(11、11’、11’’)の伝熱面積を増大させるよう、採放熱管の本管4の第2の管42を直径を小さくした銅製円管を複数本用いたものとした。そして、この複数本の銅製円管を凝縮部となるよう構成した。
【0036】
この時複数管の本数を2本、または4本で行った実験結果では、特に暖房運転である蒸発器として機能する際に複数本の円管流路内で冷媒流れに振動が見られ、安定に冷媒の蒸発が行えないことを確認した。さらに熱交換器を収めたボアホールを2本とした並列ボアホールの場合も暖房運転時の性能が安定しない場合を確認したことから、2本の組合せでは安定に流量配分を行うことが容易ではないことが分かった。したがって、採放熱管の本管4の第2の管42における凝縮部に相当する部分は奇数本(1本または3本ないしは5本)の銅製円管がよい。特に複数管の本数は3本が最適である。これは分岐管部(分岐部)を製作する際に正三角形配置とすることにより、各円管の距離を等しくすることができるため、流量配分を等しくすることが容易であることによる。実施例3にしめすようなこの構成をとることによりさらに圧縮機の消費電力の増大抑え、効率を上げることが可能となる。
【0037】
この他にもさらに、断熱材には熱伝導率の低い物質、例えばポリエチレン管やVP管を銅管の外側に施工することで断熱性能を保持しつつ、水圧による断熱材の変形を防ぎ断熱性能を維持させることで省エネ性能の低下を防ぐことができる。
【0038】
ボアホール内に収めた複数管部分の距離は最小で20m、最大で30mあれば、冷房運転時の凝縮過程が終了することがボアホール内温度変化の考察から確認しており、また、端部3から100mm以上高い位置にあたる採放熱管の本管4の第2の管42のところから地上配管部まで断熱するとより圧縮機の消費電力の増大抑え、効率を上げることが可能となる。
【0039】
なお、説明の都合上、実施の形態において採放熱管はU字形状としたが、本発明はその他の形状にも適応できる。例えば第2の管をスパイラル構造の管としてもよい。また管の断面は円形に限らず楕円や矩形等であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、2 流出入口
3 端部
4 本管
5 断熱材
6 ケーシング管
7 水
8 硅砂
9 ボアホール
10 分岐管部
11、11’、11’’ 採放熱管
図1
図2
図3
図4