(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20220817BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20220817BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220817BHJP
【FI】
A47C27/15 B
A47C7/18
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2017235803
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 公
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義文
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016458(JP,A)
【文献】特開2009-219657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
A47C 7/18
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
クッション材であるパッド体が、着座面の側の表層パッドと、該表層パッドの前記着座面の反対側に層状に一体化される前記表層パッドより硬質な裏層パッドと、を備えており、
該裏層パッドを前記着座面に対し垂直な方向から見たとき、前記裏層パッドの外周縁部には枠状の補強部材がインサートされて形成されており、
少なくとも該補強部材の一部は、前記パッド体を被覆する表皮材の端末部を係止する被係止部として前記裏層パッドから前記着座面と反対側方向に露出して形成されており、
前記裏層パッドの外周縁部において前記被係止部に対応する部分以外の部分には前記表皮材の端末部に取付けられた係合部材が挿入されて支持される前記着座面の側方向に延びる凹部が複数形成されており、
前記裏層パッドにおける前記被係止部に対応する部分の厚みは、前記凹部が形成された部分の厚みより薄く形成されて
おり、
前記被係止部は、隣接する前記凹部より前記裏層パッドの外周縁からシート内側に入った位置に配置されており、
前記補強部材は金属製の線状部材から形成されており、
前記表皮材の端末部は前記表皮材の端末部に取付けられたフック状の係止部材を介して前記被係止部に取付けられている
乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記表層パッドはウレタン発泡樹脂製であり、前記裏層パッドはビーズ発泡樹脂製である乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からクッション材として2層構造のパッド体を有する乗物シートが知られている。下記特許文献1には、ポリウレタン樹脂の発泡体である表層パッドの着座面と反対側にAS樹脂(アクリロニトリル、スチレンのコポリマー)の発泡体である裏層パッドが一体成形されたパッド体を有する乗物シートが開示されている。着座面側から見たとき、裏層パッドの裏面側の外周縁部には所定の幅長さを有し裏面側から着座面側に向けて延びて配設された凹部が複数形成されている。凹部には、パッド体を被覆する表皮材の端末に設けられたクリップが挿入され係止される。これによって、表皮材はパッド体を覆った状態で保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される乗物用シートにおいては、裏層パッドの裏面側の外周縁部に凹部を配設するために、裏層パッドの凹部を配設する部位は所定の長さ以上の厚みを有していることが必要である。しかし、乗物用シートの形状によっては座り心地を阻害しない等のために、裏層パッドの凹部を配設したい部位に所定の長さ以上の厚みを採ることができずに表皮材をパッド体に対して弛みなく保持させることができない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものである。クッション材として2層構造のパッド体を備えた乗物シートにおいて、パッド体を被覆する表皮材を弛みなく取付けることができる乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、乗物用シートであって、クッション材であるパッド体が、着座面の側の表層パッドと、該表層パッドの前記着座面の反対側に層状に一体化される前記表層パッドより硬質な裏層パッドと、を備えており、該裏層パッドを前記着座面に対し垂直な方向から見たとき、前記裏層パッドの外周縁部には枠状の補強部材がインサートされて形成されており、少なくとも該補強部材の一部は、前記パッド体を被覆する表皮材の端末部を係止する被係止部として前記裏層パッドから前記着座面と反対側方向に露出して形成されており、前記裏層パッドの外周縁部において前記被係止部に対応する部分以外の部分には前記表皮材の端末部に取付けられた係合部材が挿入されて支持される前記着座面の側方向に延びる凹部が複数形成されており、前記裏層パッドにおける前記被係止部に対応する部分の厚みは、前記凹部が形成された部分の厚みより薄く形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、裏層パッドの着座面と反対側に表皮材の端末部を係止して取付けるに当たり、裏層パッドの外周縁部に厚みの薄い部分があっても補強部材の一部を被係止部として裏層パッドから露出させることにより表皮材の端末部を係止できる。すなわち、裏層パッドの外周縁部に表皮材の端末部に取付けられた係合部材を挿入するための凹部を形成できないような厚みの薄い部分があっても補強部材の一部を被係止部として配設することにより係止することができ表皮材をパッド体に弛みなく取付けることができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記補強部材は金属製の線状部材から形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、線状部材の一部を曲げ加工することにより被係止部が形成でき簡潔な構造で上記第1発明の作用効果を奏させることができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記表皮材の端末部は前記表皮材の端末部に取付けられたフック状の係止部材を介して前記被係止部に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、表皮材の端末部はフック状の係止部材を被係止部に取付ければよいので取付作業性が良い。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1発明ないし上記第3発明のいずれかにおいて、前記表層パッドはウレタン発泡樹脂製であり、前記裏層パッドはビーズ発泡樹脂製であることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、表層パッドは弾力性よく着座乗員を支持でき裏層パッドはパッド体の軽量化を図ることができる。すなわち、座り心地が良く軽量な乗物用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる自動車用シートの斜視図である。
【
図2】上記実施形態にかかるシートクッションの斜視図である。
【
図3】上記実施形態にかかるシートクッションの平面図である。
【
図4】上記実施形態にかかるシートクッションのクッションパッドの分解斜視図である。
【
図5】上記実施形態にかかるシートクッションの裏層パッドを裏面から見た斜視図である。
【
図6】
図5のVI-VI線で切断して示す断面図である。表層パッドと表皮材を二点鎖線で示している。
【
図7】
図5のVII-VII線で切断して示す断面図である。表層パッドとクッションカバーを二点鎖線で示している。
【
図8】
図5のVIII-VIII線で切断して示す断面図である。表層パッドとクッションカバーを二点鎖線で示している。
【
図9】
図5のIX-IX線で切断して示す断面図である。表層パッドとクッションカバーを二点鎖線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図10に本発明の一実施形態である自動車用シート1を示す。各図中、矢印により自動車用シート1が自動車のフロアFに取付けられた時の自動車及び自動車用シート1の各方向を示す。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0016】
図1に示すように、自動車用シート1は、3人掛けベンチシートであり、車室の幅と略同じ左右方向長さを有している。自動車用シート1は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、着座乗員の背部を支持するシートバック3と、を備えている。シートクッション2とシートバック3は、シートクッション2の後端部に対してシートバック3の下端部が当接されるとともに、シートクッション2に対してシートバック3が立設された状態でフロアFに対して取付けられて自動車用シート1が構成されている。シートバック3は、通常のもので、ポリウレタン樹脂の発泡体であるバックパッドを表皮材であるバックカバーで被覆した構造とされている。シートクッション2の上側の面及びシートバック3の前側の面が、着座乗員の身体が当接する着座面である。ここで、自動車用シート1が、特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、シートクッション2は、左右一対の左右座席部2Sと、左右座席部2Sの間に配置される中央座席部2Cと、を有している。また、シートクッション2は、クッション材であるクッションパッド10と、クッションパッド10の着座乗員側の表面を覆う表皮材であるクッションカバー20と、を有している。ここで、クッションパッド10が、特許請求の範囲の「パッド体」に相当する。
【0018】
図2~
図4に示すように、クッションパッド10は、着座乗員側である表側に配置される表層パッド11と、表層パッド11の着座乗員と反対側である裏側に配置された裏層パッド12と、を有する。表層パッド11は、ポリウレタン樹脂を発泡成形したウレタンフォームから形成されており、その密度は例えば0.045±0.005g/cm
3程度に設定されている。表層パッド11は、クッションパッド10の着座乗員側全面を占める形状及び面積を有する表面部11aと、着座乗員と反対側の面を形成する裏面部11bと、を有する。表層パッド11は、
図6及び
図7に示すように、左右座席部2Sの着座乗員の臀部を支持する部分である臀部支持部11cが、左右座席部2Sの着座乗員の大腿部を支持する部分である大腿部支持部11dより肉厚に形成されている。これは、座圧の高い臀部支持部11cにおいて座圧の低い大腿部支持部11dより着座乗員の身体を弾性支持して座り心地をよくするためのものである。また、表層パッド11は、
図8に示すように、中央座席部2Cの臀部支持部11eと大腿部支持部11fは、左右座席部2Sの臀部支持部11cと大腿部支持部11dより若干肉厚に形成されている。表層パッド11の表面部11aには、
図4に示すように、左右座席部2Sの左右において前後方向に延びる一対の縦溝11a1と、一対の縦溝11a1間を後端部と前後方向略中央部でつなぐ2本の横溝11a2が形成されている。中央座席部2Cの左右においても前後方向に延びる一対の縦溝11a1が形成されている。縦溝11a1と横溝11a2は、横断面が上方に開口した略U字状に形成されている。
【0019】
図4~
図10に示すように、裏層パッド12は、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂のビーズ発泡成形体であり、その密度は0.03g/cm
3程度に設定されている。裏層パッド12は、表層パッド11より密度が小さく、弾性率が高い硬質なものとして形成されている。裏層パッド12の体積は、クッションパッド10全体体積の1/3程度とされている。
【0020】
図5~
図10に示すように、裏層パッド12は、表層パッド11の裏面部11bの一部に当接する表側部12aと、着座乗員と反対側の面を形成する裏側部12bと、を有する。裏層パッド12には、左右座席部2Sに対応する部分において上面視でシート幅方向中央側に開口した略U字状の貫通孔12cが設けられている。また、裏層パッド12には、中央座席部2Cの前後方向略中央部において上面視で略矩形状の貫通孔12dが設けられている。これによって、裏層パッド12に対して表層パッド11を一体発泡成形した際、裏層パッド12の貫通孔12c及び貫通孔12dには表層パッド11の一部が侵入して成形硬化され表層パッド11の裏面部11bの一部である露出裏面部11b1が形成される。露出裏面部11b1は、裏層パッド12の裏側部12bとともにクッションパッド10の裏側を形成する。裏層パッド12の表側部12aは、表層パッド11の裏面部11bの露出裏面部11b1以外の部分である接合裏面部11b2に対し表層パッド11の一体発泡成形時に接合される。
図8に示すように、表層パッド11の裏面部11bや裏層パッド12の裏側部12bには、必要に応じて所定位置に使用材料を節約するための肉盗み穴11gや肉盗み穴12eを設けていてもよい。
【0021】
図3~
図10に示すように、裏層パッド12の前後左右の外周縁部の内側には鉄ワイヤ製のフレーム13がインサートされている。フレーム13は、上面視で後方が開口した略U字状の主フレーム13aと、主フレーム13aの開口部側間に配置される後フレーム13bと、を有する。
図3に示すように、主フレーム13aは、裏層パッド12の前側外周縁部に沿って略左右方向に延びる前フレーム部13a1と、裏層パッド12の左右側外周縁部に沿って略前後方向に延びる一対の左右フレーム部13a2と、を有する。ここで、フレーム13が、特許請求の範囲の「補強部材」に相当する。
【0022】
図3~
図5に示すように、前フレーム部13a1は、左右両端部側において左右方向に延びる一対の前左右フレーム部13a11と、左右方向中央部の前左右フレーム部13a11より後方において上面視で左右方向に延びる前中央フレーム部13a12と、を有する。前中央フレーム部13a12は、一対の左右座席部2Sのそれぞれの左右方向中心線よりシート幅方向内側の位置を結ぶ長さに設定されている。前中央フレーム部13a12は、
図4及び
図5に示すように、左右両端部側において下側(着座面と反対側)に位置する一対の前下中央フレーム部13a121と、左右方向中央部において上側(着座面側)に位置する前上中央フレーム部13a122と、を有する。一対の前下中央フレーム部13a121と前上中央フレーム部13a122は滑らかに連結されている。裏層パッド12にフレーム13がインサートされたとき、前上中央フレーム部13a122は裏層パッド12の中に配置され、前下中央フレーム部13a121は裏層パッド12の裏側部12bから下方に(着座面と反対側方向に)露出して配置される。すなわち、
図10によく示されるように、前下中央フレーム部13a121は、前左右フレーム部13a11より後方位置で裏層パッド12の裏側部12bから下方に露出して配置されている。一対の前左右フレーム部13a11には、それぞれ、クッションパッド10をフロアFに係止するための前係止フレーム14が溶接で連結されている。前係止フレーム14は、
図5に示すように、裏側部12bと平行に延びるプレート部14aと、プレート部14aに対して溶接で連結されたU字状のワイヤが折り曲げ加工されたワイヤ部14bと、を備えている。フロアFに設けられた取付穴(図示せず)にワイヤ部14bが挿入されることによりフロアFに係止される。一対の左右フレーム部13a2は、それぞれ、裏層パッド12の左右側外周縁部に沿って上面視でシート幅方向外側に向けて湾曲するように曲げ加工されて形成されている。ここで、前下中央フレーム部13a121が、特許請求の範囲の「被係止部」に相当する。
【0023】
図3~
図5に示すように、後フレーム13bは、上面視で左右端部側が裏層パッド12の後側外周縁部に沿うとともに左右方向中央部が貫通孔12dの後端側外周縁部に沿って左右方向に延びるような形状に形成されている。後フレーム13bの左右端部は、一対の左右フレーム部13a2の後端部に対して溶接で連結されている。これによって、フレーム13は、上面視で枠状に形成されている。そして、裏層パッド12にフレーム13がインサートされたとき、前下中央フレーム部13a121を除くその他の部分、すなわち、前上中央フレーム部13a122、前左右フレーム部13a11、左右フレーム部13a2、後フレーム13bは、裏層パッド12の中に配置される。後フレーム13bの左右端部側には、それぞれ、シートバック3を係止するための後係止フレーム15が溶接で連結されている。後係止フレーム15は、U字状のワイヤが折り曲げ加工されて形成されている。なお、フレーム13の裏層パッド12へのインサートは、裏層パッド12をビーズ発泡成形する際に、型内の所定位置にフレーム13を配置して一体発泡成形することによって行われる。
【0024】
図5に示すように、裏層パッド12の裏側部12bの外周縁部には、複数の凹部12b1が設けられている。複数の凹部12b1は、それぞれ、横断面が同一で裏側部12bに平行に延びる長さが異なるだけなので代表として
図9に示す裏側部12bの右側端部の凹部12b1について説明する。
図9に示すように、凹部12b1は、横断面が下方に向けて開口する逆U字状で前後方向に延びる溝として形成されている。凹部12b1は、左右フレーム部13a2の左側(シート幅方向内側)に配設されている。凹部12b1にクッションカバー20の端末に取付けられたクリップ21が挿入されて係止されることでクッションカバー20がクッションパッド10に対して取付けられるようになっている。その他の凹部12b1についても実質的にこれと同等であり、裏層パッド12の凹部12b1が形成される部分である凹部形成部12b11は凹部12b1の深さ以上の上下方向の厚みを有している。ここで、クリップ21が、特許請求の範囲の「係合部材」に相当する。また、凹部形成部12b11が、特許請求の範囲の「凹部が形成された部分」に相当する。
【0025】
クッションパッド10に対してクッションカバー20を被せつけ、クッションカバー20の端末を裏層パッド12の裏側部12bの外周縁部に対して取付ける手順について説明する。
図8及び
図9に示すように、クッションパッド10に対してクッションカバー20を被せつけた状態で、クッションカバー20の端末に取付けられた各クリップ21を裏層パッド12の各凹部12b1に挿入して係止する。クリップ21は、樹脂製で先端が矢尻形状に形成されており、凹部12b1に挿入されたとき凹部12b1の壁面に係止して抜け止めがされるようになっている。次に、
図7に示すように、裏層パッド12の裏側部12bから露出したフレーム13の前下中央フレーム部13a121に対して、クッションカバー20の端末に取付けられた横断面がJ字状のフック22を係止する。これによって、クッションカバー20の端末の全域が裏層パッド12の裏側部12bの外周縁部に対して保持され、クッションカバー20がクッションパッド10に対して弛みなく取付けられる。裏層パッド12の前下中央フレーム部13a121に対応する部分である露出フレーム形成部12b12は、凹部形成部12b11より上下方向の厚みが薄く凹部12b1を形成することができないものとなっている。ここで、露出フレーム形成部12b12が、特許請求の範囲の「被係止部に対応する部分」に相当する。また、フック22が、特許請求の範囲の「係合部材」に相当する。
【0026】
以上のように構成される上記実施形態は、以下のような作用効果を奏する。裏層パッド12の裏側部12bの外周縁部に対してクッションカバー20の端末を係止して取付けるに当たり、凹部12b1を形成できない薄肉の部分である露出フレーム形成部12b12があっても前下中央フレーム部13a121を設けることによりクッションカバー20の端末を係止できる。すなわち、露出フレーム形成部12b12の下方(着座面と反対側方向)に前下中央フレーム部13a121を設けてそれにクッションカバー20の端末に取付けられたフック22を係止することによりクッションカバー20をクッションパッド10に対して弛みなく取付けることができる。また、フレーム13は金属製の線状部材であるワイヤから形成されているので、一部を折り曲げて加工することにより前下中央フレーム部13a121を設けることができ構造が簡潔となる。さらに、クッションカバー20の端末は、フック22を前下中央フレーム部13a121に係止するだけで取付けられるので取付作業性が良い。加えて、表層パッド11はウレタン発泡樹脂製であり、裏層パッド12はオレフィン系のビーズ発泡樹脂製であるので、表層パッド11は弾力性よく着座乗員を支持でき裏層パッド12はクッションパッド10の軽量化を図ることができる。すなわち、座り心地が良く軽量な自動車用シート1を提供できる。
【0027】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0028】
1.上記実施形態においては、自動車用シート1のシートクッション2に本発明を適用したが、シートバック3のバックパッドを表層パッドと裏層パッドの2層構造として本発明を適用することもできる。さらに、飛行機、船、電車等に搭載の乗物用シートに適用してもよい。
【0029】
2.上記実施形態においては、裏層パッド12としてポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系のビーズ発泡樹脂製としたが、これに限らず、スチレン系樹脂やスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂のビーズ発泡樹脂製とすることもできる。
【0030】
3.上記実施形態においては、クッションカバー20の端末部を係止する被係止部である前下中央フレーム部13a121を裏層パッド12に2か所設けた。しかし、これに限らず、前下中央フレーム部13a121に相当する被係止部を1か所としてもよいし、3か所以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 自動車用シート(乗物用シート)
2 シートクッション
10 クッションパッド(パッド体)
11 表層パッド
12 裏層パッド
12b1 凹部
12b11 凹部形成部(凹部が形成された部分)
12b12 露出フレーム形成部(被係止部に対応する部分)
13 フレーム
13a121 前下中央フレーム部(被係止部)
20 クッションカバー(表皮材)
21 クリップ(係合部材)
22 フック(係止部材)
F フロア