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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】センサID登録システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60C23/04 140A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018082362
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019188956
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 聖治
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222428(JP,A)
【文献】特開2012-126192(JP,A)
【文献】特開2012-201332(JP,A)
【文献】特開2014-097745(JP,A)
【文献】特開2013-082381(JP,A)
【文献】特開2015-214192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の車輪にそれぞれ取り付けられた複数のセンサユニットと、
ユーザの操作に従って、前記各センサユニットにリクエスト信号を送信する携帯機と、
前記携帯機と別体又は一体として提供される登録制御装置と、
を備え、
前記各センサユニットは、
前記車輪に装着されたタイヤの状態を検出するセンサと、
前記携帯機から前記リクエスト信号を受信する通信部と、
前記リクエスト信号の信号強度を算出し、前記信号強度と、前記センサを識別するセンサIDとを含むセンサ情報を生成する制御部と
を含み、
前記通信部は、前記センサ情報を前記登録制御装置に送信し、
前記登録制御装置は、
前記各センサユニットから前記センサ情報を受信するセンサ情報受信部と、
前記センサ情報に含まれる前記信号強度に基づいて、前記各センサユニットが取り付けられた前記車輪の位置情報を特定し、前記各センサユニットについて、前記センサ情報に含まれる前記センサIDと、前記車輪の位置情報とが関連付けられたセンサID情報を生成する登録情報生成部と、
前記センサID情報を登録処理する登録処理部と、
を含む、センサID登録システム。
【請求項2】
前記リクエスト信号は、前記携帯機の1回の送信につき、前記各センサユニットに対して送信される、
請求項1に記載のセンサID登録システム。
【請求項3】
前記登録制御装置は、前記登録処理が正常に完了した旨を示す登録完了通知、及び、前記登録処理が正常に完了しなかった旨を示す登録未完通知の少なくとも一方を生成する登録状態通知部をさらに含む、
請求項1または2に記載のセンサID登録システム。
【請求項4】
前記センサは、前記タイヤの空気圧及び温度の少なくとも一方を検出する、
請求項1から3のいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項5】
前記センサ情報は、前記センサが検出した前記タイヤの状態に関する情報を含む、
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項6】
前記携帯機は、前記車両の鍵である、
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項7】
前記携帯機は、携帯可能な通信端末である、
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項8】
前記登録制御装置は、前記車両に搭載される、
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項9】
前記登録制御装置は、携帯可能な通信端末である、
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システム。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載のセンサID登録システムを提供するステップと、
前記ユーザが、前記センサID情報を登録するべく、前記複数のタイヤから異なる距離にある位置において、前記携帯機に対し前記操作を行うステップと、
を含む、
センサID登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪に取り付けられたセンサを識別するセンサIDを登録するためのセンサID登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、快適な走行のための種々のシステムが搭載されている。例えば、タイヤの空気圧を監視し、タイヤの減圧を検出する、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)等が挙げられる。TPMSには、各タイヤの内部に空気圧センサを設ける方式がある。この方式では、各センサが検出したタイヤの空気圧のデータが当該センサを識別するセンサIDと共に車載装置へ送信されるため、車載装置に各センサのセンサIDを予め登録しておくことで、タイヤの減圧を検出することができる。しかし、それだけでなく、車載装置側で受信したデータがどの車輪に装着されたタイヤのデータであるかが車載装置側で判別できれば、TPMSの利便性がより向上する。従って、この種の車載装置に予めセンサIDと、当該センサに対応する車輪の(すなわち、タイヤの)位置情報とが関連付けられた情報(以下、センサID情報とよぶ)を登録するためのシステムが知られている。
【0003】
特許文献1及び2は、センサID情報を車載装置に登録するためのシステムを開示している。特許文献1は、車両に搭載されたECUと電子キーとが通信を行うキー操作フリーシステムを開示しており、まず各車輪のセンサユニットが異なる位置にある2つの発信機から異なるタイミングで発信されたトリガ信号を受信し、各トリガ信号の磁界強度を算出する。算出された2つの磁界強度は、センサIDと共に各センサユニットから車両に搭載されたECUに送信される。ECUは、磁界強度を縦軸及び横軸とする平面に各センサユニットからの2つの磁界強度をプロットすることにより、各センサの位置を特定する。
【0004】
特許文献2も、同様にキー操作フリーシステムを開示している。同システムでは、まずユーザが携帯機(電子キー)に入力したタイヤの位置情報が携帯機からセンサユニットに送信され、タイヤの位置情報と関連付けられたセンサIDがセンサユニットから車両に搭載された制御ユニットに送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-144625号公報
【文献】特開2012-126192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成では、システム専用の発信機の設置が必要となるため、コスト及び設計自由度の面で不利となり得る。
【0007】
特許文献2の構成では、ユーザの入力操作はセンサの数(つまり、タイヤの数)だけ必要であり、複数のセンサのセンサID情報の登録を同時に行うことができない。従って、センサID情報の登録が必要となる度にユーザに煩雑な操作を強いることになる。なお、センサID情報の登録は、最初にセンサID情報を登録する場面だけでなく、タイヤの位置を入れ替えるタイヤローテーションや、タイヤの交換等を行う場面でも必要とされ得る。
【0008】
本発明は、ユーザが簡易な操作で、車輪に取り付けられたセンサを識別するセンサIDと、車輪の位置情報とを関連付けて登録することが可能なセンサID登録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係るセンサID登録システムは、車両の複数の車輪にそれぞれ取り付けられた複数のセンサユニットと、ユーザの操作に従って、前記各センサユニットにリクエスト信号を送信する携帯機と、前記携帯機と別体又は一体として提供される登録制御装置とを備える。前記各センサユニットは、前記車輪に装着されたタイヤの状態を検出するセンサと、前記携帯機から前記リクエスト信号を受信する通信部と、前記リクエスト信号の信号強度を算出し、前記信号強度と、前記センサを識別するセンサIDとを含むセンサ情報を生成する制御部とを含む。前記通信部は、前記センサ情報を前記登録制御装置に送信する。前記登録制御装置は、前記各センサユニットから前記センサ情報を受信するセンサ情報受信部と、前記センサ情報に含まれる前記信号強度に基づいて、前記各センサユニットが取り付けられた前記車輪の位置情報を特定し、前記各センサユニットについて、前記センサ情報に含まれる前記センサIDと、前記車輪の位置情報とが関連付けられたセンサID情報を生成する登録情報生成部と、前記センサID情報を登録処理する登録処理部とを含む。
【0010】
本発明の第2観点に係るセンサID登録システムは、第1観点に係るセンサID登録システムであって、前記登録制御装置は、前記登録処理が正常に完了した旨を示す登録完了通知、及び、前記登録処理が正常に完了しなかった旨を示す登録未完通知の少なくとも一方を生成する登録状態通知部をさらに含む。
【0011】
本発明の第3観点に係るセンサID登録システムは、第1観点又は第2観点に係るセンサID登録システムであって、前記センサは、前記タイヤの空気圧及び温度の少なくとも一方を検出する。
【0012】
本発明の第4観点に係るセンサID登録システムは、第1観点から第3観点のいずれかに係るセンサID登録システムであって、前記センサ情報は、前記センサが検出した前記タイヤの状態に関する情報を含む。
【0013】
本発明の第5観点に係るセンサID登録システムは、第1観点から第4観点のいずれかに係るセンサID登録システムであって、前記携帯機は、前記車両の鍵である。
【0014】
本発明の第6観点に係るセンサID登録システムは、第1観点から第4観点のいずれかに係るセンサID登録システムであって、前記携帯機は、携帯可能な通信端末である。
【0015】
本発明の第7観点に係るセンサID登録システムは、第1観点から第6観点のいずれかに係るセンサID登録システムであって、前記登録制御装置は、前記車両に搭載される。
【0016】
本発明の第8観点に係るセンサID登録システムは、第1観点から第6観点のいずれかに係るセンサID登録システムであって、前記登録制御装置は、携帯可能な通信端末である。
【0017】
本発明の第9観点に係るセンサID登録方法は、以下のステップを含む。
・第1観点から第8観点のいずれかに係るセンサID登録システムを提供するステップ
・前記ユーザが、前記センサID情報を登録するべく、前記複数のタイヤから異なる距離にある位置において、前記携帯機に対し前記操作を行うステップ
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1観点によれば、ユーザが簡易な操作で、車輪に取り付けられたセンサを識別するセンサIDと、車輪の位置情報とを関連付けて登録することが可能になる。その結果、例えば各タイヤの空気圧を位置情報と関連付けて視覚的に表示することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサID登録システムの全体構成を示す図。
図2】センサID登録システムの電気的構成を示すブロック図。
図3】制御ユニットの電気的構成を示すブロック図。
図4】携帯機と車両の位置関係を説明する図。
図5】携帯機が行う処理を示すフロー図。
図6】センサユニットが行う処理を示すフロー図。
図7】制御ユニットが行う処理を示すフロー図。
図8】空気圧とセンサの位置情報とを関連付けた表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るセンサID登録システムについて説明する。
【0021】
<1.センサID登録システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサID登録システム100(以下、単に登録システム100と呼ぶことがある)の全体構成を示す図である。図2は、登録システム100の電気的構成を示すブロック図である。登録システム100は、携帯機20と、車両1に搭載されているTPMS(Tire Pressure Monitoring System; タイヤ空気圧モニタリングシステム)として動作する制御ユニット50及びセンサユニット30a~30dとを含み、センサユニット30a~30dにそれぞれ含まれるセンサ31a~31dを識別するセンサIDを制御ユニット50に登録するためのシステムである。車両1は、四輪車両であり、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRを備えている。車輪FL,FR,RL,RRには、それぞれタイヤTFL,TFR,TRL,TRRが装着されており、センサユニット30a~30dは、それぞれタイヤTFL,TFR,TRL,TRRに内蔵されている。センサユニット30a~30dは、取り付けられるタイヤが異なるが、同じ構造及び機能を有している。従って、これらを区別せずに、センサユニット30a~30dをセンサユニット30と呼ぶことがある。携帯機20は、無線通信により車両1の外部から車両1のドアを施錠又は解錠する、キーレスシステムの電子キーや、スマートキー、リモコンキー等と呼ばれる鍵である。本実施形態では、携帯機20と車両1との通信は、携帯機20が車両1からの信号を受信しない一方向通信である。携帯機20とセンサユニット30との通信も一方向通信であり、携帯機20はセンサユニット30からの信号を受信しない。
【0022】
センサユニット30a~30dは、本実施形態では、タイヤTFL,TFR,TRL,TRRのエアバルブにそれぞれ一体的に取り付けられ、内蔵された電池により駆動される。センサユニット30a~30dは、それぞれセンサ31a~31dの他、通信部32a~32dを含む。センサ31a~31dは、それぞれタイヤTFL,TFR,TRL,TRRの状態を検出するセンサである。本実施形態では、センサ31a~31dは、空気圧を検出するセンサであり、各タイヤの内部の空気圧を検出できるものであれば、検出方式は限定されない。例えば、歪みゲージ式、ダイアフラム式、又は半導体式のセンサを用いることができる。
【0023】
通信部32a~32dは、外部装置との通信を行う。通信部32a~32dは、携帯機20から送信されるリクエスト信号RSをそれぞれ受信する。また、通信部32a~32dは、それぞれセンサ31a~31dが検出した空気圧のデータや、後述するセンサ情報を含む各種データを、制御ユニット50のI/Oインターフェース11(図3参照)に送信する。
【0024】
また、センサユニット30a~30dは、それぞれ制御部33a~33d及び記憶装置34a~34dを含む。制御部33a~33dは、各々、CPU、ROM及びRAMを含んでいる。ROMには、センサユニット30の動作を制御するためのプログラムが格納されており、CPUがこれを読み出して実行することにより、制御部33a~33dは、それぞれセンサユニット30a~30dにおける後述する各種処理を制御する。例えば、制御部33a~33dは、それぞれ通信部32a~32dが受信したリクエスト信号RSの信号強度(dB)を算出する。記憶装置34a~34dは、不揮発性の記憶媒体である。記憶装置34a~34dには、それぞれセンサ31a~31dを識別する情報であるセンサIDが格納されている。制御部33a~33dは、それぞれ算出した信号強度と、記憶装置34a~34dから読み出したセンサIDとを含むセンサ情報を生成する。なお、本実施形態のセンサ情報には、信号強度とセンサIDの他に、センサ31a~31dにより検出された各タイヤの空気圧のデータが含まれる。
【0025】
電子キーとしての携帯機20は、プッシュ式のボタン21a,21bと、制御部22と、送信部23とを備える。制御部22は、CPU、ROM及びRAMを含んでいる。ROMには、携帯機20の動作を制御するためのプログラムが格納されており、CPUがこれを読み出して実行することにより、制御部22は、携帯機20における後述する各種処理を制御する。送信部23は、外部装置との通信を担う通信インターフェースであり、本実施形態では送信機能のみ有する。ボタン21a,21bは、ユーザがリモートコントロールによる車両1のドアの解錠/施錠を行うためのボタンであり、21aがアンロックボタン、21bがロックボタンである。制御部22は、ボタン21a,21bが押下されたのを検知し、キーレス制御部24として起動される。キーレス制御部24は、ユーザが押下したボタンに応じて、ドアを解錠/施錠するように要求する信号を生成し、送信部23を介して車両1の制御ユニット50に送信する。
【0026】
携帯機20は、TPMSとして動作する制御ユニット50が行うタイヤTFL,TFR,TRL,TRRの減圧検出処理の前処理として、予めセンサID情報の登録を行うための端末としても機能する。センサID情報とは、センサ31a~31dのセンサIDと位置情報とをそれぞれ関連付ける情報であり、各センサIDにより特定されるセンサが、車両1のどこに取り付けられているかを示す。なお、各センサの位置情報は、車輪の(すなわち、タイヤの)位置情報として表すことができ、本実施形態では、左前、右前、左後及び右後のいずれかで表される。
【0027】
制御部22は、リクエスト信号RSを生成するRS生成部25としてさらに動作する。制御部22は、ユーザによりボタン21a,21bが押下されたことを検知すると、解錠処理、施錠処理、或いはセンサID情報の登録処理を実行する。センサID情報の登録処理の実行を命じるボタンは、解錠処理又は施錠処理の実行を命じるボタンと兼用することができる。本実施形態では、ボタン21aがユーザによって2秒間以上長押しされると、RS生成部25が起動され、リクエスト信号RSが生成される。生成されたリクエスト信号RSは、送信部23によって各センサユニット30に送信される。リクエスト信号RSは例えばLF(長波)帯の信号であり、各センサユニット30にセンサ情報を生成し、制御ユニット50へと送信するように要求する。
【0028】
図3は、制御ユニット50の電気的構成を示すブロック図である。制御ユニット50は、タイヤTFL,TFR,TRL,TRRの減圧検出処理及びこれに先立つセンサID情報の登録処理を含む各種処理を制御するユニットであり、I/Oインターフェース11、CPU12、ROM13、RAM14、及び不揮発性で書き換え可能な記憶装置15を備えている。I/Oインターフェース11は、センサユニット30や表示器3等の外部装置との有線又は無線通信を行うための通信装置である。ROM13には、車両1の各部の動作を制御するためのプログラム4が格納されている。CPU12は、ROM13からプログラム4を読み出して実行することにより、仮想的に登録情報生成部51、登録処理部52、登録状態通知部53、減圧判定部54、及び減圧警告生成部55として動作する。各部の動作の詳細は、後述する。記憶装置15は、ハードディスクやフラッシュメモリ等で構成される。なお、プログラム4の格納場所は、ROM13ではなく、記憶装置15であってもよい。RAM14及び記憶装置15は、CPU12の演算に適宜使用される。
【0029】
表示器3は、各種の通知を表示してユーザに伝えることができる限り、例えば、液晶モニターや液晶表示素子等、任意の態様で実現することができる。表示器3の取り付け位置は、適宜選択することができるが、例えば、インストルメントパネル上等、ドライバーに分かりやすい位置に設けることが好ましい。制御ユニット50がカーナビゲーションシステムに接続される場合には、カーナビゲーション用のモニターを表示器3として使用することも可能であるし、マルチインフォメーションディスプレイ(モニター)を表示器3として使用することも可能である。表示器3としてモニターが使用される場合、通知はモニター上に表示されるアイコンや文字情報とすることができる。
【0030】
<2.センサID情報の登録処理>
以下、図4図7を参照しつつ、車輪FL,FR,RL,RRに取り付けられたセンサ31a~31dのセンサID情報を制御ユニット50に登録するための登録処理について説明する。センサID情報の登録処理は、ユーザが携帯機20に対し所定の操作を行うことによりスタートする。本実施形態の登録処理は、上記のとおり、ユーザによる携帯機20のボタン21aの長押しによってスタートし、登録完了通知又はエラー通知(登録未完通知)が表示器3によって表示されると終了する。
【0031】
図4は、センサID情報の登録処理を行うときのユーザ(携帯機20)と車両1の位置関係を俯瞰した図である。ユーザは、登録処理を開始するに当たり、車両1のイグニッションスイッチをONにし、携帯機20を携帯して車外に移動し、携帯機20が所定のエリアA内に存在するようにし、この状態でボタン21aを2秒以上長押しする。エリアAとは、点Pを中心とするエリアであり、予め規定されている。点Pは、車両1の外部にある点であって、各センサユニット30がそれぞれそこにある携帯機20から受信する信号の強度の差が大きくなる、好ましくは最大又は極大となるような点である。エリアA内の各点は、複数のタイヤTFL,TFR,TRL,TRRから異なる距離だけ離れている。無線通信の信号強度は、送信側と受信側の間に障害物がなく、また、他の信号との干渉がない場合、概ね送信側と受信側の距離の二乗に反比例する。つまり、点Pは、各センサユニット30との距離の差が大きくなる、好ましくは最大又は極大となる位置とすることができ、例えばFL輪、RL輪を結ぶ直線と、車両1の前端部の接線の交点とすることができる。エリアAの半径は、適宜定めることができる。
【0032】
図5は、携帯機20で行われる処理を示す図である。ステップS1では、制御部22がボタン21aの押下を検知し、長押しかそうでないかを判定する。ボタン21aが操作されたが長押しでないと判定されると、携帯機20が電子キーとして操作されたものと判定され、処理はキーレス処理へと進む。ここでは、アンロックボタン21aが操作されるため、ドアが解錠される。一方、長押しと判定されると、処理はセンサID情報の登録を行うべく、ステップS2に進む。ボタン21aが操作されなかった場合には、ステップS1が繰り返される。
【0033】
ステップS2では、RS生成部25として起動された制御部22が、リクエスト信号RSを生成する。
【0034】
続くステップS3では、送信部23によってリクエスト信号RSが送信される。リクエスト信号RSがセンサユニット30a~30dの通信部32a~32dによって受信されると、センサID情報の登録処理はセンサユニット30a~30dに引き継がれる。
【0035】
図6は、センサユニット30で行われる処理を示す図である。センサユニット30a~30dの動作が正常であれば、これら4つのセンサユニット30a~30dは概ね同じタイミングで同様の処理を行う。従って、センサユニット30aを例に説明する。
【0036】
本実施形態のセンサユニット30aは、スリープモード、空気圧検出モード、及びセンサ情報送信モードの少なくとも3種類のモードを遷移するように構成される。スリープモードでは、センサユニット30aは、空気圧の検出や、外部との通信を行わず、消費電力を節約する。空気圧検出モードでは、センサ31aによって検出されるタイヤTFLの空気圧のデータを、通信部32aが制御ユニット50に所定の周期で送信する。センサ情報送信モードでは、制御部33aによって生成されたセンサ情報を、通信部32aが制御ユニット50に送信する。なお、モードの種類はこれに限定されず、他のモードがあってもよいし、スリープモードがなくてもよい。後述するように、他のモードからセンサ情報送信モードへの遷移は、リクエスト信号RSの受信を条件として行われる。また、センサ情報送信モードは、制御ユニット50へのセンサ情報の送信完了を条件として空気圧検出モードへと遷移する。スリープモードから空気圧検出モードへの遷移、或いは空気圧検出モードからスリープモードへの遷移がなされる条件は、適宜設定することができ、種々の態様が考えられるため、説明を省略する。センサユニット30aは、本登録処理の開始時点では、空気圧検出モード又はスリープモードとなっている。ステップS31で通信部32aによってリクエスト信号RSが受信されると、ステップS32でセンサユニット30aが空気圧検出モード又はスリープモードからセンサ情報送信モードに切り替わる。
【0037】
ステップS33では、制御部33aが、リクエスト信号RSによる要求に基づいて、通信部32aが受信したリクエスト信号RSの信号強度を算出する。リクエスト信号RSの信号強度(dB)は、例えば、通信部32aが受け取った電力に基づいて算出される。続くステップS34では、制御部33aが、記憶装置34aからセンサ31aのセンサIDを読み出す。
【0038】
続くステップS35では、制御部33aが、信号強度とセンサIDとを関連付けたセンサ情報を生成する。このとき、本実施形態では、制御部33aは、センサ31aを介して空気圧のデータを取得し、同データを信号強度及びセンサIDと共にセンサ情報に含める。ステップS36では、通信部32aが、生成されたセンサ情報を制御ユニット50に送信する。通信部32aの送信が完了すると、ステップS37に進み、センサユニット30aは空気圧検出モードに遷る。
【0039】
図7は、制御ユニット50で行われる処理を示す図である。ステップS51では、制御ユニット50は、I/Oインターフェース11(センサ情報受信部)を介して各センサユニット30の通信部32a~32dから、ステップS36で送信されたセンサ情報を受信する。システムの動作が正常である場合、各センサユニット30における処理はリアルタイムで実質的に並行して行われる。従って、制御ユニット50が各センサユニット30からセンサ情報を受信するのは概ね同じタイミングとなる。
【0040】
次に、ステップS52では、登録情報生成部51が、全てのセンサユニット30a~30dからセンサ情報が受信されたか否かを判定する。センサ情報の受信回数が、センサユニット30の数に対応しない(NO)と判定された場合は、処理はステップS53に進み、登録状態通知部53がエラー通知を生成する。続くステップS54では、登録状態通知部53が表示器3にエラー通知を表示させ、ユーザに再度携帯機20を操作するように促す。また、このとき、表示器3上の表示に代えて又は加えて、車両1のクラクションやブザー等の音声を用いて、ユーザに対し登録処理の失敗を報知してもよい。
【0041】
ステップS52で、センサ情報の受信回数がセンサユニット30の数と一致する(YES)と判定された場合は、処理はステップS55に進む。ステップS55では、登録情報生成部51が、4つのセンサユニット30a~30dからのセンサ情報にそれぞれ含まれる4つの信号強度を比較し、信号強度の強い順にこれらの信号強度が(すなわち、それぞれに対応するセンサ情報が)ソート可能か否かを判定する。4つの信号強度間の差がそれぞれ所定の閾値を超えず、センサ情報がソート不可能(NO)と判定されると、処理は前述のステップS53,S54に進む。4つの信号強度間の差がそれぞれ所定の閾値を超え、センサ情報がソート可能(YES)と判断されると、処理はステップS56に進む。
【0042】
エリアA内の各点と車輪FL、FR、RL、RRとの距離は、この順に短い。また、信号強度は、エリアA内の携帯機20からの距離が短い程強くなるため、ソートされたセンサ情報は、対応する信号強度が強いものから車輪FL、FR、RL、RRの順に対応すると推定される。ステップS56では、登録情報生成部51が、センサ情報のソート順からその送信元のセンサユニット30が取り付けられている車輪の位置情報を特定し、車輪の位置情報とセンサ情報に含まれるセンサIDとを関連付けたセンサID情報を生成する。
【0043】
ステップS57では、登録処理部52が、センサID情報を記憶装置15に登録(格納)する。また、登録処理部52は、センサ情報に含まれるタイヤTFL,TFR,TRL,TRRの空気圧のデータも、それぞれタイヤTFL,TFR,TRL,TRRに関連付けて記憶装置15に登録する。この空気圧のデータは、本登録処理の後の減圧検出処理において、空気圧の初期値等として適宜参照される。続くステップS58では、登録状態通知部53が登録完了通知を生成する。ステップS59では、登録状態通知部53が表示器3に登録完了通知を表示させ、ユーザにセンサID情報の登録処理が終了した旨を報知する。また、このとき、表示器3上の表示に代えて又は加えて、車両1のクラクションやブザー等の音声を用いて、ユーザに対し登録処理の成功を報知してもよい。
【0044】
<3.減圧検出処理>
制御ユニット50の記憶装置15に登録されたセンサID情報は、制御ユニット50が行うタイヤTFL,TFR,TRL,TRRの減圧検出処理のために参照される。減圧検出処理は、制御ユニット50がONになっており、各センサユニット30が空気圧検出モードであるときに行われる。具体的には、減圧検出処理は、以下の手順で行われる。まず、センサ31a~31dが、自身が取り付けられたタイヤTFL,TFR,TRL,TRRの空気圧をそれぞれ検出し、通信部32a~32dが、所定の周期で検出された空気圧のデータをセンサIDと共に順次制御ユニット50へと送信する。
【0045】
制御ユニット50が各センサユニット30a~30dから空気圧のデータ及びセンサIDを受信すると、減圧判定部54は、受信されたセンサIDを、記憶装置15に登録されたセンサID情報と照合し、検出データとセンサの位置情報とを紐付ける。すなわち、センサユニット30a~30dから送信される空気圧のデータは、それぞれ車輪FL、FR、RL、RRと紐付けられる。このとき、減圧警告生成部55は、現在のタイヤの空気圧を、車輪と対応させた態様で、リアルタイムに表示器3に表示させることができる。表示は、例えば図8に示すように、車両1を模したグラフィックに含まれる各タイヤを模したグラフィックの付近に、当該タイヤの空気圧(図8の例では、単位はkPa)を示す数値が表示されたグラフィックとすることができる。なお、このような表示は、常に表示しておくのではなく、ユーザからのリクエストに応じて、表示器3に表示させることもできる。
【0046】
続いて、減圧判定部54は、予め記憶装置15又はROM13に保存してある減圧閾値と、各空気圧のデータとを比較し、各位置に装着されたタイヤの減圧を判定する。減圧閾値とは、検出された空気圧がこれを下回った際にそのタイヤが減圧していると判定する空気圧の値とすることができる。或いは、減圧閾値は、記憶装置15に登録されている各タイヤの空気圧の初期値から、予め定められた減圧率だけ減圧した空気圧とすることもできる。減圧判定部54は、検出された空気圧のデータが減圧閾値以上であれば正常、減圧閾値未満であれば減圧(異常)と判定する。なお、減圧閾値は、車輪の位置によって異なる値に設定されてもよい。
【0047】
以上の減圧の判定が全てのタイヤの空気圧について正常であれば、減圧判定部54は上述の処理を繰り返す。一方、少なくとも1つ以上のタイヤについて減圧と判定されれば、減圧警告生成部55が減圧を報知する警告信号を生成し、外部装置等を介して減圧警報を発生させる。警報は、減圧が起きている旨をユーザに報知することができるのであれば、態様は限定されず、クラクションやブザー等の音声、ランプの点滅、表示器3におけるアイコンや文字情報の表示等とすることができる。また、これに代えて又は加えて、上述した図8の車両1のグラフィックにおいて、減圧タイヤの空気圧の数字の色を反転表示させたり、大きく表示させたり、点滅させる等の手段を用いてもよい。
【0048】
<4.特徴>
上記実施形態では、ユーザが所定のエリアAで携帯機20を1回操作するだけで(より具体的には、ボタン21aを一回押下するだけで)、全てのセンサ31a~31dのセンサIDを、車輪の位置情報と関連付けて車両1に登録することができる。すなわち、車輪の位置情報を携帯機に事前に手動で設定したり、各車輪の付近に移動して同じ操作を繰り返したりする必要がなく、上記実施形態に係る方法は、ユーザにとって利便性が高い。また、車輪の位置情報とセンサIDが自動的に関連付けられるため、ユーザが意図せず車輪の位置とセンサIDとの対応関係を取り違えて登録してしまうこともない。さらに、新たな設備を車両に設置する必要もなく、既存のキーレスシステムの車内設備及び携帯機を使用することができるため、コスト面においても優れる。また、車両1の減圧検出処理においては、登録されたセンサID情報に基づいて、現在の各タイヤの空気圧を位置情報と関連付けて視覚的に表示することができる。この構成により、ユーザはタイヤの空気圧の状態を把握しやすくなり、減圧の発生により早く気付くことができる。
【0049】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0050】
<5-1>
ユーザによるボタン21aの押下操作は、2回以上であってもよい。この場合、センサユニット30の制御部33a~33dは、複数回受信した信号強度の平均値を算出し、センサ情報に含めることができる。また、異なる2つ以上の所定のエリアにおいて、ユーザがボタン21aを押下することとしてもよい。例えば、エリアA1及びA2を設定した場合、ユーザがエリアA1、A2のそれぞれにおいて1回以上ボタン21aを押下することとしてもよい。このようにすると、制御ユニット50の登録情報生成部51による車輪の位置情報の推定精度が向上し、登録システム100の信頼性がより高くなることが見込まれる。
【0051】
<5-2>
上記実施形態のキーレスシステムでは、車両1と携帯機20との通信、及び、センサユニット30と携帯機20との通信が一方向であった。しかしながら、車両1と携帯機20との通信、及び、センサユニット30と携帯機20との通信の少なくとも一方が双方向であるシステムにも適用することができる。例えば、携帯機20が、スマートフォンやスマートウォッチ等のより高機能のコンピュータを搭載した通信端末である場合である。この場合、登録状態通知部53によって生成された通知が、携帯機20に送信されてもよい。携帯機20は、携帯機20に含まれる表示ディスプレイ上のメッセージやアイコン、ランプの点滅パターンによってユーザに登録状態を通知することができ、及び/又は報知音を出すことによってユーザに登録状態を報知することができる。このようにして、ユーザは車両1の表示器3を確認することなく、手元の携帯機20を介して登録処理の完了又はエラーを知ることができる。或いは、制御ユニット50ではなく携帯機20の制御部22が登録情報生成部51、登録処理部52、登録状態通知部53を備えていてもよい。この場合、携帯機と登録制御装置とが一体となる。また、この場合は、センサユニット30から制御ユニット50に送信されたセンサ情報が、さらに無線通信を介して制御ユニット50から携帯機20へと送信される、或いは、センサ情報がセンサユニット30から直接携帯機20へと送信されるようにすることができる。
【0052】
<5―3>
上記実施形態では、センサ31a~31dは、空気圧センサであったが、これの例に限られない。例えば、これに代えて又は加えて、センサ31a~31dには、温度センサが含まれていてもよい。また、センサ31a~31dの取り付けられる位置は、タイヤTFL,TFR,TRL,TRRのエアバルブに限定されない。タイヤ内の空気圧を検出することが可能であれば、センサ31a~31dは、例えばタイヤのトレッドの裏面に貼付されてもよいし、ベルトでホイールに固定されてもよい。
【0053】
<5-4>
登録状態の通知は、上述した例に限定されず、様々な態様でユーザに伝えられることができる。例えば、車両1のヘッドライトを登録状態に応じた点灯パターンで点灯させ、登録状態の通知としてもよい。また、車両1のスピーカーを介した音声による通知も考えられる。また、エラー通知には、ユーザにエラーが生じた原因を取り除かせるべく、携帯機20と車両1の間に障害物がないか確認することや、タイヤの停止する回転位置を変更することをユーザに促す内容を含めてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
100 センサID登録システム
3 表示器
20 携帯機
21a (アンロック)ボタン
23 送信部
25 RS生成部
30a~30d センサユニット
31a~31d センサ
32a~32d 通信部
33a~33d 制御部
34a~34d 記憶装置
50 制御ユニット(登録制御装置)
11 I/Oインターフェース(センサ情報受信部)
51 登録情報生成部
52 登録処理部
53 登録状態通知部
A エリア
RS リクエスト信号
FL 左前輪
FR 右前輪
RL 左後輪
RR 右後輪
FL タイヤ(左前)
FR タイヤ(右前)
RL タイヤ(左後)
RR タイヤ(右後)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8